建設機械の油圧駆動制御装置及び方法
建設機械において、作業機がどのように操作されても、作業機の動作速度が変動しないようにするための制御が行われる。異なる操作種類に対応して異なるエンジン出力制御ラインT0〜T3及び異なるポンプトルクラインM1〜M4が定義される。エンジン出力制御ラインT0〜T3とポンプトルクラインM1〜M4とのマッチング点はどれも、一定のエンジン回転数N1を指定する。現在行われている操作種類に応じて、一つのエンジン出力制御ラインと一つのポンプトルクラインが選択される。選択された両ラインのマッチング点での馬力値に、冷却ファン等の補助機の要求馬力を加えた馬力に相当する等馬力ライン上でエンジンの出力馬力が制御される。選択されたポンプトルクライン上で作業機用油圧ポンプの吸収トルクが制御される。操作種類が変わっても、補助機の要求馬力が変動しても、エンジンは一定の回転数N1で動作する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧駆動系を制御する油圧駆動制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンで駆動される複数の油圧ポンプからの圧油によって複数の作業機(例えば油圧ショベルのアーム、バケット、ブーム、旋回装置及び走行装置など)や補助機(例えばエンジン冷却ファン)などを駆動するようにした建設機械において、選択された作業モードに応じて、エンジンの出力特性(回転数及び出力トルク)を設定すると共に、複数の油圧ポンプの合成吸収トルク(1回転当たりの油吐出量×油圧)を所定の特性となるように制御して、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがマッチングした点にエンジンの動作点を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図11(a)及び(b)は、特許文献1に記載の各種作業モード時の制御を示すエンジン出力特性図である。同文献1によると、例えば、油圧ショベルにおいて、作業モードとして重掘削モードが選択されたときには、図11(a)に示されるように、最大目標エンジン回転数(以下、ハイアイドル回転数と言う。)が最高の回転数N'Aになるように、エンジンのガバナレバーの位置が制御され、それにより、最高速のレギュレーションラインLAが設定される。また、複数の油圧ポンプは、最高速レギュレーションラインLA上の最大の馬力点PHを通る等馬力特性AH上でトルクを吸収するように制御され、それらの合成吸収トルクは図示の特性A'Hに従って制御される。これにより、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクは馬力点PHでマッチングする。また、例えば、軽掘削モード(エコノミモード)が選択されているときには、図11(b)に示されるように、ハイアイドル回転数が、より低速の回転数N'Bに設定されることにより、より低速のレギュレーションラインLBが設定され、また、油圧ポンプの合成吸収トルクが、より小さい等馬力特性ASに従って制御される。これにより、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとは、低速のレギュレーションラインLB上の馬力点P'Sでマッチングし、エンジンは回転数NBで運転される。重掘削モードでは、エンジンから大きい馬力が出力可能であるから、効率的に作業を行うことが可能である。一方、軽掘削モードでは、エンジンからの出力馬力がより小さく抑えられるので、燃料消費量が低減される。
【0004】
【特許文献1】特開平2−38630号公報(第2−9頁、第1−7図、第18−21図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の制御装置においては、作業機や補助機などの負荷の駆動に必要な出力トルクの変動に伴って、上記マッチング点が上記レギュレーションラインに沿って移動し、エンジン回転数が変動することになる。ところが、エンジン回転数が変動すると、油圧ショベル等の建設機械では、エンジンで駆動される油圧ポンプの出力流量が変動してしまうので、作業機の運動速度が変わり、さらに駆動トルクも変動してしまう。このため、同じ作業モードで作業中に、オペレータの意思に関係無く、作業機の運動速度又は駆動トルク(例えば掘削力等)が変わるので、操作性の低下を招くという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、エンジンで駆動される油圧ポンプからの油圧により作業機を駆動するようになった建設機械において、作業機の運動速度又は駆動トルクを所望されるように制御し、操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従う、エンジンと、前記エンジンにより駆動される作業機用油圧ポンプとを備える建設機械の油圧駆動制御装置は、前記作業機の操作状態を検出する操作状態検出器と、前記操作状態検出器からの信号を受け、前記エンジン及び前記作業機用油圧ポンプを制御するコントローラとを備える。前記コントローラは、前記操作状態検出器からの信号を受けて前記作業機に対して行われる操作モードを識別し、異なる操作モードにより異なるエンジン出力トルク制御ライン及び異なるポンプトルク制御ラインが指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、所望のマッチング点をもつエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとを決定し、前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインに基づいて、前記エンジンの出力トルクを制御し、かつ、前記決定されたポンプトルク制御ラインに基づいて、前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクを制御するようになっている。
【0008】
この油圧駆動制御装置によれば、行われている操作モードに応じて、エンジンの出力トルク制御ラインとポンプのトルク制御ラインが可変される。エンジン出力トルク制御ラインに沿ってエンジンの出力トルクが制御され、ポンプトルク制御ラインに沿ってポンプの吸収トルクが制御される。その結果、エンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとのマッチング点で、エンジンが動作する。エンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインを適切に決定することで、例えば定回転数制御、或いは定トルク制御など、エンジンの回転数又は出力トルクを所望されるように制御できる。
【0009】
一つの好適な実施形態では、コントローラは、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのエンジン回転数がほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定する。これにより、上記所定の複数の操作モードの中で操作モードが変っても、エンジンの回転数はほぼ一定に維持されるので、作業機の動作速度が安定する。
【0010】
別の好適な実施形態では、コントローラは、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのトルクがほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定する。これにより、上記所定の複数の操作モードの中で操作モードが変っても、エンジンから作業機への出力トルクはほぼ一定に維持されるので、作業機の駆動トルクが安定する。
【0011】
一つの好適な実施形態では、コントローラは、異なる操作モードにより異なるポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、ポンプ吸収馬力を決定し、そして、前記決定されたポンプ吸収馬力の等馬力ラインを前記エンジン出力トルク制御ラインとして用いて、前記エンジンの出力トルクを制御するようになっている。操作モードに応じてポンプ吸収馬力を適切に決定することにより、操作モードが変っても作業機の動作速度又は駆動トルクを安定させることができる。
【0012】
一つの好適な実施形態では、建設機械には、前記建設機械の補助機(例えば、エンジン冷却ファン)を駆動するための、エンジンにより駆動される補助機用油圧ポンプが更に設けられる。そして、コントローラは、一方で、異なる操作モードにより異なる作業機ポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、前記作業機用油圧ポンプが吸収すべき作業機用ポンプ吸収馬力を決定し、他方で、前記補助機の動作に関する所定の状態値を検出し、前記検出された状態値に応じて、前記補助機用油圧ポンプが吸収すべき補助機用ポンプ吸収馬力を決定する。そして、コントローラは、前記エンジンの出力馬力が前記決定された作業機用ポンプ吸収馬力と前記決定された補助機用ポンプ吸収馬力との合計になるように、エンジンを制御する。また、コントローラは、作業機用油圧ポンプの吸収トルクが上記決定されたポンプトルク制御ラインに従うように、作業機用油圧ポンプを制御する。さらに、コントローラは、上記検出された状態値に応じて補助機の目標回転数を決定し、その決定された目標回転数で補助機を駆動できるように補助機用ポンプの容量を制御する。これにより、エンジン冷却ファンなどの補助機を駆動するための馬力が増減しても、作業機の駆動に必要な大きさの馬力を作業機に供給することができ、作業機の動作速度又は駆動トルクを安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、建設機械の作業機の運動速度又は駆動トルクを所望されるように制御することが容易になり、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う油圧駆動制御装置の一実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】アクティブモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示す図である。
【図3】アクティブモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示す図である。
【図4】エコノミモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示す図である。
【図5】エコノミモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及びそれ関連する制御値を示す図である。
【図6】制御処理を示すフローチャートである。
【図7】マッチングの様子を説明する図である。
【図8】冷却ファン用油圧ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の制御を説明するための、エンジン及び作業機用油圧ポンプの出力特性を示す図である。
【図10】第2実施形態の制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示す図である。
【図11】従来技術を説明するための、エンジン出力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
10…ポンプコントローラ、11…作業機操作状態検出器、12…走行操作状態検出器、13…エンジン水温センサ、14…油温センサ、15…外気温センサ、16…作業モード選択器、20…エンジンコントローラ、21…エンジン、22…燃料噴射ポンプ、23…回転数センサ、31…油圧ポンプ(作業機用)、32…斜板制御装置、33…方向切換弁、34…油圧アクチュエータ、35…パイロット圧操作弁、41…油圧ポンプ(冷却ファン用)、42…斜板制御装置、44…油圧モータ(冷却ファン用)、45…冷却ファン。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る油圧駆動制御装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る油圧制御装置の一実施形態のハードウェア構成を示すブロック図であり、図2はこの油圧制御装置の動作を説明するためのエンジン出力特性及びポンプ吸収トルク特性の説明図である。図1、図2を参照して、まずハードウェア構成を説明する。ここでは、本発明が適用される建設機械の一例として油圧ショベルを挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、エンジン21の出力シャフトに、パワーテイクオフ装置(図示せず)を介して、作業機用油圧ポンプ31と補助機用油圧ポンプ41が連結されている。作業機用油圧ポンプ31から吐出された圧油は、方向切換弁33を経由して、対応する作業機(例えば油圧ショベルのブーム、アーム、バケット、旋回装置又は走行装置等)を駆動するための油圧アクチュエータ(例えば油圧シリンダ又は油圧モータ)34に供給される。上記の方向切換弁33のパイロット操作部には、パイロット圧操作弁35の出力パイロット管路が接続されている。パイロット圧操作弁35は、方向切換弁33に、その作業機用の操作レバー(図示せず)の操作量に応じたパイロット圧を出力する。また、補助機用油圧ポンプ41から吐出された圧油は、制御弁43を経由して、対応する補助機(例えば、エンジン冷却ファン)45を駆動する油圧モータ44に供給される。
【0019】
上述した油圧ポンプ31,41はいずれも可変容量型、例えば斜板式可変容量型、のものである。油圧ポンプ31,41の斜板は、それぞれ、斜板制御装置32,42により駆動され、これら斜板制御装置32,42は、ポンプコントローラ10によって制御される。斜板制御装置32,42には、例えばEPC(Electrical Pressure Control)ソレノイド、或いは、特開昭61−81587号公報に記載されているような構成の装置が採用され得る。以下の説明では、斜板制御装置32,42はEPCソレノイドであるとし、コントローラ10から斜板制御信号としてEPC電流を受けるようになっている。
【0020】
ところで、図1では、一つの作業機用油圧ポンプ31しか図示されてないが、しかし実際にはブーム、アーム、バケット、旋回装置及び走行装置等の複数の作業機(図示せず)をそれぞれ駆動するために、複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…が設けられている。そして、複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…のそれぞれに対して、上述した斜板制御装置32、パイロット圧操作弁35、方向切換弁33、油圧アクチュエータ34が設けられている。同様に、図1では、一つの補助機用油圧ポンプ41しか図示されてないが、実際には、エンジン冷却用や空調機用などの冷却ファン45,45,…或いは例えば攪拌機のような特定の作業機アタッチメントような複数の補助機をそれぞれ駆動するために、複数の補助機用油圧ポンプ41,41,…が設けられている。ここで、補助機には、上述した冷却ファン45,45,…だけでなく他の種類の装置も含まれ得るが、以下の説明では、冷却ファン45,45,…を代表に取り上げて説明する。そして、複数のファン用油圧ポンプ41,41,…のそれぞれに対して、上述した斜板制御装置42、制御弁43及び油圧モータ44が設けられている。
【0021】
