説明

建屋の建設方法

【課題】側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できない場合でも、建屋を建設できるようにする。
【解決手段】側壁70の設置領域から、水平面に沿った方向で且つ設置後の側壁70に沿った(−)X方向へ離間した仮設領域まで延びる側壁用レール15を設置するレール設置工程と、側壁用レール15上の仮設領域で、側壁70の一部を移送側壁単位71として作製する移送単位作製工程と、仮設領域で作製された移送側壁単位71を側壁用レール15に沿って設置領域へ移送させる移送工程と、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側壁を備えている建屋の建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
側壁を備えている建屋の建設方法として、従来から各種方法が提案されている。これらの多くの方法は、例えば、以下の特許文献1に記載の方法に代表されるように、側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保し、これらの作業領域内で作業することで、設置領域に側壁を作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3072066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法に代表されるような方法では、建屋の設置環境等によって、側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できない場合があると、建屋を建設することができない、という問題点がある。
【0005】
そこで、本発明では、側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できない場合でも、建屋を建設できる建設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための発明に係る建屋の建設方法は、
建屋の側壁の設置領域から、水平面に沿った方向で且つ設置後の該側壁に沿った方向へ離間した仮設領域まで延びるレールを設置するレール設置工程と、前記レール上の前記仮設領域で、前記側壁の少なくとも一部を移送単位として作製する移送単位作製工程と、前記仮設領域で作製された前記移送単位を前記レールに沿って前記設置領域へ移送させる移送工程と、を実施することを特徴とする。
【0007】
当該建設方法では、側壁をレール上の仮設領域で作製した後、側壁をレールに沿ってこれらの設置領域まで移送するため、側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できなくても、建屋を建設することができると共に、側壁の設置領域の近傍での作業時間を短くすることができる。
【0008】
ここで、前記建屋の建設方法において、前記建屋は、互いに平行に対向する一対の側壁と、該一対の側壁の一方の側壁から他方の側壁にわたされた屋根と、を備えており、
前記レール設置工程では、前記一方の側壁に関する前記設置領域から前記仮設領域まで延びる前記レールとしての一方のレールと、前記他方の側壁に関する前記設置領域から前記仮設領域まで延びる前記レールとしての他方のレールとを設置し、前記移送単位作製工程では、前記一方のレール上の前記仮設領域で、前記一方の側壁の下端から上端までを含む少なくとも一部である一方の移送壁単位を作製すると共に、前記他方のレール上の前記仮設領域で、前他方の側壁の下端から上端までを含む少なくとも一部である他方の移送壁単位を作製する移送壁単位作成工程と、前記一方の移送壁単位から前記他方の移送壁単位に、前記屋根の少なくとも一部を成す移送屋根単位をわたす移送屋根単位作製工程と、を実行し、前記移送工程では、前記一方の移送壁単位と前記他方の移送壁単位と前記移送屋根単位とを一体的にそれぞれの前記設置領域へ移送させてもよい。
【0009】
この場合、前記移送単位作製工程では、前記一方のレール上の前記仮設領域で、前記一方の側壁の下端から上端までを含み且つ該一方の側壁の一部である前記一方の移送壁単位を作製すると共に、前記他方のレール上の前記仮設領域で、前他方の側壁の下端から上端までを含み且つ該他方の側壁の一部である他方の移送壁単位を作製する移送壁単位作成工程と、前記一方の移送壁単位から前記他方の移送壁単位に、前記屋根の一部を成す移送屋根単位をわたす移送屋根単位作製工程と、繰り返して実行して、前記一方の側壁を構成する全ての前記一方の移送壁単位と、前記他方の側壁を構成する全ての前記他方の移送壁単位と、前記屋根を構成する全ての前記移送屋根単位とを作製し、前記移送工程では、前記一方の移送壁単位と前記他方の移送壁単位と前記移送屋根単位とが作製される毎に、これらを一体的にそれぞれの前記設置領域側へ段階的に移送させてもよい。
【0010】
当該建設方法では、移送壁単位を移送する際、設置領域側に側壁の転倒防止部材(支保工)を設置することのできない作業環境であっても、一対の移送壁単位と移送屋根単位とが一体になった状態で移送できるため、移送壁単位を比較的容易に安定移送することができる。
【0011】
また、前記建屋の建設方法において、前記建屋は、前記一対の側壁としての一対の第一側壁と、前記屋根と、該一対の第一側壁の側端相互を連結し且つ互いに対向する一対の第二側壁と、を備えており、前記レール設置工程では、前記一対の第二側壁の少なくとも一方の第二側壁に対して、該一方の第二側壁に関する前記設置領域から前記仮設領域まで延びる前記レールを設置し、前記移送単位作製工程では、前記少なくとも一方の第二側壁に対する前記レールの前記仮設領域で、該少なくとも一方の第二側壁の少なくとも一部を作製し、前記移送工程では、前記仮設領域で作製された前記第二側壁の少なくとも一部を前記設置領域へ移送させてもよい。
