説明

建具用錠機構

【課題】電源電圧が駆動機構を動作できない程に低下してしまうという事態に適切に対応でき、より安全性の高い建具用錠機構を提供すること。
【解決手段】建具に対して取り付けられる基板と、基板からの距離の調整が可能である位置調整手段と、出没自在な閂片41が内蔵された錠本体とを有するものであり、閂片41は、リモコン7の操作によって出没動作がなされるものであって、錠本体には、閂片41を作動させるための駆動部42と、駆動部42に電力を供給するための電源部43と、リモコン7の電波bを受信する受信部44と、駆動部42へ供給される電力aが、基準値よりも低下したことを感知する感知部45と、施錠動作と解錠動作とをするように駆動部42を制御するものであり、感知部45が上記の感知をなした場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部46とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドアなどの開閉する建具に設けられる建具用錠機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】登録実用新案第3090118号公報
【特許文献2】特開2002−256745号公報
【0003】
住宅などのドアを施錠するための手段として、従来よりシリンダー錠が広く用いられている。これは、鍵穴に対して凹凸が刻まれた鍵を挿入することにより、鍵穴の内部に複数配位されている、小さな棒状体であるタンブラーを移動させ、解錠可能な状態とするものである。
【0004】
ところが、このシリンダー錠は、鍵穴に針金などを差し込むことによって、正しい鍵を挿入した場合と同様の状態にされて解錠されてしまうことがあり、しっかりと施錠しているにもかかわらず、シリンダー錠の解錠について知識ある者、いわゆる「ピッキング」犯による窃盗などの被害にあうことがあり、不安のあるものであった。
【0005】
また、防犯を目的として、1つのドアにつき錠を複数取り付けることが行われる場合があるが、その錠がシリンダー錠の場合は、上記のように容易に解錠されてしまうため、効果は期待できなかった。
また、上記の対策として、従来のドアの錠を、番号入力による電子式錠などのシリンダー錠以外の錠に交換する方法が考えられるが、それぞれの錠機構の形状が一致しないため、錠のみを取り替えることはほとんど不可能であり、ドアとその固定枠を一式交換する必要があった。そのため、工事が大掛かりで、費用などがネックとなり対応が難しかった。
【0006】
ここで、本願の出願人は、上記の課題を解決するものとして、特許文献1に記載の錠機構を考案した。これは、ドアなどの建具の室内側に取り付け可能な、リモコン操作によって出没可能な閂片を内蔵する錠機構であり、室外側に錠機構が全く現れず、室外側から不正手段により解錠されてしまうことがなく、高い安全性を有するものである。
【0007】
しかし、上記の考案に係る錠機構では、閂片を動作させるための電源電圧が駆動機構を動作できない程に低下してしまう前に、自動的に解錠されるものとされていた。
【0008】
また、このように電源電圧の低下に伴い自動的に解錠される機構は、特許文献2に記載の発明に係る「リモコン式補助錠」にも設けられていた。当該発明における解錠機構では、まず、低下した電圧を電圧検出手段が検出してマイクロコンピュータへ出力する。そしてマイクロコンピュータが、センサスイッチにより閂片の位置を検出し、閂片の位置が施錠状態にあることを検出すると、駆動手段によりアクチュエータを作動して上記のセンサスイッチが開状態を検出するまで閂片を移動して解錠状態とするものである。
【0009】
よって、外出中、このように自動的に解錠状態となった際には、ドアは、元から設けられているシリンダー錠などによる施錠のみとなってしまい、この際にたまたま「ピッキング」犯に狙われて、運悪く窃盗などの被害に遭遇する可能性もあり、防犯の面で更なる改良の余地を残すものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、電池切れなど、電源電圧が駆動機構を動作できない程に低下してしまうという事態に適切に対応でき、防犯の面で、より安全性の高い建具用錠機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、建築物などに取り付けられた固定枠6に対して、移動可能に配位された建具5に取り付けられた建具用錠機構1において、この建具用錠機構1は、建具5に対して取り付けられた基板2と、基板2に設けられ、基板2からの距離の調整が可能である位置調整手段3と、位置調整手段3に取り付けられ、出没自在な閂片41が内蔵された錠本体4とを有するものであり、閂片41は、リモコン7の操作によって出没動作がなされるものであって、錠本体4には、閂片41を作動させるための駆動部42と、駆動部42に電力を供給するための電源部43と、リモコン7の操作によって発せられる電波bを受信する受信部44と、電源部43から駆動部42へと供給される電力が、基準値よりも低下したことを感知する感知部45と、閂片41が錠本体4から突出する動作である施錠動作と、閂片41が錠本体4に没入する動作である解錠動作とをするように、駆動部42を制御するものであって、感知部45が上記の感知をなした場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部46とを有することを特徴とする建具用錠機構を提供する。