ポンプコントローラ10は、例えばマイクロコンピュータを含んだコンピュータ装置により構成される。ポンプコントローラ10は、作業機用油圧ポンプ31,31,…及びファン用油圧ポンプ41,41,…の容量を制御するための情報処理を行う。すなわち、ポンプコントローラ10は、後述する方法で、上述した複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計の吸収トルクの目標値を決定する。そして、ポンプコントローラ10は、その合計吸収トルクの目標値を各作業機用油圧ポンプ31に配分し、各作業機用油圧ポンプ31が配分された目標吸収トルクを吸収するように、各作業機用油圧ポンプ31の容量を決定し、そして、その容量に対応した斜板制御信号(EPC電流)を、各作業機用油圧ポンプ31対応する各斜板制御装置32へ出力する。各斜板制御装置32は、ポンプコントローラ10からの斜板制御信号(EPC電流)に応答して、各作業機用油圧ポンプ31の斜板角度を制御する。また、ポンプコントローラ10は、後述する方法で、上述した複数のファン45,45,…の各々の目標回転数を求め、各目標回転数に基づいて各ファン用油圧ポンプ41の容量を求め、そして、その容量に対応した斜板制御信号(EPC電流)を、各ファン用油圧ポンプ41対応する各斜板制御装置42へ出力する。各斜板制御装置42は、ポンプコントローラ10からの斜板制御信号(EPC電流)に応答して、各ファン用油圧ポンプ41の斜板角度を制御する。更に、ポンプコントローラ10は、後述するように、エンジンコントローラ20に対してエンジン馬力制御指令を出すための情報処理も行う。
【0022】
エンジン21には、燃料噴射量を調整する燃料噴射ポンプ22及びエンジン回転数を検出する回転数センサ23が備えられる。燃料噴射ポンプ22は、エンジンコントローラ20からの噴射量制御信号によって制御される。エンジンコントローラ20は、例えばマイクロコンピュータを含むコンピュータ装置で構成される。エンジンコントローラ20は、回転数センサ23からフィードバックされるエンジン回転数を監視しながら、ポンプコントローラ10から与えられるエンジン馬力制御指令に応答して、ポンプコントローラ10により指示されたエンジン馬力になるように、燃料噴射ポンプ22の燃料噴射量(スロットル開度)を制御する。このエンジンコントローラ20による燃料噴射量制御によって、エンジン21の出力馬力(回転数×出力トルク)が、エンジン21により駆動される全ての油圧ポンプ31,31,…,41,41,…が必要とする合計の馬力に対応した等馬力特性カーブに従うように制御される。
【0023】
ブーム、アーム、バケット及び旋回装置等の作業機の操作状態を検出するための作業機操作状態検出器11の出力がポンプコントローラ10に入力される。作業機操作状態検出器11には、例えば、各作業機用のパイロット圧操作弁35からの出力パイロット管路に所定圧以上の圧力がかかるとターンオンするような圧力スイッチが含まれる。ポンプコントローラ10は、その圧力スイッチのオン/オフの状態から、各作業機が操作されているか否かを判別する。或いは、作業機操作状態検出器11には、パイロット圧操作弁35の出力パイロット管路のパイロット圧を検出する圧力センサが含まれ、ポンプコントローラ10が、その圧力センサの検出圧力が所定圧力以上か否かをチェックし、所定圧力以上のときに作業機が現在操作されていると判断するようにしてもよい。ポンプコントローラ10は、作業機操作状態検出器11からの信号に基づいて、各種作業機に対して現在行われている操作種類(例えば、旋回操作、ブーム上げ操作又は掘削操作など)を識別する。
【0024】
また、作業機の中でもとりわけ走行装置の操作状態を検出するための走行操作状態検出器12の出力がポンプコントローラ10に入力される。走行操作状態検出器12には、例えば、走行装置用のパイロット圧操作弁35からの出力パイロット管路に結合された、上記と同様の圧力スイッチ又は圧力センサが含まれ、ポンプコントローラ10は、走行操作用のパイロット圧が所定圧以上のときに走行装置が現在操作されていると判断するようにしてよい。ポンプコントローラ10は、走行操作状態検出器12からの信号に基づいて、走行装置に対して現在行われている操作種類(例えば、前進か後進か、速度段は何段目かなど)を識別する。
【0025】
さらに、エンジン水温センサ13が、エンジン21の冷却水管路(図示せず)に取り付けられる。油温センサ14が、油圧ポンプ31のドレン管路(図示せず)に取り付けられる。外気温センサ15が、エンジン冷却用のファン45からエンジン21やラジエータ(図示せず)に送られる冷却風の通り道に配置される。これらのセンサ13,14,15の検出信号もポンプコントローラ10に入力される。
【0026】
また、この油圧ショベルの運転室内の図示しない操作パネル(図示せず)上には、オペレータが作業モード(作業のポリシー又はやり方のタイプ)を選択するための例えばスイッチのような作業モード選択器16が設けられている。以下の説明では、作業モードとして、例えば、アクティブモードとエコノミモードの2種類があるものとする。アクティブモードとエコノミモードの相違は、エンジン21から出力できる最大馬力の大きさが異なることである。後述するように、アクティブモードの時は、エコノミモードの時よりも、より大きい馬力を出力することができるようにエンジン21が制御される。アクティブモードは掘削や荷積みなどの作業を能率的に進めるのに適し、一方、エコノミモードは燃料消費を節約するために適する。作業モード選択器16の出力はポンプコントローラ10に入力され、ポンプコントローラ10はアクティブモードとエコノミモードのいずれが選択されたかを認識する。
【0027】
ポンプコントローラ10は、不揮発性の記憶装置17を備え、そこには、エンジン21の出力馬力及び油圧ポンプ31,31,…,41,41,…の容量を制御するために使用される種々のデータの設定が記述された設定テーブル50が格納される。後に具体的に説明するように、ポンプコントローラ10は、作業機操作検出器11、走行操作検出器12及び作業モード選択器16からの入力信号に基づき、現在選択されている作業モードがどれであるか(つまり、アクティブモードか、エコノミーモードか)、及びブーム、アーム、バケット、旋回装置及び走行装置等の作業機に対して現在行われている操作種類が何であるか(例えば、旋回操作、ブーム上げ操作及び掘削操作などのうちのどれが行われているか)を識別する。そして、ポンプコントローラ10は、識別された作業モードと操作種類に応じて、設定テーブル50を参照して、作業機用油圧ポンプ31,31,…に供給すべき合計馬力(作業機用油圧ポンプ31,31,…が吸収すべき合計馬力)を計算する。すなわち、設定テーブル50には、作業モードと操作種類の種々の組み合わせ(それぞれの組み合わせを以下では「操作モード」という)にそれぞれ関連付けられた複数のエンジン出力トルク制御ライン(例えば、図2及び図4に示されるT1,T2,T3,T4及びT5)の定義データが登録されている。ここで、この実施形態においては、一例として、それらのエンジン出力トルク制御ラインの定義データは、複数の馬力値(例えば、図2及び図4に示されるP1,P2,P3,P4及びP5)を示すデータである。換言すれば、各エンジン出力トルク制御ラインは、対応する馬力値の等馬力ラインとして定義されている。そして、それらのエンジン出力トルク制御ラインつまり馬力値の中から、現在の作業モードと操作種類に対応した一つの馬力値が、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計の吸収馬力として、ポンプコントローラ10により選択される。また、ポンプコントローラ10は、上述した温度センサ13,14,15からの入力信号に基づいて、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…に現在供給すべき合計馬力(冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…が吸収すべき合計馬力)の大きさを計算する。そして、ポンプコントローラ10は、計算された作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収馬力と冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力を足し合せて、エンジン21の目標出力馬力を計算し、その目標出力馬力にエンジン21の出力馬力を制御するための馬力制御指令を生成して、これをエンジンコントローラ20に出力する。エンジンコントローラ20は、馬力制御指令に応答してエンジン21の燃料噴射量を実質的に無段階つまり連続的に制御する。その結果、エンジン21は上記目標出力馬力に相当する馬力を出力する。
【0028】
さらに、ポンプコントローラ10は、識別された操作モード(作業モードと操作種類の組み合わせ)に応じて、設定テーブル50を参照して、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクを制御するための一つのポンプトルク制御ラインを決定する。すなわち、設定テーブル50には、種々の操作モードにそれぞれ関係付けられた複数のポンプトルク制御ライン(例えば、図2及び図4に示されているM1,M2,M3,M4,M5及びM6)の定義データが登録されており、それらのポンプトルク制御ラインの中から、現在の操作モードに対応した一つのポンプトルク制御ラインがポンプコントローラ10により選択される。そして、ポンプコントローラ10は、選択されたポンプトルク制御ラインに従って、エンジン回転数やその他の要因に応じて、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクの目標値を決定し、その合計吸収トルク目標値を複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…に配分することで、各作業機用油圧ポンプ31の吸収トルクの目標値を決める。配分の仕方としては、作業機用油圧ポンプ31,31,…のそれぞれの平均油圧に応じて配分しても良いし、或いは、予め定めたポンプ毎の配分比で配分してもよい。ポンプコントローラ10は、各作業機用油圧ポンプ31が、配分された吸収トルクの目標値を吸収するように、各作業機用油圧ポンプ31の容量(斜板角度)を制御する。
【0029】
また、ポンプコントローラ10は、上述した温度センサ13,14,15からの入力信号に基づいて、各冷却ファン45の目標回転数を決定し、そして、現在のエンジン回転数に応じて、各冷却ファン45をその目標回転数で駆動するための各冷却ファン用油圧ポンプ41の目標容量を計算する。そして、ポンプコントローラ10は、その目標容量になるように各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量(斜板角度)を制御する。
【0030】
このような制御により、エンジン21の出力トルクと、全ての油圧ポンプ31,31,…,41,41,…の合計の吸収トルクとがマッチした点の近傍でエンジン21が動作することになる。このマッチング点近傍でのエンジン21の出力馬力のうち、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…へ供給される分は、上記のように計算された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収合計馬力にほぼ等しい値に制御されることになる。他方、マッチング点近傍でのエンジン21の出力馬力のうち、作業機用油圧ポンプ31,31,…へ供給される分は、現在の操作モードに応じて設定テーブル50から選ばれたエンジン出力トルクラインに対応する馬力値にほぼ一致することになる。また、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクは、現在の操作モードに応じて設定テーブル50から選ばれたポンプトルク制御ラインに沿うように制御されることになる。従って、上記マッチング点は、設定テーブル50から選ばれたエンジン出力トルクラインとポンプトルク制御ラインの交点に位置することになる。ここで、設定テーブル50に登録された上記複数のエンジン出力トルクラインとポンプトルク制御ラインとは、同じ作業モードにおいては操作モードが異なってもほぼ同じエンジン回転数の点で交差まりマッチするように設定されている。その結果、同じ作業モードが選択されている間は、オペレータが作業機に対して異なる操作を行ったり、冷却ファン45,45,…の目標回転速度が温度変化などに応じて変動したりしても、エンジン21はほぼ同じ回転数で動作し続けることができる。
【0031】
次に、上述した制御方法について、図2〜図5を参照して、更に具体的に説明する。
【0032】
上述したように、作業モードとして、重負荷用のアクティブモードと、軽負荷用のエコノミモードの2種類があると想定する。図2は、アクティブモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示し、図3は、アクティブモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示している。また、図4は、エコノミモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示し、図5は、エコノミモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及びそれ関連する制御値を示している。エコノミモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示している。
【0033】
まず、図2及び図3を参照して、アクティブモードでの制御を説明する。
【0034】
アクティブモードでは、図3の最も左側の欄に示すように、作業機に対して行われ得る操作種類が、例えば4種類の操作モードA1〜A4に分類され、これらの操作モードA1〜A4は作業機用油圧ポンプ31に提供すべき馬力において相違する。図3では、最も上に示された操作モードA1が、最も大きい馬力を作業機に提供すべき操作種類であり、より下方の操作モードへ行くほど、作業機用油圧ポンプ31に提供すべき馬力が順に小さくなっていき、最も下に示された操作モードA4では、提供すべき馬力は最も小さい。操作モードA1〜A4のうちのどれが現在行われているかは、図1に示した作業機操作検出器11及び走行操作検出器12からの検出信号に基づいてポンプコントローラ10により判断される。
【0035】
図3に示すように、異なるポンプトルク制御ライン(作業機用ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが従うべき特性ライン)M1〜M4、及び異なるエンジン出力トルクラインT0〜T3が、異なる操作モードA1〜A4にそれぞれ関連付けられて、設定テーブル50に登録されている。これらポンプトルク制御ラインM1〜M4とエンジン出力トルクラインT0〜T3は、例えば図2に示すようなものである。
【0036】
