説明

建物の軒天構造、建物の軒天構造に用いられる耐熱下地材、及び建物の軒天構造における耐熱下地材の使用

【課題】野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れた新規な軒天構造を提供すること。
【解決手段】建物の軒天構造であって、
軒の付根部であって建物の外壁に沿って取り付けられた支持部材と軒の先端部に取り付けられる鼻隠材を支持する鼻隠下地材とに架設される耐熱下地材、及び前記耐熱下地材を覆うように設けられた軒天材を備え、
前記耐熱下地材は、木片、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有するコア層と、ガラス繊維、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有する前記コア層の表面層及び裏面層とを有することを特徴とする建物の軒天構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の軒天構造、建物の軒天構造に用いられる耐熱下地材、及び建物の軒天構造における耐熱下地材の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物には耐火性能を付与することが容望されており、なかでも最近、隣の家の火災による延焼等の抑制や防止を目的として、隣の家に最も接近している軒についての耐火性能の向上が要求されるようになってきている。我国は、国土面積が狭い問題から住宅が隣接して建てられる傾向にあり、前記隣の家からの延焼等の抑制、防止に対する対策が特に重要となっている。
【0003】
従来、軒に耐火性能を持たせるために、軒裏に軒天材として、耐火性能を有する例えば珪酸カルシウム板系、ロックウール板系、石膏板系等を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような軒裏に板状の軒天材を取り付ける場合、軒の付根部及び先端部に支持された野縁受けに野縁を所定間隔で架設し、これら野縁に軒天材を釘打ちして取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6―73828号公報
【特許文献2】特開2009―174301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の軒天材に耐火性能を有する珪酸カルシウム板系、ロックウール板系、石膏板系等の耐火ボードを使用すると、標準的な軒長さであっても、軒の付根部及び先端部だけに釘止めしただけでは、軒天材の中央部が垂れ下がり、亀裂が生じて耐火性能が極端に低下してしまう虞がある。そこで、従来から上述したように軒の付根部及び先端部に支持された野縁受けに、野縁を所定間隔で架設し、軒の付根部から先端部に向かう方向に沿って設けられたこれら野縁に、軒天材を釘打ちして取り付けるようにしている。しかし、多数本の野縁を所定寸法に切り揃える作業や軒裏に上向き姿勢で野縁を架設する作業は極めて煩わしく、決して作業性がよいと言えるものではない。
【0006】
他方、従来の耐火ボードの厚みを厚くすることで垂れ下がらないように剛性を上げ、野縁を設けずに取り付けようとすると、こんどは耐火ボードの重量が重くなり、一層作業を困難なものとするばかりか、耐火ボードが重たく、しかも熱により収縮することから、取り付け用の釘の周りの破損などが生じやすく、耐火ボードが脱落する危険性がある。
【0007】
さらに、前記のように架設した野縁に軒天材を釘打ちして取り付けたとしても、軒天材自体が熱により収縮することから、釘周りの破損などにより、垂れ下がりが生じる危険性が解消できない。
【0008】
本発明は、前記の課題に鑑み、野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れた新規な軒天構造、前記軒天構造に用いられる耐熱下地材、及び前記軒天構造における耐熱下地材の使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(1) 建物の軒天構造であって、
軒の付根部であって建物の外壁に沿って取り付けられた支持部材と軒の先端部に取り付けられる鼻隠材を支持する鼻隠下地材とに架設される耐熱下地材、及び前記耐熱下地材を覆うように設けられた軒天材を備え、
前記耐熱下地材は、木片、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有するコア層と、ガラス繊維、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有する前記コア層の表面層及び裏面層とを有することを特徴とする。
【0010】
(1)の構成によれば、耐熱下地材と軒天材とを張り合わせることで、極めて優れた耐火性能を発揮できる(準耐火性能試験をパス)。その結果、これら素材の厚さを薄くして用いることができ、コストダウンが図れるとともに、軽い分作業性を向上することができる。
また、本発明の耐熱下地材は優れた剛性と釘保持力とを有するので、手間な野縁の架設作業が不要(野縁レス)となり、作業効率を向上できる。
更に、軒天材を、場所を問わず釘打ちにより耐熱下地材に固定することができ、野縁がなくても垂れ下がる心配がない。
