説明

建設機械の旋回フレーム

【課題】 板厚寸法を厚くすることなく左,右の縦板と前板の強度を高め、作業装置を安定的に支持できようにする。
【解決手段】 作業装置10を支持するセンタフレーム12の左,右の縦板14,15間には、底板13から上側に延びた前面板17と前面板17の頂部から下側に向けて延びた後面板18とからなる山形状の前板16を設ける。これにより、前板16は、後面板18の分だけ左,右の縦板14,15間を強固に連結することができ、作業装置10からの掘削反力を各縦板14,15と共に受承することができ、作業装置10の支持強度を高めることができる。また、前板16の後面板18には、切欠部18Aを設けることにより、底板13の油圧機器取付部19にセンタジョイント8、旋回モータ9等の油圧機器を配設でき、またメンテナンス作業等を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に用いて好適な建設機械の旋回フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に設けられた作業装置とにより構成されている。また、上部旋回体は、下部走行体上に旋回可能に支持された旋回フレームと、該旋回フレームの前側に設けられたキャブと、前記旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、前記作業装置との重量バランスをとるために該エンジンの後側に位置して旋回フレームの後端部に取付けられたカウンタウエイト等とにより構成されている。
【0003】
さらに、上部旋回体の支持ベースとなる旋回フレームは、旋回装置が取付けられる平板状の底板と、該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設された左縦板,右縦板と、前記底板の前側に位置して左,右の縦板間を連結する前板とを含んで構成されている。
【0004】
ここで、前板は、底板上に後側に傾斜するように立設され、左,右方向に延びた端部が左,右の縦板に固着されている。また、前板は、各縦板間を連結すると共に、該各縦板と一緒に作業装置から伝わる掘削反力等の負荷を受承する強度部材として形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−54850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術による油圧ショベルでは、作業装置によって掘削作業等を行った場合、その掘削作業での反力が大きな負荷となってセンタフレームの左,右の縦板や前板に作用する。また、作業装置を持ち上げた状態で作業を行った場合にも、作業装置が揺れることによって各縦板、前板を捻るように負荷が作用する。
【0007】
このために、作業装置による大きな負荷に耐えて該作業装置を安定的に支持することができるように、各縦板と前板は、例えば板厚寸法を厚くして強度を高めなくてはならない。これにより、油圧ショベルの重量が増大するから、作業性能の低下、製造コストの上昇等を招くという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、板厚寸法を厚くすることなく左,右の縦板と前板の強度を高めることにより、作業装置を安定的に支持できるようにした建設機械の旋回フレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による建設機械の旋回フレームは、平板状の底板と、該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設された左,右の縦板と、前記底板の前側に位置して左,右の縦板間を連結する前板とを備えてなる。
【0010】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記前板は、前記底板から上側に延びた前面部と、該前面部の頂部から下側に向けて延びた後面部とから山形状に形成し、前記前板の後面部には、後端側から前側に向けて切欠くことにより、前記底板に油圧機器を取付けるための油圧機器取付部を開放する切欠部を設ける構成としたことにある。
【0011】
請求項2の発明は、前記前板の後面部は、下側に延びた後端部を前記底板と接合する構成としたことにある。
【0012】
請求項3の発明は、前記前板の後面部は、前記各縦板上に前,後方向に延びて設けられた上フランジ板と接合する構成としたことにある。
【0013】
請求項4の発明は、前記前板は、前,後方向の複数個所で折曲げられた多角多面板または円弧状に湾曲した湾曲板として形成したことにある。
【0014】
また、本発明による建設機械の旋回フレームは、平板状の底板に前,後方向に延びた縦板を左,右方向に離間して立設し前記底板の前側位置に左,右の縦板を連結する前板を設けてなるセンタフレームと、該センタフレームの底板の後部に接合される後部底板および左,右の縦板の後部に接合される左,右の後部縦板からなるテールフレームと、前記センタフレームとテールフレームとの連結体の左,右位置に取付けられる左,右のサイドフレームとを備えてなる。
