説明

建設機械

【課題】 走行時や作業時に生じる振動によって冷却装置が損傷するのを防止し、耐久性や信頼性を向上する。
【解決手段】 冷却装置21は、取付台座22にラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を上,下方向に積層して設け、この取付台座22を旋回フレーム5の支持台12,13上に取付ける構成とした。従って、冷却装置21の重心位置を低くすることができるから、走行時や作業時に旋回フレーム5が大きく振動しても、冷却装置21の全体を旋回フレーム5と一体的に振動させることができる。また、冷却装置21の一部分が大きく変形したりするのを防止できる。これにより、冷却装置21の耐久性や信頼性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械に関し、特に、ラジエータ、オイルクーラ等からなる冷却装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられたブーム、アーム、バケット等からなる作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの前側に設けられ、オペレータが搭乗するキャブと、前記旋回フレームの後部に取付けられ、作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、前記旋回フレームの後側に搭載され、油圧ポンプを駆動するエンジンと、該エンジンの冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ等からなる冷却装置と、前記エンジン、冷却装置等を覆う建屋カバーとによって大略構成されている。ここで、エンジンには冷却風を発生する冷却ファンが設けられ、前記ラジエータ、オイルクーラ等からなる冷却装置は、旋回フレームにブラケット等を用いて立設され、エンジンの冷却ファンに対面する位置に重ねた状態で配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−158916号公報
【0005】
一方、油圧ショベルには、冷却装置を構成するラジエータ、オイルクーラ等を建屋カバーの上面側、即ち、旋回フレームから上側に離間した高い位置に配置し、その下側に冷却装置に向けて冷却風を供給する冷却ファンを配設する構成としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献2】特開平11−241369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術による油圧ショベルは、凹凸の多い荒地を走行したり、作業装置を急激に動作させたりすると、油圧ショベル全体が大きく振動する。特に、重量物であるカウンタウエイトが取付けられた上部旋回体の後側では、旋回フレームが曲ったり捩れたりするから、後側に搭載されたエンジン、冷却装置等に前,後方向の振動(揺れ)が生じる。また、油圧ショベルは、作業装置で掘削作業を行なうときにバケットが地面に入り込まず、車体の前側が持上がったジャッキアップ状態となり、このジャッキアップ状態から前側が落下したとき、また掘削作業時に作業装置のバケットが岩盤等に引っ掛かって後側が浮き上がった状態から後側が落下したときにも、同様に後側に搭載されたエンジン、冷却装置等に前,後方向の振動(揺れ)が生じる。
【0008】
ここで、特許文献1による油圧ショベルでは、ラジエータ、オイルクーラ等からなる冷却装置をブラケットを用いて旋回フレーム上に立設する構成としている。このため、冷却装置に作用する前,後方向の振動は、旋回フレームから上側に距離をもった冷却装置の上部側を下部側よりも大きく振動させるから、冷却装置の全体が変形を生じたり、冷却装置を取付けているブラケットに歪が生じてしまう。この結果、冷却装置やブラケットに亀裂等が発生するという問題がある。
【0009】
また、特許文献2による油圧ショベルでも、冷却装置を建屋カバーの上面側となる高い位置に配置しているから、特許文献1と同様に、冷却装置やブラケットが大きく振動して損傷する虞があるという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、走行時や作業時に生じる振動によって冷却装置が損傷するのを防止し、耐久性や信頼性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による建設機械は、支持構造体をなすフレームと、該フレーム上に搭載され油圧ポンプを駆動するエンジンと、エンジン冷却水を冷却するラジエータと作動油を冷却するオイルクーラからなる冷却装置とを備えている。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記冷却装置は、前記フレームの上面側に位置して前記ラジエータとオイルクーラを上,下方向に積層することにより構成したことにある。
