説明

建築物の防蟻構造

【課題】柱材に寸法上の歪みが生じていても白蟻の侵入・食害を確実に防止する防蟻材を柱材に容易に装着することができるようにした建築物の防蟻構造を提供する。
【解決手段】建築物を白蟻の侵入及び食害から防ぐ建築物の防蟻構造において、建築物の基礎1上に敷設される土台2に立設される柱材4の所定高さ以下の部分における表面に、2つの断面略L字形状の白蟻に対する耐食性を有する防蟻材10を柱材4の隣接面に当接すべく対角線方向から嵌装する。これにより、柱材に寸法上の歪みが生じていても白蟻の侵入・食害を確実に防止する防蟻材を柱材に容易に装着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物を白蟻の侵入及び食害から防ぐ建築物の防蟻構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の主な木造住宅は、コンクリートからなる基礎上に土台となる木材を敷設し、土台の上に柱を立設するという工法が採られている。そのため、住宅を白蟻の侵入・食害から防ぐための防蟻処理が必要となる。一般的な防蟻処理としては、建築物の基礎等の表面に防蟻剤を施しているが、その効果を維持できる期間が限られ、また、人間にも毒性があるため、近年では防蟻剤をしない方法が考えられている。
【0003】
従来、防蟻剤を使用しない防蟻方法として、建築物を構成する土台及び柱材を網目構造の金属製パッドで被覆する構造や筒状のメッシュ体に挿通する構造等が知られているが、これら構造のものは、いずれも施工が面倒な上コストが嵩むという問題があった。
【0004】
そこで、発明者等は鋭意研究した結果、建築物の基礎上に敷設される土台に立設される柱材の所定高さ以下の部分において、少なくとも外壁と接触しない表面部分に、白蟻に対する耐食性を有する防蟻材を嵌装する構造を提案した(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の構造は、柱材の3面又は4面に防蟻材を嵌装する構造である。
【特許文献1】特開2008−31671号公報(特許請求の範囲、図3,図7,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には、柱材の長手方向に寸法状の歪みが生じる場合が多く、柱材における防蟻材を嵌装する部分が外方側に歪んでいると、防蟻材の嵌装に手間を要し、また、防蟻材を嵌装する部分が内方側に歪んでいると、柱材と防蟻材との間に隙間が生じるなど、防蟻材の嵌装が不十分となる懸念がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、柱材に寸法上の歪みが生じていても白蟻の侵入・食害を確実に防止する防蟻材を柱材に容易に装着することができるようにした建築物の防蟻構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、建築物を白蟻の侵入及び食害から防ぐ建築物の防蟻構造であって、上記建築物の基礎上に敷設される土台に立設される柱材の所定高さ以下の部分における表面に、2つの断面略L字形状の白蟻に対する耐食性を有する防蟻材を上記柱材の隣接面に当接すべく対角線方向から嵌装してなる、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成することにより、柱材の対角線方向から2つの断面略L字形状の白蟻に対する耐食性を有する防蟻材を嵌装することにより、柱材に防蟻材を被覆することができる。
【0009】
この発明において、上記防蟻材の一方の当接片における幅寸法を上記柱材の当接対象となる面における幅寸法よりも大きくし、かつ他方の当接片における幅寸法を上記柱材の当接対象となる面における幅寸法よりも小さく形成し、更に、上記他方の当接片の長手方向に沿う側端に、外方に向かって傾斜状に延在する折曲片を設け、かつ上記折曲片を上記一方の当接片の長手方向に沿う側端部の内面に当接すると共に、この当接部を固定部材によって固定する方が好ましい(請求項2)。
【0010】
このように構成することにより、断面略L字形状の防蟻材の一方の当接片の柱材よりはみ出た部分と折曲片とを当接し、固定部材によって締結固定することができる。
【0011】
また、この発明において、上記柱材における少なくとも土台の長手方向側の面に当接する防蟻材の当接片に、白蟻の通過を阻止する開口の多数の通気孔を穿設する方が好ましい(請求項3)。
【0012】
このように構成することにより、防蟻材が被覆された柱材に通気性を持たせることができる。
【0013】
