廃液の浄化装置
【課題】簡易な構造によって厨房等から生じる廃液の浄化を行う。
【解決手段】本発明の廃液の浄化装置1は、グリストラップ2、空気供給装置3、散気管4からなる。空気供給装置1は、送風機22から送られた空気をイオン化部20で発生したマイナスイオンでイオン化し、散気管4を通じて、グリストラップ2内に供給する。イオン化部20は、電源24のマイナス側に接続された電極40と、プラス側に接続された発生筒26からなる。発生筒26と散気管4は金属製であり、これらにより、マイナスイオンを含む空気がスムーズにグリストラップ2内に供給される。
【解決手段】本発明の廃液の浄化装置1は、グリストラップ2、空気供給装置3、散気管4からなる。空気供給装置1は、送風機22から送られた空気をイオン化部20で発生したマイナスイオンでイオン化し、散気管4を通じて、グリストラップ2内に供給する。イオン化部20は、電源24のマイナス側に接続された電極40と、プラス側に接続された発生筒26からなる。発生筒26と散気管4は金属製であり、これらにより、マイナスイオンを含む空気がスムーズにグリストラップ2内に供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外食産業等から排出される廃液を浄化するための浄化装置に関する。更に詳しくは、本発明は、飲食店等の厨房の廃液から油分等を取り除き処理するための廃液の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用厨房から排出される廃液は、浄化し、それに含まれる油分等を浄化してから下水等に排水することが義務づけられている。この浄化作業には、浄化槽を利用したグリストラップを使用することが一般的である。特許文献1はその一例で、浄化槽を利用したグリストラップが開示されている(図6を参照。)。
【0003】
図6に示すように、グリストラップは、仕切り壁6により、第1処理槽と第2処理槽とに区分され、屋内側経路7と、屋外側経路10が接続されている。更に、トラップ壁を設け、第2処理槽を2つに区分している。仕切り壁6の下部が欠如された給排開口14を備えている。屋内側経路7の出口部から下向きに排液が排出され、濾過枠9によって粗ゴミが取り除かれるとともに、油分は浮いて第1処理槽の上層に溜まるようになる。この浮いた油分は、図中に16で表している。
【0004】
屋内側経路7からの排液は、グリストラップの底近くを通って、給排開口14を通って、第1処理槽から第2処理槽に入る。排液がトラップ壁を乗り越えて屋外側経路10に移動する際に、水よりも比重の重い不純物は沈殿して溜まり、排液は、屋外側経路10から排出される。一定期間が経過して調理場からの排水、排液等により、グリストラップが規定以上に汚れたり、詰まったりすると、蓋13を外して、第1処理槽、第2処理槽から油、ゴミ異物、並びに沈殿物を取り除く掃除、洗浄を行う。
【0005】
このように、一般的なグリストラップの浄化槽内は、隔壁によって、複数の滞留領域に分かれる。廃液の油水は比重に応じて分離され、比重の小さい油成分は浄化槽の上部に滞留し、これを定期的にバキューム管等によって吸い上げて回収される。更に、グリストラップには、オゾンやイオン化された空気を注入しているものも多数ある。例えば、特許文献2はその一例で、廃液槽の浄化装置を開示している。
【0006】
この装置は、オゾン、マイナスイオン等の、活性の高い気体を利用して廃液の改良を行っている。この浄化装置は、浄化槽の流路方向に沿って、複数枚設けられた隔壁間に気体を導入して曝気するための導入管と、この導入管の基端側に設けられたマイナスイオン発生装置から構成されている。マイナスイオン発生装置は、マイナスイオン発生体と、このマイナスイオン発生体によって発生したマイナスイオン気体を導入管に送出するための送出ポンプからなる。
【0007】
マイナスイオン発生装置は函体に収容し、マイナスイオン発生体をカートリッジ箱内に設け、このカートリッジ箱を函体の一部に設けられたスロットに交換自在に収容している。この装置においては、マイナスイオン発生体をできるだけ廃液に近づけることによって、曝気の作用効果の向上を図っている。また、マイナスイオン発生装置としては、多数のものが開示されている(例えば、特許文献3〜4を参照。)。これらの技術は、2つの電極間に数千Vの電圧を設けて、コロナ放電の原理を用いるものが一般的である。
【0008】
針状の負電極とグラウンド間には、所定の距離を設けてあり、無声放電により負電極から発生するイオンがグラウンド方向に向かう。このとき同時に、送風ポンプによって空気を送り込むと、このマイナスイオンを含有させて運搬することができる。これらの手法によってイオン化された空気を廃液槽に送り込むことが、特許文献2に開示された廃液槽の浄化装置の主旨である。
【特許文献1】特開2002−213013号公報
【特許文献2】特開2006−314985号公報
【特許文献3】特開2004−79388号公報
【特許文献4】特開2002−198160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の浄化装置において、発生させたマイナスイオンを効率よく廃液に注入するためには、様々な課題がある。マイナスイオンはイオン発生体からの距離が離れるに従ってその効果が下がる傾向にあるため、イオン発生体と廃液との距離が短いことが好ましいとされている。特許文献2の場合は、イオン発生体と廃液との距離を短くするために、イオン発生体を導入管の内部に設置している。このため、装置設計や実際の設置工事において、自由度が相当に制限されることになる。
【0010】
更に、マイナスイオンを廃液までに運ぶための経路の配管は、従来は、不導体の材料で製作されることが一般的であった。このように、不導体の材料で作ると、管内に帯電がおきて経路上にマイナスイオンの滞留がおき、それがマイナスイオンの発生を抑制してしまう。例えば、マイナスイオン発生器で発生させたマイナスイオンを、塩化ビニル樹脂製の管で1メータ運び、イオン測定器で測定すると、マイナスイオンが全く検出されないこともある。
【0011】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、発生させたマイナスイオンを廃液に効率よく導く廃液の浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の廃液の浄化装置は、空気を供給するための送風手段と、マイナスイオンを発生するためのイオン発生手段と、前記マイナスイオン含む前記空気を送風するための散気管と、前記散気管から前記マイナスイオンを含む前記空気を注入して、廃液の浄化を行うために前記廃液を蓄え処理するための処理槽とからなる廃液の浄化装置であって、前記イオン発生手段は、コロナ放電で前記マイナスイオンを発生させるために、電源のマイナス電極に接続された1つ又は複数の電極と、前記電源のプラス電極に接続され、導電性のある材質で形成され内部に区画された空間を備えた発生筒とからなることを特徴とする。
【0013】
本発明の廃液の浄化装置は、前記電極と前記発生筒との間に印加される電圧は、3000V以上3200V以下の直流電圧であることを特徴とする。前記電極の材質は、タングステン線又は炭素繊維であっても良い。また、前記散気管は、前記散気管の末端まで導電性を確保するために導電性の材料で形成され、かつ前記散気管が2以上の複数の部材からなるとき、前記部材の間の接続に導電性のある接続部材を有しているものであっても良い。