【0015】
そして、上述した課題を解決するために、請求項5の発明が採用する構成の特徴は、前記センタフレームの前板は、前記底板から上側に延びた前面部と、該前面部の頂部から下側に向けて延びた後面部とから山形状に形成し、前記前板の後面部には、後端側から前側に向けて切欠くことにより、前記底板に油圧機器を取付けるための油圧機器取付部を開放する切欠部を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、作業装置を支持する左,右の縦板間には、底板から上側に延びた前面部と該前面部の頂部から下側に向けて延びた後面部とからなる山形状の前板を設けている。これにより、前板は、後面部の分だけ左,右の縦板間を強固に連結することができるから、例えば作業装置からの掘削反力等の負荷を各縦板と共に受承することができる。また、前板の後面部は、前面部の頂部から下側に向けて延びることにより、持ち上げた姿勢の作業装置の延長線上に配置することができ、作業装置が左,右方向に揺れたときには、この作業装置の揺れによる各縦板の捻れ変形等を抑制することができる。
【0017】
この結果、山形状の前板は、例えば板厚寸法を厚くすることなく、左,右の縦板との間で構造的に強度を高めることができるから、作業装置からの掘削反力、作業装置を持ち上げた状態での作業等による負荷に耐えることができ、作業装置を安定的に支持することができる。
【0018】
しかも、前板の後面部には、後端側から前側に向けて切欠部を設けているから、例えばセンタジョイント、旋回モータ等の油圧機器を取付けるための油圧機器取付部を、切欠部を介して開放することができる。これにより、前板の後側に後面部を設けた場合でも、切欠部を介して後面部の下側に油圧機器を取付けることができ、また、取付けた油圧機器のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、前板の後面部は、下側に延びた後端部を底板と接合しているから、前板は、作業装置から作用する負荷を、後面部を介して強度部材からなる底板に逃がすことができ、各縦板と共に作業装置をより一層安定的に支持することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、前板の後面部は、各縦板上に前,後方向に延びて設けられた上フランジ板と接合しているから、前板は、作業装置から作用する負荷を、後面部を介して強度部材からなる上フランジ板に逃がすことができ、各縦板と共に作業装置をより一層安定的に支持することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、前板を、前,後方向の複数個所で折曲げられた多角多面板または円弧状に湾曲した湾曲板として形成することにより、左,右の縦板間にボックス構造体を形成することができ、左,右の縦板と前板とからなる作業装置の支持構造体の剛性を高めることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、作業装置を支持するセンタフレームの左,右の縦板間には、底板から上側に延びた前面部と該前面部の頂部から下側に向けて延びた後面部とからなる山形状の前板を設けている。これにより、センタフレームの前板は、後面部の分だけ左,右の縦板間を強固に連結することができるから、例えば作業装置からの掘削反力等の負荷を各縦板と共に受承することができる。また、前板の後面部は、前面部の頂部から下側に向けて延びることにより、持ち上げた姿勢の作業装置の延長線上に配置することができ、作業装置が左,右方向に揺れたときには、この作業装置の揺れによる各縦板の捻れ変形等を抑制することができる。
【0023】
この結果、山形状の前板は、例えば板厚寸法を厚くすることなく、左,右の縦板との間で構造的に強度を高めることができるから、作業装置からの掘削反力、作業装置を持ち上げた状態での作業等による負荷に耐えることができ、作業装置を安定的に支持することができる。
【0024】
しかも、センタフレームを構成する前板の後面部には、後端側から前側に向けて切欠部を設けているから、例えばセンタジョイント、旋回モータ等の油圧機器を取付けるための油圧機器取付部を、切欠部を介して開放することができる。これにより、前板の後側に後面部を設けた場合でも、切欠部を介して後面部の下側に油圧機器を取付けることができ、また、取付けた油圧機器のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態による旋回フレームを備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】第1の実施の形態による旋回フレームにエンジン、旋回モータ等を搭載した状態を拡大して示す平面図である。