従って、(1)の軒天構造は、野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れる。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(2) 建物の軒天構造であって、
軒の付根部であって建物の外壁に沿って取り付けられた第1の支持部材と軒の先端部に前記第1の支持部材に対して並設される第2の支持部材とに架設される耐熱下地材、及び前記耐熱下地材を覆うように設けられた軒天材を備え、
前記耐熱下地材は、木片、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有するコア層と、ガラス繊維、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有する前記コア層の表面層及び裏面層とを有することを特徴とする。
【0012】
(2)の構成によれば、耐熱下地材と軒天材とを張り合わせることで、極めて優れた耐火性能を発揮できる(準耐火性能試験をパス)。その結果、これら素材の厚さを薄くして用いることができ、コストダウンが図れるとともに、軽い分作業性を向上することができる。
また、本発明の耐熱下地材は優れた剛性と釘保持力とを有するので、手間な野縁の架設作業が不要(野縁レス)となり、作業効率を向上できる。
更に、軒天材を、場所を問わず釘打ちにより耐熱下地材に固定することができ、野縁がなくても垂れ下がる心配がない。
従って、(2)の軒天構造は、野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れる。
【0013】
本発明は、更に、以下の構成を採用することができる。
(3) (1)又は(2)の建物の軒天構造であって、
前記耐熱下地材には、軒天井の空間を換気するための換気孔が設けられており、前記換気孔に沿って軒天換気材が前記耐熱下地材に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
(3)の構成によれば、耐火(耐熱)性能を確保しつつ、優れた換気性能を発揮することができる。また、耐熱下地材は、優れた釘保持力を有するので、軒天換気材を直接釘やネジ止めすることができ、取り付け作業性を向上することができる。
【0015】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(4) (1)〜(3)のいずれか1の建物の軒天構造に用いられる耐熱下地材。
【0016】
(4)の構成によれば、野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れる軒天構造を提供することができる。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
(5) (1)〜(3)のいずれか1の建物の軒天構造における耐熱下地材の使用。
【0018】
(5)の構成によれば、野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れる軒天構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、野縁を用いずに軒天材を取り付けることができ且つ耐火(耐熱)性能に優れた軒天構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す建物の軒天構造の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のA部拡大図であり、(c)は、(a)に示す建物の軒天構造における軒裏を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す斜視図である。
【図4】(a)は、図3に示す建物の軒天構造の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のA部拡大図であり、(c)は、(a)に示す建物の軒天構造における軒裏を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す鉛直断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す鉛直断面図である。
【図7】(a)は、本発明に係る建物の軒天構造に用いられる耐熱下地材を模式的に示す平面図であり、(b)は、その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[建物の軒天構造]
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、図1に示す建物の軒天構造の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のA部拡大図であり、(c)は、(a)に示す建物の軒天構造における軒裏を模式的に示す平面図である。
【0022】
図1及び図2(a)に示すように、第1実施形態に係る軒天構造10は、矩形平板状の耐熱下地材11と、矩形平板状の軒天材12とを備えている。