【0012】
当該建設方法では、第一側壁及び第二側壁を各レール上の仮設領域で作製した後、各側壁をレールに沿ってこれらの設置領域まで移送するため、各側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できなくても、建屋を建設することができる。
【0013】
また、前記建屋の建設方法において、前記レール設置工程前に、前記側壁の前記設置領域に該側壁の基礎を形成する基礎形成工程を実施し、前記レール設置工程では、前記基礎上に前記レールを設置し、前記移送工程後に、前記基礎上の前記レールを撤去して、該移送工程で移送した前記移送単位を該基礎に固定する移送単位固定工程を実行してもよい。
【0014】
当該建設方法では、側壁を安定固定することができる。
【0015】
また、前記建屋の建設方法において、前記移送単位作製工程前に、前記仮設領域で作製される前記移送単位を支える支保工を設ける支保工設置工程を実施してもよい。
【0016】
当該建設方法では、レール上であっても、移送単位を安定した状態で作製することができる。
【0017】
また、前記建屋の建設方法において、前記側壁は、複数の壁ブロックを組み合わせて構成されており、前記移送単位作製工程では、予め作製されている複数の前記壁ブロックを組み合わせて、前記側壁の前記移送単位を作製してもよい。
【0018】
当該建設方法では、側壁を構成する部品(壁ブロック)の仮設領域への搬送性を高めることができると共に、レール上の仮設領域での施工性を高めることができる。
【0019】
また、前記建屋の建設方法において、前記壁ブロックは、互いに平行に対向する一対のスキンパネルと、一対のスキンパネル相互連結するフランジとを有するダブルスキン構造体であってもよい。
【0020】
当該建設方法では、壁ブロックの剛性向上及び軽量化の両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、側壁の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できなくても、建屋を建設することができる上に、側壁の設置領域の近傍での作業時間をきわめて短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る一実施形態における第二移送単位の作製中の建屋の斜視図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における建屋の基礎形成、レール設置及びベント設置後のこれらの平面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における建屋の基礎形成、レール設置及びベント設置後のこれらの斜視図である。
【図4】本発明に係る一実施形態における移送側壁単位の作製中の移送側壁単位等の斜視図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における移送屋根単位の作製中の移送側壁単位及び移送屋根単位等の斜視図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における第一移送単位の作製後の第一移送単位等の平面図である。
【図7】本発明に係る一実施形態における第二移送単位の作製後の第一及び第二移送単位等の平面図である。
【図8】本発明に係る一実施形態における第一、第二及び第三移送単位、さらに第一移送妻壁単位の作製後のこれらの平面図である。
【図9】本発明に係る一実施形態における第三移送妻壁単位の作成中の建屋の斜視図である。
【図10】本発明に係る一実施形態における(−)X側の妻壁の作製中の建屋の斜視図である。
【図11】本発明に係る一実施形態における建屋の斜視図である。
【図12】本発明に係る一実施形態における壁ブロックの要部斜視図である。
【図13】本発明に係る一実施形態における同一壁を構成する壁ブロック相互の接続構造を示す説明図である。
【図14】本発明に係る一実施形態における側壁を構成する壁ブロックと妻壁を構成する壁ブロックとの接続構造を示す説明図である。
【図15】本発明に係る一実施形態におけるレール、壁及び横移動ジャッキの側面図である。
【図16】図15におけるXVI矢視図である。
【図17】本発明に係る一実施形態におけるレール撤去中のレール、壁及びこの壁の基礎の正面図である。
【図18】本発明に係る一実施形態における固定後の壁及びこの壁の基礎の要部切欠正面図である。
【図19】本発明に係る一実施形態における建屋の建設手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る建屋の建設方法の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の建屋Hは、図11に示すように、被対象物1の周囲を壁70,80及び屋根90で覆う建屋Hである。このため、この建屋Hを建設する際には、建屋Hの壁70の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できないばかりか、この設置領域の近傍での作業時間を極力短くする必要がある。
【0025】
