説明

廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法

【課題】廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法における環境面及び経済面でのメリットを向上させることを課題としている。
【解決手段】本発明にかかる廃棄物処理設備は、廃棄物の焼却処理が実施される焼却設備と、該焼却設備から前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部が供給されてメタン発酵処理されるメタン発酵設備とが備えられ、前記有機性廃棄物と希釈水とが混合され前記有機性廃棄物に含有されている有機性物質が前記希釈水中に分散される混合装置と、該混合装置で希釈水に分散された前記有機性物質が前記希釈水とともに導入されてメタン発酵されるメタン発酵槽とが前記メタン発酵設備に備えられている廃棄物処理設備であって、前記焼却設備から排出される排水が前記希釈水に用いられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物が焼却処理される焼却設備と、前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部が供給されてメタン発酵されるメタン発酵設備とが備えられている廃棄物処理設備及び廃棄物を焼却設備で焼却する焼却処理工程と、前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部をメタン発酵設備に供給してメタン発酵するメタン発酵工程とを実施する廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ゴミや産業廃棄物などの廃棄物を焼却処理する廃棄物処理設備が広く活用されている。
この種の廃棄物処理設備においては、環境への配慮ならびに経済性の観点から単に廃棄物を焼却処理するだけではなく、エネルギーの回収を図りつつ焼却処理することが検討されている。
その一つの方法として、焼却処理される廃棄物に含まれている生ゴミなどの有機性廃棄物をメタン発酵させることによりメタンガスを製造し、得られたメタンガスを熱エネルギー源などとして用いることが従来実施されている。
【0003】
ところで、メタン発酵においては、アンモニア濃度が高い状態においてメタン菌がその活性を低下させるアンモニア阻害と呼ばれる現象を発生させることが知られており、生ゴミなどをメタン発酵槽に導入してメタン発酵させる際には、メタン発酵槽内のアンモニア濃度が所定値以上に上昇しないように予め生ゴミを希釈水で希釈した上でメタン発酵させることが行われている。
この希釈水を、例えば、全て上水や工業用水などで賄った場合には、利用価値の高い水資源が多大に消費されることになり環境面ならびに経済性における利得に逆行することとなる。
【0004】
このようなことから、例えば、下記特許文献1に示されているように、前記希釈水としてメタン発酵槽から排出されるメタン発酵後の消化液が利用されたりしている。
しかし、メタン発酵においては、生ゴミ中の有機炭素は、メタンや二酸化炭素に変化され気体として処理水中から排出されるものの窒素についてはアンモニアに還元されるだけでその殆どが処理水中に留まる。
したがって、総窒素としては、メタン発酵前の被処理物と、メタン発酵後の消化液とにおいて殆ど変化しておらず、このメタン発酵後の消化液を生ゴミを希釈するための希釈水として用いてもメタン発酵槽内のアンモニア濃度を低減させることができず、やがてアンモニア阻害を発生させることとなる。
【0005】
このようなことから、廃棄物が焼却処理される焼却設備と、前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部が供給されてメタン発酵されるメタン発酵設備とが備えられている従来の廃棄物処理設備や、廃棄物を焼却設備で焼却する焼却処理工程と、前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部をメタン発酵設備に供給してメタン発酵するメタン発酵工程とを実施する従来の廃棄物処理方法においては、環境面及び経済面における十分なメリットを期待することが困難であるという問題を有している。