説明

建物の扉体制御システム

【課題】屋外にいる住人が玄関ドア等の鍵を所持していなくても屋内に入ることを可能とし、ひいては屋内外の出入りの利便性を向上させる。
【解決手段】建物10において、屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部である玄関口21には玄関ドア22が設けられ、それ以外の開口部である掃出窓31にはガラス戸32が設けられている。掃出窓31のガラス戸32には、電気クレセント錠よりなる窓施錠装置33が設けられている。窓コントローラ36には、携帯機52からの受信情報が窓通信装置34を通じて入力されるとともに、音声感知器35で感知したユーザ音声情報が入力される。窓コントローラ36は、窓通信装置34からの受信情報とユーザ音声情報とに基づいて窓施錠装置33の施解錠制御を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の扉体制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の扉体制御システムとして、建物の玄関ドアに設けられた施錠装置を制御対象とし、無線通信により送受信されるID情報に基づいて施錠装置の施解錠制御を実施する、いわゆるスマートキーシステムが各種提案されている(例えば特許文献1参照)。このスマートキーシステムでは、ユーザが所持する電子キーと建物側の制御装置との間でID情報が送受信され、そのID情報の認証に基づいて施錠装置が解錠又は施錠されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−253937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなスマートキーシステムでは、仮にユーザが電子キーを持たないまま屋外に出て、その後施錠装置が施錠状態となった場合には、同施錠装置を解錠することができず、屋内に戻るのに不都合が生じることがあると考えられる。例えば、住人が屋外でガーデニング(庭いじり)等を行おうとして一時的に屋外に出た後、施錠装置が施錠状態となった場合にも同様の不都合が生じると考えられる。また、スマートキーシステムに限られず、ユーザが玄関ドアのキー(鍵)を持たずに屋外に出て、その後玄関ドアが施錠されてしまった場合(幼児が誤って施錠してしまった場合など)にはやはり同様の不都合が生じると考えられる。
【0004】
本発明は、屋外にいる住人が玄関ドア等の鍵を所持していなくても屋内に入ることを可能とし、ひいては屋内外の出入りの利便性を向上させることができる建物の扉体制御システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0006】
本発明の扉体制御システムは、屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる玄関口などの開口部(玄関口21)に設けられた第1扉体(玄関ドア22)と、同開口部以外の開口部(掃出窓31、勝手口41)に設けられた第2扉体(ガラス戸32、勝手口ドア42)とを備えた建物に適用される。そして、ユーザに携帯されユーザ個別の識別情報(ユーザID情報)を記憶する携帯型通信装置(携帯機52)と、前記第2扉体の付近に設けられ前記携帯型通信装置から送信される前記識別情報を受信可能とする屋外受信装置(窓通信装置34)と、前記屋外受信装置により受信した前記識別情報に基づいて、前記第2扉体に設けられた第2扉体用施錠装置(窓施錠装置33)の施解錠制御を実施する第2扉体用制御手段(窓コントローラ36)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成の建物において、建物内にユーザが入ろうとする際、同ユーザは通常、第1扉体を屋外側から開放して建物に入る。また、本発明では特に、第1扉体を開放して建物内に入ることに加え、第2扉体を屋外側から開放して建物内に入ることが可能となっている。すなわち、携帯型通信装置から送信される所定の識別情報が屋外受信装置を介して受信されることを条件に、第2扉体用施錠装置が解錠されて第2扉体を通じての出入りが可能となっている。これにより、携帯型通信装置を携帯したユーザ、すなわち建物の住人等は、通常出入りする開口部(玄関口)以外から建物内に入ることができることとなる。したがって、玄関ドア用の鍵など、第1扉体用の鍵を持たないまま屋外に出た場合において、屋内に戻るのに不都合が生じることが解消される。その結果、屋外にいる住人が玄関ドア等の鍵を所持していなくても屋内に入ることを可能とし、ひいては屋内外の出入りの利便性を向上させることができる。
