説明

延伸後に改良された接着性を有する熱収縮性多層フィルム及びチューブ

すぐれた中間層の接着性を有する多層積層収縮フィルムが、少なくとも3つの層、ポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む第1の層と、官能化ポリマー成分、エチレンコポリマー成分および粘着付与剤のブレンドから本質的になる第2の接着剤層と、ポリエチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む第3の層とを含む。接着剤層は、第1および第3の層の間に配置され、それらと接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージング用途において特に有用であり、すぐれた中間層の接着性を示す熱収縮性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
多層フィルムの延伸は一般に、多層フィルム中に存在するポリマーの少なくとも1つの融点より低い温度において行なわれるテンターフレームまたはダブルバブルチューブ状方法を用いて商業規模で行なわれる。このような温度において、多くの積層フィルム製品において中間層の接着性に悪影響を与える延伸による応力が生じる。より低い延伸度を与える方法によって製造された同様なゲージの多層フィルム、例えばキャストフィルムまたは単一バブルインフレートフィルム方法によって製造された多層フィルムと比べて、しばしば、中間層の接着力のかなりの減少が延伸多層フィルムによって示される。
【0003】
いくつかの延伸フィルム積層体構造物、特に、高度の収縮が必要とされない構造物において、フィルムを延伸した後に熱アニールまたはヒートセット工程段階を用いて接着力の低下を軽減してもよい。これは、フィルムの残留応力を低減する。しかしながら、収縮バッグなどの高度の収縮を必要とする収縮フィルムについて、このような工程の使用は、収縮度の低減を起こすので望ましくない。
【0004】
先行技術において検討されたこの問題に対する1つの解決は、タイ層としての中間層の接着剤の使用である。キャストおよびインフレートフィルム多層バリアフィルムにおいて高い接着剤性能を提供する、ポリオレフィンポリマーの多くの接着剤ブレンドが設計されている。また、接着剤ブレンドは、延伸収縮フィルムにおいて用いられている。
【0005】
例えば、米国特許出願第11/257542号明細書には、多層積層体収縮フィルムにおいて使用するために適した接着剤組成物が開示されており、そこで収縮フィルムが、少なくとも2つの構造層と少なくとも1つの接着剤層とを含み、(a)収縮フィルムが延伸温度(To)において延伸され、(b)接着剤組成物が、To以下の融点を有する少なくとも1つのポリマーの接着剤成分を、全接着剤組成物を基準にして少なくとも60重量%含み、(c)接着剤組成物の溶融温度が、最低融点構造層の主成分の溶融温度より低い。
【0006】
米国特許第6,551,674B2号明細書には、プロピレンコポリマーの外層を有する延伸多層フィルムが開示されている。外層を封止内層に結合する接着剤は、エチレンアルキルアクリレートコポリマー;外層のプロピレンコポリマーより低いプロピレン含有量を有するプロピレンアルファ−オレフィンコポリマー;および少なくとも15重量%のビニルアセテートを有するエチレンビニルアセテートポリマーからなる群から選択される。
【0007】
米国特許第6,221,470B1号明細書には、コア層がエチレンビニルアルコールおよびポリアミドを含有する、熱収縮性でありうる熱可塑性多層パッケージングフィルムが開示されている。0.900〜0.908g/ccの密度を有する改質された均質なエチレンアルファ−オレフィンコポリマーを接着剤層として使用して中間層の接着性を改良することが開示されている。
【0008】
米国特許第6,210,765B1号明細書には、ポリアミド樹脂またはエチレンビニルアルコール樹脂を含有する多層積層フィルムが開示されており、そこで接着剤は、不飽和カルボン酸または無水物改質エチレンアルファ−オレフィンコポリマー樹脂またはエラストマー、改質されていないエチレンアルファ−オレフィンコポリマー樹脂またはエラストマー、および粘着付与剤から本質的になるポリエチレン組成物である。このようなフィルムは一軸延伸または二軸延伸されてもよい。
【0009】
米国特許第5,759,648号明細書には、少なくとも5層の二軸延伸フィルムが開示されており、そこで接着剤層は、1g/10分未満のメルトインデックスおよび0.900〜0.915g/ccの密度を有するエチレンアルファ−オレフィンコポリマー少なくとも10重量%と、ビニルエステルまたはアルキルアクリレート4〜18重量%を有するエチレンコポリマー少なくとも10重量%と、無水物改質エチレンビニルエステルまたはアルキルアクリレートコポリマー少なくとも10重量%と、0.900g/cc未満の密度および85℃未満の融点のエチレンアルファ−オレフィン0〜30重量%とを含む。1つの接着剤層は、延伸を容易にすると共に高い収縮を促進する非常に厚い接着剤層であるものとして開示されている。
【0010】
米国特許第5,382,470号明細書には、コア層としてエチレンビニルアルコールとナイロン6,6とのブレンドを含む二軸伸長熱収縮性フィルムが開示されている。中間接着剤層は、非常に低密度のポリエチレン35〜80重量%と、190℃において1.7g/10分未満のメルトインデックスを有する無水物改質ポリエチレン接着剤または190℃において0.5g/10分未満のメルトインデックスの無水物改質エチレンビニルアセテート接着剤のどちらか20〜40重量%と、190℃において1g/10分未満のメルトインデックスを有するエチレンビニルアセテート0〜40重量%と、ビニルアセテート7〜15重量%とのブレンドを含む。
【0011】
米国特許第4,857,399号明細書には、エチレンビニルアルコールおよびポリアミドを含有してもよいバリア層と、少なくとも約90℃のビカー軟化点を有する無水物改質エチレンコポリマー接着剤20〜60重量%とビニルアセテート4〜15重量%を有するエチレンコポリマー40〜80重量%とのブレンドを含む接着剤層とを有する4層収縮フィルムが開示されている。
【0012】
米国特許第4,762,748号明細書には、化学的に改質されたエチレンアルキルアクリレートまたはエチレンビニルアセテートポリマーを接着剤の成分として用いて製造された、すぐれた層間接着性を有する低温殺菌可能なまたは調理用(cook−in)収縮フィルムが開示されている。
【0013】
米国特許第4,424,243号明細書には、ポリ塩化ビニリデンコアを含有する熱収縮性積層体フィルムが開示されており、そこでコアと外層との間の中間層は、70℃〜100℃の結晶融点を有する熱可塑性樹脂である。中間層は、中間層および外層の全厚さの50〜80%である。
【0014】
米国特許第4,474,634号明細書には、様々な延伸度の様々な層が熱可塑性合成樹脂接着剤を用いて積層される積層方法が開示されている。適した接着剤は、延伸層を形成する樹脂よりも低い融点を有する、例えば10〜80℃低い融点を有する接着剤であることが開示されている。
【0015】
「二軸延伸フィルム(Bi−Axially Oriented Film)」、Research Disclosure Journal、448065、2001年8月には、少なくとも3層の二軸延伸熱収縮性多層フィルムが開示されており、そこで接着剤組成物は、60〜95重量%のエチレンアルキル(メタ)アクリレートまたはビニルエステル、4〜40重量%の酸グラフト化メタロセンポリエチレンおよび場合により30重量%までのポリオレフィンエラストマーのブレンドを含む。
【0016】
米国特許第5,217,812号明細書には、(a)(i)カルボン酸無水物0.03〜10重量%によってさらに改質された、約20〜50重量%のビニルエステルまたは2〜20個の炭素原子の不飽和モノまたはジカルボン酸の他のエステルを有するエチレンコポリマー、および場合により(ii)約20〜50重量%のビニルエステルまたは2〜20個の炭素原子の不飽和モノまたはジカルボン酸の他のエステルを有するエチレンコポリマーから本質的になるエチレンコポリマー部分65〜99重量%と、(b)粘着性付与樹脂1〜35重量%とを有する、ポリエステル積層体の調製において有用な押出可能な結合用樹脂が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、熱収縮パッケージング用途において改良された中間層の接着性を有する多層フィルム積層体が依然として必要とされており、この積層体は二軸延伸方法を実施され、高度の収縮が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの態様において、本発明は、
A)外面と内面とを有する第1の層であって、ポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む、第1の層と、
B)1)a)無水物改質ポリマー、b)エチレンと、C4−C8不飽和無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のジエステルからなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含むコポリマーおよびc)それらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの官能化ポリマー成分と、
2)エチレンと、ビニルアセテート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびそれらの混合物(前記アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する)からなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含む、前記官能化ポリマー成分と化学的に異なったエチレンコポリマーと、
