説明

建設機械の旋回フレーム構造

【課題】エンジン支持部材付近のデッドスペースを有効に活用できる建設機械の旋回フレーム構造の提供。
【解決手段】テールフレーム2の両側壁を形成するIビーム3,4のそれぞれに支持されるエンジンブラケット6に、コントロールバルブ10を支持する油圧部品支持部材7を一体に設けた構成にしてある。油圧部品支持部材7等とコントローバルブ10との間には、コントロールバルブ10を保持する台座8,9を備えている。油圧部品支持部材7は、エンジンブラケット6の補強部材、及びテールフレーム2の補強部材を兼ねている。また、この油圧部品支持部材7は、両端付近に、応力集中を緩和させる切り欠き7a,7bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械のテールフレームを有する旋回体に備えられる旋回フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す斜視図である。この図6に示すように油圧ショベルは、走行体20上に旋回体21が配置されており、この旋回体21に本発明の対象としている旋回フレーム22が備えられている。
【0003】
この旋回フレーム22の従来構造として、例えば特許文献1に示されるものがある。図7は、この特許文献1に示される従来の旋回フレーム構造を示す平面図、図8は図7に示す旋回フレーム構造の側断面図である。
【0004】
これらの図7,8に示す従来の旋回フレーム構造は、前側位置に旋回輪及び旋回装置が装着されるセンタフレーム23を備え、後側位置にテールフレーム24を備えている。テールフレーム24は、両側壁を形成するフレーム部材29,30と、これらのフレーム部材29,30に接続される横ビーム31,32とを備えている。横ビーム31,32上には、エンジンを固定する別体のブラケットが取り付けられるようになっている。すなわち、横ビーム31,32は、テールフレーム24の強度部材を構成すると共に、エンジン支持部材を構成している。
【特許文献1】特許第2719469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した図7,8に示す従来技術は、例えば横ビーム31の付近がデッドスペースとなっていて、有効活用が図られていなかった。特に昨今、このような旋回フレーム構造を有する建設機械では旋回体の小型化が要望されているが、この旋回体の小型化の実現のためには、デッドスペースをどのように有効活用するかが大きな問題であった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、エンジン支持部材付近のデッドスペースを有効に活用できる建設機械の旋回フレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、テールフレームの両側壁を形成するフレーム部材のそれぞれに接続されるエンジン支持部材を備えた建設機械の旋回フレーム構造において、上記エンジン支持部材に、所定の油圧部品を支持する油圧部品支持部材を一体に設けたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、エンジン支持部材に一体に油圧部品支持部材を設けたことから、従来では他の場所に設置されていた所定の油圧部品を、この油圧部品支持部材付近に配置することができる。したがって、エンジン支持部材付近のデッドスペースを所定の油圧部品の配置スペースとして有効に活用できると共に、所定の油圧部品が設置されていたスペースの削減が可能となる。
【0009】
また本発明は、上記発明において、上記油圧部品支持部材と上記所定の油圧部品との間に、上記所定の油圧部品を保持する台座を備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、所定の油圧部品を台座を介して、油圧部品支持部材によって安定して保持、例えば水平保持させることができる。
【0011】
また本発明は、上記発明において、上記油圧部品支持部材が、上記エンジン支持部材の補強部材、及び上記テールフレームの補強部材を兼ねることを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、エンジンの安定保持を実現できると共に、大きな強度を有するテールフレームを実現できる。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記油圧部品支持部材が、応力集中を緩和させる切り欠きを有することを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、当該建設機械によって実施される作業に伴ってエンジン支持部材部分にかかる負荷による油圧部品支持部材の変形を切り欠きを介して滑らかに進行させることができ、作業中の負荷による油圧部品支持部材部分の破損を防止できる。
【0015】
また本発明は、上記発明において、上記テールフレームが、その底部に、上記油圧部品支持部材に対する上記所定の油圧部品の着脱を可能にする穴を有することを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、テールフレームの底部の穴を介して、所定の油圧部品の交換を容易に行なうことができる。
【0017】
また本発明は、上記発明において、上記所定の油圧部品が、コントロールバルブであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、エンジン支持部材に油圧部品支持部材を一体に設けたことから、この油圧部品支持部材によって所定の油圧部品を支持させることにより、従来にあってはエンジン支持部材付近に形成されていたデッドスペースを所定の油圧部品の配置スペースとして有効に活用することができる。これに伴い、従来では上述の所定の油圧部品が配置されていたスペースを削減することが可能となり、当該建設機械の旋回体の小型化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明に係る建設機械の旋回フレーム構造を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る建設機械の旋回フレーム構造の一実施形態を示す斜視図、図2は図1に示す状態から一方の側壁を形成するIビームを除いた状態を示す斜視図である。図3は図1に示す状態から台座及びコントロールバルブを除いた状態を示す斜視図、図4は図3に示す状態から一方の側壁を形成するIビームを除いた状態を示す斜視図、図5は図1に示す状態から両側壁を形成するIビームそれぞれの上フランジ、台座、及びコントロールバルブを除いた状態を示す平面図である。
【0021】
これらの図1〜5に示すように、本実施形態も例えば油圧ショベルに備えられる旋回フレーム構造であり、前側位置に旋回輪および旋回装置が装着されるセンタフレーム1を備え、後側位置にテールフレーム2を備えている。テールフレーム2は、両側壁を形成するフレーム部材、すなわちIビーム3,4と、これらのIビーム3,4間に配置されて、これらのIビーム3,4に接続され、図示しないエンジンを支持するエンジン支持部材、すなわちエンジンブラケット5,6とを備えている。
