説明

建物の初期変位付与型TMD制振システム

【課題】建築物の屋上又は屋内に設置される制振装置(TMD)の過渡応答初期の応答低減効果を大きく高め、安価で取り付け容易で制振効果の高い建築物のTMD制振システムを提供する。
【解決手段】制振システムは、地震時に建物への入力地震動を打ち消す方向に作用する重錘と、該重錘と建物との間に介装されるバネ及びダンパーとから成る制振装置(TMD)と、該制振装置をロック状態に維持し、地震時にロック解除するトリガー装置4を備え、前記TMDのバネは、予め所定長さ伸縮させてTMDの付加により建築物単体のときの振動モードの近傍に生じる固有振動数の近接した複数の振動モードが重畳することにより生じる“うなり”の包絡線の位相変化を利用して設定した初期変位が与えられると共に該初期変位がトリガー装置4で維持されており、地震時にロック状態が解除されて該初期変位が解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に過渡応答初期の制振効果を高めることが可能な初期変位付与型TMDを設けた制振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物に地震動が作用したときの振動制御手法として、アクティブ型の振動制御手法とパッシブ型の振動制御手法が取られる。アクティブ型の振動制御手法は、アクチュエーターを用いて外乱を打ち消すように重錘を強制的に運動させて外乱による建物の振動を制御する手法である。しかし、この制御手法では、アクチュエーターを作動させるために別途外部からの大きなエネルギーが必要であり、振動制御装置が長大になるだけでなく、低次元化によるスピルオーバーのような危険な不安定現象が生じる可能性もあることから、アクチュエーターを制御するための複雑な制御則も必要となる。
【0003】
パッシブ型の振動制御手法としては、建物にTMDを設けるものがある。このTMDは、重錘とバネとダンパーで構成され、構造物に取り付け共振させ大きく振動させることにより構造物の振動エネルギーを重錘の運動エネルギーとして吸収し、ダンパーの減衰力によりエネルギーを消散する振動制御手法である。このTMDは支点を必要としないため設計の自由度が高く、吊り橋や斜張橋の主塔の強風振動に対する制振対策、スレンダーな高層ビルや鉄塔の強風や地震に対する制振対策、最近多く見られる大スパン床スラブの環境振動に対する対策など多くの分野で実績がある。
【0004】
しかしながら、TMDの制振効果は定常状態を基本としているため、非定常な地震動に対するTMDの制振効果はあまり大きくないことが分かっている。特に地震動を受けた場合には、応答の初期におけるTMDを取り付けた建物の制振効果はあまり期待できない。これは、パッシブ型のTMDでは、重錘を強制的に運動させる外部エネルギーがないため、重錘が外乱(地震動)により自ら動きだして安定した振動状態に至るまでは、制振効果が発現されないためである。このことがTMDを地震動に対して適用を難しくする大きな課題となっている。
【0005】
パッシブ型のTMDを建物に組み込んで地震力に対する応答制御に利用した特許文献は多々あるが、TMDに初期変位を与えることにより代表的な過渡応答である衝撃力を受けたときの応答低減効果を高める先行技術としては、次の非特許文献1と非特許文献2に記述されているだけである。これら2件の文献には、建物にTMDを取り付けることにより生じる近接した2つの(若しくはそれ以上)の振動モードが重畳することにより生じる“うなり”の包絡線の位相変化を利用して、TMDの初期変位の大きさでコントロールすることにより、過渡応答初期の応答低減効果を大きく高める方法については開示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Abe and T.Igusa:Semi-Active Dynamic Vibration Absorbers for Controlling Transient Response, Journal of Sound and Vibration, Vol.198(5), pp.547-569, 1996.