この建屋Hは、互いに平行に対向する一対の側壁70(第一側壁)と、一対の側壁70の側端相互を連結し且つ互いに平行に対向する一対の妻壁80(第二側壁)と、一対の側壁70及び一対の妻壁80で囲まれた領域の上部を覆う屋根90と、を備えている。なお、以下の説明の都合上、一対の妻壁80のうち、一方の妻壁80から他方の妻壁80へ向う方向を(+)X方向とし、逆方向を(−)X方向とする。また、一対の側壁70のうち、一方の側壁70から他方の側壁70へ向う方向を(+)Y方向とし、逆方向を(−)Y方向とする。また、上方向を(+)Z方向、下方向を(−)Z方向とする。
【0026】
側壁70及び妻壁80は、いずれも、複数の壁ブロック50を組み合わせて構成されている。具体的に、本実施形態の側壁70は、X方向に3つの壁ブロック50を並べ、Z方向にも3つの壁ブロック50を並べたもので、合計9つの壁ブロック50を組み合わせたものである。また、本実施形態の妻壁80は、Y方向に3つの壁ブロック50を並べ、Z方向にも3つの壁ブロック50を並べたもので、合計9つの壁ブロック50を組み合わせたものである。
【0027】
壁ブロック50は、図12に示すように、互いに平行に対向している一対の矩形状のスキンパネル51と、一対のスキンパネル51相互を連結する複数のフランジ52,53,56と、を有している。これらスキンパネル51及びフランジ52,53,56は、いずれも鋼板で形成されている。一対のスキンパネル51の上端の相互間は、複数のフランジ52,53,56のうちの天面フランジ53により塞がれている。また、一対のスキンパネル51の下端の相互間は、複数のフランジ52,53,56のうちの底面フランジ56により塞がれている。天面フランジ53及び底面フランジ56には、いずれも、Z方向に貫通した複数の開口54が形成されている。
【0028】
壁ブロック50の天面フランジ53には、(+)Z方向に突出した複数のボルト55が設けられている。また、壁ブロック50の底面フランジ56には、この底面フランジ56と他の壁ブロック50の天面フランジ53とを対向させた際に、他の壁ブロック50の天面フランジ53のボルト55が挿通するボルト孔57が形成されている。
【0029】
次に、図19に示すフローチャートに従って、本実施形態の建屋Hの建設手順について説明する。
【0030】
まず、図2に示すように、建屋Hの建設に必要な基礎11〜14を形成する(S1)。この基礎11〜14には、一対の側壁70のそれぞれの設置領域に設けたX方向に延びる側壁基礎11と、一対の妻壁80のそれぞれの設置領域に設けたY方向に延びる妻壁基礎13と、一対の側壁基礎11のそれぞれから(−)X方向に延びる側壁仮設基礎12と、(+)X側の妻壁基礎13から(−)Y方向に延びる妻壁仮設基礎14と、がある。
【0031】
側壁仮設基礎12のX方向の長さは、本実施形態では、図7に示すように、壁ブロック50の横幅のほぼ2倍の長さである。また、妻壁仮設基礎14のY方向の長さは、図8に示すように、壁ブロック50の横幅の1倍強の長さである。
【0032】
次に、図2に示すように、建屋Hの基礎11〜14の上にレール15,16を設置する(S2)。レール15,16としては、側壁基礎11及びこれに連なる側壁仮設基礎12のほぼ全体に渡ってX方向に延びる側壁用レール15と、(+)X側の妻壁基礎13及びこれに連なる妻壁仮設基礎14のほぼ全体に渡ってY方向に延びる妻壁用レール16とがある。側壁用レール15は、一対の側壁基礎11のうちの(+)Y側の側壁基礎11及びこの側壁基礎11に連なる(+)Y側の側壁仮設基礎12上に、互いに平行に2本設置され、(−)Y側の側壁基礎11及びこの側壁基礎11に連なる(−)Y側の側壁仮設基礎12上に、互いに平行に2本設置される。よって、本実施形態では、合計4本の側壁用レール15が設置さる。また、妻壁用レール16は、(+)X側の妻壁基礎13及びこれに連なる妻壁仮設基礎14上に、互いに平行に2本設置さている。
【0033】
これらレール15,16は、図15及び図16に示すように、いずれのH型鋼で形成されている。H型鋼は、その互いに対向する一対のフランジがZ方向に並び、一対のフランジ間のウェブが上下方向に延びるよう、基礎11〜14の上に設置されている。
【0034】
次に、図2及び図3に示すように、支保工としてのベント21,22及び外部足場25を設置する(S3)。ベント21,22及び外部足場25は、その高さが側壁70の高さ(=妻壁80の高さ)とほぼ同じである。ベント21,22は、複数の柱と複数の柱相互を接続する複数の梁とで、直方体形状に形成されたものである。ベント21,22の柱及び梁は、いずれも、複数の鋼材を互いに接合して形成されたものである。ベント21,22には、側壁用ベント21と妻壁用ベント22とがある。側壁用ベント21は、一対の側壁仮設基礎12の間に設置される。この側壁用ベント21は、図7に示すように、そのX方向の長さが壁ブロック50の横幅の2倍弱の長さで、そのY方向の長さが壁ブロック50の横幅の3倍弱の長さである。また、妻壁用ベント22は、(+)X側の妻壁基礎13の(+)X側に設置さレール15,16。この妻壁用ベント22は、図8に示すように、そのX方向の長さが壁ブロック50の横幅の1倍弱の長さで、そのY方向の長さが壁ブロック50の横幅の2倍弱の長さである。
【0035】
外部足場25は、(+)Y側の側壁仮設基礎12の(+)Y側及び(−)Y側の側壁仮設基礎12の(−)Y側に、それぞれ側壁仮設基礎12に沿うよう設置されている。
【0036】
次に、一対の側壁仮設基礎12上に設置されている側壁用レール15上であって、側壁基礎11から(−)X側に離間した領域内、言い換えると、側壁用レール15上の側壁70の仮設領域内で、図4に示すように、移送側壁単位71を作製する(S4a)。この移送側壁単位71は、壁ブロック50をZ方向に3つ並べて相互に接続したものである。