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−13091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法における環境面及び経済面でのメリットを向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明にかかる廃棄物処理設備は、廃棄物の焼却処理が実施される焼却設備と、該焼却設備から前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部が供給されてメタン発酵処理されるメタン発酵設備とが備えられ、前記有機性廃棄物と希釈水とが混合され前記有機性廃棄物に含有されている有機性物質が前記希釈水中に分散される混合装置と、該混合装置で希釈水に分散された前記有機性物質が前記希釈水とともに導入されてメタン発酵されるメタン発酵槽とが前記メタン発酵設備に備えられている廃棄物処理設備であって、前記焼却設備から排出される排水が前記希釈水に用いられていることを特徴としている。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明にかかる廃棄物処理方法は、廃棄物を焼却設備で焼却処理するとともに前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部をメタン発酵槽を有するメタン発酵設備に供給し、該メタン発酵設備で、前記有機性廃棄物と希釈水とを混合して前記有機性廃棄物に含有されている有機性物質を前記希釈水中に分散させ、希釈水に分散させた前記有機性物質を前記希釈水とともにメタン発酵槽に導入してメタン発酵させる廃棄物処理方法であって、前記焼却設備から排出される排水を前記希釈水に用いることを特徴としている
【発明の効果】
【0010】
廃棄物が焼却処理される焼却設備と、前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部が供給されてメタン発酵処理されるメタン発酵設備とが備えられている廃棄物処理設備においては、通常、種々の排水が焼却設備から排出されている。
例えば、廃棄物が貯留されている廃棄物ピットから滲出する廃棄物ピット排水や、廃棄物を運搬した運搬車両を洗浄した洗浄排水、焼却設備に備えられている装置を洗浄した洗浄排水、生活排水、排ガス処理装置からの排ガス処理水などが排出されている。
そのため、焼却設備では、通常、排水処理が必要となるが、本発明においては、これらがメタン発酵設備における希釈水に用いられることから焼却設備における排水処理の負荷が軽減されることとなる。
すなわち、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法における環境面及び経済面でのメリットを向上させ得る。
特に、希釈水として有機性物質を含有する廃棄物ピット排水や洗浄排水、生活排水を利用した場合には、この希釈水には有機性物質が含有されていることからメタン発酵設備に導入される有機性物質の量が増大され、より多くのメタンガスを製造することができる。
したがって、このような好適な態様によれば、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法における環境面及び経済面でのメリットをより一層向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい第一の実施の形態について、図を参照しつつ説明する。
まず、図1を参照しつつ廃棄物処理設備について説明する。
図1は、本実施形態の廃棄物処理設備を示すフロー図であり、10が焼却設備を示しており、20がメタン発酵設備を示している。
【0012】
この図1にも示されているように、本実施形態の廃棄物処理設備における焼却設備10には、廃棄物処理設備に運び込まれた廃棄物を貯留する廃棄物ピット11と、該廃棄物ピット11から廃棄物が導入されて焼却用廃棄物とメタン発酵設備20側に供給するメタン発酵用廃棄物とに分別される分別装置12とが備えられており、さらに、該分別装置12にて廃棄物を分別する前に該分別性能を向上させるべく廃棄物を破砕する破砕装置(図示せず)及び異物除去装置(図示せず)が備えられている。