耐熱下地材11は、軒裏(ここでは、軒下から見上げた、軒の付根部から軒の先端部までの領域)全体を軒下側から覆うように設けられている。図1に示すように、耐熱下地材11には、軒の先端部側の辺から間隔をあけて、軒の先端部側の辺に沿って並ぶように、軒天井の空間を換気するための複数の換気孔11aが設けられている。耐熱下地材11については、後に詳述する。
軒天材12は、図2(a)〜(c)に示すように、耐熱下地材11の下面側から、複数の固定具(例えば釘やネジ等)24が打設されることにより、耐熱下地材11に張り合わせられ、耐熱下地材11の下面の一部(換気孔11aよりも軒の付根部側の領域全体)を覆っている。
軒天材12は、例えば、珪酸カルシウム含有板材からなる。本発明において、軒天材12としては、この例に限定されず、例えば、珪酸カルシウム板系、ロックウール板系、石膏板系の耐火ボード等を用いることができる。軒天材12の厚さは、8〜12mmであることが好ましい。軒天材12の薄板化と軒天構造10の耐火性能の向上とを高いレベルで両立することができるからである。
【0023】
軒天構造10は、更に、軒天換気材13を備えている。
軒天換気材13は、長尺矩形状を有しており、図2(b)に示すように、耐熱下地材11の下面のうち、軒天材12の覆われていない部分(換気孔11a、及び換気孔11aよりも軒の先端部側の領域全体)に固定具24によって取り付けられている。
軒天換気材13には、図2(b)に示すように、軒天井と軒下側とを連通するためのスリット13aが形成されており、スリット13aは、軒天換気材13が耐熱下地材11に取り付けられたときに、図1に示すように、耐熱下地材11の換気孔11aと連通する。これにより、軒天換気材13は、スリット13aを介して軒天井の空間を換気することができる。
なお、軒天換気材13としては、特に限定されるものではなく、例えば、特開2003−27652号公報、特開2006−144497号公報、特開2006−233558号公報等に開示されているものを用いることができる。
【0024】
このように、軒天構造10においては、軒天材12と軒天換気材13とによって下面が覆われた耐熱下地材11が、軒下側から、軒に設置される。
具体的に、耐熱下地材11は、軒の付根部であって、建物の外側に沿って取り付けられた際野縁14と、軒の先端部に取り付けられる鼻隠材17を支持する鼻隠下地材16とに架設され、軒の先端部が軒の付根部より下方に位置するように傾斜している。
際野縁14は、軒の付根部において、垂木15の下面に設けられ、鼻隠下地材16は、垂木15の先端側の面に設けられている。垂木15の上面には、屋根材23が設けられている。垂木15を受けて垂木15を支持する軒桁18は、柱19の頂部に架設されている。柱19の外面には、胴縁21が設けられている。軒桁18と柱19とによって囲われた領域には、内壁20が設けられ、胴縁21の外面には、外壁22が設けられ、外壁22の上端面は、軒天材12の下面に当接している。
【0025】
際野縁14は、本発明の前記構成(1)における支持部材に相当し、本発明の前記構成(2)における第1の支持部材に相当する。鼻隠下地材16は、本発明の前記構成(2)における第2の支持部材に相当する。ただし、本発明における支持部材、並びに第1及び第2の支持部材は、この例に限定されるものではない。例えば、第2の支持部材を、鼻隠下地材16の下端又はその内側に際野縁14と対向するように設けた野縁受け等とすることができる。また、際野縁14及び鼻隠下地材16は、従来技術において野縁を張設する野縁受けに相当する。
【0026】
第1実施形態に係る軒天構造10によれば、耐熱下地材11と軒天材12とを張り合わせることで、極めて優れた耐火性能を発揮できる。その結果、耐熱下地材11と軒天材12を薄くして用いることができ、コストダウンが図れるとともに、軽い分作業性を向上することができる。
また、手間な野縁の架設作業が不要(野縁レス)となり、作業効率を向上させることができる。
更に、軒天材12を、場所を問わず固定具24により耐熱下地材11に固定することができ、野縁がなくても垂れ下がる心配がない。
従って、第1実施形態に係る軒天構造10は、野縁を用いずに軒天材12を取り付けることができ、且つ耐火(耐熱)性能に優れる。
【0027】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す斜視図である。
図4(a)は、図3に示す建物の軒天構造の鉛直断面図であり、(b)は、(a)のA部拡大図であり、(c)は、(a)に示す建物の軒天構造における軒裏を模式的に示す平面図である。なお、第2実施形態(図3及び図4)では、第1実施形態(図1及び図2)に示した構成に相当する構成については、第1実施形態と同じ符号を付して説明することとし、また説明済みの構成については、その説明を省略する。
【0028】
第2実施形態に係る軒天構造10においても、耐熱下地材11が、軒天材12と軒天換気材13とによって下面が覆われ、軒下側から、軒に設置される。具体的に、耐熱下地材11は、軒の付根部であって、建物の外側に沿って取り付けられた際野縁14と、軒の先端部に取り付けられる鼻隠材17を支持する鼻隠下地材16とに架設される。第2実施形態に係る軒天構造10は、以上の点において、第1実施形態と同じであるが、耐熱下地材11が水平に設けられている点において、第1実施形態とは異なっている。
【0029】
