説明

廃水処理システムおよび廃水処理方法

【課題】電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することを課題とする。
【解決手段】廃水中の除去対象物質を該廃水から除去するための廃水処理システム3において、前記廃水以外の不純物含有水から電気分解処理を用いて分離された汚泥を、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集補助物質として該廃水に混合させ、汚泥が混合されることによって生成された凝集物を、該廃水から分離することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水から何らかの除去対象物を除去するための廃水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理水内に溶出させた金属イオンと不純物とを反応させることにより、不純物を凝集させる技術がある(特許文献1を参照)。その他、溶出させた鉄イオンまたはアルミニウムイオンを生物膜濾過槽へ供給する汚水処理技術等がある(特許文献2から7を参照)。
【特許文献1】特開2006−122840号公報
【特許文献2】特許3948779号公報
【特許文献3】特開2006−110482号公報
【特許文献4】特開2008−194631号公報
【特許文献5】特開2007−203233号公報
【特許文献6】特開2005−246328号公報
【特許文献7】特開2007−237027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、水に溶解しているシリカや鉄、コロイド物質などの不純物を除去する技術として電気分解法がある。電気分解法は、鉄やアルミニウムなどでできた溶性電極を用いた電気分解により凝集作用に有効な金属イオン(鉄イオンやアルミニウムイオン等)を電極から溶出させることで、負電荷を持つ除去対象物(シリカイオン等)と反応させることで、除去対象物を凝集させ分離除去する技術である。更に、電気分解法では、負電極からの水素ガスの発生で処理水中の水酸化物イオン量を増加させる効果により、水酸化アルミニウムによるコロイド物質の吸着が促進される。
【0004】
図5は、電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。図5に示す装置は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に、処理原水に対して電気分解処理が行われる電気分解反応槽と、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる沈殿槽と、を有する。
【0005】
電気分解法では、処理生成物としての凝集物を含む余剰汚泥(比較的粘度の低いスラリー状の汚泥)が発生する。本生成物の組成はシリカ等の除去対象物質と鉄やアルミニウムの化合物であり、このため電気分解法によって発生する余剰汚泥は土壌成分に似た無害な物質である。しかし、電気分解法によって発生する余剰汚泥は、従来産業廃棄物として処理されているため、余剰汚泥の処理コストは、電気分解処理コストの半分近くを占める。また、電気分解法によって発生する余剰汚泥は、そのままでは含水率が高く、搬出および埋め立て処理が困難であるため、脱水および乾燥処理が必要となる。ここで、電気分解法によって発生する余剰汚泥は脱水性が非常に悪いため、通常の脱水処理で脱水することは難しく、加熱による乾燥処理に非常に多くのエネルギーが必要となる。更に、加熱による乾燥処理では、二酸化炭素が発生するため、環境への配慮という点からも、好ましいものではなかった。
【0006】
本発明は、上記した問題に鑑み、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するために、汚染物を含む廃水(処理原水)を凝集処理する処理プロセスにおいて、別途不純物含有水の電気分解処理による不純物除去プロセスで発生した余剰汚泥を本凝集処理プロセス中に投入することで、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することを可能にした。
【0008】
詳細には、本発明は、廃水中の除去対象物質を該廃水から除去するための廃水処理システムであって、前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集補助物質として該廃水に混合させる混合手段と、前記混合手段によって前記廃水に前記汚泥が混合されることによって生成された凝集物を、該廃水から分離する分離手段と、を備える廃水処理システムである。
