説明

建設機械のモニター装置

【課題】下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能な建設機械において、旋回角度をモニター画面に正確に反映させて建設機械の走行方向を安全にサポートする。
【解決手段】下部走行体11に対して上部旋回体13が図の矢印方向へ旋回したとき、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a,27bの3台の監視カメラは、クローラ20や樹木31や人物32の画像位置を変化させながら、キャブ14のモニター画面23に表示させる。このとき、3台の監視カメラによって俯瞰視した連続的な合成画像をモニター画面23に表示させる。従って、モニター画面23に表示された画像の時間的な変化から、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度を推定することができるので、オペレータはモニター画面23に表示された旋回角度を認識しながら下部走行体11の走行操作を行うことができるため、旋回角度が変化しても安全走行を実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械のモニター装置に関するものであり、特に、上部旋回体の旋回動作領域をモニター画面上で確認しつつ、上部旋回体や作業装置を運転操作することができる建設機械のモニター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられたショベル等の作業装置とによって大略構成されている。また、上部旋回体のフレーム上には運転室を構成するキャブが設けられていると共に、該運転席の前方にはモニター画面が配設されている。
【0003】
また、上部旋回体の後方部及び側方部には、後方監視カメラ及び側方監視カメラがそれぞれ設置されている。そして、後方監視カメラ及び側方監視カメラによって上部旋回体の後方視野及び側方視野を撮影し、撮影された後方視野及び側方視野は、モニター画面に表示できるように構成されている。従って、オペレータは、上部旋回体の後方視野及び側方視野をモニター画面上で確認しながら、上部旋回体や作業装置等を運転操作することができる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、建設機械の機体周辺、特に機体の後部死角周辺をキャブ内のモニター画面に映し出す技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、建設機械の後部に後方監視カメラを配置し、この後方監視カメラからの映像をキャブ内のモニター画面に表示することにより、オペレータは、前部を見て運転操作しながら後部周辺の死角部分もモニター画面によって確認することができる。
【0005】
さらに、建設機械におけるモニター画面の一つのディスプレイ上に複数の画像を並べて表示する技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術によれば、建設機械に後方撮像手段と側方撮像手段を設け、両者で撮影した画像(すなわち、建設機械の後部周辺の画像と側部周辺の画像)を一つのディスプレイ上に並べて表示している。このような合成画像をモニター画面に表示することによって、建設機械の周囲の物体や人物の位置や動きを正確に確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−140619号公報
【特許文献2】特開2009−167748号公報
【特許文献3】特開2009−113561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上部旋回体の旋回繰作が可能な建設機械では、下部走行体に対する上部旋回体の旋回角度によってキャブ内のオペレータから見た走行方向(すなわち、見掛けの走行方向)が変化するので、走行操作をしたときに何れの方向へ走行するのかが分からず危険であった。これに対し、角度センサを用いて下部走行体に対する上部旋回体の角度を検出してモニター画面に反映させ、旋回角度による見掛けの走行方向の変化を、実際の走行方向に合致するようにモニター表示することにより、オペレータは、下部走行体に対する上部旋回体の旋回角度が変わっても、モニター画面を見ながら安全性の高い走行運転を行うことができる。ところが、この方法では角度センサが必要になると共に、該角度センサが検出した旋回角度をモニター画面に反映させるためのセンサ制御回路が必要になるため、モニター画面の周辺要素のコストが高くなってしまうおそれがある。
【0008】
また、前記の各特許文献を含めた従来技術は、建設機械の後部や側部に設置した監視カメラで撮影された映像をモニター画面に映し出して、建設機械の周辺の人物や物体を確認することはできる。しかし、下部走行体に対する上部旋回体の旋回角度によって見掛けの走行方向が変化する場合に、オペレータが走行方向をモニター画面で確認しても瞬間的に実際の走行方向を正確に認識することはできない。すなわち、前記の各特許文献を含めた従来技術によるモニター画面では、上部旋回体の旋回繰作が可能な建設機械において、旋回角度が変化した場合に安全性の高い走行運転を行うことが難しい。