3)粘着付与剤樹脂と、から本質的になる第2の層と、
C)外面と内面とを有する第3の層であって、ポリエチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む第3の層とを含む多層積層熱収縮性フィルムであり、
前記第2の層が、前記第1および第3の層の内面の間にそれらと接触して配置され、95℃の温度にさらされるとき、前記多層収縮性フィルムが、その元のサイズの85%以下である程度まで収縮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
多層フィルム積層体は、パッケージング用途などの様々な用途において用いられる。いくつかのパッケージング用途は、パッケージの内容物の周りにぴったりと適合するまで収縮されうる多層フィルムを必要とする。このようなフィルムは「収縮フィルム」、「収縮ラップ」および/または「収縮バッグ」として従来から知られており、以下、このように称される。本発明は、多層積層収縮フィルムおよびこのようなフィルムから製造された構造物に関する。
【0020】
本明細書中で用いられるとき、用語「熱収縮性フィルム」または「収縮フィルム」は、95℃の温度に暴露したときにその元の寸法の85%以下までサイズが収縮するフィルム(すなわち、フィルムは、その面積がその元の面積の85%以下であるようにその元の寸法から15%以上の量でサイズが収縮する)を意味する。使用される特定の用途に応じて、いくつかの収縮性フィルムは、元のフィルム寸法からの中程度のレベルの収縮、例えば15%の収縮に対応することが必要とされる場合がある。ソーセージケーシングに用いられるフィルムは、例えば、中程度の量の収縮しか必要としない。他の用途において、収縮フィルムは、元のフィルム寸法からのより大きい収縮度、例えば50%以上の縮小に対応することが必要とされる場合がある。収縮バッグのための用途は、例えば、元の寸法から約40%〜約50%の収縮を必要とすることがある。
【0021】
用語「フィルム」は本明細書中で用いられるとき、フィルム、シートおよびプラスチックウェブを含める。フィルムは、薄いフィルムまたはシートとして一般に知られている、より厚いフィルムであってもよい。「フィルム」の厚さは0.25mm以下である。「レイフラットフィルム(Lay−flat film)」は、幅広、薄壁の円形チューブとして押出され、通常はブローされ、冷却され、次にローラーの集束セットによって集められて平らになった形状に巻取られたフィルムを指す。「レイフラット幅」は、インフレートフィルムチューブの外周の半分を指す。また、フィルムは、チルドロール上に平らなダイからキャストすることによって製造されてもよい。収縮フィルムは、フィルムが二軸延伸され、すなわち、2つの軸に沿って伸長される公知の方法によって得られる。
【0022】
1つの実施形態において、本発明は、接着剤層または「タイ」層として使用される接着剤組成物を含む、要求の厳しい収縮フィルム用途において使用可能な多層積層熱収縮性フィルムである。要求の厳しい収縮フィルム用途は、その元の寸法から15%より大きく収縮する、すなわちその元の寸法の85%未満に収縮するフィルムを必要とする用途である。より要求の厳しい用途は、フィルムがその元の寸法の70%以下に収縮する(すなわち、フィルムがその元の寸法から30%以上の程度まで収縮する)ことを必要とすることがある。さらにより要求の厳しい収縮フィルム用途は、フィルムの元の寸法の60%以下およびさらに50%以下に収縮することを必要とする場合がある(すなわち、フィルムがその元の寸法から、前者の場合、40%以上の程度までおよび後者の場合、50%以上の程度まで収縮する)。
【0023】
本明細書に記載された接着剤組成物は、多層積層収縮フィルムにおいて、特に、高度の収縮を必要とするフィルムにおいてタイ層として使用するために特に適している。本接着剤組成物は、積層体フィルムの様々な層の間の適した接着性を提供し、二軸延伸フィルムにおいて改良された接着性を提供する。
【0024】
本発明の多層積層熱収縮性フィルムの第1の層は、ポリアミド、エチレンビニルアルコールポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む。
【0025】
使用に適したポリアミドは一般に、ラクタムまたはアミノ酸(例えばナイロン6またはナイロン11)の重合によって、またはヘキサメチレンジアミンなどのジアミンとコハク酸、アジピン酸、またはセバシン酸などの二塩基性酸との縮合によって調製される。また、ポリアミドは付加的なコモノマーの共重合単位を含有してターポリマーまたは高次ポリマーを形成することができる。ポリアミドには、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6.9、ナイロン12,12、それらのコポリマーおよび非晶質および半結晶質ポリアミドのブレンドなどが挙げられる。また、本明細書中で用いられるとき用語「ポリアミド」には、Honeywell製の商品名Aegis(登録商標)ポリアミドまたはMitsubishi Gas Chemicals/Nanocor製のImperm(登録商標)ポリアミド(ナイロンMXD6)として市販されているようなポリアミドナノ複合物を含める。
【0026】
好ましいポリアミドには、ポリエプシロンカプロラクタム(ナイロン6);ポリヘキサメチレンアジポアミド(ナイロン6,6);ナイロン11;ナイロン12、ナイロン12,12の他、ナイロン6/6,6;ナイロン6,10;ナイロン6,12;ナイロン6,6/12;ナイロン6/6,6/6,10およびナイロン6/6Tなどのコポリマーおよびターポリマーなどがある。より好ましいポリアミドは、ポリエプシロンカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(ナイロン6,6)であり、最も好ましいのはナイロン6である。これらのポリアミドは好ましいポリアミドであるが、非晶質ポリアミドなどの他のポリアミドもまた、使用に適している。
【0027】
エチレンビニルアルコールポリマーはEVOHとして公知である。このようなポリマーは一般に、約15モルパーセント〜約60モルパーセント、より好ましくは約27〜約44モルパーセントのエチレン含有量を有する。EVOHは一般に、約1.12g/cm3〜約1.20gm/cm3の範囲の密度および約142℃〜191℃の範囲の融解温度を有する。EVOHポリマーを公知の調製技術によって調製することができ、または商業供給元から得ることができる。それらは、エチレンビニルアセテートコポリマーをケン化するかあるいは加水分解することによって調製される。加水分解度は好ましくは約50〜100モルパーセント、より好ましくは約85〜100モルパーセントである。さらに、重合度および反復単位の分子量から計算された、本発明の積層体において有用なEVOH成分の重量平均分子量Mwは、約5,000Mw〜約300,000Mwの範囲内であってもよく、約60,000Mwが最も好ましい。本発明の積層収縮フィルムの成分として使用するための適したEVOHポリマーを商品名EVAL(登録商標)樹脂として米国のEVAL Companyから得ることができる。また、EVOHは、Kuraray Ltd.製の商品名Evalca(登録商標)およびNoltex L.L.C製の商品名Soarnol(登録商標)として入手可能である。
【0028】
第1の層のポリマー組成物は、可塑剤、耐衝撃性改良剤、粘度安定剤および加水分解安定剤などの安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料または他の着色剤、無機充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維およびフレークなどの補強剤、起泡剤または発泡剤、加工助剤、粘着防止剤、剥離剤、およびそれらの混合物など、ポリマー材料において使用される従来の添加剤をさらに含むことができる。任意の添加剤が使用されるとき、組成物の基本的および新規な特性または95℃の温度に暴露されたときにその元の面積の85%以下に収縮するその能力を減じる量において使用されない限り、様々な量において存在しうる。
【0029】
本発明の積層収縮フィルムの第1の層はバリア層である。本明細書中で用いられるとき用語「バリア層」は、1気圧においておよび73°Fの温度において(0%の相対湿度において)24時間当たり、1平方メートルのフィルムにつき酸素などのガス1000cc未満の、フィルムを通しての透過性を可能にするフィルム層を意味する。上に規定された限度を超えてバリア層の透湿性を増加させない限り、他のポリマーがバリア層中に付加的な成分として存在してもよい。
【0030】
本発明の多層収縮フィルムの第2の層は接着剤組成物であり、そこで接着剤は、1)a)無水物改質ポリマーおよびそれらの混合物およびb)エチレンと、C4−C8不飽和無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のジエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含むコポリマーからなる群から選択された少なくとも1つの官能化ポリマー成分、2)前記官能化ポリマー成分と化学的に異なったエチレンコポリマー成分、および3)粘着付与剤から本質的になる。
【0031】