【0012】
また、本願の請求項2に記載の発明は、建築物などに取り付けられた固定枠6に対して、移動可能に配位された建具5に取り付けられた建具用錠機構1において、この建具用錠機構1は、建具5に対して取り付けられた基板2と、基板2に設けられ、基板2からの距離の調整が可能である位置調整手段3と、位置調整手段3に取り付けられ、出没自在な閂片41が内蔵された錠本体4とを有するものであり、閂片41は、リモコン7の操作によって出没動作がなされるものであって、錠本体4には、閂片41を作動させるための駆動部42と、駆動部42に電力を供給するための電源部43と、リモコン7の操作によって発せられる電波bを受信する受信部44と、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ってからの経過時間、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ってからの閂片41の累計出没回数、のうち少なくとも一つを感知する感知部45と、閂片41が錠本体4から突出する動作である施錠動作と、閂片41が錠本体4に没入する動作である解錠動作とをするように、駆動部42を制御するものであって、感知部45が上記の感知をなした場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部46とを有することを特徴とする建具用錠機構を提供する。
【0013】
また、本願の請求項3に記載の発明は、建築物などに取り付けられた固定枠6に対して、移動可能に配位された建具5に取り付けられた建具用錠機構1において、この建具用錠機構1は、建具5に対して取り付けられた基板2と、基板2に設けられ、基板2からの距離の調整が可能である位置調整手段3と、位置調整手段3に取り付けられ、出没自在な閂片41が内蔵された錠本体4とを有するものであり、閂片41は、リモコン7の操作によって出没動作がなされるものであって、錠本体4には、閂片41を作動させるための駆動部42と、駆動部42に電力を供給するための電源部43と、リモコン7の操作によって発せられる電波bを受信する受信部44と、2回の感知を行い、そのうちの1回目は、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ったことを感知し、2回目は、1回目の感知がなされた後に、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ったこと、あるいは、1回目の感知からの経過時間、あるいは、1回目の感知からの閂片41の累計出没回数を感知する感知部45と、閂片41が錠本体4から突出する動作である施錠動作と、閂片41が錠本体4に没入する動作である解錠動作とをするように、駆動部42を制御するものであって、上記の2回目の感知がなされた場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部46とを有することを特徴とする建具用錠機構を提供する。
【0014】
また、本願の請求項4に記載の発明は、上記の1回目の感知がなされた場合に警告を発する警告手段47を有することを特徴とする、請求項3に記載の建具用錠機構を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1に記載の発明は、電源部43から駆動部42へと供給される電力が、基準値よりも低下した際において、制御部46が、駆動部42に対し、施錠動作をさせず、解錠動作のみをさせることにより、電池切れなど、電源電圧が駆動機構を動作できない程に低下してしまう前に施錠をできなくして、使用者に電池交換を促すことができる。よって、施錠して外出した後、電圧低下によって自動的に解錠状態となるようなことがないため、防犯の面で、より安全性の高い建具用錠機構を提供することができたものである。
【0016】
