説明

建設機械のロードセンシング式油圧制御装置

【課題】建設機械の各油圧アクチュエータのうちブームシリンダに対する圧油の供給を他の油圧アクチュエータよりも優先するようにした建設機械の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】ブームシリンダBYCに対するブームアップ操作と、アームシリンダ18を同時操作したとき、ラインL8を介して可変絞り弁34に信号圧力BUPが供給されるので吐出ラインL1から吐出ラインL1aへの圧油流量が絞られ、アームシリンダへの圧油供給が抑制されるので、ブームシリンダへの圧油供給が必要十分な程度に確保される。すなわち、ブームアップ操作が圧油の供給において優先されて、ブームアップ操作と、旋回油圧モータを同時操作したときは、可変絞り弁36に信号圧力BUPが供給されるので吐出ラインL1から吐出ラインL1bへの圧油流量が絞られ旋回油圧モータへの圧油供給が抑制されるので、この場合もブームシリンダへの圧油供給が必要十分な程度に確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧制御装置に係り、特に建設機械の各油圧アクチュエータのうちブームシリンダに対する圧油の供給を他の油圧アクチュエータよりも優先するようにした建設機械の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械において、ブームは重量が大きいため、一般に、ブームアップ操作の際には大きな油圧力を必要とする。したがって、ブームシリンダに対するブームアップ操作時に他の油圧アクチュエータを同時操作する場合であってその負荷圧が比較的小さいときは、ポンプからの圧油が当該油圧アクチュエータの方へ優先され、ブームアップのためにブームシリンダへの圧油が必要量供給されないといった現象がおきる。
【0003】
建設機械は、例えばバケット、ブーム、アーム等の操作作業用或いは走行用等の各種油圧アクチュエータを備え、これらの油圧アクチュエータは、それぞれ方向切換弁を介して供給される油圧ポンプ、好ましくは可変容量ポンプからの圧油によって駆動されるよう構成されている。
【0004】
ところで、このような油圧作業回路においては、個々の油圧アクチュエータの必要圧油量の合計が油圧ポンプの吐出容量を超過すると、各油圧アクチュエータへの油量の分配が良好に行われず、いわゆる油圧アクチュエータの複合操作性が低下する。こうした問題を解決する方途として、図4(特許文献1の図10に対応する)に示されるように、可変容量ポンプ100から2つのアクチュエータ102、104への圧油の供給は、それぞれの方向切換弁106、108を介して行われる。ここでポンプ100と各方向切換弁106、108との間にはそれぞれ補助弁110、112が設けられ、そしてこれら補助弁に対して、その一方の端部110a,112aの一部には、特に、それぞれの方向切換弁のアクチュエータ供給油路内の圧力が補助弁開方向に印加され、また地方の端部110b、112bの一部には、特に、前記各アクチュエータ供給油路内の圧力の中の最高圧力が補助弁閉方向に印加されるように構成されている。したがって、このような回路によれば、アクチュエータ102、104の同時操作時には、低負荷側のアクチュエータに対する補助弁の開度が制限されるので、アクチュエータの複合操作性が向上される。
【0005】
しかしながら、前述の従来技術においては、補助弁が各々の切換弁とポンプとの間に配設されているので、アクチュエータの複合操作時には、ポンプから低圧側アクチュエータへの供給ラインが方向切換弁の戻り開度に関係なく前記補助弁により制限される。このため、このような補助弁を、例えば油圧ショベル等のようなメータアウト制御が必要なアクチュエータに適用した場合には、アクチュエータの動きに対して圧油の供給が不足し、キャビテーションが発生し、騒音上や構成機器の信頼性上の問題が往々にして発生する。なおこの場合、前記キャビテーションを防止すべく方向切換弁のメータアウト側の最大開度を制限するようにすると、そのアクチュエータの単独操作時に速度が低下し、作業性の問題が発生する。
【0006】