【0008】
なお本明細書において、「屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部、及び同開口部以外の開口部」はいずれも建物の屋内外に通じる開口部であり、「扉体」には回動式ドアやスライド式の引き戸が含まれる。
【0009】
第2の発明では、前記第1扉体に設けられた第1扉体用施錠装置(玄関施錠装置23)と、前記携帯型通信装置とは別に前記ユーザに携帯される電子キー(電子キー51)との無線通信により前記第1扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する第1扉体用制御手段(玄関コントローラ25)とを備えている。つまり、例えば玄関ドアについては電子キーとの無線通信によって施錠装置の施解錠が実施される。ここで、電子キーを持たないままユーザが建物外へ出た場合には、第1扉体(玄関ドア)の施錠装置を自動解錠できないが、前述のとおり携帯型通信装置から送信される識別情報に基づいて第2扉体用施錠装置が解錠されることにより、第2扉体を通じて建物内に戻ることができる。
【0010】
第3の発明では、前記第2扉体用制御手段は、前記屋外受信装置により受信した前記識別情報に基づいて前記第2扉体用施錠装置を解錠させた後、所定時間が経過した時点で同施錠装置を施錠状態とする。これにより、必要に応じて第2扉体用施錠装置が解錠された後、同施錠装置が自動で元の施錠状態に戻されるため、防犯上好ましい構成となる。
【0011】
第4の発明では、前記屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部を複数備える建物に適用され、前記第2扉体用制御手段が、前記複数の開口部にそれぞれ設けられた扉体のうちいずれかを前記第2扉体として施解錠制御を実施する扉体制御システムにあって、前記第2扉体用制御手段の制御対象となる前記第2扉体を、ユーザの入力操作によって選択可能とした。この場合、ユーザにとって都合の良い開口部(屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部のうちいずれか)を使って、建物内に出入りすることが可能となり、その利便性が一層向上する。
【0012】
なおこのとき、屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部に設けられた全ての扉体を制御対象として施解錠制御を実施するのではなく、都度選択された限られた扉体のみを制御対象とすることにより、任意に各扉体の施解錠制御が行われることに起因して防犯性が低下するといった不都合が回避できる。
【0013】
第5の発明では、前記携帯型通信装置から受信した前記識別情報があらかじめ定めた特定ユーザの識別情報であることを条件に、前記制御対象となる第2扉体の変更を許可する。つまりこの場合、前記制御対象となる第2扉体が変更できるのは、あらかじめ認定された特定ユーザのみとなる。したがって、ユーザにとって不用意に同第2扉体が変更され、その結果としてユーザが第2扉体を開放して建物内に入ろうとする際にそれができなかったり、意図しない扉体が開放されたりする不都合を抑制することができる。
【0014】
第6の発明では、前記ユーザの生体情報を取得する生体情報取得手段(音声感知器35)を備え、前記第2扉体用制御手段は、前記携帯型通信装置から送信される前記識別情報に加え、前記生体情報取得手段により取得した生体情報に基づいて前記第2扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する。この場合、携帯型通信装置からの識別情報と生体情報との両情報により第2扉体用施錠装置が解錠されるため、第2扉体用施錠装置を解錠するかどうかをより適正に判断できる。これにより、第2扉体を通じて建物内への進入を可能とする構成において防犯性を高めることができる。
【0015】
第7の発明では、前記ユーザが発する音声を認識する音声認識手段(音声感知器35)を備え、前記第2扉体用制御手段は、前記音声認識手段により認識した音声情報とあらかじめ登録しておいた登録情報とを照合し、その照合の結果に基づいて前記第2扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する。音声認識手段は、第2扉体付近に設けられているのが望ましい(後述の第9の発明も同様)。また、第8の発明のように、前記第2扉体用制御手段は、前記音声認識手段により認識した音声情報中に、あらかじめ登録しておいた規定ワード(合い言葉等)が含まれることを条件に、前記第2扉体用施錠装置を解錠するとよい。なお、規定ワード(合い言葉等)はユーザごとに定められているとよい。