また、本願の請求項2に記載の発明は、感知部45が、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ってからの経過時間、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ってからの閂片41の累計出没回数、のうち少なくとも一つを感知することによって、制御部46が、駆動部42に対し、施錠動作をさせず、解錠動作のみをさせることにより、電池切れなど、電源電圧が駆動機構を動作できない程に低下してしまう前に施錠をできなくして、使用者に電池交換を促すことができる。よって、施錠して外出した後、電圧低下によって自動的に解錠状態となるようなことがないため、防犯の面で、より安全性の高い建具用錠機構を提供することができたものである。
【0017】
また、本願の請求項3に記載の発明は、感知部45が2回の感知のうちの1回目に、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ったことを感知することにより、2回目の感知で、制御部46が駆動部42に対し、施錠動作をさせず、解錠動作のみをさせる段階に先立ち、使用者に対して、より早期の電池交換を促すことができる建具用錠機構を提供することができたものである。
【0018】
また、本願の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明の効果に加え、上記の1回目の感知がなされた場合に警告を発する警告手段47を有することより、使用者に電池交換の時期をはっきりと知らせることができる建具用錠機構を提供できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき本願考案の実施の形態の一例をとりあげて説明する。図1は本例の建具用錠機構を示す斜視図であり、図2及び図3は本例の建具用錠機構をドアに取り付けた状態を示す説明図である。図4は、本例の建具用錠機構の制御に関する説明図である。
【0020】
本例の建具用錠機構1は、図2及び図3に示されるように、固定枠6と共に開き戸を構成するドア5に取り付けられ使用されるものである。
この錠機構1は、図1に示されるように、基板2と、位置調整手段3と、錠本体4とを有する。
【0021】
基板2は、ひずみの発生しない程度の厚さを有する平坦な鋼板やアルミ合金板などの金属板が用いられている。本例における基板2の形状は、平面視が略長方形のものとされている。
基板2の一方の面には粘着テープが取り付けられ、この粘着テープによりドア5の室内側の面に接着されている。粘着テープは充分な貼り付け強度を持つ両面テープなどを用いる。これにより、ドア5には、穴明けやボルト留めなどの特別な工事を施す必要がない。そのため、取り付け作業が極めて簡単であり、また、ドア5に傷をつけることがないため、賃貸マンションなどの借家のドアにも安心して取り付けることができる。
このように取り付け作業が簡単ではあるが、この粘着テープにより、基板2とドア5との接着状態を、動力機械が用いられた場合は別として、通常の人力程度の力では外れることがないものとできる。よって、簡便でありながら犯罪抑止効果を充分に発揮する。
【0022】
そして、基板2の他方の面には位置調整手段3が設けられている。この位置調整手段3は、本例においては、植え込みボルト31と、この植え込みボルト31にねじ込まれる複数のナット32a,32bとからなるものである。なお、本願考案の位置調整手段3は、上記の形態に限られるものではなく、基板2と錠本体4との間の距離が調整可能なものであれば、種々の形態で実施が可能である。
植え込みボルト31は、基板2の四隅に、基板2の表面に対して垂直に立つようにして取り付けられた、長尺で側面全体にねじが形成されたものであり、ナット32a,32bは、植え込みボルト31を基板2に固定するための固定ナット32aと、錠本体4の位置を調整するために、図3に示すように錠本体4の取付部43を挟むように配位される一組
の調整ナット32bとからなる。
【0023】
錠本体4は箱状のものであり、この中に閂片41が設けられている。この閂片41は、錠本体4に閂片41とともに設けられた下記の駆動機構によって、錠本体4の上方への出没が可能となっている。これにより、閂片41が錠本体4から突出する動作である施錠動作と、閂片41が錠本体4に没入する動作である解錠動作とがなされる。この閂片41は、錠本体4から突出した際に開き戸の固定枠6に当接するものであり、外力が加わっても折れ曲がったり折れたりすることのない、棒鋼や、鋼板を断面「コ」の字状に折り曲げたものが用いられる。
【0024】
錠本体4には、図1に示すように、左右方向に板状の取付部43が張り出されている。取付部43には上記の植え込みボルト31が貫通しており、各調整ナット32bの基板2に対する距離を調整することにより、錠本体4を植え込みボルト31の長さの範囲内において、自由な位置に配位することが可能である。
これにより、ドア5の室内側の面と固定枠6の室内側の面との距離と、ドア5の室内側の面と閂片41との距離とを一致させるように錠機構1を取り付けることができ、種々の形態を有するドア5に対して取り付けが可能となっている。