【0013】
また、請求項2の発明が採用する構成の特徴は、前記冷却装置は、前記フレームの上面側に位置して前記ラジエータとオイルクーラを水平方向に並べることにより構成したことにある。
【0014】
請求項3の発明によると、前記冷却装置は、前記ラジエータ、オイルクーラの他にエンジンの吸気を冷却するインタクーラ又は空気調和装置のコンデンサを含んで構成したことにある。
【0015】
請求項4の発明によると、前記フレームの下側を覆うアンダカバーには、前記冷却装置の下側に位置して冷却風の流入口を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、冷却装置は、フレームの上面側に位置してラジエータとオイルクーラを上,下方向に積層しているから、該冷却装置の重心位置を低くすることができる。従って、走行時や作業時にフレームが大きく振動しても、冷却装置はフレームと一体的に振動するだけである。しかも、冷却装置は、ラジエータとオイルクーラを積層、即ち、ほぼ水平状態で上,下方向に重ねて配置しているから、立設した場合のようにラジエータ、オイルクーラの上部側と下部側とで変形量に差が生じることがない。
【0017】
この結果、冷却装置を構成するラジエータ、オイルクーラ、これらをフレームに取付けるブラケット等が変形するのを防止でき、冷却装置の耐久性や信頼性を向上することができる。また、冷却装置を構成するラジエータとオイルクーラは積層して配置しているから、フレーム上の設置スペースを小さくすることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、冷却装置は、フレームの上面側に位置してラジエータとオイルクーラを水平方向に並べているから、該冷却装置の重心位置を低くすることができる。従って、請求項1の発明と同様に、冷却装置、ブラケット等が変形するのを防止でき、冷却装置の耐久性や信頼性を向上することができる。また、冷却装置を構成するラジエータとオイルクーラは水平方向に並べて配設しているから、ラジエータとオイルクーラの両方に冷えた冷却風を供給することができ、冷却効率を向上することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、ラジエータ、オイルクーラと一緒にエンジンの吸気を冷却するインタクーラ又は空気調和装置のコンデンサも、上,下方向に積層したり、水平方向に並べたりしてフレームの上面側に載置することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、冷却風の流入口は、冷却装置の下側に位置してフレームのアンダカバーに設けているから、塵埃等の侵入を抑えることができる。また、冷却装置に塵埃等が付着しても、振動によって流入口から落とすことができ、ラジエータ、オイルクーラの放熱部に塵埃が堆積するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械としてのクローラ式の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行なう作業装置4とにより大略構成されている。
【0023】
ここで、作業装置4は、後述する旋回フレーム5の前側に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、該ブーム4Aの先端部に回動可能に取付けられたアーム4Bと、該アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cと、これらを駆動するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fとにより大略構成されている。
【0024】
5は上部旋回体3を構成する旋回フレームで、該旋回フレーム5は支持構造体として形成されている。そして、旋回フレーム5は、図2に示す如く、後述のセンタフレーム6、サイドフレーム7,8、張出しビーム9により大略構成されている。
【0025】
6は旋回フレーム5の中央部を構成するセンタフレームで、該センタフレーム6は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等により形成された底板6Aと、該底板6A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左,右のセンタビーム6Bとにより大略構成されている。そして、各センタビーム6Bの前側には作業装置4が俯仰動可能に取付けられている。
【0026】