【0014】
前記廃液の中に入っている前記散気管の部分は、前記空気を噴出するために下方を向いて形成された1以上の貫通孔である小孔が形成されていることを特徴とする。前記発生筒は円筒状に形成され、前記電極は前記円筒の中心線付近に位置することを特徴とする。
【0015】
前記発生筒は球状に形成され、前記電極は前記球の中心点付近に位置することを特徴とする。前記発生筒は箱型に形成され、前記電極は前記箱型の中心付近に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の効果を奏する。
本発明の廃液の浄化装置により、飲食店の廃液を十分に浄化することができた。また、悪臭を取り除くこともできた。
また、発生筒と散気管が導電性の部材のため、高濃度のマイナスイオンを含有した空気を廃液に導入することが可能となった。
【0017】
更に、マイナスイオン発生手段と処理槽との間に相当な距離を持つことが可能となり、装置設計の自由度が上がった。また更に、構造も簡単で安価な部品から構成されているため、装置自体を低価格で提供でき、運用時のメンテナンスも楽になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔装置の全体の構造〕
本願発明の概要を、図面を参照しながら説明する。図1には、本願発明による廃液の浄化装置1の概要を図示している。本願発明の廃液の浄化装置1は、飲食店等から排出される廃液、雑水等を浄化するためのものである。飲食店等から排出される廃液、雑水などを、以下総称して廃液という。廃液は生ゴミ、洗剤、油分等を含む。
【0019】
廃液の浄化は、具体的には、グリストラップ2を用いて廃液の成分を比重に応じて分離する。更に、廃液中にイオン化された空気を曝気して、廃液の浄化作業を促進する。この廃液の浄化装置1は、グリストラップ2、空気供給装置3、及び散気管4からなる。空気供給装置3は、マイナスイオンを含む空気をグリストラップ2に提供するための装置である。空気供給装置3から排出される空気は、散気管4を通って、グリストラップ2内に供給される。
【0020】
グリストラップ2は、処理槽12を備えている。処理槽12は、仕切壁6により、複数の領域に分離されている。図1の例は、3枚の仕切壁6によって、グリストラップ2を4つの領域に分離している。仕切壁6の形状及び、数は、限定されるものではなく、廃液の性質、成分によって、廃液の浄化基準によって、様々である。
【0021】
グリストラップ2には、廃液が供給口8から供給され、処理槽12内の複数の領域を通って浄化され、排出口10から排出される。仕切壁6の下部が欠如された給排開口14を備えている。グリストラップ2に供給された廃液は、処理槽12の底近くを通り、この給排開口14を通って、隣の領域に供給される。各領域においては、生ゴミ、洗剤、油分がその比重によって分離される。比重の小さい油分は、浮いて処理槽12の上層に溜まる。
【0022】
図中、16は、浮いている油分を表している。そして、各領域において、散気管4は、マイナスイオンによってイオン化された空気を供給する。この空気は、各領域内を撹乱させ、廃液に含まれる生ゴミ、洗剤、油分等の分離、その処理を促進する。それでもどうしても分解できないカスが残る。この装置を稼動させて一定期間が経過したのち、グリストラップ2を掃除することが好ましい。
【0023】
〔空気供給装置3〕
空気供給装置3は、空気をイオン化するためのイオン化部20、イオン化部20に空気を供給するための送風機22、およびイオン化部20に電力を供給する電源24からなる。図1に図示するように、イオン化部20、送風機22、電源24は、筐体3aに収納されている。この筐体3aからなる全体を、本願発明の廃液の浄化装置1の本体とも言う。イオン化部20には散気管4が機械的にかつ電気的に接続される。
【0024】
筐体3aは、後述する理由により、導電性の材料できていることが好ましい。送風機22は、空気を供給するものであれば、任意の装置を利用することができる。本願発明では、既存の送風機を利用するので、その詳細な構造及び、動作については省略する。なお、送風性能は、後述するが、毎分80〜120Lが適当である。また、電源24は、必要な電圧をイオン化部20に供給できるものであれば、任意の電源装置を用いることができる。
【0025】
例えば、商用の交流電源を増圧して直流電源に変換して供給しても良い。また、バッテリー等の直流電源を用いても良い。したがって、その詳細な構造及び、動作については省略する。なお、供給電圧は、後述するが、直流3000〜3200ボルトが適当である。空気供給装置3は、イオン化部20で発生させたマイナスイオンで、送風機22から供給された空気をイオン化して、散気管4へ排出するものである。
【0026】
図2は、空気供給装置3内のイオン化部20の概観を図示している。図3は、同じくイオン化部20の断面図を図示している。イオン化部20は、金属の発生筒26と、これに格納されるリード線32および電極40その他からなる。発生筒26は箱型に形成され供給口28と排出口30とが設けられている。供給口28には送風機22が連結され、排出口30には散気管4が連結されている。送風機22からの空気は、発生筒26内で、電極40から発生するマイナスイオンを含有したのち、排出口30を通じて散気管4に排出される。
【0027】
次にイオン化部20の内部の詳細について説明する。発生筒26は導電性の金属部材で箱型に形成され、上部の穴36からリード線32が挿入されている。イオン化部20は密閉構造となっており、リード線32と発生筒26との間はシール部材38でシールされている。リード線32は、コード24aを介して電源24のマイナス電極側に接続されている。発生筒26は、コード24bを介して電源24のプラス電極側に接続されている。
【0028】
これらにより、マイナス電極をプラス電極が完全に内包する構造となっている。コード24bは発生筒26直接にではなく、これを固定している筐体3aに接続されていることが好ましい。つまり、発生筒26と電気に接続されている筐体3aに接続されていることが好ましい。こうすることで、発生筒26内の各部位における等電位性を高めている。リード線32の先端には、複数本の電極40が付いている。この電極40は、細い炭素繊維、又は、タングステン線を集合して作られている。つまり、電極40は、タングステン線又は炭素繊維を多数束ねて形成されたものであることが好ましい。電極固定具39は電極40とリード線32を、導電性を確保しつつ固定している。
【0029】
電極40は先端が尖っており、おもにこの尖った部分から、コロナ放電の原理によりマイナスイオンが空気中に放出される。イオン発生の原理は、直流電源によるコロナ放電の原理を用いている。コロナ放電とは、尖った電極(針電極)の周囲に不均一な電界が生じることで起こる持続的な放電のことをいう。これにより、気体中にイオンを増加させることができるので、集塵機などに応用されている。なお、コロナ放電によって流れる電流は極めて小さく、数μA程度でしかない。
【0030】
電極40は電源24のマイナス側に、発生筒26は電源24のプラス側に電気的に接続され、両者の間には3000〜3200ボルトの直流電圧が印加されている。しかし、両者間は空気で絶縁され、適当な距離を保つかぎり、この絶縁が破れることはない。よって、電極40の先端より、マイナスイオンが大量かつ持続的に放出される。発生筒26内には供給口28を通じて送風機22からの加圧された空気が大量に流入する。