具体的に、際野縁14は、軒の付根部において、際野縁14の下面が鼻隠下地材16の下面と同一平面上に位置するように、胴縁21に架設されており、耐熱下地材11は、下面が同一平面上に位置する際野縁14と鼻隠下地材16とに架設されることにより、水平に設置されている。
【0030】
第2実施形態に係る軒天構造10によっても、第1実施形態と同様に、野縁を用いずに軒天材12を取り付けることができ、且つ耐火(耐熱)性能に優れる。
【0031】
本発明では、軒の長さ(軒の付根部から先端部に向かう方向に沿う軒の長さ)が比較的長い場合には、鼻隠下地材16と際野縁14との間に、鼻隠下地材16及び/又は際野縁14と略平行に延びる野縁を設置してもよい。
ここでいう、鼻隠下地材16及び/又は際野縁14と略平行に延びる野縁は、本発明の課題に挙げられている、軒の付根部から先端部に向かう方向に沿って設けられる野縁とは異なるものであり、従来技術における野縁受けに相当するものである。
鼻隠下地材16及び/又は際野縁14と略平行に延びる野縁は、設置本数がそれほど多くなるものではなく、また鼻隠下地材16及び際野縁14との位置関係に基づいて、作業者がその存在位置を耐熱下地材11の設置時に比較的容易に推測できるので、作業効率の点からみて問題になるものではない。
次に、鼻隠下地材16及び/又は際野縁14と略平行に延びる野縁が設けられる態様について説明する。
【0032】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す鉛直断面図である。なお、第3実施形態(図5)では、第1実施形態(図1及び図2)並びに第2実施形態(図3及び図4)に示した構成に相当する構成については、第1実施形態及び第2実施形態と同様の符号を付して説明することとし、説明済みの構成については、その説明を省略する。
【0033】
第3実施形態に係る軒天構造10は、第1実施形態と略同様であるが、以下の点において異なっている。
野縁26が、鼻隠下地材16と際野縁14との間(略中央)において、垂木15の下面に、鼻隠下地材16及び際野縁14と略平行に延びるように設置されている。耐熱下地材11は、鼻隠下地材16、際野縁14及び野縁26に取り付けられている。
【0034】
第3実施形態によれば、耐熱下地材11が、鼻隠下地材16と際野縁14との間に設置された野縁26にも取り付けられるので、軒の長さ(軒の付根部から先端部に向かう方向に沿う軒の長さ)が長くても、耐熱下地材11及び軒天材12の下方への撓み・垂れ下がりを防止することができる。また、第1実施形態と同様に、軒天材12の取り付けに関し、軒の付根部から先端部に向かう方向に設置される野縁を用いる必要がなく、且つ耐火(耐熱)性能に優れる。
【0035】
<第4実施形態>
図6は、本発明の第4実施形態に係る建物の軒天構造を模式的に示す鉛直断面図である。なお、第4実施形態(図6)では、第1実施形態(図1及び図2)、第2実施形態(図3及び図4)並びに第3実施形態(図5)に示した構成に相当する構成については、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と同様の符号を付して説明することとし、説明済みの構成については、その説明を省略する。
【0036】
第4実施形態に係る軒天構造10は、第2実施形態と略同様であるが、以下の点において異なっている。
吊り木25が、鼻隠下地材16と際野縁14との間(略中央)において、垂木15の下面に、鉛直下方に延びるように設置されており、野縁26が、垂木15の下端側の側面に、鼻隠下地材16及び際野縁14と略平行に延びるように設置されている。吊り木25及び野縁26の下面は、際野縁14及び鼻隠下地材16の下面と同一平面上に位置する。
耐熱下地材11は、下面が同一平面上に位置する際野縁14、鼻隠下地材16及び野縁26に架設されることにより、水平に設置されている。
【0037】
第4実施形態によれば、耐熱下地材11が、鼻隠下地材16と際野縁14との間に設置された野縁26にも取り付けられるので、軒の長さ(軒の付根部から先端部に向かう方向に沿う軒の長さ)が長くても、耐熱下地材11及び軒天材12の下方への撓み・垂れ下がりを防止することができる。また、第2実施形態と同様に、軒の付根部から先端部に向かう方向に設置される野縁を用いる必要がなく、且つ耐火(耐熱)性能に優れる。
第3及び第4実施形態においては、野縁26が1本である場合について説明したが、本発明において、野縁26の本数は、1本に限定されず、複数本であってもよい。
【0038】
[耐熱下地材]
図7(a)は、本発明に係る建物の軒天構造に用いられる耐熱下地材を模式的に示す平面図であり、(b)は、その断面図である。
図7(a)に示すように、耐熱下地材11は、矩形平板形状を有し、耐熱下地材11の2つの長辺のうち、1つの長辺に沿って、複数の換気孔11aが、間隔をあけて形成されている。また、図7(b)に示すように、耐熱下地材11は、コア層11Cと、コア層の表面層11S及び裏面層11Bとを有している。
【0039】
耐熱下地材11は、木片を少量の合成樹脂バインダーを含む無機質フィラー中に分散固形化してコア層11Cとし、コア層11Cの両面をストランド状の無機質繊維で補強して表面層11S及び裏面層11Bとしたものである。
【0040】