また、本実施形態における焼却設備10には、前記分別装置12で分別された焼却用廃棄物を焼却する焼却炉13と、該焼却炉13にて焼却処理する焼却用廃棄物を貯留する焼却用廃棄物ピット31が備えられている。
また、焼却設備10には、前記廃棄物ピット11に収容させる廃棄物を外部から廃棄物処理設備まで運搬したトラックなどの運搬車両を洗浄する洗浄装置14が備えられており、該洗浄装置14には、運搬車両を洗浄した後の洗浄排水が貯留される排水ピット14aが備えられている。
【0013】
一方で、メタン発酵設備20には、前記分別装置12から供給されるメタン発酵用廃棄物と希釈水とが収容されて混合される混合装置21と、該混合装置21でメタン発酵用廃棄物と希釈水とが混合されて形成された混合液が導入されて固液分離される脱水装置22(以下「廃棄物脱水装置22」ともいう)と、該廃棄物脱水装置22から排出される液分が導入されてメタン発酵されるメタン発酵槽23と、該メタン発酵槽23の槽内水(消化液)が導入されて汚泥(消化汚泥)と処理水とに固液分離される脱水装置24(以下「消化汚泥脱水装置24」ともいう)と、前記廃棄物脱水装置22で分離された固形分と前記消化汚泥脱水装置24で分離された固形分(消化汚泥)とが導入されて好気発酵される好気発酵槽25とが備えられている。
【0014】
また、本実施形態の廃棄物処理設備には、廃棄物ピット11に廃棄物を導入させるための廃棄物導入経路L1と、廃棄物ピット11から破砕装置及び異物除去装置を経由して分別装置12に廃棄物を供給するための廃棄物供給経路L2と、分別装置12で分離された焼却用廃棄物を焼却用廃棄物ピット31に供給する焼却用廃棄物供給経路L3と焼却用廃棄物ピット31に貯留された廃棄物を焼却炉13に供給する焼却炉供給経路L 21と、分別装置12で分離されたメタン発酵用廃棄物を混合装置を混合装置21に供給するためのメタン発酵用廃棄物供給経路L4とが設けられている。
【0015】
また、本実施形態の廃棄物処理設備には、廃棄物ピット11に貯留されている廃棄物から滲出する汚水(廃棄物ピット排水)を混合装置21に供給するための廃棄物ピット排水供給経路L5と、焼却用廃棄物ピット31に貯留されている廃棄物から滲出する汚水(焼却用廃棄物ピット排水)を混合装置21に供給するための焼却用廃棄物ピット排水供給経路L22と洗浄装置14に設けられた排水ピット14aから洗浄排水を混合装置21に供給するための洗浄排水供給経路L6と、焼却炉13で焼却用廃棄物を焼却処理することによって発生した排ガスを処理する排ガス処理装置(図示せず)からの排水を混合装置21に供給するための排ガス処理水供給経路L17と、混合装置21から排出される混合液を廃棄物脱水装置22に供給するための混合液供給経路L7と、廃棄物脱水装置22で固液分離された液分(メタン発酵用の被処理液)をメタン発酵槽23に供給するための被処理液供給経路L8と、廃棄物脱水装置22で固液分離された固形分を好気発酵槽25に供給するための固形分供給経路L9とが設けられている。
【0016】
さらに、本実施形態の廃棄物処理設備には、メタン発酵槽23で発生されたメタンガスが系外に排出されるメタンガス排出経路L10と、メタン発酵槽23の槽内水(消化液)を消化汚泥脱水装置24に供給するための消化液供給経路L11と、消化汚泥脱水装置24で固液分離された消化汚泥を好気発酵槽25に供給するための消化汚泥供給経路L12と、消化汚泥脱水装置24で固液分離された処理水をさらなる排水処理の工程に供給すべく系外に排出させる処理水排出経路L13と、焼却炉13から金属屑などの不燃物等を系外に排出させるための不燃物排出経路L14と、前記好気発酵槽25で発酵処理された後の残渣(発酵残渣)を焼却用廃棄物と共に焼却処理させるべく焼却炉13に供給するための発酵残渣供給経路L15とが設けられている。
【0017】
各装置に用いられる具体的な機器については、特に限定されるものではないが、例えば、前記破砕装置には、二軸破砕、一軸破砕機、竪型破砕機、破袋機などを採用することができる。
前記異物除去装置には、例えば、金属除去のための磁力選別機などを採用することができる。
前記分別装置12には、例えば、トロンメルや回転ブレード式分別機、圧縮分別機、風力選別機などを採用することができる。
前記焼却炉13には、例えば、ストーカ炉、ガス化溶融炉、旋回溶融炉などを採用することができる。