【図3】旋回フレームを単体で示す外観斜視図である。
【図4】旋回フレームをセンタフレームとテールフレームと左,右のサイドフレームとに分解した状態を示す分解斜視図である。
【図5】図2中のセンタフレームを示す要部拡大の平面図である。
【図6】図5中の矢示VI−VI方向からみた断面図である。
【図7】第1の実施の形態による前板を単体で斜め後側からみた拡大斜視図である。
【図8】第2の実施の形態によるセンタフレームを示す要部拡大の平面図である。
【図9】図8中の矢示IX−IX方向からみた断面図である。
【図10】第2の実施の形態による前板を単体で斜め後側からみた拡大斜視図である。
【図11】第3の実施の形態によるセンタフレームを示す要部拡大の平面図である。
【図12】図11中の矢示XII−XII方向からみた断面図である。
【図13】第4の実施の形態によるセンタフレームを示す要部拡大の平面図である。
【図14】図13中の矢示XIV−XIV方向からみた断面図である。
【図15】第1の変形例による前板を備えたセンタフレームの断面図である。
【図16】第2の変形例による前板を備えたセンタフレームの断面図である。
【図17】第3の変形例による旋回フレームを示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る建設機械の旋回フレームの実施の形態を、クローラ式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0027】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に設けられた後述の作業装置10とにより構成されている。
【0028】
また、上部旋回体4は、図1、図2に示すように、支持ベースとなる後述の旋回フレーム11と、該旋回フレーム11の左サイドフレーム24の前側に設けられたキャブ5と、前記旋回フレーム11のテールフレーム20に搭載されたエンジン6と、作業装置10との重量バランスをとるために該エンジン6の後側に位置して前記テールフレーム20の後端部に取付けられたカウンタウエイト7と、前記旋回フレーム11のセンタフレーム12の旋回中心に設けられ上部旋回体4と下部走行体2との間で圧油を流通させるセンタジョイント8(図5、図6参照)と、該センタジョイント8の後側近傍に配置され旋回装置3の駆動源となる旋回モータ9とにより大略構成されている。
【0029】
ここで、センタジョイント8、旋回モータ9は、油圧機器の1つをなすもので、センタフレーム12の底板13上に設けられた後述の油圧機器取付部19に配置されている。この油圧機器取付部19に配置されたセンタジョイント8、旋回モータ9は、前板16の後面部18に形成された切欠部18Aを通じて取付け、取外すことができ、またメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0030】
10は土砂の掘削作業等を行うために上部旋回体4の前側に設けられた作業装置である。この作業装置10は、後述するセンタフレーム12の左,右の縦板14,15および前板16に俯仰動可能に取付けられたブーム10Aと、該ブーム10Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム10Bと、該アーム10Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット10Cと、これらを駆動するブームシリンダ10D、アームシリンダ10E、バケットシリンダ10Fとにより構成されている。
【0031】
ここで、ブーム10Aのフート部は、左,右の縦板14,15のブーム取付ブラケット14A,15Aおよび前板16の前面板17の各ブーム取付ブラケット17Dにピン結合されており、各縦板14,15と前板16によって支持されている。
【0032】
次に、第1の実施の形態による油圧ショベル1の旋回フレーム11について説明する。本実施の形態では、旋回フレーム11を4つの部位から構成し、各部位を一体的に接合することにより1つのフレームを形成している。
【0033】
即ち、11は第1の実施の形態による旋回フレームを示している。この旋回フレーム11は、図2ないし図4に示すように、中央前側に位置するセンタフレーム12と、中央後側に位置するテールフレーム20と、前記センタフレーム12とテールフレーム20の連結体の左側に位置する左サイドフレーム24と、前記連結体の右側に位置する右サイドフレーム25とにより大略構成されている。
【0034】
12は旋回フレーム11の中央部位を構成するセンタフレームで、該センタフレーム12は、図4ないし図6に示すように、平板状の底板13と、該底板13上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって平行に立設された左縦板14,右縦板15と、前記底板13の前側に位置して左,右の縦板14,15間を連結する後述の前板16とにより大略構成されている。