さらに、この種の油圧作業回路においては、例えば周囲温度が降下して作動油の粘度が上昇したとき、またはポンプがエンジンで駆動されこのエンジンの回転数が低下したときには、ポンプの吐出流量が減少するが、前述の従来技術においては前記ポンプの吐出流量の減少、すなわちポンプ流量特性の変動を調整することができないので、前述のようなポンプの駆動条件が変化した場合には、方向切換弁の操作量に対応する油圧アクチュエータの駆動速度が低下(変動)する等の不都合が避けられない(特許文献1)。
【0007】
こうした不都合を解決するものとして、図5(特許文献1の図2に対応する)に示されるように、複数の油圧アクチュエータを有する油圧ショベル等の油圧作業回路において、油圧アクチュエータの同時操作時における複合操作性を向上しかつキャビテーションの発生を防止できると共に、さらに必要に応じてポンプの流量特性を調整することのできる、比較的簡単な構成からなる油圧作業回路が開示されている。
【0008】
すなわち、図5の中央部分に示される合流弁40を配置し、右側の油圧作業回路10bのアームシリンダ14−6への圧油供給が不足する場合は、合流弁40および接続ライン54を介して左側の油圧作業回路10aから圧油が供給され、油圧アクチュエータのブームシリンダ14−2およびバケットシリンダ14−1への圧油供給が不足する場合は、右側のポンプ12bと接続されているポンプ吐出ライン20bから接続ライン54および合流弁40を介して右側の油圧作業回路10bからの圧油がポンプ吐出ライン20aに供給されるようになっている。
【0009】
【特許文献1】特許第3066050号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1においては、図5に示されるように、ブームシリンダ14−2とバケットシリンダ14−1とは同一のポンプ吐出ライン20aから並列に接続されており、したがって、これらが同時操作される場合、一般に、ブームよりも負荷圧の低いバケット側へ優先して圧油供給が行われ、ブームの操作がオペレータの操作指令どおりに遂行されないという難点がある。
【0011】
本発明者等は、上述した点に鑑み、鋭意検討した結果、ブームシリンダに対する圧油供給を他の油圧アクチュエータよりも優先するべく、少なくとも1つの他の油圧アクチュエータへの圧油供給をブームアップ操作時に抑制することで前記の難点が基本的に解決できることを突き止めた。
【0012】
したがって、本発明の目的は、建設機械の各油圧アクチュエータのうちブームシリンダに対する圧油の供給を他の油圧アクチュエータよりも優先するようにした建設機械のロードセンシング式油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明による建設機械のロードセンシング式油圧制御装置は、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、左右走行油圧モータ、ならびに旋回油圧モータの各油圧アクチュエータ用切換弁を介して共通のポンプ吐出ラインから圧油を供給すると共にメータアウト側に補償弁を有する建設機械のロードセンシング式油圧制御装置において、前記ポンプ吐出ラインには前記ブームシリンダ用切換弁との接続口が接続されており、さらに前記ブームシリンダ用切換弁と他の油圧アクチュエータ用切換弁とを接続する前記ポンプ吐出ライン上には、前記ブームシリンダ用切換弁がブーム上げ方向に操作されたとき少なくとも1つの前記他の油圧アクチュエータ用切換弁への圧油供給を抑制する抑制手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
その場合、前記抑制手段は前記ポンプ吐出ラインを絞る方向に作用する可変絞り弁で構成することができる。
【0015】
またその場合、前記可変絞り弁を2個設け、各々の可変絞り弁は前記ブームシリンダ用切換弁との接続口に対して、一方の可変絞り弁の下流にアームおよびバケットシリンダ用切換弁を接続配置し、他方の可変絞り弁の下流には左、右走行油圧モータ用切換弁および旋回モータ用切換弁を接続配置して構成することができる。
【0016】