また、7はセンタフレーム6の左側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム、8はセンタフレーム6の右側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた右サイドフレームをそれぞれ示している。これらのサイドフレーム7,8は、センタフレーム6から左,右方向に張出す複数本の張出しビーム9の先端に取付けられている。
【0027】
10はセンタフレーム6の底板6Aとサイドフレーム7,8との間に設けられた複数枚のアンダカバーで、該各アンダカバー10は、底部側の隙間を閉塞するもので、例えば薄い鋼板等を用いて形成されている。
【0028】
11は各アンダカバー10のうち左後部に位置するアンダカバー10に設けられた流入口を示している。この流入口11は、後述するエンジン16の冷却ファン16Aを回転駆動したときに冷却風が流入するもので、図2、図3に示すように複数本のスリットから形成されている。
【0029】
また、12,13は流入口11に対応するように旋回フレーム5の左後部に前,後方向に延びて設けられた2個の支持台で、該各支持台12,13は、後述する冷却装置21を載置するための台座を構成している。そして、各支持台12,13は、流入口11の左,右両側に配置され、左側の支持台12は、左サイドフレーム7、張出しビーム9等に溶接手段を用いて固着されている。また、右側の支持台13は、L字状に屈曲して形成され、その両端側が張出しビーム9等に溶接手段を用いて固着されている。
【0030】
14は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブ(図1参照)で、該キャブ14は、オペレータが搭乗するもので、その内部にはオペレータが着座する運転席、各種操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。また、15は旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト15は、作業装置4との重量バランスをとるもので、重量物として形成されている。
【0031】
16はカウンタウエイト15の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられたエンジン(図3、図4参照)を示している。このエンジン16は、左,右方向に延在する横置き状態に搭載され、例えば吸気の流量を増大させる過給機を備えている。また、エンジン16の左側には、冷却風を発生する冷却ファン16Aが設けられている。
【0032】
17はエンジン16の右側に取付けられた油圧ポンプで、該油圧ポンプ17は、エンジン16によって駆動されることにより、下部走行体2、作業装置4等のアクチュエータに向け圧油を供給するものである。
【0033】
18はキャブ14とカウンタウエイト15との間に位置して旋回フレーム5上に設けられた建屋カバーを示している。この建屋カバー18は、旋回フレーム5の左,右両側に位置して前,後方向に延びた左,右の側面板18A,18Aと、該各側面板18Aの上端部間を水平方向に延びた上面板18Bとにより大略構成され、上面板18Bにはメンテナンス用の開口部18Cが形成されている。また、上面板18B上には、開口部18Cを覆うようにエンジンカバー18Dが設けられている。
【0034】
また、建屋カバー18には、エンジン16の前側に位置して左,右の側面板18A,18A間を左,右に延びる仕切板18Eと、エンジン16の冷却ファン16Aの周囲を取囲むように該仕切板18Eとカウンタウエイト15との間を前,後に延びるシュラウド18Fとが設けられている。
【0035】
19は建屋カバー18の上面板18Bの右側に設けられた流出口を示している。この流出口19は、後述の冷却装置21を通過し、エンジン16、油圧ポンプ17の周囲を流れた冷却風を建屋カバー18の外部に流出させるもので、前述した流入口11とほぼ同様に、複数本のスリットから形成されている。
【0036】
21はエンジン16の左側に位置して旋回フレーム5上に設けられた冷却装置で、該冷却装置21は、エンジン16の冷却水、作動油、過給機(図示せず)から供給される吸気を冷却するものである。そして、冷却装置21は、図3ないし図7に示す如く、後述する取付台座22、ラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27等により大略構成されている。
【0037】
22はラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27の取付ベースとなる取付台座を示している。この取付台座22は、図5に示す如く、下側が互いに対向する内側に向けて折れ曲がった上,下方向に長尺なL字形状をなし、インタクーラ台座を兼ねる一対のメイン台座22Aと、該各メイン台座22Aの上,下方向の中間に位置して内側に取付けられたL字形状をなす一対のサブ台座としてのオイルクーラ台座22Bと、前記メイン台座22Aの内側の上部位置で内側に取付けられたL字形状をなす一対のサブ台座としてのラジエータ台座22Cと、前記各メイン台座22Aの外側に取付けられた2個のブラケット22Dとにより大略構成されている。そして、オイルクーラ台座22B、ラジエータ台座22Cおよび各ブラケット22Dは、メイン台座22Aに対して例えば溶接手段を用いて一体的に固着されている。
