説明

建物の出隅部構造及び入隅部構造。

【課題】薄板を使用しつつも所定の強度を確保し得る建物の出隅部及び入隅部構造を提供する。
【解決手段】直交する2つの壁W1,W2の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の第1、第2コーナ用縦柱3,4をほぼ対角に近接配置すると共に、当該両コーナ用縦柱3,4の突き合わせ部の外周側及び内周側にそれぞれ形成される空間部C1,C2に、これら各空間部C1,C2をそれぞれ覆う湾曲状に形成された出隅用壁板部材11及び入隅用壁板部材12を配設してなる建物の出隅部構造及び入隅部構造において、前記各壁板部材11,12をそれぞれ薄板状に形成すると共に、該各壁板部材11,12の周方向の所定位置に、出隅用壁板部材11の内周側及び入隅用壁板部材12の外周側へそれぞれ突出する複数の突条15a,18aをそれぞれ縦方向に沿って設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマンション等の建物の出隅部構造及び入隅部構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の出隅部構造としては、従来、その横断面がほぼ直角となるように形成されていたが、かかる構造では、外観上、安全性及び空間の広がりやゆとりに欠け、品質の低下を招来してしまうといった問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決すべく、出願人は以下の特許文献に示す建物の出隅部構造を出願し、その出願は特許された。この特許に係る建物の出隅部構造は、横断面ほぼ矩形状の縦柱をほぼ対角線上に近接配置し、これによって前記両縦柱の外側に形成された空間部に、外周面が円弧状に形成されたコーナ用縦柱を嵌合状態に立設固定することにより、丸みを帯びた出隅部を構成して、外観上、安全性や空間の広がり等を与えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4142676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、前記従来の特許に係る建物の出隅部構造によって当該出隅部を円弧状に形成することは可能となるが、かかる円弧状の出隅部を構成する際のコストをより低減するべく、比較的薄手の板材によって当該出隅部を構成することが考えられている。
【0006】
しかしながら、このような薄手の板材を用いる場合には、十分な強度を確保することができないという技術的課題があった。
【0007】
なお、前記従来技術は建物の出隅部に係るものであるが、入隅部についても同様のことが言える。
【0008】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであり、薄板を使用しつつ所定の強度を確保し得る建物の出隅部構造及び入隅部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の縦柱をほぼ対角線上に並列に近接配置し、該両縦柱の近接部の外側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の出隅部構造において、前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の周方向の所定位置に径方向へ突出する複数の突条を縦方向に沿って設けたことを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、壁板部材に複数の突条を設けることとしたため、薄板状の壁板部材をもって出隅部を構成しつつも、その強度を十分に確保することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の出隅部構造において、前記壁板部材の一部を内周側へ窪ませるようにして前記各突条を形成し、前記壁板部材の外周面に、その外周側へ開口する溝部を形成したことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、特に壁板部材を金属板で成形する場合において、前記各突条の形成に基づく加工硬化によって金属板の剛性を高めることが可能となるため、当該金属板を湾曲成形する際に歪み等が生じにくくなる。このことから、平坦状の金属板を湾曲成形する場合に比べ、当該湾曲成形を比較的容易に行うことが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の建物の出隅部構造において、前記各突条を前記各溝部の幅方向へ押し潰すことによって前記各溝部を閉塞したことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、壁板部材の外周面に開口する前記各溝部を閉塞することにより、例えば壁板部材の外周側に化粧板を配設したりしなくとも、当該壁板部材単体で美感の悪化を伴うことなく出隅部を構成することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物の出隅部構造において、前記壁板部材の外周側に化粧板を配設し、該化粧板によって前記壁板部材を覆うように構成したことを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、壁板部材の外周面に仕上げ加工を施す必要がなくなり、出隅部の美感を容易に確保することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の柱又は梁をほぼ対角線上に並列に近接配置し、前記両柱又は両梁の近接部の外側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の出隅部構造において、前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の所定部分を径方向へ窪ませるようにして複数の突部を形成したことを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、壁板部材に複数の突部を設けることとしたため、薄板状の壁板部材をもって出隅部を構成しつつも、その強度を十分に確保することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の建物の出隅部構造において、前記壁板部材の一部を外周側へ窪ませるようにして前記各突部を形成し、前記壁板部材の外周面に、セメントを含有する硬化性材料を、前記各突部間に形成される凹部内に入り込ませるようにして塗着したことを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、壁板部材の外周面にセメントを含有する所定の硬化性材料(例えばモルタルなど)を塗って仕上げる場合に、前記各突部を硬化性材料の塗厚の目安とすることが可能となる。
【0021】
さらに、前記硬化性材料の塗着の際には、硬化性材料を前記各凹部内に入り込ませることで、当該硬化性材料が前記各突部に引っ掛かることとなって当該硬化性材料の塗着剛性が高まることから、硬化性材料の塗着を容易に行うことが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の縦柱をほぼ対角線上に並列に近接配置し、該両縦柱の近接部の内側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の入隅部構造において、前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の周方向の所定位置に径方向へ突出する複数の突条を縦方向に沿って設けたことを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、壁板部材に複数の突条を設けることとしたため、薄板状の壁板部材をもって入隅部を構成しつつも、その強度を十分に確保することが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の建物の入隅部構造において、前記壁板部材の一部を外周側へ窪ませるようにして前記各突条を形成し、前記壁板部材の内周面に、その内周側へ開口する溝部を形成したことを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、特に壁板部材を金属板で成形する場合において、前記各突条の形成に基づく加工硬化によって金属板の剛性を高めることが可能となるため、当該金属板を湾曲成形する際に歪み等が生じにくくなる。このことから、平坦状の金属板を湾曲成形する場合に比べ、当該湾曲成形を比較的容易に行うことが可能となる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の建物の入隅部構造において、前記各突条を前記各溝部の幅方向へ押し潰すことによって前記各溝部を閉塞したことを特徴としている。
【0027】
この発明によれば、壁板部材の内周面に開口する前記各溝部を閉塞することにより、例えば壁板部材の内周側に化粧板を配設したりしなくとも、当該壁板部材単体で美感の悪化を伴うことなく入隅部を構成することが可能となる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか一項に記載の建物の入隅部構造において、前記壁板部材の内周側に化粧板を配設し、該化粧板によって前記壁板部材を覆うように構成したことを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、壁板部材の内周面に仕上げ加工を施す必要がなくなり、入隅部の美感を容易に確保することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の柱又は梁をほぼ対角線上に並列に近接配置し、前記両柱又は両梁の近接部の内側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の入隅部構造において、前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の所定部分を径方向へ窪ませるようにして複数の突部を形成したことを特徴としている。
【0031】
この発明によれば、壁板部材に複数の突部を設けることとしたため、薄板状の壁板部材をもって入隅部を構成しつつも、その強度を十分に確保することが可能となる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の建物の入隅部構造において、前記壁板部材の一部を内周側へ窪ませるようにして前記各突部を形成し、前記壁板部材の内周面に、セメントを含有する硬化性材料を、前記各突部間に形成される凹部内に入り込ませるようにして塗着したことを特徴としている。
【0033】
この発明によれば、壁板部材の外周面にセメントを含有する所定の硬化性材料(例えばモルタルなど)を塗って仕上げる場合に、前記各突部を硬化性材料の塗厚の目安とすることが可能となる。
【0034】
さらに、前記硬化性材料の塗着の際には、硬化性材料を前記各凹部内に入り込ませることで、当該硬化性材料が前記各突部に引っ掛かることとなって当該硬化性材料の塗着剛性が高まることから、硬化性材料の塗着を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
請求項1に記載の発明によれば、薄板状の壁板部材をもって低廉なコストで十分な強度を有する湾曲状の出隅部を構成することができる。
【0036】
請求項2に記載の発明によれば、特に金属板で壁板部材を形成する場合に、当該金属板の加工硬化によって壁板部材の加工作業の容易化が図れ、当該壁板部材の加工コストの低廉化に寄与することができる。
【0037】
請求項3に記載の発明によれば、壁板部材単体で美感の悪化を伴うことなく出隅部を構成することが可能となるため、施工コストのさらなる低廉化に供される。