またその場合、前記一方の可変絞り弁の下流にはアームおよびバケットシリンダ用切換弁を、他方の可変絞り弁の下流には旋回油圧モータ用切換弁を、さらに、前記2つの可変絞り弁の間にはブームシリンダ用および左、右走行油圧モータ用の切換弁を接続配置するよう構成することができる。
【0017】
さらにまた、前記可変絞り弁の下流に位置する油圧アクチュエータの最高負荷圧力により可変絞り弁の開度を拡大する方向に作用させることができる。
【0018】
さらにまた、前記一方の可変絞り弁の下流に位置する切換弁の最高負荷圧を検出し、この検出された圧力を他方の可変絞り弁に対しこれを絞り方向へ作用させるよう構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された本発明によれば、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、左右走行油圧モータ、ならびに旋回油圧モータの各油圧アクチュエータ用切換弁を介して共通のポンプ吐出ラインから圧油を供給すると共にメータアウト側に補償弁を有する建設機械のロードセンシング式油圧制御装置において、前記ポンプ吐出ラインには前記ブームシリンダ用切換弁との接続口が接続されており、さらに、前記ブームシリンダ用切換弁と他の油圧アクチュエータ用切換弁とを接続する前記ポンプ吐出ライン上には、前記ブームシリンダ用切換弁がブーム上げ方向に操作されたとき少なくとも1つの前記他の油圧アクチュエータ用切換弁への圧油供給を抑制する抑制手段を備えて構成したので、
ブームアップ操作時に他の同時操作中の油圧アクチュエータに優先してブームシリンダへ圧油が供給されるので、ブームアップ操作時、オペレータの操作指令に対し、より忠実なブーム駆動を遂行することが可能となり、よって、オペレータの操作上の違和感をなくすことができる。
【0020】
請求項2に記載された本発明によれば、抑制手段は前記ポンプ吐出ラインを絞る方向に作用する可変絞り弁で構成したので、抑制手段を比較的簡単な油圧回路要素で実現することができる。
【0021】
請求項3に記載された本発明によれば、前記可変絞り弁を2個設け、各々の可変絞り弁は前記ブームシリンダ用切換弁との接続口に対して、一方の可変絞り弁の下流にアームおよびバケットシリンダ用切換弁を接続配置し、他方の可変絞り弁の下流には左、右走行油圧モータ用切換弁および旋回モータ用切換弁を接続配置したので、ブームアップ操作時において、他のすべての油圧アクチュエータに対し、ブームシリンダへの圧油の供給を優先することができる。
【0022】
請求項4に記載された本発明によれば、前記一方の可変絞り弁の下流にはアームおよびバケットシリンダ用切換弁を、他方の可変絞り弁の下流には旋回油圧モータ用切換弁を、さらに、前記2つの可変絞り弁の間にはブームシリンダ用および左、右走行油圧モータ用の切換弁を接続配置するよう構成したので、ブームアップ操作と同時操作をすることが少ない左、右走行油圧モータ以外の油圧アクチュエータに対しブームシリンダへの圧油の供給を優先することができる。
【0023】
請求項5に記載された本発明によれば、前記可変絞り弁の下流に位置する油圧アクチュエータの最高負荷圧力により可変絞り弁の開度を拡大する方向に作用させるようにしたので、前記可変絞り弁の絞りの程度を下流に位置する油圧アクチュエータの最高負荷圧力により緩和し、前記油圧アクチュエータへの圧油供給をそれだけ多くすることができる。
【0024】
請求項6に記載された本発明によれば、前記一方の可変絞り弁の下流に位置する切換弁の最高負荷圧を検出し、この検出された圧力を他方の可変絞り弁に対しこれを絞り方向へ作用させるよう構成したので、ブームアップ操作指令のない状態でも、前記一方の可変絞り弁の下流に位置する切換弁への圧油の供給を前記他方の可変絞り弁の下流に位置する切換弁への圧油の供給よりも優先させることを当該下流に位置するそれぞれの切換弁の負荷圧に応じて選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に基づく実施例について添付図面の図1乃至図3を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明が適用される建設機械として代表的な油圧ショベル全体の概略構成を示す。