また、この発明において、上記防蟻部材の当接片の下端に、柱材の下面を被覆する被覆片を更に具備してもよい(請求項4)。
【0014】
このように構成することにより、土台に接触する柱材の下面にも防蟻材を被覆することができる。
【0015】
また、この発明において、上記防蟻材は、白蟻に対する耐食性を有する材質、例えば合成樹脂や金属製のものであってもよく、例えば、アルミニウム製板材にて形成することができる(請求項5)。ここで、アルミニウムとは、アルミニウム合金を含む意味である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0017】
(1)請求項1記載の発明によれば、柱材の対角線方向から2つの断面略L字形状の白蟻に対する耐食性を有する防蟻材を嵌装することにより、柱材に防蟻材を被覆することができるので、柱材の寸法上の歪みが生じても、防蟻材の被覆を容易にすることができると共に、白蟻の侵入及び食害を確実に防止することができ、かつ、施工及びコストの低廉化を図ることができる。
【0018】
(2)請求項2記載の発明によれば、断面略L字形状の防蟻材の一方の当接片の柱材よりはみ出た部分と折曲片とを当接し、固定部材によって締結固定することができるので、上記(1)に加えて、更に柱材の寸法上の歪みを吸収して柱材への防蟻材の被覆を容易かつ確実にすることができる。
【0019】
(3)請求項3記載の発明によれば、防蟻材が被覆された柱材に通気性を持たせることができるので、上記(1),(2)に加えて、更に柱材の結露及び腐食を防止することができる。
【0020】
(4)請求項4記載の発明によれば、土台に接触する柱材の下面にも防蟻材を被覆することができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に柱材の下面の防蟻を確実にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、この発明に係る防蟻構造の第1実施形態の組立状態を示す斜視図、図2は、第1実施形態の要部の一部を断面で示す斜視図、図3は、図2のI−I線に沿う拡大断面図(a)、(a)のII部の固定前の状態を示す拡大断面図(b)及びII部の固定状態を示す拡大断面図(c)、図4は、柱材と土台の固定部を示す要部断面図、図5は、第1実施形態の要部の分解斜視図である。
【0023】
この発明に係る建築物は、図1に示すように、コンクリート製の基礎1の上面に土台2を敷設し、この土台2の上面に後述するほぞ3を介して木製の柱材4を立設し、柱材4の屋外側に外壁材5を取り付けてなる。
【0024】
また、建築物は、グランドレベルより好ましくは土台2の上面を基準にして1mの高さまでの領域に防蟻構造が施されている。この場合、柱材4のグランドレベルを基準にして1mの高さまでの柱材4の表面部分に2つの防蟻材10が嵌装され、固定部材であるタッピングねじ15aとナット15bによって柱材4に嵌装・固定されている。
【0025】
防蟻材10は、例えばアルミニウム合金製の板材を折曲してなる2つの断面略L字形状に形成されており、各防蟻材10が柱材の隣接面に当接すべく対角線方向から嵌装されている。
【0026】
上記防蟻材10の一方の当接片11(以下に第1の当接片11という)における幅寸法は柱材4の当接対象となる面における幅寸法よりも大きく、かつ他方の当接片12(以下に第2の当接片12という)における幅寸法は柱材4の当接対象となる面における幅寸法よりも小さく形成されている。また、第2の当接片12の長手方向に沿う側端には、外方に向かって傾斜状に延在する折曲片14が設けられており、この折曲片14が第1の当接片11の長手方向に沿う側端部13の内面に当接された状態で、この当接部を固定部材例えばタッピングねじ15aとナット15bによって固定されている(図3参照)。
【0027】
また、土台2は、例えばアルミニウム合金製の押出形材にて形成されており、中空矩形状本体2aと、この本体2aの内方中空部2bを区画する互いに平行な垂直方向に位置する2つの仕切り壁2cとで構成されている。このように構成されるアルミニウム合金製の土台2の上面に開設された矩形状のほぞ穴2d内に、柱材4の下端面に突設されたほぞ3が挿入され、土台2の側壁2eに水平方向に並列して穿設された2つの貫通孔2fを夫々貫通する固定ピン6をほぞ3の下部側に設けた固定孔3a内に嵌合することによって、ほぞ3が土台2に固定された状態で柱材4が土台2上に立設される(図2及び図4参照)。
【0028】
