説明

廃熱回収装置

【課題】廃熱回収の効率をさらに向上できる廃熱回収装置を提供する。
【解決手段】凝縮器16は、送風機32のファン321の回転による送風作用によって冷却される。ファン321を回転するモータ322は、制御手段33の回転制御を受ける。制御手段33には外気温度検出器34及び圧力検出器35が信号接続されている。外気温度検出器34は、第2流路31付近の外気温度を検出する。圧力検出器35は、凝縮器16とポンプ17との間の第2流路24内の冷媒圧力を検出する。制御手段33は、外気温度検出器34によって検出された外気温度に基づいて、凝縮器16より下流の冷媒の目標凝縮圧力を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機関の廃熱を冷媒に伝達する熱交換器と、熱交換器を通過した冷媒を膨張して駆動力を発生させる膨張機と、膨張機を通過した前記冷媒の熱を大気放熱する空冷型の凝縮器と、前記凝縮器を通過した前記冷媒を前記熱交換器へ移送する圧送装置とを備えた廃熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の廃熱回収装置が特許文献1,2に開示されている。
特許文献1に開示の装置では、凝縮器の気相部を冷却する第1冷却装置と、凝縮器の液相部を冷却する第2冷却装置とが備えられている。凝縮器を冷却する冷却装置の冷却動作を制御する冷却制御装置は、気相部の圧力に応じて第1冷却装置の冷却動作を制御する圧力制御部と、液相部の温度に応じて第2冷却装置の冷却動作を制御する温度制御部とから構成されている。凝縮器の気相部の水蒸気圧力は、膨張機より下流でキャビテーション発生の限界圧力以上に制御され、液相部の凝縮水温度は、キャビテーション発生の限界温度以下に制御される。キャビテーションの防止は、ポンプによる圧送効率の低下を回避して廃熱回収効率を高める上で重要である。
【0003】
特許文献2に開示の装置では、膨張機の高圧側及び低圧側間の圧力差を検出する圧力差検出手段と、圧力差検出手段によって検出された圧力差が予め定めた所定圧力差を下回った時に、所定圧力差となるように圧力差を増加させる圧力差増加手段とが備えられている。膨張機における圧力差は、所定圧力差を下回ることがないように維持される。このような維持制御は、膨張機における安定した膨張仕事をもたらして廃熱回収効率を高める上で有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−121344号公報
【特許文献2】特開2007−255327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外気温度が変動すると空冷型の凝縮器では凝縮器の放熱量が変動し、冷媒の凝縮圧力及び凝縮温度が変動する。そのため、外気温度を考慮することが廃熱回収の効率を高める上で望ましい。しかし、特許文献1,2のいずれにおいても、外気温度の変動を考慮した制御の開示はなく、目標凝縮圧力又は目標凝縮温度を適正に設定することができない。そのため、廃熱回収の効率が十分に良いとは言えない。
【0006】
本発明は、廃熱回収の効率をさらに向上できる廃熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱機関の廃熱を冷媒に伝達する熱交換器と、前記熱交換器を通過した前記冷媒を膨張して駆動力を発生させる膨張機と、前記膨張機を通過した前記冷媒の熱を大気放熱する空冷型の凝縮器と、前記凝縮器を通過した前記冷媒を前記熱交換器へ移送する圧送装置とを備えた廃熱回収装置を対象とし、請求項1の発明では、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記膨張機より下流且つ前記圧送装置より上流の前記冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、前記凝縮器の放熱量を調整する放熱量調整手段と、前記放熱量調整手段の放熱量調整状態を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度に基づいて目標凝縮圧力を設定し、前記圧力検出手段によって検出される圧力が前記目標凝縮圧力となるように前記放熱量調整手段を制御する。
【0008】
外気温度に基づいて膨張機より下流且つ圧送装置より上流の冷媒圧力が目標凝縮圧力となるように凝縮器の放熱量を調整することで、外気温度の変化に対して常に排熱回収効率を高くすることができる。
【0009】
好適な例では、前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧に設定される。