同図1において、油圧ショベルSHVは、油圧モータにより駆動される下部走行体DRVの上に旋回機構RMを介して上部旋回体12が旋回自在に載置されている。上部旋回体12には、その前方一側部にキャブ14が設けられ、且つ、前方中央部にブーム16が俯仰可能に取り付けられている。又、ブーム16の先端にアーム20が上下回動自在に取り付けられ、更にアーム20の先端にバケット24が取り付けられている。なお、参照符号BCYはブーム駆動用の油圧シリンダ、18はアーム駆動用の油圧シリンダ、22はバケット駆動用の油圧シリンダである。同図1から明らかなように、ブーム16が水平な姿勢からブームアップ操作されるときは、ブームシリンダBCYへの負荷圧が非常に大きくなる。
【0027】
図2は、本発明による油圧制御装置を説明するための油圧回路図である。同図2において、参照符号30は可変容量ポンプであって、図示していない原動機により回転駆動される。吐出ラインL1に供給される可変容量ポンプ30の吐出流量は、斜板30aの傾転角により定められる。そして、この斜板30aの傾転角は、ラインL3から与えられるロードセンシング信号LSにより流量調整機構32を介して制御されるようになっている。
【0028】
前記吐出ラインL1の各端部には可変絞り弁34、36が図示のように配置されている。また、参照符号cはブームシリンダBYCへの圧油の給排を行う切換弁46との接続口であり、ブーム用の切換弁46の圧油供給ポートPと連通している。参照符号54は補償弁であって、その入り口側は切換弁46のタンクポートTに接続され、また出口側はタンクラインL2に接続されている。なお、ブームシリンダBYCへの圧油の給排は、切換弁46のポートPA、PBを介して管路PLにより行われる。
【0029】
参照符号60は逆止弁であってブームシリンダBYCの負荷圧を検出するためのラインLd上に設けられている。ラインL4は前記負荷圧検出のラインLdと接続されており、その両端部には逆止弁56、58が互いに逆向きに配置され、油圧制御装置の最高負荷圧を選択する。すなわち、逆止弁56の左方側ラインL4a上の圧力と、逆止弁58の右方側ラインL4b上の圧力および前記ラインL4上の圧力の中の最高圧力が接続口dを介してロードセンシング信号圧力としてラインL3に与えられる。
【0030】
ブームシリンダBYCに対しメータアウト側に配置された前記補償弁54は、その下側の圧油信号受部からラインL6を介して負荷圧検出信号が与えられ、それによりタンクラインL2への戻り流量を増大させるよう作用し、また、接続口dからの最高負荷圧が上側の圧油信号受部から与えられ、それによりタンクラインL2への戻り流量を絞るよう作用する。
【0031】
ブームシリンダBYC用の切換弁46の左方側には、ラインL4aの範囲に対応して、アーム用の切換弁44、バケット用の切換弁42、ならびに、オプション用の切換弁38、40が配置されている。また、ブームシリンダBYC用の切換弁46の右方側には、ラインL4bの範囲に対応して、左、右走行用の切換弁48、50ならびに、旋回用の切換弁52が配置されている。これら各切換弁には、ブーム用切換弁46の場合と同様、補償弁および負荷圧検出用の逆止弁が配置されている。(各切換弁および補償弁を簡略化して示す)
【0032】
前記可変絞り弁34は吐出ラインL1上の接続口cよりも下流側に配置されており、その上側受圧部R1にはラインL4aの圧力、すなわち、アーム、バケット用油圧シリンダ(図示せず)ならびにオプション用油圧アクチュエータの各負荷圧中の最も高い負荷圧がラインL7から与えられる。また、下側受圧部R2にはラインL4bの圧力、すなわち、左、右走行油圧モータ、旋回油圧モータ(図示せず)の各負荷圧中の最も高い負荷圧がラインL5から与えられる。
【0033】
前記受圧部R1を介してラインL7から与えられるラインL4aの圧力は、接続口cよりも下流側(図の左方側)にある吐出ラインL1aへの圧油流量を拡大するよう作用し、一方、前記受圧部R2を介してラインL5から与えられるラインL4bの圧力は、接続口cよりも下流側の吐出ラインL1aへの圧油流量を絞るよう作用する。
【0034】
参照符号BUPは、運転席のオペレータがブームアップ操作(図示せず)した場合に与えられる操作圧信号であって、ラインL8を介して切換弁46、可変絞り弁34、36にそれぞれ与えられる。