【0009】
そこで、下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能な建設機械において、角度センサを用いることなく、旋回角度をモニター画面に正確に反映させて建設機械の走行方向を安全にサポートするモニター装置を実現するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能であり、且つ、機械周辺を撮影するカメラを備え、前記カメラが撮影した画像をキャブ内に配置されたモニター画面に表示する建設機械のモニター装置であって、制御器が、前記上部旋回体に対する前記下部走行体の相対角度を、前記モニター画面に表示された画像の時間変化により推定し、推定された角度情報を上記モニター画面に表示させることを特徴とする建設機械のモニター装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、下部走行体に対して上部旋回体が旋回する建設機械において、該建設機械に付設されたカメラが機械周辺を撮影して、その画像をキャブ内のモニター画面に表示するとき、制御器が、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度をモニター画面に表示された画像の時間的な変化によって推定し、推定された角度情報(例えば、下部走行体の向きを示す矢印)をモニター画面に表示させている。これによって、上部旋回体が旋回していても、モニター画面には上部旋回体の正確な旋回角度の角度情報が表示される。従って、オペレータは、モニター画面に表示された上部旋回体の正確な角度情報(すなわち、矢印の方向)に基づいて下部走行体を走行させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記制御器が、上記上部旋回体に対する上記下部走行体の相対角度を推定するとき、上記モニター画面に表示された上記下部走行体の映像によって前記相対角度を補正することを特徴とする請求項1記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度を推定するときに、モニター画面に表示された下部走行体の映像によって、相対角度(すなわち、矢印の向き)の補正を行っている。従って、オペレータの視角感覚に合った正確な相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができるので、オペレータの安全走行に寄与することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記制御器が、上記上部旋回体に対する上記下部走行体の相対角度を推定するとき、上記上部旋回体の駆動情報によって前記相対角度を補正することを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度を推定するとき、上部旋

回体の駆動情報に基づいて相対角度の補正を行っている。従って、上部旋回体の駆動実体にマッチした正確な相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、上記制御器が、上記上部旋回体に対する上記上記下部走行体の相対角度を推定するとき、上記下部走行体の駆動情報によって前記相対角度を補正することを特徴とする請求項1、2又は3記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度を推定するとき、下部走行体の駆動情報に基づいて相対角度の補正を行っている。従って、下部走行体の駆動実体にマッチした正確な相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、上記カメラは上記建設機械に複数個設置されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、複数個のカメラが建設機械に設置されているので、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度(矢印の向き)を高精度にモニター画面に表示することができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、上記複数個のカメラの設置位置は、少なくとも、上記建設機械の後方及び左右の側方であることを特徴とする請求項5記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、複数個のカメラは、建設機械の後方及び左右の側方に設置されている。これにより、後方監視カメラと左右の側方監視カメラとの3個のカメラによって、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度(矢印の向き)の変化の様子をモニターすることができるので、オペレータの死角となる位置についてもモニター画面によって走行操作を行うことができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、上記複数個のカメラで撮影した画像を連続的に合成する画像処理装置をさらに備え、上記制御器が上記相対角度を推定して上記モニター画面に表示させた画像は、前記画像処理装置によって合成された合成画像であることを特徴とする請求項5又は6記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、さらに、複数個のカメラで撮影した画像を連続的に合成する画像処理装置を備えている。これにより、モニター画面に表示させる画像を合成画像にすることができるので、下部走行体の走行方向の算出を容易に行うことが可能となる。