上記ほぞ3は、例えばアルミニウム合金製押出形材にて形成された断面が中実矩形状の押出形材を所定の寸法に切断したものにて形成されている。また、ほぞ3の上部側にも水平方向に並列して2つの固定孔3aが設けられている。ほぞ3の上部側を柱材4の下端面に設けられたほぞ穴4a内に挿入した状態で、柱材4の対向する側部に水平方向に並列して穿設された2つの貫通孔4bを夫々貫通する固定ピン6を固定孔3aに嵌合することによって、ほぞ3が柱材4の下面に突設されるようになっている。なお、ほぞ3は必ずしも断面中実状である必要はなく、断面中空矩形状に形成してもよい。また、ほぞ3は必ずしもアルミニウム製部材である必要はなく、例えば柱材4と一体に形成したものであってもよい。
【0029】
上記のように構成される土台2,柱材4,ほぞ3及び防蟻材10を組み立てるには、まず、基礎1の上面にスペーサ8を介在させて土台2を敷設すると共に、アンカーボルト7によって固定する。
【0030】
一方、柱材4の下端面に設けられたほぞ穴4a内にほぞ3の上端部を挿入した状態で固定ピン6を柱材4の貫通孔4b及びほぞ3の固定孔3a内に嵌合することによって、柱材4の下面にほぞ3を突設する。また、柱材4の下部側に、柱材4の対角線方向から防蟻材10を嵌装して2つの防蟻材10の第1の当接片11と第2の当接片12を夫々柱材4の隣接面に当接し、かつ第2の当接片12の折曲片14を第1の当接片11の長手方向に沿う側端部13の内面に当接する(図3(b)参照)。そして、この状態で、第1の当接片11の側端部13の外方からタッピングねじ15aを当接部にねじ込み、その先端部にナット15bを螺合して当接部を固定する(図3(a),(c)参照)。
【0031】
次に、柱材4の下面に突設されたほぞ3の突出部を土台2の上面に開設されたほぞ穴2d内に挿入し、土台2の側壁2eに穿設された2つの貫通孔2fを夫々貫通する固定ピン6をほぞ3に設けた固定孔3a内に嵌合することによって、柱材4を土台2上に立設する。
【0032】
なお、柱材4を土台2に立設させた後に、柱材4の下部側に、上記と同様に、対角線方向から防蟻材10を嵌装し固定してもよい。
【0033】
なお、上記説明では、防蟻材10が2つの断面略L字形状に形成される場合について説明したが、図6及び図7に示すように、少なくとも土台2の長手方向に位置する防蟻材10の当接片例えば第2の当接片12に、白蟻の通過を阻止する開口の多数の通気孔16を設ける方が好ましい。このように防蟻材10に白蟻の通過を阻止する開口の多数の通気孔16を設けることにより、防蟻材10が嵌装される柱材4に通気性を持たせることができると共に、白蟻の侵入・食害を防止することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図8は、この発明に係る防蟻構造の第2実施形態の要部を示す拡大断面図、図9は、第2実施形態の要部を示す斜視図である。
【0035】
第2実施形態は、第1実施形態と同様に、略L字形状に形成される防蟻材10Aの当接片例えば第1の当接片11の下端に、柱材4の下面を被覆する被覆片17を更に具備した場合である。この場合、図8及び図9に示すように、防蟻材10の第1の当接片11の下端には、ほぞ穴4aを回避した被覆片17が折曲可能に延在されている。
【0036】
上記のように、被覆片17によって柱材4の下端面を被覆することによって、土台2に接触する柱材4の下面にも防蟻材10Aを被覆することができるので、更に土台2と柱材4との間における白蟻の侵入・食害を防止することができる。
【0037】
なお、防蟻材10の少なくとも土台2の長手方向に位置する当接片例えば第2の当接片12においても、白蟻の通過を阻止する開口の多数の通気孔16を設ける方が好ましい。
【0038】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0039】
上記のように構成される第2実施形態の防蟻材10Aを柱材4に嵌装するには、柱材4の下部側の対角線方向から夫々防蟻材10Aを嵌装し、両防蟻材10Aの側端部13と折曲片14を当接した状態で、防蟻材10Aの第1の当接片11の下端部に延在する被覆片17を折り曲げて柱材4の下端面を被覆する。
【0040】
上記のようにして防蟻材10Aを嵌装した柱材4を土台2の上面に立設するには、まず、柱材4の下端面に設けられたほぞ穴4a内にほぞ3の上端部を挿入した状態で固定ピン6を柱材4の貫通孔4b及びほぞ3の固定孔3a内に嵌合することによって、柱材4の下面にほぞ3を突設する。次に、柱材4の下部側の対角線方向から夫々防蟻材10Aを嵌装し、両防蟻材10Aの側端部13と折曲片14を当接した状態で、防蟻材10Aの第1の当接片11の下端部に延在する被覆片17を折り曲げて柱材4の下端面を被覆する。この状態で、第1の当接片11の側端部13の外方からタッピングねじ15aを当接部にねじ込み、その先端部にナット15bを螺合して当接部を固定する。