接着剤組成物の官能化ポリマー成分として使用するために適している無水物改質ポリマーは無水物グラフト化ポリマーであり、無水不飽和ジカルボン酸0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%でグラフト化されたポリマーが挙げられる。グラフト化されるポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。一般に、それらは、グラフト化オレフィンポリマーである。例には、グラフト化ポリエチレン、グラフト化ポリプロピレン、グラフト化エチレン/ビニルアセテートコポリマー、グラフト化エチレン/アルキルアクリレートコポリマーおよびグラフト化エチレン/アルキルメタクリレートコポリマーなどがある。特定の例には、0.88〜0.960g/ccの密度のZiegler−Nattaポリエチレン;メタロセン、拘束幾何触媒で触媒されるかまたは単一部位触媒の存在下で調製された、0.88〜0.960g/ccの密度を有するポリエチレンの他、エチレンビニルアセテート、エチレンアルキルアクリレートおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマー(ビニルアセテート、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートコモノマーがコポリマーの5〜30重量%を占める);および2〜10重量%の共重合エチレンコモノマー単位を有するランダムエチレンプロピレンコポリマーなどがある。無水物グラフト化エチレンビニルアセテートコポリマー、無水物グラフト化エチレンアルキルアクリレートコポリマーおよび無水物グラフト化エチレンアルキルメタクリレートコポリマーが好ましい。グラフト化剤には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸および無水テトラヒドロフタル酸などの無水不飽和ジカルボン酸があり、無水マレイン酸が好ましい。無水物基は、多層構造物中の他の層への組成物の接着性を促進する反応性官能価を提供する。
【0032】
無水物グラフト化ポリマーを公知の技術によって得ることができる。例えば、エチレン/ビニルアセテートコポリマーまたはエチレン/アルキルアクリレートコポリマーなどのエチレンコポリマーを、無水マレイン酸などの無水不飽和ジカルボン酸およびラジカル発生剤と共に有機溶剤中に溶解し、その後、攪拌しながら加熱してもよい。あるいは、グラフト化ポリマーは、反応性成分を押出機に供給して例えば無水マレイン酸グラフト化エチレンコポリマーを提供する方法によって調製されてもよい。
【0033】
このような方法を用いて接着剤組成物の無水物グラフト化ポリマー成分として使用するために適したグラフト化エチレンビニルアセテートコポリマーを調製するとき、このようなコポリマーに導入されたビニルアセテートコモノマーの相対量は一般に、グラフト化プロセスの前に、全コポリマーの約7重量パーセントから45重量パーセント程度またはさらにそれ以上である。グラフト化されていないエチレンビニルアセテートコポリマーを第2の層の接着剤組成物の第2の成分として用いるとき、無水物改質エチレンビニルアセテートコポリマーを第1の成分として用いることが好ましい場合がある。グラフト化されていない成分であるエチレンビニルアセテートコポリマーの性質と同様な性質を有するエチレンビニルアセテートコポリマーを用いることによって無水物改質ポリマーを調製することがさらに望ましい場合がある。1重量%より多い量の無水マレイン酸で改質される、ビニルアセテート約20〜約40重量%、特に25〜28重量%を有するエチレンビニルアセテートコポリマーが特定の実施形態において有用である。
【0034】
接着剤の無水物グラフト化ポリマー成分として使用するために適したグラフト化エチレンアルキルアクリレートコポリマーおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマーは、他のグラフト化ポリマーについて上に記載されたグラフト化プロセスと同様なグラフト化プロセスによって調製されてもよい。グラフト化されていないエチレン/アルキルアクリレートコポリマーまたはエチレンアルキルメタクリレートコポリマーを接着剤の第2の成分として用いるとき、接着剤の無水物改質成分として無水物改質エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを用いることが好ましい場合がある。無水物グラフト化エチレン/アルキルアクリレートまたはエチレンアルキルメタクリレートコポリマーを用いることがさらに望ましい場合があり、そこでグラフト化される原樹脂は、グラフト化されていないエチレンアルキルアクリレートまたはエチレンアルキルメタクリレートコポリマーの性質に似た性質を有する。メチルアクリレート約20〜約40重量%、特に20〜25重量%を有するエチレンメチルアクリレートコポリマー(このポリマーは1重量%より多い無水マレイン酸で改質される)は、特定の実施形態において好ましい。
【0035】
アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートコモノマーのアルキル基は、1〜10個の炭素原子を含有してもよい。1〜4個の炭素原子のアルキル基は、このようなエチレンアルキルアクリレートおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマーの容易な入手可能性のために好ましい。有用なエチレンアルキルアクリレートおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマーの特定の例には、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレンn−ブチルアクリレートコポリマー、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンエチルメタクリレートコポリマー、およびエチレンn−ブチルメタクリレートコポリマーなどがある。2つ以上の異なったエチレン/アルキルアクリレートまたはエチレン/アルキルメタクリレートコポリマーの混合物を単一コポリマーの代わりに接着剤組成物中で使用することができる。2つ以上の適切に選択されたエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが用いられるときに特に有用な性質を得ることができる。
【0036】
また、接着剤組成物の官能化ポリマー成分はエチレンコポリマーであってもよい。官能化エチレンコポリマーは、エチレンと、C4−C8不飽和無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のジエステルおよびこのようなコポリマーの混合物からなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含む。エチレンコポリマーは一般に、コモノマーの約3重量%〜約25重量%の共重合単位を含む。コポリマーは、ジポリマーまたはターポリマーまたはテトラポリマーなどの高次コポリマーであってもよい。コポリマーは好ましくはランダムコポリマーである。エチレンコポリマーの適したコモノマーの例には、無水マレイン酸および無水イタコン酸などの不飽和無水物;メチル水素マレエート、エチル水素マレエート、プロピル水素フマレート、および2−エチルヘキシル水素フマレートなどのブテン二酸(例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸)のC1−C20アルキルモノエステルの他;ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、およびジブチルシトラコネート、ジオクチルマレエート、およびジ−2−エチルヘキシルフマレートなどのブテン二酸のC1−C20アルキルジエステルなどがある。これらのうち、無水マレイン酸、エチル水素マレエートおよびメチル水素マレエートが好ましい。無水マレイン酸およびエチル水素マレエートが最も好ましい。
【0037】
エチレンコポリマー成分の例である高次コポリマーには、エチレン/メチルアクリレート/エチル水素マレエート、エチレン/ブチルアクリレート/エチル水素マレエートおよびエチレン/オクチルアクリレート/エチル水素マレエートなどのターポリマーがある。
【0038】
エチレンコポリマーは一般に、高圧フリーラジカル共重合方法によって調製される。例えば、エチレン/モノアルキルマレエートコポリマーを調製するための方法は米国特許第4,351,931号明細書に開示されている。
【0039】
また、2つ以上の官能化ポリマー成分の混合物が、必要に応じて単一官能化ポリマーの代わりに用いられてもよい。
【0040】
接着剤組成物の第2の成分は、第1の官能化ポリマー成分と化学的に異なったエチレンコポリマーである。化学的に異なったとは、a)接着剤の第2の成分のエチレンコポリマーが、官能化ポリマー成分中にコモノマーとして存在していない共重合モノマーの少なくとも1つの種を含むか、またはb)接着剤の官能化ポリマー成分が、接着剤の第2の成分のエチレンコポリマー中に存在していない共重合モノマーの少なくとも1つの種を含むか、またはc)接着剤の第2の成分であるエチレンコポリマーが、無水物グラフト化エチレンコポリマーではないことを意味する。従って、第1および第2のポリマーは、化学的構造において異なっており、異なったポリマー種である。
【0041】
エチレンコポリマーは、エチレンと、ビニルアセテート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を有する。アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する。好ましいコモノマーは1〜4個の炭素原子を有する。付加的なコモノマーをエチレンコポリマー中に共重合単位として導入してもよい。従って、エチレンコポリマーは、ターポリマーまたは高次コポリマーであってもよい。例えば、適した共重合性モノマーには、一酸化炭素、メタクリル酸およびアクリル酸などがある。
【0042】
第2の成分のエチレンコポリマーがエチレンビニルアセテートコポリマーであるとき、共重合ビニルアセテート単位のパーセンテージは、コポリマーの全重量の2パーセントから40重量パーセント程度またはさらにそれ以上に広く変化することができる。
【0043】