耐熱下地材11の厚さは、5〜12mmであることが望ましい。耐熱下地材11及び軒天材12の薄板化と、軒天構造10の耐火性能の向上とを高いレベルで両立することができるからである。
例えば、本発明の耐熱下地材11と市販の軒天材12と組み合わせた場合、耐熱下地材11の厚さが9mmであれば、45分準耐火性能試験をパスすることができ、耐熱下地材11の厚さが12mmであれば、60分準耐火性能試験をパスすることができる。
【0041】
コア層11C、表面層11S及び裏面層11Bの厚みは、耐熱性、耐水性、固定具(例えば釘やネジ等)24の引き抜き抵抗、及び機械的強度等を向上させるように、材質をふまえて適宜設定することができる。
【0042】
次に、耐熱下地材11の製造方法について説明する。
(i)熱プレス工程
まず、下金型の底面にガラス繊維、熱硬化性樹脂バインダー及び無機質フィラーの混合物を充填する。次に、この上に木片、熱硬化性樹脂バインダー及び無機質フィラーの混合物を充填する。更に、この上に再度ガラス繊維、熱硬化性樹脂バインダー及び無機質フィラーの混合物を充填する。その後、前記下金型の上から上金型を合わせて熱圧することによって板状体を形成する。
【0043】
(ii)切断工程
前記板状体を上下方向に切断することにより、所望の寸法に切断する。
【0044】
(iii)換気孔形成工程
前記板状体に、図7に示すように、複数の換気孔11aを形成する。
前記(i)〜(iii)の工程を経て、耐熱下地材11を得ることができる。なお、前記(ii)及び(iii)の工程は、いずれを先に行ってもよい。
【0045】
本発明は、上述した例に限定されず、以下の具体例を採用することも可能である。
コア層11Cは、木材砕片(以下、単に「木片」という)を少量の合成樹脂バインダーを含むフィラー中に分散固形化して成る。このコア層11Cは、実験的には、前記木片及びフィラーを混合して散布した後、加熱圧縮することによって製作できる。
【0046】
木片としては、ラワン、カポール、マカンバ、アピトン及びカエデなどの相対的に比重の重い建築廃材や、杉、ファルカタ及びバルサなどの相対的に比重の軽い建築廃材が使用可能である。耐熱下地材11の曲げ強度などの機械的強度の向上を考慮すると、杉やファルカタなどの比較的比重の軽い建築廃材の木片を使用するのが好ましい。
この木片のサイズは、耐熱下地材11の耐熱性、釘引き抜き抵抗(釘保持力)、機械的強度及び耐水性(吸水膨張)の4つを確保するのに十分な大きさに規定されている。なお、前記木片の素材としては、前記の建築廃材に限られず、製材の端材や間伐材の未利用木材であってもよい。
【0047】
フィラーとしては、火山灰、珪藻土、フライアッシュ、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ及びシリカなどの無機系粒体を例示することができ、これらのうちの1つ又はそれ以上を選択して組み合わせて使用可能である。
また、フィラーは、シラスバルーンやアルミノ・シリケート・バルーン(ASB)などの無機系微小粒体であっても構わない。特に、所要のフィラーの充填効果を得るためには、ASB、フライアッシュ又はパーライトが好ましい。このフィラーの前記木片に対する割合は、前記充填効果が得られるように設定されている。
【0048】
さらに、代替的に、フィラーは、消火廃剤を再利用した難燃性樹脂組成物であってもよい。この場合には、消火器などに用いられる消火薬剤の耐用期間経過後の廃剤をそのまま使用することもできる。
この使用可能な消火廃剤は、現在、市販されている消火薬剤のうち、第1燐酸アンモニウムと硫酸アンモニウムとを主成分とするものに限られる。例えば、(株)初田製作所の消火薬剤では、第1燐酸アンモニウムと硫酸アンモニウムとを共に約45%含み、この他に固結防止剤と撥水剤を共に若干量を含み、更に着色剤を極微量含んでいる。
【0049】
前記難燃性組成物は、基材として合成樹脂が用いられており、その種類は熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂であってもよい。ただし、熱可塑性樹脂の配合量は20〜95重量%であり、他方熱硬化性樹脂の配合量は10〜70重量%であることが好ましい。
ここに、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂及び熱可塑性エラストマーなどが好適に用いられる。他方、熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びエポキシ樹脂などが好適に用いられる。
【0050】
さらに、前記難燃性樹脂組成物では、前記合成樹脂の他に充填材(増量材)10〜80重量%、補強材10〜20重量%を目的にあわせて適宜に配合することができる。具体的には、低コスト、釘打ち性、釘保持力、強度及び軽量化などを考慮した場合には、各種の無機物や無機繊維などが加えられる。
より具体的には、低コスト化及び軽量化を図るためには、シラスバルーンやASBなどの無機物系微小粉体、珪藻土、パーライト、バーミキュライト、中空ガラス及びゼオライトなどが加えられる。
また、低コスト化及び強度を確保するために、木粉やゴムチップなどの有機物が加えられる。
