説明

廃油濾過装置

【課題】エンジンオイルの廃油、工場の切削廃油、工場の浄化槽に溜まった油、機械の作動廃油などの工業用油の廃油だけでなく、天ぷら廃油等の食用油の廃油まで幅広くその再生が容易にできる廃油濾過装置を提供する。
【解決手段】密閉した処理タンクと、該処理タンク内に収容したメッシュフィルターと、上記処理タンク内に連通する廃油供給パイプと、上記処理タンク内の底部に連通する再生油吸引パイプと、該再生油吸引パイプを通じて上記処理タンク内の再生油を吸引して外部に排出する吸引ポンプから構成され、上記メッシュフィルターが、金属メッシュを円筒状に形成した外側ケーシングおよび内側ケーシングと、これら外側ケーシングおよび内側ケーシングの間に位置する第1濾材と、該第1濾材および前記外側ケーシングの間に位置する第2濾材とによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンオイルの廃油、工場の切削廃油、工場の浄化槽に溜まった油、機械の作動廃油、天ぷら廃油、等の廃油を再生するための、廃油濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の廃油処理用フィルターとしては、廃油に含まれる切り屑を濾過する筒状フィルターがある。(例えば、特許文献1参照)
しかし、上記筒状フィルターがいかなる構造を有するか全く明らかにされていない。
【特許文献1】特開2006−123061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、エンジンオイルの廃油、工場の切削廃油、工場の浄化槽に溜まった油、機械の作動廃油などの工業用油の廃油だけでなく、天ぷら廃油等の食用油の廃油まで幅広くその再生が容易にでき、また、廃油に含まれる切り屑や天かす等の不純物を効率的に濾過することができ、さらに、不純物がフィルターの奥深くに絡み付く恐れがなく、使用後の洗浄を容易に且つ確実に行うことができる廃油濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の廃油濾過装置は、密閉した処理タンクと、該処理タンク内に収容したメッシュフィルターと、上記処理タンク内に連通する廃油供給パイプと、上記処理タンク内の底部に連通する再生油吸引パイプと、該再生油吸引パイプを通じて上記処理タンク内の再生油を吸引して外部に排出する吸引ポンプから構成され、上記メッシュフィルターが、金属メッシュを円筒状に形成した外側ケーシングおよび内側ケーシングと、これら外側ケーシングおよび内側ケーシングの間に位置する第1濾材と、該第1濾材および前記外側ケーシングの間に位置する第2濾材と、によって構成される。また、前記第1濾材が、ステンレスメッシュ等の金属メッシュを略一定の間隔で山折部および谷折部が位置するように、波形に折り曲げ形成したものを筒形に形成すると共に、上記外側ケーシングおよび内側ケーシングの間に配置され、上記山折部の稜線が上記外側ケーシングの内側面に沿って配置され、また、上記谷折部の稜線が上記内側ケーシングの外側面に沿って配置されることを特徴とする。さらに、前記第2濾材が、上記外側ケーシングおよび上記第1濾材の間に位置しており、隣接する2つの山折部と、それらの間に位置する谷折部とによって形成される空間に配設されることを特徴とする。また更に、前記第1濾材のメッシュを構成する線材の線径や空孔の径が、上記外側ケーシングのメッシュを構成する線材の線径や空孔の径より、小さいことを特徴とする。更に又、前記処理タンクの側部に、透明の管から成り、該処理タンク内の廃油のレベルや色などを監視するための廃油モニター管を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の廃油濾過装置は、エンジンオイルの廃油、工場の切削廃油、工場の浄化槽に溜まった油、機械の作動廃油などの工業用油の廃油だけでなく、天ぷら廃油等の食用油の廃油まで幅広くその再生が容易にでき、また、廃油に含まれる切り屑や天かす等の不純物を効率的に濾過することができ、さらに、不純物がフィルターの奥深くに絡み付く恐れがなく、使用後の洗浄を容易に且つ確実に行うことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明の廃油処理装置の一実施例を示す部分断面図(Aは平面図、Bは正面図)であって、1は処理タンク、2はメッシュフィルター、3は廃油供給パイプ、4は廃油ホッパー、5は再生油吸引パイプ、6は吸引ポンプ、7は電動モーター、8は再生油排出パイプ、9は廃油モニター管である。