【0035】
ラインL8を介して補償弁34に与えられる前記操作圧信号BUPは、接続口cよりも下流側の吐出ラインL1aへの圧油流量を絞るよう作用する。また、ラインL8を介して可変絞り弁36に与えられる前記操作圧信号BUPは、ラインL1の下流側のラインL1bすなわち、旋回用切換弁52への圧油流量を絞るよう作用する。
【0036】
なお、吐出ラインL1に接続された左、右走行用の切換弁48、50はブーム用切換弁46と圧油供給に関し同格に配置されている。これは、左、右走行操作とブームアップ操作が同時に指令されることが稀であり、また、左、右走行油圧モータの必要圧油量および圧力がブームアップ時に比べ比較的小さいという事情による。
【0037】
図2のように構成された本発明による油圧制御装置では、例えばブームシリンダBYCに対するブームアップ操作と、バケットシリンダ22および、またはアームシリンダ18
を同時操作したとき、ラインL8を介して可変絞り弁34にブームアップ操作に対応して信号圧力BUPが供給されるので吐出ラインL1から吐出ラインL1aへの圧油流量が絞られ、バケットシリンダ22および、またはアームシリンダ18への圧油供給が抑制されるので、ブームシリンダBYCへの圧油供給が必要十分な程度に確保されることとなる。すなわち、ブームアップ操作が圧油の供給において優先される。
【0038】
その場合、ラインL7を介してバケットシリンダ22および、またはアームシリンダ18の負荷圧の高い方が受圧部R1に与えられ、可変絞り弁34の絞りを緩和するよう作用するので、これらシリンダ22、18への圧油供給が全く停止されることはない。
【0039】
また、ブームシリンダBYCに対するブームアップ操作と、旋回油圧モータを同時操作
したときは、可変絞り弁36に信号圧力BUPが供給されるので吐出ラインL1から吐出ラインL1bへの圧油流量が絞られ、切換弁52を介する旋回油圧モータへの圧油供給が抑制されるので、この場合もブームシリンダBYCへの圧油供給が必要十分な程度に確保されることとなる。すなわち、ブームアップ操作が優先される。
【0040】
さらにまた、バケットシリンダ22および、またはアームシリンダ18と旋回油圧モータとを同時操作したときは、(ブームアップ操作の有無に関らず)ラインL4b上の旋回油圧モータ負荷圧がラインL5を介して受圧部R2に与えられるので、当該ラインL5の負荷圧がラインL7のバケットシリンダ22および、またはアームシリンダ18の負荷圧より高い場合は可変絞り弁34により吐出ラインL1aへの圧油供給が絞られ、旋回油圧モータへの圧油供給はバケットシリンダ22および、またはアームシリンダ18よりも優先されることとなる。
【0041】
図3は、図2の可変絞り弁36の配置を切換弁46と48との間に可変絞り弁36aとして配置し、さらに、当該可変絞り弁36aの受圧部R3にラインL5を介してラインL4bの負荷圧を与え、受圧部R4にラインL7を介してラインL4aの負荷圧を与えた油圧制御装置の例である。この例では、左右走行用の切換弁48、50は、可変絞り弁36aの下流側の吐出ラインL1bと接続されている。
【0042】
図3では、ブームアップ用の信号圧力BUPが与えられているとき、他のすべての油圧アクチュエータに対して、同時操作時の圧油供給の優先性が、可変絞り弁34、36aにより確保される。また、同図3ではブーム用の切換弁46の右方側の切換弁48、50、52による検出負荷圧中の高い負荷圧が受圧部R3に与えられると共にラインL5を介して受圧部R2に与えられ、切換弁46の左方側の切換弁38、40、42、44による検出負荷圧中の高い負荷圧が受圧部R1に与えられると共にラインL7を介して受圧部R4に与えられる。
【0043】
したがって、ブームアップ操作をしない状態でも、右方側の切換弁48、50、52と左方側の切換弁38、40、42、44との間で同時操作される場合、負荷圧検出ラインL4aとL4b上の圧力の低い方の可変絞り弁34または36aを絞るよう作用することにより、負荷圧の高い方の油圧アクチュエータへの圧油供給を優先させるようになっている。
【0044】