【0009】
本発明に係る廃水処理システムは、処理の対象となる廃水から除去対象物(汚染物)を除去するためのシステムである。例えば、処理の対象となる廃水は、食品加工廃水、機械加工廃水、化学工場廃水、厨房廃水、生活廃水の何れかまたはこれら廃水の複合水であってよい。これらの廃水には、例えば、除去対象物としての油分やSS成分が含まれる。但し、除去対象物は油分やSS成分等の特定の物質に限定されるものではなく、水に含まれる広範な物質(特に、汚染物)が除去対象物となり得る。
【0010】
一方、本発明に係る廃水処理システムにおける廃水処理とは別途行われる水処理(一般的には、地下水等から水溶性シリカ等の不純物を除去する処理)において、電気分解処理が用いられた場合、処理生成物としての凝集物を含む余剰汚泥(比較的粘度の低いスラリー状の汚泥)が発生する。ここで、本願発明者は、電気分解処理によって発生した凝集物(廃水処理システムにおいて発生する凝集物とは異なる)を含む汚泥に、廃水中の除去対象物(油分や縣濁物質)の凝集を促進させる能力が有ることを見出し、廃水処理システムを、電気分解処理において発生した余剰汚泥を凝集補助物質として用いる廃水処理システムとした。即ち、本発明によれば、余剰汚泥が廃水処理に有効利用されることで、電気分解処理において発生した余剰汚泥の乾燥・運搬・埋め立て等に係る処理コストを大きく削減することが出来る。
【0011】
また、本発明に係る廃水処理システムにおいて、前記混合手段は、前記廃水に、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集剤を更に混合させてもよい。
【0012】
即ち、本発明において、凝集補助物質としての汚泥は、廃水中の油分やSS成分を凝集剤で凝集させるプロセスに投入されることで、凝集剤による凝集作用を増強する補助剤として用いられてよい。なお、廃水中に凝集剤を投入せず、別途行われた電気分解処理において発生した汚泥のみを投入することで廃水処理を行う場合には、凝集補助物質としての汚泥は、従来の凝集剤の代替として用いられる。何れにしても、本発明によれば、廃水処理システムにおいて電気分解処理において発生した汚泥を凝集補助物質として用いることで、余剰汚泥の処理に要したコストとエネルギーの削減にとどまらず、従来の廃水処理に用いられていた凝集剤を削減することも可能である。
【0013】
また、凝集補助物質としての汚泥は、凝集剤の投入や攪拌等によって除去対象物の凝集が促進される凝集処理槽において、廃水に対して混合されてもよいが、廃水処理の流れにおけるその他の時点において投入されてもよい。例えば、本発明に係る廃水処理システムにおいて、前記混合手段は、前記廃水中に生成された凝集物を加圧浮上処理によって分離するための加圧浮上処理槽に対して、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて分離された汚泥を混合してもよいし、前記混合手段は、前記廃水中に生成された凝集物を加圧浮上処理によって分離するための加圧浮上処理槽に導入される廃水の流量
を調整するための流量調整槽に対して、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて分離された汚泥を混合してもよい。
【0014】
また、本発明に係る廃水処理システムは、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を導入するための配管を備え、前記混合手段は、前記配管を介して、前記電気分解処理システムにおいて発生した汚泥を、順次導入して前記廃水に混合させてもよい。
【0015】
このような配管を用いて、他系統の水処理システムから汚泥を直接導入するようにすることで、本発明によれば、汚泥の運搬等のコストを更に削減することが可能である。
【0016】
また、本発明に係る廃水処理システムは、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を一旦貯留するための貯留手段を更に備え、前記混合手段は、前記貯留手段によって貯留されている汚泥を、前記廃水に混合させてもよい。
【0017】
このようにして、他系統の水処理システムにおいて発生した汚泥を一旦貯留することで、本発明によれば、貯留された汚泥を必要に応じて凝集処理槽等に投入し、廃水に混合させることが可能となる。
【0018】
