説明

建設機械

【課題】 排土装置取付部を少ない部品点数、簡単な作業で設けることにより、製造作業、組立作業等を容易に行えるようにする。
【解決手段】 排土装置取付部18を構成する突出フレーム部19は、センタフレーム11の前脚フレーム12と一体成型し、この前脚フレーム12から前方に突出させる構成としている。これにより、排土装置取付部18の突出フレーム部19を、溶接手段等の作業を行うことなく容易に設けることができる。そして、突出フレーム部19を左,右方向から挟む位置に対面して一対のブラケット23を配置し、各ブラケット23を突出フレーム部19に溶接手段によって接合することにより、排土装置取付部18を簡単な作業で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下部走行体に排土装置が設けられた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体の上側に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記下部走行体の前,後方向の一方側に設けられ前,後方向に延びる左,右のアームの先端に左,右方向に延びるブレードを備えた排土装置と、前記上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
ここで、下部走行体は、上部旋回体を支持するセンタフレームの左,右両側に前,後方向に延びてサイドフレームが設けられたトラックフレームと、該トラックフレームのサイドフレームの一端に回転可能に設けられた遊動輪と、前記サイドフレームの他端に設けられた駆動輪と、前記遊動輪と駆動輪とに亘って巻回された履帯とにより大略構成されている。
【0004】
また、トラックフレームを構成するセンタフレームの前,後方向の一方側には、前記排土装置の左,右のアームの基端側が回動可能に取付けられる排土装置取付部が左,右方向に間隔をもって設けられている。この排土装置取付部は、センタフレームに取付けられ排土装置のアームの基端側を挟む一対の取付板と、各取付板の強度を得るために該各取付板間に設けられた補強材とにより構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、他の排土装置取付部には、センタフレームを成形するときにアームの基端側を取付けるための各取付板を一体成型する構成としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−75970号公報
【特許文献2】特開2005−255141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1による排土装置取付部は、一対の取付板をセンタフレームに溶接し、さらに、各取付板の強度を得るために該各取付板間に補強材を溶接する構成としているから、部品点数が多くなり、また溶接を施す箇所も多くなってしまい、組立作業性が悪いという問題がある。
【0007】
また、特許文献2による排土装置取付部は、センタフレームと各取付板とを一体成型しているから、各取付板にアームを取付けるための穴加工を施すためには、大きなセンタフレームを設置することができる設備が必要なり、加工するときの段取り作業も含めて作業に手間を要してしまう。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、排土装置取付部を少ない部品点数、簡単な作業で設けることができ、製造作業、組立作業等を容易に行えるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体の上側に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置と、前記下部走行体の前,後方向の一方側に設けられ前,後方向に延びる左,右のアームの先端に左,右方向に延びるブレードを備えた排土装置とからなり、前記下部走行体は、前記上部旋回体を支持するセンタフレームの左,右両側に前,後方向に延びてサイドフレームが設けられたトラックフレームを有し、前記センタフレームの前,後方向の一方側には、左,右方向に間隔をもって設けられ前記排土装置の左,右のアームの基端側が回動可能に取付けられる排土装置取付部を備えてなる。
【0010】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記排土装置取付部は、前記トラックフレームのセンタフレームの一部を形成して該センタフレームから前方に突出した突出フレーム部と、該突出フレーム部を左,右方向から挟む位置に対面して配置され基端側が該突出フレーム部に溶接手段により接合され先端側が該突出フレーム部よりも前方に延びた一対のブラケットとにより構成し、前記一対のブラケットの先端部間に前記排土装置のアームの基端側を回動可能に取付けたことにある。
【0011】
請求項2の発明は、前記トラックフレームのセンタフレームは鋳造手段を用いた鋳造品として形成し、前記排土装置取付部の突出フレーム部は前記センタフレームと一体的に鋳造する構成としたことにある。
【0012】
請求項3の発明は、前記排土装置取付部の突出フレーム部は、前記トラックフレームのセンタフレーム側に位置する左,右方向に広幅な基端広幅部と、該基端広幅部の先端側を狭めて設けられた段差部と、該段差部から延びて設けられ前記基端広幅部よりも狭幅な先端狭幅部とにより構成し、前記一対のブラケットは、前記先端狭幅部の左,右の側面に当接した状態で前記段差部に溶接手段により接合する構成としたことにある。
【0013】
請求項4の発明は、前記突出フレーム部の段差部は、前記ブラケットの板厚寸法とほぼ同じ左,右方向の幅寸法に設定し、前記突出フレーム部の基端広幅部は、前記ブラケットが接合される側面部の板厚寸法を、前記ブラケットの板厚寸法とほぼ同じ寸法に設定したことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、排土装置取付部を構成する突出フレーム部は、トラックフレームのセンタフレームの一部を形成しつつ該センタフレームから前方に突出させることによって形成しているから、この突出フレーム部は、溶接手段等の作業を行うことなく容易に設けることができる。そして、突出フレーム部を左,右方向から挟む位置に対面して一対のブラケットを配置し、該各ブラケットを突出フレーム部に溶接手段によって接合することにより、排土装置取付部を形成することができる。
【0015】
この結果、突出フレーム部をセンタフレームと一体的に形成することにより、センタフレームに予め設けられた突出フレーム部に対し一対のブラケットを溶接手段によって接合するだけで排土装置取付部を形成できるから、排土装置取付部を少ない部品点数、少ない作業工数で形成することができる。これにより、製造作業、組立作業等を容易に行うことができる。