目標凝縮圧力を冷媒の飽和蒸気圧、すなわち外気温度に対して実現可能な最低圧力に設定することで膨張機前後の圧力差を高く維持することができ、廃熱回収効率を高くすることができる。
【0010】
好適な例では、前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧より高い圧力に設定される。
目標凝縮圧力が低すぎると放熱量を最大に制御しても最大放熱能力不足による目標凝縮圧力と実際の圧力との乖離が頻繁に発生する。目標凝縮圧力を外気温度に対する飽和蒸気圧より高い圧力に設定することで凝縮器における放熱量の制御が安定しやすくなる。
【0011】
好適な例では、前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧と前記飽和蒸気圧よりも高い上限圧力との間の範囲に設定される。
【0012】
目標凝縮圧力に幅を設けることで放熱量制御がハンチングすることがなくなり、制御が安定しやすくなる。
好適な例では、前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧よりも高い下限圧力と前記下限圧力よりも高い上限圧力との間の範囲に設定される。
【0013】
目標凝縮圧力に上下限の幅を設けることで放熱量増加と減少の制御がハンチングすることがなくなり、制御が安定しやすくなる。
好適な例では、前記凝縮器より下流且つ前記圧送装置の上流の間に、レシーバと過冷却器とをさらに備える。
【0014】
目標凝縮圧力を外気温度に対応する飽和蒸気圧より高く設定することで、過冷却器により冷媒の過冷却度を確実に確保できるようになり、圧送装置でのキャビテーションの発生を防止することができる。
【0015】
好適な例では、前記圧力検出手段は、前記凝縮器と前記過冷却器との間の冷媒温度を検出する温度検出手段であり、前記冷媒温度に対応する冷媒飽和蒸気圧を検出圧力とする。
温度の検出は、圧力の検出より簡便であり、また冷媒温度を直接検出しなくても冷媒配管や気液分離器の筐体温度を測定することで冷媒温度の代用が可能で、より検出が簡便である。
【0016】
好適な例では、前記放熱量調整手段は、前記凝縮器を冷却する送風能力可変なモータ駆動の送風機である。
このような送風機は、凝縮器より下流の冷媒圧力を調整する手段として簡便である。
【0017】
好適な例では、前記放熱量調整手段は、前記凝縮器と並列なバイパス流路と、前記バイパス流路上の流量調整弁とである。
凝縮器と並列なバイパス流路と前記バイパス流路上の流量調整弁とは、放熱量調整手段として簡便である。又、車両に搭載される凝縮器の場合は車両の走行自体により発生する走行風を受けるため、送風機のみでは放熱量調整量に限界があり、凝縮器に対して冷媒をバイパスすることは放熱量調整手段としてより効果的である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の廃熱回収装置は、廃熱回収の効率をさらに向上できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の廃熱回収装置を示す模式図。
【図2】回転制御プログラムを表すフローチャート。
【図3】制御圧力を説明するためのグラフ。
【図4】第2の実施形態における回転制御プログラムを表すフローチャート。
【図5】制御圧力範囲を説明するためのグラフ。
【図6】第3の実施形態の廃熱回収装置を示す模式図。
【図7】制御圧力範囲を説明するためのグラフ。
【図8】放熱量制御プログラムを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を車両搭載の廃熱回収装置に具体化した第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、廃熱回収装置11は、廃熱源であるエンジン12(熱機関)と、ランキンサイクル回路13とを備えている。
【0021】
ランキンサイクル回路13では、エンジン12からの廃熱によって加熱される冷媒が循環する。廃熱回収装置11を構成する廃熱回収機器14は、ランキンサイクル回路13の一部を構成している。
【0022】
ランキンサイクル回路13は、廃熱回収機器14を構成する膨張機15、大気放熱する空冷型の凝縮器16、廃熱回収機器14を構成する圧送装置であるポンプ17、及びボイラ18によって構成されている。
【0023】
熱交換器であるボイラ18は、吸熱部181と放熱部182とを備える。ポンプ17の吐出側にはボイラ18の吸熱部181が第1流路19を介して接続されている。