【非特許文献2】田中信雄著「振動制御」養賢堂 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、建築物の屋上又は屋内に設置される制振装置(TMD)のバネに、予め所定長さ伸縮させて初期変位を与えると共に該初期変位をトリガー装置で維持しておき、地震時にロック状態を解除して初期変位を解放し、その際にTMDの初期変位を適切に与えることにより過渡応答初期の応答低減効果を大きく高め、安価で取り付け容易で制振効果の高い建築物のTMD制振システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る建物の初期変位付与型TMD制振システムは、建築物の屋上又は屋内に設置される制振システムであって、該制振システムは、地震時に建物への入力地震動を打ち消す方向に作用する重錘と、該重水と建物との間に介装されるバネ及びダンパーとから成る制振装置(TMD)と、該制振装置をロック状態に維持し、地震時にロック解除にするトリガー装置を備え、前記TMDのバネは、予め所定長さ伸縮させてTMDの付加により建築物単体のときの振動モードの近傍に生じる固有振動数の近接した複数の振動モードが重畳することにより生じる“うなり”の包絡線の位相変化を利用して設定した初期変位が与えられると共に該初期変位がトリガー装置で維持されており、地震時にロック状態が解除されて該初期変位が解放されることを特徴としている。
【0009】
従来の制振建築物に設けたTMDは、制振効果は定常状態を基本としているため、非定常な地震動に対するTMDの制振効果はあまり大きくないことが分かっている。特に地震動を受けた場合には、応答の初期におけるTMDを取り付けた建物の制振効果はあまり期待できない。これは、パッシブ型のTMDでは、重錘を強制的に運動させる外部エネルギーがないため、重錘が外乱(地震動)により自ら動きだして安定した振動状態に至るまでは、制振効果が発現されないためである。このことがTMDを地震動に対して適用を難しくする大きな問題となっている。
【0010】
しかし、本発明のTMDは、単に初期変位を与えることによる減衰効果の向上を狙ったものではなく、固有振動数の近接した複数の振動モードが重畳することにより生じる“うなり”の包絡線の位相変化を利用するものである。具体的には、建築物にTMDを1つ取り付けることにより、建築物単体のときの振動モードの近傍に固有振動数の近接した2つの振動モードが新たに生じる。これら2つの振動モードが時刻歴で重畳すると“うなり”が発生する。この場合、建物に複数個のTMDを取り付ければ、その個数に応じた振動モードが新たに生じる。TMDの初期変位の付与により“うなり”の包絡線の位相を変化させることが可能となり、時刻歴応答曲線をコントロールすることが可能となる。ここで、TMDの初期変位を大きく設定すると、衝撃力を受けた直後の応答低減効果を極めて大きくすることができる。初期変位を小さめに設定すると、初期変位の大きい場合に比較して衝撃力を受けた直後の応答低減効果は若干劣るものの、時刻歴全体に亘る応答低減効果を大きく高めることができる。そのため、設計者は設計目的に応じて初期変位の大きさを変えることで、時刻歴応答曲線を制御可能となる。
【0011】
図1に構造物単体の場合と、構造物に1個のTMDを取り付けた場合の振動数応答曲線を比較する。図1に示すようにTMDを1つ取り付けることにより、AモードとBモードの2つの振動モードが構造物単体のときの振動モードの固有振動数の両脇に微小の振動数差を持って生じる。2個のTMDを取り付けた場合は、3個の振動モードが生じることとなる。これらAモードとBモードの2つの振動モードが応答の時刻歴で重畳することにより“うなり”が生じる。本発明は“うなり”の周期中で包絡線の振幅が徐々に小さくなる領域を利用して、振幅が小さくなる時刻をTMDの初期変位の大きさでコントロールすることにより、過渡応答初期の応答低減効果を大きく高めることができることに特徴を有し、そして、バネに予め“うなり”を考慮した初期変位(プレストレス)を与えておき、地震外力の入力の途中の適切な時刻に重錘を解放するという簡易な機構を用いることで、従来の制振建築物に設けたTMDに比べてより高い制振効果を奏する建物のTMD制振システムを提供するものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る建物の初期変位付与型TMD制振システムは、請求項1において、前記初期変位が、うなりの包絡線の位相変化の大きさに係わる係数αの大きさで分けて、次の2つの近似式を用いて設定されることを特徴としている。