前記排ガス処理装置は、例えば、飛灰を除去するバグフィルター、排ガスを冷却するための減温塔、活性炭塔などから構成されたものなどを採用することができる。
前記廃棄物脱水装置22や前記消化汚泥脱水装置24には、例えば、スクリュープレスや遠心脱水機、ベルトプレス、フィルタープレスなどを採用することができる。
また、これらに代えてスクリーンなどの簡易装置によって夾雑物を除去するようにしてもよい。
さらには、本実施形態における廃棄物処理設備を構成する各装置には、本発明の効果を著しく損ねない範囲において、上記例示のものに代えて従来公知の他の機器を採用することができる。
【0018】
次いで、このような廃棄物処理設備による廃棄物処理方法について説明する。
前記廃棄物導入経路L1を通じて廃棄物ピット11に収容された廃棄物を廃棄物供給経路L2を通じて分別装置12に供給する。
このとき、破砕装置及び異物除去装置を経由して分別装置12に廃棄物を供給することにより、前記破砕装置で廃棄物の破砕を実施して分別装置12における有機性物質の分別を容易にさせるとともに、前記異物除去装置によって金属やその他の異物を除去して、分別装置12の負荷低減を図ることができる。
また、機器による異物除去に代えて手選別による粗大異物等の除去を行うことによっても、同様に分別装置12の負荷低減を図ることができる。
この分別装置12では、食品屑などのメタン発酵に適した有機性廃棄物をメタン発酵用廃棄物として選別し、残部を焼却用廃棄物として、供給された廃棄物を二分させる。
この焼却用廃棄物を焼却用廃棄物供給経路L3を通じて焼却用廃棄物ピット31に供給し、一度貯留した後、焼却炉供給経路L 21を通じて焼却炉13に供給し、焼却用廃棄物に含まれる木片やプラスチックゴミなどの有機性廃棄物を焼却させる。
この焼却によって発生する排ガスは、通常、高温で飛灰等が含有されているため焼却設備に別途設けた排ガス処理装置(図示せず)を通過させることにより冷却および灰除去を行って系外に排出させる。
なお、焼却用廃棄物に含まれる金属屑などの無機廃棄物は、焼却炉13から不燃物排出経路L14を通じて系外に排出させる。
【0019】
このようにして廃棄物ピット11への廃棄物の導入から、排ガスの排出ならびに金属屑などの不燃物の排出といった一連の焼却処理工程を実施するとともに、分別装置12でメタン発酵用廃棄物として分別された有機性廃棄物をメタン発酵設備20に供給してメタン発酵処理工程を実施する。
【0020】
このメタン発酵処理においては、まず、メタン発酵用廃棄物を、メタン発酵用廃棄物供給経路L4を通じて混合装置21に導入し、この混合装置21で希釈水とともに混合攪拌して混合液を形成させる。
このとき、混合液中にはメタン発酵用廃棄物に含有されていた有機性物質が分散されることとなるが、この混合液の含水率や全窒素濃度がメタン発酵に適した状態となるようにメタン発酵用廃棄物に混合する希釈水の量(希釈割合)を調整することが好ましい。
また、この混合処理時に併せて酸発酵を実施する場合には、有機性物質をメタン発酵しやすい性状に変化させることができると共に水中に溶解させやすくすることができるため、後段の廃棄物脱水装置22で固液分離した際に排出される液分側に有機性物質をより多く含有させることができる。
【0021】
また、このとき用いる希釈水には、廃棄物ピット排水、焼却用廃棄物ピット排水、洗浄排水、及び排ガス処理装置から排出される排ガス処理水の内のいずれかの排水、又は、これらの内の複数を混合した混合排水を用いる。
廃棄物ピット11には、焼却処理される廃棄物が、メタン発酵される有機性廃棄物とともに貯留されており、この廃棄物から滲出する汚水(廃棄物ピット排水)には、有機性物質が多量に含有されている。
また、焼却用廃棄物ピット31には、焼却処理される廃棄物が単独で貯留されており、この廃棄物から滲出する汚水(焼却用廃棄物ピット排水)にも有機性物質が通常含有されている。
また、廃棄物を運搬した運搬車両にも廃棄物から滲出した汚水が付着しているため、この運搬車両を洗浄した洗浄排水にも、有機性物質が含有されることとなる。
なお、運搬車両のみならず焼却設備10に備えられている装置は、廃棄物を扱うことから同じ理由で、通常、有機性物質が含有されている。
したがって、このような排水を希釈水として用いることで、これらの排水中に含有されている有機性物質をメタン発酵槽23でメタン発酵させることができメタン発酵設備20におけるメタンガス収量の増大が期待できる。