【0024】
請求項8記載の発明は、上記画像処理装置により合成される合成画像は、上記複数個のカメラが撮影した画像を上記建設機械の情報に基づいて俯瞰視するように画像処理され、連続的に俯瞰視合成されて上記モニター画面に表示された画像であることを特徴とする請求項7記載の建設機械のモニター装置を提供する。
【0025】
この構成によれば、画像処理装置が合成した合成画像は、複数個のカメラが撮影した画像を俯瞰視して画像処理した連続的に俯瞰視合成画像である。これによって、モニター画面には俯瞰視合成画像が表示されるので、旋回角度が変化したときの走行方向をより直感的に認識することができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明によれば、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度を、モニター画面に表示された画像の時間的な変化によって推定し、推定された角度情報(下部走行体
の向きを示す矢印)をモニター画面に表示させている。従って、角度センサを用いることなく低コストで下部走行体の走行方向を確定することができる。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、モニター画面に表示された下部走行体の映像によって相対角度の補正を行っているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度(矢印の向き)をより正確にモニター画面に表示させることができる。これによって、オペレータによる下部走行体の走行操作の安全性をさらに高めることができる。
【0028】
請求項3記載の発明によれば、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度を推定するとき、上部旋回体の駆動情報に基づいて相対角度の補正を行っている。従って、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、上部旋回体の駆動実体にマッチした正確な相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができる。これにより、より精度よく相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができるので、下部走行体の走行時の安全性をさらに高めることが可能となる。
【0029】
請求項4記載の発明によれば、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度を推定するとき、下部走行体の駆動情報に基づいて相対角度の補正を行っている。従って、請求項1、2又は3記載の発明の効果に加えて、下部走行体の駆動実体にマッチした正確な相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができる。これにより、より精度よく相対角度(矢印の向き)をモニター画面に表示することができるので、下部走行体の走行時の安全性をさらに高めることが可能となる。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、複数個のカメラが建設機械に設置されているので、請求項1、2、3又は4記載の発明の効果に加えて、上部旋回体に対する下部走行体の相対角度(矢印の向き)を高精度にモニター画面に表示することができる。従って、下部走行体の走行時の安全性をさらに高めることが可能となる。
【0031】
請求項6記載の発明によれば、複数個のカメラは、建設機械の後方及び左右の側方の3箇所に設置されているので、請求項5記載の発明の効果に加えて、オペレータから直視することが困難な後方部分の視界を補う通常設置型のバック・サイドカメラを流用できるため、監視システムを低コストで実現することが可能となる。
【0032】
請求項7記載の発明によれば、モニター画面に表示させる画像を合成画像にすることができるので、請求項5又は6記載の発明の効果に加えて、下部走行体の走行方向の算出を容易に行うことが可能となる。
【0033】
請求項8記載の発明によれば、モニター画面には俯瞰視した合成画像が表示されるので、請求項7記載の発明の効果に加えて、旋回角度が変化したときの走行方向をより直感的に認識することができる。これによって、下部走行体の走行時の安全性をさらに高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した建設機械としての油圧ショベルの側面図。
【図2】本発明の一実施例に係るモニター装置を搭載した建設機械の上面図。