図2に示すように、エンジン出力トルクラインT0〜T3は、それぞれ、エンジン出力トルクをエンジン回転数の減少関数として定義したものであり、例えば、本実施形態では、異なる馬力値P0〜P3にそれぞれ対応する等馬力ラインである。ここで、馬力値P0は、エンジン21が出力可能な最大馬力に相当する。設定テーブル50上で、エンジン出力トルクラインT0〜T3は、例えば、T0が100%、T1が90%、T2が80%、T3が70%というように、それぞれが対応する馬力P0〜P3のエンジン最大出力馬力P0に対するパーセンテージをで定義される。他方、各ポンプトルク制御ラインM1〜M4では、各エンジン出力トルクラインT0〜T3とマッチングし易いように、エンジントルクはエンジン回転数に対する増加関数である。ここで注目すべきことは、それぞれの操作モードA1〜A4に対応するポンプトルク制御ラインM1〜M4とエンジン出力トルクラインT0〜T3とが交差した(つまりマッチした)動作点におけるエンジン回転数(マッチング回転数)は、どの操作モードA1〜A4についても同一値N1であるということである。このように設定されたポンプトルク制御ラインM1〜M4とエンジン出力トルクラインT0〜T3の組み合わせを用いて、上述したような制御が行われることにより、操作モードが切り替えられても、エンジン21の回転数は上記マッチング回転数N1の近傍範囲でほぼ一定に維持されることになる。
【0037】
例えば、操作モードA2が行われているとき(例えば、旋回操作とブーム上げ操作が同時に行われていて、大きいエンジン出力馬力が要求されるとき)には、図3に示された設定テーブル50から、ポンプトルク制御ラインM2とエンジン出力トルクラインT1が選択される。選択されたポンプトルク制御ラインM2は、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが従うべき特性ラインを意味する。選択されたエンジン出力トルクラインT1は、作業機用ポンプ31,31,…が吸収すべきトルクの合計値(つまり、全ての作業機の駆動に必要なトルクの合計値)を意味する。また、作業機の駆動に必要なトルクの他に、冷却ファン45,45,…のような補助機を駆動するための追加のトルクが必要である。そこで、補助機駆動用の馬力ΣLfが、現在の作動油温及びエンジン水温などに基づき計算される(ここで、ΣLfとは、複数の冷却ファン45,45,…が必要とする馬力Lf1、Lf2、…を足し合わせた合計馬力という意味である)。そして、図3の右側の欄に示すように、図2に示すマッチング点A'2でのエンジン出力馬力(つまり作業機駆動用のエンジン出力馬力)P1と、計算された補助機駆動用のエンジン出力馬力ΣLfとが加算されて、その加算値P1+ΣLfが、エンジン出力馬力の目標値として設定される。そして、エンジン21の実際の出力馬力がその目標値P1+ΣLfに一致するように、エンジン21の出力馬力の制御が行われる。同時に、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが上記選択されたポンプトルク制御ラインM1に沿うように、作業機用油圧ポンプ31,31,…のそれぞれの容量(斜板角度)が、エンジン回転数やその他の要因に応じて制御される。更に同時に、現在の作業油温やエンジン水温や外気温などに応じた目標回転数で冷却ファン45,45,…を駆動するように、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の容量(斜板角度)が制御される。結果として、操作モードA2が行われているときには、図2に示すように、作業機駆動用のエンジン出力トルクラインT1と、ポンプトルク制御ラインM2とがマッチした動作点A'2の近傍で、エンジン21が動作する。よって、エンジン21の回転数は、上記マッチング回転数N1の近傍になる。
【0038】
ところで、図3に示すように、操作モードA2では、補助機駆動用の馬力ΣLfが所定値Ls以上である場合(換言すると、P1+ΣLfが、出力可能な最大馬力P0を超える場合)には、エンジン出力馬力の目標値は、補助機駆動用の馬力ΣLfに関係なく、最大馬力P0に設定される。
【0039】
また、操作モードA3が行われているとき(例えば、旋回とアーム掘削方向とが同時に行われていて、中程度の馬力が要求されるとき)には、図3に示された設定テーブル50から、ポンプトルク制御ラインM3とエンジン出力トルクラインT2が選択される。そして、上記と同様に、マッチング点でのエンジン21の出力馬力は、その目標値P2+ΣLfになるように制御され、同時に、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクはポンプトルク制御ラインM2に沿うように制御される。また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の容量が同様に制御される。その結果、図2に示すマッチング点A'3の近傍でエンジン21が動作し、よって、エンジン21の回転数は、上記マッチング回転数N1の近傍になる。
【0040】
また、操作モードA4が行われているとき(上記よりも小さいエンジン出力トルクで済むとき)には、図3に示された設定テーブル50から、ポンプトルク制御ラインM4とエンジン出力トルク制御ラインT3が選択される。そして、上記と同様に制御が行われて、図2に示すマッチング点A'4の近傍でエンジン21が動作し、よって、エンジン21の回転数は、上記マッチング回転数N1の近傍になる。
【0041】
以上のようにして、操作モードが変っても、エンジン21の回転数は、図3に示すマッチング回転数N1の近傍でほぼ一定に維持される。また、補助機駆動用の馬力ΣLfが変化しても、やはり、エンジン21の回転数は上記マッチング回転数N1の近傍でほぼ一定に維持される。
【0042】
次に、図4及び図5を参照して、エコノミモードでの制御について説明する。
【0043】
図5に示すように、エコノミモードにおいては、作業機の操作種類が、例えば2つの操作モードE1,E2に分類される。これらの操作モードE1,E2は、作業機駆動用の馬力にて相違し、操作モードE2はE1より作業機駆動馬力が小さくなっている。操作モードE1,E2に対して、それぞれ、異なるポンプトルク制御ラインM5,M6と、異なるエンジン出力トルク制御ラインT4,T5が、設定テーブル50に登録されている。ここで、エコノミモード用のポンプトルク制御ラインM5,M6は、例えば図4に示すようなものであり、これは、図2に示したアクティブモード用のポンプトルク制御ラインM1,M2と同じ又は近い特性をもつ。また、エコノミモード用のエンジン出力トルク制御ラインT4,T5は、例えば図4に示すようなものであり、これは図2に示したアクティブモード用のエンジン出力トルク制御ラインT2,T3と同じ又は近い特性をもつ。例えば、本実施形態では、エンジン出力トルク制御ラインT4,T5は、馬力値P4,P5に対応した当馬力ラインである。
【0044】
ここで注目すべきことは、図4に示すように、ポンプトルク制御ラインM5,M6と、エンジン出力トルク制御ラインT4,T5とが交差したマッチング点E'1,E'2のエンジン回転数は、回転数N6で一定であるということである。このマッチング回転数N6は、図2に示したアクティブモードでのマッチング回転数N1より、所定速度(例えば約100rpm)だけ低い値である。
【0045】
エコノミモードで操作モードE1,E2のいずれかが行われているときには、上述したアクティブモードで操作モードA1〜A4のいずれかが行われているときと同様の方法で制御が行われる。その結果、操作モードE1では図4に示すマッチング点E'1の近傍で、操作モードE2では図4に示すマッチング点E'2の近傍で、エンジン21が動作することになる。よって、操作モードが操作モードE1,E2の間で切り替わっても、また、補助機の駆動用の馬力ΣLfが変化しても、エンジン21の回転数は上記マッチング回転数N6の近傍でほぼ一定に維持される。
【0046】
ここで、上述した冷却ファン45,45,…のような補助機を駆動するためのエンジン出力馬力の計算方法について説明する。ここでは、エンジン冷却用のファン45を例にとり説明する。ポンプコントローラ10にて、図1に示したエンジン水温センサ13、油温センサ14、外気温センサ15及び回転数センサ23により検出された現在のエンジン水温、作動油温、外気温度及びエンジン回転数に基づき、エンジン21の冷却に必要な冷却ファン45の目標回転数が計算される。目標回転数の計算方法の具体例は、後に図8を参照して説明される。そして、その目標回転数から、冷却ファン45に供給すべき馬力Lfが、例えば「Lf=pfan・qfan/450/ηt/ηv/0.98」という計算方法により求められる。この計算式において、pfanは冷却ファン45用の油圧モータ44へ加えるべき油圧、qfanは上記目標回転数に対応した冷却ファン用油圧ポンプ41の容量、ηtはトルク効率、ηvは容積効率である。エンジン冷却用のファン45以外の他の補助機(例えば、空調機の冷却ファン)についても、上記同様な方法で、必要な馬力Lfが計算される。計算された全ての補助機の必要馬力Lfが足し合わされて、合計の補助機駆動馬力ΣLfが求められる。なお、上記の計算に代えて、図1に示した記憶装置17に、エンジン水温、作動油温、外気温度及びエンジン回転数とファン風量及びファン回転数との相関関係を定義したルックアップテーブルや、ファン回転数とファン駆動馬力との相関関係を定義したルックアップテーブルなどを予め格納しておき、それらのルックアップテーブルを参照することで、現在の作動油温及び水温に対応するファン駆動馬力を求めるようにしてもよい。
【0047】
なお、上述した制御は、エンジン21がオーバーヒート状態でないとき(これは、油温センサ14での検出温度が所定温度T0を越えないことにより判断される。)に実施される。エンジン21がオーバーヒート状態である場合には、公知の別の制御を行なうことができる。
【0048】
図6は、ポンプコントローラ10とエンジンコントローラ20により行われる上記制御の処理手順を示す。
【0049】
図6に示すように、ステップS1で、ポンプコントローラ10は作業モード選択器16、作業機操作状態検出器11及び走行操作状態検出器12からの信号を取り込み、現在どの作業モードが選択されているか、及び、バケット、アーム、ブーム、旋回装置及び走行装置などの作業機に現在行われている操作種類が何であるかを識別する。その後、ステップS2で、識別された作業モードと操作種類に該当する操作モード(図3及び図5に示すA1〜A8,E1〜E5のうちのいずれか)がどれであるか決定される。決定された操作モードが操作モードA1〜A4、E1〜E2のいずれかである場合、設定テーブル50から、その操作モードに対応したエンジン出力トルク制御ライン(図3及び図5に示すT0〜T5のいずれか)とポンプトルク制御ライン(図3及び図5に示すM1〜M6のいずれか)が選択される。
【0050】
また、上記ステップS1〜S2と並行して、ステップS3〜S5が実行される。ステップS3で、ポンプコントローラ10はエンジン水温センサ13、油温センサ14、外気温センサ15及び回転数センサ23からの信号を取り込み、エンジン水温、作動油温、外気温度及びエンジン回転数を検出する。その後、ステップS4で、これらの検出値に基づいて、各冷却ファン45の回転数が決定される。要するに、各補助機の動作速度又はパワーが決定される。この後、ステップS5で、決定された全ての冷却ファン45,45,…の目標回転数(つまり、全ての補助機の動作速度又はパワー)に基づき、既に説明したような方法で、全ての冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計の吸収馬力ΣLfが求められる。
【0051】
その後、ステップS6では、前記ステップS2で決定されたエンジン出力トルク制御ライン(T0〜T5のいずれか)に対応するエンジン出力馬力(P0〜P5のいずれか)と、前記ステップS5で決定された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfとが加算されて、エンジン21の目標出力馬力が決定され、決定された目標出力馬力に対応した馬力制御指令がエンジンコントローラ20に与えられる。エンジンコントローラ20は、その馬力制御指令に従ってエンジン21の燃料噴射量を制御することにより、その目標出力馬力の等馬力線上で、エンジン21を駆動する。
【0052】
また、ステップS7で、前記ステップS2で選択されたポンプトルク制御ライン(M1〜M6のいずれか)上で、エンジン回転数に応じて、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが制御される。選択された一つのポンプトルク制御ライン上で作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクを制御するために、作業機用油圧ポンプ31の容量(斜板角度)をどのように制御するかという方法については、公知の方法を用いることができる。すなわち、選択されたポンプトルク制御ライン上で作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクの目標値が、エンジン回転数やその他の要因に応じて決定され、その合計吸収トルクの目標値が作業機用油圧ポンプ31,31,…の各々に配分され、そして、各作業機用油圧ポンプ31の吸収トルクが、それに配分された吸収トルクの目標値になるように、各作業機用油圧ポンプ31の容量(斜板角度)が、各作業機用油圧ポンプ31の油圧やその他の要因に応じて制御される。
【0053】
また、ステップS8で、各冷却ファン45がステップ3で決定された目標回転数で駆動されるように(つまり、各補助機のステップ3で決定された動作速度又はパワーで動作するように)、エンジン回転数に応じて、各冷却ファン用油圧ポンプ41の目標容量が計算され、そして、計算された容量になるように、各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量(斜板角度)が制御される。これにより、全ての各冷却ファン用油圧ポンプ(補助機用油圧ポンプ)41,41,…により、ステップS5で求められた計算値ΣLfとほぼ等しい馬力が吸収されることになる。よって、エンジン21の出力馬力からその合計吸収馬力(≒ΣLf)を差し引いた馬力、つまりステップS2で設定テーブル50から選択された吸収馬力にほぼ等しい馬力が、作業機用油圧ポンプ31,31,…に供給されることになる。
【0054】
図7には、上述した制御によるマッチングの様子が説明されている。
【0055】
例えば、現在の操作モードがA2である場合を想定する。この場合、操作モードA2に対応するエンジン出力トルク制御ラインT1(例えば、馬力値P1に相当する等馬力ライン)とポンプトルク制御ラインM2が選択される。両ラインT1とM2のマッチング点A'2での馬力値P1に、計算された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfが加算されて、目標出力馬力P1+ΣLfが求められる。エンジン21は、図7に示す目標出力馬力P1+ΣLfに相当する等馬力ライン上で動作するように制御される。また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…は合計で馬力ΣLfを吸収するように制御される。従って、マッチング点A'2でのエンジン21の出力馬力P1+ΣLfのうち、馬力ΣLfの部分は冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…に吸収され、残りの馬力P1が作業用ポンプ31,31,…に供給される。従って、作業用ポンプ31,31,…に対しては、エンジン21は、図7に示すエンジン出力トルク制御ラインT1(馬力P1に相当する等馬力ライン)上で動作することになる。そして、作業用ポンプ31,31,…の合計吸収トルクは、トルク制御ラインM2上で制御される。結果として、エンジン出力トルク制御ラインT1とトルク制御ラインM2とが交差するマッチング点A'2でエンジン21の動作が安定する。
【0056】
