説明

建設機械におけるキャブ

【課題】 キャブ内に前後方向にハーネスを配線するにあたり、ハーネスを取付けるための部材やハーネスカバーを別個に用意することなくハーネスを被覆した状態で配線する。
【解決手段】 建設機械のキャブ5であって、天井部14は前後左右を梁材11、12、13で枠組み形成されており、該天井部の前半部は透光性のルーフパネル15が設けられ、後半部は天板16で覆われたものであって、該ルーフパネルに対してサンシェードをルーフパネルからの光を遮蔽する位置或いは採光する位置に摺動案内するガイド部19aが形成される長尺部材19に、ハーネス22を配線する配線部19bを一体に形成して、該長尺部材を左右梁材11に取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の建設機械におけるキャブの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械のなかには走行車両にキャブが搭載されたものがあり、このようなキャブにあっては、オペレータの前上方の視界を確保するため前半部が透光性のあるルーフパネルで構成され、後半部が天板と該天板の下面を覆うルーフ内装材で構成された天井部を備えるようにしたものが知られている。そしてこの場合、該前半部に形成されるルーフパネルからの陽射し等の光の入射を遮るためのサンシェードをキャブ天井部の前後方向に移動可能に設け、該サンシェードの前後方向の移動によってルーフパネルを透過する光を遮蔽できるよう構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャブには種々の電装品が取付けられることになるが、これら電装品の一つとしてキャブの前上部に設けられるライト(前照灯)のようなものがあり、このような電装品への電源供給は、キャブの後方に設けられたバッテリ(または発電機)から行われるのが一般的であるが、この場合、キャブ天井部に配線されたハーネスを介して行うものがある。
このようにハーネスを天井部に配するにあたり、ルーフパネルが左右梁材(枠体)にまで至らない左右に幅狭なものであった場合、ハーネスを、ルーフパネルと左右梁材とのあいだの天井部分に、該部位の天板の下側に設けられるルーフ内装材で隠すようにして配することによりキャブ室内にハーネスが露出しない状態での配線ができる。
しかしながら、運転者の前上方の左右視界をより大きく確保すると共にキャブ内空間を広く確保するため、ルーフパネルを左右梁材にまで至る大型なものにすることが提唱される。そしてこのようにしたものでは、ルーフパネルと左右梁材とのあいだに天井部がなく、この結果、ルーフパネルの左右に配するハーネスをルーフ内装材で隠すようにして配線することができないことになる。そこでこの場合には、ハーネスは、梁材に沿わせて配線することになるが、ハーネスを単純に梁材に沿わせただけでは好ましくなく、このため、ハーネスをハーネスカバーで覆蓋することになるが、ハーネスカバーを別個に用意した場合、部品点数が増加すると共に、ハーネスカバーの取付け作業が必要になって作業性が劣るという問題が生じ、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、前半部が透光性のルーフパネルで構成され、後半部が天板と該天板下面を覆うルーフ内装材とで構成された天井部を備えた建設機械におけるキャブにおいて、前記天井部に、ルーフパネルの遮光をするためのサンシェードを前後方向移動自在に設けるにあたり、前記天井部を構成する左右梁材の少なくとも一方に、サンシェードを前後方向にガイドするためのガイド部と電装品用ハーネスを前後方向に配線するための配線部とが一体に形成された長尺部材を前記梁材に沿うようにして取付けたことを特徴とする建設機械におけるキャブである。
請求項2の発明は、配線部は、長尺部材を梁材に取付けた状態で梁材のキャブ内側面に対向するものとし、該配線部の梁材対向部位が開口していてハーネスを組み込めるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるキャブである。
請求項3の発明は、ガイド部と配線部とが上下に形成され、該ガイド部と配線部とのあいだに長尺部材を梁材に取付けるための取付け部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械におけるキャブである。
請求項4の発明は、ガイド部の上面がルーフ内装材を支持する支持部に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の建設機械におけるキャブである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、天井部の前半部が、左右梁材にまで至る大型のルーフパネルとして前上方の視界を左右幅広に確保したキャブでありながら、キャブ天井部においてルーフパネル部位に配されるハーネスは、サンシェードをガイドするガイド部が形成された長尺部材の配線部に組込むことで配線できるため、ハーネスを長尺部材で保護する状態での配線が、サンシェードをガイドするために必要な長尺部材を有効に利用してできることになって部品点数が増加することがなく、組付け性の向上も図ることが出来る。