【0038】
請求項4に記載の発明によれば、低廉な施工コストでもって良好な美感を有する出隅部を構成することができる。
【0039】
請求項5に記載の発明によれば、薄板状の壁板部材をもって低廉なコストで十分な強度を有する湾曲状の出隅部を構成することができる。
【0040】
請求項6に記載の発明によれば、前記各突部の高さを均一化することにより、硬化性材料の塗厚の目安とすることが可能となり、これによって、当該硬化性材料の塗着後の仕上がり品質の均一化が図れる。
【0041】
また、前記各凹部内に硬化性材料を入り込ませることで、当該硬化性材料の塗着作業を容易に行うことが可能となり、これによって、施工コストの低廉化にも供される。
【0042】
請求項7に記載の発明によれば、薄板状の壁板部材をもって低廉なコストで十分な強度を有する湾曲状の入隅部を構成することができる。
【0043】
請求項8に記載の発明によれば、特に金属板で壁板部材を形成する場合に、当該金属板の加工硬化によって壁板部材の加工作業の容易化が図れ、当該壁板部材の加工コストの低廉化に寄与することができる。
【0044】
請求項9に記載の発明によれば、壁板部材単体で美感の悪化を伴うことなく入隅部を構成することが可能となるため、施工コストのさらなる低廉化に供される。
【0045】
請求項10に記載の発明によれば、低廉な施工コストでもって良好な美感を有する入隅部を構成することができる。
【0046】
請求項11に記載の発明によれば、薄板状の壁板部材をもって低廉なコストで十分な強度を有する湾曲状の入隅部を構成することができる。
【0047】
請求項12に記載の発明によれば、前記各突部の高さを均一化することで、硬化性材料の塗厚の目安とすることが可能となり、これによって、当該硬化性材料の塗着後の仕上がり品質の均一化が図れる。
【0048】
また、前記各凹部内に硬化性材料を入り込ませることで、当該硬化性材料の塗着作業を容易に行うことが可能となり、これによって、施工コストの低廉化にも供される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の概略を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】同実施形態に係る縦柱の立設構造を示す分解斜視図である。
【図4】同実施形態に係る壁板部材を湾曲する状態を示す当該壁板部材の平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の特徴を説明する要部拡大断面図である。
【図6】同実施形態に係る壁板部材を湾曲する状態を示す当該壁板部材の平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の特徴を説明する要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の概略を示す斜視図である。
【図9】同実施形態に係る出隅用壁板部材単体を現す斜視図である。
【図10】同実施形態に係る入隅用壁板部材単体を現す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、以下の各実施形態のうち、第1〜第3実施形態では、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造を建物の内壁に適用した例を示しており、第4実施形態では、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造を建物の外壁に適用した例を示している。
【0051】
図1〜図5は本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の第1実施形態を示しており、この出隅部構造及び入隅部構造は、図1〜図3に示すように、例えば室内を隔成する四隅の床側及び天井側にそれぞれ直交状態に配置されてビス7cによって固定された直線状の第1、第2ランナR1,R2上に、2つの壁である第1、第2壁W1,W2の各骨格を構成する複数の第1、第2縦柱1,2がそれぞれ所定の間隔をもって立設されると共に、前記両壁W1,W2の突き合わせ対向端部に、第1、第2コーナ用縦柱3,4が相互に一角を突き合わせるような対角状態に立設されている。そして、第1縦柱1の室外側及び室内側の各辺1a,1bと第1コーナ用縦柱3の室外側及び室内側の各辺3a,3bとから構成される室外側及び室内側の各面にはそれぞれ第1石膏ボート5が配置されている一方、第2縦柱2の室外側及び室内側の各辺2a,2bと第2コーナ用縦柱4の室外側及び室内側の各辺4a,4bとから構成される第2壁W2の室外側及び室内側の各面にはそれぞれ第2石膏ボード6が配置されている。なお、これら各石膏ボード5,6は、室外側にあっては、その対向端部5a,6aが第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3a,4aの一端側(第1、第2縦柱1,2側)に、また、室内側にあっては、その対向端部5a,6aが第1、第2縦柱1,2の前記各辺1b,2bの一端側(第1、第2コーナ用縦柱3,4反対側)に、それぞれ複数のビス7aをもって固定されている。
【0052】
また、かかる構成により、前記両コーナ用縦柱3,4の突き合わせ部の外側(室外側)には横断面ほぼ三角形状の外側空間部C1が形成されており、この外側空間部C1には薄板を折曲等してなる出隅用壁板部材11が収容されて、この出隅用壁板部材11によって出隅曲壁8が構成されている。同様に、前記両コーナ用縦柱3,4の突き合わせ部の内側(室内側)にも横断面ほぼ三角形状の内側空間部C2が形成されていて、この内側空間部C2にも薄板を折曲等してなる入隅用壁板部材12が収容されて、この入隅用壁板部材12によって入隅曲壁9が構成されている。
【0053】