アクティブモードでは、図2に示したように、操作モードA1〜A4に対応するマッチング点A'1〜A'4は、同じエンジン回転数N1の位置に選ばれている。エコノミーモードでは、図4に示したように、操作モードE1〜E2に対応するマッチング点E'1〜E'2は、同じエンジン回転数N6の位置に選ばれている。よって、アクティブモードにおいては、作業機の操作種類が操作モードA1〜A4の間で変化しても、また、エコノミーモードにおいては操作モードE1とE2の間で変化しても、エンジン21はほぼ一定の回転数で動作し続ける。また、エンジン21の目標出力馬力には、計算された冷却ファン45,45,…の駆動に必要な馬力の合計値ΣLfが含められているので、冷却ファン45,45,…の駆動に必要な馬力が増減しても、エンジン21はほぼ一定の回転数で動作し続ける。その結果、良好な操作性が得られる。
【0057】
図8には、上述した冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の容量の制御処理の具体例に示されている。
【0058】
図8に示すステップS11は図6に示したステップS3〜S4に相当し、そこでは、各冷却ファン用油圧ポンプ41の目標回転数が決定される。すなわち、図8に示すルックアップテーブル60及び62がポンプコントローラ10に記憶されている。ルックアップテーブル60には、エンジン水温、作動油温及び外気温度にそれぞれ対応して、望ましいファン回転数が定義されている。他方、ルックアップテーブル62には、エンジン回転数に対応して、望ましいファン回転数が定義されている。いずれのルックアップテーブル60、62においても、ファン回転数は、十分に安全サイドに設定されている。ステップS11では、ルックアップテーブル60から、には、現在のエンジン水温、作動油温及び外気温度にそれぞれ対応した望ましいファン回転数が読み出され、また、ルックアップテーブル62から、現在のエンジン回転数に対応した望ましいファン回転数が読み出され、そして、これら読み出されたファン回転数のうち低い一つの値が、そのファン45の目標回転数として決定される。
【0059】
その後、ステップS12で、各冷却ファン45の目標回転数に対応する各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量qfanが、現在のエンジン回転数64に応じて計算される。この計算は、例えば、次の関係式を用いて行われる。
【0060】
(ファンモータ容量)×(ファン目標回転数)/(ファンモータ容積効率)
=(エンジン回転数)×(冷却ファン用油圧ポンプ容量qfan)×(ホ゜ンフ゜軸減速比)×(ホ゜ンフ゜容積効率)
その後、ステップS13で、各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量が、計算された各容量qfanになるように、各冷却ファン用油圧ポンプ41の斜板角度が制御される。すなわち、図8に示すような、容量qfanとEPC電流(斜板制御信号)値との関係を定義したルックアップテーブル64がポンプコントローラ10に記憶されており、このルックアップテーブル64から、計算された各容量qfanに対応するEPC電流(斜板制御信号)値が読み出され、そして、読み出された各値のEPC電流(斜板制御信号)が、各冷却ファン用油圧ポンプ41に対応する各斜板制御装置(EPCソレノイド)42に供給される。その結果、各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量が、計算された各容量qfanに制御される。
【0061】
次に、本発明に従う油圧駆動制御装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成は、図1に記載の構成と略同じである。図9は、この実施形態での制御方法を説明するための、エンジン及び作業機用油圧ポンプの出力特性を示す。図10は、この実施形態の制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示す図である。
【0062】
前の実施形態では、作業機や補助機などの負荷が要求する馬力に変動があってもエンジン21の回転数をほぼ一定に保つような制御が行われる。これに対し、例えば、ブルドーザや油圧ショベルにより押し土作業を行う場合には、回転速度よりむしろ一定のトルクが出力される方が、安定した押し土力が維持されるので、操作性がよい。本実施形態の制御は、このような用途に向けられたものである。すなわち、図8に示すように、作業機や補助機が要求する馬力が増減しても、エンジン21から作業機へ加わる出力トルクが一定値T0の近傍に維持されるように、エンジン21及び油圧ポンプポンプ31,31,…,41,41,…が制御される。
【0063】
図10に示すように、作業機の操作種類が、作業機駆動馬力の大きさが異なる例えば3種類の操作モードB1,B2,B3に分類される。操作モードB1は最も大きい馬力が要求される操作種類(例えば、走行装置のトランスミッションの高速段で行われる押し土作業)に対応し、次の操作モードB2は中程度の馬力が要求される操作種類(例えば、トランスミッションの中速段で行われる押し土作業)に対応し,最後の操作モードB3は最小の馬力が要求される操作種類(例えば、低速段で行われる押し土作業)に対応する。設定テーブル50には、操作モードB1,B2,B3にそれぞれ関連付けられて、異なるポンプトルク制御ラインM11,M12,M13及び異なるエンジン出力トルクラインT11,T12,T13が登録されている。ポンプトルク制御ラインM11,M12,M13とエンジン出力トルクラインT11,T12,T13は具体的には図9に示すようなものである。例えば、この実施形態では、エンジン出力トルクラインT11,T12,T13は、馬力値P11,P12,P13に相当する等馬力ラインである。ポンプトルク制御ラインM11,M12,M13は、エンジン出力トルクラインT11,T12,T13とマッチングがし易いように、エンジン出力トルクをエンジン回転数の増加関数として定義している。ここで注目すべきことは、各ポンプトルク制御ラインM11,M12,M13とエンジン出力トルクラインT11,T12,T13とのマッチング点での出力トルクが、一定値T0に設定されていることである。
【0064】
次に、本実施形態での制御手順を説明する。
【0065】
作業モード選択器16、作業機操作検出器11及び走行操作検出器12からの信号に基づき、ポンプコントローラ10にて、上述した操作モードB1,B2,B3のうちのどれが行われているかが判別される。判別された操作モードに対応したポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13とエンジン出力トルクラインT11,T12又はT13(例えば、馬力値P11,P12又はP13)が、設定テーブル50から選択される。前の実施形態の場合と同様に、作動油温、エンジン水温、外気温及びエンジン回転数などから、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfが計算される。選択されたポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13とエンジン出力トルクラインT11,T12又はT13とのマッチング点での出力馬力P11,P12又はP13に、上記計算された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfとが加算されて、エンジン21の目標出力馬力が求められる。目標出力馬力に応じた馬力制御指令がエンジンコントローラ20に与えられ、エンジンコントローラ20がエンジン21の燃料噴射量を制御する。それにより、目標出力馬力に対応する等馬力ライン上でエンジン21が動作する。同時に、選択されたポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13上で、エンジン回転数に応じて、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが制御される。また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…が前の実施形態におけると同様の方法で制御される。その結果、図9に示すように、選択されたエンジン出力トルクラインT11,T12又はT13と選択されたポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13とが交差するマッチング点B'1,B'2又はB'3の近傍で、エンジン21が動作する。従って、操作種類が操作モードB1,B2,B3の間で変化しても、また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の吸収馬力が変動しても、作業機へ供給されるエンジン21の出力トルクは、あまり変動せずに、マッチングトルク値T0の近傍に維持される。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、各エンジン出力トルク制御ラインが、或る馬力に対応する等馬力ラインとして定義されているが、必ずしもそうである必要はない。エンジン出力トルク制御ラインは、エンジン回転数によりエンジン出力馬力が変化するような特性ラインとして定義されていてもよい。いずれにしても、異なる操作モードに対応するエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのエンジンの回転数又は出力トルクが、例えばどの操作モードでも一定であるというような所望の特性をもつように、エンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインが定義されていればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、操作モードは、作業モードと操作種類の種々の組み合わせにそれぞれ対応しているが、必ずしもそうである必要はない。操作モードが、単に種々の操作種類に対応していてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、斜板式可変容量型の油圧ポンプが用いられているが、斜板式以外の可変容量型の油圧ポンプが用いられる場合にも本発明は適用可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、ポンプトルク制御ラインやエンジン出力馬力制御ラインの決定は、記憶装置に予め格納されている設定データに基づいて行われるが、他の方法、例えば演算関数を呼び出す方法で行われてもよい。
【0071】
補助機には、冷却ファンだけでなく他の種類の装置、例えば発電機や、或る種の作業機アタッチメントなどが含まれてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧駆動系を制御する油圧駆動制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンで駆動される複数の油圧ポンプからの圧油によって複数の作業機(例えば油圧ショベルのアーム、バケット、ブーム、旋回装置及び走行装置など)や補助機(例えばエンジン冷却ファン)などを駆動するようにした建設機械において、選択された作業モードに応じて、エンジンの出力特性(回転数及び出力トルク)を設定すると共に、複数の油圧ポンプの合成吸収トルク(1回転当たりの油吐出量×油圧)を所定の特性となるように制御して、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがマッチングした点にエンジンの動作点を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図11(a)及び(b)は、特許文献1に記載の各種作業モード時の制御を示すエンジン出力特性図である。同文献1によると、例えば、油圧ショベルにおいて、作業モードとして重掘削モードが選択されたときには、図11(a)に示されるように、最大目標エンジン回転数(以下、ハイアイドル回転数と言う。)が最高の回転数N'Aになるように、エンジンのガバナレバーの位置が制御され、それにより、最高速のレギュレーションラインLAが設定される。また、複数の油圧ポンプは、最高速レギュレーションラインLA上の最大の馬力点PHを通る等馬力特性AH上でトルクを吸収するように制御され、それらの合成吸収トルクは図示の特性A'Hに従って制御される。これにより、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクは馬力点PHでマッチングする。また、例えば、軽掘削モード(エコノミモード)が選択されているときには、図11(b)に示されるように、ハイアイドル回転数が、より低速の回転数N'Bに設定されることにより、より低速のレギュレーションラインLBが設定され、また、油圧ポンプの合成吸収トルクが、より小さい等馬力特性ASに従って制御される。これにより、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとは、低速のレギュレーションラインLB上の馬力点P'Sでマッチングし、エンジンは回転数NBで運転される。重掘削モードでは、エンジンから大きい馬力が出力可能であるから、効率的に作業を行うことが可能である。一方、軽掘削モードでは、エンジンからの出力馬力がより小さく抑えられるので、燃料消費量が低減される。
【0004】
【特許文献1】特開平2−38630号公報(第2−9頁、第1−7図、第18−21図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の制御装置においては、作業機や補助機などの負荷の駆動に必要な出力トルクの変動に伴って、上記マッチング点が上記レギュレーションラインに沿って移動し、エンジン回転数が変動することになる。ところが、エンジン回転数が変動すると、油圧ショベル等の建設機械では、エンジンで駆動される油圧ポンプの出力流量が変動してしまうので、作業機の運動速度が変わり、さらに駆動トルクも変動してしまう。このため、同じ作業モードで作業中に、オペレータの意思に関係無く、作業機の運動速度又は駆動トルク(例えば掘削力等)が変わるので、操作性の低下を招くという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、エンジンで駆動される油圧ポンプからの油圧により作業機を駆動するようになった建設機械において、作業機の運動速度又は駆動トルクを所望されるように制御し、操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従う、エンジンと、前記エンジンにより駆動される作業機用油圧ポンプとを備える建設機械の油圧駆動制御装置は、前記作業機の操作状態を検出する操作状態検出器と、前記操作状態検出器からの信号を受け、前記エンジン及び前記作業機用油圧ポンプを制御するコントローラとを備える。前記コントローラは、前記操作状態検出器からの信号を受けて前記作業機に対して行われる操作モードを識別し、異なる操作モードにより異なるエンジン出力トルク制御ライン及び異なるポンプトルク制御ラインが指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、所望のマッチング点をもつエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとを決定し、前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインに基づいて、前記エンジンの出力トルクを制御し、かつ、前記決定されたポンプトルク制御ラインに基づいて、前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクを制御するようになっている。
【0008】