【図3】本発明の実施例に係る制御器の機能構成を示すブロック図。
【図4】建設機械の後部に1台の後方監視カメラを搭載して、下部走行体に対して上部旋回体を矢印の方向へ旋回する状態を示す建設機械の上面図。
【図5】下部走行体に対する上部旋回体が図4に示す位置へ旋回したときのモニター画面の画像。
【図6】図4の建設機械において、下部走行体に対して上部旋回体が矢印の方向へ旋回する過程を映し出したモニター画面の画像。
【図7】建設機械が3個の監視カメラを搭載して、下部走行体に対して上部旋回体を矢印の方向へ旋回する状態を示す建設機械の上面図。
【図8】下部走行体に対する上部旋回体が図7に示す位置に旋回したときのモニター画面の画像。
【図9】図7の建設機械において、下部走行体に対して上部旋回体が矢印の方向へ旋回する過程を映し出したモニター画面の画像。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能な建設機械において、角度センサを用いることなく、旋回角度をモニター画面に正確に反映させて建設機械の走行方向を安全にサポートするモニター装置を実現させるという目的を達成するために、下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能であり、且つ、機械周辺を撮影するカメラを備え、前記カメラが撮影した画像をキャブ内に配置されたモニター画面に表示する建設機械のモニター装置であって、制御器が、前記上部旋回体に対する前記下部走行体の相対角度を、前記モニター画面に表示された画像の時間変化により推定し、推定された角度情報を上記モニター画面に表示させることを特徴とする建設機械のモニター装置を提供することにより実現した。
【0036】
以下、本発明の実施形態による建設機械のモニター装置を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1乃至図9を参照しながら好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
図1は、本発明を適用した建設機械としての油圧ショベルの側面を示す図である。図1において、該油圧ショベル(建設機械)10は、下部走行体11上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。上部旋回体13には、キャブ(運転室)14と建屋18が設けられている他に、前方中央部にブーム15がブームシリンダ15aによって俯仰可能に取り付けられている。又、ブーム15の先端にはアーム16がアームシリンダ16aによって上下回動自在に取り付けられ、更に該アーム16の先端にはバケット17がバケットシリンダ17aによって可動自在に取り付けられている。
【0038】
また、上部旋回体13の建屋18内には、特に図示されていないが、バッテリ、作業機駆動用の油圧ポンプ、エンジン、各種の機器、及び補器等が配設され、ブーム15、アーム16、及びバケット17等をそれぞれのシリンダによって駆動するための動力ユニットが収納されている。また、下部走行体11の走行モータ19を回転駆動させてクローラ20を回し、油圧ショベル10を走行させるように構成されている。
【0039】
図2は、本発明の一実施例に係るモニター装置を搭載した建設機械の上面図を示す。建設機械10は、下部走行体11と、該下部走行体11上に旋回可能に搭載された上部旋回体13とを備えている。また、上部旋回体13の前方中央部には、ブーム、アーム、およびバケット等からなる作業機(作業装置)21が上下回動可能に取り付けられていると共に、前記上部旋回体13の前方一側部には運転室となるキャブ14が搭載されている。尚、符号20は下部走行体11のクローラを示す。
【0040】
前記キャブ14内には運転席22が設けられ、オペレータは運転席22に着座して上部旋回体13の旋回動作や作業機21の回動動作等の運転操作を行う。さらに、運転席22の前方にはモニター画面23が設置され、該モニター画面23により、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bで撮影した画像が画面表示される。また、運転席22の前部には下部走行体11を走行させるための走行レバー24が配置され、さらにキャブ14の後部にはモニター画面23の画像制御を行うための制御器25が配置されている。
【0041】
前記後方監視カメラ26は上部旋回体13の後端中央部に設置され、また、左右の側方監視カメラ227a、27bはそれぞれ上部旋回体13の後方部右側と後方部左側に設置されている。このとき、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bは、上部旋回体13の後方視野W1及び左右の側方視野W2、W3をそれぞれ撮影することができる。
【0042】
また、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bで撮影された後方視野W1及び左右の側方視野W2、W3は、モニター画面23によって単独画像または合成画像で表示できるように構成されている。従って、オペレータは、上部旋回体13の後方視野W1及び左右の側方視野W2、W3をモニター画面23の映像で確認しながら、上部旋回体13の旋回動作や作業機21の回動動作等を運転操作することができる。尚、矢印A,Bは上部旋回体13による作業機21の旋回動作方向を示している。
