説明

建設機械の運転室構造

【課題】サイド、リヤ、ルーフなどのパネルを柱に接合し箱状に形成する運転室の製造を容易にし、生産性を向上させる。
【解決手段】運転室(2)を形成する柱に、一対の柱材(20,22)を並べ重ねて一体に接合される複合柱(16,18)を含め、複合柱(16,18)の柱材(20,22)それぞれに、柱材(20,22)それぞれに隣接するパネル組立体(4,6,8)を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の運転室構造、さらに詳しくは、製造を容易にし、生産性を向上することができる運転室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の運転室は鋼製の部材を溶接などによって接合し略矩形の箱状に形成されている。例えば、代表的な建設機械である油圧ショベルの運転室の典型例は、運転室を形成する各部分を予めサブ組立し、サブ組立した左右のサイドパネルを立てた姿勢にし、その間にリヤ、ルーフなどのパネルを接合し、箱状に完成させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、運転室に機体転倒時あるいは落下物対応などのための強度の付与が要求される場合は、運転室に鋼管の柱を立設し、この柱にサイド、リヤ、ルーフなどのパネルを接合し運転室を完成させている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−140283号公報(第5図)
【特許文献2】特開2005−335474号公報(第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおりの形態の従来の建設機械の運転室構造には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0005】
運転室の製造を容易にし、生産性を向上させるには、上述のように、サイド、リヤ、ルーフなどの各部分をそれぞれ、良好な溶接作業姿勢、溶接作業環境でサブ組立し、サブ組立した部分を接合し、運転室として組立てるのが望ましい。
【0006】
しかしながら、運転室に柱を設ける場合は、例えば運転室の後部左右に柱を設ける場合は、左右の柱それぞれに左右のサイドパネルとともにリヤパネルが接合されるので、リヤの柱をリヤパネルのサブ組立に含めて組立てると、左右のサイドパネルのサブ組立に接合する柱がなくなる。
【0007】
特に、柱に直接接合される部材が多い場合には、例えばサイドパネルのサブ組立のときに柱がないと、これらの部材の柱への溶接を、運転室全体を箱状に組立てるときに行わねばならず、溶接作業姿勢、溶接作業環境などが悪くなり、製造しにくく、生産性が著しく低下する。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、サイド、リヤ、ルーフなどのパネルを柱に接合し箱状に形成する運転室の製造を容易にし、生産性を向上させることができる、建設機械の運転室構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば上記技術的課題を解決する建設機械の運転室構造として、運転室を形成するパネルが接合される柱を備え、該柱が、一対の柱材を並べ重ねて一体に接合される複合柱を含み、この複合柱の柱材それぞれに、柱材それぞれに隣接するパネルが接合されていることを特徴とする建設機械の運転室構造が提供される。
【0010】
好適には、複合柱は、運転室の後部左右に立設されるリヤ柱である。また、複合柱の一対の柱材は、それぞれ矩形断面管により形成され、一対の矩形断面管は、同じ大きさの断面を有している。さらに、複合柱の運転室外面側を覆うカバー材を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従って構成された建設機械の運転室構造は、運転室を形成するパネルが接合される柱を備え、該柱が、一対の柱材を並べ重ねて一体に接合される複合柱を含み、この複合柱の柱材それぞれに、柱材それぞれに隣接するパネルが接合されている。
【0012】
したがって、複合柱の一方の柱材を、それに隣接したパネル、例えばリヤパネルのサブ組立に含め、他方の柱材を、それに隣接したパネル、例えばサイドパネルのサブ組立に含め、それぞれのサブ組立を、それぞれ好適な溶接作業姿勢、溶接作業環境で行い、運転室全体を箱状に組立てるときには一対の柱材同士の接合のみでよいので、運転室の製造を容易にし、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された建設機械の運転室構造について、代表的な建設機械である油圧ショベルの運転室における好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0014】