前記各壁板部材11,12は、いずれも厚さ0.6mm程度の薄手の金属板を折曲してその横(幅)方向の両端部を突き合わせることによって横断面ほぼ扇形状をなす中空柱状に形成され、第1、第2ランナR1,R2の突き合わせ対向端部にて室外側及び室内側にそれぞれ配設された図外のコーナ用ランナを介して立設されている。
【0054】
より具体的に説明すれば、前記出隅用壁板部材11は、各端がそれぞれ第1、第2コーナ用縦柱3,4の室外側の各辺3a,4aと連続するように構成され、幅方向に沿ってほぼ円弧状に湾曲成形された湾曲部15と、該湾曲部15の周方向一端側に第1コーナ用縦柱3の内側辺3cと重合するように当接配置され、該内側辺3cの対向辺側から螺着されるビス7bによって第1コーナ用縦柱3に共締め固定された第1平坦部16と、湾曲部15の周方向他端側に第2コーナ用縦柱4の内側辺4cと重合するように当接配置され、該内側辺4cの対向辺側から螺着されるビス7bによって第2コーナ用縦柱4に共締め固定される第2平坦部17と、を有している。
【0055】
そして、前記湾曲部15の周方向の所定位置には、内周側へ突出し、かつ、縦(高さ)方向へ連続する複数の突条15aが設けられている。これら複数の突条15aは、前記金属板の一部を縦方向へ沿って窪ませることにより横断面ほぼコ字形状に形成されていると共に、当該突条15aの内側に相当する湾曲部15の外周面には、ほぼ矩形状の溝部15bが構成されている。
【0056】
すなわち、この出隅用壁板部材11は、図4中に破線で示すような前記複数の突条15aが内側に突設された金属板を、同図中に実線で示すように内側へ反り返るように湾曲させることによって湾曲部15を形成した後に、該湾曲部15の両端側を、当該湾曲部15内周側にて突き合わせるようにそれぞれ折曲させることによって前記各平坦部16,17を形成したものである。このような構成から、前記各突条15aは、湾曲部15によって構成される円弧の中心へと指向し、当該壁板部材11の外周面側の円弧についての接線に対し垂直な状態となっている。
【0057】
なお、前記各突条15aは、それぞれの突出量がいずれもほぼ同一となるように形成されていて、これによって、当該各突条15aの突出量D1に等しい前記各溝部15bの深さd1がいずれもほぼ同じになるように構成されている。
【0058】
一方、前記入隅用壁板部材12も、前記出隅用壁板部材11と同様に、各端がそれぞれ第1、第2ランナR1,R2の室内側の各側壁と連続するように構成され、幅方向に沿ってほぼ円弧状に湾曲成形された湾曲部18と、該湾曲部18の周方向一端側に第1コーナ用縦柱3の室内側の辺3bと重合するように当接配置され、室内側から湾曲部18の内周面に対して垂直となるように螺着されるビス7bによって第1コーナ用縦柱3に共締め固定された第1平坦部19と、湾曲部18の周方向他端側に第2コーナ用縦柱4の内側辺4cと重合するように当接配置され、第1平坦部19と同様に、室内側から湾曲部18に垂直に螺着されるビス7bによって第2コーナ用縦柱4に共締め固定される第2平坦部20と、を有している。
【0059】
そして、この入隅用壁板部材12に係る湾曲部18の周方向の所定位置にも、縦方向に沿って連続する横断面ほぼコ字形状の複数の突条18aが設けられているが、これら複数の突条18aは、前記出隅用壁板部材11の突条15aとは異なり、湾曲する(反り返る)側に対し反対側となる当該湾曲部18の外周側へ突出するように形成されていて、当該各突条18aの内側に相当する湾曲部18の内周面には、前記出隅用壁板部材11と同様、ほぼ矩形状の溝部18bが構成されている。
【0060】
すなわち、この入隅用壁板部材12は、前記複数の突条18aが外側に突設された金属板を、内側へ反るように湾曲させることによって湾曲部18を形成した後に、該湾曲部15の両端側を、当該湾曲部18内周側にて突き合わせるようにそれぞれ折曲させることによって前記各平坦部19,20を形成したものである。かかる構成により、前記各溝部18bが、湾曲部18によって構成される円弧の中心へ指向するように開口し、当該湾曲部18外周面側の円弧についての接線に対し垂直となっている。
【0061】
なお、前記各突条18aも、前記各突条15aと同様に、それぞれの突出量D2がいずれもほぼ同一となるように形成されていて、これによって、前記各溝部12bの深さd2がいずれもほぼ同じになるように構成されている。
【0062】
また、前記出隅用壁板部材11の湾曲部15の外周側には、当該湾曲部15の曲率に沿って円弧状に湾曲形成された合成樹脂からなる出隅用化粧板13が配設されていて、当該化粧板13の表面にビニールクロスを貼り付けたり塗装したりすることで、前記出隅曲壁8が構成されることとなる。なお、この化粧板13は、その両端部13a,13bが、第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3a,4aの他端側に、複数のビス7dをもって固定されている。
【0063】
一方、前記入隅用壁板部材12の湾曲部18の内周側にも、当該湾曲部18の曲率に沿って円弧状に湾曲形成された合成樹脂からなる入隅用化粧板14が配設されており、当該化粧板14の表面にビニールクロスを貼り付けたり塗装したりすることで、前記入隅曲壁9が構成されることとなる。なお、この化粧板14は、その両端部14a,14bが、第1、第2縦柱1,2の前記各辺1b,2bの他端側に、複数のビス7dをもって固定されている。
【0064】
そして、前記各化粧板13,14は、その板厚Dpがいずれも前記各曲壁8,9に隣接する第1壁W1及び第2壁W2において前記各石膏ボード5,6の板厚Dcと前記各ランナR1,R2の板厚Drとを積算して得られる厚さとほぼ等しくなるように設定され、前記各曲壁8,9の表面の平坦部と、該各曲壁8,9に隣接する第1壁W1及び第2壁W2の各表面と、が凹凸のない一連の平面を構成するようになっている。
【0065】
