説明

建設機械のシフトレバー装置

【課題】 ステアリングハンドルを握った手の指で操作レバーを操作するときに、操作レバーのグリップ部に形成した滑り止め用の溝による違和感を低減させる。
【解決手段】 ステアリングハンドル1を握った手の指が当接する操作レバー5のグリップ部7の部位において、グリップ部7の外周面に形成した滑り止め用の溝8のエッジ部8aの構成を、エッジ部8aによる指への当たりが滑らかな接触となるように曲面形状部8bとして構成する。これにより、指に対する当たりが柔らかなものとなり、操作レバーを操作する指に対する違和感や不快感を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後進の切替え操作と速度段の切替え操作とを一つの操作レバーにおいて行える建設機械のシフトレバー装置に関するものであり、特に、ステアリングハンドルの下方位置に配され、ステアリングハンドルの操作と一緒に操作レバーの操作を行える建設機械のシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械のシフトレバー装置では、操作レバーを前後方向に揺動させることにより、前進モードと中立モードと後進モードとに切替えることができ、また、操作レバーに設けたノブを回動させることにより、複数の速度段に切替えることができるシフトレバー装置が用いられている。
【0003】
また、例えば、フォークリフトやホイールローダ等の建設機械では、操作レバーを前後方向に揺動させる切替え操作が頻繁に行われることになる。そこで、ステアリングハンドルを把持している手の指を使って、操作レバーを前後方向に揺動させる切替え操作が行えるように配置したシフトレバー装置が採用されている。このようにシフトレバー装置を配設しておくことにより、ステアリングハンドルから手を離さなくても、操作レバーの前後進切替え操作を楽に行うことができる。
【0004】
ステアリングハンドルを把持している手の指を使って、操作レバーを前後方向に揺動させることができるシフトレバー装置としては、例えば、特許文献1において従来技術として示された変速レバー装置などがある。特許文献1において従来技術として示された変速レバー装置を本願発明でも従来技術として、その動作説明図を図7に示している。
【0005】
図7に示すように、変速段の切替えと前後進の切替えとを操作する変速レバー装置51は、ステアリングハンドル50の下方位置に配されている。ステアリングハンドル50を把持した左手の指によって、変速レバー装置51の操作レバー52を矢印A方向に操作することにより、前進位置(F)、中立位置(N)および後進位置(R)への切替えを行うことができる。
【0006】
また、操作レバー52の端部に設けられているグリップ53を矢印B方向に回動操作することによって、1速〜3速の間で変速段の切替えを行うことができる。即ち、グリップ53をB方向に回転させて、数字「1」(「2」,「3」)をそれぞれ指標54の位置に持ってくることによって、1速(2速,3速)を設定することができる。
【0007】
ところで、例えば、ホイールローダ等の建設機械に用いられる前後進切換用の操作レバーでは、車両走行時や作業時に生ずる振動や衝撃により、前後進の切換位置が勝手に切り換わってしまわないようにするため、各切換位置における保持力を強く設定している。
【0008】
もしも、操作レバー52を矢印A方向に揺動操作する際に、グリップ53も一緒に回動してしまうと、速度段位置が変わってしまうことになり、オペレータの意に反する作動となってしまう。
【0009】
そこで、建設機械等に用いられる前後進切換用の操作レバーでは、前後進の切換状態での保持力を強く設定すると共に、操作レバーの先端側に配されているグリップの各回転切換位置における保持力も、併せて強く設定されている。
【0010】
そのため、所定の保持力で保持されているグリップ53を回動させるためには、ある程度の回動力が必要となる。そこで、グリップ53をB方向に回転させるときに、グリップ53を摘んだ指が滑るのを防止するため、グリップ53の外周面上には複数本の溝が形成されており、この溝も凹凸の大きな溝として形成されている。グリップ53を摘んだ指が、これらの凹凸の大きな溝と係合することにより、摘んだ指がグリップ53上を滑らずにグリップ53をB方向に回転させることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実願平3−86901号(実開平5−30603号)のCD-ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1における従来例で示したように、ステアリングハンドル50を把持している手の指を使って、操作レバー52を前後方向に揺動させることを行う場合には、ステアリングハンドル50を把持した手の指で操作レバー52を前方向に揺動させることができるようにしている。そのため、指としては、操作レバー52のグリップ53に常に当接した状態が維持されることになる。
