説明

建物

【課題】熱の伝達を抑制することができるとともに、現場での施工を容易にして施工コストを低減させることができる建物を提供すること。
【解決手段】建物は、基礎2と、基礎2に配置された床とを備え、床は、基礎2の上方に配置された床梁12を備え、床梁12の内部には断熱材30が設けられ、基礎2と床梁12とは基礎用断熱部材9を介して接続される。また、床梁12は一対の長辺床梁12Aと一対の短辺床梁12Bとで構成され、長辺床梁12A及び短辺床梁12Bのうち一方の梁12Aの下面に、その梁12Aの長手方向に沿って別の断熱部材が取り付けられ、長辺床梁12A及び短辺床梁12Bのうち他方の梁12Bの内部に断熱材30が設けられており、他方の梁12Bと対向して断熱材30を覆う対向梁31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製部材を用いた建物では、冬期、鋼製部材特有の熱橋による影響を受ける。熱橋とは構造体における極端に熱伝導率の大きな部分をいい、この部分は他の部分よりも熱を伝えやすい熱的短絡部となる。
従来、この熱橋対策として、床下地パネルを金属製大引きで支持し、床下地パネルの下側であって大引きを挟んで両側に配置された床断熱材を断熱材支持具で支持し、この断熱材支持具を、大引きと床下地パネルとの間に配置される上面部と、この上面部の両側に設けられ、下端部で断熱材を支持する側面部とを有するコ字型に形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、床材が支持される鋼製大引きを断熱材で覆うものがある(例えば、特許文献2参照)。また、床の断熱対策として、スチールハウスの鋼製根太の周囲を断熱材で覆うものがある(例えば、特許文献3参照)。さらに、ユニット式建物では、基礎を断熱基礎とし、この基礎の中を暖めるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−217880号公報
【特許文献2】特開2005−307447号公報
【特許文献3】特開平11−159019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1〜3に記載の熱橋対策では、大引きや根太を断熱材等で覆う必要があるので、現場での施工が煩雑となるという問題がある。また、基礎を断熱基礎とし、この基礎の中を暖める熱橋対策では、構造が大がかりになるので施工コストが高くなり、床下換気がとりにくいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、熱の伝達を抑制することができるとともに、現場での施工を容易にして施工コストを低減させることができる建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物1は、図面を参照して説明すると、基礎2と、基礎に配置された床とを備え、床は、基礎の上方に配置された床梁12を備え、床梁の内部には断熱材30が設けられ、基礎と床梁とは基礎用断熱部材9を介して接続されることを特徴とする。
【0007】
本発明では、床梁は一対の長辺梁12Aと一対の短辺梁12Bとで構成され、長辺梁及び短辺梁のうち一方の梁の下面に、その梁の長手方向に沿って別の断熱部材8が取り付けられ、長辺梁及び短辺梁のうち他方の梁の内部に断熱材が設けられており、他方の梁と対向して断熱材を覆う対向梁31が設けられている構成が好ましい。
【0008】
図面を参照して説明すると、本発明の関連技術である建物ユニット3は、上下の梁11,12及び柱10から直方体状の骨組み13が形成された建物ユニット3であって、上下の梁11,12の少なくともいずれか一方は外部からの熱が伝達されやすい易熱伝達梁とされ、易熱伝達梁の外部に露出する部分に梁長手方向に沿って取り付けられる断熱部材8を備え、断熱部材8は、合板81及び板状断熱材82を接合して構成され、合板81は易熱伝達梁に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
この関連技術に係る発明によれば、外部からの熱が伝達されやすい易熱伝達梁には、断熱部材8が取り付けられているので、易熱伝達梁から建物ユニット3全体への熱の伝達を抑制できる。また、易熱伝達梁に断熱部材8を取り付けるだけで済むので現場での施工を容易にして施工コストを低減させることができる。
【0010】
本発明の関連技術では、易熱伝達梁は建物ユニット3の基礎2側に下面を有する下梁12とされ、断熱部材8は下梁12の下面に取り付けられることが好ましい。