なお、前記出隅用化粧板13の内周面及び入隅用化粧板14の外周面には、それぞれ前記各溝部15b,18bに嵌合する複数の突条13c,14cが突設されていて、該各突条13c,14cを前記各溝部15b,18bに嵌合させるように構成することで、前記各壁板部材11,12に対する当該各化粧板13,14の位置決めが可能となり、これによって、当該各化粧板13,14を前記各壁板部材11,12に取り付ける際の作業性の向上が図られている。換言すれば、上記のような構成とすることで、前記各曲壁8,9の施工作業の負担を軽減することができ、これによって、当該各曲壁8,9の施工コストの低廉化に供されるようになっている。
【0066】
このように、本実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造においては、建物の出隅部及び入隅部を、それぞれ薄板の金属板を湾曲等してなる前記出隅用壁板部材11及び入隅用壁板部材12によって構成したことにより、当該両壁板部材11,12はそれぞれ比較的小さな規模の設備で加工できることから、低廉な加工コストでもって当該出隅部及び入隅部を構成することが可能となる。そして、前記各壁板部材11,12を薄板状に形成するにあたり、前記各湾曲部15,18に前記複数の突条15a,18aを設けることとしたことから、これら複数の突条15a,18aを設けたことによる金属板の加工硬化により、薄板状に形成しつつも前記各湾曲部15,18の強度を十分に確保することができる。このように、当該実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造によれば、比較的小さな設備で加工可能な薄板状の出隅用壁板部材11及び入隅用壁板部材12をもって、低廉なコストで十分な強度を有する円弧状の出隅部及び入隅部を構成することができる。
【0067】
しかも、前記各突条15a,18aは、出隅用壁板部材11にあっては湾曲部15の内周側に、また、入隅用壁板部材12にあっては湾曲部18の外周側に、それぞれ金属板を窪ませるのみによって形成することが可能であり、これらはプレス機を用いて容易に形成できることから、当該各突条15a,18aの形成に係る加工作業の負担増を最小限に抑えることが可能となる。このため、前記各壁板部材11,12の加工コストが大きく増大してしまうおそれもない。
【0068】
また、前記各突条15a,18aを形成したことによって、前述したような加工硬化により金属板の剛性が高まることから、特に前記各湾曲部15,18を形成する際に、金属板に歪み等が生じにくく、凹凸のない平坦状の金属板を湾曲する場合に比べ、当該各湾曲部15,18を比較的容易に形成することが可能となる。これによって、前記各壁板部材11,12の加工作業の容易化が図れ、当該各壁板部材11,12の加工コストの低廉化に寄与できる。
【0069】
さらに、前記出隅用壁板部材11にあっては湾曲部15外周側に、前記入隅用壁板部材12にあっては湾曲部18内周側に、それぞれ開口するように前記各溝部15b,18bを形成したことから、当該各壁板部材11,12の表面に前記各化粧板13,14を取り付けるにあたり、前述のような化粧板13,14の位置決めを行うことが可能となり、当該各化粧板13,14の取付作業性の向上にも供される。
【0070】
また、本実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造では、出隅用壁板部材11の外周側及び入隅用壁板部材12の内周側に、それぞれ出隅用化粧板13及び入隅用化粧板14を配設する構成としたため、当該各壁板部材11,12の表面をモルタル等によって仕上げる場合に比べ、より簡易に出隅部及び入隅部の美感を確保することが可能となる。これにより、低廉な施工コストで良好な美感を有する出隅部及び入隅部を構成することができる。
【0071】
図5及び図6は、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の第2実施形態を示しており、当該第3実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造にあっては、前記第1実施形態に係る出隅用壁板部材11及び入隅用壁板部材12の構成の一部を変更して、前記各化粧板13,14を廃止したものである。なお、本実施形態においても、基本的な構成は前記第2実施形態と同様であることから、便宜上、前記第2実施形態と異なる構成についてのみ説明するものとして、前記第2実施形態と同じ構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0072】
すなわち、本実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造においては、図5に示すように、前記第1実施形態に係る出隅用壁板部材11及び入隅用壁板部材12の前記各湾曲部15,18において、前記各突条15a,18aを前記各溝部15b,18bの幅方向へ押し潰すことによって当該各溝部15b,18bを閉塞した出隅用壁板部材21及び入隅用壁板部材22をもって、前記出隅曲壁8及び入隅曲壁9を構成したものである。
【0073】
具体的には、前記出隅用壁板部材21については、横断面がほぼU字或いはコ字形状となるように内側へ突設させたものを幅方向へと押し潰して対向辺間に隙間を有しないように構成してなる複数の突条21aが設けられた図6中に破線で示す平坦な横方向のほぼ中央部を同図中に実線で示すように内側へ反り返るように湾曲させることによって前記第1実施形態と同様の湾曲部21bが構成され、該湾曲部21bの両端側に残存する平坦部21c,21dを介して、前記第1実施形態と同様に、第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3c,4cに前記各ビス7bによって固定されている。
【0074】
一方、前記入隅用壁板部材22は、横断面がほぼU字或いはコ字形状となるように内側へ突設させたものを幅方向へ押し潰して対向辺間に隙間を有しないように構成してなる複数の突条22aが設けられた平坦な横方向ほぼ中央部を内側へ反り返るように湾曲させることによって前記第1実施形態と同様の湾曲部22bが構成され、該円弧部22b及びその両端側に残存する平坦部22c,22dを介して、前記第1実施形態と同様に、第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3b,4bに前記各ビス7bによって固定されている。