【数1】

ただし、y0は初期変位(m)、ωaは制振建物とTMDの固有円振動数の平均値、x0はトリガーを解放する閾値として設定した制振建物の応答速度である。式中の(−)は制振建物の振動方向と逆の向き(TMDの振幅が大きくなる向き)に初期変位y0を与えることを示す。初期変位の単位はm、速度の単位はm/secである。
【0013】
上記構成によれば、うなりの包絡線の位相変化の大きさに係わる係数αの大きさで分けた式(1)を用いることにより、予めTMDのバネを所定長さ伸縮させる初期変位を容易に設定できる。
【0014】
本発明の請求項3に係る建物の初期変位付与型TMD制振システムは、請求項1乃至2において、前記トリガー装置が、地震時の振動を検知する地震感知装置からの信号を受けて、地震時にトリガー装置のロック状態を解除する制御装置を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、前記トリガー装置が、地震時の振動を検知する地震感知装置からの信号を受けて、地震時にトリガー装置のロック状態を解除するので、地震時の振動の大きさに応じて、任意にトリガー装置のロック状態を解除するように調整できるだけでなく、地震発生時から任意の時間経過後にトリガー装置のロック状態を解除するように調整可能となる。
【0016】
本発明の請求項4に係る建物の初期変位付与型TMD制振システムは、請求項1乃至3において、建築物内に前記制振装置(TMD)とトリガー装置を具備する初期変位付与型TMD制振システムが少なくとも2つ以上設けられていることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、建築物内に前記制振装置(TMD)とトリガー装置を具備する初期変位付与型TMD制振システムが少なくとも2つ設けられるので、例えば、ビル等の多層式骨組構造の場合には、異なる層に分散して設けて各層毎の制振制御を可能とするのみならず、建築物内に設置した複数の初期変位付与型TMD制振システムの各トリガー装置の解放時期を調整することによって、本震に続いてやってくる複数回の余震に対しても対処可能となる。この場合、前記トリガー装置を、地震時の振動を検知する地震感知装置からの信号を受けて、地震時にトリガー装置のロック状態を解除するようにすれば、その制御も、もっと確実にできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建物の初期変位付与型TMD制振システムは、上記構成としたので、単にTMDのバネに予め初期変位を与えることによる減衰効果の向上を狙ったものではなく、建築物へのTMDの付加に起因して、固有振動数の近接した複数の振動モードが重畳することにより生じる“うなり”の包絡線の位相変化を利用して設定した初期変位を与えるものであることから、安価で取り付け容易な制振効果が高い建築物のTMD制振装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】構造物単体の場合と、構造物にTMDを取り付けた場合における振動数応答曲線の比較を示した概念図である。
【図2】制振建物の構成を示した説明図である。
【図3】制振装置の初期変位の与え方を示した説明図である。
【図4】係数αとTMD初期変位の関係を示した説明図である。
【図5】初期変位付与型TMDの制御フローを示した説明図である。
【図6】TMDを数個に分割する方法を示した説明図である。
【図7】分割したTMDを空間に分散式に配置する方法を示した説明図である。
【図8】TMDを2個に分割した場合の制御フローを示した説明図である。
【図9】モーターを用いたTMD装置の構成を示した説明図である。
【図10】モーターを用いた場合の制御フローを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
TMDの弱点である過渡応答初期における振動低減効果の向上を図るという目的を、バネに予め初期変位(プレストレス)を与えておき、地震入力の適切な時刻に重錘を解放するという簡易な機構を用いることにより実現した。
【実施例】
【0021】