【0035】
ここで、センタフレーム12の底板13は、例えば略長方形状の厚肉な鋼板からなり、その下面側には旋回装置3の旋回輪が取付けられている。また、底板13上の旋回中心位置には、後述の油圧機器取付部19に位置してセンタジョイント8が取付けられ、該センタジョイント8の後側位置には旋回モータ9が取付けられている。さらに、底板13の後端縁には、テールフレーム20の後部底板21の前端縁が溶接等の固着手段を用いて一体的に固着される。
【0036】
また、左縦板14は、底板13上の左寄りに位置して前,後方向に延びるようにほぼ垂直に立設され、右縦板15は、前記左縦板14との間に左,右方向の間隔を形成するように底板13上の右寄りに位置して前,後方向に延びるようにほぼ垂直に立設されている。
【0037】
そして、左,右の縦板14,15は、前,後方向の中央部が上側に突出した山形状をなし、その頂部付近が作業装置10のブーム10Aのフート部を取付けるためのブーム取付ブラケット14A,15Aとなっている。また、左,右の縦板14,15の低くなった前側部位は、ブームシリンダ10Dを取付けるためのシリンダ取付ブラケット14B,15Bとなっている。さらに、左,右の縦板14,15の後端縁には、テールフレーム20の各後部縦板22,23の前端縁が溶接等の固着手段を用いて一体的に固着される。
【0038】
16は底板13の前側に位置して左,右の縦板14,15間を連結する第1の実施の形態による前板を示している。この前板16は、センタフレーム12の一部を構成するもので、鋼板等の強度部材によって形成されている。
【0039】
ここで、前板16は、図5ないし図7に示す如く、左,右の縦板14,15と共に作業装置10を支持するもので、例えば板材を折曲げたり、板材を溶接したりすることによって、前,後方向の複数個所で折曲げられた多角多面板(第1の実施の形態では2角3面板)として形成されている。そして、前板16は、後述の前面板17と後面板18とにより山形状に形成されている。
【0040】
17は前板16の前面部をなす前面板で、該前面板17は、1枚の板体を左,右方向に延びた1箇所の折曲線で後側に折曲げることにより断面へ字状に形成されている。即ち、前面板17は、シリンダ取付ブラケット14B,15Bの後側近傍に位置して底板13から立上がった短尺な立上り部17Aと、該立上り部17Aの上端を後側に折曲げることによって上側ないし後側に斜めに延びた長尺な傾斜部17Bとにより形成されている。そして、前面板17は、立上り部17Aの下端縁が底板13の上面に、左,右の端縁が左,右の縦板14,15の内側面に溶接手段を用いて強固に固着されている。
【0041】
また、前面板17には、立上り部17Aと傾斜部17Bとに亘って開口17Cが形成され、該開口17Cは、作業装置10用の油圧ホースを通したり、センタジョイント8等のメンテナンス作業を行ったりするための開口となっている。
【0042】
さらに、前面板17の上部には、左,右の縦板14,15のブーム取付ブラケット14A,15Aに沿うようにブーム取付ブラケット17Dが設けられている。これにより、前板16は、前面板17のブーム取付ブラケット17Dを介し各縦板14,15と共に作業装置10を支持し、掘削反力等の負荷を受承することができる。
【0043】
また、前面板17の下部には、左,右の縦板14,15のシリンダ取付ブラケット14B,15Bに対向するようにシリンダ取付ブラケット17Eが設けられている。これにより、左,右のシリンダ取付ブラケット17Eは、各縦板14,15のシリンダ取付ブラケット14B,15Bと協働して作業装置10のブームシリンダ10Dのボトム側を支持することができる。
【0044】
18は前面板17の傾斜部17Bの頂部から下側に向けて延びた後面部としての後面板で、該後面板18は、例えば1枚の平坦な板体によって形成されている。また、後面板18は、前端縁が前面板17の傾斜部17Bの頂部に、左,右の端縁が左,右の縦板14,15の内側面に溶接手段を用いて強固に固着されている。
【0045】
ここで、後面板18は、底板13の中央付近に設けられ、センタジョイント8、旋回モータ9等の油圧機器が配設された油圧機器取付部19の上方を覆うように前面板17から後側に延びている。
【0046】
しかし、後面板18には、後端側から前側に向けて切欠部18Aを形成している。この切欠部18Aは、底板13上の油圧機器取付部19を外部に開放することにより、センタジョイント8、旋回モータ9等の油圧機器を油圧機器取付部19に取付け、取外すときの作業開口となり、また、センタジョイント8、旋回モータ9等のメンテナンス作業等を容易に行えるようにするものである。即ち、後面板18は、後側に切欠部18Aを形成したことで、センタジョイント8、旋回モータ9等の上側を覆う位置に配設することが可能となっている。
【0047】