【0037】
この移送側壁単位71の作製(S4a)では、まず、図15及び図16に示すように、一対の側壁仮設基礎12上に設置されている側壁用レール15上に横移動ジャッキ30を設置する。この横移動ジャッキ30は、側壁用レール15に対して相対移動不能に側壁用レール15を挟持するクランプ31と、側壁用レール15に対して摺動可能なスライドベース33と、クランプ31とスライドベース33とをつなぎ且つ両者の間隔を変える油圧シリンダ32と、を有している。スライドベース33は、側壁用レール15を形成するH型鋼の上側のフランジの上面に接する樹脂シート(例えば、フッ素樹脂)34と、この樹脂シート34上に固定されている壁接続ベース35と、壁接続ベース35に取り付けられている移動ガイド36と、を有している。移動ガイド36は、側壁用レール15を形成するH型鋼の上側のフランジを両側から挟み込めるように、壁接続ベース35の両側に取り付けられている。
【0038】
さらに、一対の側壁仮設基礎12上に設置されている側壁用レール15上に独立スライドベース(図示されていない)も設置する。この独立スライドベースは、横移動ジャッキ30の構成要素であるスライドベース33と基本的に同じものである。
【0039】
次に、側壁用レール15上の横移動ジャッキ30のスライドベース33上及び独立スライドベース上に、1つの壁ブロック50を置く。この壁ブロック50は、移送側壁単位71を構成する3つの壁ブロック50のうち、最下段の壁ブロック50を成す。この最下段の壁ブロック50の下端には、H型鋼等で形成された壁ベース61が取り付けられている。また、側壁用レール15が延びている方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)における、壁ベース61の両側にH型鋼等で形成されたジャッキアップ補助材62がボルト等で取り付けられている。
【0040】
次に、この最下段の壁ブロック50が倒れないよう、この壁ブロック50と側壁用ベント21とをタイバー等を用いて、両者を仮接続する。
【0041】
次に、図4に示すように、最下段の壁ブロック50の上に、二段目の壁ブロック50を置き、両者を接続する。この際、図12に示すように、二段目の壁ブロック50の底面フランジ56に形成されているボルト孔57に、最下段の壁ブロック50の天面フランジ53に設けられているボルト55を挿通させ、このボルト55にナット58を捩じ込んで、最下段の壁ブロック50と二段目の壁ブロック50とを接続する。続いて、最下段の壁ブロック50と同様、二段目の壁ブロック50と側壁用ベント21とを仮接続する。
【0042】
次に、二段目の壁ブロック50の上に、三段目の壁ブロック50つまり最上段の壁ブロック50を置き、以上と同様、壁ブロック50相互間を接続すると共に、最上段の壁ブロック50と側壁用ベント21とを仮接続する。なお、この最上段の壁ブロック50の屋内側の面中で上側には、図1に示すように、屋根90を接続するための屋根サポート63が取り付けられている。また、以上の最下段の壁ブロック50の設置、二段目の壁ブロック50の設置及び最上段の壁ブロック50の設置は、(+)Y側の側壁仮設基礎12上、及び(−)Y側の側壁仮設基礎12上のそれぞれで、ほぼ並行して実行する。
【0043】
以上で、一対の移送側壁単位71の作製が終了する。
【0044】
次に、図5、図6及び図1に示すように、移送屋根単位91を作製して、この移送屋根単位91を一対の移送側壁単位71間に渡す(S4b)。この移送屋根単位91は、一対の移送側壁単位71間に渡される複数のトラス92と、複数のトラス92の上に取り付けられる複数の屋根パネル93とを有している。複数のトラス92は、X方向に並び且つ互いに平行に配置される。各トラス92のY方向の両端は、一対の移送側壁単位71の各最上段壁ブロック50に設けられている屋根サポート63に接続される。
【0045】
以上で、移送屋根単位91の作製が終了する。この移送屋根単位91の作製が終了すると、一対の移送側壁単位71と側壁用ベント21との仮接続を断つ。なお、この移送屋根単位91とこれに接続されている一対の移送側壁単位71で第一移送単位101が構成される。また、この移送屋根単位91の作製工程(4a)と一対の移送側壁単位71の作製工程(4b)で、第一移送単位101の作製工程(S4)を成す。
【0046】
次に、図7に示すように、側壁用レール15に沿って、第一移送単位101を側壁基礎11側、つまり側壁70の設置領域側((+)X側)に移送する(S5)。この移送量は、第一移送単位101の(−)X側の側壁用レール15上に、壁ブロック50を置ける領域を確保できる量である。
【0047】
この移送では、側壁用レール15上に設けた横移動ジャッキ30(図15,16)の油圧シリンダ32内にオイルを送り込んで、この横移動ジャッキ30のクランプ31とスライドベース33との間を狭める。この結果、スライドベース33上に載っている移送側壁単位71は、横移動ジャッキ30のクランプ31側に、つまり(+)X側に移動する。次に、横移動ジャッキ30のクランプ31による側壁用レール15の挟持を解放し、油圧シリンダ32内からオイルを抜きつつ、クランプ31のみを(+)X側に移動させてから、このクランプ31によって再び側壁用レール15を挟持させる。次に、先の場合と同様、油圧シリンダ32内にオイルを送り込んで、クランプ31とスライドベース33との間を狭め、スライドベース33上に載っている移送側壁単位71を(+)X側に移動させる。そして、以上の操作を繰り返し実行して、第一移送単位101を前述の移送量分だけ移送する。
【0048】