【0031】
この空気は狭い供給口28から広い発生筒26内に一気に展開するため乱流となり、電極40から放出されたマイナスイオンを発生筒26内のあちこちに運ぶ。そして、その一部は内壁に吸着される。ここで、もしも発生筒26が一部でも不導体で形成されていれば、その部分にたちどころに帯電現象が起こり、発生筒内26でのマイナスイオンの滞留を招く。そのことが電極40からのマイナスイオンの発生を抑制し、排出口30からの空気のマイナスイオン濃度が著しく下がってしまう。
【0032】
本願発明では、発生筒26は導通体である金属で形成されており、電源24のプラス側に電気的に接続されている。このため、内壁に接触したマイナスイオンは、自由電子となって電源24に向かって流れるため、接触箇所での帯電現象がおきず、発生筒26内でのマイナスイオンの滞留もおこらない。したがって、電極40からのマイナスイオンの発生を抑制することがない。従って、発生したマイナスイオンは、多少は目減りしたとしてもその程度は少なく、その結果、大量のマイナスイオンを排出口30から送出することができる。
【0033】
マイナスイオンは、もともと非常に不安定で崩壊しやすい物質である。発生筒26内部での空気の乱流によっても減るし、発生筒26内の壁面に吸着されることでも減る。よって、これらの目減り分を考慮して、マイナスイオンの発生量を十分確保するために、電極間に相当の電圧を印加する必要がある。種々の研究によれば、直流3000〜3200ボルトが適当である。これ以上電圧を上げるとオゾンが発生するため、不適となる。
【0034】
発生筒26には、リード線32を発生筒26内に入れるための1以上の穴36が空いている。発生筒26の上面には固定板34があり、止ネジ35等で固定している。固定板34には孔36が空いており、この孔36からリード線32が発生筒26内に入る。また、リード線32が動かないようにシール部材38を備えている。シール部材38は、絶縁体であることが好ましい。リード線32は、コード24aを介して電源24のマイナス側に接続される。発生筒26は、コード24bを介して電源24のプラス側に接続される。
【0035】
リード線32と発生筒26の間は、ある程度の距離を有する必要がある。後述の実施例においては、この距離は、具体的には2〜3cmの距離であった。印加電圧がもっと高くなれば、絶縁を保つためにこの距離がもっと増大する。この距離が短いと、絶縁が破れて火花放電を生じる。その結果、コロナ放電が抑制されるため、マイナスイオンは発生しなくなる。むろん、電極40と、発生筒26の各内壁との距離は、できるだけ等距離にすることが好ましく、電極40は、発生筒26内の空間の真ん中に位置するように設定することが好ましい。
【0036】
本発明の装置1は、長時間連続して使用するものである。このために、発生筒26は、送風機22からの強い空気圧に耐える必要がある。例えば、長時間の間に相当な空気圧の空気を送り込むと、発生筒26の疲労、発熱も考慮しなければならない。発生筒26は、金属でできているので、このような疲労に十分に耐え、対熱効果も十分である。更に、金属の発生筒に、既存の放熱装置を設けてもよい。
【0037】
〔実例の例示〕
更に、本願発明のイオン化部20の実例から例示する。しかし、この実例は、本実施の形態を限定するものではない。図2、3に図示した発生筒26の大きさは、高さ5cm、長さ5cm、幅10cmであった。この寸法の発生筒26から出てくるマイナスイオンの測定を行なった。なお、イオン測定器には、株式会社佐藤商事(所在地:日本国神奈川県横浜市)製の空気イオン測定器AIC-2000を使用した。マイナスイオンを発生させるのにもっとも適した電圧は、直流3000Vから3200Vである。
【0038】
これ以下の電圧だとマイナスイオン発生量が不足し、これ以上だとオゾンが発生する。加えて、花火放電を発生する。したがって、この範囲の電圧が最適である。これにより、1本の電極40当たり、3000万個/ccのマイナスイオンを発生させることができた。図3に図示したように、リード線32を3本使用した場合は、9000万個/ccのマイナスイオンを生成することができた。このときの送風機22の送風量は、毎分120Lが適当であった。また、リード線32を2本使用した場合は、6000万個/ccのマイナスイオンを生成することができた。このときの送風機22の送風量は、毎分80Lが適当であった。リード線32と発生筒26の間は、2〜3cmの距離であった。グリストラップ2の処理槽12の容量は、170L、300Lが一般的である。
【0039】
〔散気管4〕
図1に示すように、発生筒26に接続された散気管4には、複数の支管4aが接続されている。各支管4aは、処理槽12の複数の領域に設置される。支管4aの先端部分には、複数の小孔17がある。空気供給装置3から供給されたイオン化空気は、散気管4に入り、支管4aそれぞれに供給される。最後は、小孔17から排出されて廃液中に出る。小孔17から出るイオン化空気は、大きな圧力で廃液をかく乱させ、廃液の浄化を促進する。
【0040】
散気管4は、内径13mmのステンレス製の管であり、基本の長さが500mmである。支管4aも同様にステンレス製の管である。本体と散気管4との接続にはジャバラ方式のフレキシブル管(例えば、1000mm、600mm長さのもの)を使用することもできる。また、これらの接続部材には、L型のもの、T型のもの、単に延長するためのものなどがある。これらの部材を組み合わせることで、処理槽12の形状や大きさに応じた支管4aを形成することができる。
【0041】
また、支管4aの終端等には、廃水の浸入を防ぐためのターミナルキャップを嵌め込むものとする。これらの接続部材は、ねじ込み式の接合であることが好ましい。接続部材の内部にはゴムリングが入っており、気密性および防水性は確保されている。しかし、接続部材の外側は金属部材のため、散気管4の末端までの導電性は確保されている。このような接続構造のため、高濃度のマイナスイオンを散気管4の末端まで運ぶことができる。
【0042】
散気管4の材料には導電性の金属材料を採用し、発生筒26を通じて電源24のプラス側に電気的に接続している。このようにすると、散気管4の内壁に接触したマイナスイオンは、自由電子となって電源24に向かって流れるため、接触箇所での帯電現象を生じない。従って、マイナスイオンは、多少目減りはしたとしても、そこで滞留することはない。また、イオン化部20でのマイナスイオンの発生を抑制することもない。
【0043】
これらの作用は発生筒26とまったく同様のメカニズムである。これらの作用により、発生筒26から出たマイナスイオンがスムーズに廃液までに届く。したがって、散気管4、及びその支管4aは、全て導電性の金属管でなければならない。もしも途中に不導体管、例えば、塩化ビニル、シリコンパイプなどがあると、その部分が帯電し、そこでマイナスイオンの滞留が起きる。その結果、その先に金属管を繋いでもマイナスイオンは一切出てこなくなり、空気ばかりが流れてくるだけである。
【0044】
どうしても途中に不導体管を使う必要のある場合には、両端の金属管を導通部材で電気的に接続してやる必要がある。同じ理由で散気管4と発生筒26との接続部分も、非金属の部材を介さない接続が望ましい。このようにすることで、マイナスイオンの長距離搬送が可能となり、グリストラップ装置設計の自由度が上がる。
【0045】