図2は初期変位付与型TMDが設置された制振建物の構成を示したものである。初期変位付与型TMDの装置は、重錘1、バネ2、ダンパー3、トリガー装置4で構成される。バネ2とダンパー3は制振建物を支点とし、他端に重錘1が接続されている。重錘1の重さは建物重量の1〜2%程度である。バネ2の固有円振動数ωTおよびダンパー3の減衰比ξTは、一般的に用いられている調和地盤振動に対する最適化の計算式である式(3)、式(4)、式(5)で計算される。地震が発生して制振建物の振動が始まると、制振建物内に設置された地震センサー5により制振建物の応答を観測して制御装置6に入力される。地震センサー5は設計時に実施した解析の結果得られた建物内で最も応答が大きいと予想される箇所に設置するか、制振建物内の数ヶ所に分散式に設置する。制御装置6で制振建物の応答速度を出力する。地震センサー5を数ヶ所に設置する場合は、数ヶ所の応答速度の最大値または平均値を求めて制振建物の応答速度とする。制振建物の応答速度がある閾値以下のときはトリガー装置4はロックされた状態にあり制振装置は作動しない。設計時に設定した応答速度の閾値を超えたときにトリガー装置4のロックが解除されて重錘1が解放されて制振装置が作動し、制振建物の応答が制御される。なお、本実施例では、トリガー装置4のロック解除が、地震センサー5及び制御装置6で制御される構成となっているが、これを、地震センサー5及び制御装置6を用いずに、トリガー装置4を地震の負荷により破断する材料で形成して、当該地震による負荷がトリガー装置4に作用したときトリガー装置4が破断してロックが解除され、次いで重錘1が解放されて制振装置が作動する構成にしてもよい。
【0022】
【数2】

ここで、ωsは制振建物の制御モードにおける固有円振動数、μは重錘1の質量比である。質量比μは重錘1の質量mの制振建物の制御モードにおける等価質量Mに対する比である。
【0023】
制振装置の重錘1は、地震の無い平常時は図3に示すようにバネの伸縮が無い状態7から所定の長さにバネ2が伸縮されて初期変位y0が付与された状態8にあり、トリガー装置4でロックされている。
【0024】
初期変位y0は、構造物にTMDを組み込んだことにより生じる2つの振動モードが応答の時刻歴で重畳する結果生じる“うなり”の包絡線の位相変化の大きさに係わる係数αを用いて設定する。αを大きくすると“うなり”の包絡線の振幅が小さい領域が時刻歴の前方に移動することにより、トリガーを解放した直後の応答制御効果は非常に優れるが、後期の応答は逆に大きくなる。αを小さくすると、トリガーを解放した直後の応答制御効果はαが大きい場合に比べて若干劣るものの、時刻歴全体に亘る応答はよく制御される。通常はα=0.2〜1.0の間に設定する。図4に建築物に設置されるTMDの一般的な質量比である2.0%のときの係数αと(ωa・y0/x0)の関係を示す。ωaは制振建物とTMDの固有円振動数の平均値、x0はトリガーを解放する閾値として設定した制振建物の応答速度である。実用上は図4を線形で近似した式を用いて計算するものとし、初期変位y0を“うなり”の包絡線の位相変化の大きさに係わる係数αの大きさで分けて、以下の2種類の式(1)又は式(2)を用いて設定する。
【数1】

ωaは制振建物とTMDの固有円振動数の平均値、x0はトリガーを解放する閾値として設定した制振建物の応答速度である。式中の(−)は制振建物の振動方向と逆の向き(TMDの振幅が大きくなる向き)に初期変位y0を与えることを示す。初期変位の単位はm、速度の単位はm/secである。
【0025】
図5に本発明の初期変位付与型TMDの制御フローを示す。小さい地震動のように制振建物の応答速度が小さい場合にはトリガーは解放されずに維持された状態にあり、制振装置は作動しない。大地震を受けた場合のように、制振建物の応答速度が設計時に設定した閾値であるトリガー4を解除する制御目標速度を超えた場合は、時刻歴における応答速度のピーク時点でトリガー4を解放して制振装置を作動させる。
【0026】
継続時間の長い地震動を受けた場合のように、制振建物を加力時間の全体に亘って1回の初期変位の解放のみで制振建物の応答を完全に制御することが難しい場合には、2回またはそれ以上の複数回の初期変位の付与と解放の動作を行う。
【0027】
複数回の初期変位の解放を行うための手段として、TMDを数個に分割する方法がある。図6に示すように、初期変位を与えた数個の小型のTMDを用意し、制振建物がトリガー装置4の閾値である制御目標速度に達した時点で、あらかじめ設定した順番で順次小型のTMDを1個ずつ解放する。
【0028】
TMDは図7に示すように空間に分散式に配置してもよい。ビル等の重層式骨組構造の場合は同一階ではなく、異なる階に分散式に配置してもよい。
