説明

建設機械の冷却装置

【課題】シュラウドの下部にねじにより締結される蓋体を容易に開けることができる建設機械の冷却装置を提供することにある。
【解決手段】インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22とファンとの間に通風路を形成するシュラウド23が、その下部の傾斜部29に形成される開口30と、この開口30を塞ぐ蓋体31と、シュラウド23の右側板27の傾斜部29に設けられる雌ねじ部35と、この雌ねじ部35に螺合する雄ねじ部材34と、雌ねじ部34に対応して蓋体31に設けられ、雄ねじ部材34が挿入されるねじ挿入部31aとを有する。ねじ挿入部31aは切欠きとし、雄ねじ部材34と雌ねじ部35の螺合が緩んだ状態において、蓋体31を傾斜部29に沿って斜め下方に移動させることで、ねじ挿入部31aが雄ねじ部材34から離脱して、蓋体23が傾斜部29から外れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンと熱交換器の間に通風路を形成するシュラウドが、その下部に形成される開口と、この開口を塞ぐ蓋体と、開口を塞いだ状態にある蓋体を、雄ねじと雌ねじの螺合によりシュラウドの下部に締結する建設機械の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の冷却装置としては、例えば特許文献1に示される従来技術がある。この従来技術は、内部を流れる流体の熱を放熱する熱交換器と、この熱交換器に対向して配置され、この熱交換器に与える冷却風を生起させるファンと、ファンと熱交換器の間に形成される空間を覆い、ファンと熱交換器の間に通風路を形成するシュラウドとを備えている。
【0003】
シュラウドは、その下部に形成される開口と、この開口を塞ぐ蓋体と、開口を塞いだ状態にある前記蓋体を、雄ねじと雌ねじの螺合によりシュラウドの下部に締結する締結手段とを有している。
【0004】
締結手段は、雄ねじが形成された円柱部、およびこの円柱部の一端に形成された頭部とからなる雄ねじ部材、すなわちボルトと、シュラウドの下部に設けられ、雌ねじが形成された雌ねじ部と、雌ねじ部に対応して蓋体に設けられ、雄ねじ部材の円柱部が挿入されるねじ挿入部とを有している。雌ねじ部は、シュラウドの下部に設けられた孔と同心上において、シュラウドの下部の内面に固着してなる。ねじ挿入部は、孔からなる。
【0005】
つまり、シュラウドの下部に設けられた雌ねじ部の位置に、蓋体に設けられたねじ挿入部が配置されるように、シュラウドの下部の外側から蓋体により開口を塞ぎ、この状態で、ねじ挿入部に雄ねじ部材の円柱部を挿入して、この円柱部と雌ねじ部の雌ねじとを螺合させることによって、開口を塞いだ状態にある蓋体がシュラウドの下部に締結されるようになっている。なお、蓋体は、締結手段によって複数個所をシュラウドの下部に締結されている。
【0006】
このように構成された従来技術では、熱交換器やファンを清掃する際、作業者は、建設機械の本体の下方に潜り込んだ状態で、シュラウドの下部に蓋体を締結する複数の雄ねじ部材を取外して、蓋体を開ける。そして、シュラウド内の下部に溜まった塵埃を、ブロア等を使用して、シュラウドの下部の開口からシュラウドの外へ排出する。
【特許文献1】特開2003−136972公報(図2,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の従来技術では、シュラウドの下部の蓋体を開ける作業を、建設機械の本体の下方に潜り込んだ状態で行う。建設機械の本体の下方に形成される作業スペースは狭いので、作業者は、屈み込んだままで上体を反らせて上を向いた姿勢という、不自由な姿勢を強いられる。このため、蓋体を締結する複数の雄ねじ部材を取外して蓋体を開けるのは厄介であった。
【0008】