そして、第1の実施の形態による前板16は、上述のように構成されるもので、左,右の縦板14,15間に、底板13から上側に延びた前面板17に追加して、前面板17の頂部から下側に向けて延びた後面板18を設けて山形状に形成している。これにより、前板16は、後面板18の分だけ左,右の縦板14,15間を強固に連結することができ、立体的な構造によって作業装置10の支持強度を高めることができる。
【0048】
また、後面板18は、持ち上げ姿勢の作業装置10(後側に向けて下側に傾いている姿勢)の延長線上となるように、前面板17の頂部から下側に向けて延びているから、持ち上げ姿勢の作業装置10が左,右方向に揺れたときには、この作業装置10の揺れによる各縦板14,15の捻れ変形等を抑制することができ、該各縦板14,15と共に作業装置10を安定的に支持することができる。
【0049】
一方、前板16の後面板18を切欠いた切欠部18Aは、当該後面板18によって覆われた油圧機器取付部19を外部に開放することができる。これにより、切欠部18Aを介してセンタジョイント8、旋回モータ9等を油圧機器取付部19に取付けたり、取外したりすることができ、メンテナンス作業も行うことができる。
【0050】
さらに、前板16は、折曲げた前面板17と後面板18とにより多角多面板として形成しているから、左,右の縦板14,15間にボックス構造体を形成することができ、作業装置10の支持強度を高めることができる。
【0051】
次に、20はセンタフレーム12の後側に設けられたテールフレームである。このテールフレーム20は、センタフレーム12の底板13の後端縁に連結されて後側に延びた後部底板21と、該後部底板21上に左,右方向に離間して立設され、センタフレーム12の左,右の縦板14,15の後部に連結される左,右の後部縦板22,23とにより大略構成されている。また、後部縦板22,23には、その上側に位置して前,後方向に延びる上フランジ板22A,23Aが設けられ、これにより、後部縦板22,23は、後部底板21と上フランジ板22A,23Aとによって断面形状が略I字状に形成されている。
【0052】
そして、テールフレーム20は、後部底板21の前端縁がセンタフレーム12の底板13の後端縁に溶接され、左,右の後部縦板22,23の前端縁が左,右の縦板14,15の後端縁に溶接されている。また、各後部縦板22,23の上フランジ板22A,23Aの前側部分は、縦板14,15の上側部分に溶接されている。
【0053】
24はセンタフレーム12とテールフレーム20との連結体の左側位置に取付けられる左サイドフレーム、25は右側位置に取付けられる右サイドフレームをそれぞれ示している。これらのサイドフレーム24,25は、例えば断面D字状をなすD型フレームを用い、前,後方向に延びている。また、左,右のサイドフレーム24,25は、左,右方向に延びる張出しビーム26によって支持されている。
【0054】
第1の実施の形態による建設機械としての油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0055】
まず、オペレータは、キャブ5に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、旋回装置3と作業装置10とを動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0056】
ここで、作業装置10によって掘削作業等を行っているときには、この作業装置10を支持しているセンタフレーム12の左,右の縦板14,15と前板16に掘削反力等の大きな負荷が作用している。しかし、各縦板14,15と前板16とは、該各縦板14,15間を前板16で連結し、該前板16の前面板17の頂部から下側に延びるように後面板18を設けているから、該各縦板14,15と前板16の剛性を構造的に高めて作業装置10を安定的に支持することができる。
【0057】
また、作業装置10は、持ち上げた姿勢で揺れ易くなる。この場合、前板16の後面板18は、持ち上げ姿勢の作業装置10の延長線上を延びるように、前面板17の頂部から下側に向けて配設しているから、作業装置10を持ち上げた姿勢で作業したときに作用する大きな負荷は、後面板18によって受止めることができる。
【0058】
次に、センタジョイント8、旋回モータ9等を油圧機器取付部19に取付ける場合には、前板16の後面板18を切欠いた切欠部18Aを通じて油圧機器取付部19に取付けることができ、また取外すこともできる。この上で、切欠部18Aを介してセンタジョイント8、旋回モータ9等のメンテナンス作業を行うことができる。
【0059】