【0043】
図3は、本発明の実施例に係る制御器の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御器25は、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bが撮影した監視カメラ画像S1と、上部旋回体13の駆動情報S2と、下部走行体11の駆動情報S3とをそれぞれ入力して、モニター画面23に映し出される画像の制御を行う。すなわち、制御器25は、監視カメラ画像S1と上部旋回体13の駆動情報S2と下部走行体11の駆動情報S3とに基づいてモニター画面23の画像制御を行う。
【0044】
図4は、建設機械10の後部に1台の後方監視カメラ26を搭載して、該建設機械10の走行方向を太い矢印の方向としたとき、下部走行体11に対して上部旋回体13を細い矢印の方向へ旋回する状態を示す建設機械の上面図である。言い換えると、この図は建設機械1が後方監視カメラ26の1台のみを作動させている状態を示している。また、図5は、下部走行体11に対する上部旋回体13が図4に示す位置へ旋回したときのモニター画面23の画像である。
【0045】
すなわち、下部走行体11に対して、上部旋回体13が図4に示すような旋回角度にあると、モニター画面23には、図5に示すような映像が表示される。図5に示すように、モニター画面23には、後方監視カメラ26が撮影した上部旋回体13の後部とクローラ20の一部と樹木31とが映し出される。さらに、モニター画面23の左上部には、下部走行体11の傾き(すなわち、クローラ20の傾き)が角度情報として矢印で表示される。
【0046】
このとき、モニター画面23の左端の下部に映し出された下部走行体11(すなわち、クローラ20)の映像によって、制御器25で算出された旋回角度を補正することにより、より精度よく下部走行体11の旋回角度を算出することが可能になり、下部走行体11の走行時の安全性を向上させることができる。
【0047】
また、図3に示すように、制御器25が、上部旋回体13の駆動情報S2によって、算出された旋回角度を補正することにより、より精度よく旋回角度を算出してモニター画面23に表示することが可能となり、走行時の安全性が一層向上する。さらに、制御器25が、下部走行体11の駆動情報S3によって、算出された旋回角度を補正することにより、より精度よく旋回角度を算出することが可能となり、走行時の安全性がさらに向上させることができる。
【0048】
図6は、図4の建設機械10において、下部走行体11に対して上部旋回体13が細い矢印の方向へ旋回する過程を映し出したモニター画面23の画像である。すなわち、図6は、図4に示す建設機械10において、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度がゼロの位置から、上部旋回体13が矢印の方向へ旋回する過程を示している。
【0049】
図4において、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度がゼロの位置にあるときは、すなわち、クローラ20と上部旋回体13が平行方向にあるときは、図6(a)のモニター画面23に示すように、クローラ20が上部旋回体13の左右端に映し出され、樹木31の一部がモニター画面23の右隅に映し出される。このとき、モニター画面23の左上部には下部走行体11の方向(すなわち、クローラ20の方向)が垂直方向に矢印で表示される。すなわち、モニター画面23の左上部に表示された矢印の向きが旋回角度の角度情報である。
【0050】
次に、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度が図4の細い矢印の方向へ変化して行くと、図6(b)のモニター画面23に示すように、クローラ20が上部旋回体13のほぼ中央位置に映し出され、樹木31がモニター画面23のほぼ中央位置でクローラ20の後部に映し出される。このとき、モニター画面23の左上部には下部走行体11の方向(すなわち、クローラ20の方向)が右斜め上向きの矢印で表示される。
【0051】
さらに、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度が図4の矢印の方向へ変化して行くと、図6(c)のモニター画面23に示すように、クローラ20が上部旋回体13の左下隅の位置に映し出され、樹木31がさらにモニター画面23の左側に映し出される。このとき、モニター画面23の左上部には下部走行体11の方向(すなわち、クローラ20の方向)がやや右斜め上向きの矢印で表示されている。
【0052】
このようにして、モニター画面23に映し出される画像の位置が時間と共に変化する場合、後方監視カメラ26が撮影した監視カメラ画像の時間変化から、制御器25が下部走行体11の走行方向を算出することによって角度センサが不要になり、低コストで下部走行体11の走行方向を確定することができる。
【0053】