コポリマー中の共重合ビニルアセテート単位の重量パーセンテージは好ましくは2〜40重量%、特に10〜40重量%である。エチレン/ビニルアセテートコポリマーは好ましくは、190℃、2.16kgの重量でASTMD−1238に従って測定されたとき、約0.1〜約40g/10分および特に約0.3〜約30g/10分の溶融流量を有する。特定の実施形態において、1〜30g/10分または1〜15g/10分のメルトインデックスを有するポリマーの使用が好ましい。エチレンビニルアセテートコポリマーは好ましくは、90℃未満、あるいは80℃未満の融点範囲を有する。
【0044】
2つ以上の異なったエチレン/ビニルアセテートコポリマーの混合物を単一コポリマーの代わりに接着剤組成物の成分として使用することができる。
【0045】
また、第2の成分のエチレンコポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートコポリマーとして本明細書において称されるエチレンアルキルアクリレートまたはエチレンアルキルメタクリレートコポリマーであってもよい。本発明の実施においてコモノマーとして使用するのに適したアルキル(メタ)アクリレートは、1〜10個の炭素原子のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選択される。ここで使用するのに適したアルキルアクリレートの例には、限定せずに、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートなどがある。
【0046】
本発明の積層体の接着剤層中の成分として有用なエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマー中に共重合単位として導入されたアルキル(メタ)アクリレートコモノマーの相対量は、コポリマーの重量を基準にして数重量パーセント〜45重量パーセント程度、またはそれ以上に広く変化することができる。同様に、アルキル基はメチル基または10個までの炭素原子を有するいずれのアルキル基であってもよい。最も好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートコモノマーのアルキル基はメチル、エチルまたはn−ブチルである。好ましくは、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマー中のアルキル(メタ)アクリレートコモノマーの共重合単位のレベルは、コポリマーの重量を基準にして5〜45重量パーセント、より好ましくは10〜35重量%、さらにより好ましくは10〜28重量%の範囲内である。エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの混合物もまた、使用されてもよい。
【0047】
接着剤組成物の第2の成分としてここで使用するのに適したエチレンコポリマーをチューブ状反応器またはオートクレーブの使用を必要とする方法などのいずれかの方法によって製造することができる。オートクレーブ内で行なわれる共重合方法は、連続方法またはバッチ方法であってもよい。一般に米国特許第5,028,674号明細書に開示されたこのような1つの方法において、エチレン、アルキルアクリレート、および場合によりメタノールなどの溶剤を、開始剤と共に、米国特許第2,897,183号明細書に開示されたタイプなどの攪拌機付きオートクレーブ内に連続的に供給する。オートクレーブ方法を用いて製造されたエチレンアルキルアクリレートコポリマーは、例えばExxon/Mobil Corp、および/またはElf AtoChem North America, Inc.から市販品として得られる。チューブ状反応器方法を用いて得られたエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、高圧および高温において製造される。チューブ状反応器内において各エチレンおよびアルキルアクリレートコモノマーの異なった反応動力学に固有の結果は、チューブ状反応器内の反応流路に沿ってモノマーを計画的に導入することによって軽減されるかまたは部分的に埋め合わせられる。このようなコポリマーは、E. I. du Pont de Nemours and Companyから市販品として得られる。
【0048】
接着剤組成物の第2の成分として使用するために適したエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの分子量およびメルトインデックスはかなり変化することができる。望ましい特定のメルトインデックスは、ブレンドから求められた性質のバランスに依存し、例えば、特定のパッケージング構造物のために必要とされる酸素バリアと構造性質との所望の組合せを提供することができる。
【0049】
本発明の目的のために、接着剤の第2の成分であるエチレンコポリマーは、接着剤の収縮性質が損なわれない限り、特定のコポリマーの様々な種の混合物など、成分の混合物であってもよいことが予想される。例えば、様々なメルトインデックスを有するか、または異なったアルキル基を有するエチレンアルキル(メタ)アクリレートを利用することができる。
【0050】
接着剤組成物の第2の成分として有用な高次エチレンコポリマーの例には、エチレンアルキル(メタ)アクリレート一酸化炭素ターポリマーなどがある。好ましい例は、(メタ)アクリレートコモノマーのアルキル基が1〜4個の炭素原子を含有するものである。エチレン(メタ)アルキルアクリレート一酸化炭素ターポリマーに導入されたアルキル(メタ)アクリレートコモノマーの相対量は、コポリマーの全重量の数重量パーセントから40重量パーセント程度までまたはさらにそれ以上に広く変化することができる。同様に、アルキル基の選択は変化することができる。アルキル基は直鎖または分岐状であってもよい。好ましくは、アルキル基は1〜4個の炭素原子を含有し、アルキル(メタ)アクリレートコモノマーは、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの全重量の6〜40重量パーセント、好ましくは12〜32重量%を占める。エチレンアルキルアクリレート一酸化炭素ターポリマーが好ましい。エチレンn−ブチルアクリレート一酸化炭素ターポリマーが重要である。
【0051】
これらのターポリマーを上に記載されたそれらの方法と同様な、オートクレーブまたはチューブ方法のどちらかによってエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび一酸化炭素の共重合によって調製することができる。適したエチレンアルキル(メタ)アクリレートCOコポリマーには、DuPontから入手可能なElvaloy(登録商標)HP樹脂がある。
【0052】
接着剤組成物の第3の成分は粘着付与剤である。粘着付与剤の存在によって、区別された基材に対する初期接着性を強化する。粘着付与剤は、接着剤を適用する間の湿潤を改良する。粘着付与剤の存在によって接着剤組成物の耐変形性を低下させ、従って、接触したときに結合の生成を容易にする。また、それは、フィルムを延伸して後に収縮するときに結合接着性を容易にする。
【0053】
粘着付与剤は、一般に当該技術分野に公知の任意の適した粘着付与剤であってよい。例えば、粘着付与剤には、米国特許第3,484,405号明細書に記載されたタイプなどが挙げられるがそれらに限定されない。適した粘着付与剤には、様々な天然および合成樹脂およびロジン材料などがある。使用できる粘着付与剤樹脂は、一般に、特定の融点を有さず結晶化する傾向をもたない有機化合物の混合物の形の、液体、半固体から固体、複合非晶質材料である。このような樹脂は、水に不溶性であり、野菜または動物由来であってもよく、もしくは合成樹脂であってもよい。適した粘着付与剤には、以下に記載された樹脂などがあるが必ずしもそれらに限定されない。
【0054】
本発明の接着剤組成物において使用するために適した粘着付与剤の1つのクラスには、パラ−クマロン−インデン樹脂などのクマロン−インデン樹脂がある。一般に、使用できるクマロン−インデン樹脂は、約500〜約5,000の範囲の分子量を有する。他の適した粘着付与剤はスチレン化テルペンなどのテルペン樹脂である。これらのテルペン樹脂は、約600〜6,000の範囲の分子量を有することができる。
【0055】
接着剤組成物において使用するために適した他の粘着付与剤は、約500〜約5,000の範囲の分子量を有するブタジエン−スチレン樹脂である。また、約500〜約5,000の範囲の分子量を有するポリブタジエン樹脂は、粘着付与剤として有用である。Buton(登録商標)樹脂は、このような粘着付与剤の例である。
【0056】
粘着付与剤成分として使用できる樹脂の別のクラスには、石油の精製から得られた選択された留分の触媒重合によって製造された、約500〜約5,000の分子量範囲を有する炭化水素樹脂がある。このような樹脂の例は、Piccopale(登録商標)100樹脂として市販された樹脂である。同様に、イソブチレンの重合から得られたポリブテンが粘着付与剤として含有されてもよい。Eastman Chemical Companyから入手可能なRegalite(登録商標)樹脂などの水素化炭化水素樹脂も適している。
【0057】
また、粘着付与剤は、ロジン材料、低分子量スチレン硬質樹脂または不均化ペンタエリトリトールエステルであってもよい。
【0058】
粘着付与剤として有用なロジンは、「ロジン」として公知の市販のいずれかの標準材料、またはロジンを含有する供給原料であってもよい。ロジンは主に、「樹脂酸」として一般に称されるピマル酸およびアビエチン酸によって代表される、C20、三環縮合環、モノカルボン酸の混合物である。本発明の場合、用語「ロジン」には、天然ロジン、液体ロジン、改質ロジンおよび精製ロジン酸の他、金属イオンで部分的ないし完全に中和された塩、例えばレジネート等、ロジン酸の誘導体を一括して含める。ロジン材料は、二量化ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンなどの改質ロジン、またはロジンのエステルであってもよい。改質ロジン樹脂(その誘導体を含める)を調製するための当該技術分野において理解された本質的に任意の反応条件を使用して本発明において使用するための改質ロジンを調製してもよい。ロジンの反応生成物およびそれらの調製方法は当該技術分野に公知である(例えば米国特許第2,007,983号明細書を参照のこと)。