【0022】
なお、通常、焼却設備からは、焼却処理に従事する作業員の生活排水(風呂、トイレ、流し台等からの排水)、廃棄物の移送経路にあたる部分の地面(床面)等を洗浄した洗浄排水、焼却処理の各種装置を洗浄した洗浄排水などが排出される。
また、焼却炉に熱回収のためのボイラーが設けられているような場合には、ボイラー水を再生するための純水装置から排出される排水(再生排水)や、ボイラーのブロー排水なども排出される。
さらには、前記排ガス処理装置からも、湿式洗浄装置における排ガス洗浄排水(湿式洗浄排水)などが、排ガス処理水として排出されている。
このような焼却設備から排出される排水のなかでも廃棄物ピット排水は、有機性物質の含有量が、通常最も高く、メタン発酵設備20におけるメタンガス収量の増大に最も有用である。
【0023】
ここで、一般的な廃棄物処理設備においては、廃棄物ピット排水は、その排出量の変動が大きく、廃棄物ピット排水中のBODの変動も大きいため、従来、廃棄物ピット排水を水処理装置によって処理する場合は、最大負荷を想定した排水処理設備を設ける必要があり、排水量に比較して過剰な排水処理設備を設置する必要があった。
また、排水処理を行わずに焼却炉中に廃棄物ピット排水を散布して処理を行う方法もあるが、この場合には、散布した水の蒸発により炉内の熱エネルギーが奪われるため、焼却炉の運転効率を低下させるおそれがある。
これに対して、本実施形態では廃棄物ピット排水を希釈水として利用しているため、メタン発酵槽におけるメタン発生源として有効活用でき、廃棄物ピット排水処理のために過剰な排水処理設備を設ける必要が無く、焼却炉の運転効率を低下させるおそれも低減させうる。
【0024】
さらに、他の排水(運搬車両の洗浄排水や排ガス洗浄排水)などとともに希釈水として用いることで廃棄物ピット排水のBODや排出量の変動を他の排水で緩和させることができ、希釈水として必要な一定の水量を確保することができる。
この内、排ガス洗浄排水については、アンモニア等が殆ど含有されていないことから廃棄物ピット排水とともに用いられることで、廃棄物ピット排水に含有されるアンモニアによってメタン発酵処理におけるアンモニア阻害が発生することを十分防止しうる程度にアンモニア濃度の低減された希釈水を得ることができる。
しかも、排ガス洗浄排水は、通常、焼却炉内に散布されて処理されていることから、この排ガス洗浄排水が希釈水に用いられることにより、炉内に散布される水量を減少させることができ焼却炉の運転効率低下を防止することができる。
【0025】
また、廃棄物を扱う装置を洗浄した洗浄排水も運搬車両の洗浄排水と同様に水量の確保が容易で且つ有機性物質を含んでいる点において運搬車両の洗浄排水に代えてこれを用いても同種の効果が期待される。
また、焼却用廃棄物ピットからの焼却用廃棄物ピット排水も有機物を含んでおり、これを希釈水として用いるとメタン発酵槽におけるメタン発生源として有効活用できると共に過剰な水処理設備を設ける必要が無い。
また、要すれば、生活排水などをさらに加えて希釈水とすることも可能である。
焼却設備10から排出される排水は、通常、この廃棄物処理設備内あるいは廃棄物処理設備外において河川等に放流できるレベルにまで浄化する処理を必要とする。
したがって、焼却設備10から排出される排水をより多く希釈水として用いることにより、これらの排水処理(浄化)の負荷を軽減させることができ、環境面ならびに経済面におけるメリットが、より大きく発揮させ得る。
【0026】
このような希釈水とメタン発酵用廃棄物とを混合して調整した混合液は、混合液供給経路L7を通じて、廃棄物脱水装置22に供給される。
なお、要すれば、混合装置21に混入した金属などの重量物を、混合液を廃棄物脱水装置22に供給する前に事前に比重分離などによって分離しても良い。
この廃棄物脱水装置22では、混合液を固形分と、メタン発酵用廃棄物が含有する有機性物質が分散された液分とに分離し、この内の液分をメタン発酵用の被処理液として被処理液供給経路L8を通じてメタン発酵槽23に供給するとともに固形分を固形分供給経路L9を通じて好気発酵槽25に供給する。
【0027】
前記メタン発酵槽23では、嫌気環境下におけるメタン菌のメタン発酵作用により被処理液に含まれている有機性物質を分解させてメタンガスを発生させる。