放熱部182は、エンジン12に接続された排気通路20上に設けられている。エンジン12からの排気は、放熱部182で放熱された後にマフラ21から排気される。ポンプ17から吐出された冷媒は、ボイラ18の放熱部182と吸熱部181との間での熱交換により加熱される。
【0024】
ボイラ18の吸熱部181の吐出側には膨張機15が供給流路22を介して接続されている。ボイラ18で加熱された高温高圧の冷媒は、供給流路22を介して膨張機15に導入されるようになっている。膨張機15は、熱交換器であるボイラ18を通過した冷媒を膨張して回転駆動力を発生させる。膨張機15には凝縮器16が排出流路23を介して接続されている。膨張機15で膨張した低圧の冷媒は、凝縮器16へ送られる。
【0025】
凝縮器16の下流側にはポンプ17が第2流路24を介して接続されている。ポンプ17の吸入側には第2流路24が接続されており、ポンプ17の吐出側には第1流路19が接続されている。
【0026】
第2流路24、第1流路19、供給流路22、及び排出流路23は、ランキンサイクル回路の冷媒流路を構成する。
廃熱回収機器14を構成するオルタネータ25のロータ軸26は、ポンプ17のポンプ軸及び膨張機15の出力軸を兼用している。ロータ軸26の突出端部にはプーリ27が止着されている。プーリ27にはベルト28が巻き掛けられている。ベルト28は、エンジン12の回転出力軸であるクランク軸30に止着されたプーリ29に巻き掛けられている。エンジン12のクランク軸30は、プーリ29、ベルト28及びプーリ27を介してロータ軸26と連結している。膨張機15で生じた回転駆動力は、エンジン12の回転出力を補助する。
【0027】
オルタネータ25にはバッテリ31が電気的に接続されている。オルタネータ25で生じた電力は、バッテリ31に蓄電されるようになっている。
凝縮器16は、送風機32のファン321の回転による送風作用によって冷却される。ファン321を回転するモータ322は、制御手段33の回転制御を受ける。
【0028】
制御手段33には外気温度検出器34及び圧力検出器35が信号接続されている。外気温度検出器34は、外気温度を検出する外気温度検出手段である。圧力検出器35は、凝縮器16とポンプ17との間の第2流路24内の冷媒圧力を検出する。制御手段33は、外気温度検出器34によって検出された外気温度の検出情報及び圧力検出器35によって検出された冷媒圧力の検出情報に基づいて、モータ322を回転制御する。
【0029】
図2は、回転制御プログラムを表すフローチャートである。以下において、図2のフローチャートに基づいてモータ322の回転制御を説明すると共に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0030】
制御手段33は、外気温度検出器34によって検出された外気温度Tx及び圧力検出器35によって検出された冷媒圧力Pxを所定の制御周期で取り込んでいる(ステップS1)。ステップS1の処理後、制御手段33は、検出された外気温度Txに基づいて、外気温度Txのときの制御圧力α1を特定する(ステップS2)。
【0031】
図3は、外気温度と冷媒の凝縮圧力との関係を示すグラフである。曲線Eは、外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧を示す曲線であり、圧力α1は、曲線E上にある凝縮圧力である。
【0032】
ステップS2の処理後、制御手段33は、検出された冷媒圧力Pxと圧力α1との大小関係を判断する(ステップS3)。検出された冷媒圧力Pxが圧力α2よりも大きい場合(ステップS3においてYES)、制御手段33は、風量最大制御を遂行する(ステップS4)。風量最大制御は、モータ322の回転数を最大にする制御である。この風量最大制御により凝縮器16における放熱量が最大になり、圧力α1より大きい冷媒圧力Pxが制御圧力α1に近づく。
【0033】
検出された冷媒圧力Pxが圧力α1の場合(ステップS3においてNO)、制御手段33は、風量零制御を遂行する(ステップS5)。風量零制御は、モータ322の回転数を零にする制御である。
【0034】
図3に示すように、外気温度Txが変化すると冷媒の飽和蒸気圧が変化する。しかし、制御手段33は、外気温度Txを考慮して冷媒圧力Pxを飽和蒸気圧に近づけるように、モータ322の回転を制御する。
【0035】
送風機32は、凝縮器16の放熱量を調整する放熱量調整手段である。圧力検出器35は、膨張機15より下流且つポンプ17より上流の冷媒の圧力Pxを検出する圧力検出手段である。制御手段33は、圧力検出器35により検出された冷媒の圧力Pxが外気温度Txに応じて予め設定された目標凝縮圧力である制御圧力α1の圧力となるように、外気温度検出情報及び冷媒圧力検出情報に基づいて、送風機32(圧力調整手段)の回転数の大きさ(凝縮器16の放熱量を調整する状態)を制御する。