【0029】
図8にTMDを2個に分割した場合の制御フローを示す。
【他の実施例】
【0030】
複数回の初期変位の解放を行うための手段として、図9に示すように、重錘と支点の間にモーター9とワイヤー10を取り付けて、モーター9でバネを縮めて重錘1に初期変位を与えたロック状態と、モーター9のロックを解除した状態を繰り返す方法がある。本方式はモーターの動力源が必要であるが、初期変位の解放は何回でも実行することが可能である。
【0031】
重錘1を解放してから所定の初期変位の位置まで重錘1を移動するためにはモーターの作業時間が必要となる。そこでTMDのロックを解除してからある設定時間Δtが経過した時点で重錘1を一度ロックし、制振建物がトリガー4の閾値となる制御目標速度に再び到達するまでの時間間隔をモーターの作業時間とし、構造物が制御目標速度に到達後に重錘1を再び解放する。Δtは初期変位の無い一般的なTMDよりも初期変位付与型TMDの制振効果が高い時間である。TMDの質量比μが2.0%で、係数αが1.0のとき、Δtは1.31秒に設定する。図10に本方式の制御フローを示す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
制振効果が高く安価で取り付けが容易な制振装置を提供できることから、高層建築物や戸建て住宅などの地震に対する耐震補強、高層建築物での強風に対する制振補強全般への活用、さらに近年苦情が多発している大スパン床スラブの環境振動対策としての活用も期待できる。またTMDは支点を必要としないことから設計の自由度が高く、形状が複雑な大スパン屋根構造への適用も有効である。
【符号の説明】
【0033】
1 重錘
2 バネ
3 ダンパー
4 トリガー装置
5 地震センサー
6 制御装置
7 初期変位付与前の重錘の位置
8 初期変位付与後の重錘の位置
9 モーター
10 ワイヤー
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上又は屋内に設置される制振システムであって該制振システムは、地震時に建物への入力地震動を打ち消す方向に作用する重錘と、該重錘と建物との間に介装されるバネ及びダンパーとから成る制振装置(TMD)と、該制振装置をロック状態に維持し、地震時にロック解除にするトリガー装置を備え、前記TMDのバネは、予め所定長さ伸縮させてTMDの付加により建築物単体のときの振動モードの近傍に生じる固有振動数の近接した複数の振動モードが重畳することにより生じる“うなり”の包絡線の位相変化を利用して設定した初期変位が与えられると共に該初期変位がトリガー装置で維持されており、地震時にロック状態が解除されて該初期変位が解放されることを特徴とする建物の初期変位付与型TMD制振システム
【請求項2】
前記初期変位は、うなりの包絡線の位相変化の大きさに係わる係数αの大きさで分けて、次の2つの近似式を用いて設定されることを特徴とする請求項1に記載の建築物の初期変位付与型TMD制振システム。
【数1】

ただし、y0は初期変位(m)、ωaは制振建物とTMDの固有円振動数の平均値、x0はトリガーを解放する閾値として設定した制振建物の応答速度である。式中の(−)は制振建物の振動方向と逆の向き(TMDの振幅が大きくなる向き)に初期変位y0を与えることを示す。初期変位の単位はm、速度の単位はm/secである。
【請求項3】
前記トリガー装置は、地震時の振動を検知する地震感知装置からの信号を受けて、地震時にトリガー装置のロック状態を解除する制御装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の建築物の初期変位付与型TMD制振システム。
【請求項4】
建築物内に前記制振装置(TMD)とトリガー装置を具備する初期変位付与型TMD制振システムが少なくとも2つ以上設けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の建築物の初期変位付与型TMD制振システム。



















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−12427(P2011−12427A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156526(P2009−156526)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】