【0059】
芳香族粘着付与剤には、スチレン、アルファ−メチルスチレン、および/またはビニルトルエン、およびそれらのポリマー、コポリマーおよびターポリマー、テルペン、テルペンフェノール樹脂、改質テルペン、およびそれらの組合せから誘導された熱可塑性炭化水素樹脂などがある。これらを一部または全部、さらに水素化して脂環式粘着付与剤を製造してもよい。
【0060】
本発明において使用できる粘着付与剤のより広範なリストは、TAPPI CAレポート♯55、1975年2月、13〜20ページ、Technical Association of the Pulp and Paper Industry(ジョージア州アトランタ)の出版物に提供されており、200を超える市販の粘着付与剤樹脂を記載している。
【0061】
接着剤組成物の成分は一般に、特定の好ましい比において存在する。すなわち、一般に第1の官能化ポリマー成分の量は、接着剤組成物の全重量を基準にして5〜30重量%の量において存在する。官能化ポリマー成分の量は接着剤組成物の8〜25重量%であるのが好ましく、その理由は、このような組成物は一般に、より多い量の官能化ポリマーを有する組成物ほど着色されていないからである。接着剤の第2の成分であるエチレンコポリマーは一般に、接着剤の全重量を基準にして60〜90重量%の量において、接着剤組成物の全重量を基準にして好ましくは65〜85重量%の量において接着剤組成物中に存在する。粘着付与剤は通常、接着剤組成物の重量を基準にして0.1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の量において存在する。特に有用な組成物は、接着剤組成物の全重量を基準にして20〜25重量%の官能化ポリマー成分、5〜15重量%のエチレンコポリマー成分および5〜15重量%の粘着付与剤を含有する。
【0062】
接着剤組成物は、積層体の第1の層において使用するために上に記載されたような様々な一般に用いられる添加剤および充填剤をさらに含有してもよい。いくつかの特に有用な添加剤には、酸化防止剤、帯電防止剤および防曇添加剤などが挙げられる。
【0063】
また、接着剤組成物は、95℃の温度に暴露されたときに本組成物を含む積層体がその元の面積の85%以下に収縮する能力を含めて、接着剤組成物の基本的および新規な特性が本質的に影響を及ぼされない限り、付加的なポリマー材料を含有してもよい。このようなポリマーの例には、エチレンプロピレンジエンエラストマー、すなわちEPDM、エチレンプロピレンエラストマーおよびエチレンスチレンエラストマーなどがある。これらのポリマーは、接着剤組成物の全重量を基準にして約20重量%まで、好ましくは約5〜約15重量%までの量において含有されてもよい。
【0064】
本発明の多層積層熱収縮性フィルムの第3の層は、ポリエチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む。
【0065】
適したポリエチレンには、分岐状ポリエチレン、例えば低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、非常に低密度のポリエチレン、メタロセンポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマーおよびエチレン、プロピレンおよびジエンモノマーのコポリマーなどがある。これらの後者のコポリマーは、EPDMコポリマーとして当該技術分野において一般に称される。EPDMにはターポリマーならびにテトラポリマーなどの高次コポリマーがある。テトラポリマーには、例えば、エチレン、プロピレン、1,4−ヘキサジエンおよびエチリデンノルボルネンのコポリマーがある。用語「メタロセンポリエチレン」は、メタロセン触媒の存在下で調製されるそれらのポリエチレンならびに拘束幾何触媒および単一部位触媒の存在下で調製されたそれらのポリエチレンを含めることが意図される。
【0066】
ここに記載された積層体組成物の第3の層の成分として有用なポリエチレンホモポリマーおよびコポリマーを様々な方法によって調製することができる。このような方法の例には、公知のZiegler−Natta触媒重合(例えば米国特許第4,076,698号明細書および米国特許第3,645,992号明細書を参照のこと)、メタロセン触媒重合、VersipolTM単一部位触媒重合およびフリーラジカル重合などがあるがそれらに限定されない。本明細書中で用いられるとき、用語メタロセン触媒重合は、メタロセン触媒の使用を必要とする重合方法ならびに拘束幾何および単一部位触媒の使用を必要とするそれらの方法を含める。重合を溶液相方法、気相方法等として行なうことができる。
【0067】
使用に適したポリエチレンの密度は、約0.850g/cc〜約0.970g/cc、好ましくは約0.850g/cc〜約0.930g/cc、より好ましくは約0.850g/cc〜約0.910g/ccの範囲である。本発明の組成物において有用な直鎖ポリエチレンは、ブテン、ヘキセンまたはオクテンなどのアルファ−オレフィンコモノマーの共重合単位を導入して、そのように記載された密度範囲内の好ましいコポリマーを提供することができる。例えば、ポリオレフィン成分として有用なコポリマーは、多量の重量部分または重量パーセンテージのエチレンの共重合単位と、少量の重量部分または重量パーセンテージの少なくとも1つの他のアルファ−オレフィンの共重合単位とを含むことができる。適したアルファ−オレフィンは、少なくとも3個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンからなる群から選択されうる。これらのコモノマーは、コポリマーの約20重量%までの量において共重合単位として存在している。好ましいアルファ−オレフィンには、プロピレン、1ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1デセン、1テトラデセンおよび1オクタデセンなどがある。コポリマーは、エチレンと、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテンなどの2つ以上のアルファ−オレフィンとの重合によって得られる。同じくポリオレフィンとしてここでの使用が考えられるのは、これらのエチレンアルファ−オレフィンコポリマーの2つ以上のブレンドならびにエチレンホモポリマーと適したエチレンアルファ−オレフィンコポリマーの1つとの混合物である。ブタジエン、ノルボルナジエン、ヘキサジエンおよびイソプレンなどのジオレフィン成分の少量を有するエチレンコポリマーもまた、ブレンドされた組成物の調製のために一般に適している。
【0068】
従って、ポリオレフィンがコポリマーであるとき、それは、二重結合を有するエチレン/プロピレンエラストマーであってもよい。このようなコポリマーには、エチレン、プロピレン、ジエンおよび場合により他のオレフィンコモノマーの共重合によって形成されたターポリマー、テトラポリマーまたは高次コポリマーであるEPDMがある。
【0069】
ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーからなる鎖セグメントと、例えば、プロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーからなる鎖セグメントとで構成されている。
【0070】
第3の層を含む他の適したエチレンコポリマーには、エチレン/酸コポリマーイオノマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマーおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマーなどがある。適したエチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマーおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマーは、接着剤組成物の第2の成分として使用するために同じく適しているコポリマーであり、上に記載されている。
【0071】
エチレン酸コポリマーは、エチレンと例えばアクリル酸またはメタクリル酸などの不飽和カルボン酸との共重合によって調製されてもよい。また、エチレン酸コポリマーには、ターポリマーなどの高次コポリマーを含める。ターポリマーをエチレン、不飽和カルボン酸およびアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートなどの第3のコモノマーから調製することができる。したがって、本発明の積層フィルムの第3の層のために有用な酸コポリマーは、エチレン、C3−C8α,βエチレン性不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位および場合により、付加的なコモノマー、好ましくはアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート(アルキル基が1〜10、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する)から誘導された共重合単位を含む。いくつかの特に有用なターポリマーは、不飽和酸含有量がコポリマーの約2〜30重量%であり付加的なコモノマーがコポリマー(すなわちターポリマーまたは高次コポリマー)の約40重量%までの量において存在するターポリマーである。
【0072】
イオノマーは、コポリマー中のカルボン酸部分の少なくとも一部を中和して相当するカルボキシレート塩を形成する酸コポリマーである。イオノマーを上に記載された酸コポリマーから調製することができ、そこで不飽和酸の共重合の結果として存在するカルボン酸官能基は、アルカリ金属イオン、遷移金属イオン、アルカリ土類イオンまたはこのようなカチオンの組合せによって少なくとも部分的に中和される。
【0073】