このときメタン発酵用廃棄物が含有していた有機性物質と共に希釈水に含有されている有機性物質がメタン発酵されることから従来の廃棄物処理設備に比べてより多くのメタンガスを発生させることができる。
発生させたメタンガスは、メタンガス排出経路L10を通じて系外に排出し、廃棄物処理設備あるいはその他の場所においてエネルギー源として活用する。
なお、メタン発酵槽においては、被処理液に含有されている有機性物質が、被処理液の導入から排出にかけて移動する間(槽内での滞留時間)にメタン発酵されることから、この間に十分なメタン発酵がなされるようにメタン発酵槽23への被処理液の供給量の調整、混合装置21での混合液のBOD濃度調整等を実施させることが好ましい。
【0028】
消化汚泥脱水装置24では、消化液から消化汚泥を除去して、有機性物質の含有量が十分低減された処理水を処理水排出経路L13を通じて系外に排出させ、前記消化汚泥を消化汚泥供給経路L12を通じて好気発酵槽25へ導入させる。
なお、消化液から消化汚泥を除去した後の処理水については、通常、硝化脱窒処理等の処理が実施される。
好気発酵槽25においては、この消化汚泥と共に廃棄物脱水装置22で固液分離された混合液の固形分が発酵処理され、発酵処理後の発酵残渣は、発酵残渣供給経路L15を通じて焼却設備10に返送して焼却炉13で焼却処理させる。
なお、ここでは詳述しないが、好気発酵槽25で発生する排ガスは別途排ガス処理装置を設けて処理しても良いし、焼却炉に投入して処理しても良い。
【0029】
このように本実施形態の廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法においては、焼却設備の有機性物質を含んだ排水をメタン発酵用の被処理液を作製する際の希釈水として用いることから、メタン発酵設備においてより多くのメタンガスを製造することができる。
しかも、焼却設備から排出される排水の量を削減することができ排水処理の負荷が軽減される。
したがって、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法における環境面及び経済面でのメリットを向上させ得る。
【0030】
次に、第二の実施形態について図2を参照しつつ説明する。
この図2も、図1と同様に廃棄物処理設備を示すフロー図であり、図1と同じ構成を示す箇所は、この図2も同じ符号を用いている。
この図からもわかるように、前記第一の実施形態における廃棄物処理設備には、消化汚泥の乾燥設備として好気発酵槽25が備えられていたのに対して、この第二の実施形態においては、焼却設備からの熱を利用して汚泥を乾燥する設備が備えられている。
【0031】
具体的には、第二の実施形態における廃棄物処理設備には、第一実施形態における好気発酵槽25の代わりに汚泥乾燥装置30が設けられているとともに、焼却炉13の熱を熱媒体を利用して汚泥乾燥装置30に供給するための熱供給経路L18と、前記汚泥乾燥装置30に熱を伝達した後の温度の低下した熱媒体を焼却炉13に返送するための熱媒体戻し経路L19が新たに設けられている点において第一実施形態における廃棄物処理設備と異なっている。
さらに、第二の実施形態における廃棄物処理設備には、乾燥時に発生する乾燥排ガスを焼却炉13に供給して処理するための乾燥排ガス供給経路L20が新たに備えられている点において第一実施形態における廃棄物処理設備と異なっている。
【0032】
このような廃棄物処理設備における消化汚泥の乾燥方法について以下に説明する。
汚泥乾燥装置30に供給するための熱を焼却炉13で回収する方法については、特に限定されないが、例えば、前記熱媒体としては空気を利用することができる。
熱媒体である空気と焼却炉の減温前の高温排ガスとを間接的に熱交換することで熱媒体である空気を加熱し、当該空気を熱供給経路L18に供給して乾燥のための熱源とすることができる。
また、焼却炉がボイラーを設けている場合、ボイラーで発生する蒸気と熱媒体を間接的に熱交換する構成としても良い。
【0033】
消化汚泥の乾燥に際しては、焼却炉13で加熱された前記熱媒体(例えば、空気)を熱供給経路L18を通じて汚泥乾燥装置30に供給し、汚泥を間接的に加熱することで水分を蒸発させる。
そして、前記熱媒体により十分に乾燥された汚泥を発酵残渣供給経路L15を通じて焼却炉13に供給して焼却処理する。