次に、図1及び図7に示すように、第一移送単位101の(−)X側に、第二移送単位102を作製する(S6)。この際、一対の側壁仮設基礎12上に設置されている側壁用レール15上、言い換えると、側壁用レール15上の側壁70の仮設領域内であって、第一移送単位101の(−)X側に、新たな移送側壁単位71を前述と基本的に同様に作製する。さらに、新たな移送側壁単位71に対して新たな移送屋根単位91を前述と基本的に同様に設ける。この新たな移送側壁単位71及び新たな移送屋根単位91で第二移送単位102が構成される。
【0049】
なお、第二移送単位102を構成する移送側壁単位71の作製の際には、第一移送単位101を構成する移送側壁単位71の作製の際と同じ処理に加えて、第二移送単位102を構成する移送側壁単位71を第一移送単位101を構成する移送側壁単位71に接続する処理を行う。
【0050】
図13に示すように、壁ブロック50を構成するスキンパネル51には、その横幅方向の両端側に、壁ブロック50の厚さ方向に貫通する複数のボルト孔51aが形成されている。このスキンパネル51には、さらに、その横幅方向の一方の端側に、上下方向に延びるピン65を介して接続プレート66が揺動可能に接続されている。この接続プレート66にも、スキンパネル51と同様に厚さ方向に貫通する複数のボルト孔66aが形成されている。
【0051】
前述したように、移送側壁単位71相互を接続する際には、一方の移送側壁単位71の壁ブロックの側端と他方の移送側壁単位71の壁ブロック50の側端とを突き合わせる。この際、図13に示すように、一方の壁ブロック50のスキンパネル51の側端と他方の壁ブロック50のスキンパネル51の側端とが接する。次に、他方の壁ブロック50の一方の側に設けられている接続プレート66を揺動させて、両壁ブロック50のスキンパネル51のそれぞれに接続プレート66を重ね合わせる。そして、この接続プレート66のボルト孔66a及び各スキンパネル51のボルト孔51aにボルト51bを挿通させ、このボルト51bにナット51cを捩じ込み、両壁ブロック50相互を接続する。この両壁ブロック50の接続で、移送側壁単位71相互が接続される。
【0052】
また、第二移送単位102を構成する移送屋根単位91の作製の際には、第一移送単位101を構成する移送屋根単位91の作製の際と同じ処理に加えて、第二移送単位102を構成する移送屋根単位91を第一移送単位101を構成する移送屋根単位91に接続する処理を行う。この移送屋根単位91相互の接続では、各移送屋根単位91の屋根パネル93の一部を相互に重ね合わせて、重ね合わせた部分を接続する。
【0053】
第二移送単位102の作製が終了すると(S6)、側壁用レール15に沿って、第一移送単位101、この第一移送単位101に接続された第二移送単位102を側壁基礎11側、つまり側壁70の設置領域側((+)X側)に一体的に移送する(S7)。この際も、第一移送単位101のみを移送した際と同様に、横移動ジャッキ30を操作して、第一移送単位及び第二移送単位102を移送する。なお、この際の移送量も、前述の移送の際と同様、第二移送単位102の(−)X側の側壁用レール15上に、壁ブロック50を置ける領域を確保できる量である。
【0054】
次に、第二移送単位102を作製した際と同様に、第二移送単位102の(−)X側に、第三移送単位103(図8,9)を作製する(S8)。この第三移送単位103の作製により、一対の側壁70及び屋根90が完成する。
【0055】
第三移送単位103の作成が終了すると(S8)、側壁用レール15に沿って、図8及び図9に示すように、第一移送単位101、この第一移送単位101に接続された第二移送単位102、さらにこの第二移送単位102に接続された第三移送単位103を側壁基礎11側、つまり側壁70の設置領域側((+)X側)に一体的に移送する(S9)。この際も、ステップ5及びステップ7での移送と同様に、横移動ジャッキ30を操作して、第一移送単位101、第二移送単位102及び第三移送単位103を移送する。この移送で、第一移送単位101、第二移送単位102及び第三移送単位103の各移送側壁単位71は、いずれも、側壁用レール15上のそれぞれの設置領域に移送される。なお、ここでは、説明の都合上、この段階で、第一移送単位101、第二移送単位102及び第三移送単位103の各移送側壁単位71が、側壁用レール15上のそれぞれの設置領域に移送されることにしているが、後述するように、実際には、(+)X側の妻壁が完成した後、第一移送単位101、第二移送単位102及び第三移送単位103の各移送側壁単位71は、側壁用レール15上のそれぞれの設置領域に移送されることになる。
【0056】
次に、妻壁仮設基礎14上に設置されている妻壁用レール16上で、妻壁基礎13から(−)Y側に離間した領域内、言い換えると、妻壁用レール16上の妻壁80の仮設領域内で、第一移送妻壁単位111を作製する(S10)。この第一移送妻壁単位111も、移送側壁単位71と同様、壁ブロック50をZ方向に3つ並べて相互に接続したものである。
【0057】
この第一移送妻壁単位111の作製でも、まず、妻壁仮設基礎14上に設置されている妻壁用レール16上に、横移動ジャッキ30及び独立スライドベース33を設置する。そして、移送側壁単位71の作製の際と同様に、妻壁用レール16上の横移動ジャッキ30及び独立スライドベース33の上に、3つの壁ブロック50を順次積み上げて、第一移送妻壁単位111を作製する。
【0058】
第一移送妻壁単位111の作製が終了すると(S10)、移送側壁単位71の移送の際と同様、妻壁用レール16に沿って、第一移送妻壁単位111を妻壁基礎13側、つまり妻壁80の設置領域側((+)Y側)に移送する(S11)。