【0007】
上記処理タンク1は、上記メッシュフィルター2を密閉状態で収容すると共に、その上側部には上記廃油供給パイプ3が接続され、底部には再生油吸引パイプ5が接続されている。
【0008】
図2に示すように、上記メッシュフィルター2は、金属メッシュを円筒状に形成した外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bと、これら外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bの上端面および下端面を覆う上部カバー2cおよび下部カバー2dと、これら外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bの間に位置する第1濾材2eと、該第1濾材2eおよび前記外側ケーシング2aの間に位置する第2濾材2fとによって構成されている。上記上部カバー2cおよび下部カバー2dは、上記処理タンク1の上端面を覆う上蓋や下端面の底板などに代えても良い。
【0009】
上記外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bは、金属メッシュを径の異なる円筒状に形成したものであり、外側ケーシング2aの内部に、内側ケーシング2bがほぼ同心円状に配置されている。なお、これらの外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bには、本実施例に使用されている金属メッシュの代わりにパンチメタルシート等のシート材を用いることが可能であるが、洗浄する際の水はけを良くするために、金属メッシュが好適である。
【0010】
上記金属メッシュを構成する線材の線径や空孔の径は、後述する第1濾材2eおよび第2濾材2fに使用されている金属メッシュを構成する線材の線径や空孔の径よりも大径のものを使用することが好ましい。
【0011】
前述のように、上部カバー2cおよび下部カバー2dは、外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bの上端面および下端面を覆うものであり、下部カバー2dの略中央部には、前記第2濾材2fおよび第1濾材2eにより濾過された再生油を取り出すための排出口2gが設けられ、上記再生油吸引パイプ5から吸引されるようになっている。
【0012】
また、これらの上部カバー2cおよび下部カバー2dは、メッシュフィルター2の使用時に、廃油が外側ケーシング2aの外部から内側ケーシング2bの内部に向かって流入するように、外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bの両端面の気密性を確保する機能を有している。
【0013】
第1濾材2eは、ステンレスメッシュを略一定の間隔で山折部および谷折部が位置するように、波形に折り曲げ形成したものを、さらに図示のように、略円筒形になるように形成したものである。この第1濾材2eは、外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bの間に配置され、上記山折部の稜線が、外側ケーシング2aの内側面に沿って配置されるようになっている。また、谷折部の稜線は、内側ケーシング2bの外側面に沿って配置されるようになっている。
【0014】
なお、この第1濾材2eに使用するステンレスメッシュを構成する線材の線径や空孔の径等の詳しい仕様については後述する。
【0015】
第2濾材2fは、外側ケーシング2aおよび第1濾材2eの間に位置しており、より詳しくは、図2に示すように、隣接する2つの山折部と、それらの間に位置する谷折部とによって形成される空間に配設されている。
【0016】
また、この第2濾材2fは、アルミニウムまたはステンレス等の金属メッシュやデミスタを前述した山折部および谷折部によって形成される空間に適合するように、折り畳むか或いはロール状に丸めることによって形成されている。
【0017】