請求項2の発明とすることにより、ハーネスは、長尺部材の梁材対向部位の開口から組込まれることになる結果、ガイド部が形成された長尺部材を梁材に取付けることを利用して、キャブ内に露出することがない被覆状態で配線することができる。
請求項3の発明とすることにより、長尺部材は、上下にあるガイド部と配線部とのあいだの取付け部によって梁材に取付けられることになるから、ガイド部及び配線部が確りと梁材に固定され、長尺部材のがたつきや位置ずれを防止することができる。
請求項4の発明とすることにより、長尺部材は、天井部後半部位においては、サンシェードのガイド機能およびハーネスの配線機能だけでなく、ルーフ内装材支持機能も有することになって部品の一層の兼用化が達成できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】油圧ショベルの全体側面図である。
【図2】キャブの枠組み状態を示す上側からの斜視図である。
【図3】キャブの枠組み状態を示す下側からの斜視図である。
【図4】キャブの平面図である。
【図5】(A)、(B)は図4のA‐A断面図、B−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。図中1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2に、バケット式の作業アタッチメント3が設けられた上部旋回体4が旋回自在に設けられている。上部旋回体4には、運転席5aを保護すべく囲繞する後述のキャブ5が前半部一側に設けられ、エンジンルーム6が後半部に設けられ、カウンターウエイト7が後端部に設けられて構成されていること等は何れも従来通りである。
【0009】
前記キャブ5は、図2〜図4に示すように、機体フレーム8から図示しないビスカスマウントを介して立設する前側左右コーナー部の柱材9と、後側左右コーナー部の柱材10と、これら柱材9、10の上端部間に支架される左右梁材11、前側梁材12、後側梁材13等の各種部材を枠材として用いて枠組み形成され、これら枠組みされた各空間部に板材や窓材、さらにはドア等の必要部材を組み込んで構成されていること等も従来通りである。
【0010】
左右梁材11、前側梁材12、後側梁材13で枠組み形成されるキャブ5の天井部14は、前半部が運転座席の前上部に運転者の前上方への視界を確保するため透光性板材で形成されたルーフパネル15、後半部が鋼板で形成された天板16で構成され、該天板16の下面にはルーフ内装材17が設けられていて、天板16の下面がキャブ内から直接目視できないようになっている。そして前記ルーフパネル15は、天板16の前端部にヒンジ18を介して上下揺動自在に支持され、これによってルーフパネル15は上方に向けて開放できるようになっている。
【0011】
左右梁材11は、本実施の形態では異形鋼管で形成されるが、キャブ内側面は、図5に示すように、上端部にキャブ内側に向けて鍔状に張り出した張り出し部11aが形成され、該張り出し部11aの左右方向外端部から縦板状に垂下した第一内面部11b、該第一内面部11bから下側ほど左右方向外方に向けて傾斜する第二内面部11c、該第二内面部11cの下端から縦板状に垂下した第三内面部11dを備えて構成されている。
【0012】
19は、本発明が実施された前後方向に長い長尺部材であって、該長尺部材19は、本実施の形態では熱硬化性樹脂材で形成されているが、後述するように、上側にはサンシェード20を摺動案内する凹溝状のガイド部19aが、下側にはキャブ5の前上部に設けられるライト21に電源供給するためのハーネス22を配線する配線部19bがそれぞれ形成され、さらにこれら上下のガイド部19aと配線部19bとのあいだには、該長尺部材19を左右梁材11のキャブ内面に取付けるための取付け部19cが形成されている。
【0013】
取付け部19cは板面が縦向きになった板状体に形成され、前記第二内面部11cに対して前後方向に点在する状態で設けた(溶着した)L字形の金具23にボルト24を螺合することにより長尺部材19を左右梁材11のキャブ内側面に固定できるようになっている。
【0014】
一方、ガイド部19aは、前記長尺部材19を左右梁材11に取付けた状態で第二内面部11cの上側面に突き当てられるようになっており、そして取り付け部19cの上端からキャブ内方に向けて突出するように延出され、その延出端19dが開口して前記凹溝状になっている。この凹溝状の左右ガイド部19aにサンシェード20の左右両端縁部20aを前後方向摺動自在に内嵌することで、サンシェード20は、ルーフパネル15の下側に位置してルーフパネル15の遮光をする遮光位置と、ルーフ内装材17の下側に位置してルーフパネル15の採光を許容する採光位置とに前後移動できるようになっている。
【0015】
しかも本実施の形態では、ガイド部19aの上面板は、前記長尺部材19を左右梁材11に取付けた状態で、前記張り出し部11aに対して上下に間隙Sを存して対向し、該間隙Sにルーフ内装材17の左右両端縁部17aを嵌合して支持できるようになっている。
【0016】
また、配線部19bは、取付け部19cの下端から左右方向外方に向けて延出され、その延出端19eが開口していてハーネス22を組み込めるよう凹溝状になっており、該延出端19eは、前記長尺部材19を左右梁材11に取付けた状態で第三内面部11dに対向する梁材対向部位となっている。
