説明

建築用パネル

【課題】地震の揺れに対して十分な振動吸収機能を有する建築用パネルを提供する。
【解決手段】建築物に取り付けられる枠体3と、枠体3に収容される板体2とを備える建築用パネル1であって、枠体3は、板体2がスライド可能となるように板体2の外周縁を保持する保持部32を内周縁面31に備えている建築用パネル1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の天井面や内壁面、外壁面には、防音性や断熱性、意匠性等を高めるために、例えば特許文献1に開示されているような建築用パネルが複数取り付けられている。特許文献1に開示されている建築用パネルは、図7に示すように、平面視矩形状の板体101と、当該板体101を保持する枠体102とを備えている。板体101と枠体102とは、スタッドボルト103を介して互いに固定されている。このような建築用パネル100は、建築物の天井面や壁面等に枠体102を固定することにより取り付けられる。
【特許文献1】特開平7−102734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の建築用パネルは、板体と枠体とがスタットボルトを介して互いに剛結合されているので、地震が発生して建築物が揺れた場合に、板体と枠体との結合部に多大な力が発生し、当該結合部において板体が破損するという問題があった。更に、板体の破損が大きい場合には、板体が脱落するおそれもあった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、地震の揺れに対して十分な振動吸収機能を有する建築用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、建築物に取り付けられる枠体と、前記枠体に収容される板体とを備える建築用パネルであって、前記枠体は、前記板体がスライド可能となるように前記板体の外周縁を保持する保持部を内周縁面に備えている建築用パネルにより達成される。
【0006】
また、この建築用パネルにおいて、前記板体の外周縁面には、周方向に沿って延びる周溝が形成されており、前記保持部は、前記周溝に挿入される保持片を備えていることが好ましい。
【0007】
また、前記保持片は、前記枠体の内周縁面の周方向に沿って延びるように形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記保持部は、前記枠体の内周縁面の周方向に沿って形成され、前記板体の外周縁が挿入される枠溝を備えていることが好ましい。
【0009】
また、前記板体は、合成樹脂からなる芯材板と、前記芯材板の表裏面に積層される一対の金属シートとを備える複合板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地震の揺れに対して十分な振動吸収機能を有する建築用パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る建築用パネルについて添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る建築用パネルの平面図であり、図2は、図1のA−A断面を示す概略構成断面図である。図3は、図2の要部拡大図である。なお、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、建築用パネル1は、平面視矩形状に形成された板体2と、当該板体2の外周縁を収容する枠体3とを備えている。板体2は、合成樹脂からなる芯材板21と、当該芯材板21の表裏面に積層される一対の金属シート22,22とを備える複合板である。芯材板21を形成する合成樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリヒドロキシルエーテル、酢酸ビニル等を例示することができる。この芯材板21の厚みは、特に限定されないが、例えば、3mm〜4mmとなるように形成することが強度維持・軽量化の観点から好ましい。また、芯材板21の表裏面に積層される金属シート22を形成する金属材料としては、アルミニウム、ステンレス、銅等を例示することができる。この金属シート22の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.15mm〜0.5mmとなるように形成することが好ましい。
【0013】
芯材板21と金属シート22,22とは、両者が十分に密着するように接着材により接着されている。接着剤としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリオレフイン(ポリエチレン等)の不飽和カルボン酸またはその無水物のグラフト変性物などを挙げることができる。なお、芯材板21及び金属シート22,22の表面に微小な凹凸を複数形成し、芯材板21に形成された凹凸と、金属シート22に形成された凹凸とを嵌合させることにより、芯材板21の表裏面に金属シート22,22が接合された板体2を形成することもできる。
【0014】
また、板体2の外周縁面23には、その周方向に沿って延びる周溝24が形成されている。この周溝24は、板体2の外周縁面23の全周に亘って形成されている。なお、板体2を構成する芯材板21に形成されている。