この油圧駆動制御装置によれば、行われている操作モードに応じて、エンジンの出力トルク制御ラインとポンプのトルク制御ラインが可変される。エンジン出力トルク制御ラインに沿ってエンジンの出力トルクが制御され、ポンプトルク制御ラインに沿ってポンプの吸収トルクが制御される。その結果、エンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとのマッチング点で、エンジンが動作する。エンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインを適切に決定することで、例えば定回転数制御、或いは定トルク制御など、エンジンの回転数又は出力トルクを所望されるように制御できる。
【0009】
一つの好適な実施形態では、コントローラは、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのエンジン回転数がほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定する。これにより、上記所定の複数の操作モードの中で操作モードが変っても、エンジンの回転数はほぼ一定に維持されるので、作業機の動作速度が安定する。
【0010】
別の好適な実施形態では、コントローラは、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのトルクがほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定する。これにより、上記所定の複数の操作モードの中で操作モードが変っても、エンジンから作業機への出力トルクはほぼ一定に維持されるので、作業機の駆動トルクが安定する。
【0011】
一つの好適な実施形態では、コントローラは、異なる操作モードにより異なるポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、ポンプ吸収馬力を決定し、そして、前記決定されたポンプ吸収馬力の等馬力ラインを前記エンジン出力トルク制御ラインとして用いて、前記エンジンの出力トルクを制御するようになっている。操作モードに応じてポンプ吸収馬力を適切に決定することにより、操作モードが変っても作業機の動作速度又は駆動トルクを安定させることができる。
【0012】
一つの好適な実施形態では、建設機械には、前記建設機械の補助機(例えば、エンジン冷却ファン)を駆動するための、エンジンにより駆動される補助機用油圧ポンプが更に設けられる。そして、コントローラは、一方で、異なる操作モードにより異なる作業機ポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、前記作業機用油圧ポンプが吸収すべき作業機用ポンプ吸収馬力を決定し、他方で、前記補助機の動作に関する所定の状態値を検出し、前記検出された状態値に応じて、前記補助機用油圧ポンプが吸収すべき補助機用ポンプ吸収馬力を決定する。そして、コントローラは、前記エンジンの出力馬力が前記決定された作業機用ポンプ吸収馬力と前記決定された補助機用ポンプ吸収馬力との合計になるように、エンジンを制御する。また、コントローラは、作業機用油圧ポンプの吸収トルクが上記決定されたポンプトルク制御ラインに従うように、作業機用油圧ポンプを制御する。さらに、コントローラは、上記検出された状態値に応じて補助機の目標回転数を決定し、その決定された目標回転数で補助機を駆動できるように補助機用ポンプの容量を制御する。これにより、エンジン冷却ファンなどの補助機を駆動するための馬力が増減しても、作業機の駆動に必要な大きさの馬力を作業機に供給することができ、作業機の動作速度又は駆動トルクを安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、建設機械の作業機の運動速度又は駆動トルクを所望されるように制御することが容易になり、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う油圧駆動制御装置の一実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】アクティブモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示す図である。
【図3】アクティブモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示す図である。
【図4】エコノミモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示す図である。
【図5】エコノミモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及びそれ関連する制御値を示す図である。
【図6】制御処理を示すフローチャートである。
【図7】マッチングの様子を説明する図である。
【図8】冷却ファン用油圧ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の制御を説明するための、エンジン及び作業機用油圧ポンプの出力特性を示す図である。
【図10】第2実施形態の制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示す図である。
【図11】従来技術を説明するための、エンジン出力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
10…ポンプコントローラ、11…作業機操作状態検出器、12…走行操作状態検出器、13…エンジン水温センサ、14…油温センサ、15…外気温センサ、16…作業モード選択器、20…エンジンコントローラ、21…エンジン、22…燃料噴射ポンプ、23…回転数センサ、31…油圧ポンプ(作業機用)、32…斜板制御装置、33…方向切換弁、34…油圧アクチュエータ、35…パイロット圧操作弁、41…油圧ポンプ(冷却ファン用)、42…斜板制御装置、44…油圧モータ(冷却ファン用)、45…冷却ファン。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る油圧駆動制御装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る油圧制御装置の一実施形態のハードウェア構成を示すブロック図であり、図2はこの油圧制御装置の動作を説明するためのエンジン出力特性及びポンプ吸収トルク特性の説明図である。図1、図2を参照して、まずハードウェア構成を説明する。ここでは、本発明が適用される建設機械の一例として油圧ショベルを挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、エンジン21の出力シャフトに、パワーテイクオフ装置(図示せず)を介して、作業機用油圧ポンプ31と補助機用油圧ポンプ41が連結されている。作業機用油圧ポンプ31から吐出された圧油は、方向切換弁33を経由して、対応する作業機(例えば油圧ショベルのブーム、アーム、バケット、旋回装置又は走行装置等)を駆動するための油圧アクチュエータ(例えば油圧シリンダ又は油圧モータ)34に供給される。上記の方向切換弁33のパイロット操作部には、パイロット圧操作弁35の出力パイロット管路が接続されている。パイロット圧操作弁35は、方向切換弁33に、その作業機用の操作レバー(図示せず)の操作量に応じたパイロット圧を出力する。また、補助機用油圧ポンプ41から吐出された圧油は、制御弁43を経由して、対応する補助機(例えば、エンジン冷却ファン)45を駆動する油圧モータ44に供給される。
【0019】
上述した油圧ポンプ31,41はいずれも可変容量型、例えば斜板式可変容量型、のものである。油圧ポンプ31,41の斜板は、それぞれ、斜板制御装置32,42により駆動され、これら斜板制御装置32,42は、ポンプコントローラ10によって制御される。斜板制御装置32,42には、例えばEPC(Electrical Pressure Control)ソレノイド、或いは、特開昭61−81587号公報に記載されているような構成の装置が採用され得る。以下の説明では、斜板制御装置32,42はEPCソレノイドであるとし、コントローラ10から斜板制御信号としてEPC電流を受けるようになっている。
【0020】
ところで、図1では、一つの作業機用油圧ポンプ31しか図示されてないが、しかし実際にはブーム、アーム、バケット、旋回装置及び走行装置等の複数の作業機(図示せず)をそれぞれ駆動するために、複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…が設けられている。そして、複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…のそれぞれに対して、上述した斜板制御装置32、パイロット圧操作弁35、方向切換弁33、油圧アクチュエータ34が設けられている。同様に、図1では、一つの補助機用油圧ポンプ41しか図示されてないが、実際には、エンジン冷却用や空調機用などの冷却ファン45,45,…或いは例えば攪拌機のような特定の作業機アタッチメントような複数の補助機をそれぞれ駆動するために、複数の補助機用油圧ポンプ41,41,…が設けられている。ここで、補助機には、上述した冷却ファン45,45,…だけでなく他の種類の装置も含まれ得るが、以下の説明では、冷却ファン45,45,…を代表に取り上げて説明する。そして、複数のファン用油圧ポンプ41,41,…のそれぞれに対して、上述した斜板制御装置42、制御弁43及び油圧モータ44が設けられている。
【0021】
ポンプコントローラ10は、例えばマイクロコンピュータを含んだコンピュータ装置により構成される。ポンプコントローラ10は、作業機用油圧ポンプ31,31,…及びファン用油圧ポンプ41,41,…の容量を制御するための情報処理を行う。すなわち、ポンプコントローラ10は、後述する方法で、上述した複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計の吸収トルクの目標値を決定する。そして、ポンプコントローラ10は、その合計吸収トルクの目標値を各作業機用油圧ポンプ31に配分し、各作業機用油圧ポンプ31が配分された目標吸収トルクを吸収するように、各作業機用油圧ポンプ31の容量を決定し、そして、その容量に対応した斜板制御信号(EPC電流)を、各作業機用油圧ポンプ31対応する各斜板制御装置32へ出力する。各斜板制御装置32は、ポンプコントローラ10からの斜板制御信号(EPC電流)に応答して、各作業機用油圧ポンプ31の斜板角度を制御する。また、ポンプコントローラ10は、後述する方法で、上述した複数のファン45,45,…の各々の目標回転数を求め、各目標回転数に基づいて各ファン用油圧ポンプ41の容量を求め、そして、その容量に対応した斜板制御信号(EPC電流)を、各ファン用油圧ポンプ41対応する各斜板制御装置42へ出力する。各斜板制御装置42は、ポンプコントローラ10からの斜板制御信号(EPC電流)に応答して、各ファン用油圧ポンプ41の斜板角度を制御する。更に、ポンプコントローラ10は、後述するように、エンジンコントローラ20に対してエンジン馬力制御指令を出すための情報処理も行う。
【0022】
エンジン21には、燃料噴射量を調整する燃料噴射ポンプ22及びエンジン回転数を検出する回転数センサ23が備えられる。燃料噴射ポンプ22は、エンジンコントローラ20からの噴射量制御信号によって制御される。エンジンコントローラ20は、例えばマイクロコンピュータを含むコンピュータ装置で構成される。エンジンコントローラ20は、回転数センサ23からフィードバックされるエンジン回転数を監視しながら、ポンプコントローラ10から与えられるエンジン馬力制御指令に応答して、ポンプコントローラ10により指示されたエンジン馬力になるように、燃料噴射ポンプ22の燃料噴射量(スロットル開度)を制御する。このエンジンコントローラ20による燃料噴射量制御によって、エンジン21の出力馬力(回転数×出力トルク)が、エンジン21により駆動される全ての油圧ポンプ31,31,…,41,41,…が必要とする合計の馬力に対応した等馬力特性カーブに従うように制御される。
【0023】
ブーム、アーム、バケット及び旋回装置等の作業機の操作状態を検出するための作業機操作状態検出器11の出力がポンプコントローラ10に入力される。作業機操作状態検出器11には、例えば、各作業機用のパイロット圧操作弁35からの出力パイロット管路に所定圧以上の圧力がかかるとターンオンするような圧力スイッチが含まれる。ポンプコントローラ10は、その圧力スイッチのオン/オフの状態から、各作業機が操作されているか否かを判別する。或いは、作業機操作状態検出器11には、パイロット圧操作弁35の出力パイロット管路のパイロット圧を検出する圧力センサが含まれ、ポンプコントローラ10が、その圧力センサの検出圧力が所定圧力以上か否かをチェックし、所定圧力以上のときに作業機が現在操作されていると判断するようにしてもよい。ポンプコントローラ10は、作業機操作状態検出器11からの信号に基づいて、各種作業機に対して現在行われている操作種類(例えば、旋回操作、ブーム上げ操作又は掘削操作など)を識別する。
【0024】
また、作業機の中でもとりわけ走行装置の操作状態を検出するための走行操作状態検出器12の出力がポンプコントローラ10に入力される。走行操作状態検出器12には、例えば、走行装置用のパイロット圧操作弁35からの出力パイロット管路に結合された、上記と同様の圧力スイッチ又は圧力センサが含まれ、ポンプコントローラ10は、走行操作用のパイロット圧が所定圧以上のときに走行装置が現在操作されていると判断するようにしてよい。ポンプコントローラ10は、走行操作状態検出器12からの信号に基づいて、走行装置に対して現在行われている操作種類(例えば、前進か後進か、速度段は何段目かなど)を識別する。
【0025】
さらに、エンジン水温センサ13が、エンジン21の冷却水管路(図示せず)に取り付けられる。油温センサ14が、油圧ポンプ31のドレン管路(図示せず)に取り付けられる。外気温センサ15が、エンジン冷却用のファン45からエンジン21やラジエータ(図示せず)に送られる冷却風の通り道に配置される。これらのセンサ13,14,15の検出信号もポンプコントローラ10に入力される。
【0026】
また、この油圧ショベルの運転室内の図示しない操作パネル(図示せず)上には、オペレータが作業モード(作業のポリシー又はやり方のタイプ)を選択するための例えばスイッチのような作業モード選択器16が設けられている。以下の説明では、作業モードとして、例えば、アクティブモードとエコノミモードの2種類があるものとする。アクティブモードとエコノミモードの相違は、エンジン21から出力できる最大馬力の大きさが異なることである。後述するように、アクティブモードの時は、エコノミモードの時よりも、より大きい馬力を出力することができるようにエンジン21が制御される。アクティブモードは掘削や荷積みなどの作業を能率的に進めるのに適し、一方、エコノミモードは燃料消費を節約するために適する。作業モード選択器16の出力はポンプコントローラ10に入力され、ポンプコントローラ10はアクティブモードとエコノミモードのいずれが選択されたかを認識する。
【0027】