かくして、第1の実施の形態によれば、作業装置10を支持するセンタフレーム12の左,右の縦板14,15間には、底板13から上側に延びた前面板17と該前面板17の頂部から下側に向けて延びた後面板18とからなる山形状の前板16を設ける構成としている。従って、前板16は、後面板18の分だけ左,右の縦板14,15間を強固に連結することができるから、作業装置10からの掘削反力等の負荷を各縦板14,15と共に受承することができる。また、前板16の後面板18は、前面板17の頂部から下側に向けて延びることにより、持ち上げた姿勢の作業装置10の延長線上に配置することができ、作業装置10が左,右方向に揺れたときには、この作業装置10の揺れによる各縦板14,15の捻れ変形等を抑制することができる。
【0060】
この結果、山形状の前板16は、例えば板厚寸法を厚くすることなく、左,右の縦板14,15との間で構造的に強度を高めることができるから、作業装置10からの掘削反力、作業装置10を持ち上げた状態での作業等による負荷に効果的に耐えることができ、作業装置を安定的に支持することができる。
【0061】
しかも、前板16の後面板18には、後端側から前側に向けて切欠部18Aを設けているから、センタジョイント8、旋回モータ9等の油圧機器を取付けるための油圧機器取付部19を、切欠部18Aを介して開放することができる。これにより、前板16の後側に後面板18を設けた場合でも、切欠部18Aを介して後面板18の下側にセンタジョイント8、旋回モータ9等を取付けることができ、また、取付けた油圧機器のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0062】
また、前板16は、前,後方向の複数個所で折曲げることにより多角多面板として形成しているから、左,右の縦板14,15間にボックス構造体を形成することができ、左,右の縦板14,15と前板16とからなる作業装置10の支持構造体の剛性を高めることができる。
【0063】
次に、図8ないし図10は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、前板の後面部の下側に延びた後端部を底板と接合する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0064】
図8において、31は第2の実施の形態による前板、32は該前板31の後面部をなす後面板をそれぞれ示している。また、後面板32は、複数枚の板体を溶接手段等を用いて固着することにより下側に折曲げられた断面略く字状に形成されている。
【0065】
即ち、後面板32は、図9、図10に示すように、前面板17の傾斜部17Bの頂部から下側に向けて延びた上側傾斜部32Aと、該上側傾斜部32Aの後端部から下側に向け急傾斜した下側傾斜部32Bとにより構成されている。また、下側傾斜部32Bは、上側傾斜部32Aの左,右方向の両端に配置され、下側に延びた後端部が溶接手段によって底板13に接合されている。さらに、各下側傾斜部32Bの側縁は、各縦板14,15の内側面に溶接されている。
【0066】
これにより、後面板32は、各下側傾斜部32Bの下側に延びた後端部を底板13に溶接しているから、作業装置10からの負荷を強度部材からなる底板13に逃がすことができ、各縦板14,15と前板31とによる作業装置10の支持強度を高めることができる。
【0067】
また、後面板32には、後端側から前側に向けて切欠部32Cが形成されている。この切欠部32Cは、左,右の下側傾斜部32B間から上側傾斜部32Aまで達するように形成されている。この切欠部32Cは、前述した第1の実施の形態による切欠部18Aと同様に、底板13上の油圧機器取付部19を外部に開放することにより、油圧機器取付部19にセンタジョイント8、旋回モータ9等の油圧機器を取付け、取外せるようにし、また、これらのメンテナンス作業等を容易に行えるようにするものである。
【0068】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、前板31の後面板32は、各下側傾斜部32Bの下側に延びた後端部を底板13に溶接により接合しているから、作業装置10からの負荷を強度部材からなる底板13に逃がすことができ、各縦板14,15と前板31とによる作業装置10の支持強度をより一層向上することができる。
【0069】
また、後面板32は、上側傾斜部32Aと下側傾斜部32Bとにより形成しているから、前板31は、立上り部17A、傾斜部17Bからなる前面板17と上側傾斜部32A、下側傾斜部32Bからなる後面板32とにより3箇所で折曲げられて4面を有する3角4面板として形成することができ、より一層強固なボックス構造体として各縦板14,15と前板16の剛性を高めることができる。
【0070】
次に、図11および図12は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、前板を、円弧状に湾曲した湾曲板として形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0071】