この関連技術に係る発明によれば、冷気が集まりやすい建物ユニット3における基礎2の直上に配置される下梁12に断熱部材8を取り付けるので、熱橋対策を効率的に行うことができる。
【0011】
本発明の関連技術では、下梁12及び合板81を接合するボルト83を備え、板状断熱材82にはボルト83を挿通するボルト孔821が形成されていることが好ましい。
この関連技術に係る発明によれば、ボルト孔821を介して下梁12及び合板81をボルト83にて接合することができるので容易に断熱部材8を下梁12に取り付けることができる。
【0012】
本発明の関連技術では、板状断熱材82には防蟻剤が含有されていることが好ましい。
この関連技術に係る発明によれば、断熱部材8にて防蟻ラインを形成することができる。
【0013】
本発明の関連技術では、断熱部材8は、下梁12の幅方向寸法と略同じ幅方向寸法とされていることが好ましい。
この関連技術に係る発明によれば、断熱部材8は略全体が下梁12に当接するので、他の建物ユニットに干渉しないように施工することができる。
【0014】
本発明の関連技術であるユニット式建物1は、前述した建物ユニット3と、上下の梁11,12及び柱10から直方体状の骨組み13が形成された他の建物ユニットとを組み合わせて建てられることを特徴とする。
この関連技術に係る発明によれば、前述した建物ユニット3と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るユニット式建物の全体構成を示す斜視図。
【図2】前記実施形態における下階建物ユニット、及び上階建物ユニットの骨組みを示す斜視図。
【図3】前記実施形態における基礎を上方側から見た図。
【図4】前記実施形態における図3のI−I線断面図。
【図5】前記実施形態における図3のII−II線断面図。
【図6】前記実施形態における長辺床梁、及び梁用断熱部材の接合状態を示す斜視図。
【図7】前記実施形態における図3のIII−III線断面図。
【図8】前記実施形態における短辺床梁、及び基礎用断熱部材の接合状態を示す斜視図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る基礎を上方側から見た図。
【図10】前記実施形態における図9のIV−IV線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るユニット式建物1の全体構成を示す斜視図である。
ユニット式建物1は、図1に示すように、基礎2の上に設けられた6個の下階建物ユニット3からなる下階部4と、下階建物ユニット3の上に載置された6個の上階建物ユニット5からなる上階部6と、上階部6の上方に設けられる屋根部(図示略)とを備える。
【0017】
下階部4において、各下階建物ユニット3は、そのうち2個の下階建物ユニット3の短辺同士が対向する方向に隣り合うとともに、これらの隣り合った2個の下階建物ユニット3が対向方向と交差する方向に沿って配列されている。そして、上階部6において、各上階建物ユニット5は、各下階建物ユニット3の上部に配置されている。
また、図1中手前側の2個の下階建物ユニット3、及び2個の上階建物ユニット5と、中間の2個の下階建物ユニット3、及び2個の上階建物ユニット5とは所定間隔だけ離れて配置され、離し置き部7を構成している。この離し置き部7は、複数の壁パネル71にて閉塞されている。
【0018】
図2は、下階建物ユニット3、及び上階建物ユニット5の骨組み13を示す斜視図である。
下階建物ユニット3、及び上階建物ユニット5は、図2に示すように、四隅に立設される4本の柱10と、これらの柱10の上端間同士を連結する4本の上梁としての天井梁11と、各柱10の下端間同士を連結する4本の下梁としての床梁12とを含む骨組み13を有し、略直方体状に形成されている。
【0019】
そして、下階建物ユニット3、及び上階建物ユニット5において、天井梁11は各2本ずつの長辺天井梁11Aおよび短辺天井梁11Bで構成され、床梁12は各2本ずつの長
辺床梁12Aおよび短辺床梁12Bで構成されている。そして、2本の長辺天井梁11A間、及び2本の長辺床梁12A間には、複数本の天井小梁(図示略)、複数本の根太32(図7参照)がそれぞれ架け渡されている。また、柱10と天井梁11および床梁12とは、仕口14を介して接続されている。
【0020】
図3は、基礎2を上方側から見た図である。なお、図3では、下階建物ユニット3を二点鎖線で示している。