【0038】
23は取付台座22に取付けられたラジエータで、該ラジエータ23は、エンジン16を冷却して温度上昇した冷却水を冷却するものである。また、ラジエータ23は、エンジン16の冷却水が流入するアッパタンク23Aと、冷却水が流出するロアタンク23Bと、アッパタンク23Aとロアタンク23Bとの間を流通する冷却水の熱を放出する放熱部23Cとからなり、前記アッパタンク23Aとロアタンク23Bの横位置には、図5、図6に示すように取付台座22に取付けるためのねじ座23Dがそれぞれ2箇所に設けられている。また、アッパタンク23Aとロアタンク23Bは、冷却水管路23Eを介してエンジン16のウォータジャケット(図示せず)に接続されている。
【0039】
そして、ラジエータ23は、アッパタンク23Aとロアタンク23Bをそれぞれ取付台座22のラジエータ台座22Cに載置する。この状態でメイン台座22A、ラジエータ台座22Cおよびブラケット22Dに亘って挿通したボルト24を、熱膨張を許容するゴムブッシュ25に挿通しつつ、ねじ座23Dに螺着することにより、ラジエータ23を取付台座22に取付けることができる。これにより、ラジエータ23は、冷却風の通過方向が上,下方向となるほぼ水平状態に取付けることができ、また、ラジエータ23の全体を旋回フレーム5上の低い位置に配置することができる。
【0040】
26はラジエータ23の下側に重なるように取付台座22に取付けられたオイルクーラで、該オイルクーラ26は、作動油タンク(図示せず)に戻される作動油を冷却するものである。また、オイルクーラ26は、前述したラジエータ23とほぼ同様に、作動油が流入するアッパタンク26Aと、作動油が流出するロアタンク26Bと、アッパタンク26Aとロアタンク26Bとの間を流通する作動油の熱を放出する放熱部26Cとからなり、前記アッパタンク26Aとロアタンク26Bの横位置には、取付台座22に取付けるためのねじ座26Dがそれぞれ2箇所に設けられている。また、アッパタンク26Aとロアタンク26Bは、作動油管路26Eを介して制御弁(図示せず)と作動油タンクに接続されている。
【0041】
そして、オイルクーラ26は、アッパタンク26Aとロアタンク26Bをそれぞれ取付台座22のオイルクーラ台座22Bに載置する。この状態でメイン台座22A、オイルクーラ台座22Bおよびブラケット22Dに亘って挿通したボルト24をねじ座26Dに螺着することにより、オイルクーラ26を取付台座22に取付けることができる。これにより、オイルクーラ26は、ラジエータ23の下側に積層するようにほぼ水平状態に取付けることができ、該オイルクーラ26の全体をラジエータ23と一緒に旋回フレーム5上の低い位置に配置することができる。
【0042】
27はオイルクーラ26の下側に重なるように取付台座22に取付けられたインタクーラで、該インタクーラ27は、エンジン16の過給機から供給される吸気を冷却するものである。また、インタクーラ27は、前述したラジエータ23、オイルクーラ26とほぼ同様に、過給機で加圧した吸気が流入するアッパタンク27Aと、吸気が流出するロアタンク(図示せず)と、アッパタンク27Aとロアタンクとの間を流通する吸気の熱を放出する放熱部27Bとからなり、前記アッパタンク27Aとロアタンクの横位置にはねじ座27Cがそれぞれ2箇所に設けられている。また、アッパタンク27Aとロアタンクは、吸気管路27Dを介してエンジン16の過給機とインテークマニホールド(図示せず)に接続されている。ここで、インタクーラ27は、ラジエータ23、オイルクーラ26と比較して小型に形成されている。
【0043】
そして、インタクーラ27は、アッパタンク27Aとロアタンクをそれぞれ取付台座22のメイン台座22Aに載置する。この状態でラジエータ23と同様に、メイン台座22Aおよびブラケット22Dに挿通したボルト24をゴムブッシュ25に挿通しつつねじ座27Cに螺着することにより、インタクーラ27を取付台座22に取付けることができる。これにより、インタクーラ27は、オイルクーラ26の下側に積層するようにほぼ水平状態に取付けることにより、該インタクーラ27は、その全体をラジエータ23、オイルクーラ26と一緒に旋回フレーム5上の低い位置に配置することができる。
【0044】
28は取付台座22の各メイン台座22Aの上部を連結して設けられた2本の補強プレートで、該各補強プレート28は、端部を各メイン台座22Aの上部にボルト止めすることにより、該各メイン台座22Aの剛性を高めるものである。
【0045】