【0059】
次に、第一移送妻壁単位111の(−)Y側に、第二移送妻壁単位112を作製する(S12)。この際、妻壁仮設基礎14上に設置されている妻壁用レール16上、言い換えると、妻壁用レール16上の妻壁80の仮設領域内であって、第一移送妻壁単位111の(−)Y側に、第二移送妻壁単位112を作製する。この第二移送妻壁単位112の作製の際にも、前述の第二移送単位102を構成する移送側壁単位71の作製の際と同様、第一移送妻壁単位111に第二移送妻壁単位112を接続する。
【0060】
第二移送妻壁単位112の作製が終了すると(S12)、移送側壁単位71の移送の際と同様、妻壁用レール16に沿って、第一移送妻壁単位111及び第二移送妻壁単位112を一体的に(+)Y側に移送する(S13)。
【0061】
次に、第二移送妻壁単位112の(−)Y側に、第三移送妻壁単位113を作製する(S14)。この第三移送妻壁単位113の作製により、(+)X側の妻壁80が完成する。そして、移送側壁単位71の移送の際と同様、妻壁用レール16に沿って、第一移送妻壁単位111、第二移送妻壁単位112及び第三移送妻壁単位113を一体的に(+)Y側に移送する(S15)。この移送で、第一移送妻壁単位111、第二移送妻壁単位112及び第三移送妻壁単位113は、いずれも、妻壁用レール16上のそれぞれの設置領域に移送される。
【0062】
第一移送妻壁単位111、第二移送妻壁単位112及び第三移送妻壁単位113の移送が終了すると(S15)、図14に示すように、第一移送妻壁単位111及び第三移送妻壁単位113を構成する壁ブロック50の(−)X側のスキンパネル51に、(−)X側に突出し、Y方向の相互間隔が一対のスキンパネル51の相互間隔と同じ一対の側壁接続パネル68を接合する。なお、この側壁接続パネル68には、複数のボルト孔68aが予め形成されている。そして、第一移送単位101を構成する一対の移送側壁単位71の(+)X側に設けられている揺動可能な接続パネル66のボルト孔66aと、各移送妻壁単位111,113の側壁接続パネル68のボルト孔68aとに、ボルト51bを挿通し、このボルト51bにナット51cを捩じ込んで、第一移送単位101を構成する一対の移送側壁単位71と第一及び第三移送妻壁単位111,113とを接続する。
【0063】
なお、ここでは、各移送妻壁単位111,112,113の移送が終了してから、第一移送妻壁単位111及び第三移送妻壁単位113を構成する壁ブロック50に側壁接続パネル68を接合しているが、実際には、第一移送妻壁単位111及び第三移送妻壁単位113を構成する壁ブロック50に予め側壁接続パネル68を接合しておく。さらに、ステップ9における第一、第二及び第三移送単位101,102,103の移送の際、前述したように、これらの移送単位を構成する移送側壁単位71をそれぞれの設置領域に至る直前に置いておき、この状態で、各移送妻壁単位111,112,113を移送して、各移送妻壁単位101,102,103の移送過程での側壁接続パネル68と、第一移送単位101の(+)X側の端部との間での干渉を避ける。次に、改めて、第一、第二及び第三移送単位101,102,103を(+)X側に移送して、これらの移送単位を構成する移送側壁単位71をそれぞれの設置領域に位置させる。そして、第一移送単位101を構成する一対の移送側壁単位71に設けられている揺動可能な接続パネル66と、各移送妻壁単位111,112,113の側壁接続パネル68とを前述と同様に接続する。
【0064】
次に、図10に示すように、(−)X側の妻壁基礎13上に、9つの壁ブロック50を組み合わせて(−)X側の妻壁80を作製する(S16)。この際、既に完成している(+)X側の妻壁80や一対の側壁70とのレベルを合わせるため、(−)X側の妻壁80を構成する最下段の壁ブロック50を油圧ジャッキ等で持ち上げ、(−)X側の妻壁基礎13の上面とこの最下段の壁ブロック50の下面との間に、レール15,16(図15,16)の高さとスライドベース33の高さとを合わせた分の間隔を確保する。そして、油圧ジャッキ等で持ち上がられている最下段の壁ブロック50の上に第二段目の壁ブロック50、さらに最上段の壁ブロック50を積み上げる。この壁ブロック50を積み上げる過程で、壁ブロック50と側壁用ベント21とをタイバー等を用いて仮接続する。
【0065】
以上のように、本実施形態では、(−)X側の妻壁基礎13に沿って側壁用ベント21を設置しているため、(−)X側の妻壁80を構成する壁ブロック50を移送させなくても、(−)X側の妻壁基礎13上で、(−)X側の妻壁80を作製することができる。
【0066】
以上で、(−)X側の妻壁80が完成する。そして、(+)X側の妻壁80と一対の側壁70とを接続した際とほぼ同様に、(−)X側の妻壁80と一対の側壁70とを接続する。(−)X側の妻壁80と一対の側壁70との接続が終了すると、(−)X側の妻壁80と側壁用ベント21との仮接続を断つ。
【0067】
次に、各ベント21,22及び外部足場25を撤去する(S17)。
【0068】
最後に、各レール15,16を撤去してから、側壁70及び妻壁80を基礎11,13上に固定する、つまり各移送単位を対応する基礎11,13上に固定する(S18)。
【0069】
レール15,16の撤去の際には、図17に示すように、まず、基礎11,13の屋内側及び屋外側のそれぞれにH型鋼等の台39を置く。次に、一対の側壁70の最下断の壁ブロック50及び(+)X側の妻壁80の最下段の壁ブロック50に設けられているジャッキアップ補助材62とこの台39との間に、油圧ジャッキ37を置いて、この油圧ジャッキ37及び(−)X側の妻壁80を持ち上げている油圧ジャッキの油圧シリンダ内にオイルを送り込み、一対の側壁70及び一対の妻壁80を一体的に僅かに持ち上げる。