支管4aの水中部分には1以上の小孔17を有する。図4は、支管4aの断面図の例を図示している。図4は、2つの小孔17が同一断面に設けられている例である。図5は、支管4aの長手方向に距離をおいて、小孔17が設けられている例である。マイナスイオンを含む空気は、この小孔17から廃液に導入される。空気は、大きな圧力で廃液に注入され、廃液の中をかく乱させる。
【0046】
小孔17の直径は1mmである。図4に示すように、小孔17の中心点と、支管4aの断面の中心点を結ぶ線は水平線に対し、約45度の角度を形成している。この45度という角度に大きな意味がある。このように、小孔17を下側へ向けて設けると、処理槽12の底近辺を効率的にかく乱させることができる。また、送風機が停止した時にも、支管4a内への水の浸入量が少なくて済む。
【0047】
なお、小孔17の間隔は、図5に示すとおり支管4aの長手方向に沿って30mm間隔である。また、小孔17は、図4に示すように同一断面に複数個のものを設ける必要はなく、位置をずらして設けても良い。なお、本願発明の廃液の浄化装置1は、稼動中も稼動していないときにも、小孔17から廃液が支管4aの中に入らないことが望ましい。よって、送風機22は、停止中に水の浸入を防ぐために、逆止弁を備えていることが望ましい。
【0048】
また、散気管4も発生筒26と同様に、長時間連続して使用するものである。このために、相当な量の空気圧に耐える必要がある。例えば、長時間の間に相当な空気圧の空気を送り込むと、散気管4の疲労、発熱なども考慮しなければならない。散気管4は、金属、例えばステンレスでできているので、十分に疲労に耐え、対熱効果も十分である。また、ステンレスであるため、水中でも腐食することが少ない。それゆえ、メンテナンスなしに長時間にわたって使用することができる。
【0049】
〔装置全体としての効果〕
この廃液の浄化装置全体としての効果を、廃液に含まれる油分を測定することで確認することができる。本発明の廃液の浄化装置1を設置した複数の飲食店において、その飲食店の廃液を処理した廃水のノルマルヘキサン値を測定した。その結果のデータを以下の表1に示す。表1の第1欄は、排液の種類、その飲食店の種類、所在地等を示している。第2欄は廃液の浄化装置1を設置した日から、点検日までの日数である運転日数を示している。
【0050】
第3欄、第4欄は、ノルマルヘキサン値の測定データを表している。第3欄は廃液の浄化装置1を設置する前のノルマルヘキサン値の測定値を、第4欄は設置後一定日数たった点検日での測定値を表している。これらの数値は、「排水基準を定める省令の規定に基づく環境大臣が定める排水基準に係る検定方法」(公布:昭和49年9月30日の環境庁告示64号、最終改定:平成13年6月13日の環境省告示37号)に従って、ノルマルヘキサン抽出物質含有量を測定したものである。
第5欄は、ノルマルヘキサン値の改善倍率を示している。改善倍率は、単純に、第3欄の値を第4欄の値に割った値である。
【0051】
【表1】
【0052】
これらの測定結果によれば、本願発明の廃液の浄化装置1を導入することにより、ノルマルヘキサン抽出物質含有量などの排水の汚染度を示す指標が、大幅に低下していることが分かる。また、マイナスイオンは防臭効果も高い。人体にも害がないので処理槽12の清掃作業、メンテナンスも楽である。更に、本願発明の浄化装置1は、既設の浄化槽に、簡単な工事をするだけで適用できるという利点を有する。
【0053】
〔他の実施の形態〕
イオン化部20の発生筒26は、内部が円筒状に形成されても良い。そこに、数本のリード線32を差し込む。各リード線32の先端にある電極40が、円筒の中心部分に位置するように配置すれば、発生筒26のどの内壁に対しても、十分な距離を保つことができる。このことにより、花火放電の発生を未然に抑止でき、効率的にマイナスイオンを発生させることができる。なお、リード線32が一本のみの場合は、イオン化部20の発生筒26は、球状としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の装置は、飲食産業の廃水処理に利用すると良い。更に、家庭、工場等から排出される廃液の浄化に利用されても良い。更に、 本発明の装置は、既設の浄化槽に、簡単な工事をするだけで適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の廃液の浄化装置の概略図である。
【図2】本発明の廃液の浄化装置のイオン化部の概観図である。
【図3】本発明の廃液の浄化装置のイオン化部の断面図である。
【図4】本発明の廃液の浄化装置の散気管の支管の断面図の例を示す図である。
【図5】本発明の廃液の浄化装置の散気管の支管に小孔を設けた例を示す図である。
【図6】従来のグリストラップの概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1…廃液の浄化装置
2…グリストラップ
3…空気供給装置
4…散気管
6…仕切壁
17…小孔
12…処理槽
16…浮いている油分
20…イオン化部
22…送風機
24…電源
26…発生筒
28…供給口
32…リード線
34…固定板
30…排出口
38…シール部材
40…電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、外食産業等から排出される廃液を浄化するための浄化装置に関する。更に詳しくは、本発明は、飲食店等の厨房の廃液から油分等を取り除き処理するための廃液の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用厨房から排出される廃液は、浄化し、それに含まれる油分等を浄化してから下水等に排水することが義務づけられている。この浄化作業には、浄化槽を利用したグリストラップを使用することが一般的である。特許文献1はその一例で、浄化槽を利用したグリストラップが開示されている(図6を参照。)。
【0003】
図6に示すように、グリストラップは、仕切り壁6により、第1処理槽と第2処理槽とに区分され、屋内側経路7と、屋外側経路10が接続されている。更に、トラップ壁を設け、第2処理槽を2つに区分している。仕切り壁6の下部が欠如された給排開口14を備えている。屋内側経路7の出口部から下向きに排液が排出され、濾過枠9によって粗ゴミが取り除かれるとともに、油分は浮いて第1処理槽の上層に溜まるようになる。この浮いた油分は、図中に16で表している。
【0004】
屋内側経路7からの排液は、グリストラップの底近くを通って、給排開口14を通って、第1処理槽から第2処理槽に入る。排液がトラップ壁を乗り越えて屋外側経路10に移動する際に、水よりも比重の重い不純物は沈殿して溜まり、排液は、屋外側経路10から排出される。一定期間が経過して調理場からの排水、排液等により、グリストラップが規定以上に汚れたり、詰まったりすると、蓋13を外して、第1処理槽、第2処理槽から油、ゴミ異物、並びに沈殿物を取り除く掃除、洗浄を行う。
【0005】
このように、一般的なグリストラップの浄化槽内は、隔壁によって、複数の滞留領域に分かれる。廃液の油水は比重に応じて分離され、比重の小さい油成分は浄化槽の上部に滞留し、これを定期的にバキューム管等によって吸い上げて回収される。更に、グリストラップには、オゾンやイオン化された空気を注入しているものも多数ある。例えば、特許文献2はその一例で、廃液槽の浄化装置を開示している。
【0006】