このように構成された冷却装置21は、取付台座22にラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を上,下方向に積層して取付け、この状態で、各ブラケット22Dを旋回フレーム5の各支持台12,13にボルト止めする。これにより、冷却装置21は、旋回フレーム5の上面側にラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を載置するから、これらを振動に影響され難い低い重心位置をもって配設することができる。そして、エンジン16の冷却ファン16Aが回転駆動し、アンダカバー10に設けられた流入口11から冷却風が流入したときには、積層されたラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27に冷却風を供給してエンジン16の冷却水、作動油、吸気を冷やすことができる。
【0046】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1を操作して掘削作業等を行なうときの動作について説明する。
【0047】
まず、オペレータは、キャブ14に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2のクローラを駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。このように油圧ショベル1を稼動しているときには、エンジン16の冷却ファン16Aが回転駆動して冷却装置21に冷却風を供給し、エンジン16の冷却水、作動油、過給機で圧縮された吸気を冷やしている。
【0048】
ここで、油圧ショベル1は、下部走行体2で凹凸の多い荒地を走行したり、作業装置4を急激に動作させたりすると、その全体が大きく振動する。特に、重量物であるカウンタウエイト15が取付けられた上部旋回体3の後側では、旋回フレーム5が弾性変形して曲ったり捩れたりするから、後側に搭載された冷却装置21等に前,後方向の振動(揺れ)が生じる。
【0049】
また、油圧ショベル1は、作業装置4で掘削作業を行なうときにバケット4Cが地面に入り込まず、下部走行体2の前側が持上がったジャッキアップ状態となり、このジャッキアップ状態から前側が落下したとき、また掘削作業時に作業装置4のバケット4Cが岩盤等に引っ掛かって下部走行体2の後側が浮き上がった状態から後側が落下したときにも、後側に搭載された冷却装置21等に前,後方向の大きな振動が生じる。
【0050】
このように、油圧ショベル1を走行させたり、作業を行なった場合には、重量物であるカウンタウエイト15が取付けられた上部旋回体3の後側が大きく振動する。しかし、冷却装置21は、取付台座22を介してラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を上,下方向に積層し、旋回フレーム5の上面側に載置しているから、重心位置を低くして振動による変形等を抑えることができる。
【0051】
かくして、第1の実施の形態によれば、冷却装置21は、旋回フレーム5の上面側に位置してラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を上,下方向に積層することにより、その重心位置を低くすることができる。従って、走行時や作業時に旋回フレーム5が大きく振動しても、冷却装置21は旋回フレーム5と一体的に振動させることができる。しかも、冷却装置21を構成するラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27は、ほぼ水平状態で上,下方向に重ねた積層状態であるから、立設している従来技術のラジエータ、オイルクーラの上部側と下部側とで大きくなっていた変形量の差を生じることがない。
【0052】
この結果、冷却装置21を構成するラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27、これらを旋回フレーム5に取付けている取付台座22が変形するのを防止でき、冷却装置21の耐久性や信頼性を向上することができる。
【0053】
また、ラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を上,下方向に積層することにより、取付台座22を含めて冷却装置21全体をコンパクトに形成することができるから、旋回フレーム5上の設置スペースを小さくすることができる。
【0054】
さらに、ラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を積層したことにより、冷却風の流入口11は、旋回フレーム5の下側を覆うアンダカバー10に形成することができる。これにより、塵埃等が上部旋回体3内に侵入するのを抑えることができる。また、ラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27に塵埃等が付着しても、振動によって流入口11から落とすことができ、これらの冷却効率を高めることができる。