本発明は、前述の実情を考慮してなされたものであり、その目的は、シュラウドの下部にねじにより締結された蓋体を容易に開けることができる建設機械の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕前述の目的を達成するために、本発明は、車体を覆うカバー内に設けられた熱交換器と、この熱交換器に対向して配置されこの熱交換器に与える冷却風を生起させるファンと、このファンと前記熱交換器の間に形成される空間を覆って前記ファンと前記熱交換器との間に通風路を形成するシュラウドとを備え、前記シュラウドは、その下部に形成される開口と、この開口を塞ぐ蓋体と、前記開口を塞いだ状態にある前記蓋体を、前記シュラウドの下部に締結する締結手段とを有する建設機械の冷却装置において、前記締結手段が、雄ねじ部材と、前記シュラウドの下部に設けられた雌ねじ部と、この雌ねじ部に対応して前記蓋体に設けられ、前記雄ねじ部材が挿入されるねじ挿入部とを有し、前記ねじ挿入部は、前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部との螺合が緩んだ状態では前記雄ねじ部材から離脱する方向への前記蓋体の移動を許容する切欠きからなることを特徴とする。
【0010】
このように構成した本発明では、雄ねじ部材と雌ねじ部の螺合が緩んだ状態において、ねじ挿入部が、雄ねじ部材から離脱する方向への蓋体の移動を許容する。これにより、シュラウドの下部に蓋体を締結するための雄ねじ部材を取外さずに、蓋体を開けることができる。したがって、蓋体を容易に開けることができる。
【0011】
〔2〕前述の目的を達成するために、本発明は、車体を覆うカバー内に設けられた熱交換器と、この熱交換器に対向して配置されこの熱交換器に与える冷却風を生起させるファンと、このファンと前記熱交換器の間に形成される空間を覆って前記ファンと前記熱交換器との間に通風路を形成するシュラウドとを備え、前記シュラウドは、その下部に形成される開口と、この開口を塞ぐ蓋体と、前記開口を塞いだ状態にある前記蓋体を、前記シュラウドの下部に締結する締結手段とを有する建設機械の冷却装置において、
前記締結手段が、雄ねじ部材と、前記シュラウドおよび前記蓋体のいずれか一方に設けられる雌ねじ部と、前記シュラウドおよび前記蓋体のいずれか他方に設けられ前記雄ねじ部材が挿入されるねじ挿入部とを有し、
前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部との螺合が緩んだ状態で、前記蓋体を開く方向へ揺動可能に支持する揺動支持手段を備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成した本発明では、揺動支持手段は、雄ねじ部材と雌ねじ部との螺合が緩んだ状態で蓋体を開く方向へ揺動可能に支持する。これにより、作業者は、シュラウドの下部に蓋体を締結するための雄ねじ部材を取外さずに、また、蓋体を取外さずに、蓋体を揺動させることによって開けることができる。したがって、蓋体を容易に開けることができる。
【0013】
〔3〕本発明は、〔2〕記載の発明において、前記シュラウドが、前記熱交換器に対向して配置されるとともに前記ファンが挿入される板部と、この板部の下端から前記熱交換器側に延び、前記開口の板部側の縁部を形成するとともに、前記雌ねじ部および前記ねじ挿入部のいずれか一方が設けられる締結部とを有し、前記蓋体が、前記締結部に重ね合わされるとともに前記雌ねじ部および前記ねじ挿入部のいずれか他方が設けられる取付部と、この取付部から斜め下方に延び前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、前記揺動支持手段が、前記締結手段、前記締結部、および前記取付部から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、シュラウドの下部に蓋体を締結する雄ねじ部材と雌ねじ部の螺合を緩めた状態で、蓋体を開けることができる。これにより、シュラウドの下部に締結された蓋体を容易に開けることができ、したがってメンテナンス性の向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
本発明の建設機械の冷却装置の第1の実施形態について図を用いて説明する。図1は、第1の実施形態が適用される建設機械の一例である油圧ショベルを示す斜視図、図2は、図1に示す旋回体の斜視図、図3は、第1の実施形態が油圧ショベルの旋回体下部のフレームに取付けられた状態を斜め下方から見た場合の斜視図、図4は、第1の実施形態が油圧ショベルの旋回体下部のフレームに取付けられた状態を斜め上方から見た場合の斜視図、図5は、第1の実施形態に備えられるシュラウドの要部を示す断面図、図6は、図3に示す蓋体の平面図である。