【0075】
また、本実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造においては、前記各曲壁8,9が、いずれも前記各壁板部材21,22単体によって構成されていて、本実施形態に係る出隅用壁板部材21については、前記両平坦部21c,21dの長さX1が、いずれも第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3c,4cの幅方向寸法Yと前記各ランナR1,R2の板厚Drと前記各石膏ボード5,6の板厚Dcとを積算して得られる大きさと等しくなるように設定されている。
【0076】
一方、本実施形態に係る入隅用壁板部材22は、第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3b,4bに重合するように当接配置される前記両平坦部22c,22dと湾曲部22bとの間に、前記各石膏ボード5,6と前記各ランナR1,R2との突き合わせ対向端面に重合配置される嵩上げ部22e,22fが折曲形成され、該各嵩上げ部22e,22fの長さX2が、前記各ランナR1,R2の板厚Drと前記各石膏ボード5,6の板厚Dcとを積算して得られる大きさと等しくなるように設定されている。
【0077】
また、前記各石膏ボード5,6も、その対向端部5a,6aがそれぞれ第1コーナ用縦柱3の前記各辺3a,3b及び第2コーナ用縦柱4の前記各辺4a,4bの他端側まで延長されていて、当該第1コーナ用縦柱3の前記各辺3a,3b及び第2コーナ用縦柱4の前記各辺4a,4bの他端側に、それぞれ前記各ビス7aによって固定されるようになっている。このように、本実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造においても、出隅曲壁8及び入隅曲壁9の各表面とこれに隣接する第1壁W1及び第2壁W2の各表面とが凹凸のない一連の平面を構成するようになっている。
【0078】
以上のように構成された本実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造によれば、第1、第2壁板部材21,22の前記各突条21a,22aの対向辺間、つまり出隅用壁板部材21の外周面及び入隅用壁板部材22の内周面に、それぞれ隙間を形成しないように構成したことにより、出隅用壁板部材21の外周側及び入隅用壁板部材22の内周側に、前記第1実施形態のような前記各化粧板13,14を配置したりモルタル等による仕上げ加工を施したりしなくとも、当該各壁板部材21,22単体で美感の悪化を伴うことなく前記各曲壁8,9を構成することができる。これにより、前記各曲壁8,9の施工コストのより一層の低廉化が図れる。
【0079】
図7は、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の第3実施形態を示しており、当該第3実施形態に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造にあっては、前記第2実施形態に係る出隅用壁板部材21の外周側及び入隅用壁板部材22の内周側に、前記第1実施形態と同様に、前記各化粧板13,14を配設したものである。なお、本実施形態に係る出隅用壁板部材21及び入隅用壁板部材22では、前記第1実施形態に係る前記各溝部15b,18bは閉塞されたものとなっていることから、本実施形態では、前記第1実施形態に係る前記各化粧板13,14の位置決め構造についても廃止したものとなっている。
【0080】
したがって、この実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。特に、前記各壁板部材21,22は、前記第2実施形態のように単体で前記各曲壁8,9を構成することが可能であるが、当該各壁板部材11,12の表面に前記各化粧板13,14を配設することで、前記各突条21a,22aをラフに成形しても、つまり前記各突条21a,22aの内側に多少の隙間が形成されてしまった場合でも、それが美感に影響することがないため、前記各壁板部材21,22の加工作業をより簡易なものとすることができ、当該各壁板部材21,22の加工コストのさらなる低廉化に供される。
【0081】
図8〜図10は、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の第4実施形態を示すもので、とりわけ、本発明に係る建物の出隅部構造を、建物の外壁に適用したものである。
【0082】
すなわち、本実施形態に係る出隅用壁板部材31は、図8、図9に示すように、前記各実施形態と同様の薄手の金属板を横方向においてほぼ円弧状に湾曲成形してなり、その両端部31c,31dが、第1、第2コーナ用縦柱3,4の前記各辺3a,4aの他端側に、前記各ビス7eによって固定されている。そして、この出隅用壁板部材31の湾曲部の近傍には、前記各出隅用壁板部材11,21の突条15a,21aに代えて、プレス加工によって外周側へ突出するように形成してなる複数の突部31aがスポット状に設けられており、該各突部31aは、金属板を内周側から外周側へ矩形状に窪ませることによって、横断面ほぼコ字形状に形成されている。ここで、これら各突部31aは、前記各突条15a,21aと同様、いずれもほぼ同じ突出量となるように形成されていて、これによって、当該各突部31aの突出量D1と、当該各突部31a間に形成される凹溝31bの深さd1と、がほぼ同じになるように構成されている。
【0083】