基礎2は、下階建物ユニット3に向かって突出する略矩形状の枠断面を有し、図3に示すように、格子枠状に形成されている。そして、各下階建物ユニット3は、床梁12を接続する仕口14を介してボルト等で接合されることによって基礎2に固定され、基礎2、及び床梁12の間には僅かな隙間が設けられている。すなわち、床梁12は、下階建物ユニット3の基礎2側に下面を有している。また、床梁12は、外部からの熱が伝達されやすい鋼製部材であり、本発明における易熱伝達梁に相当する。
【0021】
そして、長辺床梁12Aの下面には、梁長手方向に沿って梁用断熱部材8が取り付けられている。なお、梁用断熱部材8は、工場において、下階建物ユニット3を製造する際に長辺床梁12Aに取り付けてユニット化しておいてもよく、下階建物ユニット3の施工に際して、長辺床梁12Aに取り付けるようにしてもよい。
また、基礎2において、床梁12と対向する部分には、床梁12の延出方向に沿って基礎用断熱部材9が両側面に取り付けられている。
【0022】
図4は、図3のI−I線断面図である。図5は、図3のII−II線断面図である。
各下階建物ユニット3の床梁12間には、図4、及び図5に示すように、下階の床パネルユニット20が設けられている。また、離し置き部7には、図5に示すように、下階建物ユニット3の高さレベルに下階の床パネルユニット21が設けられている。そして、床パネルユニット20,21の内部には、断熱材22がそれぞれ設けられている。
長辺床梁12Aは、図4に示すように、断面コ字状に形成され、隣り合う下階建物ユニット3における長辺床梁12Aの間には、断熱材23が設けられている。
【0023】
図6は、長辺床梁12A、及び梁用断熱部材8の接合状態を示す斜視図である。
断熱部材としての梁用断熱部材8は、図4〜図6に示すように、板状に形成された合板81、及び梁用板状断熱材82を接着剤等で接合して構成される。
合板81には、図6に示すように、ボルト83のネジ部を挿通させるための孔811が形成されている。また、長辺床梁12Aにおいて、孔811に対向する位置にもボルト83のネジ部を挿通させるための孔121が形成されている。さらに、梁用板状断熱材82には、図4、及び図5に示すように、各孔811,121に対向する位置にボルトの頭部を挿通させるためのボルト孔821が形成されている。そして、合板81は長辺床梁12Aの下面にボルト83にて取り付けられている。
なお、板状断熱材としての梁用板状断熱材82には、防蟻剤が含有されている。また、梁用断熱部材8の幅方向寸法は、図6に示すように、長辺床梁12Aの下面の幅方向寸法と略同じ幅方向寸法とされている。
【0024】
図7は、図3のIII−III線断面図である。
短辺床梁12Bは、図7に示すように、断面コ字状に形成され、この短辺床梁12Bの内部には、断熱材30が設けられ、この断熱材30を覆うように断面コ字状の対向梁31が設けられている。また、対向梁31には、2本の長辺床梁12A間に架け渡される根太32が当接している。さらに、隣り合う下階建物ユニット3における短辺床梁12Bの間には、断熱材33が設けられている。
【0025】
図8は、短辺床梁12B、及び基礎用断熱部材9の接合状態を示す斜視図である。
基礎用断熱部材9は、図7、及び図8に示すように、大きさの異なる板状に形成された2つの基礎用板状断熱材91,92を接着剤等で貼り合わせて構成されている。この基礎用断熱部材9は、基礎2、及び短辺床梁12Bの間の隙間を密封し、短辺床梁12Bが外部に露出しないように基礎2に取り付けられている。
【0026】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)外部からの熱が伝達されやすい長辺床梁12Aには、梁用断熱部材8が取り付けられているので、長辺床梁12Aから下階建物ユニット3全体への熱の伝達を抑制できる。また、長辺床梁12Aに梁用断熱部材8を取り付けるだけで済むので現場での施工を容易にして施工コストを低減させることができる。
(2)冷気が集まりやすい下階建物ユニット3における基礎2の直上に配置される長辺床梁12Aに梁用断熱部材8を取り付けるので、熱橋対策を効率的に行うことができる。
【0027】
(3)ボルト孔821を介して長辺床梁12A及び合板81をボルト83にて接合することができるので容易に梁用断熱部材8を長辺床梁12Aに取り付けることができる。
(4)梁用板状断熱材82には防蟻剤が含有されているので、梁用断熱部材8にて防蟻ラインを形成することができる。
【0028】
(5)梁用断熱部材8は略全体が長辺床梁12Aに当接するので、他の建物ユニットに干渉しないように施工することができる。