【0015】
枠体3は、板体2を収容した状態を維持しつつ、建築物の天井面や側壁面に取り付けられる部材であり、平面視矩形状の形状を有している。この枠体3は、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属材料や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリヒドロキシルエーテル、酢酸ビニル等の合成樹脂材料により形成されている。枠体3は、図2の断面図に示すように、枠体3の内周縁面31に設けられる保持部32と、外周縁面33に設けられる固定部34とを備えている。なお、枠体3は、その各辺ごとに分割可能に構成されており、各辺をボルト・ナット等の締結部材を介して結合することにより組み立てられている。
【0016】
保持部32は、板体2がスライド可能となるように板体2の外周縁を保持する機能を有しており、板体2の外周縁面23に形成される周溝24に挿入される保持片321を備えている。この保持片321は、枠体3の内周縁面31から枠体3の内側に向けて立設するように形成されている。また、保持片321は、枠体3の内周縁面31の全周に亘って、当該枠体3の内周縁面31の周方向に沿って延びるように形成されている。保持片321の厚さ(図中の上下方向の長さに相当)は、周溝24の幅(図中の上下方向の長さに相当)よりも若干薄くなるように形成されている。
【0017】
固定部34は、ボルト・ナット等の締結具を介して建築物の天井面や壁面等に、板体2を保持した枠体3を取り付ける部材であり、枠体3の外周縁面33から枠体3の外側に向けて立設する固定片341を備えている。この固定片341は、枠体3に保持される板体2の板面2aと平行となるように形成されている。
【0018】
このような板体2と枠体3とを組み立てて建築用パネル1を形成するには、例えば、枠体3を各辺に分解した後、当該各辺における保持片321を板体2の周溝24にそれぞれ挿入して、ボルト・ナット等の締結部材により枠体3の各辺を固定することにより行うことができる。
【0019】
ここで、板体2の大きさや、周溝24の深さ、周溝24の幅、枠体3の大きさ、枠体3の内周縁面31からの保持片321の突出長さ、保持片321の厚み等は、枠体3の保持片321に保持される板体2が、板体2の板面2aと平行な方向に所定量スライドでき、かつ、スライドによる移動によって当該板体2が枠体3の保持片321から脱落しない範囲で適宜設定される。また、板体2の板面2aに垂直な方向に、板体2が所定量スライドできるように設定してもよい。
【0020】
このように構成された建築用パネル1によれば、建築物に取り付けられる枠体3の保持部32が、板体2をスライド可能に保持しているので、当該建築用パネル1が天井面等に設置された建築物が地震の発生により揺れた場合に、地震の振動を保持部32において吸収し、建築物の揺れを板体2に伝わりにくくすることができる。この結果、板体2に多大な力が発生することを効果的に抑制することができ、当該板体2が破損したり、枠体3から脱落することを確実に防止することが可能になる。
【0021】
また、板体2が、合成樹脂からなる芯材板21およびこの芯材板21の表裏面に積層される一対の金属シート22,22により形成された複合板であるため、板体2の曲げ強度等の機械強度を高く維持しつつ、当該板体2の軽量化を図ることができる。この結果、板体2を枠体3に対してスライド可能に構成したことにより生じる地震発生時における板体2と枠体3との衝突による衝撃を小さく抑えることが可能になり、板体2や枠体3が損傷することを防止することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る建築用パネル1は、板体2の外周縁面23に形成される周溝24と、この周溝24に挿入される枠体3の保持片321とにより、枠体3が板体2をスライド可能に保持するように構成されているので、地震の振動吸収機能を有する建築用パネル1を低コストでかつ容易に製造することができる。
【0023】
更に、保持片321は、枠体3の内周縁面31の周方向に沿って延びるように形成されているので、例えば、建築用パネル1を天井面に設置した場合において、保持片321が支える単位面積当りの板体2の荷重を低減することができる。この結果、地震の発生により枠体3が歪む等して、当該枠体3に不測の力が作用したとしても、保持片321が破損することを効果的に防止し、板体2を確実に保持することができる。
【0024】
以上、本発明に係る建築用パネル1の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限定されない。本実施形態においては、合成樹脂からなる芯材板21およびこの芯材板21の表裏面に積層される一対の金属シート22,22により板体2を形成しているが、例えば、板体2を合成樹脂材料のみから、或いは、金属や木材のみから形成するようにしてもよい。また、木材と金属からなる複合板を採用してよい。
【0025】