【0016】
第1の実施形態は、図1に示す油圧ショベル1に備えられている。この油圧ショベル1は、図1に示すように、左右両側部のそれぞれに巻き掛けられた履帯2aを駆動して走行する走行体2と、油圧ショベル1の本体、すなわち、走行体2上に旋回可能に設けられる、車体としての旋回体3と、この旋回体3の前部中央に回動可能に結合されるブーム5、このブーム5に回動可能に結合されるアーム6、および、このアーム6に回動可能に結合されるバケット7を有する作業機4とを備えている。
【0017】
旋回体3は、作業機4の左側方に設けられる運転室8と、この運転室8および作業機4の後方に設けられる機械室9と、この機械室9の後方に設けられ旋回体3の後端部を構成するカウンタウェイト10とを備えている。
【0018】
図2に示すように、機械室9の後部は、上部カバー9a、左側部カバー9bおよび右側部カバー9cにより覆ってある。上部カバー9aは、開閉可能に設けてある。上部カバー9aの左側部には、機械室9内に空気を導く吸気口11を設けてあり、左側部カバー9bの上部には、吸気口12,13を設けてある。上部カバー9aの上面の右側部には、機械室9内から外部へ空気を導く排気口14を設けてあり、右側部カバー9cの上部には、排気口15を設けてある。
【0019】
第1の実施形態は、図3に示す冷却装置であり、内部を過給した空気が流れこの空気の熱を放熱する熱交換器、すなわちインタークーラ20と、内部をエンジン冷却水が流れこのエンジン冷却水の熱を放熱する熱交換器、すなわちラジエータ21と、内部を作動油が流れこの作動油の熱を放熱する熱交換器、すなわちオイルクーラ22とを備えている。また、こられインタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22に与える冷却風を生起させるファン(図示しない)を備えている。インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22は、冷却風の流れに対して並列に配置してある。前記ファンは、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22に対向するよう配置してある。
【0020】
また、第1の実施形態は、図3,4に示すように、前記旋回体3の下部を形成する旋回フレーム3aに固定され、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22と、ファンとの間に形成される空間を覆い通風路を形成するシュラウド23を備えている。図3において、24は、シュラウド23の前側部を形成する前側板であり、27は、シュラウド23の右側部を形成する右側板である。この右側板27は、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22に対向して配置されるとともに、ファンを挿入可能な円環状の枠部を形成してなるファン取付部28aが形成された板部28と、この板部28の下端から左斜め下方向へ延び、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22の下部に当接する傾斜部29とを有している。また、図4において、25は、シュラウド23の後側部を形成する後側板であり、26は、シュラウド23の上部を形成する上板である。
【0021】
インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22の左側方(図4の左斜め上側)において、前側板24と後側板25との間に形成される空間は、前記吸気口11〜13(図2参照)の下方に配置する。この空間は、吸気口11〜13から取込まれる空気を、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22へ導く通風路となる。
【0022】