一方、本実施形態に係る入隅用壁板部材32も、図8、図10に示すように、前記出隅用壁板部材31と同様、薄手の金属板を横方向においてほぼ円弧状に湾曲成形してなるもので、その両端部32c,32dが、第1、第2縦柱1,2の前記各辺1b,2bの他端側に、前記各ビス7eにより固定されている。そして、この入隅用壁板部材32の湾曲部の近傍にも、前記各入隅用壁板部材12,22の突条18a,22aに代えて、プレス加工によって内周側へ突出するように形成してなる複数の突部32aがスポット状に設けられており、該各突部32aも、金属板を外周側から内周側へ矩形状に窪ませることによって、横断面ほぼコ字形状に形成されている。ここで、これら各突部32aも、前記各突条18a,22aと同様、いずれもほぼ同じ突出量となるように形成されていて、これによって、当該各突部32aの突出量D2と、当該各突部32a間に形成される凹溝32bの深さd2と、がほぼ同じになるように構成されている。
【0084】
なお、前記各突部31a,32aにつき、本実施形態では横断面がほぼ矩形状となるように形成したものを例に説明するが、必ずしもかかる形状に限定されるものではなく、例えば横断面がほぼ半円形状となるように構成することも可能である。
【0085】
また、上述のような出隅用壁板部材31及び入隅用壁板部材32を用いて構成された本実施形態に係る出隅曲壁8及び入隅曲壁9は、図8に示すように、いわゆるモルタル仕上げが施されており、具体的には、出隅用壁板部材31の外周面及び入隅用壁板部材32の内周面にそれぞれモルタル30が塗着され、これを硬化させたものである。なお、このモルタル30の厚さDmは、耐火性との関係から所定の厚さに設定されるものであって、本実施形態では、外観上の美感を良好なものとするべく、当該モルタル30の厚さDmと出隅用壁板部材31の板厚Db1ないし入隅用壁板部材32の板厚Db2とを積算して得られる厚さと、前記各曲壁8,9に隣接する第1壁W1及び第2壁W2において前記各石膏ボード5,6の板厚Dcと前記各ランナR1,R2の板厚Drとを積算して得られる厚さと、がほぼ等しくなるように設定され、これによって、出隅曲壁8及び入隅曲壁9の各表面の平坦部と、当該各曲壁8,9に隣接する第1壁W1及び第2壁W2の各表面と、がそれぞれ凹凸のない一連の平面を構成するようになっている。
【0086】
以上のように、本実施形態では、前記出隅用壁板部材31の外周面及び入隅用壁板部材32の内周面に前記各一定の突出量D1,D2に設定した各突部31a,32aを突設したことで、当該出隅用壁板部材31の外周面及び入隅用壁板部材32の内周面にモルタル30を塗着する際には、該モルタル30が前記各突部31a,32a間に形成される凹溝31b,32b内に入り込むこととなって、当該各突部31a,32aの突出量D1,D2をモルタル30の塗厚の目安とすることができる。これにより、出隅用壁板部材31の外周面及び入隅用壁板部材32の内周面に、モルタル30をほぼ均一の厚さで容易に塗着することが可能となり、その結果、モルタル仕上げの品質の均一化が図れると共に、当該モルタル30の塗着作業性の向上に供される。
【0087】
さらに、上記構成によれば、かかるモルタル30を塗着する際に、モルタル30が前記各凹溝31b,32b内に入り込むことにより、当該モルタル30が前記各突部31a,32aの側面に引っ掛かることとなって、その塗着剛性を高めることができる。これによって、モルタル30の塗着を容易に行うことが可能となり、当該モルタル30の塗着作業性のさらなる向上と施工コストの低廉化に供される。
【0088】
なお、本実施形態では、前記出隅用壁板部材31の外周面及び入隅用壁板部材32の内周面にモルタル30を塗着するように構成したものを例に説明したが、必ずしも当該モルタル仕上げに係るものに限定されるものではない。換言すれば、上記出隅用壁板部材31及び入隅用壁板部材32も、前記各出隅用壁板部材11,21や前記各入隅用壁板部材12,22と同様に折曲することで、室内の出隅部及び入隅部等に適用することも可能であり、この場合、例えば、当該出隅用壁板部材31の外周側及び入隅用壁板部材32の内周側に前記第1実施形態等において説明したような前記各化粧板13,14を配設することで、出隅曲壁8及び入隅曲壁9を構成することができる。
【0089】
以上、本発明は、前記各実施形態等の構成に限定されるものでなく、例えば前記各壁板部材11,12,21,22,31,32について、前述した金属板以外に、樹脂等の非金属からなる板材によって構成することも可能である。そして、前記各壁板部材11,12,21,22,31,32を前記非金属の板材により構成した場合においては、前記各実施形態等とほぼ同様の作用効果が得られるのは勿論のこと、金属板のように曲げ加工する必要がない分、前記各突条15a,18a,21a,22aや前記各突部31a,32aを含めて当該各壁板部材11,12,21,22,31,32を、より一層容易に形成することが可能となって、さらなるコスト低減に供される。
【0090】
また、前記各実施形態では、建物の出隅部と入隅部の両部において本発明を適用したものを例に説明したが、出隅部又は入隅部の一方の隅部に本発明を適用し、他方の隅部には本発明を適用せず従来のような横断面がほぼ直角となる隅部として構成するようにしてもよく、建物の仕様等に応じて自由に構成することができる。
【0091】
さらに、前記第1〜第3実施形態では、前述のように、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造を、建物の内壁に適用したものを例に説明したが、前記各出隅用壁板部材11,21については、例えば特許第4142676号公報の図8、図9に図示されたコーナー用横梁部材76の代替として用いることで、同図に図示された室内の掘壁のように、内壁であって室内の四隅以外の隅部にも適用可能である。すなわち、上記公報の前記各図に図示されたような対向する角縁が互いに当接するように配置された両横梁部材74,75の外側に形成される横断面ほぼ三角形状の隙間Cを覆うように前記各出隅用壁板部材11,21を配設することにより、前述のような出隅曲壁8を構成することができる。このように、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造は、上記掘壁をはじめ、天井、側壁、床を問わず適用可能である。