【0016】
本構成によれば、音声情報を用いてユーザを認識することにより、第2扉体用施錠装置を解錠させるための条件を簡易に設定できる。
【0017】
第9の発明では、前記ユーザが発する音声を認識する音声認識手段(音声感知器35)と、前記音声認識手段により認識した音声情報に基づいて、音声や画像による応答メッセージを出力する応答メッセージ出力手段(窓コントローラ36)と、をさらに備える。この場合、ユーザは、第2扉体を通じて建物内に入るべく第2扉体用施錠装置を解錠させようとする際に、音声や画像による応答メッセージを受けることができる。そのため、正規のユーザにとっては安心操作が可能となり、正規のユーザでない不審者等にとっては威嚇を行うことが可能となる。
【0018】
第10の発明のように、前記屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部は、掃出窓又は勝手口(勝手・台所用の出入り口)であるとよい。つまりこの場合、掃出窓に設けられるガラス戸や勝手口に設けられる勝手口ドアを第2扉体とする。住人等のユーザは、掃出窓の外側エリア(テラス等)や勝手口の外側エリアで作業したりすることがあり、その際、玄関口まで行かずに掃出窓や勝手口から屋内に入りたいと思うことがあると想定されるが、上述した本発明によれば、ユーザのニーズとおりに掃出窓や勝手口から屋内に入ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の扉体制御システムを具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、建物の一階部分における間取りレイアウトを簡略に示す図である。
【0020】
図1に示すように、建物(住宅)10は、主要な建物内スペースとして玄関部11と、リビングやキッチン等からなる部屋12,13,14,15とを備えている。玄関部11には玄関口21が設けられており、その玄関口21に玄関ドア22が設けられている。また、部屋12(例えばリビング)には、掃出窓31が設けられており、その掃出窓31にはガラス戸32が設けられている。さらに、部屋13(例えばキッチン)には、勝手口41が設けられており、その勝手口41には勝手口ドア42が設けられている。
【0021】
本実施形態では、玄関口21が「屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部」に相当し、通常、ユーザは玄関口21を通じて建物10に出入りする。また、掃出窓31及び勝手口41が「屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部」に相当する。なお、建物10においては、掃出窓31及び勝手口41以外にも「屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部」に相当する開口部が存在するが、ここでは便宜上省略する。
【0022】
図2は、玄関ドア22と掃出窓31のガラス戸32とにおける施解錠制御に関する構成を示す概略図である。なお、説明は省略するが、掃出窓31のガラス戸32に代えて勝手口41の勝手口ドア42について施解錠制御を実施する場合も同様の構成となる。
【0023】
図2に示すように、玄関ドア22には、電気シリンダ錠よりなる玄関施錠装置23が設けられている。玄関施錠装置23は何ら新規の構成ではないため簡単に説明すれば、同施錠装置23はロックバーと電気的に駆動されるアクチュエータ(共に図示略)とを備えており、アクチュエータの駆動によりロックバーが出没し、玄関ドア22が施錠又は解錠のいずれかの状態となるよう構成されている。すなわち、ロックバーが突出状態になることで玄関ドア22が施錠状態となり、同ロックバーが突出状態から没入状態に移行することで玄関ドア22が解錠状態となる。
【0024】
本システムでは、住人等(図中のユーザU)が携帯する電子キー51との無線通信により玄関施錠装置23の施解錠が自動制御されるものとなっており、当該制御のための構成として、玄関通信装置24と玄関コントローラ25とが設けられている。玄関通信装置24は玄関ドア22の近傍(又は玄関ドア22の側面でも可)に設けられ、玄関ドア近傍の所定エリアが通信エリアとなっている。また、玄関コントローラ25は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータを備えるものであり、この玄関コントローラ25に玄関施錠装置23と玄関通信装置24とが電気的に接続されている。玄関コントローラ25に対しては、電子キー51からの受信情報が玄関通信装置24を通じて送信される。玄関コントローラ25は、玄関通信装置24からの受信情報に基づいて玄関施錠装置23を解錠又は施錠するかを判定し、解錠する場合には玄関施錠装置23に対して解錠信号を出力し、施錠する場合には玄関施錠装置23に対して施錠信号を出力する。