なお、この第2濾材2fとして用いられる金属メッシュを構成する線材の線径や空孔の径は、第1濾材2fに使用されているステンレスメッシュを構成する線材の線径や空孔の径よりも大きく、なおかつ外側ケーシング2aに使用されている金属メッシュを構成する線材の線径や空孔の径よりも小さいものを使用することにより、廃油に含まれる大径の金属屑などを第1濾材2eに到達する以前に予め除去することができるから、効率的に濾過を行うことが可能となり、フィルター洗浄の際の作業工程が簡略化される。
【0018】
また、この第2濾材2fの材質は、本実施例では、洗浄やメンテナンスの容易性から酸化や腐食等に対する耐久性の高いステンレスやアルミニウム、チタン等の金属メッシュやデミスタを使用することが好ましいが、本実施例に限らず、不織布やガラス繊維等の従来の廃油用フィルターに使用されている材質の濾材を使用することも可能である。
【0019】
次に、上記第1濾材2eの線径や空孔の径等について詳述する。
第1濾材2eには、ステンレスメッシュが使用されている。ここで、平畳織とは、縦線と横線とが一定の間隔を保ち、1本ずつ相互に交わらせて織られた平織の縦線あるいは横線のいずれか一方の略平行に延出する2本の線材の側面同士が相接するように並べる織り方である。また、綾畳織とは、縦線と横線が一定の間隔を保ち、相互に2本以上ずつ乗り越し交わらせて織られた綾織の縦線あるいは横線のいずれか一方の略平行に延出する2本の線材の側面同士が相接するように並べる織り方である。
【0020】
そして、これらの畳織によってステンレスメッシュを製作する場合、平織や綾織で織られたステンレスメッシュよりも小さな空孔のステンレスメッシュを容易に制作することが可能であり、なおかつ強度も高いため、高い剛性および濾過精度が要求される廃油用フィルターの第1濾材2eとしての使用に適している。
【0021】
上記廃油供給パイプ3は廃油ホッパー4に接続され、バルブ3aにより廃油の供給がコントロールされる。
【0022】
上記再生油吸引パイプ5は吸引ポンプ6に接続され、処理された再生油を吸引し、再生油排出パイプ8から排出される。電動モーター8は、上記吸引ポンプ6を駆動する。吸引ポンプ6の動力源はこれに限定するものではない。
【0023】
上記廃油モニター管であって、その上部は処理タンク1の上部に、また、その下部は処理タンク1の下部に連通すると共に、透明の管から成り、処理タンク1内の廃油のレベルや色などが監視できるようになっている。
【0024】
以下、本実施例装置の作用について説明する。
上記廃油供給パイプ3から処理タンク1内に取り込まれた廃油は、外側ケーシング2a、第2濾材2f、第1濾材2e、内側ケーシング2bの順に各々の空孔を通過する。そして、これらの金属メッシュの空孔を通過し、内側ケーシング2bの内部に到達した廃油(再生油)は、上記吸引ポンプ6により、処理タンク1の下部に接続された再生油吸引パイプ5から吸引され、上記再生油排出口8から排出される。
【0025】
なお、本実施例のメッシュフィルター2は、目詰まりを起こすことから、必要に応じて洗浄する。洗浄に際しては、内側ケーシング2bから外側ケーシング2aに向かって水や洗浄液などを噴射する。
【0026】
次に、本発明装置に使用されるメッシュフィルターの性能評価について説明する。
本メッシュフィルターにより濾過された廃油(再生油)と灯油をそれぞれ50%の割合で混合した混合油の成分について、社団法人日本油料検定協会・分析センターにより表1のような検査結果を得た。
【表1】

【0027】
また、中央技研(株)所有のテスト用廃油バーナーにより、下記試験条件(1)および(2)の大気開放による燃焼テストを行った結果、目視にて火炎の状態を観察したところ、いずれも良好な燃焼をした。
(1)本発明装置による再生油50%+灯油50%
油圧 0.15MPA
噴霧圧 0.1MPA
燃焼時間 13分
燃焼量 約18L/H
ヒーター なし(常温)
助燃 なし
(2)本発明装置による再生油50%+灯油50%
油圧 0.15MPA
噴霧圧 0.1MPA
燃焼時間 15分
燃焼量 約16L/H
ヒーター なし(常温)
助燃 なし
【0028】
なお、本実施例において、第1濾材2eを構成する金属メッシュとして、ステンレスメッシュを使用したが、本実施例に限らず、酸化や腐食に対する耐久性の高い金属材料、例えば、アルミニウムやチタンによって構成した金属メッシュを使用することも可能である。
【0029】