【0041】
次に、柱材4の下面に突設されたほぞ3の突出部を土台2の上面に開設されたほぞ穴2d内に挿入し、土台2の側壁2eに穿設された2つの貫通孔2fを夫々貫通する固定ピン6をほぞ3に設けた固定孔3a内に嵌合することによって、柱材4を土台2上に立設する。
【0042】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態では、土台2が、中空矩形状本体2aと、この本体2aの内方中空部2bを区画する互いに平行な垂直方向に位置する2つの仕切り壁2cとからなるアルミニウム合金製の押出形材にて形成される場合について説明したが、土台は必ずしもこのような形状である必要はなく、例えば中空矩形部の上下片の左右端部に夫々外方に延在するフランジ部を形成したアルミニウム合金製の押出形材にて形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明に係る防蟻構造の第1実施形態の組立状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の要部の一部を断面で示す斜視図である。
【図3】図2のI−I線に沿う拡大断面図(a)、(a)のII部の固定前の状態を示す拡大断面図(b)及びII部の固定状態を示す拡大断面図(c)である。
【図4】この発明における柱材と土台の固定状態を示す要部断面図である。
【図5】第1実施形態の要部の分解斜視図である。
【図6】この発明における防蟻材に通気孔を設けた状態を示す要部の斜視図である。
【図7】防蟻材に通気孔を設けた状態を示す要部の分解斜視図である。
【図8】この発明に係る防蟻構造の第2実施形態の組立状態を示す要部断面図である。
【図9】第2実施形態における防蟻材の被覆片を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基礎
2 土台
3 ほぞ
4 柱材
10,10A 防蟻材
11 第1の当接片(一方の当接片)
12 第2の当接片(他方の当接片)
13 側端部
14 折曲片
15a タッピングねじ(固定部材)
15b ナット(固定部材)
16 通気孔
17 被覆片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を白蟻の侵入及び食害から防ぐ建築物の防蟻構造であって、
上記建築物の基礎上に敷設される土台に立設される柱材の所定高さ以下の部分における表面に、2つの断面略L字形状の白蟻に対する耐食性を有する防蟻材を上記柱材の隣接面に当接すべく対角線方向から嵌装してなる、ことを特徴とする建築物の防蟻構造。
【請求項2】
請求項1記載の建築物の防蟻構造において、
上記防蟻材の一方の当接片における幅寸法は上記柱材の当接対象となる面における幅寸法よりも大きく、かつ他方の当接片における幅寸法は上記柱材の当接対象となる面における幅寸法よりも小さく形成し、
上記他方の当接片の長手方向に沿う側端に、外方に向かって傾斜状に延在する折曲片を設け、かつ上記折曲片を上記一方の当接片の長手方向に沿う側端部の内面に当接すると共に、この当接部を固定部材によって固定してなる、
ことを特徴とする建築物の防蟻構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建築物の防蟻構造において、
上記柱材における少なくとも土台の長手方向側の面に当接する防蟻材の当接片に、白蟻の通過を阻止する開口の多数の通気孔を穿設してなる、ことを特徴とする建築物の防蟻構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の建築物の防蟻構造において、
上記防蟻部材の当接片の下端に、柱材の下面を被覆する被覆片を更に具備してなる、ことを特徴とする建築物の防蟻構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の建築物の防蟻構造において、
上記防蟻材はアルミニウム製板材にて形成されている、ことを特徴とする建築物の防蟻構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−59661(P2010−59661A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225412(P2008−225412)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【Fターム(参考)】