【0025】
電子キー51は、スマートキーシステムにて実用化されているスマートキーに相当し、同キー51ごとにID情報(スマートID情報)が設定されている。電子キー51は、玄関コントローラ25からの要求に応じてスマートID情報を送信する。
【0026】
ここで、玄関通信装置24は、リクエスト信号を常時又は所定の時間周期で送信するのに対し、電子キー51は、玄関通信装置24との通信可能エリアに進入してリクエスト信号を受信すると、そのリクエスト信号に応答してスマートID情報を玄関通信装置24に送信する。そして、スマートID情報が玄関コントローラ25に送信された後、玄関コントローラ25は、スマートID情報による認証を行うとともに、玄関施錠装置23に対して解錠信号又は施錠信号を出力する。このとき、電子キー51から受信したスマートID情報が正規ユーザに該当するものであれば玄関施錠装置23が自動で解錠される。これに対し、同ID情報が正規ユーザに該当しないものであれば玄関施錠装置23の解錠が行われない。
【0027】
また、掃出窓31のガラス戸32には、電気クレセント錠よりなる窓施錠装置33が設けられている。窓施錠装置33は何ら新規の構成ではないため簡単に説明すれば、同施錠装置33は、円弧状の掛け部を有するクレセント(ハンドル)と電気的に駆動されるアクチュエータ(共に図示略)とを備えており、アクチュエータの駆動によりクレセントが回動し、ガラス戸32が施錠又は解錠のいずれかの状態となるよう構成されている。すなわち、クレセントが一方向に回動してその掛け部が固定フックに係合することでガラス戸32が施錠状態となり、同クレセントが逆方向に回動して前記係合が解除されることでガラス戸32が解錠状態となる。
【0028】
本システムでは、前記電子キー51とは別に住人等(図中のユーザU)が携帯する携帯機52との無線通信により窓施錠装置33の施解錠が自動制御されるものとなっており、当該制御のための構成として、窓通信装置34と音声感知器35と窓コントローラ36とが設けられている。窓通信装置34はガラス戸32の近傍(又はガラス戸32の側面でも可)に設けられ、ガラス戸近傍の所定エリアが通信エリアとなっている。また、音声感知器35は、マイクや増幅回路を備えるものであり、ユーザUが発する音声をマイクで感知するとともにその音声信号を増幅回路で増幅して出力する。
【0029】
窓コントローラ36は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータを備えるものであり、この窓コントローラ36に窓施錠装置33と窓通信装置34と音声感知器35とが電気的に接続されている。窓コントローラ36には、携帯機52からの受信情報が窓通信装置34を通じて入力されるとともに、音声感知器35で感知したユーザ音声情報が入力される。窓コントローラ36は、窓通信装置34からの受信情報とユーザ音声情報とに基づいて窓施錠装置33を解錠又は施錠するかを判定し、解錠する場合には窓施錠装置33に対して解錠信号を出力し、施錠する場合には窓施錠装置33に対して施錠信号を出力する。
【0030】
携帯機52は小型携帯装置よりなり、携帯しても邪魔になりにくくかつ常備しやすいものとなっている。例えば、携帯機本体にリストバンドを取り付けた構成のブレスレット式携帯機や、同携帯機本体にネックチェーンを取り付けた構成のペンダント式携帯機、同携帯機本体にバネフックやバッジピンを取り付けた構成のバッジ式携帯機などとして具現化することが考えられる。また、日常的に使用される携帯電話を携帯機52として用いたり、通信機能を有するICカードを携帯機52として用いたりすることも可能である。
【0031】
携帯機52は、記憶部としてのメモリ(図示略)を有しており、そのメモリには、所有者(ユーザU等)ごとに固有のID情報(ユーザID情報)が記憶されている。ユーザID情報は、前述したスマートID情報とは別に設定され、少なくとも本システムで認証されるユーザであってかつ認証対象とされる複数のユーザ(例えば同居する家族)が個別に識別可能となる情報となっている。
【0032】
ここで、窓通信装置34は、リクエスト信号を常時又は所定の時間周期で送信するのに対し、携帯機52は、窓通信装置34との通信可能エリアに進入してリクエスト信号を受信すると、そのリクエスト信号に応答してユーザID情報を窓通信装置34に送信する。そして、ユーザID情報が窓コントローラ36に送信された後、窓コントローラ36は、ユーザID情報による認証を行うとともに、その認証結果に基づいて窓施錠装置33の施解錠制御を実施する。