それとともに、加熱に利用された熱媒体(空気)は熱媒体戻し経路L19を通じて焼却炉13へと戻し、焼却炉排ガスと間接的に熱交換させるなどして加熱することで再利用する。
【0034】
また、汚泥乾燥装置30にて発生した水蒸気を含む排ガスは、乾燥排ガス供給経路L19を利用して焼却炉に送って可燃物と共に焼却処理させる。
本実施形態においては汚泥乾燥装置30で発生した水蒸気を含む排ガスは焼却炉に送る構成としたが、これに限定されることなく、水蒸気を分離して希釈水として利用しても良い。
また、水蒸気を含む排ガスを混合装置21に投入する構成としてもよい。
混合装置に投入することで排ガスの保有する熱を混合装置の加温に利用することができる。
本実施形態においては焼却炉にて発生した熱を回収して汚泥の乾燥に使用する形態としたがこれに限定されるものではない。
例えばメタン発酵において発生したメタンガスを廃棄物施設内でガスエンジンやボイラー用途として利用する場合は、ここで発生する熱を回収して汚泥を乾燥する構成としてもよい。
【0035】
なお、本実施形態においては熱媒体である空気と汚泥を間接的に熱交換して汚泥を乾燥する構成を例示しているが、加熱空気を消化汚泥に直接接触させる構成を採用することもできる。
この場合、熱媒体戻し経路L19が不要となるが、加熱空気と汚泥を直接接触させると臭気成分を含んだ乾燥排ガスが多量に発生する。
そのため、乾燥排ガス供給経路L20を通じて焼却炉13に供給される空気が多くなり、焼却炉13の運転に支障をきたすおそれがある。
また、別途、排ガス処理装置を設けたとしても排ガス処理装置自体が規模の大きなものとなるおそれがあり好ましくない。
このような問題に対し、本実施形態のごとく、熱媒体を利用して汚泥を間接的に加熱する方法は、熱媒体が汚染されることなく、繰り返し利用できると共に、乾燥工程にて発生する排ガス量を低減することができる点において好適である。
【0036】
なお、上記実施形態においては、廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法を上記のごとく例示しているが、本発明の廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法を上記例示のものに限定するものではない。
例えば、上記例示の廃棄物処理設備における一部の構成を削除したり、又は従来公知の他の構成に置き換えたりすることもでき、上記例示の廃棄物処理設備に従来公知の構成を付加することも可能である。
また、廃棄物処理方法においても上記例示の工程の一部を削除したり、又は従来公知の他の工程に置き換えたりすることもでき、上記例示の廃棄物処理方法に従来公知の処理方法において採用されている工程を付加することも可能である。
例えば、本実施形態では混合装置からメタン発酵槽に廃棄物を供給する際に脱水装置を利用して廃棄物を固液分離する構成としたが、これに限定されず、固液分離すること無しに混合装置から直接メタン発酵槽に廃棄物を供給する構成としても良い。
この場合、脱水装置から汚泥乾燥設備への固形分供給経路は不要となる。
また、脱水装置の代わりに簡易的に被処理物中の発酵不適物を除去するスクリーンを設けても良い。
また、本実施形態においては焼却用廃棄物ピットを設け、ここで得られるごみピット排水を希釈水として使用する態様を例示したが、これに限定されず、焼却用廃棄物ピットから得られる排水量が少ない場合、焼却炉内に噴霧したり、別途、排水処理を行ったりするようにしても良い。
また、メタン発酵工程においてアンモニア阻害を起こさない範囲(例えばメタン発酵槽に投入される被処理物の全窒素濃度が4000mg/l以下)でメタン発酵槽からの消化液もしくは消化液から消化汚泥を除いた後の処理水をメタン発酵槽よりも前段側に戻す構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態の廃棄物処理設備のフローを示す図。
【図2】他実施形態の廃棄物処理設備のフローを示す図。
【符号の説明】
【0038】
10 焼却設備
11 廃棄物ピット
12 分別装置
13 焼却炉
14 洗浄装置
14a 排水ピット
20 メタン発酵設備
21 混合装置
22 脱水装置(廃棄物脱水装置)
23 メタン発酵槽
24 脱水装置(消化汚泥脱水装置)
25 好気発酵槽