【0013】
フォークリフトやホイールローダ等の建設機械を例に挙げて説明を行えば、作業機械における荷役作業時には、前後進を繰り返して行うことが多く行われる。そのため、操作レバーを前後方向に揺動させる切替え操作が頻繁に行われることになる。このときの速度段としては、例えば、2速の速度段に入れた状態のままで、操作レバーを前後方向に揺動させる切替え操作が行われることになる。
【0014】
そして、操作レバーを前方向に揺動させることが常にできるようにするため、ステアリングハンドルを把持している手の指が、操作レバーのグリップ部に当接した状態が維持されることになる。特に、速度段が2速に入った状態のままだと、グリップ部に形成した滑り止め用の溝のエッジ部が、グリップ部に当接している指に当たる位置に来てしまうことになり、ステアリングハンドルを把持している手の指に溝のエッジ部が当たってしまい、指に違和感や不快感を与えてしまうことになる。
【0015】
操作レバーを前進モードの位置から中立モードの位置、あるいは、中立モードの位置から後進モードの位置に移動させるときには、指の腹部分側を使って操作レバーを操作することになるので、指の腹部分に溝のエッジ部分が当接しても問題とはならない。しかし、操作レバーを後進モードの位置から中立モードの位置、あるいは、中立モードの位置から前進モードの位置に移動させるときには、指の側部側を使って操作レバーを操作することになるので、溝のエッジ部が指の側部に当たると、指に違和感や不快感を与えてしまうことになる。
【0016】
従来から、ステアリングハンドルを把持している手の指を用いて、操作レバーの操作も行うことが頻繁に行われていても、今までにこの問題を認識して解決するための課題も解決手段も何ら講じられていなかった。
【0017】
本願発明では、操作レバーを前方向に操作するため、指が当接することになるグリップ部の部位における構成を改良して、グリップ部に当接した指に対して違和感や不快感を与えることなく、しかも、操作レバーを前方向に揺動させる操作性を良好に保つことができ、速度段を変更するためにグリップ部を回動させる操作性を良好に保つことができる建設機械のシフトレバー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明の課題は請求項1〜5に記載した建設機械のシフトレバー装置により達成することができる。
即ち、本願発明では、所定角度範囲内で前後方向に揺動可能に支持された操作レバー部と、前記操作レバー部に設けた基部に対して相対的に回動し、複数の速度段位置に切替えるグリップ部と、を備え、前記グリップ部の外周面に滑り止め用の溝が複数本形成され、ステアリングハンドルの下方位置に配された、建設機械のシフトレバー装置において、
前記ステアリングハンドルの操作中に、前記操作レバー部を揺動させる操作力の作用する前記グリップ部の部位が、前記滑り止め用の溝を構成するエッジ部による当たりが滑らかな接触となるように構成されてなることを最も主要な特徴としている。
【0019】
また、本願発明では、前記複数本の溝のうちで少なくとも一つの溝において、同溝を構成する一対の対向するエッジ部のうちで少なくとも一方のエッジ部が、前記グリップ部の周方向において、なだらかな曲面形状に形成されてなることを主要な特徴としている。
【0020】
更に、本願発明では、前記操作レバー部を揺動させる操作力の作用する前記グリップ部の部位には、前記滑り止め用の溝が形成されていないことを主要な特徴としている。
【0021】
更にまた、本願発明では、操作レバー部を揺動させる操作力の作用するグリップ部の部位が、所定の速度段位置としたグリップ部における後方側の部位であることを主要な特徴としている。
【0022】
また、本願発明では、前記ステアリングハンドルの操作平面と前記操作レバー部の揺動操作平面とが、略並行に配設されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明では、ステアリングハンドルの操作中に、操作レバー部を揺動させる操作力の作用するグリップ部の部位、言い換えると、ステアリングハンドルを把持している手の指の側部側が当接するグリップ部の部位における構成として、グリップ部に形成した滑り止め用の溝におけるエッジ部による当たりが、滑らかな接触となるように構成している。