(6)基礎用断熱部材9は、基礎2、及び短辺床梁12Bの間の隙間を密封し、短辺床梁12Bが外部に露出しないように基礎2に取り付けられているので、短辺床梁12Bから下階建物ユニット3全体への熱の伝達を抑制できる。また、基礎2に基礎用断熱部材9を取り付けるだけで済むので現場での施工を容易にして施工コストを低減させることができる。
【0029】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る基礎2Aを上方側から見た図である。なお、図9では、下階建物ユニット3を二点鎖線で示している。図10は、図9のIV−IV線断面図である。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
前記第1実施形態では、隣り合う下階建物ユニット3における長辺床梁12Aの下面には、梁長手方向に沿って梁用断熱部材8が取り付けられていた。これに対して、本実施形態では、ユニット式建物1Aは、前記第1実施形態における基礎2とは異なる形状の基礎2Aを備え、この基礎2Aにおいて、隣り合う下階建物ユニット3における長辺床梁12Aと対向する部分には、長辺床梁12Aの延出方向に沿って基礎用断熱部材9が両側面に取り付けられている点で異なる。
なお、離し置き部7における長辺床梁12Aの下面には、前記第1実施形態と同様に梁用断熱部材8が取り付けられている。
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0031】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではない。
例えば、前記各実施形態では、易熱伝達梁は下階建物ユニット3の基礎2側に下面を有する長辺床梁12Aとされ、梁用断熱部材8は長辺床梁12Aの下面に取り付けられていた。これに対して、例えば、易熱伝達梁を建物ユニットの屋根部側に上面を有する上梁と
し、断熱部材を上梁の上面に取り付けてもよい。要するに、易熱伝達梁は、上下の梁の少なくともいずれか一方とされ、断熱部材は、易熱伝達梁の外部に露出する部分に梁長手方向に沿って取り付けられていればよい。
【0032】
前記各実施形態では、梁用断熱部材8は、板状に形成された合板81、及び梁用板状断熱材82を接着剤等で接合して構成され、合板81は長辺床梁12Aの下面にボルト83にて取り付けられていた。これに対して、例えば、断熱部材は、上下の梁の少なくともいずれか一方に接着剤等で貼り付けられていてもよい。
前記各実施形態では、梁用板状断熱材82には、防蟻剤が含有されていたが、防蟻剤は含有されていなくてもよい。
【0033】
前記各実施形態では、梁用断熱部材8は、長辺床梁12Aの幅方向寸法と略同じ幅方向寸法とされていた。これに対して、例えば、断熱部材は、上下の梁の少なくともいずれか一方の幅方向寸法より大きい幅方向寸法とされていてもよく、小さい幅方向寸法とされていてもよい。要するに、断熱部材は、易熱伝達梁の外部に露出する部分に梁長手方向に沿って取り付けられていればよい。
【符号の説明】
【0034】
1,1A…ユニット式建物
2,2A…基礎
3…下階建物ユニット(建物ユニット)
8…梁用断熱部材(断熱部材)
10…柱
11…天井梁(上梁)
12…床梁(下梁)
81…合板
82…梁用板状断熱材(板状断熱材)
83…ボルト
821…ボルト孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、
前記基礎に配置された床とを備え、
前記床は、前記基礎の上方に配置された床梁を備え、
前記床梁の内部には断熱材が設けられ、
前記基礎と前記床梁とは基礎用断熱部材を介して接続されることを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載の建物において、
前記床梁は一対の長辺梁と一対の短辺梁とで構成され、
前記長辺梁及び前記短辺梁のうち一方の梁の下面に、その梁の長手方向に沿って別の断熱部材が取り付けられ、
前記長辺梁及び前記短辺梁のうち他方の梁の内部に前記断熱材が設けられており、
前記他方の梁と対向して前記断熱材を覆う対向梁が設けられていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68082(P2013−68082A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12599(P2013−12599)
【出願日】平成25年1月25日(2013.1.25)
【分割の表示】特願2008−259795(P2008−259795)の分割
【原出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】