【0055】
次に、図8ないし図12は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、冷却装置は、フレームの上面側に位置してラジエータとオイルクーラを水平方向に並べることにより構成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0056】
図8、図9において、31は第1の実施の形態による冷却装置21に代えて設けられた第2の実施の形態による冷却装置で、該冷却装置31は、図10に示すように、後述する取付枠32,33,34、ラジエータ35、オイルクーラ38、インタクーラ39等により大略構成されている。
【0057】
32はラジエータ35の取付ベースとなるラジエータ取付枠を示している。このラジエータ取付枠32は、旋回フレーム5に設けられた支持台12,13の長さ方向のほぼ中間位置に配設されている。また、ラジエータ取付枠32は、図11、図12に示す如く、短冊状の前面部32A、後面部32B、左面部32Cおよび右面部32Dと、中央が大きく開口した角枠状の底面部32Eと、左面部32Cと右面部32Dに2個ずつ取付けられたブラケット32Fとにより大略構成されている。また、右面部32Dには、後述するラジエータ35の各冷却水管路35Eが通る切欠部32Gが2個形成されている。そして、ラジエータ取付枠32は、各ブラケット32Fを介して旋回フレーム5の支持台12,13上にボルト止めされている。
【0058】
また、33はラジエータ取付枠32の前側に並べて支持台12,13上にボルト止めされたオイルクーラ取付枠を示している。このオイルクーラ取付枠33は、ラジエータ取付枠32よりも前,後方向の寸法が小さく設定されている点を除き、該ラジエータ取付枠32と同様に形成されているので、その説明を省略するものとする。
【0059】
さらに、34はラジエータ取付枠32の後側に並べて支持台12,13上にボルト止めされたインタクーラ取付枠を示している。このインタクーラ取付枠34は、オイルクーラ取付枠33よりも前,後方向の寸法が小さく設定されている点を除き、前記ラジエータ取付枠32と同様に形成されているので、その説明を省略するものとする。
【0060】
35はラジエータ取付枠32内に取付けられたラジエータで、該ラジエータ35は、エンジン16の冷却水が流入するアッパタンク35Aと、冷却水が流出するロアタンク35Bと、アッパタンク35Aとロアタンク35Bとの間を流通する冷却水の熱を放出する放熱部35Cとからなり、前記アッパタンク35Aとロアタンク35Bの下位置には、ラジエータ取付枠32の底面部32Eに取付けるためのねじ座35Dがそれぞれ2箇所に設けられている。また、アッパタンク35Aとロアタンク35Bは、冷却水管路35Eを介してエンジン16のウォータジャケット(図示せず)に接続されている。
【0061】
そして、ラジエータ35は、各ねじ座35Dの下側にゴムブッシュ36を介在させた状態でアッパタンク35Aとロアタンク35Bをラジエータ取付枠32の底面部32E上に載置する。この状態で底面部32Eに下側から挿通したボルト37を、ゴムブッシュ36に挿通しつつ、ねじ座35Dに螺着することにより、ラジエータ35をラジエータ取付枠32内に取付けることができる。
【0062】
38はラジエータ35の前側に並ぶようにオイルクーラ取付枠33内に取付けられたオイルクーラで、該オイルクーラ38は、ラジエータ35よりも前,後方向の寸法が小さく設定されている点を除き、該ラジエータ35と同様に形成されているので、その説明を省略するものとする。
【0063】
39はラジエータ35の後側に並ぼようにインタクーラ取付枠34内に取付けられたインタクーラで、該インタクーラ39は、オイルクーラ38よりも前,後方向の寸法が小さく設定されている点を除き、前記ラジエータ35と同様に形成されているので、その説明を省略するものとする。
【0064】
ここで、ラジエータ35、オイルクーラ38、インタクーラ39は、旋回フレーム5の上面側に位置して水平方向に並べて配置されることにより、旋回フレーム5上の低い位置に取付けることができる。そして、水平方向に並べて載置したラジエータ35、オイルクーラ38、インタクーラ39は、それぞれに冷えた冷却風を供給することができるから、冷却効率を向上することができ、小型なものを使用することができる。
【0065】
このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、冷却装置31を構成するラジエータ35、オイルクーラ38、インタクーラ39は、水平方向(前,後方向)に並べて配置しているから、冷却装置31の重心位置を第1の実施の形態による冷却装置21よりも低くすることができる。また、冷却効率を向上してラジエータ35、オイルクーラ38、インタクーラ39の小型化を図ることができる。