【0033】
次に、窓コントローラ36による窓施錠装置33の施解錠制御の流れを図3のフローチャートに基づいて説明する。この制御処理は、窓コントローラ36によって所定の時間周期で実行される。
【0034】
図3において、ステップS11ではリクエスト信号の送信処理を実行し、続くステップS12では、リクエスト信号に応答して携帯機52からユーザID情報を受信したか否かを判定する。応答が無い場合、すなわちユーザID情報を受信していない場合、そのまま本処理を終了する。
【0035】
また、応答が有る場合、すなわちユーザID情報を受信している場合、ステップS13に進み、受信したユーザID情報に基づいてユーザ認証を実施する。そして、認証OKであれば、ステップS14を肯定して後続のステップS15に進み、認証NGであれば、ステップS14を否定してそのまま本処理を終了する。なお、複数の携帯機からユーザID情報を受信している場合には、各携帯機からの受信情報のうち少なくともいずれかが認証OKであればステップS15に進む。
【0036】
ステップS15では、音声感知器35により感知したユーザの音声情報を解析することで音声認識処理を実施する。具体的には、音声感知器35により認識した音声情報とあらかじめ登録しておいた登録情報とを照合し、都度認識した音声情報中に、あらかじめ登録しておいた規定ワード(合い言葉等)が含まれるか否かを判定する。規定ワードは、例えば『ドアよ開け。』といったワードであり、この規定ワードはユーザごとに定められている。
【0037】
その後、ステップS16では、前記ステップS15での音声認識処理による音声認証がOKであるか否かを判定する。そして、音声認証OKであればステップS17に進む。ステップS17では、掃出窓31の窓施錠装置33を解錠させるべく、同窓施錠装置33に対して解錠信号を出力する。これにより、掃出窓31の屋外側にいるユーザが掃出窓31を通じて屋内に入ることができるようになっている。
【0038】
ここで、前記ステップS17において掃出窓31の窓施錠装置33が自動解錠された場合、その解錠からの経過時間を計測し、同経過時間が所定時間(例えば10分)となった時点で掃出窓31の窓施錠装置33が元の施錠状態に戻されるとよい。
【0039】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0040】
携帯機52から送信されるユーザID情報と音声感知器35により感知したユーザの音声情報とに基づいて、掃出窓31の窓施錠装置33の施解錠制御を実施する構成としたため、スマートキーシステムの電子キー51により玄関ドア22(玄関施錠装置23)を屋外側から解錠して建物10内に入ることに加え、掃出窓31のガラス戸32(窓施錠装置33)を屋外側から解錠して建物10内に入ることが可能となる。つまり、住人が電子キー51(玄関ドア用の鍵)を持たないまま屋外へ出た場合において、玄関口以外から屋内に入ることができる。したがって、電子キー51を屋内に忘れて屋外に出てしまった場合や、幼児等が誤って玄関施錠装置23を施錠してしまった場合に、屋内に戻るのに不都合が生じることが解消される。また、住人は、掃出窓31の外側エリア(テラス等)でガーデニング等の作業を行うことがあり、その際、玄関口21まで行かずに掃出窓31から屋内に入ることが可能となる。以上により、屋外にいる住人が玄関ドア等の鍵を所持していなくても屋内に入ることを可能とし、ひいては屋内外の出入りの利便性を向上させることができる。
【0041】
ユーザを認証するための情報として、ユーザID情報に加え、ユーザの音声情報を採用したため、掃出窓31の窓施錠装置33を解錠するかどうかをより適正に判断できる。これにより、掃出窓31を通じて建物10内への進入を可能とする構成であっても防犯性を高めることができる。
【0042】
ユーザの音声情報に基づいて施解錠制御を実施する構成によれば、掃出窓31の窓施錠装置33を自動解錠させるための条件を簡易に設定できる。また、音声情報に基づく音声認証を実施する際に、ユーザごとに規定ワード(合い言葉等)を登録しておくことにより、ユーザ認証の信頼性を高めることができる。なお、規定ワードは適宜更新されるのが望ましい。
【0043】
ユーザID情報やユーザの音声情報に基づいて掃出窓31の窓施錠装置33を自動解錠させた後、所定時間が経過した時点で同施錠装置33を施錠状態とする構成としたため、防犯上好ましい構成となる。