酸コポリマーを中和するために適した化合物には、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウム)イオン、遷移金属イオン(例えば、亜鉛)またはアルカリ土類イオン(例えばマグネシウムまたはカルシウム)および混合物またはこのようなカチオンの組合せのイオン性化合物がある。エチレン酸コポリマーを中和するために用いられてもよいイオン性化合物には、アルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシド、およびアルカリ土類金属および遷移金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドなどがある。酸性基を中和することができる化合物の量は、酸コポリマー中の酸部分の目標量を中和するように計算された化合物の化学量論量を添加することによって提供されてもよい。
【0074】
市販されている適したエチレン酸コポリマーおよびイオノマーには、共にE. I. du Pont de Nemours and Companyから入手可能であるNucrel(登録商標)酸コポリマーおよびSurlyn(登録商標)イオノマー樹脂などがある。
【0075】
本発明の積層体の第3の層の成分として使用するために適したポリプロピレンポリマーには、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびターポリマーなどがある。プロピレンのコポリマーには、プロピレンと1−ブテン、2−ブテンおよび様々なペンテン異性体等の他のオレフィンとのコポリマーおよび好ましくはプロピレンとエチレンとのコポリマーなどがある。プロピレンとエチレンとのコポリマーは上に記載された。ランダムコポリマー(statistical copolymer)としても公知のランダムコポリマー(random copolymer)は、プロピレンとコモノマーとが、プロピレンの、コモノマーに対する供給比に相当する比においてポリマー鎖の全体にわたって不規則に分散されるポリマーである。また、これらのポリマーは、本発明の積層体の第3の層において使用するために適している。
【0076】
本発明において使用するために適したポリプロピレンホモポリマーまたはランダムコポリマーをいずれかの公知の方法によって製造することができる。例えば、ポリプロピレンポリマーを、有機金属化合物に基づいておよび三塩化チタンを含有する固形分に基づいてZiegler−Natta触媒系の存在下で調製することができる。
【0077】
ブロックコポリマーを同様に製造することができるが、ただし、プロピレンは一般に最初に第1の段階においてそれだけで重合され、第2の段階において、第1の段階の間に得られたポリマーの存在下でプロピレンおよびエチレンなどの付加的なコモノマーが次に重合される。これらの段階の各々を例えば、炭化水素希釈剤中に懸濁して、液体プロピレン中に懸濁して、またはほかに気相中で、連続的にまたは非連続的に、同じ反応器内でまたは別個の反応器内で行なうことができる。
【0078】
また、本発明の積層体の第1の層において使用するために記載されたようなポリアミドは、第3の層において使用するために適している。さらに、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエステルおよび環状オレフィンコポリマーは、単独でまたは別のポリマーと組み合わせて第3の層の成分として利用されてもよい。
【0079】
第3の層において有用なポリエステルには、フィルムを形成するために適しているジオールおよび二酸(またはそれらの誘導体)の縮合から誘導されたポリマーがある。主な酸成分として芳香族ジカルボン酸を含むポリエステルが重要である。例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−ジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどがある。また、これらのポリエステルは、付加的な成分として別のアルコールおよび/または別のジカルボン酸のどちらかと共重合したコポリマーであってもよい。そのジカルボン酸部分の一部が、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸の他、置換基としてスルホン酸の金属塩を含有するイソフタル酸、例えば5−ナトリウムスルホイソフタレートによって置換されてもよい。そのグリコール部分の一部が、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、1,2プロパンジオール、1,3プロパンジオール(トリメチレングリコール)および1,4ブタンジオールによって置換されてもよい。また、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、トリメリト酸、トリメシン酸、またはホウ酸などの少量の鎖分岐剤の使用が考えられる。また、これらのポリエステルの2つ以上の混合物を用いてもよい。用語「ポリエステル」は、本明細書において使用されるとき、上に記載されたポリマーのいずれかまたは全てを指すために一般的に用いられる。ポリエステルブレンドは好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートをその主な成分として有し、特に好ましいポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。
【0080】
環状オレフィンコポリマーは、エチレンと2−ノルボルネンなどのジシクロペンタジエンから典型的に誘導された環状オレフィンとの共重合によって調製されてもよく、エチレンと2−ノルボルネンとのコポリマーである。これらのコポリマーは、すぐれた透明性および水蒸気バリア性質を有する。市販されている例には、Topas Advanced Polymers GmbHから入手可能なTopas(登録商標)樹脂がある。
【0081】
場合によっては、ポリマーのブレンドが第3の層の成分として有用である場合がある第1の層の場合と同様、第3の層は、積層フィルムが95℃の温度に暴露されたときにその元の面積の85%以下に収縮する能力を減じない量において用いられた、本明細書に記載されたような従来の添加剤をさらに含むことができる。
【0082】
本発明の積層フィルムは、上に記載された第1の層、接着剤層および第3の層を含み、そこで接着剤層は、第1および第3の層と接触しており、間に配置されている。また、本発明の積層フィルムは付加的な層を含有してもよい。例えば、付加的な層は、第1または第3の層のどちらかの外面と接触するように配置されてもよい。付加的な層は、第1または第3の層の両方の外面と接触するように配置されてもよい。さらに、一連の積層層を第1および第3の層のどちらかまたは両方に配置して多層積層フィルムまたは構造物を形成してもよい。本発明のこのようないずれかの積層体において、上に記載された第1の層、接着剤層および第3の層の3層積層体が積層構造物中に存在し、接着剤層は、それらの層の間に配置され、それらの内面と接触している。多層収縮フィルムはしばしば、それぞれ1つまたは2つの接着剤層、または「タイ」層を含む3〜9層を有する。
【0083】
本発明の積層体の代表例には、以下に記載された多層構造物があり、そこで本発明の積層収縮フィルムの第2の層の接着剤は「接着剤」と呼ばれる。記載された多層フィルム構造物において、記号「/」は、層間の境界を表す。以下の積層体は、本発明の積層体の完全なリストであることを意味せず、例示のためのものである。
【0084】
ポリアミド/接着剤/ポリエチレンホモポリマー
ポリアミド/接着剤/ポリプロピレン
ポリアミド/接着剤/ポリアミド;
エチレンビニルアルコール/接着剤/ポリエチレン、
エチレンビニルアルコール/接着剤/エチレンビニルアセテート;
ポリアミド/接着剤/エチレンアルキルアクリレートコポリマー
ポリアミド/接着剤/エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー;
エチレンビニルアルコール/接着剤/エチレンアクリル酸コポリマーイオノマー
エチレンビニルアルコール/接着剤/ポリエステル;
ポリアミド/接着剤/ポリエチレン/接着剤/ポリアミド、
ポリエチレン/接着剤/ポリアミド/接着剤/ポリエチレン、
ポリエステル/接着剤/ポリアミド/接着剤/ポリエステル;
エチレンビニルアセテート/接着剤/EVOH/接着剤/エチレン(メタ)アクリル酸イオノマー
ポリエチレン/接着剤/EVOH/接着剤/エチレン(メタ)アクリル酸イオノマー
ポリアミド/接着剤/ポリエチレン/接着剤/ポリエチレン、
ポリエチレン/接着剤/ポリアミド/エチレンビニルアルコール/ポリアミド/接着剤/ポリエチレン、
ポリエチレン/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/エチレンビニルアセテート、
エチレンビニルアセテート/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/ポリエチレン、
エチレンメチルアクリレートコポリマー/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/EVA、
ポリプロピレン/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/ポリプロピレン、
ポリプロピレン/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/ポリエチレン、
ポリプロピレン/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/EVA、および
ポリエステル/接着剤/ポリアミド/EVOH/ポリアミド/接着剤/ポリエステル。
【0085】