30 汚泥乾燥装置
31 焼却用廃棄物ピット
L1 廃棄物導入経路
L2 廃棄物供給経路
L3 焼却用廃棄物供給経路
L4 メタン発酵用廃棄物供給経路
L5 廃棄物ピット排水供給経路
L6 洗浄排水供給経路
L7 混合液供給経路
L8 被処理液供給経路
L9 固形分供給経路
L10 メタンガス排出経路
L11 消化液供給経路
L12 消化汚泥供給経路
L13 処理水排出経路
L14 不燃物排出経路
L15 発酵残渣供給経路
L16 排ガス排出経路
L17 排ガス処理水供給経路
L18 熱供給経路
L19 熱媒体戻し経路
L20 乾燥排ガス供給経路
L21 焼却炉供給経路
L22 焼却用廃棄物ピット排水供給経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の焼却処理が実施される焼却設備と、該焼却設備から前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部が供給されてメタン発酵処理されるメタン発酵設備とが備えられ、前記有機性廃棄物と希釈水とが混合され前記有機性廃棄物に含有されている有機性物質が前記希釈水中に分散される混合装置と、該混合装置で希釈水に分散された前記有機性物質が前記希釈水とともに導入されてメタン発酵されるメタン発酵槽とが前記メタン発酵設備に備えられている廃棄物処理設備であって、
前記焼却設備から排出される排水が前記希釈水に用いられていることを特徴とする廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記焼却設備には、前記焼却処理される廃棄物が、前記メタン発酵設備に供給される有機性廃棄物とともに貯留される廃棄物ピットが備えられており、前記希釈水には前記廃棄物ピットから排出される廃棄物ピット排水が用いられている請求項1記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
前記廃棄物を運搬した運搬車両を洗浄した洗浄排水か、又は焼却設備に備えられている装置を洗浄した洗浄排水かのいずれかが前記廃棄物ピット排水とともに前記希釈水に用いられている請求項2記載の廃棄物処理設備。
【請求項4】
前記焼却設備には、前記廃棄物の焼却処理により発生する排ガスを湿式処理する湿式洗浄装置を有する排ガス処理装置が備えられており、前記湿式洗浄装置からの排水が前記廃棄物ピット排水と共に前記希釈水に用いられている請求項2または3記載の廃棄物処理設備。
【請求項5】
廃棄物を焼却設備で焼却処理するとともに前記廃棄物に含まれる有機性廃棄物の一部をメタン発酵槽を有するメタン発酵設備に供給し、該メタン発酵設備で、前記有機性廃棄物と希釈水とを混合して前記有機性廃棄物に含有されている有機性物質を前記希釈水中に分散させ、希釈水に分散させた前記有機性物質を前記希釈水とともにメタン発酵槽に導入してメタン発酵させる廃棄物処理方法であって、
前記焼却設備から排出される排水を前記希釈水に用いることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記焼却設備には、前記焼却処理される廃棄物が、前記メタン発酵設備に供給される有機性廃棄物とともに貯留される廃棄物ピットが備えられており、該廃棄物ピットから排出される廃棄物ピット排水を前記希釈水に用いる請求項5記載の廃棄物処理方法。
【請求項7】
前記廃棄物を運搬した運搬車両を洗浄した洗浄排水か、又は焼却設備に備えられている装置を洗浄した洗浄排水かのいずれかを前記廃棄物ピット排水とともに前記希釈水に用いる請求項6記載の廃棄物処理方法。
【請求項8】
前記焼却設備には、前記廃棄物の焼却処理により発生する排ガスを湿式処理する湿式洗浄装置を有する排ガス処理装置が備えられており、前記湿式洗浄装置からの排水を前記廃棄物ピット排水と共に前記希釈水に用いる請求項6または7記載の廃棄物処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−285612(P2009−285612A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143077(P2008−143077)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】