【0036】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)膨張機15より下流且つポンプ17より上流の冷媒圧力Pxは、検出された外気温度Txに応じて設定された制御圧力α1に収束するように、外気温度検出情報に基づいて制御される。つまり、冷媒圧力Pxは、外気温度Txが低い時は低く、外気温度Txが高い時には高く制御され、冷媒圧力Pxの制御は、外気温度Txの変動に追随して行なわれる。その結果、膨張機15前後の圧力差は、外気温度Txに対して常に略最大の圧力差を維持することができ、廃熱回収の効率が向上する。
【0037】
(2)冷媒圧力Pxをモータ322の回転制御に用いる制御は、冷媒圧力Pxを制御圧力α1に確実に収束させる上で有効である。
(3)モータ322の回転数を変更することによって冷却能力を変更できる送風機32は、冷媒の圧力を調整する圧力調整手段として簡便である。
【0038】
(4)目標凝縮圧力を冷媒の飽和蒸気圧、すなわち外気温度に対して実現可能な最低圧力に設定することは、膨張機15前後の圧力差を高く維持することを可能にする。その結果、廃熱回収効率を高くすることができる。
【0039】
次に、図4及び図5の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
ステップS1の処理後、制御手段33は、検出された外気温度Txに基づいて、外気温度Txのときの目標凝縮圧力である制御圧力範囲〔α1,α2〕及び外気温度Txのときの基準圧力γを特定する(ステップS6)。
【0040】
図5は、外気温度と冷媒の凝縮圧力との関係を示すグラフである。圧力α2は、曲線Eよりも上側にある曲線F上にある。本実施形態では、目標上限圧力である圧力α2と目標下限圧力である圧力α1との差(α2―α1=Δ1)は、一定である。基準圧力γは、圧力α1より大きく、圧力α2より小さい。又、基準圧力γと圧力α1との差(γ―α1=Δ2)は、一定である。
【0041】
ステップS6の処理後、制御手段33は、検出された冷媒圧力Pxと圧力α2との大小関係を判断する(ステップS7)。検出された冷媒圧力Pxが圧力α2よりも大きい場合(ステップS7においてYES)、制御手段33は、風量最大制御を遂行する(ステップS4)。この風量最大制御により凝縮器16における放熱量が最大になり、圧力α2より大きい冷媒圧力Pxが制御圧力範囲〔α1,α2〕に近づく。
【0042】
検出された冷媒圧力Pxが圧力α2以下の場合(ステップS7においてNO)、制御手段33は、予め設定された圧力γ(α1<γ<α2)と冷媒圧力Pxとの大小関係を判断する(ステップS8)。検出された冷媒圧力Pxが圧力γを超える場合(ステップS7においてYES)、制御手段33は、風量中間制御を遂行する(ステップS9)。風量中間制御は、検出された冷媒圧力Pxが大きいほどモータ322の回転数を0より大きく、且つ最大回転数より小さい範囲で大きくする制御である。圧力γより大きい冷媒圧力Pxは、風量中間制御により圧力範囲〔α1,γ〕に近づく。
【0043】
検出された冷媒圧力Pxが圧力γ以下の場合(ステップS8においてNO)、制御手段33は、風量零制御を遂行する(ステップS5)。
制御手段33は、外気温度Txを考慮して冷媒圧力Pxを目標凝縮圧力である制御圧力範囲〔α1,α2〕の下限α1に近づけるように、モータ322の回転を制御する。
【0044】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られるうえに、以下の効果が得られる。
(4)範囲のある目標凝縮圧力である制御圧力範囲〔α1,α2〕に冷媒の圧力を収める制御では、放熱量制御がハンチングすることがなくなり、制御が安定しやすくなる。
【0045】
次に、図6〜図8の第3の実施形態を説明する。第2の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図6に示すように、凝縮器16より下流かつポンプ17より上流の第2流路24にはレシーバ36及び過冷却器37が設けられている。制御手段33には温度検出器38が信号接続されている。温度検出器38は、レシーバ36の温度(つまり冷媒温度)を検出する。温度検出器38によって検出された温度Trは、レシーバ36内の冷媒の温度を反映する。
【0046】