当業者は、他のフィルム積層体構造物が本発明の範囲内にあることを理解する。このような構造物には、本発明の権利請求された積層体の第2の層の他に1つまたは複数の接着剤層を含有する多層収縮フィルム積層体があり、そこでこのような付加的なタイ層においての接着剤は第2の層の組成物の上記の記載を満たさない。各実施形態は、パッケージング用途に応じて特定の利点を有する。
【0086】
本発明の積層熱収縮性フィルムの第2の層を形成する接着剤層は、フィルムにアニール工程またはさらなる熱処理を行なわずに少なくとも約85gm/25mmの剥離強さに示されるような、中間層の接着性のレベルを提供する。少なくとも約100gm/25mmの剥離強さが好ましく、少なくとも約150gm/25mmの剥離強さがより好ましい。好ましい実施形態において、積層収縮性フィルムは、少なくとも約200gm/25mmの剥離強さを有する。より好ましいフィルムは、約300gm/25mmより大きい剥離強さを示す。他の好ましい実施形態には、二軸延伸後にフィルムにアニール工程または熱処理工程を行なわずに約400gm/25mmより大きい剥離強さが得られるフィルムがある。最も好ましくは、収縮フィルムは、約500gm/25mmより大きい剥離強さを有する。収縮フィルムの使用または用途に応じて、詳述された範囲内のより大きいまたはより小さい接着性が適しているかまたはさらに望ましいことがある。当業者は、例えば、最終フィルムに必要とされた性能レベル、材料のコスト、および接着剤境界面の不良の可能性などの因子を考慮して、フィルムに最も適切な接着性のレベルを選択する。
【0087】
本発明の多層積層熱収縮性フィルムを延伸して収縮性を提供する。フィルムを延伸するために選択された温度は、延伸されるフィルム層のタイプおよび属性、フィルムの成分のメルトインデックス、延伸プロセスの間にフィルムに適用された伸長力、フィルム製造ラインの速度、および/または望ましい伸長度などの多くの因子に依存することがある。本発明はいずれの例によっても限定されない。しかしながら多くの従来の延伸方法を約70℃〜約125℃の範囲内で行なうことができる。この範囲内のいずれの個々の温度も、ここに記載された因子の少なくともいくつかに応じて、収縮用途において使用するためにフィルムを延伸するのに有用である場合がある。多くの従来の延伸方法は、約85℃〜約100℃の範囲の温度内で実施される。
【0088】
積層体を好ましくは押出コーティング、同時押出またはブロー成形によって単一層を積層することによって製造することができる。積層体の厚さは任意であり、その用途に依存するが、それは好ましくは、例えば約10〜約3000μm、特に、約20〜約1000μmである。積層体は場合により、当該技術分野に公知の方法によって照射されてもよい。
【0089】
積層フィルムを以下のように同時押出によって作製することができる。様々な成分の粒状物を適した押出機内で溶融し、変換技術を用いてフィルムに変換する。同時押出のために、溶融ポリマーをダイまたはダイのセットに通過させて、層状流として加工される溶融ポリマーの層を形成し、次に冷却して層状構造物を形成する。また、フィルムは、同時押出の後、1つまたは複数の他の層上に積層することによって作製されてもよい。適した変換技術には、インフレートフィルム押出、キャストフィルム押出、キャストシート押出および押出コーティングなどがある。好ましいフィルムは、インフレートフィルム押出によって得られたインフレートフィルムである。
【0090】
フィルムは、フィルムの直接急冷またはキャスチングの他にさらに延伸される。一般的な観点から方法は、溶融ポリマーの多層流を同時押出する工程と、同時押出物を急冷する工程と、急冷された同時押出物を少なくとも1つの方向に延伸する工程とを含む。フィルムは一軸延伸されてもよいが、好ましくは、フィルムの平面において2つの相互に垂直な方向に延伸することによって二軸延伸され、機械的および物理的性質の良好な組合せを達成する。
【0091】
フィルムを一軸または二軸伸長するための延伸および伸長装置は当該技術分野に公知であり、フィルムを製造するために当業者によって改造されてもよい。このような装置および方法の例は、例えば、米国特許第3,278,663号明細書、米国特許第3,337,665号明細書、米国特許第3,456,044号明細書、米国特許第4,590,106号明細書、米国特許第4,760,116号明細書、米国特許第4,769,421号明細書、米国特許第4,797,235号明細書および米国特許第4,886,634号明細書に開示された装置および方法を含めると考えられる。
【0092】
好ましい実施形態において、フィルムはダブルバブル押出方法によって延伸され、そこで一次チューブを押出すことによって同時二軸延伸を行ない、次いでそれを急冷し、再加熱し、次に内部ガス圧力によって膨張させて横断方向の延伸をもたらし、長さ方向の延伸をもたらす速度において異速度ニップまたは搬送ローラーによって圧伸する。より詳しくは、一次チューブを環状ダイから溶融押出する。この押出された一次チューブを急速に冷却して結晶化を最小限に抑え、次いで圧潰する。次にそれをその延伸温度に(例えば水槽によって)再び加熱する。延伸域において二次チューブをインフレーションによって形成し、それによってフィルムを横断方向に半径方向に膨張させ、膨張が両方の方向に、好ましくは同時に起こるような温度においてチューブを縦方向に引っ張るかまたは伸長し、チューブ材料の膨張は、ドローポイントにおいて厚さの急激な、突然の低減を伴う。次に、チューブ状フィルムを、ニップロールを通して再び平らにすることができる。チューブ状フィルムをその長さに沿って分割することによって平らなフィルムを作製することができ、圧延および/またはさらに加工されうる平らなシートに開くことができる。
【0093】
好ましくは、フィルムを50メートル/分(m/分)より高い速度において、200m/分の速度まで製造機で加工することができる。従って、フィルムは高速度機械と親和性である。
【0094】
また、チューブ状フィルムは、(例えば、熱封止または高周波溶接によって)チューブ表面にわたって封止を形成し、封止されたチューブを複数の長さに切断し、それによって、1つの閉じた端部と1つの開放端部とを有するチューブを提供することによって、収縮バッグに加工されてもよい。パッケージされる材料を開放端部を通してチューブに挿入し、次にチューブの開放端部を封止することによって封止して充填された収縮バッグを形成することができる。場合によっては、収縮バッグの形成、充填および封止の作業は、自動機械を用いて連続的におよび/または同時に行なわれる。
【0095】
本発明は以下の実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0096】
以下の実施例において用いられるとき、メルトインデックス(MI)は、2160gの重りを用いて190℃においてASTMD1238によって定量されたときのメルトインデックスを指し、MIの値はg/10分単位で記録される。
【0097】
以下の材料が使用される。
EMA−1−エチレンメチルアクリレート(「MA」)ジポリマー(18重量%のMA、MI 2、密度0.94g/cc)。
EMA−2−エチレンメチルアクリレートジポリマー(20重量%のMA、MI 8、密度0.94g/cc)。
EMA−3−エチレンメチルアクリレートジポリマー(9重量%のMA、MI 2、密度0.93g/cc)。
EMA−4−エチレンメチルアクリレートジポリマー(4重量%のMA、MI 1)。
EVA−1−エチレンビニルアセテート(「VA」)ジポリマー(25重量%のVA、MI 2、密度0.95g/cc)。
EVA−2−エチレンビニルアセテートジポリマー(9重量%のVA、MI 2、密度0.93g/cc)。
EEHM−1−エチレンエチル水素マレエートジポリマー(9.5重量%のエチル水素マレエート。
EAO−1−エチレンブテンジポリマー(密度0.92g/cc、MI 1)。
EAO−2−エチレンブテンジポリマー(密度0.88g/cc、MI 1)。
EAO−3−エチレンブテンジポリマー(密度0.92g/cc、MI 12)。
EAO−4−エチレンオクテンジポリマー(密度0.86g/cc、MI 13)。
EAO−5−エチレンプロピレンジポリマー(密度0.87g/cc、MI 0.7)。
PE−1−ポリエチレン(密度0.923g/cc、MI 4.5)。
PE−2−ポリエチレン(密度0.923g/cc、MI 15)。
グラフト−1−エチレンメチルアクリレートジポリマー(20重量%のMA、1.4重量%のグラフト化無水マレイン酸、MI 3)。
グラフト−2−エチレンメチルアクリレートジポリマー(24重量%のMA、1.8重量%のグラフト化無水マレイン酸、MI 2)。
グラフト−3−エチレンビニルアセテートジポリマー(28重量%のMA、1.5重量%のグラフト化無水マレイン酸、MI 1.4)。
グラフト−4−メタロセン直鎖低密度ポリエチレン(1重量%のグラフト化無水マレイン酸、MI 3)。
グラフト−5−Ziegler−Natta直鎖低密度ポリエチレン(0.9重量%のグラフト化無水マレイン酸、MI 1.5)。
粘着付与剤−1−Regalite(登録商標)R1125(PINOVA)。
粘着付与剤−2−Escorez(登録商標)5320(ExxonMobil Corporation)。
粘着付与剤−3−Piccolyte(登録商標)C115(PINOVA)。
【0098】
以下の表1に「AD2」として示された接着剤組成物は、以下の手順によって調製される。AD2の成分をタンブルミキサ内で乾燥ブレンドし、次に、乾燥ブレンドを、46RPMにおいて作動される、混合ヘッドを有する2.5インチの一軸スクリュー押出機のホッパー内に供給した。押出機バレルを160℃、180℃、188℃、188℃に設定し、ダイを188℃に設定した。配合されたブレンドの溶融温度は195℃であり、水急冷槽中で冷却され、次にペレタイザーでストランドカットされた。AD2組成物中の各成分の重量パーセンテージは表1に示される。
【0099】
表1にAD3〜AD6およびAD9〜AD11として示された他の接着剤組成物および表2にCAD1、CAD7およびCA8として示された比較用接着剤組成物は、実質的に同じ方法で調製される。接着剤組成物および比較用接着剤組成物の成分の重量パーセンテージは表1および2に示される。