尚、ステアリングハンドルの操作中とは、直進状態においてステアリングハンドルの回転操作を行っていない操作状態も、車両が旋回中において車両の旋回状態を維持している操作状態も含んでいるものである。
【0024】
このように構成しておくことによって、滑り止め用の溝のエッジ部が手の指の側部に当接したとしても、指に対して変な違和感や不快感を与えないですむ。そのため、長時間に亘ってステアリングハンドルを把持している手の指が、グリップ部に当接していたとしても、グリップ部に当接している指による操作レバー部の揺動操作が良好となり、前後進操作時における疲労も少なくなる。
【0025】
本願発明では、グリップ部に形成した複数本の溝のうちで少なくとも一つの溝における構成として、この溝を構成している一対の対向するエッジ部のうちで、上方側に位置するエッジ部が、グリップ部の周方向において、なだらかな曲面形状に形成しておくことができる。
【0026】
このように構成することによって、ステアリングハンドルを把持している手の指の側部が、滑り止め用の溝のエッジ部に当接していたとしても、指の側部が当接するのは、グリップ部の周方向においてなだらかな曲面形状に形成されたエッジ部であり、当接する指に対して優しい接触となることができる。特に、滑り止め用の溝における鋭角状になったエッジ部が、指の側部に当接することがないので、指に対して変な違和感や不快感を与えないですむ。
【0027】
フォークリフトやホイールローダ等の作業車両において、ステアリングハンドルを把持している手の指が、グリップに当接する頻度が高いのは、短時間の間に前後進を切替える積込み作業時であり、このときは、通常、1速もしくは2速の速度段に入れられている。
【0028】
そのときに、指の側部が当接するグリップ部の部位も特定される。そこで、本願発明では、指の側部を当接させるときにおいて、指の側部が当接するグリップ部の部位における構成として、その部位に滑り止め用の溝を形成しておかないようにも構成した。
【0029】
このように構成しておくことによって、指の側部をグリップ部に当接させても、そこには滑り止め用の溝が形成されていないことになる。そして、溝のエッジ部による影響が排除されることができ、グリップ部に当接している指に対して不快感や違和感等を与えずにすむ。そのため、作業車両を前後進させる操作が楽になり、作業車両の操縦に係わる疲労感も低減させることができる。
【0030】
また、エッジ部に形成するなだらかな曲面形状は、エッジ部の上部に形成しておくことも、下部に形成しておくことも、更には、上部と下部とに形成しておくことができる。これによって、グリップ部によって所定の速度段に切り換えられた場合に、指が当接する部位に形成された溝になだらかな曲面形状を形成しておくことができる。
【0031】
更に、ステアリングハンドルの操作平面と操作レバー部の揺動操作平面とが、略平行に配設しておくことにより、指による操作レバー部の操作が楽に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】操作ハンドル部に対する動作を説明する斜視図である。(実施例)
【図2】シフトレバー装置の外観平面図である。(実施例)
【図3】グリップ部の断面図である。(実施例)
【図4】グリップ部の斜視図である。(実施例)
【図5】他のグリップ部の斜視図である。(実施例)
【図6】別のグリップ部の斜視図である。(実施例)
【図7】変速レバー装置の動作を説明する上面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の作業車両のシフトレバー装置は、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0034】
図1に示すように、ステアリングコラム3の上端部には、スイッチボックス4とステアリングハンドル1とが設けられている。スイッチボックス4には、シフトレバー装置2と図示せぬライティングスイッチ装置とが設けられており、シフトレバー装置2とライティングスイッチ装置とは、スイッチボックス4を境にして左右両端側に配されている。
【0035】
また、ステアリングハンドル1のハンドル連結部1bには、ハンドル操作用の摘み1aが設けられており、ステアリングハンドル1を直接回転操舵させる代わりに、ハンドル操作用の摘み1aを持って回転操舵させることで、簡単にしかも速くステアリングハンドル1を回転させることができる。
【0036】
シフトレバー装置2は、例えば、ホイールローダ等の建設機械における車両を前進モード、中立モード及び後進モードに切替える装置であるとともに、車両における速度範囲を、例えば、4段階に切替えることができるスイッチとして構成されている。シフトレバー装置2の操作レバー5は、操作レバー部6とグリップ部7とから構成されており、ステアリングコラム3に設けたスイッチボックス4の左側から延出した配置構成となっている。