【0092】
一方で、前記第4実施形態では、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造を、建物の外壁に適用したものを例に説明したが、当該発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造は、建物の外壁のみならず、例えばベランダの側壁等にも適用可能である。
【0093】
以上のように、本発明に係る建物の出隅部構造及び入隅部構造の適用対象は、建物の外壁であるか内壁であるかを問わないのは勿論のこと、側壁の隅部に限定されるものでもなく、二つの壁又は板が出会う隅部であれば、いかなる部位にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
3…第1コーナ用縦柱(縦柱)
4…第2コーナ用縦柱(縦柱)
11…出隅用壁板部材(壁板部材)
12…入隅用壁板部材(壁板部材)
15a…突条
18a…突条
W1…第1壁(壁)
W2…第2壁(壁)
C1…外側空間部(空間部)
C2…内側空間部(空間部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の縦柱をほぼ対角線上に並列に近接配置し、該両縦柱の近接部の外側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の出隅部構造において、
前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の周方向の所定位置に径方向へ突出する複数の突条を縦方向に沿って設けたことを特徴とする建物の出隅部構造。
【請求項2】
前記壁板部材の一部を内周側へ窪ませるようにして前記各突条を形成し、前記壁板部材の外周面に、その外周側へ開口する溝部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の建物の出隅部構造。
【請求項3】
前記各突条を前記各溝部の幅方向へ押し潰すことによって前記各溝部を閉塞したことを特徴とする請求項2に記載の建物の出隅部構造。
【請求項4】
前記壁板部材の外周側に化粧板を配設し、該化粧板によって前記壁板部材を覆うように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物の出隅部構造。
【請求項5】
直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の柱又は梁をほぼ対角線上に並列に近接配置し、前記両柱又は両梁の近接部の外側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の出隅部構造において、
前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の所定部分を径方向へ窪ませるようにして複数の突部を形成したことを特徴とする建物の出隅部構造。
【請求項6】
前記壁板部材の一部を外周側へ窪ませるようにして前記各突部を形成し、前記壁板部材の外周面に、セメントを含有する硬化性材料を、前記各突部間に形成される凹部内に入り込ませるようにして塗着したことを特徴とする請求項5に記載の建物の出隅部構造。
【請求項7】
直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の縦柱をほぼ対角線上に並列に近接配置し、該両縦柱の近接部の内側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の入隅部構造において、
前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の周方向の所定位置に径方向へ突出する複数の突条を縦方向に沿って設けたことを特徴とする建物の入隅部構造。
【請求項8】
前記壁板部材の一部を外周側へ窪ませるようにして前記各突条を形成し、前記壁板部材の内周面に、その内周側へ開口する溝部を形成したことを特徴とする請求項7に記載の建物の入隅部構造。
【請求項9】
前記各突条を前記各溝部の幅方向へ押し潰すことによって前記各溝部を閉塞したことを特徴とする請求項7に記載の建物の入隅部構造。
【請求項10】
前記壁板部材の内周側に化粧板を配設し、該化粧板によって前記壁板部材を覆うように構成したことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の建物の入隅部構造。
【請求項11】
直交する2つの壁の突き合わせ対向端部に横断面ほぼ矩形状の柱又は梁をほぼ対角線上に並列に近接配置し、前記両柱又は両梁の近接部の内側に形成された空間部に湾曲状の壁板部材を配設することで前記空間部を覆うように構成してなる建物の入隅部構造において、
前記壁板部材を薄板状に形成すると共に、前記壁板部材の所定部分を径方向へ窪ませるようにして複数の突部を形成したことを特徴とする建物の入隅部構造。
【請求項12】
前記壁板部材の一部を内周側へ窪ませるようにして前記各突部を形成し、前記壁板部材の内周面に、セメントを含有する硬化性材料を、前記各突部間に形成される凹部内に入り込ませるようにして塗着したことを特徴とする請求項11に記載の建物の入隅部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−169016(P2011−169016A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33279(P2010−33279)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(596163172)吉野産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】