また、本発明は、水処理方法の発明、または凝集補助物質の発明としても把握することが可能である。例えば、本発明は、廃水中の除去対象物質を該廃水から除去するための廃水処理方法であって、前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集補助物質として該廃水に混合させる混合ステップと、前記混合ステップで前記廃水に前記汚泥が混合されることによって生成された凝集物を、該廃水から分離する分離ステップと、が実行される廃水処理方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る廃水処理システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態に係る電気分解処理システム1および廃水処理システム3の構成を示す概略図である。電気分解処理システム1は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に電気分解反応槽12および沈殿槽16を有する。また、電気分解反応槽12には、不純物含有水(被処理水)の導入のための配管11が接続されており、電気分解反応槽12と沈殿槽16とは配管15で接続されており、沈殿槽16には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管17が接続されている。
【0022】
更に、沈殿槽16には、沈殿槽16の下部に沈殿した沈殿物22を沈殿槽16内の水と共に送り出すための配管18およびポンプ23が接続されており、沈殿槽16から送り出された沈殿物を含む水は、配管18を通って外部へ送られる。以下、本実施形態において、沈殿槽16から送り出される、沈殿物を含む水を、汚泥と称する。
【0023】
電気分解反応槽12は、配管11を介して処理の対象となる処理原水が導入され、処理原水に対して電気分解処理が行われる槽である。なお、電気分解処理の対象となる不純物
含有水は、除去対象物を含む原水であり、除去対象物としては、例えば、不純物含有水に溶解した溶解性シリカが挙げられる。但し、除去対象物は溶解性シリカに限られず、本発明に係る電気分解処理システム1では、除去対象物として、シリカ、鉄、Mn(マンガン)、SS(Suspended Solids、浮遊物質)等、広範囲の物質を除去することが可能であり、除去対象物は特定の一物質に限定されるものではない。また、電気分解手段による電気分解処理は、不純物含有水に外部から電気エネルギーを与えることで電気分解反応を起こさせ、除去対象物を凝集させて分離する処理である。例えば、アルミニウムイオンなどの金属イオンを電極から溶出させることで、弱酸性の負電荷を持つシリカイオンとの反応効率を向上させることが出来る。このため、電気分解処理が行われることで生成された電気分解処理水には、除去対象物の凝集物が含まれる。
【0024】
本実施形態に係る電気分解処理では、電気分解反応槽12に設けられたアルミニウム電極(図示は省略する)から電気分解反応槽12内の水にアルミニウムイオンを溶出させることで、弱酸性の負電荷を持つシリカイオンとの反応を促進させる。また、電気分解法では、負電極からの水素ガスの発生で処理水中の水酸化物イオン量を増加させる効果により、水酸化アルミニウムによるコロイド物質の吸着が促進される。このような電気分解処理により、電気分解反応槽12において、凝集物が生成される。電気分解反応槽12において電気分解処理が施された、凝集物を含む水(以下、電気分解処理水と称する)は、配管15を経て沈殿槽16へ送られる。
【0025】
沈殿槽16は、電気分解反応槽12から送出された電気分解処理水が導入され、この電気分解処理水からの凝集物の分離が行われる槽である。本実施形態では、電気分解反応槽12から送出された電気分解処理水が、沈殿槽16内で所定時間滞留することで、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる。沈殿した凝集物は、沈殿槽16の下部に溜まることで汚泥となる。電気分解処理水が沈殿槽16内に所定時間滞留すると、凝集物は沈殿槽16の下部へ沈殿し、沈殿槽16の上部には、除去対象物(本実施形態では、シリカ等)が除去された処理水が残る。除去対象物が除去された処理水は、配管17を介して外部に送出され、様々な目的に用いることが可能である。また、汚泥が所定量以上沈殿した場合(余剰汚泥が発生した場合)には、ポンプ23を駆動することで、汚泥を外部(本実施形態では、廃水処理システム3)へ排出することが出来る。
【0026】
次に、廃水処理システム3の構成について説明する。廃水処理システム3は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に凝集処理槽33および沈殿槽36を有する。また、凝集処理槽33には、廃水(廃水処理システム3における処理原水)の導入のための配管32が接続されており、凝集処理槽33と沈殿槽36とは配管35で接続されており、沈殿槽36には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管37が接続されている。