また、本実施形態においては、板体2の外周縁面23に周溝24を形成すると共に、枠体3の内周縁面31に板体2の周溝24に挿入される保持片321を備えるように構成することにより、枠体3が板体2を保持するように構成されているが、このような構成に特に限定されない。例えば、図4の概略構成断面図に示すように、枠体3の内周縁面31の周方向に沿って形成され、板体2の外周縁が挿入される枠溝322を枠体3の保持部32が備えると共に、当該枠溝322が、板体2をスライド可能に保持するように構成することもできる。このような構成であっても、地震が発生し建築物が揺れた場合に、地震の振動を板体2に伝わりにくくすることができ、板体2が損傷したり、枠体3から脱落することを効果的に防止することが可能である。また、このような構成を採用した場合、枠体3の枠溝322と摺接する板体2の最外面が金属シート22により形成されているので、枠体3の枠溝322との摩擦抵抗を小さくすることができる。これにより、建築物に固定される枠体3が地震発生により建築物と共に振動した場合に、地震の振動をより一層、板体2に伝わりにくくすることが可能になる。
【0026】
また、本実施形態においては、建築用パネル1を平面視矩形状となるように構成しているが、例えば、平面視において、円形状や三角形状、五角形状等の種々の形状となるように構成することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、枠体3が備える保持片321を枠体3の内周縁面31の周方向に沿って延びるように形成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、図5の枠体3の平面図に示すように、複数の保持片321を枠体3の内周縁面31の周方向に沿って配置するように構成し、枠体3に保持された板体2がスライド可能となるように構成してもよい。このような構成であっても、建築物に固定される枠体3が地震により建築物と共に振動した場合に、地震の振動を板体2に伝わりにくくすることが可能である。
【0028】
また、本実施形態においては、板体2の外周縁面23に周溝24を形成し、この周溝24に保持部32の保持片321を挿入するように構成されているが、例えば、図6(a)の板体2の斜視図、および、図6(b)の枠体3の平面図に示すように、板体2の外周縁面23に複数の挿入孔25を形成すると共に、これらの挿入孔25に挿入されるピン形状の保持片321を枠体3の内周縁面31に複数形成することにより保持部32を構成し、枠体3に保持された板体2がスライド可能となるように構成してもよい。このような構成であっても、地震の振動を板体2に伝わりにくくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る建築用パネルを示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面を示す概略構成断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図1に示す建築用パネルの変形例を示す概略構成断面図である。
【図5】図1に示す建築用パネルの他の変形例を構成する枠体の平面図である。
【図6】図1に示す建築用パネルの更に他の変形例を構成する(a)板体の斜視図および(b)枠体の平面図である。
【図7】従来の建築用パネルを示す概略構成斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 建築用パネル
2 板体
2a 板面
21 芯材板
22 金属シート
23 板体の外周縁面
24 周溝
3 枠体
31 枠体の内周縁面
32 保持部
321 保持片
33 枠体の外周縁面
34 固定部
341 固定片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に取り付けられる枠体と、前記枠体に収容される板体とを備える建築用パネルであって、
前記枠体は、前記板体がスライド可能となるように前記板体の外周縁を保持する保持部を内周縁面に備えている建築用パネル。
【請求項2】
前記板体の外周縁面には、周方向に沿って延びる周溝が形成されており、
前記保持部は、前記周溝に挿入される保持片を備えている請求項1に記載の建築用パネル。
【請求項3】
前記保持片は、前記枠体の内周縁面の周方向に沿って延びるように形成されている請求項2に記載の建築用パネル。
【請求項4】
前記保持部は、前記枠体の内周縁面の周方向に沿って形成され、前記板体の外周縁が挿入される枠溝を備えている請求項1に記載の建築用パネル。
【請求項5】
前記板体は、合成樹脂からなる芯材板と、前記芯材板の表裏面に積層される一対の金属シートとを備える複合板である請求項1から請求項4のいずれかに記載の建築用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−240354(P2008−240354A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82279(P2007−82279)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(300027244)株式会社 ナップコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】