また、本実施例では、第1濾材2eを1枚のステンレスメッシュによって形成しているが、本実施例に限らず、第1濾材2eを複数枚の金属メッシュを厚さ方向に重ね合わせることによって形成することも可能である。そして、その場合には、重ね合わされた金属メッシュのうち、外側ケーシング2a側の金属メッシュが内側ケーシング2b側の金属メッシより大径の空孔を有するようにすることにより、洗浄等の作業が容易になる。
【0030】
さらに、本発明のメッシュフィルター2は、上記実施例のような外側ケーシング2aおよび内側ケーシング2bを必ずしも設ける必要はなく、これらのケーシングを必ずしも設ける必要はなく、ケーシングを省略し、単に第1濾材2eを山折部の稜線がループをなすように略筒状に形成したものの上下の端面に取り付けた上部カバーおよび下部カバーもフィルターとして使用することも可能である。
【0031】
本発明のメッシュフィルター2は、必ずしも略円筒型である必要はなく、略円錐台型や、四角形や三角形の断面を有する多角形の筒型、さらには、上記のように波形に折り曲げられた金属メッシュを、その山折部の稜線が直線をなすように略板状に形成した平板型にすることも可能である。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更および改良等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の廃油処理装置の一実施例を示す部分断面平面図(A),および部分断面正面図(B)であって、(A)の処理タンクおよびメッシュフィルターは(B)のX−X線端面を示し、(B)の処理タンクおよびメッシュフィルターは縦断面を示す。
【図2】部分的に切り欠いたメッシュフィルターの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 処理タンク
2 メッシュフィルター
2a 外側ケーシング
2b 内側ケーシング
2c 上部カバー
2d 下部カバー
2e 第1濾材
2f 第2濾材
2g 排出口
3 廃油供給パイプ
4 廃油ホッパー
5 再生油吸引パイプ
6 吸引ポンプ
7 電動モーター
8 再生油排出管
9 廃油モニター管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉した処理タンクと、該処理タンク内に収容したメッシュフィルターと、上記処理タンク内に連通する廃油供給パイプと、上記処理タンク内の底部に連通する再生油吸引パイプと、該再生油吸引パイプを通じて上記処理タンク内の再生油を吸引して外部に排出する吸引ポンプから構成され、上記メッシュフィルターが、金属メッシュを円筒状に形成した外側ケーシングおよび内側ケーシングと、これら外側ケーシングおよび内側ケーシングの間に位置する第1濾材と、該第1濾材および前記外側ケーシングの間に位置する第2濾材とによって構成される、ことを特徴とする廃油濾過装置。
【請求項2】
前記第1濾材が、ステンレスメッシュ等の金属メッシュを略一定の間隔で山折部および谷折部が位置するように、波形に折り曲げ形成したものを筒形に形成すると共に、上記外側ケーシングおよび内側ケーシングの間に配置され、上記山折部の稜線が上記外側ケーシングの内側面に沿って配置され、また、上記谷折部の稜線が上記内側ケーシングの外側面に沿って配置されることを特徴とする請求項1に記載の廃油濾過装置。
【請求項3】
前記第2濾材が、上記外側ケーシングおよび上記第1濾材の間に位置しており、隣接する2つの山折部と、それらの間に位置する谷折部とによって形成される空間に配設されることを特徴とする請求項2に記載の廃油濾過装置。
【請求項4】
前記第1濾材のメッシュを構成する線材の線径や空孔の径が、上記外側ケーシングのメッシュを構成する線材の線径や空孔の径より、小さいことを特徴とする請求項2または3に記載の廃油濾過装置。
【請求項5】
前記処理タンクの側部に、透明の管から成り、該処理タンク内の廃油のレベルや色などを監視するための廃油モニター管を設けたことを特徴とする請求項1、2,3または4に記載の廃油濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−69404(P2010−69404A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238937(P2008−238937)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503399263)株式会社マルワ (1)
【Fターム(参考)】