さらに、強度を確保するため、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、古紙及び布などを加えることができる。その他、低コスト化、強度及び釘保持力を確保するために、熱可塑性又は熱硬化性の合成樹脂(発泡体及び発泡ビーズを含む)を加えることもできる。
この際の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂及び塩化ビニル樹脂などが好適である。他方、熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂及びウレタン樹脂などが好適である。
【0051】
合成樹脂バインダーとしては、前記木片に比べて耐熱性の大きい熱硬化性樹脂が使用可能である。ここに、熱硬化性樹脂バインダーとしては、フェノール樹脂、ユリアーメラミン樹脂、ユリア樹脂、多官能性イソシアネート樹脂化合物系接着剤などを例示することができる。
特に、フェノール樹脂が好適であるが、その形態は液体ではなく粉体とする。このように、粉体フェノールを使用することにより乾式成形が可能となる。この合成樹脂バインダーの重量%は、前記木片に対する無機質フィラーの割合に依存する。
【0052】
表面層11S及び裏面層11Bは、それぞれ、ストランド状の無機繊維を含む。これら表面層11S及び裏面層11Bは、実験的には、熱硬化性樹脂バインダーと無機質フィラーを混合しておき、この混合物をはじめに散布する。
次に、ストランド状の無機繊維を散布し、再度、熱硬化性樹脂バインダー及び無機質フィラーの混合物を散布し、板状に熱圧することによって製作できる。
【0053】
前記ストランド状無機繊維の配合量は、3〜10重量%であることが好ましい。この無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、セラミック繊維及び金属ウィスカーなどを例示することができる。特に、ガラス繊維が好適である。上限を10重量%としたのは、10重量%を超えても強度的な上昇を余り見込めなくなることと材料コストの問題からで、3重量%を下限としたのは、互いの繊維がからまって強度上昇を得るためには最低必要な量を規定したものである。
【0054】
また、前記ストランド状無機繊維に代えて、表面層11S及び裏面層11B各々に、前記消火廃剤を利用した難燃性樹脂組成物を含ませるようにしても構わない。
【0055】
なお、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 軒天構造
11 耐熱下地材
11a 換気孔
11C コア層
11B 裏面層
11S 表面層
12 軒天材
13 軒天換気材
13a スリット
14 際野縁
15 垂木
16 鼻隠下地材
17 鼻隠材
18 軒桁
19 柱
20 内壁
21 胴縁
22 外壁
23 屋根材
24 固定具
25 吊り木
26 野縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の軒天構造であって、
軒の付根部であって建物の外壁に沿って取り付けられた支持部材と軒の先端部に取り付けられる鼻隠材を支持する鼻隠下地材とに架設される耐熱下地材、及び前記耐熱下地材を覆うように設けられた軒天材を備え、
前記耐熱下地材は、木片、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有するコア層と、ガラス繊維、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有する前記コア層の表面層及び裏面層とを有することを特徴とする建物の軒天構造。
【請求項2】
建物の軒天構造であって、
軒の付根部であって建物の外壁に沿って取り付けられた第1の支持部材と軒の先端部に前記第1の支持部材に対して並設される第2の支持部材とに架設される耐熱下地材、及び前記耐熱下地材を覆うように設けられた軒天材を備え、
前記耐熱下地材は、木片、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有するコア層と、ガラス繊維、熱硬化性樹脂及び無機質フィラーを有する前記コア層の表面層及び裏面層とを有することを特徴とする建物の軒天構造。
【請求項3】
前記耐熱下地材には、軒天井の空間を換気するための換気孔が設けられており、前記換気孔に沿って軒天換気材が前記耐熱下地材に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の軒天構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の建物の軒天構造に用いられる耐熱下地材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1に記載の建物の軒天構造における耐熱下地材の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157710(P2011−157710A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19257(P2010−19257)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(390004145)城東テクノ株式会社 (53)
【Fターム(参考)】