ポンプコントローラ10は、不揮発性の記憶装置17を備え、そこには、エンジン21の出力馬力及び油圧ポンプ31,31,…,41,41,…の容量を制御するために使用される種々のデータの設定が記述された設定テーブル50が格納される。後に具体的に説明するように、ポンプコントローラ10は、作業機操作検出器11、走行操作検出器12及び作業モード選択器16からの入力信号に基づき、現在選択されている作業モードがどれであるか(つまり、アクティブモードか、エコノミーモードか)、及びブーム、アーム、バケット、旋回装置及び走行装置等の作業機に対して現在行われている操作種類が何であるか(例えば、旋回操作、ブーム上げ操作及び掘削操作などのうちのどれが行われているか)を識別する。そして、ポンプコントローラ10は、識別された作業モードと操作種類に応じて、設定テーブル50を参照して、作業機用油圧ポンプ31,31,…に供給すべき合計馬力(作業機用油圧ポンプ31,31,…が吸収すべき合計馬力)を計算する。すなわち、設定テーブル50には、作業モードと操作種類の種々の組み合わせ(それぞれの組み合わせを以下では「操作モード」という)にそれぞれ関連付けられた複数のエンジン出力トルク制御ライン(例えば、図2及び図4に示されるT1,T2,T3,T4及びT5)の定義データが登録されている。ここで、この実施形態においては、一例として、それらのエンジン出力トルク制御ラインの定義データは、複数の馬力値(例えば、図2及び図4に示されるP1,P2,P3,P4及びP5)を示すデータである。換言すれば、各エンジン出力トルク制御ラインは、対応する馬力値の等馬力ラインとして定義されている。そして、それらのエンジン出力トルク制御ラインつまり馬力値の中から、現在の作業モードと操作種類に対応した一つの馬力値が、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計の吸収馬力として、ポンプコントローラ10により選択される。また、ポンプコントローラ10は、上述した温度センサ13,14,15からの入力信号に基づいて、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…に現在供給すべき合計馬力(冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…が吸収すべき合計馬力)の大きさを計算する。そして、ポンプコントローラ10は、計算された作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収馬力と冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力を足し合せて、エンジン21の目標出力馬力を計算し、その目標出力馬力にエンジン21の出力馬力を制御するための馬力制御指令を生成して、これをエンジンコントローラ20に出力する。エンジンコントローラ20は、馬力制御指令に応答してエンジン21の燃料噴射量を実質的に無段階つまり連続的に制御する。その結果、エンジン21は上記目標出力馬力に相当する馬力を出力する。
【0028】
さらに、ポンプコントローラ10は、識別された操作モード(作業モードと操作種類の組み合わせ)に応じて、設定テーブル50を参照して、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクを制御するための一つのポンプトルク制御ラインを決定する。すなわち、設定テーブル50には、種々の操作モードにそれぞれ関係付けられた複数のポンプトルク制御ライン(例えば、図2及び図4に示されているM1,M2,M3,M4,M5及びM6)の定義データが登録されており、それらのポンプトルク制御ラインの中から、現在の操作モードに対応した一つのポンプトルク制御ラインがポンプコントローラ10により選択される。そして、ポンプコントローラ10は、選択されたポンプトルク制御ラインに従って、エンジン回転数やその他の要因に応じて、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクの目標値を決定し、その合計吸収トルク目標値を複数の作業機用油圧ポンプ31,31,…に配分することで、各作業機用油圧ポンプ31の吸収トルクの目標値を決める。配分の仕方としては、作業機用油圧ポンプ31,31,…のそれぞれの平均油圧に応じて配分しても良いし、或いは、予め定めたポンプ毎の配分比で配分してもよい。ポンプコントローラ10は、各作業機用油圧ポンプ31が、配分された吸収トルクの目標値を吸収するように、各作業機用油圧ポンプ31の容量(斜板角度)を制御する。
【0029】
また、ポンプコントローラ10は、上述した温度センサ13,14,15からの入力信号に基づいて、各冷却ファン45の目標回転数を決定し、そして、現在のエンジン回転数に応じて、各冷却ファン45をその目標回転数で駆動するための各冷却ファン用油圧ポンプ41の目標容量を計算する。そして、ポンプコントローラ10は、その目標容量になるように各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量(斜板角度)を制御する。
【0030】
このような制御により、エンジン21の出力トルクと、全ての油圧ポンプ31,31,…,41,41,…の合計の吸収トルクとがマッチした点の近傍でエンジン21が動作することになる。このマッチング点近傍でのエンジン21の出力馬力のうち、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…へ供給される分は、上記のように計算された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収合計馬力にほぼ等しい値に制御されることになる。他方、マッチング点近傍でのエンジン21の出力馬力のうち、作業機用油圧ポンプ31,31,…へ供給される分は、現在の操作モードに応じて設定テーブル50から選ばれたエンジン出力トルクラインに対応する馬力値にほぼ一致することになる。また、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクは、現在の操作モードに応じて設定テーブル50から選ばれたポンプトルク制御ラインに沿うように制御されることになる。従って、上記マッチング点は、設定テーブル50から選ばれたエンジン出力トルクラインとポンプトルク制御ラインの交点に位置することになる。ここで、設定テーブル50に登録された上記複数のエンジン出力トルクラインとポンプトルク制御ラインとは、同じ作業モードにおいては操作モードが異なってもほぼ同じエンジン回転数の点で交差まりマッチするように設定されている。その結果、同じ作業モードが選択されている間は、オペレータが作業機に対して異なる操作を行ったり、冷却ファン45,45,…の目標回転速度が温度変化などに応じて変動したりしても、エンジン21はほぼ同じ回転数で動作し続けることができる。
【0031】
次に、上述した制御方法について、図2〜図5を参照して、更に具体的に説明する。
【0032】
上述したように、作業モードとして、重負荷用のアクティブモードと、軽負荷用のエコノミモードの2種類があると想定する。図2は、アクティブモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示し、図3は、アクティブモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示している。また、図4は、エコノミモードにおける制御方法を説明するための、エンジンと作業機用ポンプの出力特性を示し、図5は、エコノミモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及びそれ関連する制御値を示している。エコノミモードにおける制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示している。
【0033】
まず、図2及び図3を参照して、アクティブモードでの制御を説明する。
【0034】
アクティブモードでは、図3の最も左側の欄に示すように、作業機に対して行われ得る操作種類が、例えば4種類の操作モードA1〜A4に分類され、これらの操作モードA1〜A4は作業機用油圧ポンプ31に提供すべき馬力において相違する。図3では、最も上に示された操作モードA1が、最も大きい馬力を作業機に提供すべき操作種類であり、より下方の操作モードへ行くほど、作業機用油圧ポンプ31に提供すべき馬力が順に小さくなっていき、最も下に示された操作モードA4では、提供すべき馬力は最も小さい。操作モードA1〜A4のうちのどれが現在行われているかは、図1に示した作業機操作検出器11及び走行操作検出器12からの検出信号に基づいてポンプコントローラ10により判断される。
【0035】
図3に示すように、異なるポンプトルク制御ライン(作業機用ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが従うべき特性ライン)M1〜M4、及び異なるエンジン出力トルクラインT0〜T3が、異なる操作モードA1〜A4にそれぞれ関連付けられて、設定テーブル50に登録されている。これらポンプトルク制御ラインM1〜M4とエンジン出力トルクラインT0〜T3は、例えば図2に示すようなものである。
【0036】
図2に示すように、エンジン出力トルクラインT0〜T3は、それぞれ、エンジン出力トルクをエンジン回転数の減少関数として定義したものであり、例えば、本実施形態では、異なる馬力値P0〜P3にそれぞれ対応する等馬力ラインである。ここで、馬力値P0は、エンジン21が出力可能な最大馬力に相当する。設定テーブル50上で、エンジン出力トルクラインT0〜T3は、例えば、T0が100%、T1が90%、T2が80%、T3が70%というように、それぞれが対応する馬力P0〜P3のエンジン最大出力馬力P0に対するパーセンテージをで定義される。他方、各ポンプトルク制御ラインM1〜M4では、各エンジン出力トルクラインT0〜T3とマッチングし易いように、エンジントルクはエンジン回転数に対する増加関数である。ここで注目すべきことは、それぞれの操作モードA1〜A4に対応するポンプトルク制御ラインM1〜M4とエンジン出力トルクラインT0〜T3とが交差した(つまりマッチした)動作点におけるエンジン回転数(マッチング回転数)は、どの操作モードA1〜A4についても同一値N1であるということである。このように設定されたポンプトルク制御ラインM1〜M4とエンジン出力トルクラインT0〜T3の組み合わせを用いて、上述したような制御が行われることにより、操作モードが切り替えられても、エンジン21の回転数は上記マッチング回転数N1の近傍範囲でほぼ一定に維持されることになる。
【0037】
例えば、操作モードA2が行われているとき(例えば、旋回操作とブーム上げ操作が同時に行われていて、大きいエンジン出力馬力が要求されるとき)には、図3に示された設定テーブル50から、ポンプトルク制御ラインM2とエンジン出力トルクラインT1が選択される。選択されたポンプトルク制御ラインM2は、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが従うべき特性ラインを意味する。選択されたエンジン出力トルクラインT1は、作業機用ポンプ31,31,…が吸収すべきトルクの合計値(つまり、全ての作業機の駆動に必要なトルクの合計値)を意味する。また、作業機の駆動に必要なトルクの他に、冷却ファン45,45,…のような補助機を駆動するための追加のトルクが必要である。そこで、補助機駆動用の馬力ΣLfが、現在の作動油温及びエンジン水温などに基づき計算される(ここで、ΣLfとは、複数の冷却ファン45,45,…が必要とする馬力Lf1、Lf2、…を足し合わせた合計馬力という意味である)。そして、図3の右側の欄に示すように、図2に示すマッチング点A'2でのエンジン出力馬力(つまり作業機駆動用のエンジン出力馬力)P1と、計算された補助機駆動用のエンジン出力馬力ΣLfとが加算されて、その加算値P1+ΣLfが、エンジン出力馬力の目標値として設定される。そして、エンジン21の実際の出力馬力がその目標値P1+ΣLfに一致するように、エンジン21の出力馬力の制御が行われる。同時に、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが上記選択されたポンプトルク制御ラインM1に沿うように、作業機用油圧ポンプ31,31,…のそれぞれの容量(斜板角度)が、エンジン回転数やその他の要因に応じて制御される。更に同時に、現在の作業油温やエンジン水温や外気温などに応じた目標回転数で冷却ファン45,45,…を駆動するように、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の容量(斜板角度)が制御される。結果として、操作モードA2が行われているときには、図2に示すように、作業機駆動用のエンジン出力トルクラインT1と、ポンプトルク制御ラインM2とがマッチした動作点A'2の近傍で、エンジン21が動作する。よって、エンジン21の回転数は、上記マッチング回転数N1の近傍になる。
【0038】
ところで、図3に示すように、操作モードA2では、補助機駆動用の馬力ΣLfが所定値Ls以上である場合(換言すると、P1+ΣLfが、出力可能な最大馬力P0を超える場合)には、エンジン出力馬力の目標値は、補助機駆動用の馬力ΣLfに関係なく、最大馬力P0に設定される。
【0039】
また、操作モードA3が行われているとき(例えば、旋回とアーム掘削方向とが同時に行われていて、中程度の馬力が要求されるとき)には、図3に示された設定テーブル50から、ポンプトルク制御ラインM3とエンジン出力トルクラインT2が選択される。そして、上記と同様に、マッチング点でのエンジン21の出力馬力は、その目標値P2+ΣLfになるように制御され、同時に、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクはポンプトルク制御ラインM2に沿うように制御される。また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の容量が同様に制御される。その結果、図2に示すマッチング点A'3の近傍でエンジン21が動作し、よって、エンジン21の回転数は、上記マッチング回転数N1の近傍になる。
【0040】
また、操作モードA4が行われているとき(上記よりも小さいエンジン出力トルクで済むとき)には、図3に示された設定テーブル50から、ポンプトルク制御ラインM4とエンジン出力トルク制御ラインT3が選択される。そして、上記と同様に制御が行われて、図2に示すマッチング点A'4の近傍でエンジン21が動作し、よって、エンジン21の回転数は、上記マッチング回転数N1の近傍になる。
【0041】
以上のようにして、操作モードが変っても、エンジン21の回転数は、図3に示すマッチング回転数N1の近傍でほぼ一定に維持される。また、補助機駆動用の馬力ΣLfが変化しても、やはり、エンジン21の回転数は上記マッチング回転数N1の近傍でほぼ一定に維持される。
【0042】
次に、図4及び図5を参照して、エコノミモードでの制御について説明する。
【0043】
図5に示すように、エコノミモードにおいては、作業機の操作種類が、例えば2つの操作モードE1,E2に分類される。これらの操作モードE1,E2は、作業機駆動用の馬力にて相違し、操作モードE2はE1より作業機駆動馬力が小さくなっている。操作モードE1,E2に対して、それぞれ、異なるポンプトルク制御ラインM5,M6と、異なるエンジン出力トルク制御ラインT4,T5が、設定テーブル50に登録されている。ここで、エコノミモード用のポンプトルク制御ラインM5,M6は、例えば図4に示すようなものであり、これは、図2に示したアクティブモード用のポンプトルク制御ラインM1,M2と同じ又は近い特性をもつ。また、エコノミモード用のエンジン出力トルク制御ラインT4,T5は、例えば図4に示すようなものであり、これは図2に示したアクティブモード用のエンジン出力トルク制御ラインT2,T3と同じ又は近い特性をもつ。例えば、本実施形態では、エンジン出力トルク制御ラインT4,T5は、馬力値P4,P5に対応した当馬力ラインである。