【0027】
更に、凝集処理槽33には、電気分解処理システム1において発生した汚泥を凝集処理槽33へ導入するための配管31が接続されており、電気分解処理システム1の沈殿槽16から送り出された汚泥は、配管31を介して凝集処理槽33内の廃水に混合される。即ち、本実施形態において、配管31は、電気分解処理システム1の配管18と接続されている。また、本実施形態では、凝集処理槽33に導入された廃水と、汚泥および凝集剤との混合を促進するために、攪拌装置34による攪拌が行われる。
【0028】
また、沈殿槽36には、沈殿槽36の下部に沈殿した沈殿物40を沈殿槽36内の水と共に送り出すための配管39およびポンプ38が接続されており、沈殿槽36から送り出された沈殿物を含む水(図1に示す余剰汚泥2)は、配管39を通って外部へ送られる。
【0029】
凝集処理槽33は、配管32を介して処理の対象となる廃水が導入され、廃水に対して
除去対象物の凝集処理が行われる槽である。本実施形態に係る凝集処理では、凝集処理槽33に設けられた配管31から導入された汚泥および凝集処理槽33に投入された凝集剤によって、廃水中の除去対象物の凝集が促進される。このような凝集処理により、凝集処理槽33において、凝集物が生成される。凝集処理槽33において凝集処理が施された、凝集物を含む水(以下、凝集処理水と称する)は、配管35を経て沈殿槽36へ送られる。
【0030】
沈殿槽36は、凝集処理槽33から送出された凝集処理水が導入され、この凝集処理水からの凝集物の分離が行われる槽である。本実施形態では、凝集処理槽33から送出された凝集処理水が、沈殿槽36内で所定時間滞留することで、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる。沈殿した凝集物は、沈殿槽36の下部に溜まることで汚泥となる。凝集処理水が沈殿槽36内に所定時間滞留すると、凝集物は沈殿槽36の下部へ沈殿し、沈殿槽36の上部には、除去対象物(本実施形態では、油分やSS成分等)が除去された処理水が残る。除去対象物が除去された処理水は、配管37を介して外部に送出され、更なる処理のために生物処理場等へ送られる。また、汚泥が所定量以上沈殿した場合には、ポンプ38を駆動することで、汚泥を外部へ排出することが出来る。
【0031】
<第二の実施形態>
図2は、第二の実施形態に係る電気分解処理システム1および廃水処理システム3bの構成を示す概略図である。ここで、本実施形態に係る電気分解処理システム1の構成は、第一の実施形態と概略同様であるため、詳細な説明を省略する。但し、第一の実施形態および第二の実施形態において示した電気分解処理システム1の構成は例示であり、本実施形態に示された廃水処理システムに導入される汚泥が発生する電気分解処理システムには、その他の構成の電気分解処理システムが採用されてもよい。
【0032】
廃水処理システム3bは、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に凝集処理槽33および加圧浮上処理槽41を有する。また、凝集処理槽33には、廃水(廃水処理システム3bにおける処理原水)の導入のための配管32が接続されており、凝集処理槽33と加圧浮上処理槽41とは配管35で接続されており、加圧浮上処理槽41には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管37が接続されている。
【0033】
凝集処理槽33には、電気分解処理システム1において発生した汚泥を凝集処理槽33へ導入するための配管31が接続されているが、本実施形態に係る廃水処理システム3bは、電気分解処理システム1から配管18を介して送られた汚泥を貯留するための汚泥貯留槽42を有する。汚泥貯留槽42に貯留された汚泥は、必要に応じて稼動するポンプ43によって、配管31を介して凝集処理槽33へ送られる。即ち、本実施形態に係る廃水処理システム3bは、電気分解処理で発生する汚泥が一旦、汚泥貯留槽42に貯留されてから、必要に応じて凝集処理槽33に供給される点で、電気分解処理システム1において発生した汚泥が連続して投入される第一の実施形態に係る廃水処理システム3と異なる。
【0034】