図1および図2を参照して説明する。図2は運転室を形成する複数のサブ組立体を溶接などによって接合する前の状態を示し、図1はそれらを接合して箱状に完成させた状態を示している。この運転室は、サッシ、ガラス、ドア、内装などを組み込む前の骨組み構造体の状態で示されている。
【0015】
全体を番号2で示す運転室2は、種々の鋼製部材を溶接などによって接合し形成したサブ組立体である、左サイドパネル組立体4、右サイドパネル組立体6、リヤパネル組立体8、ルーフパネル組立体10、フロント上部組立体12、およびフロント下部組立体14を備えている。運転室2の底面は、運転室2を建設機械の機体の操縦席床上に設置するために開放されている。
【0016】
運転室2の後部(図1、図2の右側部)左右には、左サイドパネル組立体4とリヤパネル組立体8ならびに右サイドパネル組立体6とリヤパネル組立体8それぞれの間に立設された柱である、左のリヤ柱16、右のリヤ柱18を備えている。
【0017】
リヤ柱16、18は実質上同じに形成され、それぞれ矩形断面管によって形成された一対の柱材20,22を並べ重ねて一体に接合される複合柱に形成されている。一方の柱材20は、隣接する左サイドパネル組立体4または右サイドパネル組立体6の側に位置付けられ、他方の柱材22は、隣接するリヤパネル組立体8の側に位置付けられている。一対の矩形断面管は同じ大きさの断面を有している。
【0018】
一方のリヤ柱16の柱材20には隣接した左サイドパネル組立体4が接合され、他方のリヤ柱18の柱材20には隣接した右サイドパネル組立体6が接合され、リヤ柱16、18それぞれの柱材22には隣接したリヤパネル組立体8が接合されている。
【0019】
したがって、リヤ柱16の柱材20は左サイドパネル組立体4に、リヤ柱18の柱材20は右サイドパネル組立体6に、またリヤ柱16、18の柱材22はリヤパネル組立体8に、それぞれ一体に接合され含まれている。
【0020】
そして、一対の柱材20,22は、各組立体を接合し運転室2を箱状に完成させる段階において一体に溶接される(この溶接については後に詳述する)。
【0021】
リヤパネル組立体8は、左右の柱材22,22に接合されるパネル8aと、左右の柱材22,22の間に差し渡されそれぞれに接合される複数の梁部材8c、8d、8eと、これらの梁部材と柱材22の当接部に接合される複数の補強用ガセットGを備えている。
【0022】
左サイドパネル組立体4は、柱材20とともに枠体を形成する上梁4a、前柱4b、下梁4cと、柱材20、上梁4a、下梁4cに接合されるパネル4dと、下梁4dと柱材20の当接部分に接合される複数の補強用ガセットGを備えている。
【0023】
右サイドパネル組立体6は、柱材20とともに枠体を形成する上梁6a、前柱6b、下梁6cと、柱材20、上梁6a、下梁6cに接合されるパネル6dと、上梁6a、下梁6dと柱材20の当接部に接合される複数の補強用のガセットGを備えている。
【0024】
ルーフパネル組立体10、フロント上部組立体12、およびフロント下部組立体14は複合柱であるリヤ柱16、18に直接関係しないので、その詳細な説明は省略する。
【0025】
リヤパネル組立体8などの複数の組立体は、溶接などによって図1に示すごとく一体に接合され箱状の運転室2が組立てられる。このときに、リヤ柱16、18を形成する一対の柱材20、22は、合わせ部の両脇に形成される開先部によって一体に溶接接合される(図1拡大断面図参照)。
【0026】
複合柱であるリヤ柱16、18の、運転室2外面側には一対の柱材20、22を覆う、リヤ柱16、18の全長にわたって延びた、カバー材24が、板材を断面チャンネル形状に成形して、左サイドパネル組立体4およびリヤパネル組立体8、また右サイドパネル組立体6およびリヤパネル組立体8にそれぞれ接合され備えられている。
【0027】
上述したとおりの建設機械の運転室構造の作用効果について説明する。
【0028】
運転室2を形成するパネルが接合される柱が、一対の柱材20、22を並べ重ねて一体に接合される複合柱であるリヤ柱16、18を含み、この複合柱16、18の柱材20、22それぞれに、それぞれに隣接するパネルが接合されている。
【0029】