【0066】
なお、第1の実施の形態では、冷却装置21には、ラジエータ23、オイルクーラ26、インタクーラ27を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばエンジン16に過給機が設けられていない場合には、インタクーラ27を省略してラジエータ23とオイルクーラ26だけを設ける構成としてもよい。また、インタクーラ27に代えて空気調和装置のコンデンサを適用する構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0067】
また、第1の実施の形態では、エンジン16に冷却ファン16Aを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば冷却ファンをエンジン16を別個に設け、電動モータ、油圧モータ等を用いて回転駆動する構成としてもよい。この場合には、冷却ファンと共に冷却装置21をエンジン16の位置に拘束されることなく、自由な位置に配置することができる。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0068】
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、トラクタ等の他の建設機械にも広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1中の旋回フレームを単体で拡大して示す平面図である。
【図3】図1中の矢示III−III方向からみた上部旋回体の拡大断面図である。
【図4】図3中の矢示IV−IV方向からみた上部旋回体の要部拡大断面図である。
【図5】図3中の冷却装置を拡大して示す外観斜視図である。
【図6】取付台座に対するラジエータの取付状態を示す要部拡大の断面図である。
【図7】取付台座に対するオイルクーラの取付状態を示す要部拡大の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による冷却装置が設けられた上部旋回体を図3と同様位置からみた拡大断面図である。
【図9】図8中の矢示IX−IX方向からみた上部旋回体の要部拡大断面図である。
【図10】図8中の冷却装置を拡大して示す外観斜視図である。
【図11】図10中の冷却装置のうちラジエータ取付枠、ラジエータ等を拡大して示す外観斜視図である。
【図12】ラジエータ取付枠とラジエータを分解した状態で示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 旋回フレーム(フレーム)
10 アンダカバー
11 流入口
12,13 支持台
16 エンジン
16A 冷却ファン
17 油圧ポンプ
18 建屋カバー
19 流出口
21,31 冷却装置
22 取付台座
23,35 ラジエータ
26,38 オイルクーラ
27,39 インタクーラ
32 ラジエータ取付枠
33 オイルクーラ取付枠
34 インタクーラ取付枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなすフレームと、該フレーム上に搭載され油圧ポンプを駆動するエンジンと、エンジン冷却水を冷却するラジエータと作動油を冷却するオイルクーラからなる冷却装置とを備えてなる建設機械において、
前記冷却装置は、前記フレームの上面側に位置して前記ラジエータとオイルクーラを上,下方向に積層することにより構成したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
支持構造体をなすフレームと、該フレーム上に搭載され油圧ポンプを駆動するエンジンと、エンジン冷却水を冷却するラジエータと作動油を冷却するオイルクーラからなる冷却装置とを備えてなる建設機械において、
前記冷却装置は、前記フレームの上面側に位置して前記ラジエータとオイルクーラを水平方向に並べることにより構成したことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記ラジエータ、オイルクーラの他にエンジンの吸気を冷却するインタクーラ又は空気調和装置のコンデンサを含んで構成してなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記フレームの下側を覆うアンダカバーには、前記冷却装置の下側に位置して冷却風の流入口を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−144493(P2006−144493A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339317(P2004−339317)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】