上板26および右側板27は、前記上部カバー9a(図2参照)の中央部の下方に配置する。右側板27と前記右側部カバー9c(図2参照)との間の空間は、図示しないがエンジンが配置されるエンジン室となる。エンジンの出力軸には、ファンの回転軸を結合する。
【0023】
また、図3に示すように、シュラウド23の右側板27の傾斜部29において、ラジエータ21の下部およびオイルクーラ22の下部に対向する部分には、切欠きからなる開口30(破線部)を設けてある。この開口30は、板状の蓋体31により塞いである。この蓋体31の長手側の一方の(図3の上側)の縁部は、後述の第1締結手段によって傾斜部29に締結してあり、他方(図3の下側)の縁部は、ラジエータ21およびオイルクーラ22の下部に当接させてある。また、蓋体31の短手側の一方(図3の左側)の縁部は、後述の第2の締結手段によって傾斜部29に締結してあり、他方の縁部(図3の右側)は、図示しないが前側板24の下部に当接させてある。
【0024】
第1の締結手段は、図5に示すように、雄ねじ部材34と、雌ねじ部35と、この雌ねじ部35に対応して蓋体31に設けられ雄ねじ部材34が挿入されるねじ挿入部31a(図6参照)とを有している。雄ねじ部材34は、雄ねじ部(ねじ山)が形成された円柱部34aと、この円柱部34aの一端に形成され、スパナやドライバなどの所定の工具によりトルクを付与される頭部34bとを有する部材、例えばボルトからなる。雌ねじ部35は、傾斜部29に設けられた孔(図示しない)と同心上において、雌ねじ(ねじ山)が形成された円筒状の部材を、傾斜部29の内面に固着してなり、固定ナットとしての機能を有するものである。ねじ挿入部31aは、雄ねじ部材34の円柱部34a(雄ねじ)と雌ねじ部35の雌ねじとの螺合が緩んだ状態において、雄ねじ部材34の円柱部34aから離脱する方向、すなわち、傾斜部29に沿った斜め左下方向(図6の矢印A方向)への蓋31の移動を許容するように形成してある。
【0025】
第2の締結手段は、ボルト36(図3参照)と、傾斜部29に設けられ雌ねじ部35と同様に構成される別の雌ねじ部(図示しない)と、蓋体31に設けられボルト36が挿入されるボルト挿入孔31b(図6参照)とから構成してある。
【0026】
また、図3,6に示すように、ラジエータ21の下部に当接する蓋体31の縁部は、弾性を有する板材、例えばウレタン製の板材やゴム製の板材を成形してなる弾性板32から構成してある。オイルクーラ22の下部に当接する蓋体31の縁部も、弾性板32と同様の弾性板33から構成してある。これらの弾性板32,33は、シュラウド23の内側または外側へ湾曲して、雄ねじ部材34の円柱部34aからねじ挿入部31aが脱するのに十分な距離の蓋体31の移動を許容するようになっている。
【0027】
このように構成された第1の実施形態は、次のように動作する。
【0028】
エンジンの動作に伴ってファンが回転し、冷却風が生起される。つまり、旋回体3の上部カバー9aの吸気口11と左側部カバー9bの12,13とから、シュラウド23の前側板24と後側板25の間に形成される空間へ空気が流入し、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22に導かれる。そして、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22の放熱により暖められた空気が、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22とシュラウド23の右側板27との間に形成される空間と、右側板27の板部28に設けられたファン取付部28aと、エンジン室とを通過して、上部カバー9aの排気口14と右側部カバー9cの排気口15から排出される。
【0029】
また、第1の実施形態の清掃は、次のようにして行われる。
【0030】
インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22のそれぞれを清掃する際、はじめに、作業者は、旋回体3の上部カバー9aを開けて、シュラウド23の上部を露出させる。次に、シュラウド23の上板26を取外す。次に、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22の、ファンに対向する面のそれぞれに付着した塵埃を、ブロア等を使用してシュラウド23内の下部に落とす。