【0022】
また本実施形態は特に、エンジンブラケット6に一体に例えば溶接され、所定の油圧部品例えばコントロールバルブ10を支持する油圧部品支持部材7を備えている。この油圧部品支持部材7は、エンジンブラケット6の補強部材を兼ねると共に、図5等に示すようにその両端がIビーム3の側板3a、Iビーム4の側板4aに例えば溶接されていて、テールフレーム2の補強部材も兼ねている。油圧部品支持部材7の両端付近には例えば半円形状の応力集中を緩和させる切り欠き7a,7bをそれぞれ形成してある。
【0023】
図2等に示すように、油圧部品支持部材7とコントロールバルブ10との間には台座8を配置してあり、センタフレーム1の底部とコントロールバルブ10との間にも台座9を配置してある。台座8は油圧部品支持部材7に例えばボルトによって固定してあり、台座9はセンタフレーム1の底部に例えばボルトによって固定してある。これらの台座8,9によって例えばコントロールバルブ10は、テールフレーム2の底部にほぼ平行となるように水平保持されている。
【0024】
コントローバルブ10の直下のテールフレーム2の底部には、油圧部品支持部材7に対するコントロールバルブ10の着脱を可能にする穴11を形成してある。
【0025】
このように構成した本実施形態は、エンジンブラケット6に一体に油圧部品支持部材7を設けたことから、従来では他の場所に設置されていたコントロールバルブ10を、この油圧部品支持部材7付近、例えば油圧部品支持部材7の上側に配置することができる。したがって、エンジンブラケット6付近のデッドスペースをコントロールバルブ10の配置スペースとして有効に活用できると共に、コントロールバルブ10が設置されていたそれまでのスペースを削減でき、この油圧ショベルの旋回体の小型化を実現できる。
【0026】
また、油圧部品支持部材7等の上に設置した台座8,9を介してコントロールバルブ10を支持する構成にしてあることから、このコントロールバルブ10を安定に保持、例えば上述したように安定して水平保持させることができる。
【0027】
また、油圧部品支持部材7が、エンジンブラケット6の補強部材、及びテールフレーム2の補強部材を兼ねることから、図示しないエンジンの安定保持を実現できると共に、大きな強度を有するテールフレーム2を実現でき、安定した信頼性の高い旋回フレーム構造とすることができる。
【0028】
また、油圧部品支持部材7が、応力集中を緩和させる切り欠き7a,7bを有することから、当該油圧ショベルによって実施される作業に伴ってエンジンブラケット6部分にかかる負荷による油圧部品支持部材7の変形を切り欠き7a,7bを介して滑らかに進行させることができ、作業中の負荷による油圧部品支持部材7付近の破損を防止できる。
【0029】
また、テールフレーム2の底部に穴11を形成してあることから、この穴11を介してコントロールバルブ10の交換を容易に行なうことができる。
【0030】
なお、上述した実施形態は、油圧部品支持部材7で支持される所定の油圧部品としてコントロールバルブ10を備えているが、このコントロールバルブ10の代りにオプション用バルブ、低圧用バルブ、あるいは油圧配管等の油圧部品を備えるようにしてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、油圧部品支持部材7の上部にコントロールバルブ10、すなわち所定の油圧部品を設けてあるが、油圧部品支持部材7の下側に所定の油圧部品を取り付けた構成にしてもよい。
【0032】
また、穴11を閉じるカバーをテールフレーム2の底部に取り付けた構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る建設機械の旋回フレーム構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す状態から一方の側壁を形成するIビームを除いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す状態から台座及びコントロールバルブを除いた状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す状態から一方の側壁を形成するIビームを除いた状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示す状態から両側壁を形成するIビームそれぞれの上フランジ、台座、及びコントロールバルブを除いた状態を示す平面図である。
【図6】建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す斜視図である。
【図7】従来の旋回フレーム構造を示す平面図である。
【図8】図7に示す旋回フレーム構造の側断面図である。
【符号の説明】
【0034】
2 テールフレーム
3 Iビーム(フレーム部材)
3a 側板
4 Iビーム(フレーム部材)
4a 側板
5 エンジンブラケット(エンジン支持部材)
6 エンジンブラケット(エンジン支持部材)
7 油圧部品支持部材
7a 切り欠き
7b 切り欠き
8 台座
9 台座
10 コントロールバルブ(油圧部品)
11 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テールフレームの両側壁を形成するフレーム部材のそれぞれに接続されるエンジン支持部材を備えた建設機械の旋回フレーム構造において、
上記エンジン支持部材に、所定の油圧部品を支持する油圧部品支持部材を一体に設けたことを特徴とする建設機械の旋回フレーム構造。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記油圧部品支持部材と上記所定の油圧部品との間に、上記所定の油圧部品を保持する台座を備えたことを特徴とする建設機械の旋回フレーム構造。
【請求項3】
上記請求項1記載の発明において、
上記油圧部品支持部材が、上記エンジン支持部材の補強部材、及び上記テールフレームの補強部材を兼ねることを特徴とする建設機械の旋回フレーム構造。
【請求項4】
上記請求項1記載の発明において、
上記油圧部品支持部材が、応力集中を緩和させる切り欠きを有することを特徴とする建設機械の旋回フレーム構造。
【請求項5】
上記請求項1記載の発明において、
上記テールフレームが、その底部に、上記油圧部品支持部材に対する上記所定の油圧部品の着脱を可能にする穴を有することを特徴とする建設機械の旋回フレーム構造。
【請求項6】
上記請求項1記載の発明において、
上記所定の油圧部品が、コントロールバルブであることを特徴とする建設機械の旋回フレーム構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−37358(P2006−37358A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214561(P2004−214561)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】