本例の錠機構1においては、閂片41が直接固定枠6に当接するように位置調整が可能であるため、従来のように閂片41を受けるための受け金具が一切不要であり、固定枠6にも工事が一切不要である。よって、賃貸マンションなどの借家のドアにも安心して取り付けることができる。
【0025】
錠機構1は上記のようにして構成され、取り付けられるものであるため、ドア5の室外側には錠機構1は全く現れることがない。よって、いわゆる「ピッキング」犯などにより不正手段で解錠されてしまうことがなく、高い安全性を有するものである。
【0026】
本例においては、錠機構1を開き戸のドア5に取り付ける場合について説明したが、取り付けの対象物はこれに限られるものではなく、引き戸や窓、シャッター、また、金庫などの収納用箱の扉に対しても取り付けが可能であり、広い用途に用いることができる。
【0027】
ここで、閂片41を出没動作させるための駆動機構としては、駆動部42、電源部43、受信部44、制御部46が設けられている(図4参照)。
【0028】
駆動部42は、動力源としてのモータと、動力伝達手段としてのギアとからなるものである。ギアはモータの回転軸に取り付けられている。一方、閂片41には、駆動部42のギアに対して噛み合うピニオンが設けられており、モータの回動がギアとピニオンを介して、閂片41に確実に伝えられるものとされている。モータは下記の制御部46によって、両方向に回動するものであり、一方向に回動した際には、閂片41が錠本体4から突出する動作をし、逆方向に回動した際には、閂片41が錠本体4に没入する動作をする。
なお、動力源としては、本例のモータ以外に、閂片41をギアやピニオンなどの動力伝達手段を介さずに直接運動させる電磁石などを用いても良い。また、動力伝達手段としても、本例のギアのほか、チェーンやリンク機構などを用いても良い。また、動力を切断可能なクラッチを途中で設けたものとしても良く、駆動部42の構成は種々に変更して実施し得る。
【0029】
電源部43は、駆動部42のモータを駆動するための電力aを供給するものである。本例では乾電池2つを直列とした、電圧3Vの電力(直流)が駆動部42へと供給される。本例では、乾電池を錠本体4に内蔵するものとしたが、場合によっては、電力aを錠機構1の外部から供給するものとしても良い。この場合は、錠本体4に設けられた電源部43としては変圧器のみとなる。また、既に変圧された電力aが供給される場合には、電源部43自体を錠本体4に設けないものとしても良い。
【0030】
受信部44は電波bを受信する。そして、この電波bに対応する受信信号cを後述する制御部46へと送ることのできるものであり、本例では、錠本体4の下面に突出して設けられたアンテナとされている。この電波bは、錠本体4とは別体であるリモコン7(図2参照)から発せられる。このリモコン7には、施錠及び解錠のための操作ボタンが設けられており、ボタン操作時に、各操作に応じた微弱な電波bが発信される。なお、リモコン7と錠本体4との間で交わされる電波bは、製造時において錠機構1毎に固有のパターンで設定されるものであるため、他者によって偽造などがなされる可能性はほとんど皆無である。
【0031】
そして、電池切れによるトラブルが発生しないよう、錠本体4には感知部45が設けられている。この感知部45は、電源部43から駆動部42に供給される電力aの電圧あるいは電流が一定値よりも低下し、駆動部42を正しく動作させることが困難になることを事前に感知し、後述する制御部46に通知fをするものである。
本例における感知部45は、2回の感知を行うものとされている。そのうちの1回目は、電源部43から駆動部42に供給される電力a、具体的には電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された基準値を下回ったことを感知する。本例では、電圧を感知するものであって、その値は2.3Vに設定されている。
2回目は、上記1回目の感知がなされた後に、電源部43から駆動部42に供給される電力aの電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ったことを感知する。ここで感知されるのは、1回目よりも低い値であり、本例では、電圧を感知するものであって、その値は2.1Vに設定されている。
この2回目の検知については、本例のように電圧を感知する以外に、タイマーにより1回目の感知からの経過時間を計測し、一定時間が経過したことを感知するものであっても良い。また、カウンターによる係数、あるいは閂片41の動作時の電圧変化の測定により、1回目の感知からの閂片41の累計出没回数が一定値(例えば50回)を超えたことを感知するものであっても良い。
【0032】
