説明

建設機械

【課題】構成がシンプルでありながら、液体還元剤用タンクの給水性、メンテナンス性及び保温性を向上させる。
【解決手段】液体還元剤を貯留した液体還元剤用タンク11が搭載された建設機械において、前記液体還元剤用タンク11を合成樹脂により構成し、且つ、該液体還元剤用タンク11をキャブ3の後方に設けられたハウスフレーム16内に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械に関するものであり、特に、液体還元剤を貯留した液体還元剤用タンクが搭載された建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベル等の建設機械では、高次の排ガス規制に対応すべく、ディーゼルエンジンの排気系に排ガス処理装置が設置され、ディーゼルエンジンからの排ガスは、排気管の下流側に設けたNOx還元触媒を通って大気中に放出される。
【0003】
従来、此種排ガス処理装置としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が多く採択され、尿素水溶液は金属製の液体還元剤用タンクに貯留されている。又、液体還元剤用タンクは液体還元剤供給パイプにより排気管に接続され、液体還元剤供給ポンプにより液体還元剤用タンク内の尿素水溶液を前記排気管に供給できるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−20936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記液体還元剤用タンクは上部旋回体の狭隘な場所に設置されている。従って、液体還元剤用タンクに尿素水溶液を補給する際、或いは、液体還元剤用タンクのメンテナンス作業を行う際に、作業者は不自然な作業姿勢を強いられるため、液体還元剤用タンクの給水作業性及びメンテナンス作業性が良くないという問題があった。
【0006】
又、金属製の液体還元剤用タンク内の尿素水溶液は、氷点下の低温になると凍結し易くなり、凍結した場合には尿素水溶液を液体還元剤として使用できなくなる。
【0007】
前記液体還元剤用タンク内の尿素水溶液の凍結を防止するには、例えば、液体還元剤用タンクを電気ヒーターで加熱して保温性能を高めればよいが、このように構成すると、構造が複雑になり設備コストが高騰するとともに、電気エネルギの消費量が増大する。
【0008】
そこで、構成を複雑化することなく液体還元剤用タンクの給水性、メンテナンス性及び保温性を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、液体還元剤を貯留した液体還元剤用タンクが搭載された建設機械において、前記液体還元剤用タンクを合成樹脂により構成し、且つ、該液体還元剤用タンクをキャブの後方に設けられたハウスフレーム内の空間部に設置したことを特徴とする建設機械を提供する。
【0010】
この構成によれば、液体還元剤用タンクは、キャブの後方側に設けられたハウスフレーム内に設置されている。依って、液体還元剤用タンクに液体還元剤を補給する際、或いは
、液体還元剤用タンクのメンテナンスを行う際には、ハウスフレームの空間部の外側より容易に作業を実行できる。
【0011】
又、液体還元剤用タンクを合成樹脂により構成したので、金属製のものに比べて液体還元剤用タンクの保温性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、液体還元剤用タンクに液体還元剤を補給する際、或いは、液体還元剤用タンクのメンテナンスを行う際は、ハウスフレームの外側より液体還元剤の補給作業やメンテナンス作業を容易迅速に実行でき、以って、液体還元剤用タンクの給水性及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0013】
又、液体還元剤用タンクを合成樹脂によって構成したことにより、構成がシンプルでありながら、液体還元剤用タンクの保温性が向上し、液体還元剤の凍結防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示し、油圧ショベル(建設機械)の側面図。
【図2】一実施例に係る油圧ショベルの上部旋回体を示す平面図。
【図3】一実施例に係る液体還元剤用タンクの設置箇所を説明する斜視図。
【図4】一実施例に係るハウスフレームを例示する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、液体還元剤用タンクの給水性、メンテナンス性及び保温性を向上させるという目的を達成するために、液体還元剤を貯留した液体還元剤用タンクが搭載された建設機械において、前記液体還元剤用タンクを合成樹脂により構成し、且つ、該液体還元剤用タンクをキャブの後方に配置されたハウスフレーム内の空間部に設置したことによって実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至図4に従って説明する。図1は建設機械の一例として油圧ショベルを示す。同図に示すように、下部走行体1上には上部旋回体2が旋回可能に装架され、上部旋回体2の前方一側部にキャブ3が設けられている。また、上部旋回体2の前方中央部にブーム4が俯仰可能に枢着され、該ブーム4の先端部にはアーム5が上下回動可能に連結されているとともに、該アーム5の先端部にバケット6が上下回動可能に取り付けられている。