【0031】
次に、建設機械の本体の下方に潜り込み、旋回フレーム3aを覆うアンダーカバー(図示しない)を開けて、蓋体31を露出させる。次に、作業者は、蓋体31のを締結するボルト36を取外す。次に、各雄ねじ部材34を緩める。次に、蓋体31の弾性板32,33を、例えばシュラウド23の内側へ湾曲させながら、傾斜部29に沿った斜め左下方向(図6の矢印A方向)へ蓋体31を移動させ、これにより蓋体31の各ねじ挿入部31aを各雄ねじ部材34から離脱させて、蓋体31を開ける。次に、作業者は、シュラウド23の下部に溜まった塵埃を、ブロア等を使用して開口30からシュラウド23の外へ排出する。
【0032】
第1の実施形態によれば、次の効果を得られる。
【0033】
第1の実施形態では、雄ねじ部材34の円柱部34a(雄ねじ)と雌ねじ部35の雌ねじとの螺合が緩んだ状態において、ねじ挿入部31aが、雄ねじ部材34の円柱部34aから離脱する方向への蓋体31の移動を許容する。これにより、シュラウド23の下部に蓋体31を締結するための雄ねじ部材34を取外すことなく、蓋体31を開けることができる。したがって、蓋体31を容易に開けることができ、メンテナンス性の向上に貢献できる。
【0034】
第1の実施形態では、ラジエータ21に当接する蓋体31の縁部、オイルクーラ22に当接する蓋体31の縁部をそれぞれ弾性板32,33から構成してある。これにより、蓋体31により開口30を塞いだ状態における密閉性の向上と、雄ねじ部材34の円柱部34aから離脱する方向への蓋体31の移動の許容とを両立させることができる。
【0035】
また、第1の実施形態では、蓋体31の長手側の一方(図3の上側)の縁部において、第1の締結手段により、すなわち、切欠きからなるねじ挿入部31a、雄ねじ部材34および雌ねじ部35により、蓋体31を締結する以外に、蓋体31の短手側の一方(図3の左側)の縁部において、第2の締結手段により、すなわち、ボルト36、ボルト挿入孔31bおよび別の雌ねじ部(図示しない)により、蓋体31を締結してある。これにより、蓋体31を強固に固定することができる。
【0036】
また、第1の実施形態では、蓋体31を第2の締結手段により締結する箇所を、旋回フレーム3aや前側板24から離れた位置、例えば、シュラウド23の下部の中央部付近に設けてある。これにより、作業者は、ボルト36の取外しを容易に行うことができる。
【0037】
なお、第1の実施形態は、第1の締結手段以外に、第2の締結手段を設けた例であるが、本発明はこれに限るものではなく、第2の締結手段を省いてもよい。
【0038】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態について図を用いて説明する。図7は、第2の実施形態が油圧ショベルの旋回フレームに取付けられた状態を斜め上方から見た場合の斜視図、図8は、第2の実施形態に備えられるシュラウドの要部を示す断面図である。図7,8では、図3,6に示すものと同等のものに、図3,6に付した符号と同じ符号を付してある。
【0039】
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に、図1に示す油圧ショベル1に備えられている。第2の実施形態は、シュラウド23の右側板として、第1の実施形態とは異なる右側板40を備えている。
【0040】
図7に示すように、板部28と傾斜部29との間には、インタークーラ20、ラジエータ21およびオイルクーラ22側に向けて板部28の下端から延びた締結部41を設けてある。この締結部41には後述する蓋体42が締結される。この締結部41と板部28とがなす角度はほぼ直角にしてある。また、この締結部41は、図8に示すように、開口30の板部28側の縁部を形成している。また、この締結部41には、雌ねじ部およびねじ挿入部のいずれか一方、例えばねじ挿入部(図示しない)を形成してある。このねじ挿入部は、孔からなる。
【0041】