この装置は、オゾン、マイナスイオン等の、活性の高い気体を利用して廃液の改良を行っている。この浄化装置は、浄化槽の流路方向に沿って、複数枚設けられた隔壁間に気体を導入して曝気するための導入管と、この導入管の基端側に設けられたマイナスイオン発生装置から構成されている。マイナスイオン発生装置は、マイナスイオン発生体と、このマイナスイオン発生体によって発生したマイナスイオン気体を導入管に送出するための送出ポンプからなる。
【0007】
マイナスイオン発生装置は函体に収容し、マイナスイオン発生体をカートリッジ箱内に設け、このカートリッジ箱を函体の一部に設けられたスロットに交換自在に収容している。この装置においては、マイナスイオン発生体をできるだけ廃液に近づけることによって、曝気の作用効果の向上を図っている。また、マイナスイオン発生装置としては、多数のものが開示されている(例えば、特許文献3〜4を参照。)。これらの技術は、2つの電極間に数千Vの電圧を設けて、コロナ放電の原理を用いるものが一般的である。
【0008】
針状の負電極とグラウンド間には、所定の距離を設けてあり、無声放電により負電極から発生するイオンがグラウンド方向に向かう。このとき同時に、送風ポンプによって空気を送り込むと、このマイナスイオンを含有させて運搬することができる。これらの手法によってイオン化された空気を廃液槽に送り込むことが、特許文献2に開示された廃液槽の浄化装置の主旨である。
【特許文献1】特開2002−213013号公報
【特許文献2】特開2006−314985号公報
【特許文献3】特開2004−79388号公報
【特許文献4】特開2002−198160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の浄化装置において、発生させたマイナスイオンを効率よく廃液に注入するためには、様々な課題がある。マイナスイオンはイオン発生体からの距離が離れるに従ってその効果が下がる傾向にあるため、イオン発生体と廃液との距離が短いことが好ましいとされている。特許文献2の場合は、イオン発生体と廃液との距離を短くするために、イオン発生体を導入管の内部に設置している。このため、装置設計や実際の設置工事において、自由度が相当に制限されることになる。
【0010】
更に、マイナスイオンを廃液までに運ぶための経路の配管は、従来は、不導体の材料で製作されることが一般的であった。このように、不導体の材料で作ると、管内に帯電がおきて経路上にマイナスイオンの滞留がおき、それがマイナスイオンの発生を抑制してしまう。例えば、マイナスイオン発生器で発生させたマイナスイオンを、塩化ビニル樹脂製の管で1メータ運び、イオン測定器で測定すると、マイナスイオンが全く検出されないこともある。
【0011】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、発生させたマイナスイオンを廃液に効率よく導く廃液の浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の廃液の浄化装置は、空気を供給するための送風手段と、マイナスイオンを発生するためのイオン発生手段と、前記マイナスイオン含む前記空気を送風するための散気管と、前記散気管から前記マイナスイオンを含む前記空気を注入して、廃液の浄化を行うために前記廃液を蓄え処理するための処理槽とからなる廃液の浄化装置であって、前記イオン発生手段は、コロナ放電で前記マイナスイオンを発生させるために、電源のマイナス電極に接続された1つ又は複数の電極と、前記電源のプラス電極に接続され、導電性のある材質で形成され内部に区画された空間を備えた発生筒とからなることを特徴とする。
【0013】
本発明の廃液の浄化装置は、前記電極と前記発生筒との間に印加される電圧は、3000V以上3200V以下の直流電圧であることを特徴とする。前記電極の材質は、タングステン線又は炭素繊維であっても良い。また、前記散気管は、前記散気管の末端まで導電性を確保するために導電性の材料で形成され、かつ前記散気管が2以上の複数の部材からなるとき、前記部材の間の接続に導電性のある接続部材を有しているものであっても良い。
【0014】
前記廃液の中に入っている前記散気管の部分は、前記空気を噴出するために下方を向いて形成された1以上の貫通孔である小孔が形成されていることを特徴とする。前記発生筒は円筒状に形成され、前記電極は前記円筒の中心線付近に位置することを特徴とする。
【0015】
前記発生筒は球状に形成され、前記電極は前記球の中心点付近に位置することを特徴とする。前記発生筒は箱型に形成され、前記電極は前記箱型の中心付近に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の効果を奏する。
本発明の廃液の浄化装置により、飲食店の廃液を十分に浄化することができた。また、悪臭を取り除くこともできた。
また、発生筒と散気管が導電性の部材のため、高濃度のマイナスイオンを含有した空気を廃液に導入することが可能となった。
【0017】
更に、マイナスイオン発生手段と処理槽との間に相当な距離を持つことが可能となり、装置設計の自由度が上がった。また更に、構造も簡単で安価な部品から構成されているため、装置自体を低価格で提供でき、運用時のメンテナンスも楽になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔装置の全体の構造〕
本願発明の概要を、図面を参照しながら説明する。図1には、本願発明による廃液の浄化装置1の概要を図示している。本願発明の廃液の浄化装置1は、飲食店等から排出される廃液、雑水等を浄化するためのものである。飲食店等から排出される廃液、雑水などを、以下総称して廃液という。廃液は生ゴミ、洗剤、油分等を含む。
【0019】
廃液の浄化は、具体的には、グリストラップ2を用いて廃液の成分を比重に応じて分離する。更に、廃液中にイオン化された空気を曝気して、廃液の浄化作業を促進する。この廃液の浄化装置1は、グリストラップ2、空気供給装置3、及び散気管4からなる。空気供給装置3は、マイナスイオンを含む空気をグリストラップ2に提供するための装置である。空気供給装置3から排出される空気は、散気管4を通って、グリストラップ2内に供給される。
【0020】
グリストラップ2は、処理槽12を備えている。処理槽12は、仕切壁6により、複数の領域に分離されている。図1の例は、3枚の仕切壁6によって、グリストラップ2を4つの領域に分離している。仕切壁6の形状及び、数は、限定されるものではなく、廃液の性質、成分によって、廃液の浄化基準によって、様々である。
【0021】
グリストラップ2には、廃液が供給口8から供給され、処理槽12内の複数の領域を通って浄化され、排出口10から排出される。仕切壁6の下部が欠如された給排開口14を備えている。グリストラップ2に供給された廃液は、処理槽12の底近くを通り、この給排開口14を通って、隣の領域に供給される。各領域においては、生ゴミ、洗剤、油分がその比重によって分離される。比重の小さい油分は、浮いて処理槽12の上層に溜まる。
【0022】
図中、16は、浮いている油分を表している。そして、各領域において、散気管4は、マイナスイオンによってイオン化された空気を供給する。この空気は、各領域内を撹乱させ、廃液に含まれる生ゴミ、洗剤、油分等の分離、その処理を促進する。それでもどうしても分解できないカスが残る。この装置を稼動させて一定期間が経過したのち、グリストラップ2を掃除することが好ましい。
【0023】
〔空気供給装置3〕