なお、本実施形態に係る廃水処理システム3bでは、凝集物の分離方法として加圧浮上分離法を採用しており、廃水処理システム3bは、汚泥(凝集物)の分離方法として沈殿槽の代わりに加圧浮上処理槽41を有している点で、第一の実施形態に係る廃水処理システム3と異なる。加圧浮上分離法は、ガスが溶かし込まれた加圧水が加圧浮上処理槽41内で減圧された際に発生する微細な泡で凝集物を包み、浮上させることで凝集物を水から分離する、凝集物の分離手法である。但し、第一の実施形態に係る廃水処理システム3および本実施形態に係る廃水処理システム3bでは凝集物と水との分離手段として沈殿法および加圧浮上分離法が用いられているが、凝集物の分離に用いられる技術は、凝集物の分離が可能なものであればよいのであり、実施形態で示した技術に限定されるものではない

【0035】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態では、汚泥を、凝集剤に対する補助剤として用いる場合について説明したが、処理対象となる廃水の量が少ないかあるいは廃水中の除去対象物の濃度が低い場合には、汚泥の投入のみで十分に除去対象物の除去が機能する場合があり、この場合、凝集剤は不要となる。
【0036】
また、本実施形態では、汚泥を、凝集処理槽33において廃水に混合する場合について説明したが、凝集剤が投入されない工程における汚泥の投入でも、汚泥による不純物の凝集効果が期待できる。具体的には、廃水処理の各工程うち、凝集剤の投入をせずに加圧浮上処理だけで油分やSS成分(濾紙で濾過できる浮遊物質)を処理する工程において、汚泥を、例えば加圧浮上処理前の流量調整槽(図示は省略する)に投入することとしてもよい。この場合、加圧浮上処理前に凝集性を高められることから、汚泥投入後の加圧浮上処理における除去性能を向上させることができる。また、汚泥は、加圧浮上処理槽41に対して投入されてもよい。
【0037】
従来、油分やSS成分を含む廃水処理の流れは、廃水(処理原水)のスクリーン処理、凝集剤による凝集処理、凝集物の分離処理が順に施され、これらの処理が施されることで得られた処理水が下水放流されるプロセスや、廃水(処理原水)のスクリーン処理、凝集剤による凝集処理、凝集物の分離処理、凝集物が除去された水の生物処理が順に施され、これらの処理が施されることで得られた処理水が下水または河川に放流されるプロセスが一般的である。本発明における、電気分解処理で発生した汚泥は、上記例示した廃水処理のプロセスにおいて、凝集剤の補助剤、または凝集剤の代替として用いることが出来る。
【0038】
本発明は、電気分解処理によって発生した凝集物(廃水処理システムにおいて発生する凝集物とは異なる)を含む汚泥に、廃水中の除去対象物(油分や縣濁物質)を凝集させる能力が有ることが見出されたことに着目してなされたものである。そして、本実施形態に係る廃水処理システム3、3bによれば、電気分解処理によって発生した汚泥を、廃水処理において凝集補助物質として用いることで、電気分解処理によって発生する余剰汚泥の処理コストおよび処理に要するエネルギーを削減し、更には、廃水処理における凝集剤のコストを削減することが可能となる。
【実施例】
【0039】
従来技術に対する本発明の有効性を確認するため、本発明の試験システムを製作し、比較実験を行った。本実施例では、地下水に含まれるシリカ除去を主目的としたアルミニウム電極を用いた電気分解処理により発生した汚泥を、食品加工工場の有機性廃水処理における凝集処理工程に利用した。また、本実施例では、廃水量が多く使用される凝集剤の量も多いため、本発明の試験システムとして、図1を用いて説明した第一の実施形態に示した構成の廃水処理システム3を採用し、電気分解処理で発生した汚泥を凝集処理槽33に連続的に供給した。
【0040】
図3は、本実施例に係る試験システムにおいて用いられた凝集処理槽33を示す図であり、図4は、本実施例に係る試験システムの凝集処理槽33において用いられた攪拌プロペラを示す図である。試験システムでは、内寸として底面が一辺250mm(ミリメートル)の正方形、深さが400mmの立方体状の凝集処理槽33が用いられ、この凝集処理槽33に、水深270mmまで電気分解処理水を導入して試験が行われた。また、攪拌プロペラには、回転軸に直交する方向への長さ30mm、高さ25mmの羽根4枚が、回転軸周りに互いに90度の間隔をもって取り付けられているものが用いられる。
【0041】