【0070】
次に、側壁用レール15と側壁70との上下方向の間、及び妻壁用レール16と(+)X側の妻壁80との上下方向の間から横移動ジャッキ30及び独立スライドベースを取り除く。続いて、各油圧ジャッキ37の油圧シリンダからオイルを抜き、側壁用レール15上に側壁70を直接載せると共に、妻壁用レール16上に(+)X側の妻壁80を直接載せる。側壁用レール15上に側壁70が載り、さらに、妻壁用レール16上に(+)X側の妻壁80が載って、これらを持ち上げていた油圧ジャッキ37に対して各壁70,80の荷重がかからなくなると、油圧ジャッキ37の下方の台39を引抜く。但し、油圧ジャッキ37自体はそのまま残しておく。続いて、各油圧ジャッキ37の油圧シリンダ内にオイルを送り込み、再び、一対の側壁70及び一対の妻壁80を一体的に僅かに持ち上げる。
【0071】
そして、図18に示すように、基礎11,13上の各レール15,16を引抜き、基礎11,13の上から各レール15,16を撤去する。
【0072】
各レール15,16の撤去が終了すると、全ての油圧ジャッキ37の油圧シリンダ内からオイルを抜き、一対の側壁70をそれぞれ側壁基礎11の上に置くと共に、一対の妻壁80をそれぞれ妻壁基礎13上に置く。次に、各壁ベース61からジャッキアップ補助材62を撤去する。
【0073】
最後に、各側壁70の下端に設けられている壁ベース61を介して、側壁基礎11にアンカーボルト99を打ち込み、各側壁70を側壁基礎11に固定する。同様に、各妻壁80の下端に設けられている壁ベース61を介して、妻壁基礎13にアンカーボルト99を打ち込み、各妻壁80を妻壁基礎13に固定する。
【0074】
以上で、被対象物1を囲む建屋H(図11)が完成する。なお、ジャッキアップ補助材62の撤去は、壁70,80が基礎11,13上に置かれた後であれば、いずれのタイミングで行ってもよい。また、側壁仮設基礎12及び妻壁仮設基礎14は、いずれも、レール15,16を設置するために設けたもので、レール15,16の撤去後は基本的に不要になるため、これら側壁仮設基礎12及び妻壁仮設基礎14をさらに撤去してもよい。
【0075】
以上のように、本実施形態では、一対の側壁70及び(+)側の妻壁80をレール15,16上の仮設領域で作製した後、一対の側壁70及び(+)側の妻壁80をレール15,16に沿ってこれらの設置領域まで移送しているため、側壁70及び(+)側の妻壁80の設置領域の屋内側及び屋外側のそれぞれに広い作業領域を確保できなくても、建屋Hを建設することができると共に、壁70,80の設置領域の近傍での作業時間を極めて短くすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、側壁を構成する複数の部品が壁ブロック50であるため、仮設領域への搬送性を高めることができると共に、レール15,16上の仮設領域での施工性を高めることができる。しかも、この壁ブロック50は、一対のスキンパネル51と、一対のスキンパネル51相互連結するフランジ52,53,56とを有して構成しているため、壁ブロック50の剛性向上と軽量化の両立を図ることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、複数の移送側壁単位71をX方向に並べ相互に接続することで、一つの側壁70を形成しているが、一つの移送側壁単位71で一つの側壁70を形成するようにしてもよい。また、本実施形態では、複数の移送妻壁単位111,112,113をY方向に並べて相互に接続することで、一つの妻壁80を形成しているが、一つの移送妻壁単位で一つの妻壁80を形成するようにしてもよい。但し、これらの場合、本実施形態よりも側壁用レール15及び妻壁用レール16の長さを長くする必要がある。
【0078】
また、本実施形態では、(−)X側の妻壁80をその設置領域で作製しているが、この妻壁80も(+)X側の妻壁80と同様、複数の移送妻壁単位111,112,113のそれぞれを仮設領域で作製した後、各移送妻壁単位111,112,113をY方向に並べ相互に接続して、一つの妻壁80を形成した後、この妻壁80を設置領域に移送してもよい。
【0079】
また、以上の各壁ブロック50の一対のスキンパネル51間は、複数のフランジ52,53,56で接合されているものの、基本的に空洞であるが、この一対のスキンパネル51間にコンクリートを流し込んで、壁ブロック50をSC(鋼板コンクリート)構造体にして、この壁ブロック50を強固な遮蔽壁にしてもよい。例えば、最下段の壁ブロック50の一対のスキンパネル51間にコンクリートを流し込んでもよい。また、屋根90を構成する屋根パネル93上に型枠を設け、この型枠内にコンクリートを打設し、屋根90もSC構造体にしてもよい。
【0080】
また、以上の実施形態の建屋Hの施工は、壁の設置領域の屋内側及び屋外側に広い作業領域を確保できない場合のみならず、有害物質や危険物を遮蔽する場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:被対象物、11:側壁基礎、12:側壁仮設基礎、13:妻壁基礎、14:妻壁仮設基礎、15:側壁用レール、16:妻壁用レール、21:側壁用ベント(支保工)、22:妻壁用ベント(支保工)、25:外部足場、30:横移動ジャッキ、37:油圧ジャッキ、50:壁ブロック、51:スキンパネル、52,53,56:フランジ、70:側壁、71:移送側壁単位、80:妻壁、81:移送妻壁単位、90:屋根、91:移送屋根単位、99:アンカーボルト、101:第一移送単位、102:第二移送単位、103:第三移送単位、111:第一移送妻壁単位、112:第二移送妻壁単位、113:第三移送妻壁単位、H:建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を備えている建屋の建設方法において、