空気供給装置3は、空気をイオン化するためのイオン化部20、イオン化部20に空気を供給するための送風機22、およびイオン化部20に電力を供給する電源24からなる。図1に図示するように、イオン化部20、送風機22、電源24は、筐体3aに収納されている。この筐体3aからなる全体を、本願発明の廃液の浄化装置1の本体とも言う。イオン化部20には散気管4が機械的にかつ電気的に接続される。
【0024】
筐体3aは、後述する理由により、導電性の材料できていることが好ましい。送風機22は、空気を供給するものであれば、任意の装置を利用することができる。本願発明では、既存の送風機を利用するので、その詳細な構造及び、動作については省略する。なお、送風性能は、後述するが、毎分80〜120Lが適当である。また、電源24は、必要な電圧をイオン化部20に供給できるものであれば、任意の電源装置を用いることができる。
【0025】
例えば、商用の交流電源を増圧して直流電源に変換して供給しても良い。また、バッテリー等の直流電源を用いても良い。したがって、その詳細な構造及び、動作については省略する。なお、供給電圧は、後述するが、直流3000〜3200ボルトが適当である。空気供給装置3は、イオン化部20で発生させたマイナスイオンで、送風機22から供給された空気をイオン化して、散気管4へ排出するものである。
【0026】
図2は、空気供給装置3内のイオン化部20の概観を図示している。図3は、同じくイオン化部20の断面図を図示している。イオン化部20は、金属の発生筒26と、これに格納されるリード線32および電極40その他からなる。発生筒26は箱型に形成され供給口28と排出口30とが設けられている。供給口28には送風機22が連結され、排出口30には散気管4が連結されている。送風機22からの空気は、発生筒26内で、電極40から発生するマイナスイオンを含有したのち、排出口30を通じて散気管4に排出される。
【0027】
次にイオン化部20の内部の詳細について説明する。発生筒26は導電性の金属部材で箱型に形成され、上部の穴36からリード線32が挿入されている。イオン化部20は密閉構造となっており、リード線32と発生筒26との間はシール部材38でシールされている。リード線32は、コード24aを介して電源24のマイナス電極側に接続されている。発生筒26は、コード24bを介して電源24のプラス電極側に接続されている。
【0028】
これらにより、マイナス電極をプラス電極が完全に内包する構造となっている。コード24bは発生筒26直接にではなく、これを固定している筐体3aに接続されていることが好ましい。つまり、発生筒26と電気に接続されている筐体3aに接続されていることが好ましい。こうすることで、発生筒26内の各部位における等電位性を高めている。リード線32の先端には、複数本の電極40が付いている。この電極40は、細い炭素繊維、又は、タングステン線を集合して作られている。つまり、電極40は、タングステン線又は炭素繊維を多数束ねて形成されたものであることが好ましい。電極固定具39は電極40とリード線32を、導電性を確保しつつ固定している。
【0029】
電極40は先端が尖っており、おもにこの尖った部分から、コロナ放電の原理によりマイナスイオンが空気中に放出される。イオン発生の原理は、直流電源によるコロナ放電の原理を用いている。コロナ放電とは、尖った電極(針電極)の周囲に不均一な電界が生じることで起こる持続的な放電のことをいう。これにより、気体中にイオンを増加させることができるので、集塵機などに応用されている。なお、コロナ放電によって流れる電流は極めて小さく、数μA程度でしかない。
【0030】
電極40は電源24のマイナス側に、発生筒26は電源24のプラス側に電気的に接続され、両者の間には3000〜3200ボルトの直流電圧が印加されている。しかし、両者間は空気で絶縁され、適当な距離を保つかぎり、この絶縁が破れることはない。よって、電極40の先端より、マイナスイオンが大量かつ持続的に放出される。発生筒26内には供給口28を通じて送風機22からの加圧された空気が大量に流入する。
【0031】
この空気は狭い供給口28から広い発生筒26内に一気に展開するため乱流となり、電極40から放出されたマイナスイオンを発生筒26内のあちこちに運ぶ。そして、その一部は内壁に吸着される。ここで、もしも発生筒26が一部でも不導体で形成されていれば、その部分にたちどころに帯電現象が起こり、発生筒内26でのマイナスイオンの滞留を招く。そのことが電極40からのマイナスイオンの発生を抑制し、排出口30からの空気のマイナスイオン濃度が著しく下がってしまう。
【0032】
本願発明では、発生筒26は導通体である金属で形成されており、電源24のプラス側に電気的に接続されている。このため、内壁に接触したマイナスイオンは、自由電子となって電源24に向かって流れるため、接触箇所での帯電現象がおきず、発生筒26内でのマイナスイオンの滞留もおこらない。したがって、電極40からのマイナスイオンの発生を抑制することがない。従って、発生したマイナスイオンは、多少は目減りしたとしてもその程度は少なく、その結果、大量のマイナスイオンを排出口30から送出することができる。
【0033】
マイナスイオンは、もともと非常に不安定で崩壊しやすい物質である。発生筒26内部での空気の乱流によっても減るし、発生筒26内の壁面に吸着されることでも減る。よって、これらの目減り分を考慮して、マイナスイオンの発生量を十分確保するために、電極間に相当の電圧を印加する必要がある。種々の研究によれば、直流3000〜3200ボルトが適当である。これ以上電圧を上げるとオゾンが発生するため、不適となる。
【0034】
発生筒26には、リード線32を発生筒26内に入れるための1以上の穴36が空いている。発生筒26の上面には固定板34があり、止ネジ35等で固定している。固定板34には孔36が空いており、この孔36からリード線32が発生筒26内に入る。また、リード線32が動かないようにシール部材38を備えている。シール部材38は、絶縁体であることが好ましい。リード線32は、コード24aを介して電源24のマイナス側に接続される。発生筒26は、コード24bを介して電源24のプラス側に接続される。
【0035】
リード線32と発生筒26の間は、ある程度の距離を有する必要がある。後述の実施例においては、この距離は、具体的には2〜3cmの距離であった。印加電圧がもっと高くなれば、絶縁を保つためにこの距離がもっと増大する。この距離が短いと、絶縁が破れて火花放電を生じる。その結果、コロナ放電が抑制されるため、マイナスイオンは発生しなくなる。むろん、電極40と、発生筒26の各内壁との距離は、できるだけ等距離にすることが好ましく、電極40は、発生筒26内の空間の真ん中に位置するように設定することが好ましい。
【0036】
本発明の装置1は、長時間連続して使用するものである。このために、発生筒26は、送風機22からの強い空気圧に耐える必要がある。例えば、長時間の間に相当な空気圧の空気を送り込むと、発生筒26の疲労、発熱も考慮しなければならない。発生筒26は、金属でできているので、このような疲労に十分に耐え、対熱効果も十分である。更に、金属の発生筒に、既存の放熱装置を設けてもよい。
【0037】
〔実例の例示〕
更に、本願発明のイオン化部20の実例から例示する。しかし、この実例は、本実施の形態を限定するものではない。図2、3に図示した発生筒26の大きさは、高さ5cm、長さ5cm、幅10cmであった。この寸法の発生筒26から出てくるマイナスイオンの測定を行なった。なお、イオン測定器には、株式会社佐藤商事(所在地:日本国神奈川県横浜市)製の空気イオン測定器AIC-2000を使用した。マイナスイオンを発生させるのにもっとも適した電圧は、直流3000Vから3200Vである。