凝縮器16と並列なバイパス流路39が膨張機15とレシーバ36との間で設けられている。バイパス流路39は、排出流路23から分岐して第2流路24に合流する。バイパス流路39上には流量調整弁40が設けられている。流量調整弁40は、凝縮器16における冷媒流量に対するバイパス流路39における冷媒流量の比(分流比)を連続的に変更可能である。流量調整弁40は、制御手段33の制御を受ける。
【0047】
制御手段33は、外気温度検出器34によって検出された外気温度Tx及び温度検出器38によって検出された温度Trに基づいて、図8のフローチャートで表す放熱量制御プログラムを遂行する。以下において、図8のフローチャートに基づいて放熱量制御を説明する。
【0048】
制御手段33は、外気温度検出器34によって検出された外気温度Tx及び温度検出器38によって検出された温度Trを所定の制御周期で取り込んでいる(ステップS10)。ステップS10の処理後、制御手段33は、検出された外気温度Txに基づいて、外気温度Txのときの目標凝縮圧力である制御圧力範囲〔β1,β2〕、及び冷媒の温度Trに対向する冷媒圧力Prを特定する(ステップS11)。図7に示すように、制御温度β1は、冷媒の飽和蒸気圧を表す曲線Eより上側にある下限圧力曲線G上にあり、制御圧力β2は、下限圧力曲線Gより上側にある上限圧力曲線H上にある。本実施形態では、外気温度Txに対応する制御圧力β2と温度Txに対応する制御圧力β1との差(β2―β1=Δ3)は、一定である。
【0049】
ステップS11の処理後、制御手段33は、特定された冷媒圧力Prと制御圧力β2との大小関係を判断する(ステップS12)。特定された冷媒圧力Prが制御圧力β2以上である場合(ステップS12においてYES)、制御手段33は、放熱量増加制御を遂行する(ステップS13)。放熱量増加制御は、モータ322の回転数を増大する制御、又はバイパス流路39における冷媒流量の分流比を小さくする制御である。レシーバ36の温度Tr、つまり冷媒圧力Prは、放熱量増加制御により制御圧力範囲〔β1,β2〕に向けて収束する。
【0050】
特定された圧力Prが制御圧力β2に満たない場合(ステップS12においてNO)、制御手段33は、圧力Prが制御圧力β1以上であるか否かを判断する(ステップS14)。圧力Prが制御圧力β以である場合(ステップS14においてYES)、制御手段33は、放熱量維持制御を遂行する(ステップS15)。放熱量維持制御は、モータ322の回転数を維持する制御、又はバイパス流路39における冷媒流量の分流比を維持する制御である。
【0051】
圧力Prが制御圧力β1に満たない場合(ステップS14においてNO)、制御手段33は、放熱量減少制御を遂行する(ステップS16)。放熱量減少制御は、モータ322の回転数を減少する制御、又はバイパス流路39における冷媒流量の分流比を大きくする制御である。
【0052】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる上に、以下の効果が得られる。
(5)凝縮器16より下流(第2流路)の冷媒の温度Tr(レシーバ36の温度)の検出では、圧力Pxの検出に比べて容易であるという利点が得られる。又、冷媒温度を直接検出しなくても冷媒配管や気液分離器の筐体温度を測定することで冷媒温度の代用が可能で、放熱量制御のための冷媒圧力情報の取得が簡便である。
【0053】
(6)過冷却器37の上流にある凝縮器16を出た冷媒の温度から換算される冷媒圧力を外気温度に対応した飽和蒸気圧よりも大きくする制御は、過冷却器37で確実に過冷却度が得られるため、キャビテーション発生防止を確実にする上で有効である。
【0054】
(7)送風機32のみでは放熱量調整量に限界があるが、車両に凝縮器16を搭載した場合には、凝縮器16が車両の走行自体により発生する走行風を受ける。そのため、凝縮器16に対して冷媒をバイパスさせる構成は、放熱量調整手段としてより効果的である。
【0055】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第1の実施形態において、フローチャートのステップS5における風量零制御の代わりに、モータ322を一定回転数に維持する制御を行なうようにしてもよい。
【0056】
○第2の実施形態において、フローチャートのステップS7における判断がNOの場合(検出圧力Pxが制御圧力範囲〔α1,α2〕にある場合)、モータ322を一定回転数又は零に維持する制御を行なうようにしてもよい。
【0057】
○第2の実施形態において、検出圧力Pxが制御圧力範囲を超える場合にはモータ322の回転数を最大回転数に維持し、検出圧力Pxが制御圧力範囲にある場合には、モータ322を最大回転数より低い一定回転数又は零に維持する制御を行なうようにしてもよい。