本実施例では、試験システムにおいて、汚泥の投入を行わずに凝集剤のみで廃水処理を行った場合と、凝集剤の補助剤として汚泥を投入して廃水処理を行った場合とを比較し、同等の処理水を得るため(即ち、同様の凝集効果を得るため)に投入された凝集剤の量を比較することで、本発明による凝集剤の削減効果を確認した。汚泥を投入しない場合に所定の条件の処理水を得るために投入された凝集剤の量と、汚泥を投入した場合に同等の条件の処理水を得るために投入された凝集剤の量との比較を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示されているように、本実施例では、電気分解処理で発生した汚泥(含水率99.5%)を500g(グラム)/t(トン)の割合で投入したところ、廃水1t当たり16gの凝集剤で、汚泥を投入せずに廃水1t当たり20gの凝集剤を投入する場合と同様の処理水が得られること、即ち、汚泥の投入によって凝集剤を20%削減できることが確認できた。即ち、本実施例では、本発明に係る試験システムによれば、凝集剤のコストが20%削減され、更に従来産業廃棄物処理していた電気分解処理で発生した汚泥の処理費が削減されることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第一の実施形態に係る電気分解処理システムおよび廃水処理システムの構成を示す概略図である。
【図2】第二の実施形態に係る電気分解処理システムおよび廃水処理システムの構成を示す概略図である。
【図3】実施例に係る試験システムにおいて用いられた凝集処理槽を示す図である。
【図4】実施例に係る試験システムの凝集処理槽において用いられた攪拌プロペラを示す図である。
【図5】電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 電気分解処理システム
3 廃水処理システム
12 電気分解反応槽
22 沈殿物
33 凝集処理槽
36 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水中の除去対象物質を該廃水から除去するための廃水処理システムであって、
前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集補助物質として該廃水に混合させる混合手段と、
前記混合手段によって前記廃水に前記汚泥が混合されることによって生成された凝集物を、該廃水から分離する分離手段と、
を備える廃水処理システム。
【請求項2】
前記混合手段は、前記廃水に、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集剤を更に混合させる、
請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記混合手段は、前記廃水中に生成された凝集物を加圧浮上処理によって分離するための加圧浮上処理槽に対して、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて分離された汚泥を混合する、
請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記混合手段は、前記廃水中に生成された凝集物を加圧浮上処理によって分離するための加圧浮上処理槽に導入される廃水の流量を調整するための流量調整槽に対して、該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて分離された汚泥を混合する、
請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を導入するための配管を備え、
前記混合手段は、前記配管を介して、前記電気分解処理システムにおいて発生した汚泥を、順次導入して前記廃水に混合させる、
請求項1から4の何れか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
該廃水処理システムの外にある電気分解処理システムにおいて前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を一旦貯留するための貯留手段を更に備え、
前記混合手段は、前記貯留手段によって貯留されている汚泥を、前記廃水に混合させる、
請求項1から4の何れか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
廃水中の除去対象物質を該廃水から除去するための廃水処理方法であって、
前記廃水以外の不純物含有水を電気分解処理した処理水より分離された汚泥を、該廃水中の除去対象物の凝集を促進させるための凝集補助物質として該廃水に混合させる混合ステップと、
前記混合ステップで前記廃水に前記汚泥が混合されることによって生成された凝集物を、該廃水から分離する分離ステップと、
が実行される廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137178(P2010−137178A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316818(P2008−316818)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】