【0038】
これ以下の電圧だとマイナスイオン発生量が不足し、これ以上だとオゾンが発生する。加えて、花火放電を発生する。したがって、この範囲の電圧が最適である。これにより、1本の電極40当たり、3000万個/ccのマイナスイオンを発生させることができた。図3に図示したように、リード線32を3本使用した場合は、9000万個/ccのマイナスイオンを生成することができた。このときの送風機22の送風量は、毎分120Lが適当であった。また、リード線32を2本使用した場合は、6000万個/ccのマイナスイオンを生成することができた。このときの送風機22の送風量は、毎分80Lが適当であった。リード線32と発生筒26の間は、2〜3cmの距離であった。グリストラップ2の処理槽12の容量は、170L、300Lが一般的である。
【0039】
〔散気管4〕
図1に示すように、発生筒26に接続された散気管4には、複数の支管4aが接続されている。各支管4aは、処理槽12の複数の領域に設置される。支管4aの先端部分には、複数の小孔17がある。空気供給装置3から供給されたイオン化空気は、散気管4に入り、支管4aそれぞれに供給される。最後は、小孔17から排出されて廃液中に出る。小孔17から出るイオン化空気は、大きな圧力で廃液をかく乱させ、廃液の浄化を促進する。
【0040】
散気管4は、内径13mmのステンレス製の管であり、基本の長さが500mmである。支管4aも同様にステンレス製の管である。本体と散気管4との接続にはジャバラ方式のフレキシブル管(例えば、1000mm、600mm長さのもの)を使用することもできる。また、これらの接続部材には、L型のもの、T型のもの、単に延長するためのものなどがある。これらの部材を組み合わせることで、処理槽12の形状や大きさに応じた支管4aを形成することができる。
【0041】
また、支管4aの終端等には、廃水の浸入を防ぐためのターミナルキャップを嵌め込むものとする。これらの接続部材は、ねじ込み式の接合であることが好ましい。接続部材の内部にはゴムリングが入っており、気密性および防水性は確保されている。しかし、接続部材の外側は金属部材のため、散気管4の末端までの導電性は確保されている。このような接続構造のため、高濃度のマイナスイオンを散気管4の末端まで運ぶことができる。
【0042】
散気管4の材料には導電性の金属材料を採用し、発生筒26を通じて電源24のプラス側に電気的に接続している。このようにすると、散気管4の内壁に接触したマイナスイオンは、自由電子となって電源24に向かって流れるため、接触箇所での帯電現象を生じない。従って、マイナスイオンは、多少目減りはしたとしても、そこで滞留することはない。また、イオン化部20でのマイナスイオンの発生を抑制することもない。
【0043】
これらの作用は発生筒26とまったく同様のメカニズムである。これらの作用により、発生筒26から出たマイナスイオンがスムーズに廃液までに届く。したがって、散気管4、及びその支管4aは、全て導電性の金属管でなければならない。もしも途中に不導体管、例えば、塩化ビニル、シリコンパイプなどがあると、その部分が帯電し、そこでマイナスイオンの滞留が起きる。その結果、その先に金属管を繋いでもマイナスイオンは一切出てこなくなり、空気ばかりが流れてくるだけである。
【0044】
どうしても途中に不導体管を使う必要のある場合には、両端の金属管を導通部材で電気的に接続してやる必要がある。同じ理由で散気管4と発生筒26との接続部分も、非金属の部材を介さない接続が望ましい。このようにすることで、マイナスイオンの長距離搬送が可能となり、グリストラップ装置設計の自由度が上がる。
【0045】
支管4aの水中部分には1以上の小孔17を有する。図4は、支管4aの断面図の例を図示している。図4は、2つの小孔17が同一断面に設けられている例である。図5は、支管4aの長手方向に距離をおいて、小孔17が設けられている例である。マイナスイオンを含む空気は、この小孔17から廃液に導入される。空気は、大きな圧力で廃液に注入され、廃液の中をかく乱させる。
【0046】
小孔17の直径は1mmである。図4に示すように、小孔17の中心点と、支管4aの断面の中心点を結ぶ線は水平線に対し、約45度の角度を形成している。この45度という角度に大きな意味がある。このように、小孔17を下側へ向けて設けると、処理槽12の底近辺を効率的にかく乱させることができる。また、送風機が停止した時にも、支管4a内への水の浸入量が少なくて済む。
【0047】
なお、小孔17の間隔は、図5に示すとおり支管4aの長手方向に沿って30mm間隔である。また、小孔17は、図4に示すように同一断面に複数個のものを設ける必要はなく、位置をずらして設けても良い。なお、本願発明の廃液の浄化装置1は、稼動中も稼動していないときにも、小孔17から廃液が支管4aの中に入らないことが望ましい。よって、送風機22は、停止中に水の浸入を防ぐために、逆止弁を備えていることが望ましい。
【0048】
また、散気管4も発生筒26と同様に、長時間連続して使用するものである。このために、相当な量の空気圧に耐える必要がある。例えば、長時間の間に相当な空気圧の空気を送り込むと、散気管4の疲労、発熱なども考慮しなければならない。散気管4は、金属、例えばステンレスでできているので、十分に疲労に耐え、対熱効果も十分である。また、ステンレスであるため、水中でも腐食することが少ない。それゆえ、メンテナンスなしに長時間にわたって使用することができる。
【0049】
〔装置全体としての効果〕
この廃液の浄化装置全体としての効果を、廃液に含まれる油分を測定することで確認することができる。本発明の廃液の浄化装置1を設置した複数の飲食店において、その飲食店の廃液を処理した廃水のノルマルヘキサン値を測定した。その結果のデータを以下の表1に示す。表1の第1欄は、排液の種類、その飲食店の種類、所在地等を示している。第2欄は廃液の浄化装置1を設置した日から、点検日までの日数である運転日数を示している。
【0050】
第3欄、第4欄は、ノルマルヘキサン値の測定データを表している。第3欄は廃液の浄化装置1を設置する前のノルマルヘキサン値の測定値を、第4欄は設置後一定日数たった点検日での測定値を表している。これらの数値は、「排水基準を定める省令の規定に基づく環境大臣が定める排水基準に係る検定方法」(公布:昭和49年9月30日の環境庁告示64号、最終改定:平成13年6月13日の環境省告示37号)に従って、ノルマルヘキサン抽出物質含有量を測定したものである。
第5欄は、ノルマルヘキサン値の改善倍率を示している。改善倍率は、単純に、第3欄の値を第4欄の値に割った値である。
【0051】
【表1】
【0052】
これらの測定結果によれば、本願発明の廃液の浄化装置1を導入することにより、ノルマルヘキサン抽出物質含有量などの排水の汚染度を示す指標が、大幅に低下していることが分かる。また、マイナスイオンは防臭効果も高い。人体にも害がないので処理槽12の清掃作業、メンテナンスも楽である。更に、本願発明の浄化装置1は、既設の浄化槽に、簡単な工事をするだけで適用できるという利点を有する。
【0053】
〔他の実施の形態〕