図7は、建設機械1が3個の監視カメラを搭載して、下部走行体11に対して上部旋回体13を細い矢印の方向へ旋回する状態を示す建設機械の上面図である。すなわち、この図は建設機械1が後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a,27bの3台の監視カメラを作動させている状態を示している。また、図8は、下部走行体11に対して上部旋回体13が図7に示す位置に旋回したときのモニター画面23の画像である。
【0054】
図8のモニター画面23は、後方監視カメラ26及び側方監視カメラ27a,27bの3台の監視カメラによる各画像を俯瞰視合成して映し出した状態を示している。すなわち、図7の各監視カメラの位置と図8のモニター画面23の合成画像とを対比すると、図8に示すように、左側の側方監視カメラ27bによってモニター画面23のA領域に人物32が映し出され、後方監視カメラ26によってモニター画面23のB領域に樹木31が映し出され、さらに、右側の側方監視カメラ27aによってモニター画面23のC領域にクローラ20の一部のみが映し出されている。このとき、モニター画面23の中央上部に
は、下部走行体11(すなわち、クローラ20)の方向(すなわち、角度情報)が矢印で表示される。すなわち、モニター画面23の中央上部に表示された矢印の向きが旋回角度の角度情報である。
【0055】
図9は、図7の建設機械10において、下部走行体11に対して上部旋回体13が細い矢印の方向へ旋回する過程を映し出したモニター画面23の画像である。
【0056】
図7において上部旋回体13に対して下部走行体11(クローラ20)が右上がりの旋回角度の位置にあるときは、図9(a)のモニター画面23に示すように、後部監視カメラ26によってB領域の中央部分に人物32が映し出され、右側の側方監視カメラ27aによってC領域の右端に樹木31が映し出され、左側の側方監視カメラ27bによってA領域にクローラ20のみが映し出される。このとき、モニター画面23の中央上部には下部走行体11の方向(すなわち、クローラ20の方向)が右上がりの矢印で表示される。
【0057】
次に、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度が図7の矢印の方向へ変化して行くと、図9(b)のモニター画面23に示すように、後部監視カメラ26によってB領域の左端に人物32が映し出され、右側の側方監視カメラ27aによってC領域の左端に樹木31が映し出され、左側の側方監視カメラ27bによってA領域にクローラ20のみが映し出される。このとき、モニター画面23の中央上部には下部走行体11の方向(すなわち、クローラ20の方向)が水平方向に矢印で表示される。
【0058】
さらに、下部走行体11に対する上部旋回体13の旋回角度が図7の矢印の方向へ変化して行くと、図9(c)のモニター画面23に示すように、左側の側部監視カメラ27bによってA領域の右端に人物32が映し出され、後方監視カメラ26によってB領域の右端に樹木31が映し出され、右側の側方監視カメラ27aによってC領域にクローラ20のみが映し出される。このとき、モニター画面23の中央上部には下部走行体11の方向(すなわち、クローラ20の方向)が右下がりの矢印で表示される。
【0059】
すなわち、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bなど複数の監視カメラを設置することにより、さらに精度よく旋回角度を算出することが可能になるので、走行時の安全性がさらに向上する。このとき、図7に示すように、監視カメラの位置を建設機械の後方と左右側方に存在させることにより、オペレータから直視することが困難な後方部分の視界を補う通常設置型のバック・サイドカメラを流用することができるため、監視システムをさらに低コストで実現することが可能となる。
【0060】
さらに、下部走行体11の走行方向を算出するモニター画面の画像が、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bの各監視カメラの画像を連続的に合成した合成画像にすることにより、下部走行体11の走行方向の算出を一層容易に行うことができる。このとき、モニター画面の合成画像を俯瞰視画像にすれば、下部走行体11の走行方向の算出をさらに容易に行うことができる。
【0061】
以上を要約すると、図3に示すような制御器25とモニター画面23とをシステム構成することにより、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bがそれぞれ撮影した監視カメラ画像S1の時間変化から、制御器25が下部走行体11の走行方向を算出することによって角度センサが不要になり、低コストで下部走行体11の走行方向を確定することができる。また、モニター画面23に映し出された下部走行体11の映像によって、算出された旋回角度を補正することにより、より精度よく下部走行体11の旋回角度を算出することが可能になり、走行時の安全性がさらに向上する。
【0062】