すなわち、複合柱16、18の一方の柱材22を、それに隣接したリヤパネルのサブ組立であるリヤパネル組立体8に含め、他方の柱材20を、それに隣接したサイドパネルのサブ組立である左サイドパネル組立体4および右サイドパネル組立体6に含め、それぞれのサブ組立を、良好な溶接作業姿勢、溶接作業環境で行い、一対の柱材20,22同士は運転室2全体を箱状に組立てるときに接合して複合柱にする。したがって、多くの補強部材などの柱への溶接を、運転室全体を箱状に組立てるときに行わなくてもよいので、運転室2の製造が容易になり、生産性が向上される。
【0030】
さらに、複合柱であるリヤ柱16、18は、単一の柱に比べて2重に補強される(単一の柱の中を補強した形態になる)ので、運転室2の剛性を向上させることができる。単一の柱と同一の強度でよければ複合柱を細くすることもできる。
【0031】
複合柱が運転室2の後部左右に立設されるリヤ柱16,18として備えられるので、運転室2の後部に位置する建設機械の運転者を有効に保護することができる。すなわち、リヤ柱16,18そのものの強度を有するとともに、リヤ柱16,18には多くの補強部材などが容易に接合されている。
【0032】
複合柱16,18を形成する一対の柱材20,22は、それぞれ矩形断面管により形成されているので、相互にまた隣接した部材の接合が容易であり、運転室の製造を容易にする。
【0033】
柱材20,22としての一対の矩形断面管は、実質上同じ大きさの断面を有しているので、材料の入手、在庫管理が容易になり、運転室の製造をより容易にする。
【0034】
さらに、複合柱であるリヤ柱16、18の運転室外面側を覆うカバー材24を備えているので、運転室2の外観、見映えの品質を向上させることができる。
【0035】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0036】
本発明の実施の形態においては、一対の柱材を並べ重ねて一体に接合される複合柱は、運転室後部のリヤ柱16,18に適用されているが、運転室の前柱の部分など、他の柱に適用することもできる。
【0037】
本発明の実施の形態においては、複合柱16,18を形成する一対の柱材20,22は矩形断面管によって形成されているが、他の多角形管、円管などでもよい。
【0038】
本発明の実施の形態においては、複合柱16,18を形成する一対の柱材20,22は同じ大きさの断面を有した矩形断面管によって形成されているが、異なった大きさの矩形断面管であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従って構成された建設機械の運転室構造を組立状態で示した斜視図。
【図2】図1に示す運転室を、各部分の組立体を接合する前の状態で示した斜視図。
【符号の説明】
【0040】
2:運転室
4:左サイドパネル組立体(パネル)
6:右サイドパネル組立体(パネル)
8:リヤパネル組立体(パネル)
10:ルーフパネル組立体
16:リヤ柱(複合柱)
18:リヤ柱(複合柱)
20:柱材
22:柱材
24:カバー材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を形成するパネルが接合される柱を備え、
該柱が、一対の柱材を並べ重ねて一体に接合される複合柱を含み、
この複合柱の柱材それぞれに、柱材それぞれに隣接するパネルが接合されている
ことを特徴とする建設機械の運転室構造。
【請求項2】
複合柱が、
運転室の後部左右に立設されるリヤ柱である
ことを特徴とする請求項1記載の建設機械の運転室構造。
【請求項3】
複合柱の一対の柱材が、
それぞれ矩形断面管により形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の運転室構造。
【請求項4】
一対の矩形断面管が、
同じ大きさの断面を有している
ことを特徴とする請求項3記載の建設機械の運転室構造。
【請求項5】
複合柱の運転室外面側を覆うカバー材を備えている
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の建設機械の運転室構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−201192(P2008−201192A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37486(P2007−37486)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】