図11において、41は第3の実施の形態による前板を示している。この前板41は、図12に示すように、中央部が上側に突出するように前,後方向で円弧状に湾曲した湾曲板として形成されている。即ち、前板41は、シリンダ取付ブラケット14B,15Bの後側近傍に位置して底板13から上側の延びつつ後側に湾曲した前面部42と、該前面部42の頂部から下側に向けて延びつつ湾曲した後面部43とにより滑らかな山形状に形成されている。また、前面部42には、開口42A、ブーム取付ブラケット42B、シリンダ取付ブラケット42Cが形成され、後面部43には、後端側から前側に向けて切欠部43Aが形成されている。
【0072】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、前板41を、円弧状に湾曲した湾曲板として形成しているから、左,右の縦板14,15間にボックス構造体を形成することができ、各縦板14,15と前板41の剛性を高めることができる。また、滑らかな山形状の前板41は、少ない部品点数で容易に取付けることができる。
【0073】
次に、図13ないし図14は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、前板の後面部は、各縦板上に前,後方向に延びて設けられた上フランジ板と接合する構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0074】
図13において、51は第4の実施の形態による前板、52は該前板51の後面部をなす後面板をそれぞれ示している。また、後面板52は、テールフレーム20を構成する各後部縦板22,23の上フランジ板22A,23Aに向け斜め下側に延び、その後端部が上フランジ板22A,23Aに溶接手段等を用いて一体的に接合されている。また、後面板52には、後端側から前側に向けて切欠部52Aが形成されている。
【0075】
これにより、後面板52の後端部は、強度部材からなる各後部縦板22,23の上フランジ板22A,23Aに溶接しているから、作業装置10から作用する負荷は、前面板17、後面板52を介して各上フランジ板22A,23Aに逃がすことができる。
【0076】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、前板51の後面板52は、各後部縦板22,23上に前,後方向に延びて設けられた強度部材からなる上フランジ板22A,23Aと連結している。これにより、前板51は、作業装置10から作用する負荷を、前面板17、後面板52を介して各上フランジ板22A,23Aに逃がすことができ、各縦板14,15と共に作業装置10をより一層安定的に支持することができる。
【0077】
なお、第1の実施の形態では、前板16を、折曲げることで立上り部17Aと傾斜部17Bからなる前面板17と、該前面板17の頂部に固着された後面板18とにより2箇所で折曲げられて3面を有する2角3面板として形成している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図15に示す第1の変形例による前板61のように、立上り部62Aと傾斜部62Bからなる前面部をなす下側前面板62の上端部に同じく前面部をなす上側前面板63を固着し、該上側前面板63の頂部に後面部をなす切欠部64Aを備えた後面板64を固着する構成としてもよい。この場合には、前板61は、3箇所で折曲げられて4面を有する3角4面板として形成することができる。さらに、前板は、前面部と後面部とを逆V字状に配置した1角2面板として形成してもよく、また4角5面板以上の多角形状としてもよい。
【0078】
また、第2の実施の形態では、立上り部17A、傾斜部17Bからなる前面板17と上側傾斜部32A、下側傾斜部32Bからなる後面板32との2枚の板体を頂部で固着することによって前板31を構成している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図16に示す第2の変形例による前板71のように、1枚の板体を前,後方向の3箇所で折曲げることにより、立上り部72A、傾斜部72Bからなる前面部としての前面板72と、上側傾斜部73A、下側傾斜部73Bからなり切欠部73Cを有する後面部としての後面板73とを形成する構成としてもよい。
【0079】
この場合、第1の実施の形態では、前面板17と後面板18との2枚の板体を溶接することによって前板16を構成したが、前記前面板17、後面板18に対応する部位を折曲げることによって1枚の板体から前板を構成してもよい。また、第4の実施の形態では、前面板17と後面板52とを溶接して前板51を構成したが、第1の実施の形態と同様に、1枚の板体を折曲げて前板を構成してもよい。
【0080】