【0037】
操作レバー5を前方の切替位置(図2に示すFの位置。)に揺動させることで前進モードに入れることができ、後方の切替位置(図2に示すRの位置。)に揺動させることで後進モードに入れることができる。そして、操作レバー5を前進モードの位置と後進モードの位置との中間の位置である中立位置(図2に示すNの位置。)にしたときには、車両を前進も後進もさせない中立モードに入れることができる。
【0038】
また、シフトレバー装置2は、ステアリングハンドル1の下方位置に配されており、ステアリングハンドル1の回転操作平面と、操作レバー5の揺動操作平面とは、略平行な配置構成となっている。
【0039】
ステアリングハンドル1を把持した手25の指25aを伸ばした状態で、シフトレバー装置2の操作レバー5を操作することのできる位置、即ち、ステアリングハンドル1の左側を把持している状態(通常この状態では、ステアリングハンドル1を時計としてみたときに、9時を示す位置において左手の親指でステアリングハンドル1を引っ掛けている)にて、左手の指25aによって、操作レバー5を前進位置に切り換える操作が行える位置に、シフトレバー装置2は配されている。そして、テアリングハンドル1を把持した手25の指25aの側部で、操作レバー5を前方側に押すことにより、操作レバー5を前進モードに入れることができる。
【0040】
シフトレバー装置2の構成について、図2を用いて説明する。図2には、シフトレバー装置2の外観平面図を示しており、スイッチボックス4内の構成は破断面によって示している。尚、スイッチボックス4内におけるライティングスイッチ装置の構成の図示は、省略している。
【0041】
操作レバー5は、図2に示す揺動中心26を中心として、前後方向に約±15度の範囲で揺動するように構成されている。操作レバー5における揺動中心26の部分には、下方に向けた図示せぬ揺動軸が延出されており、この揺動軸はステアリングコラム3に形成した図示せぬ揺動軸受によって軸支されている。
【0042】
操作レバー5の揺動中心26付近からは、操作レバー5に対して直交する方向に2本の揺動腕14が延出しており、揺動腕14は、内壁が略W形状の箱状に構成された角度付与部材11の内部で揺動するように配置されている。運転者が操作レバー5を中立位置から前方向又は後方向に揺動させるときには、揺動腕14の側部に設けたボール12が、角度付与部材11の内壁に当接して、操作レバー5の揺動範囲を制限できるように構成されている。
【0043】
揺動腕14の両側部の各先端に設けたボール12は、図示せぬバネによって角度付与部材11の略W形状に形成されている内壁側に向かって突出するように付勢されている。ボール12が角度付与部材11の内壁に形成した略W形状の斜面を乗り越えるには、ボール12をバネの抗力に勝って、揺動腕14の中に没するようにさせなければならず、そのためには、所定の力を必要とする。この所定の力を操作レバー5に対して与えることによって、操作レバー5を前進モードに入る位置、中立モードに入る位置、後進モードに入る位置に移動させることができる。
【0044】
即ち、角度付与部材11の内壁に形成した略W形状の中央部における凹部に、ボール12が係合している状態が、操作レバー5が中立モードに入っている状態を示している。そして、図2において操作レバー5を実線で示した状態が、操作レバー5を中立モードに入れた状態を示している。
【0045】
図2において、揺動腕14が時計回り方向に揺動して、ボール12が角度付与部材11の内壁に形成した略W形状の傾斜面を乗り越えて、操作レバー5がF位置に来たときには、前進モードに入ることができる。また、揺動腕14が反時計回り方向に揺して、ボール12が角度付与部材11の内壁に形成した略W形状の傾斜面を乗り越えて、操作レバー5がR位置に来たときには、後進モードに入ることができる。この状態は、それぞれ二点鎖線で示している。
【0046】
操作レバー5の揺動範囲は、角度付与部材11の端部に形成した開口形状によって規制されている。即ち、操作レバー5の軸部6bが角度付与部材11の端部に形成した開口部に当接することによって、操作レバー5の揺動範囲が規制されている。操作レバー5の揺動範囲を規制する構成としては、角度付与部材11の端部に形成した開口形状によって規制する構成の代わりに、スイッチボックス4のケースに形成した操作レバー5を揺動可能とする開口部の開口端に、操作レバー5の揺動範囲を規制する機能を持たせておくこともできる。
【0047】