【0044】
ここで注目すべきことは、図4に示すように、ポンプトルク制御ラインM5,M6と、エンジン出力トルク制御ラインT4,T5とが交差したマッチング点E'1,E'2のエンジン回転数は、回転数N6で一定であるということである。このマッチング回転数N6は、図2に示したアクティブモードでのマッチング回転数N1より、所定速度(例えば約100rpm)だけ低い値である。
【0045】
エコノミモードで操作モードE1,E2のいずれかが行われているときには、上述したアクティブモードで操作モードA1〜A4のいずれかが行われているときと同様の方法で制御が行われる。その結果、操作モードE1では図4に示すマッチング点E'1の近傍で、操作モードE2では図4に示すマッチング点E'2の近傍で、エンジン21が動作することになる。よって、操作モードが操作モードE1,E2の間で切り替わっても、また、補助機の駆動用の馬力ΣLfが変化しても、エンジン21の回転数は上記マッチング回転数N6の近傍でほぼ一定に維持される。
【0046】
ここで、上述した冷却ファン45,45,…のような補助機を駆動するためのエンジン出力馬力の計算方法について説明する。ここでは、エンジン冷却用のファン45を例にとり説明する。ポンプコントローラ10にて、図1に示したエンジン水温センサ13、油温センサ14、外気温センサ15及び回転数センサ23により検出された現在のエンジン水温、作動油温、外気温度及びエンジン回転数に基づき、エンジン21の冷却に必要な冷却ファン45の目標回転数が計算される。目標回転数の計算方法の具体例は、後に図8を参照して説明される。そして、その目標回転数から、冷却ファン45に供給すべき馬力Lfが、例えば「Lf=pfan・qfan/450/ηt/ηv/0.98」という計算方法により求められる。この計算式において、pfanは冷却ファン45用の油圧モータ44へ加えるべき油圧、qfanは上記目標回転数に対応した冷却ファン用油圧ポンプ41の容量、ηtはトルク効率、ηvは容積効率である。エンジン冷却用のファン45以外の他の補助機(例えば、空調機の冷却ファン)についても、上記同様な方法で、必要な馬力Lfが計算される。計算された全ての補助機の必要馬力Lfが足し合わされて、合計の補助機駆動馬力ΣLfが求められる。なお、上記の計算に代えて、図1に示した記憶装置17に、エンジン水温、作動油温、外気温度及びエンジン回転数とファン風量及びファン回転数との相関関係を定義したルックアップテーブルや、ファン回転数とファン駆動馬力との相関関係を定義したルックアップテーブルなどを予め格納しておき、それらのルックアップテーブルを参照することで、現在の作動油温及び水温に対応するファン駆動馬力を求めるようにしてもよい。
【0047】
なお、上述した制御は、エンジン21がオーバーヒート状態でないとき(これは、油温センサ14での検出温度が所定温度T0を越えないことにより判断される。)に実施される。エンジン21がオーバーヒート状態である場合には、公知の別の制御を行なうことができる。
【0048】
図6は、ポンプコントローラ10とエンジンコントローラ20により行われる上記制御の処理手順を示す。
【0049】
図6に示すように、ステップS1で、ポンプコントローラ10は作業モード選択器16、作業機操作状態検出器11及び走行操作状態検出器12からの信号を取り込み、現在どの作業モードが選択されているか、及び、バケット、アーム、ブーム、旋回装置及び走行装置などの作業機に現在行われている操作種類が何であるかを識別する。その後、ステップS2で、識別された作業モードと操作種類に該当する操作モード(図3及び図5に示すA1〜A8,E1〜E5のうちのいずれか)がどれであるか決定される。決定された操作モードが操作モードA1〜A4、E1〜E2のいずれかである場合、設定テーブル50から、その操作モードに対応したエンジン出力トルク制御ライン(図3及び図5に示すT0〜T5のいずれか)とポンプトルク制御ライン(図3及び図5に示すM1〜M6のいずれか)が選択される。
【0050】
また、上記ステップS1〜S2と並行して、ステップS3〜S5が実行される。ステップS3で、ポンプコントローラ10はエンジン水温センサ13、油温センサ14、外気温センサ15及び回転数センサ23からの信号を取り込み、エンジン水温、作動油温、外気温度及びエンジン回転数を検出する。その後、ステップS4で、これらの検出値に基づいて、各冷却ファン45の回転数が決定される。要するに、各補助機の動作速度又はパワーが決定される。この後、ステップS5で、決定された全ての冷却ファン45,45,…の目標回転数(つまり、全ての補助機の動作速度又はパワー)に基づき、既に説明したような方法で、全ての冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計の吸収馬力ΣLfが求められる。
【0051】
その後、ステップS6では、前記ステップS2で決定されたエンジン出力トルク制御ライン(T0〜T5のいずれか)に対応するエンジン出力馬力(P0〜P5のいずれか)と、前記ステップS5で決定された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfとが加算されて、エンジン21の目標出力馬力が決定され、決定された目標出力馬力に対応した馬力制御指令がエンジンコントローラ20に与えられる。エンジンコントローラ20は、その馬力制御指令に従ってエンジン21の燃料噴射量を制御することにより、その目標出力馬力の等馬力線上で、エンジン21を駆動する。
【0052】
また、ステップS7で、前記ステップS2で選択されたポンプトルク制御ライン(M1〜M6のいずれか)上で、エンジン回転数に応じて、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが制御される。選択された一つのポンプトルク制御ライン上で作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクを制御するために、作業機用油圧ポンプ31の容量(斜板角度)をどのように制御するかという方法については、公知の方法を用いることができる。すなわち、選択されたポンプトルク制御ライン上で作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクの目標値が、エンジン回転数やその他の要因に応じて決定され、その合計吸収トルクの目標値が作業機用油圧ポンプ31,31,…の各々に配分され、そして、各作業機用油圧ポンプ31の吸収トルクが、それに配分された吸収トルクの目標値になるように、各作業機用油圧ポンプ31の容量(斜板角度)が、各作業機用油圧ポンプ31の油圧やその他の要因に応じて制御される。
【0053】
また、ステップS8で、各冷却ファン45がステップ3で決定された目標回転数で駆動されるように(つまり、各補助機のステップ3で決定された動作速度又はパワーで動作するように)、エンジン回転数に応じて、各冷却ファン用油圧ポンプ41の目標容量が計算され、そして、計算された容量になるように、各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量(斜板角度)が制御される。これにより、全ての各冷却ファン用油圧ポンプ(補助機用油圧ポンプ)41,41,…により、ステップS5で求められた計算値ΣLfとほぼ等しい馬力が吸収されることになる。よって、エンジン21の出力馬力からその合計吸収馬力(≒ΣLf)を差し引いた馬力、つまりステップS2で設定テーブル50から選択された吸収馬力にほぼ等しい馬力が、作業機用油圧ポンプ31,31,…に供給されることになる。
【0054】
図7には、上述した制御によるマッチングの様子が説明されている。
【0055】
例えば、現在の操作モードがA2である場合を想定する。この場合、操作モードA2に対応するエンジン出力トルク制御ラインT1(例えば、馬力値P1に相当する等馬力ライン)とポンプトルク制御ラインM2が選択される。両ラインT1とM2のマッチング点A'2での馬力値P1に、計算された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfが加算されて、目標出力馬力P1+ΣLfが求められる。エンジン21は、図7に示す目標出力馬力P1+ΣLfに相当する等馬力ライン上で動作するように制御される。また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…は合計で馬力ΣLfを吸収するように制御される。従って、マッチング点A'2でのエンジン21の出力馬力P1+ΣLfのうち、馬力ΣLfの部分は冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…に吸収され、残りの馬力P1が作業用ポンプ31,31,…に供給される。従って、作業用ポンプ31,31,…に対しては、エンジン21は、図7に示すエンジン出力トルク制御ラインT1(馬力P1に相当する等馬力ライン)上で動作することになる。そして、作業用ポンプ31,31,…の合計吸収トルクは、トルク制御ラインM2上で制御される。結果として、エンジン出力トルク制御ラインT1とトルク制御ラインM2とが交差するマッチング点A'2でエンジン21の動作が安定する。
【0056】
アクティブモードでは、図2に示したように、操作モードA1〜A4に対応するマッチング点A'1〜A'4は、同じエンジン回転数N1の位置に選ばれている。エコノミーモードでは、図4に示したように、操作モードE1〜E2に対応するマッチング点E'1〜E'2は、同じエンジン回転数N6の位置に選ばれている。よって、アクティブモードにおいては、作業機の操作種類が操作モードA1〜A4の間で変化しても、また、エコノミーモードにおいては操作モードE1とE2の間で変化しても、エンジン21はほぼ一定の回転数で動作し続ける。また、エンジン21の目標出力馬力には、計算された冷却ファン45,45,…の駆動に必要な馬力の合計値ΣLfが含められているので、冷却ファン45,45,…の駆動に必要な馬力が増減しても、エンジン21はほぼ一定の回転数で動作し続ける。その結果、良好な操作性が得られる。
【0057】
図8には、上述した冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の容量の制御処理の具体例に示されている。
【0058】
図8に示すステップS11は図6に示したステップS3〜S4に相当し、そこでは、各冷却ファン用油圧ポンプ41の目標回転数が決定される。すなわち、図8に示すルックアップテーブル60及び62がポンプコントローラ10に記憶されている。ルックアップテーブル60には、エンジン水温、作動油温及び外気温度にそれぞれ対応して、望ましいファン回転数が定義されている。他方、ルックアップテーブル62には、エンジン回転数に対応して、望ましいファン回転数が定義されている。いずれのルックアップテーブル60、62においても、ファン回転数は、十分に安全サイドに設定されている。ステップS11では、ルックアップテーブル60から、には、現在のエンジン水温、作動油温及び外気温度にそれぞれ対応した望ましいファン回転数が読み出され、また、ルックアップテーブル62から、現在のエンジン回転数に対応した望ましいファン回転数が読み出され、そして、これら読み出されたファン回転数のうち低い一つの値が、そのファン45の目標回転数として決定される。
【0059】
その後、ステップS12で、各冷却ファン45の目標回転数に対応する各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量qfanが、現在のエンジン回転数64に応じて計算される。この計算は、例えば、次の関係式を用いて行われる。
【0060】
(ファンモータ容量)×(ファン目標回転数)/(ファンモータ容積効率)
=(エンジン回転数)×(冷却ファン用油圧ポンプ容量qfan)×(ホ゜ンフ゜軸減速比)×(ホ゜ンフ゜容積効率)
その後、ステップS13で、各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量が、計算された各容量qfanになるように、各冷却ファン用油圧ポンプ41の斜板角度が制御される。すなわち、図8に示すような、容量qfanとEPC電流(斜板制御信号)値との関係を定義したルックアップテーブル64がポンプコントローラ10に記憶されており、このルックアップテーブル64から、計算された各容量qfanに対応するEPC電流(斜板制御信号)値が読み出され、そして、読み出された各値のEPC電流(斜板制御信号)が、各冷却ファン用油圧ポンプ41に対応する各斜板制御装置(EPCソレノイド)42に供給される。その結果、各冷却ファン用油圧ポンプ41の容量が、計算された各容量qfanに制御される。
【0061】
次に、本発明に従う油圧駆動制御装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成は、図1に記載の構成と略同じである。図9は、この実施形態での制御方法を説明するための、エンジン及び作業機用油圧ポンプの出力特性を示す。図10は、この実施形態の制御で使用される、設定テーブル50の登録データ及び関連する制御値を示す図である。
【0062】
前の実施形態では、作業機や補助機などの負荷が要求する馬力に変動があってもエンジン21の回転数をほぼ一定に保つような制御が行われる。これに対し、例えば、ブルドーザや油圧ショベルにより押し土作業を行う場合には、回転速度よりむしろ一定のトルクが出力される方が、安定した押し土力が維持されるので、操作性がよい。本実施形態の制御は、このような用途に向けられたものである。すなわち、図8に示すように、作業機や補助機が要求する馬力が増減しても、エンジン21から作業機へ加わる出力トルクが一定値T0の近傍に維持されるように、エンジン21及び油圧ポンプポンプ31,31,…,41,41,…が制御される。
【0063】
図10に示すように、作業機の操作種類が、作業機駆動馬力の大きさが異なる例えば3種類の操作モードB1,B2,B3に分類される。操作モードB1は最も大きい馬力が要求される操作種類(例えば、走行装置のトランスミッションの高速段で行われる押し土作業)に対応し、次の操作モードB2は中程度の馬力が要求される操作種類(例えば、トランスミッションの中速段で行われる押し土作業)に対応し,最後の操作モードB3は最小の馬力が要求される操作種類(例えば、低速段で行われる押し土作業)に対応する。設定テーブル50には、操作モードB1,B2,B3にそれぞれ関連付けられて、異なるポンプトルク制御ラインM11,M12,M13及び異なるエンジン出力トルクラインT11,T12,T13が登録されている。ポンプトルク制御ラインM11,M12,M13とエンジン出力トルクラインT11,T12,T13は具体的には図9に示すようなものである。例えば、この実施形態では、エンジン出力トルクラインT11,T12,T13は、馬力値P11,P12,P13に相当する等馬力ラインである。ポンプトルク制御ラインM11,M12,M13は、エンジン出力トルクラインT11,T12,T13とマッチングがし易いように、エンジン出力トルクをエンジン回転数の増加関数として定義している。ここで注目すべきことは、各ポンプトルク制御ラインM11,M12,M13とエンジン出力トルクラインT11,T12,T13とのマッチング点での出力トルクが、一定値T0に設定されていることである。
【0064】
次に、本実施形態での制御手順を説明する。
【0065】