イオン化部20の発生筒26は、内部が円筒状に形成されても良い。そこに、数本のリード線32を差し込む。各リード線32の先端にある電極40が、円筒の中心部分に位置するように配置すれば、発生筒26のどの内壁に対しても、十分な距離を保つことができる。このことにより、花火放電の発生を未然に抑止でき、効率的にマイナスイオンを発生させることができる。なお、リード線32が一本のみの場合は、イオン化部20の発生筒26は、球状としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の装置は、飲食産業の廃水処理に利用すると良い。更に、家庭、工場等から排出される廃液の浄化に利用されても良い。更に、 本発明の装置は、既設の浄化槽に、簡単な工事をするだけで適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の廃液の浄化装置の概略図である。
【図2】本発明の廃液の浄化装置のイオン化部の概観図である。
【図3】本発明の廃液の浄化装置のイオン化部の断面図である。
【図4】本発明の廃液の浄化装置の散気管の支管の断面図の例を示す図である。
【図5】本発明の廃液の浄化装置の散気管の支管に小孔を設けた例を示す図である。
【図6】従来のグリストラップの概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1…廃液の浄化装置
2…グリストラップ
3…空気供給装置
4…散気管
6…仕切壁
17…小孔
12…処理槽
16…浮いている油分
20…イオン化部
22…送風機
24…電源
26…発生筒
28…供給口
32…リード線
34…固定板
30…排出口
38…シール部材
40…電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を供給するための送風手段と、
マイナスイオンを発生するためのイオン発生手段と、
前記マイナスイオン含む前記空気を送風するための散気管と、
前記散気管から前記マイナスイオンを含む前記空気を注入して、廃液の浄化を行うために前記廃液を蓄え処理するための処理槽と
からなる廃液の浄化装置であって、
前記イオン発生手段は、コロナ放電で前記マイナスイオンを発生させるために、電源のマイナス電極に接続された1つ又は複数の電極と、前記電源のプラス電極に接続され、導電性のある材質で形成され内部に区画された空間を備えた発生筒と
からなることを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記電極と前記発生筒との間に印加される電圧は、3000V以上3200V以下の直流電圧である
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の廃液の浄化装置において、
前記電極の材質は、タングステン線又は炭素繊維である
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記散気管は、前記散気管の末端まで導電性を確保するために導電性の材料で形成され、かつ前記散気管が2以上の複数の部材からなるとき、前記部材の間の接続に導電性のある接続部材を有している
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に記載の廃液の浄化装置において、
前記廃液の中に入っている前記散気管の部分は、前記空気を噴出するために下方を向いて形成された1以上の貫通孔である小孔が形成されている
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記発生筒は円筒状に形成され、前記電極は前記円筒の中心線付近に位置する
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項7】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記発生筒は球状に形成され、前記電極は前記球の中心点付近に位置する
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項8】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記発生筒は箱型に形成され、前記電極は前記箱型の中心付近に位置する
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項1】
空気を供給するための送風手段と、
マイナスイオンを発生するためのイオン発生手段と、
前記マイナスイオン含む前記空気を送風するための散気管と、
前記散気管から前記マイナスイオンを含む前記空気を注入して、廃液の浄化を行うために前記廃液を蓄え処理するための処理槽と
からなる廃液の浄化装置であって、
前記イオン発生手段は、コロナ放電で前記マイナスイオンを発生させるために、電源のマイナス電極に接続された1つ又は複数の電極と、前記電源のプラス電極に接続され、導電性のある材質で形成され内部に区画された空間を備えた発生筒と
からなることを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記電極と前記発生筒との間に印加される電圧は、3000V以上3200V以下の直流電圧である
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の廃液の浄化装置において、
前記電極の材質は、タングステン線又は炭素繊維である
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記散気管は、前記散気管の末端まで導電性を確保するために導電性の材料で形成され、かつ前記散気管が2以上の複数の部材からなるとき、前記部材の間の接続に導電性のある接続部材を有している
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に記載の廃液の浄化装置において、
前記廃液の中に入っている前記散気管の部分は、前記空気を噴出するために下方を向いて形成された1以上の貫通孔である小孔が形成されている
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記発生筒は円筒状に形成され、前記電極は前記円筒の中心線付近に位置する
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項7】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記発生筒は球状に形成され、前記電極は前記球の中心点付近に位置する
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【請求項8】
請求項1に記載の廃液の浄化装置において、
前記発生筒は箱型に形成され、前記電極は前記箱型の中心付近に位置する
ことを特徴とする廃液の浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−160489(P2009−160489A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339821(P2007−339821)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(508003594)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(508003594)
【Fターム(参考)】
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