制御部46は、上記のように受信部44から施錠及び解錠に係る受信信号cを受け、駆動部42に対し、モータを動作させるための制御信号dを送るものである。逆に、駆動部42から制御部46へは、施錠状態にあるか解錠状態にあるかを示す状態信号eが送られる。また、下記の感知部45によって、電源部43の電圧低下が感知された場合(下記1回目の感知)、制御部46は、下記のLED表示灯47を点滅させる。また、感知部45によって、電源部43の更なる電圧低下が感知された場合(下記2回目の感知)は、制御部46は、駆動部42のモータを解錠方向にのみ動作させ、施錠方向には動作させなくする。
【0033】
上記の他、本例における錠本体4には、LED表示灯47、手動操作レバー48、ブザー(図示しない)が設けられている。
LED表示灯47は、上記の1回目の感知がなされてから2回目の感知がなされるまでの間、点滅し続けるものとされており、これにより、錠機構1の使用者に、電源部43から駆動部42に供給される電圧あるいは電流が一定値よりも低下していることをはっきりと知らせ、電池交換を促すことができる。また、施錠時や解錠時においてリモコン7の電波を受信した際にも、動作の確認のために点滅する。
手動操作レバー48は、室内側からの手動操作により、強制的に閂片41を操作することができるものである。
ブザーは、施錠時や解錠時に、例えば「ピッ」という電子音などの音を発するものであり、施錠・解錠動作が確実に行われたことをドア越しに操作した者へと知らせることができるものである。
【0034】
ここで、上記の感知部45の感知に伴う、本例の錠機構4の動作についてまとめる。
まず、電源部43の電圧が2.3Vを超えている場合には(電圧の初期値は3V)、感知部45は何らの感知もなさず、リモコン7の操作による施錠及び解錠動作がなされる。
次に、電源部43の電圧が低下して2.3Vとなったことを感知部45が感知(1回目の感知)すると、感知部45はこのことを制御部46に通知する。そして、制御部46がLED表示灯47を点滅させる。これは後述する2回目の感知で、制御部46が駆動部42に対し、施錠動作をさせず、解錠動作のみをさせる段階に先立ち、使用者に対して、より早期の電池交換を促すものである。なお、この時点では、施錠及び解錠動作については引き続き行うことができる。
【0035】
次に、電源部43の電圧が低下して2.1Vとなったことを感知部45が感知(2回目の感知)すると、感知部45はこのことを制御部46に通知する。そして、制御部46はLED表示灯47を消灯させる。そしてこれと同時に、制御部46は駆動部42のモータに対し、解錠方向にのみ動作させ、施錠方向には動作させなくする。これは、上記特許文献2に記載の発明における解錠機構とは異なり、閂片41の位置に関係なくなされるものであって、このための閂片41の位置感知は特に必要とされず、機構を簡略化できる。
よって、この時点で、使用者は電池交換をしなければ、錠機構41を施錠することができなくなる。この解錠のみの動作は電圧が1.8Vまではすることができるが、それよりも電圧が低下すると駆動部42はまったく動作しなくなる。また、この際においては、電力節約のため、解錠時におけるLED表示灯47の点灯とブザーの動作はなされない。
このように、電源部43から供給される電圧が駆動部42を動作できない程に低下してしまう前に、施錠ができなくなるため、日常的に錠機構1を使用している限りにおいては、施錠状態のまま電池が切れてしまうことがない。また、従来のように、施錠して外出中、電圧低下によって自動的に解錠状態とされ、その際に、たまたま「ピッキング」犯に狙われて、運悪く窃盗などの被害に遭遇するようなこともなく、防犯の面で、より安全性の高いものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願考案の実施の形態の一例である建具用錠機構を示す斜視図である。
【図2】同建具用錠機構をドアに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】同建具用錠機構をドアに取り付けた状態を示す側面視の説明図である。
【図4】本例の建具用錠機構の制御に関する説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 建具用錠機構
2 基板
3 位置調整手段
4 錠本体
41 閂片
42 駆動部
43 電源部
44 受信部
45 感知部
46 制御部
47 警告手段、LED表示灯
5 建具、ドア
6 固定枠
7 リモコン
b 電波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物などに取り付けられた固定枠(6)に対して、移動可能に配位された建具(5)に取り付けられた建具用錠機構(1)において、
この建具用錠機構(1)は、
建具(5)に対して取り付けられた基板(2)と、
基板(2)に設けられ、基板(2)からの距離の調整が可能である位置調整手段(3)と、
位置調整手段(3)に取り付けられ、出没自在な閂片(41)が内蔵された錠本体(4)とを有するものであり、
閂片(41)は、リモコン(7)の操作によって出没動作がなされるものであって、