また、図3に示すように、制御器25が、上部旋回体13の駆動情報S2によって、算出された旋回角度を補正することにより、より精度よく旋回角度を算出することが可能となり、走行時の安全性が一層向上する。さらに、制御器25が、下部走行体11の駆動情報S3によって、算出された旋回角度を補正することにより、より精度よく旋回角度を算出することが可能となり、走行時の安全性をさらに向上させることができる。
【0063】
また、図7に示すように、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bなど複数の監視カメラを設置することにより、さらに精度よく旋回角度を算出することが可能になるので、走行時の安全性がさらに向上する。このとき、図7に示すように、監視カメラの位置が建設機械の後方と左右側方に存在させることにより、オペレータから直視することが困難な後方部分の視界を補う通常設置型のバック・サイドカメラを流用できるため、監視システムを低コストで実現することができる。
【0064】
さらに、下部走行体11の走行方向を算出するモニター画面の画像を、後方監視カメラ26及び左右の側方監視カメラ27a、27bの各監視カメラの画像を連続的に合成した合成画像にすることにより、下部走行体11の走行方向の算出を一層容易に行うことができる。このとき、モニター画面の合成画像を俯瞰視画像にすれば、下部走行体11の走行方向の算出をさらに容易に行うことができる。
【0065】
以上、本発明の具体的な実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る建設機械のモニター装置は、下部走行体に対する上部旋回体の旋回角度が変化しても、モニター画面によって正確な走行方向を確認することができるので、回転動作が可能な様々な建設機械に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 建設機械(油圧ショベル)
11 下部走行体
12 旋回機構
13 上部旋回体
14 キャブ
15 ブーム
15a ブームシリンダ
16 アーム
16a アームシリンダ
17 バケット
17a バケットシリンダ
18 建屋
19 走行モータ
20 クローラ
21 作業機
22 運転席
23 モニター画面
24 走行レバー
25 制御器
26 後方監視カメラ
27a、27b 側方監視カメラ
31 樹木
32 人物
1 後方視野
2 右側方視野
3 左側方視野
S1 監視カメラ画像
S2 上部旋回体の駆動情報
S3 下部走行体の駆動情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体に対して上部旋回体が旋回可能であり、且つ、機械周辺を撮影するカメラを備え、前記カメラが撮影した画像をキャブ内に配置されたモニター画面に表示する建設機械のモニター装置であって、
制御器が、前記上部旋回体に対する前記下部走行体の相対角度を、前記モニター画面に表示された画像の時間変化により推定し、推定された角度情報を上記モニター画面に表示させることを特徴とする建設機械のモニター装置。
【請求項2】
上記制御器は、上記上部旋回体に対する上記下部走行体の相対角度を推定するとき、上記モニター画面に表示された上記下部走行体の映像によって前記相対角度を補正することを特徴とする請求項1記載の建設機械のモニター装置。
【請求項3】
上記制御器は、上記上部旋回体に対する上記下部走行体の相対角度を推定するとき、上記上部旋回体の駆動情報によって前記相対角度を補正することを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械のモニター装置。
【請求項4】
上記制御器は、上記上部旋回体に対する上記下部走行体の相対角度を推定するとき、上記下部走行体の駆動情報によって前記相対角度を補正することを特徴とする請求項1、2又は3記載の建設機械のモニター装置。
【請求項5】
上記カメラは上記建設機械に複数個設置されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の建設機械のモニター装置。
【請求項6】
上記複数個のカメラの設置位置は、少なくとも、上記建設機械の後方及び左右の側方であることを特徴とする請求項5記載の建設機械のモニター装置。
【請求項7】
上記複数個のカメラで撮影した画像を連続的に合成する画像処理装置をさらに備え、上記制御器が上記相対角度を推定して上記モニター画面に表示させた画像は、前記画像処理装置によって合成された合成画像であることを特徴とする請求項5又は6記載の建設機械のモニター装置。
【請求項8】
上記画像処理装置により合成される合成画像は、上記複数個のカメラが撮影した画像を上記建設機械の情報に基づいて俯瞰視するように画像処理され、連続的に俯瞰視合成されて上記モニター画面に表示された画像であることを特徴とする請求項7記載の建設機械のモニター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−107395(P2012−107395A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255230(P2010−255230)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】