尚、延出端19eの凹溝状は、ハーネス22の複数本の組み込みを許容するだけの空間を有するものに形成されている。
【0017】
このように、長尺部材19を、左右梁材11に沿うようにして取付け部19cによって左右梁材11に取付けることで、サンシェード20を摺動案内するガイド部19aと、ハーネス22を配線する配線部19bとの両者の取り付けができることになり、そして該取付けられたガイド部19aを用いてサンシェード20をルーフパネル15の遮光位置とルーフパネル15の採光位置とに前後移動できると共に、配線部19bを用いてハーネス22をキャブ内から目視できない状態で配線できる。
そして、ガイド部19aの上面板と左右梁材11の張り出し部11aとのあいだに形成される間隙Sを利用してルーフ内装材17の左右両端縁部17aを支持することができる。
【0018】
叙述の如く構成された本発明を実施するための形態において、天井部14の前半部が、左右梁材11にまで至る大型のルーフパネル15となっていて前上方の視界を左右幅広に確保して視認性が向上したキャブ5でありながら、該キャブ5の天井部14においてルーフパネル15部位に配されるハーネス22は、サンシェード20をガイドするガイド部19aが形成された長尺部材19に一体形成された配線部19bに組込むことで配線できるため、ハーネス22を配線部19bで被覆する状態での配線が、サンシェード20をガイドするガイド部19aが形成された長尺部材19を有効に利用してできることになって長尺部材19がサンシェード20のガイド機能とハーネス22の取り付け機能とを備えたものに兼用されて、専用のハーネスカバー部材が不要になり、部品点数が増加することがなく、組付け性の向上も図ることが出来る。
【0019】
また、長尺部材19の左右梁材11への取付けは、長尺部材19の取付け部19cを左右梁材11に設けられた金具23にボルト24でボルト締めすれば良いので、長尺部材19の左右梁材11への取付けは簡単に行うことができる。しかも、取付け部19cは、ガイド部19aと配線部19bとのあいだに形成されていることから、上下にあるガイド部19aおよび配線部19bを確りと安定した状態で取付けることができ、ガイド部19a及び配線部19bのがたつきや位置ずれを防止することができる。
【0020】
また長尺部材19は、ガイド部19aの上面と左右梁材11の張り出し部11aとの間隙Sにルーフ内装材17を嵌合して支持することで、ルーフ内装材17の支持機能も持たせることができ、さらなる兼用化が達成できる。
【0021】
尚、本発明の実施の形態では、左右の長尺部材19を同形状のものにしたが、長尺部材19は左右同形状である必要はなく、ハーネスの配線が左右何れか一方でよい場合には、ハーネスの配線が必要ない側については配線部19bが設けられていない長尺部材とすることができ、また、左右配線部19bの形状を異形にしても本発明を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の建設機械のキャブに利用することが出来る。
【符号の説明】
【0023】
1 油圧ショベル
5 キャブ
11 左右梁材
14 天井部
15 ルーフパネル
16 天板
17 ルーフ内装材
19 長尺部材
19a ガイド部
19b 配線部
20 サンシェード
22 ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前半部が透光性のルーフパネルで構成され、後半部が天板と該天板下面を覆うルーフ内装材とで構成された天井部を備えた建設機械におけるキャブにおいて、前記天井部に、ルーフパネルの遮光をするためのサンシェードを前後方向移動自在に設けるにあたり、前記天井部を構成する左右梁材の少なくとも一方に、サンシェードを前後方向にガイドするためのガイド部と電装品用ハーネスを前後方向に配線するための配線部とが一体に形成された長尺部材を前記梁材に沿うようにして取付けたことを特徴とする建設機械におけるキャブ。
【請求項2】
配線部は、長尺部材を梁材に取付けた状態で梁材のキャブ内側面に対向するものとし、該配線部の梁材対向部位が開口していてハーネスを組み込めるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるキャブ。
【請求項3】
ガイド部と配線部とが上下に形成され、該ガイド部と配線部とのあいだに長尺部材を梁材に取付けるための取付け部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械におけるキャブ。
【請求項4】
ガイド部の上面がルーフ内装材を支持する支持部に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の建設機械におけるキャブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−264780(P2010−264780A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115507(P2009−115507)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】