また、同図8に示すように、開口30を塞ぐ蓋体42は、断面形状を「へ」の字状に形成することによって、前記締結部41に例えば上方から重ね合わされて締結される取付部43と、この取付部43から左斜め下方に延びており、ラジエータ21およびオイルクーラ22の下部に当接して開口30を塞ぐ蓋部44とを設けてある。取付部43には、締結部41のねじ挿入部に対応する雌ねじ部46を設けてある。雄ねじ部材45は、雄ねじ部(ねじ山)が形成された円柱部45aと、この円柱部45aの一端に形成され、スパナやドライバなどの所定の工具によりトルクを付与される頭部45bとを有する部材、例えばボルトからなる。雌ねじ部46は、取付部43に形成され雄ねじ部材45の円柱部45aが挿入される孔(図示しない)と同心上において、雌ねじ(ねじ山)が形成された円筒状の部材を、取付部43の内面に固着してなり、固定ナットとしての機能を有するものである。
【0042】
つまり、ねじ挿入部の位置に雌ねじ部が配置されるように、取付部43が締結部41に上方から重ね合わされた状態で、締結部41のねじ挿入部に雄ねじ部材45の円柱部45aが挿入され、取付部43の雌ねじ部46に螺合することによって、取付部43が締結部41に締結される。
【0043】
すなわち、第2の実施形態では、蓋体42をシュラウド23の右側板40の下部に締結する締結手段を、前述した雄ねじ部材45、雌ねじ部46、ねじ挿入部、から構成してある。さらに、第2の実施形態は、雄ねじ部材45の円柱部45a(雄ねじ)と雌ねじ部46の雌ねじとの螺合が緩んだ状態において、蓋体42を開く方向(矢印B方向)へ揺動可能に支持する揺動支持手段を、締結手段、締結部41および取付部53から構成してある。
【0044】
このように構成した第2の実施形態では、雄ねじ部材45の円柱部45a(雄ねじ)と雌ねじ部46の雌ねじ螺合を緩めると、蓋体42に設けられたねじ挿入部と雄ねじ部材45の円柱部45aとの間の隙間により、ラジエータ21およびオイルクーラ22側への雄ねじ部材45の円柱部45aの傾倒が許容される。そして、雄ねじ部材45の円柱部45aを、ラジエータ21およびオイルクーラ22側へ傾倒させると、蓋体42の蓋部44が、ラジエータ21およびオイルクーラ22から離れる方向(矢印B方向)へ揺動して、蓋体42が開く。このようにして蓋体42が開いた状態は、蓋体42の自重により保持される。
【0045】
第2の実施形態によれば次の効果を得られる。
【0046】
第2の実施形態は、揺動支持手段により、すなわち、締結部41、取付部43、雄ねじ部材45および雌ねじ部46により、雄ねじ部材45の円柱部45a(雄ねじ)と雌ねじ部46の雌ねじとの螺合を緩めた状態において、蓋体42を開く方向へ揺動可能に支持する。これにより、作業者は、シュラウド23の下部に蓋体42を締結するための雄ねじ部材45を取外すことなく、また、蓋体42をシュラウド23の下部から取外すことなく、蓋体42を揺動させることにより開けることができる。したがって、蓋体42を容易に開けることができ、メンテナンス性の向上に貢献できる。
【0047】
なお、第2の実施形態では、シュラウド23の右側板40の締結部41にねじ挿入部を設け、蓋体42の取付部43に雌ねじ部46を設けて、取付部43を締結部41に上方から重ね合わせて雄ねじ部材45と雌ねじ部46により締結したものを、締結手段および揺動支持手段の一例として挙げたが、本発明はこれに限るものではなく、締結部41に雌ねじ部を設け、取付部43にねじ挿入部を設けて、取付部43を締結部41に下方から重ね合わせて雄ねじ部材と雌ねじ部により締結するものでもよい。このように構成したものでは、雄ねじ部材の円柱部と雌ねじ部の雌ねじとの螺合を緩めると、ねじ挿入部と雄ねじ部材の円柱部との間の隙間により、蓋部44がラジエータ21およびオイルクーラ22から離れる方向への蓋体42の揺動が許容されるとともに、蓋体42が自重により揺動する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施形態が適用される建設機械の一例である油圧ショベルを示す斜視図である。
【図2】図1に示す旋回体の斜視図である。
【図3】第1の実施形態が油圧ショベルの旋回フレームに取付けられた状態を斜め下方から見た場合の斜視図である。
【図4】第1の実施形態が油圧ショベルの旋回フレームに取付けられた状態を斜め上方から見た場合の斜視図である。