前記側壁の設置領域から、水平面に沿った方向で且つ設置後の該側壁に沿った方向へ離間した仮設領域まで延びるレールを設置するレール設置工程と、
前記レール上の前記仮設領域で、前記側壁の少なくとも一部を移送単位として作製する移送単位作製工程と、
前記仮設領域で作製された前記移送単位を前記レールに沿って前記設置領域へ移送させる移送工程と、
を実施することを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建屋の建設方法において、
前記建屋は、互いに平行に対向する一対の側壁と、該一対の側壁の一方の側壁から他方の側壁にわたされた屋根と、を備えており、
前記レール設置工程では、前記一方の側壁に関する前記設置領域から前記仮設領域まで延びる前記レールとしての一方のレールと、前記他方の側壁に関する前記設置領域から前記仮設領域まで延びる前記レールとしての他方のレールとを設置し、
前記移送単位作製工程では、前記一方のレール上の前記仮設領域で、前記一方の側壁の下端から上端までを含む少なくとも一部である一方の移送壁単位を作製すると共に、前記他方のレール上の前記仮設領域で、前他方の側壁の下端から上端までを含む少なくとも一部である他方の移送壁単位を作製する移送壁単位作成工程と、前記一方の移送壁単位から前記他方の移送壁単位に、前記屋根の少なくとも一部を成す移送屋根単位をわたす移送屋根単作製工程と、を実行し、
前記移送工程では、前記一方の移送壁単位と前記他方の移送壁単位と前記移送屋根単位とを一体的にそれぞれの前記設置領域へ移送させる、
ことを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項3】
請求項2に記載の建屋の建設方法において、
前記移送単位作製工程では、前記一方のレール上の前記仮設領域で、前記一方の側壁の下端から上端までを含み且つ該一方の側壁の一部である前記一方の移送壁単位を作製すると共に、前記他方のレール上の前記仮設領域で、前他方の側壁の下端から上端までを含み且つ該他方の側壁の一部である他方の移送壁単位を作製する移送壁単位作成工程と、前記一方の移送壁単位から前記他方の移送壁単位に、前記屋根の一部を成す移送屋根単位をわたす移送屋根単位作製工程と、繰り返して実行して、前記一方の側壁を構成する全ての前記一方の移送壁単位と、前記他方の側壁を構成する全ての前記他方の移送壁単位と、前記屋根を構成する全ての前記移送屋根単位とを作製し、
前記移送工程では、前記一方の移送壁単位と前記他方の移送壁単位と前記移送屋根単位とが作製される毎に、これらを一体的にそれぞれの前記設置領域側へ段階的に移送させる、
ことを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の建屋の建設方法において、
前記建屋は、前記一対の側壁としての一対の第一側壁と、前記屋根と、該一対の第一側壁の側端相互を連結し且つ互いに対向する一対の第二側壁と、を備えており、
前記レール設置工程では、前記一対の第二側壁の少なくとも一方の第二側壁に対して、該一方の第二側壁に関する前記設置領域から前記仮設領域まで延びるレールを設置し、
前記移送単位作製工程では、前記少なくとも一方の第二側壁に対する前記レールの前記仮設領域で、該少なくとも一方の第二側壁の少なくとも一部を作製し、
前記移送工程では、前記仮設領域で作製された前記第二側壁の少なくとも一部を前記設置領域へ移送させる、
ことを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の建屋の建設方法において、
前記レール設置工程前に、前記側壁の前記設置領域に該側壁の基礎を形成する基礎形成工程を実施し、
前記レール設置工程では、前記基礎上に前記レールを設置し、
前記移送工程後に、前記基礎上の前記レールを撤去して、該移送工程で移送した前記移送単位を該基礎に固定する移送単位固定工程を実行する、
ことを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の建屋の建設方法において、
前記移送単位作製工程前に、前記仮設領域で作製される前記移送単位を支える支保工を設ける支保工設置工程を、
実施することを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の建屋の建設方法において、
前記側壁は、複数の壁ブロックを組み合わせて構成されており、
前記移送単位作製工程では、予め作製されている複数の前記壁ブロックを組み合わせて、前記側壁の前記移送単位を作製する、
ことを特徴とする建屋の建設方法。
【請求項8】
請求項7に記載の建屋の建設方法において、
前記壁ブロックは、互いに平行に対向する一対のスキンパネルと、一対のスキンパネル相互連結するフランジとを有するダブルスキン構造体である、
ことを特徴とする建屋の建設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−14944(P2013−14944A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148613(P2011−148613)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】