揺動腕14には、揺動接点部17が設けられており、スイッチボックス4に設けた揺動接点18a〜18cと揺動接点部17とが接触することにより、操作レバー5の揺動位置を検出することができる。図2において実線で示している状態が、揺動接点18bに揺動接点部17が接触している状態となっている。このとき、揺動接点部17と揺動接点18bとの接触によって、操作レバー5が中立モード位置にあることを検出することができる。また、二点鎖線で示している状態は、揺動接点18aと揺動接点部17とが接触している場合には、前進モード位置を検出することができ、揺動接点部17と揺動接点18cとが接触している場合には、後進モード位置を検出することができる。
【0048】
操作レバー5は、操作レバー部6とグリップ部7とを備えた構成となっている。操作レバー部6には、軸部6bと基部6aとを有しており、基部6aは軸部6bに固定されている。また、グリップ部7は、所定の回動範囲内において基部6aに対して回動可能に支承されている。基部6aの中央部表面には速度範囲を指示する「・」マークの指標10が付されている。
【0049】
グリップ部7を回動させて、グリップ部7の端部周面に記した数字「1」(「2」、「3」、「4」)を指標10に合わせることによって、車両の速度断を1速(2速、3速、4速)に設定することができる。グリップ部7と基部6aとの間に構成されているスイッチ機構は、一般的に用いられているスイッチ機構を用いておくことができるので、このスイッチ機構についての説明は省略する。
【0050】
ステアリングハンドル1を把持している手25の指25aによって、操作レバー5を前後方向に揺動させる操作を行ったときに、グリップ部7が回転して車両の速度段が切替わってしまうのを防止するため、グリップ部7を回転させるのには、所定の回転力を必要とするように構成されている。
【0051】
そのため、グリップ部7を回転させるときに、グリップ部7を把持している指が滑らないようにするため、グリップ部7の外周面には、複数本の滑り止め用の溝8が形成されている。
【0052】
ところで、例えば、本願発明のシフトレバー装置を装着している建設機械が、特に、ホイールローダやフォークリフト等の建設機械である場合には、荷役作業において車両の前後進操作が頻繁に行われることになる。このとき、速度段としては、通常1速か2速の速度段に入れた状態のままで、前後進操作が行われることになる。
【0053】
そしてこのとき、ステアリングハンドル1を把持した手25の指25aの側部が、操作レバー5のグリップ部7に形成されている滑り止め用の溝8のエッジ部8aに当接していると、エッジ部8aによる鋭角的な刺激が、指25aに対して常に作用することになる。そのため、作業者に対して違和感や不快感を与えてしまうことになる。
【0054】
そこで、本願発明では、例えば、速度段を1速または2速に入れたときに、操作レバー5を揺動させる操作力の作用する部位であって、指25aの側部に当接することになるグリップ部7の後方側(運転席側)の部位において、この部位での滑り止め用の溝8のエッジ部8aの構成として、図3に示すように曲面形状部8bとして構成している。即ち、指25aの側部に当接することになる滑り止め用の溝8のエッジ部8aが鋭角なエッジ部とならないようにするため、図3、図4に示すように、エッジ部8aを面取りするときの面取り径(一般にR径といわれている)が大きくなるように構成している。
【0055】
このように構成しておくことにより、指25aの側部に当接することになるエッジ部8aが、滑らかな曲面による面接触を行うことができるようになる。そして、操作レバー5を前方向に揺動させるために、操作レバー5のグリップ部7に当接させている指25aの側部に対する当たりが滑らかなものとなり、車両を前後進させるときの疲労感も軽減させることができる。
【0056】
滑り止め用の溝8には対向する一対のエッジ部8aが形成されているが、指25aの側部に対して刺激を与えるのは、一対のエッジ部8aの内で上方側に位置するエッジ部8aであるので、上方側に位置するエッジ部8aを曲面形状部8bに構成しておくことができる。曲面形状部8bを上下両方側に位置するエッジ部8aに構成しておくこともできる。
【0057】
グリップ部7を各速度段に入れたときにおいても、操作レバー5を前方向に操作する指25aの側部が当たるエッジ部8aに対しても、曲面形状部8bを構成しておくことができる。ただし、あまりエッジ部8aに対して曲面形状部8bを構成しておくと、滑り止め用の溝8としての機能が低下することになる。そのため、上述したように車両を前後進させるときに、よく使われる速度段に入れたときに指25aが当接するエッジ部8aに対して、曲面形状部8bを構成しておくことが望ましい構成となる。