【0017】
図2に示すように、上部旋回体2の後部にはエンジンルーム7が形成され、該エンジンルーム7内にはディーゼルエンジン8が設置されている。又、ディーゼルエンジン8の前方側(図2における手前側)には冷却ファン12が設けられているとともに、該冷却ファン12の前方にはラジエータ等を含む熱交換機ユニット13が設置されている。
【0018】
更に、ディーゼルエンジン8には排気管9が接続され、該排気管9の下流側には、高次の排ガス規制に対応すべく、排ガス処理装置10が設置されている。本実施例に係る排ガス処理装置10としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が採択されている。
【0019】
図3に示すように、前記上部旋回体2の旋回フレーム14上には、ハウスカバー15を脱着可能に取り付けるためのハウスフレーム16が配設され、該ハウスフレーム16は前記キャブ13の後方に配置されている(図2参照)。尚、図3の符号17はブーム取り付
け用のブラケットである。
【0020】
本実施例に係るハウスフレーム16の正面視形状は、図4に例示するように門型に形成され、ハウスフレーム16内に空間部が形成されている。
【0021】
又、ハウスフレーム16内の空間部には液体還元剤用タンク11が設置され、該液体還元剤用タンク11内に尿素水溶液が貯留されている。更に、液体還元剤用タンク11は所定厚さの合成樹脂、例えば、所要の断熱性を有するポリエチレン樹脂等により構成されている。
【0022】
尚、液体還元剤用タンク11の平面視形状若しくは側面視形状は矩形に限らず、設置スペース等の条件に応じて任意であり、例えば、L字状に形成することもできる。
【0023】
更に、液体還元剤用タンク11の側面上部又は上面部には給水口(図示せず)が開穿されていると共に、該給水口にはキャップ18が被着されている。又、液体還元剤用タンク11は液体還元剤供給パイプ(図示せず)を介して、前記排ガス処理装置10に接続されている。
【0024】
叙上の如く本発明によると、液体還元剤用タンク11は、キャブ3の後方側に設けたハウスフレーム16内の空間部に設置されている。依って、液体還元剤用タンク11の給水口に尿素水溶液を補給する際、作業者はキャブ3の後方にて自由な作業姿勢で直接補給できる。斯くして、作業者は、液体還元剤用タンク11への尿素水溶液の補給作業をハウスフレーム16の空間部の側方より容易迅速に行うことができる。
【0025】
又、液体還元剤用タンク11の保守点検を行う際も、前記と同様に、ハウスフレーム16の側方より容易迅速に作業を実行でき、以って、液体還元剤用タンク11の保守点検作業性が向上する。
【0026】
更に、液体還元剤用タンク11は、断熱効果を有する合成樹脂により構成されているので、構成がシンプルでありながら、液体還元剤用タンク11の保温性が向上し、尿素水溶液の凍結防止効果に寄与することができる。
【0027】
更に又、合成樹脂製の液体還元剤用タンク11は、ハウスフレーム16のサイズに見合った形状若しくは寸法に容易に製造でき、液体還元剤用タンク11のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0028】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、液体還元剤用タンクを搭載した建設機械であれば、液体還元剤用タンク内に尿素水溶液以外の液体還元剤を貯留したものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
2 上部旋回体
7 エンジンルーム
8 ディーゼルエンジン
10 排ガス処理装置
11 液体還元剤用タンク
16 ハウスフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体還元剤を貯留した液体還元剤用タンクが搭載された建設機械において、前記液体還元剤用タンクを合成樹脂により構成し、且つ、該液体還元剤用タンクをキャブの後方に設けられたハウスフレーム内の空間部に設置したことを特徴とする建設機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−11725(P2011−11725A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160249(P2009−160249)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】