一方、第1の実施の形態では、旋回フレーム11を、中央前側に位置するセンタフレーム12と、中央後側に位置するテールフレーム20と、前記センタフレーム12とテールフレーム20の連結体の左側に位置する左サイドフレーム24と、前記連結体の右側に位置する右サイドフレーム25とにより構成している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図17に示す第3の変形例による旋回フレーム81のように、前側から後側まで延びるようにセンタフレーム82を設け、このセンタフレーム82の左,右両側に左,右のサイドフレーム83,84を設ける構成としてもよい。
【0081】
即ち、センタフレーム82は、旋回フレーム81のほぼ全長に亘って延びた平板状の底板85と、該底板85上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設された左縦板86,右縦板87と、前記底板85の前側に位置して左,右の縦板86,87間を連結する前板88とにより構成されている。また、センタフレーム82の前板88は、底板13から上側に延びた前面板89と、該前面板89の頂部から下側に向けて延びた後面板90とから山形状に形成し、前記後面板90には、後端側から前側に向けて切欠部90Aを形成する構成とすればよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0082】
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の上部旋回体を備えた他の建設機械の旋回フレームに適用してもよいものである。
【符号の説明】
【0083】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回装置
4 上部旋回体
8 センタジョイント(油圧機器)
9 旋回モータ(油圧機器)
10 作業装置
11,81 旋回フレーム
12,82 センタフレーム
13,85 底板
14,86 左縦板
15,87 右縦板
16,31,41,51,61,71,88 前板
17,72,89 前面板(前面部)
18,32,52,64,73,90 後面板(後面部)
18A,32C,43A,52A,64A,73C,90A 切欠部
19 油圧機器取付部
20 テールフレーム
21 後部底板
22 左後部縦板
22A,23A 上フランジ板
23 右後部縦板
24,83 左サイドフレーム
25,84 右サイドフレーム
42 前面部
43 後面部
62 下側前面板(前面部)
63 上側前面板(前面部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の底板と、該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設された左,右の縦板と、前記底板の前側に位置して左,右の縦板間を連結する前板とを備えてなる建設機械の旋回フレームにおいて、
前記前板は、前記底板から上側に延びた前面部と、該前面部の頂部から下側に向けて延びた後面部とから山形状に形成し、
前記前板の後面部には、後端側から前側に向けて切欠くことにより、前記底板に油圧機器を取付けるための油圧機器取付部を開放する切欠部を設ける構成としたことを特徴とする建設機械の旋回フレーム。
【請求項2】
前記前板の後面部は、下側に延びた後端部を前記底板と接合する構成としてなる請求項1に記載の建設機械の旋回フレーム。
【請求項3】
前記前板の後面部は、前記各縦板上に前,後方向に延びて設けられた上フランジ板と接合する構成としてなる請求項1に記載の建設機械の旋回フレーム。
【請求項4】
前記前板は、前,後方向の複数個所で折曲げられた多角多面板または円弧状に湾曲した湾曲板として形成してなる請求項1,2または3に記載の建設機械の旋回フレーム。
【請求項5】
平板状の底板に前,後方向に延びた縦板を左,右方向に離間して立設し前記底板の前側位置に左,右の縦板を連結する前板を設けてなるセンタフレームと、
該センタフレームの底板の後部に接合される後部底板および左,右の縦板の後部に接合される左,右の後部縦板からなるテールフレームと、
前記センタフレームとテールフレームとの連結体の左,右位置に取付けられる左,右のサイドフレームとを備えてなる建設機械の旋回フレームにおいて、
前記センタフレームの前板は、前記底板から上側に延びた前面部と、該前面部の頂部から下側に向けて延びた後面部とから山形状に形成し、
前記前板の後面部には、後端側から前側に向けて切欠くことにより、前記底板に油圧機器を取付けるための油圧機器取付部を開放する切欠部を設ける構成としたことを特徴とする建設機械の旋回フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−196408(P2010−196408A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44449(P2009−44449)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】