【0058】
曲面形状部8bの構成として、上述したR径を大きく構成する説明を行ったが、R径を大きく構成する代わりに、特定の滑り止め用の溝8の構成として、溝の深さが浅くなるように構成しておくこともできる。
【0059】
また、図5に示すように、滑り止め用の溝8の構成としては、指25aが当接するグリップ部7の部位における溝20が、溝の長さが短く構成されており、しかも、溝の先端側における深さが浅く、幅の狭い溝として構成されている。このように構成しておくことにより、指25aに幅が狭くなった溝20の先端部側が当たっても、溝20の先端部側におけるエッジ部による刺激等の影響は、きわめて小さなものにすることができる。しかも、グリップ部7を回動させるときの滑り止めとしての機能は、十分に溝20に持たせておくことができる。
【0060】
また、指25aを幅が狭くなった溝20の先端部側に当接させる構成に代わりに、図6に示すように指25aが当接することになるグリップ部7の部位に溝を形成しておかない構成としておくこともできる。即ち、グリップ部7に形成した溝21aと溝21aとの間に、溝が形成されていない非形成部21bを形成した構成としている。
【0061】
このように構成しておくことで、操作レバー5を前方向に揺動させるためにグリップ部7に当接させていた指25aの側部には、溝8の影響を受けることがなく、しかも、グリップ部7を回動させるときの滑り止め機能をグリップ部7に形成した溝8に持たせておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るシフトレバー装置は、操作レバーを指の操作で揺動させるとともに、指が当接するグリップ部に滑り止め用の溝が形成されているものに対して、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・ステアリングハンドル、2・・・シフトレバー装置、6・・・操作レバー部、7・・・グリップ部、8・・・滑り止め用の溝、8a・・・エッジ部、8b・・・曲面形状部、16・・・接点スイッチ、20・・・短形の滑り止め用の溝、21a・・・溝、26・・・揺動中心、21b・・・溝間における溝の非形成部、50・・・ステアリングハンドル、51・・・変速レバー装置、52・・・操作レバー、53・・・グリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度範囲内で前後方向に揺動可能に支持された操作レバー部と、前記操作レバー部に設けた基部に対して相対的に回動し、複数の速度段位置に切替えるグリップ部と、を備え、前記グリップ部の外周面に滑り止め用の溝が複数本形成され、ステアリングハンドルの下方位置に配された、建設機械のシフトレバー装置において、
前記ステアリングハンドルの操作中に、前記操作レバー部を揺動させる操作力の作用する前記グリップ部の部位が、前記滑り止め用の溝を構成するエッジ部による当たりが滑らかな接触となるように構成されてなることを特徴とする建設機械のシフトレバー装置。
【請求項2】
前記複数本の溝のうちで少なくとも一つの溝において、同溝を構成する一対の対向するエッジ部のうちで少なくとも一方のエッジ部が、前記グリップ部の周方向において、なだらかな曲面形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の建設機械のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記操作レバー部を揺動させる操作力の作用する前記グリップ部の部位には、前記滑り止め用の溝が形成されていないことを特徴とする請求項1記載の建設機械のシフトレバー装置。
【請求項4】
操作レバー部を揺動させる操作力の作用するグリップ部の部位が、所定の速度段位置としたグリップ部における後方側の部位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の建設機械のシフトレバー装置。
【請求項5】
前記ステアリングハンドルの操作平面と前記操作レバー部の揺動操作平面とが、略平行に配設されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の建設機械のシフトレバー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−228645(P2010−228645A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79733(P2009−79733)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】