作業モード選択器16、作業機操作検出器11及び走行操作検出器12からの信号に基づき、ポンプコントローラ10にて、上述した操作モードB1,B2,B3のうちのどれが行われているかが判別される。判別された操作モードに対応したポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13とエンジン出力トルクラインT11,T12又はT13(例えば、馬力値P11,P12又はP13)が、設定テーブル50から選択される。前の実施形態の場合と同様に、作動油温、エンジン水温、外気温及びエンジン回転数などから、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfが計算される。選択されたポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13とエンジン出力トルクラインT11,T12又はT13とのマッチング点での出力馬力P11,P12又はP13に、上記計算された冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の合計吸収馬力ΣLfとが加算されて、エンジン21の目標出力馬力が求められる。目標出力馬力に応じた馬力制御指令がエンジンコントローラ20に与えられ、エンジンコントローラ20がエンジン21の燃料噴射量を制御する。それにより、目標出力馬力に対応する等馬力ライン上でエンジン21が動作する。同時に、選択されたポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13上で、エンジン回転数に応じて、作業機用油圧ポンプ31,31,…の合計吸収トルクが制御される。また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…が前の実施形態におけると同様の方法で制御される。その結果、図9に示すように、選択されたエンジン出力トルクラインT11,T12又はT13と選択されたポンプトルク制御ラインM11,M12又はM13とが交差するマッチング点B'1,B'2又はB'3の近傍で、エンジン21が動作する。従って、操作種類が操作モードB1,B2,B3の間で変化しても、また、冷却ファン用油圧ポンプ41,41,…の吸収馬力が変動しても、作業機へ供給されるエンジン21の出力トルクは、あまり変動せずに、マッチングトルク値T0の近傍に維持される。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、各エンジン出力トルク制御ラインが、或る馬力に対応する等馬力ラインとして定義されているが、必ずしもそうである必要はない。エンジン出力トルク制御ラインは、エンジン回転数によりエンジン出力馬力が変化するような特性ラインとして定義されていてもよい。いずれにしても、異なる操作モードに対応するエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのエンジンの回転数又は出力トルクが、例えばどの操作モードでも一定であるというような所望の特性をもつように、エンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインが定義されていればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、操作モードは、作業モードと操作種類の種々の組み合わせにそれぞれ対応しているが、必ずしもそうである必要はない。操作モードが、単に種々の操作種類に対応していてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、斜板式可変容量型の油圧ポンプが用いられているが、斜板式以外の可変容量型の油圧ポンプが用いられる場合にも本発明は適用可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、ポンプトルク制御ラインやエンジン出力馬力制御ラインの決定は、記憶装置に予め格納されている設定データに基づいて行われるが、他の方法、例えば演算関数を呼び出す方法で行われてもよい。
【0071】
補助機には、冷却ファンだけでなく他の種類の装置、例えば発電機や、或る種の作業機アタッチメントなどが含まれてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(21)と、前記エンジンにより駆動される作業機用油圧ポンプ(31)とを備える建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記作業機の操作状態を検出する操作状態検出器(11,12)と、
前記操作状態検出器からの信号を受け、前記エンジン及び前記作業機用油圧ポンプを制御するコントローラ(10,20)と
を備え、
前記コントローラ(10,20)は、
前記操作状態検出器からの信号を受けて前記作業機に対して行われる操作モードを識別し(S1)、
異なる操作モードにより異なるエンジン出力トルク制御ライン及び異なるポンプトルク制御ラインが指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、所望のマッチング点をもつエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとを決定し(S2)、
前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインに基づいて、前記エンジンの出力トルクを制御し(S6)、かつ、
前記決定されたポンプトルク制御ラインに基づいて、前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクを制御する(S7)、
こと特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
コントローラ(10,20)は、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのエンジン回転数がほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定することを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
コントローラ(10,20)は、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのトルクがほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定することを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記コントローラ(10,20)は、
異なる操作モードにより異なるポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、ポンプ吸収馬力を決定し(S2)、そして、
前記決定されたポンプ吸収馬力の等馬力ラインを前記エンジン出力トルク制御ラインとして用いて、前記エンジンの出力トルクを制御する(S6)、
こと特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記建設機械の補助機を駆動するための、前記エンジンにより駆動される補助機用油圧ポンプ(41)を更に備え、
前記コントローラ(10,20)は、
異なる操作モードにより異なる作業機ポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、前記作業機用油圧ポンプが吸収すべき作業機用ポンプ吸収馬力を決定し(S2)、
前記補助機の動作に関する所定の状態値を検出し(S3)、前記検出された状態値に応じて、前記補助機用油圧ポンプが吸収すべき補助機用ポンプ吸収馬力を決定し(S4)、
前記エンジンの出力馬力が前記決定された作業機用ポンプ吸収馬力と前記決定された補助機用ポンプ吸収馬力との合計になるように、前記エンジンを制御する(S6)、
ことを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記コントローラ(10,20)は、
前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクが前記決定されたポンプトルク制御ラインに従うように、前記作業機用油圧ポンプを制御し、
前記検出された状態値に応じて前記補助機の目標回転数を決定し、前記決定された目標回転数で補助機を駆動できるように前記補助機用ポンプの容量を制御することを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項7】
エンジン(21)と、前記エンジンにより駆動される作業機用油圧ポンプ(31)とを備える建設機械の油圧駆動制御方法において、
前記作業機に対して行われる操作モードを識別するステップ(S1)と、
異なる操作モードにより異なるエンジン出力トルク制御ライン及び異なるポンプトルク制御ラインが指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、所望のマッチング点をもつエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとを決定するステップ(S2)と、
前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインに基づいて、前記エンジンの出力トルクを制御するステップ(S6)と、
前記決定されたポンプトルク制御ラインに基づいて、前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクを制御するステップ(S7)と
を有する油圧駆動制御方法。
【請求項1】
エンジン(21)と、前記エンジンにより駆動される作業機用油圧ポンプ(31)とを備える建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記作業機の操作状態を検出する操作状態検出器(11,12)と、
前記操作状態検出器からの信号を受け、前記エンジン及び前記作業機用油圧ポンプを制御するコントローラ(10,20)と
を備え、
前記コントローラ(10,20)は、
前記操作状態検出器からの信号を受けて前記作業機に対して行われる操作モードを識別し(S1)、
異なる操作モードにより異なるエンジン出力トルク制御ライン及び異なるポンプトルク制御ラインが指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、所望のマッチング点をもつエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとを決定し(S2)、
前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインに基づいて、前記エンジンの出力トルクを制御し(S6)、かつ、
前記決定されたポンプトルク制御ラインに基づいて、前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクを制御する(S7)、
こと特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
コントローラ(10,20)は、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのエンジン回転数がほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定することを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
コントローラ(10,20)は、前記識別された操作モードが所定の複数の操作モードのいずれかに該当する場合、どの操作モードが識別されても前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインと前記決定されたポンプトルク制御ラインとのマッチング点でのトルクがほぼ一定の所定値になるように、前記エンジン出力トルク制御ラインと前記ポンプトルク制御ラインを決定することを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記コントローラ(10,20)は、
異なる操作モードにより異なるポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、ポンプ吸収馬力を決定し(S2)、そして、
前記決定されたポンプ吸収馬力の等馬力ラインを前記エンジン出力トルク制御ラインとして用いて、前記エンジンの出力トルクを制御する(S6)、
こと特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記建設機械の補助機を駆動するための、前記エンジンにより駆動される補助機用油圧ポンプ(41)を更に備え、
前記コントローラ(10,20)は、
異なる操作モードにより異なる作業機ポンプ吸収馬力が指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、前記作業機用油圧ポンプが吸収すべき作業機用ポンプ吸収馬力を決定し(S2)、
前記補助機の動作に関する所定の状態値を検出し(S3)、前記検出された状態値に応じて、前記補助機用油圧ポンプが吸収すべき補助機用ポンプ吸収馬力を決定し(S4)、
前記エンジンの出力馬力が前記決定された作業機用ポンプ吸収馬力と前記決定された補助機用ポンプ吸収馬力との合計になるように、前記エンジンを制御する(S6)、
ことを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械の油圧駆動制御装置において、
前記コントローラ(10,20)は、
前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクが前記決定されたポンプトルク制御ラインに従うように、前記作業機用油圧ポンプを制御し、
前記検出された状態値に応じて前記補助機の目標回転数を決定し、前記決定された目標回転数で補助機を駆動できるように前記補助機用ポンプの容量を制御することを特徴とする油圧駆動制御装置。
【請求項7】
エンジン(21)と、前記エンジンにより駆動される作業機用油圧ポンプ(31)とを備える建設機械の油圧駆動制御方法において、
前記作業機に対して行われる操作モードを識別するステップ(S1)と、
異なる操作モードにより異なるエンジン出力トルク制御ライン及び異なるポンプトルク制御ラインが指定されるようにして、前記識別された操作モードに応じて、所望のマッチング点をもつエンジン出力トルク制御ラインとポンプトルク制御ラインとを決定するステップ(S2)と、
前記決定されたエンジン出力トルク制御ラインに基づいて、前記エンジンの出力トルクを制御するステップ(S6)と、
前記決定されたポンプトルク制御ラインに基づいて、前記作業機用油圧ポンプの吸収トルクを制御するステップ(S7)と
を有する油圧駆動制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/056933
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516151(P2005−516151)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018313
【国際出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/018313
【国際出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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