錠本体(4)には、閂片(41)を作動させるための駆動部(42)と、
駆動部(42)に電力を供給するための電源部(43)と、
リモコン(7)の操作によって発せられる電波(b)を受信する受信部(44)と、
電源部(43)から駆動部(42)へと供給される電力が、基準値よりも低下したことを感知する感知部(45)と、
閂片(41)が錠本体(4)から突出する動作である施錠動作と、閂片(41)が錠本体(4)に没入する動作である解錠動作とをするように、駆動部(42)を制御するものであって、感知部(45)が上記の感知をなした場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部(46)とを有することを特徴とする建具用錠機構。
【請求項2】
建築物などに取り付けられた固定枠(6)に対して、移動可能に配位された建具(5)に取り付けられた建具用錠機構(1)において、
この建具用錠機構(1)は、
建具(5)に対して取り付けられた基板(2)と、
基板(2)に設けられ、基板(2)からの距離の調整が可能である位置調整手段(3)と、
位置調整手段(3)に取り付けられ、出没自在な閂片(41)が内蔵された錠本体(4)とを有するものであり、
閂片(41)は、リモコン(7)の操作によって出没動作がなされるものであって、
錠本体(4)には、閂片(41)を作動させるための駆動部(42)と、
駆動部(42)に電力を供給するための電源部(43)と、
リモコン(7)の操作によって発せられる電波(b)を受信する受信部(44)と、
電源部(43)から駆動部(42)に供給される電圧あるいは電流、
電源部(43)から駆動部(42)に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ってからの経過時間、
電源部(43)から駆動部(42)に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ってからの閂片(41)の累計出没回数、
のうち少なくとも一つを感知する感知部(45)と、
閂片(41)が錠本体(4)から突出する動作である施錠動作と、閂片(41)が錠本体(4)に没入する動作である解錠動作とをするように、駆動部(42)を制御するものであって、感知部(45)が上記の感知をなした場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部(46)とを有することを特徴とする建具用錠機構。
【請求項3】
建築物などに取り付けられた固定枠(6)に対して、移動可能に配位された建具(5)に取り付けられた建具用錠機構(1)において、
この建具用錠機構(1)は、
建具(5)に対して取り付けられた基板(2)と、
基板(2)に設けられ、基板(2)からの距離の調整が可能である位置調整手段(3)と、
位置調整手段(3)に取り付けられ、出没自在な閂片(41)が内蔵された錠本体(4)とを有するものであり、
閂片(41)は、リモコン(7)の操作によって出没動作がなされるものであって、
錠本体(4)には、閂片(41)を作動させるための駆動部(42)と、
駆動部(42)に電力を供給するための電源部(43)と、
リモコン(7)の操作によって発せられる電波(b)を受信する受信部(44)と、
2回の感知を行い、そのうちの1回目は、
電源部(43)から駆動部(42)に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ったことを感知し、
2回目は、1回目の感知がなされた後に、
電源部(43)から駆動部(42)に供給される電圧あるいは電流が、あらかじめ設定された値を下回ったこと、
あるいは、
1回目の感知からの経過時間、
あるいは、
1回目の感知からの閂片(41)の累計出没回数を感知する感知部(45)と、
閂片(41)が錠本体(4)から突出する動作である施錠動作と、閂片(41)が錠本体(4)に没入する動作である解錠動作とをするように、駆動部(42)を制御するものであって、上記の2回目の感知がなされた場合に、施錠動作をせず、解錠動作のみをなす制御部(46)とを有することを特徴とする建具用錠機構。
【請求項4】
上記の1回目の感知がなされた場合に警告を発する警告手段(47)を有することを特徴とする、請求項3に記載の建具用錠機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−233532(P2006−233532A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48338(P2005−48338)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(392027081)芙蓉商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】