【0044】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されても良い。
【0045】
建物10において玄関口21以外の開口部(掃出窓31や勝手口41)にそれぞれ設けられた扉体のうち、いずれを制御対象とするか、すなわちいずれをユーザID情報により解錠するかを、ユーザの入力操作によって選択可能としてもよい。例えば、窓コントローラ36に対する入力操作、又は建物内に設けられた管理パソコンに対する入力操作によって、制御対象の扉体を変更する。この場合、ユーザにとって都合の良い開口部(屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部のうちいずれか)を使って、建物10内に出入りすることが可能となり、その利便性が一層向上する。
【0046】
ここで、屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部に設けられた全ての扉体を制御対象として施解錠制御を実施するのではなく、都度選択された限られた扉体のみを制御対象とするとよい。例えば、ガラス戸32が制御対象として選択された場合には、勝手口ドア42については施解錠制御(自動解錠)を実施しない。これにより、任意に各扉体の施解錠制御が行われることに起因して防犯性が低下するといった不都合が回避できる。
【0047】
上記のように、制御対象となる扉体を選択可能とする構成において、都度受信したユーザID情報が、あらかじめ定めた特定ユーザのID情報であることを条件に、前記制御対象となる扉体(第2扉体)の変更を許可するとよい。例えば、家族の中で世帯主のみが制御対象を選択できることとする。これにより、住人にとって不用意に前記制御対象となる扉体(玄関ドアとは異なる第2扉体)が変更され、その結果としてユーザが第2扉体を開放して建物内に入ろうとする際にそれができなかったり、意図しない扉体が開放されたりする不都合を抑制することができる。
【0048】
上記実施形態では、音声情報に基づく音声認証を実施する際に、音声感知器35により認識した音声情報とあらかじめ登録しておいた登録情報とを照合し、都度認識した音声情報中に、あらかじめ登録しておいた規定ワード(合い言葉等)が含まれるか否かを判定する構成としたが、これを変更する。例えば、音声情報から抽出した声紋に基づいて音声認証を実施する。この場合、音声情報から抽出した声紋と、あらかじめ登録しておいたユーザの声紋とを照合することで、ユーザ認証を実施する。
【0049】
音声感知器35により認識したユーザの音声情報に基づいて応答メッセージを作成及び出力し、その応答メッセージの出力後に窓施錠装置33の施解錠制御を実施する構成としてもよい。応答メッセージは、例えば窓コントローラ36により生成され、音声メッセージや画像メッセージとして出力されるとよい。具体的には、次の(1),(2)のごとく制御が行われる。
(1)ユーザが屋外(掃出窓31付近)で『ただいま』等の音声を発すると、システム側で音声認識を行い、『お帰りなさい』等の音声メッセージを出力する。そしてその後、窓施錠装置33を解錠する。これにより、ユーザにとっては安心感が得られる。
(2)ユーザが屋外(掃出窓31付近)で『ただいま』等の音声を発すると、システム側で音声認識を行い、『合い言葉をどうぞ』等の音声メッセージを出力する。そして、ユーザがその応答として『開けゴマ』等の音声を返すと、システム側では再び音声認識を行い、正規の音声情報であることを確認した後、窓施錠装置33を解錠する。これにより、防犯効果が期待できる。
【0050】
上記構成によれば、ユーザは、掃出窓31のガラス戸32を通じて建物内に入るべく窓施錠装置33を解錠させようとする際に、音声や画像による応答メッセージを受けることができるため、正規のユーザにとっては安心操作が可能となり、正規のユーザでない不審者等にとっては威嚇を行うことが可能となる。
【0051】
ユーザの生体情報として、音声情報に含まれる声紋以外の情報を用いることも可能である。例えば、指紋読み取り装置(生体情報取得手段に相当)により読み取った指紋情報や、虹彩読み取り装置(生体情報取得手段に相当)により読み取った虹彩情報等に基づいて施解錠制御を実施することが可能である。
【0052】
上記実施形態では、玄関施錠装置23の施解錠制御を実施する玄関コントローラ25(第1扉体用制御手段に相当)と窓施錠装置33の施解錠制御を実施する窓コントローラ36(第2扉体用制御手段に相当)とを別のコントローラにて構成したが、これを変更し、同一のコントローラにて構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】建物の一階部分における間取りレイアウトを簡略に示す図。