【0058】
○外気温度Txに対応した冷媒の飽和蒸気圧を目標凝縮圧力としてもよい。
○車両搭載の凝縮器16へ車両走行によって外気を当てる割合を増減可能な走行風量可変機構を設け、該走行風量可変機構を放熱量調整手段としてもよい。
【0059】
○凝縮器16を通過した冷媒を圧送するポンプを廃熱回収機器14外に設けてもよい。
○膨張機15の回転駆動力のみによってオルタネータ25を駆動するようにしてもよい。
【0060】
○車両用以外の廃熱回収装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
11…廃熱回収装置。12…熱機関としてのエンジン。15…膨張機。16…凝縮器。17…圧送装置であるポンプ。18…熱交換器であるボイラ。32…放熱量調整手段である送風機。33…制御手段。34…外気温度検出手段である外気温度検出器。35…圧力検出器。36…レシーバ。37…過冷却器。38…温度検出器。39…放熱量調整手段を構成するバイパス流路。40…放熱量調整手段を構成する流量調整弁。Tx…外気温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機関の廃熱を冷媒に伝達する熱交換器と、前記熱交換器を通過した前記冷媒を膨張して駆動力を発生させる膨張機と、前記膨張機を通過した前記冷媒の熱を大気放熱する空冷型の凝縮器と、前記凝縮器を通過した前記冷媒を前記熱交換器へ移送する圧送装置とを備えた廃熱回収装置において、
外気温度を検出する外気温度検出手段と、
前記膨張機より下流且つ前記圧送装置より上流の前記冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記凝縮器の放熱量を調整する放熱量調整手段と、
前記放熱量調整手段の放熱量調整状態を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記外気温度検出手段によって検出された外気温度に基づいて目標凝縮圧力を設定し、前記圧力検出手段によって検出される圧力が前記目標凝縮圧力となるように前記放熱量調整手段を制御する廃熱回収装置。
【請求項2】
前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧に設定される請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧より高い圧力に設定される請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項4】
前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧と前記飽和蒸気圧よりも高い上限圧力との間の範囲に設定される請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項5】
前記目標凝縮圧力は、前記外気温度検出手段により検出された外気温度に対応する冷媒の飽和蒸気圧よりも高い下限圧力と前記下限圧力よりも高い上限圧力との間の範囲に設定される請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項6】
前記凝縮器より下流且つ前記圧送装置の上流の間に、レシーバと過冷却器とをさらに備える請求項3及び請求項5のいずれか1項に記載の廃熱回収装置。
【請求項7】
前記圧力検出手段は、前記凝縮器と前記過冷却器との間の冷媒温度を検出する温度検出手段であり、前記冷媒温度に対応する冷媒飽和蒸気圧を検出圧力とする請求項6に記載の廃熱回収装置。
【請求項8】
前記放熱量調整手段は、前記凝縮器を冷却する送風能力可変なモータ駆動の送風機である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の廃熱回収装置。
【請求項9】
前記放熱量調整手段は、前記凝縮器と並列なバイパス流路と、前記バイパス流路上の流量調整弁とである請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の廃熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19316(P2013−19316A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153095(P2011−153095)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】