以上、図2、3により、本発明の好適な実施例を説明したが、当業者であれば、これらの例に基づき種々変形することができる。例えば、可変絞り弁に代えて電磁流量制御弁を用い信号圧力BUPに対応する電気信号により流量抑制の制御を行うこと、また、図2、3において、受圧部R1、R2、R3、R4を設けない場合などを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明が適用される建設機械として代表的な油圧ショベル全体の概略構成を示す図である。
【図2】本発明による油圧制御装置を説明するための油圧回路図である。
【図3】図2の可変絞り弁の配置を変更した場合の油圧回路図である。
【図4】従来の油圧作業回路図である。
【図5】従来の他の油圧作業回路図である。
【符号の説明】
【0046】
12 上部旋回台
14 キャブ
16 ブーム
18 アームシリンダ
20 アーム
22 バケットシリンダ
24 バケット
30 可変容量ポンプ
30a 斜板
32 流量調整機構
34、36 可変絞り弁
38、40、42、44、46、48、50、52 切換弁
54 補償弁
56、58、60 逆止弁
BCY ブームシリンダ
BUP ブームアップ操作信号圧力
c、d 接続口
DRV 下部走行体
RM 旋回台
SHV 油圧ショベル
L1、L1a、L1b 吐出ライン
L2 タンクライン
L3 ロードセンシングライン
L4、L5、L6、L7、L8、Ld ライン
L4a、L4b 負荷圧検出ライン
R1、R2、R3、R4 受圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、左右走行油圧モータ、ならびに旋回油圧モータの各油圧アクチュエータ用切換弁を介して共通のポンプ吐出ラインから圧油を供給すると共にメータアウト側に補償弁を有する建設機械のロードセンシング式油圧制御装置において、
前記ポンプ吐出ラインには前記ブームシリンダ用切換弁との接続口が接続されており、さらに、前記ブームシリンダ用切換弁と他の油圧アクチュエータ用切換弁とを接続する前記ポンプ吐出ライン上には、前記ブームシリンダ用切換弁がブーム上げ方向に操作されたとき少なくとも1つの前記他の油圧アクチュエータ用切換弁への圧油供給を抑制する抑制手段を備えたことを特徴とする建設機械のロードセンシング式油圧制御装置。
【請求項2】
前記抑制手段は前記ポンプ吐出ラインを絞る方向に作用する可変絞り弁であることを特徴とする請求項1に記載された建設機械のロードセンシング式油圧制御装置。
【請求項3】
前記可変絞り弁を2個設け、各々の可変絞り弁は前記ブームシリンダ用切換弁との接続口に対して、一方の可変絞り弁の下流にアームおよびバケットシリンダ用切換弁を接続配置し、他方の可変絞り弁の下流には左、右走行油圧モータ用切換弁および旋回モータ用切換弁を接続配置したことを特徴とする請求項2に記載された建設機械のロードセンシング式油圧制御装置。
【請求項4】
前記一方の可変絞り弁の下流にはアームおよびバケットシリンダ用切換弁を、他方の可変絞り弁の下流には旋回油圧モータ用切換弁を、さらに、前記2つの可変絞り弁の間にはブームシリンダ用および左、右走行油圧モータ用の切換弁を接続配置するよう構成したことを特徴とする請求項2に記載された建設機械のロードセンシング式油圧制御装置。
【請求項5】
前記可変絞り弁の下流に位置する油圧アクチュエータの最高負荷圧力により可変絞り弁の開度を拡大する方向に作用させたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載された建設機械のロードセンシング式油圧制御装置。
【請求項6】
前記一方の可変絞り弁の下流に位置する切換弁の最高負荷圧を検出し、この検出された圧力を他方の可変絞り弁に対しこれを絞り方向へ作用させるよう構成したことを特徴とする請求項5に記載された建設機械のロードセンシング式油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92214(P2009−92214A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265969(P2007−265969)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】