【図2】玄関ドアと掃出窓のガラス戸とにおける施解錠制御に関する構成を示す概略図。
【図3】窓施錠装置の施解錠制御の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0054】
10…建物、21…玄関口、22…玄関ドア、23…玄関施錠装置、25…玄関コントローラ、31…掃出窓、32…ガラス戸、33…窓施錠装置、34…窓通信装置、35…音声感知器、36…窓コントローラ、41…勝手口、42…勝手口ドア、51…電子キー、52…携帯機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる玄関口などの開口部に設けられた第1扉体と、同開口部以外の開口部に設けられた第2扉体とを備えた建物に適用され、
ユーザに携帯されユーザ個別の識別情報を記憶する携帯型通信装置と、
前記第2扉体の付近に設けられ前記携帯型通信装置から送信される前記識別情報を受信可能とする屋外受信装置と、
前記屋外受信装置により受信した前記識別情報に基づいて、前記第2扉体に設けられた第2扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する第2扉体用制御手段と、
を備えることを特徴とする建物の扉体制御システム。
【請求項2】
前記第1扉体に設けられた第1扉体用施錠装置と、前記携帯型通信装置とは別に前記ユーザに携帯される電子キーとの無線通信により前記第1扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する第1扉体用制御手段とを備える請求項1に記載の建物の扉体制御システム。
【請求項3】
前記第2扉体用制御手段は、前記屋外受信装置により受信した前記識別情報に基づいて前記第2扉体用施錠装置を解錠させた後、所定時間が経過した時点で同施錠装置を施錠状態とする請求項1又は2に記載の建物の扉体制御システム。
【請求項4】
前記屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部を複数備える建物に適用され、前記第2扉体用制御手段が、前記複数の開口部にそれぞれ設けられた扉体のうちいずれかを前記第2扉体として施解錠制御を実施する扉体制御システムにあって、
前記第2扉体用制御手段の制御対象となる前記第2扉体を、ユーザの入力操作によって選択可能とした請求項1乃至3のいずれかに記載の建物の扉体制御システム。
【請求項5】
前記携帯型通信装置から受信した前記識別情報があらかじめ定めた特定ユーザの識別情報であることを条件に、前記制御対象となる第2扉体の変更を許可する請求項4に記載の建物の扉体制御システム。
【請求項6】
前記ユーザの生体情報を取得する生体情報取得手段を備え、
前記第2扉体用制御手段は、前記携帯型通信装置から送信される前記識別情報に加え、前記生体情報取得手段により取得した生体情報に基づいて前記第2扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する請求項1乃至5のいずれかに記載の建物の扉体制御システム。
【請求項7】
前記ユーザが発する音声を認識する音声認識手段を備え、
前記第2扉体用制御手段は、前記音声認識手段により認識した音声情報とあらかじめ登録しておいた登録情報とを照合し、その照合の結果に基づいて前記第2扉体用施錠装置の施解錠制御を実施する請求項1乃至6のいずれかに記載の建物の扉体制御システム。
【請求項8】
前記第2扉体用制御手段は、前記音声認識手段により認識した音声情報中に、あらかじめ登録しておいた規定ワードが含まれることを条件に、前記第2扉体用施錠装置を解錠する請求項7に記載の建物の扉体制御システム。
【請求項9】
前記ユーザが発する音声を認識する音声認識手段と、
前記音声認識手段により認識した音声情報に基づいて応答メッセージを出力する応答メッセージ出力手段と、
をさらに備える請求項1乃至8のいずれかに記載の扉体制御システム。
【請求項10】
前記屋内外を出入りする際にユーザが通常用いる開口部以外の開口部は、掃出窓又は勝手口である請求項1乃至9のいずれかに記載の建物の扉体制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−280716(P2008−280716A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124897(P2007−124897)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】