【図5】第1の実施形態に備えられるシュラウドの要部を示す断面図である。
【図6】図3に示す蓋体の平面図である。
【図7】第2の実施形態が油圧ショベルの旋回フレームに取付けられた状態を斜め下方から見た場合の斜視図である。
【図8】第2の実施形態に備えられるシュラウドの要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 旋回体(本体)
3a 旋回フレーム
9 機械室
10 カウンタウェイト
11〜13 吸気口
14,15 排気口
23 シュラウド
27 右側板
28 板部
28a ファン取付部
29 傾斜部
30 開口
31 蓋体
31a ねじ挿入部
31b ボルト挿入孔
32,33 弾性板
34 雄ねじ部材
34a 円柱部(雄ねじ)
34b 頭部
35 雌ねじ部
36 ボルト
40 右側板
41 締結部
42 蓋体
43 取付部
45 雄ねじ部材
45a 円柱部(雄ねじ)
45b 頭部
46 雌ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を覆うカバー内に設けられた熱交換器と、この熱交換器に対向して配置されこの熱交換器に与える冷却風を生起させるファンと、このファンと前記熱交換器の間に形成される空間を覆って前記ファンと前記熱交換器との間に通風路を形成するシュラウドとを備え、
前記シュラウドは、その下部に形成される開口と、この開口を塞ぐ蓋体と、前記開口を塞いだ状態にある前記蓋体を、前記シュラウドの下部に締結する締結手段とを有する建設機械の冷却装置において、
前記締結手段が、雄ねじ部材と、前記シュラウドの下部に設けられた雌ねじ部と、この雌ねじ部に対応して前記蓋体に設けられ、前記雄ねじ部材が挿入されるねじ挿入部とを有し、
前記ねじ挿入部は、前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部との螺合が緩んだ状態では前記雄ねじ部材から離脱する方向への前記蓋体の移動を許容する切欠きからなることを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項2】
車体を覆うカバー内に設けられた熱交換器と、この熱交換器に対向して配置されこの熱交換器に与える冷却風を生起させるファンと、このファンと前記熱交換器の間に形成される空間を覆って前記ファンと前記熱交換器との間に通風路を形成するシュラウドとを備え、
前記シュラウドは、その下部に形成される開口と、この開口を塞ぐ蓋体と、前記開口を塞いだ状態にある前記蓋体を、前記シュラウドの下部に締結する締結手段とを有する建設機械の冷却装置において、
前記締結手段が、雄ねじ部材と、前記シュラウドおよび前記蓋体のいずれか一方に設けられる雌ねじ部と、前記シュラウドおよび前記蓋体のいずれか他方に設けられ前記雄ねじ部材が挿入されるねじ挿入部とを有し、
前記雄ねじ部材と前記雌ねじ部の螺合が緩んだ状態で、前記蓋体を開く方向へ揺動可能に支持する揺動支持手段を備えることを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項3】
請求項2記載の発明において、
前記シュラウドが、前記熱交換器に対向して配置されるとともに前記ファンが挿入される板部と、この板部の下端から前記熱交換器側に延び、前記開口の板部側の縁部を形成するとともに、前記雌ねじ部および前記ねじ挿入部のいずれか一方が設けられる締結部とを有し、
前記蓋体が、前記締結部に重ね合わされるとともに前記雌ねじ部および前記ねじ挿入部のいずれか他方が設けられる取付部と、この取付部から斜め下方に延び前記開口を塞ぐ蓋部とを有し、
前記揺動支持手段が、前記締結手段、前記締結部および前記取付部から構成されることを特徴とする建設機械の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−55443(P2007−55443A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243065(P2005−243065)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】