【0100】
表1

【0101】
表2

【0102】
本発明の多層収縮フィルムを以下の方法でAD2接着剤から調製する。以下の構造および性質を有する、厚さ3ミルの5層二軸延伸フィルムを商業ダブルバブルラインで製造し、この場合、接着剤タイ層2はAD2から形成された。接着剤タイ層1は異なった接着剤組成物であった。
【0103】
EVA/接着剤タイ層1/ナイロン/接着剤タイ層2/エチレンコポリマー
層の厚さ:1.3ミル/0.3ミル/0.5ミル/0.3ミル/0.6ミル
レイフラットは12インチである。95℃においてのフィルムの元の寸法からの収縮は、横断方向に約42%および長さ方向に約33%である。
【0104】
フィルムを幅1インチのストリップに切断し、次にEVA/AD2/ナイロン面において分離し、一般にASTMD−1876−72の手順を用いてAD2層のナイロン層に対する剥離強さについて試験した。
【0105】
本発明の他の多層フィルムおよび比較用接着剤組成物から形成された接着剤タイ層を有する多層フィルムを実質的に同じ方法で作製する。
【0106】
以下の構造および性質を有する、5層の厚さ2.5ミルの二軸延伸フィルムを商用ダブルバブルラインで製造する。
【0107】
非常に低密度のポリエチレン/接着剤タイ層1/ナイロン/接着剤タイ層1/EVA
層の厚さ:1ミル/0.13ミル/0.25ミル/0.13ミル/1ミル
レイフラット:16.5インチ。
【0108】
95℃の温度に暴露されたときのフィルムの元の寸法からの収縮は縦方向に約41%および横断方向に44%である。
【0109】
フィルムを幅1インチのストリップに切断し、次にEVA/接着剤タイ層1/ナイロン面において分離し、ASTMD−1876−72の手順を用いて接着剤タイ層1層のナイロン層に対する剥離強さについて試験した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)外面と内面とを有する第1の層であって、ポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む、第1の層と、
B)1)a)無水物改質ポリマー、b)エチレンと、C4−C8不飽和無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のジエステルからなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含むコポリマーおよびc)それらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの官能化ポリマー成分と、
2)エチレンと、ビニルアセテート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびそれらの混合物(前記アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する)からなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含む、前記官能化ポリマー成分と化学的に異なったエチレンコポリマーと、
3)粘着付与剤樹脂と、から本質的になる第2の層と、
C)外面と内面とを有する第3の層であって、ポリエチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、環状オレフィンポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む第3の層と
を含む多層積層熱収縮性フィルムであって、
前記第2の層が、前記第1および第3の層の内面の間にそれらと接触して配置され、95℃の温度にさらされるとき、前記収縮性フィルムが、その元のサイズの85%以下である程度まで収縮する、多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記第1の層がポリアミドを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項3】
前記第1の層がエチレンビニルアルコールコポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項4】
前記第2の層の前記官能化ポリマーが無水物改質ポリマーである、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項5】
前記無水物改質ポリマーが無水物改質エチレンコポリマーである、請求項4に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項6】
前記エチレンコポリマーが、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマーおよびエチレンアルキルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項5に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項7】
前記第2の層の前記官能化ポリマーが、エチレンと、C4−C8不飽和無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4−C8不飽和酸のジエステルからなる群から選択されたコモノマーとの共重合単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項8】
前記第2の層の前記官能化ポリマー成分と化学的に異なった前記エチレンコポリマーが、エチレンとビニルアセテートとの共重合単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項9】
前記第2の層の前記官能化ポリマー成分と化学的に異なった前記エチレンコポリマーが、エチレンと、アルキルアクリレート(前記アルキル基が1〜10個の炭素原子を有する)との共重合単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項10】
前記第2の層の前記官能化ポリマー成分と化学的に異なった前記エチレンコポリマーが、エチレンと、アルキルメタクリレート(前記アルキル基が1〜10個の炭素原子を有する)との共重合単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項11】
前記第3の層がポリアミドを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項12】
前記第3の層がエチレンコポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項13】
前記第3の層がポリエチレンホモポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項14】
前記第3の層がポリエステルを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項15】
前記第3の層がプロピレンコポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項16】
前記第3の層がポリカーボネートを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項17】
前記エチレンコポリマーがエチレン酸コポリマーである、請求項12に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項18】
前記エチレンコポリマーがエチレン酸コポリマーのイオノマーを含む、請求項12に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項19】
付加的な層を含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項20】
少なくとも5つの層を有する、請求項19に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項21】
請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルムを含む、収縮バッグ。
【請求項22】
95℃の温度にさらされるとき、その元のサイズの70%以下である程度まで収縮する、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項23】
95℃の温度にさらされるとき、その元のサイズの50%以下である程度まで収縮する、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項24】
チューブの形状の請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項25】
前記第3の層がエチレンコポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項26】
前記第3の層がポリプロピレンホモポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。
【請求項27】
前記第3の層が環状オレフィンポリマーを含む、請求項1に記載の多層積層熱収縮性フィルム。

【公表番号】特表2009−522137(P2009−522137A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548697(P2008−548697)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/049335
【国際公開番号】WO2007/079100
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】