【0016】
また、各ブラケットには、排土装置のアームを取付けるためのピン孔等を予め加工しておくことができる。これにより、各ブラケットは、それぞれのピン孔を合わせて突出フレーム部に溶接することにより、穴あけ加工等の後加工を行うことなく、排土装置取付部を容易に形成することができる。一方、各ブラケットで突出フレーム部を挟む構成としているから、各ブラケットの間隔寸法を一定にすることができる上に、前,後方向や上,下方向に容易に位置調整することができ、排土装置取付部の寸法精度を高めることができる。さらに、センタフレームと一体的に設けた突出フレーム部は、それ自体がセンタフレームと同等の強度を有しているから、排土装置取付部の剛性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、トラックフレームのセンタフレームは、鋳造手段を用いた鋳造品として形成しているから、このセンタフレームを鋳造するときに排土装置取付部の突出フレーム部を一体成型することができ、作業工数を増やすことなく突出フレーム部を簡単に設けることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、排土装置取付部の突出フレーム部を、センタフレーム側の広幅な基端広幅部と、該基端広幅部の先端側を狭めた段差部と、該段差部から延びた狭幅な先端狭幅部とにより構成している。従って、一対のブラケットは、先端狭幅部の左,右の側面に当接させ、この状態で段差部との間に溶接手段を施すことにより、突出フレーム部と各ブラケットとを接合することができる。これにより、段差部は、ブラケットと基端広幅部との間の段差を小さくすることができ、応力集中を抑え、また外観上の見栄えを良好にすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、突出フレーム部の段差部の幅寸法を、ブラケットの板厚寸法とほぼ同じ寸法とし、また、基端広幅部は、ブラケットの後方に位置して該ブラケットが接合される側面部の板厚寸法を、ブラケットの板厚寸法とほぼ同じ寸法に設定している。これにより、基端広幅部の側面部とブラケットとを平坦な1枚の板体のように形成することができる。この結果、作業時に排土装置から伝わる負荷をブラケット、基端広幅部の側面部を介してセンタフレーム側にスムーズに伝えることができ、板厚の変化による応力集中を防止して排土装置取付部の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態による排土装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1中の下部走行体と排土装置を拡大して示す平面図である。
【図3】トラックフレームを単体で示す平面図である。
【図4】トラックフレームに設けた排土装置取付部を図3中の矢示IV−IV方向から見た要部拡大の断面図である。
【図5】排土装置取付部を図4中の矢示V−V方向から見た要部拡大の断面図である。
【図6】排土装置取付部を拡大して示す外観斜視図である。
【図7】排土装置取付部を分解した状態で示す分解斜視図である。
【図8】本発明の変形例による排土装置取付部を図5と同様位置から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図7に従って詳細に説明する。
【0022】
図1において、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に設けられた作業装置5とにより大略構成されている。また、作業装置5は、土砂の掘削作業等を行うもので、上部旋回体4の前側に左,右方向に揺動可能に、かつ上,下方向に俯仰動可能に設けられている。
【0023】
ここで、6は下部走行体2の前,後方向の一方側に位置して上,下方向に回動可能に設けられた排土装置で、該排土装置6は、図2に示すように、左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びた左,右の支持アーム6Aと、該各支持アーム6Aの先端部に取付けられ左,右方向に延びたブレード6Bと、前記各支持アーム6Aの先端側を連結するように左,右方向に延びた連結ビーム6Cと、前記ブレード6Bを上,下方向に回動させる排土シリンダ6Dとにより大略構成されている。
【0024】
また、左,右の支持アーム6Aの基端側は、ピン孔(図示せず)が形成されたボス部6A1となり、該ボス部6A1が後述するトラックフレーム10のセンタフレーム11に設けた排土装置取付部18に回動可能に取付けられている。さらに、排土シリンダ6Dは、基端側(ロッド側)がセンタフレーム11に設けたシリンダ取付部17に回動可能に取付けられ、先端側(チューブ側)が連結ビーム6Cに回動可能に取付けられている。
【0025】
さらに、油圧ショベル1の下部走行体2は、上部旋回体4を支持する後述のトラックフレーム10と、該トラックフレーム10のサイドフレーム15,16の一端に回転可能に設けられた遊動輪7と、前記サイドフレーム15,16の他端に設けられた駆動輪8(いずれも図1中に左側のみ図示)と、前記遊動輪7と駆動輪8とに亘って巻回された履帯9と、前記センタフレーム11の前,後方向の一方側に左,右方向に間隔をもって設けられ、排土装置6の左,右の支持アーム6Aが回動可能に取付けられる後述の排土装置取付部18とにより大略構成されている。
【0026】
10は下部走行体2のベースとなるトラックフレームを示している。このトラックフレーム10は、図2ないし図7に示すように、後述のセンタフレーム11と、該センタフレーム11の左,右両側に位置する左,右のサイドフレーム15,16とにより大略構成されている。
【0027】
11はトラックフレーム10の中央部に位置するセンタフレームである。このセンタフレーム11は、図3に示すように、中央から左,右方向の外側に向け前側に斜めに延びた左,右の前脚フレーム12と、中央から左,右方向の外側に向け後側に斜めに延びた左,右の後脚フレーム13とにより大略構成されている。これら4本の脚フレーム12,13は、鋳鋼を用いた鋳造手段によって成型された鋳造品として形成されている。この場合、1本ずつの脚フレーム12,13毎に鋳造することにより、センタフレーム全体を一度に鋳造した場合に比較し、鋳造時の作業性がよく、寸法精度も高めることができる。そして、センタフレーム11は、各脚フレーム12,13をX字状に配置し、その中央側の接合部位を溶接手段を用いて接合することにより、内部が空洞となった4本脚の強度フレームとして形成されている。
【0028】
ここで、前,後の脚フレーム12,13は、左,右方向または前,後方向で略対称形状となっている点を除いてほぼ同様に形成されている。そこで、左前脚フレーム12を例に挙げて説明すると、この左前脚フレーム12は、図3ないし図5に示すように、上面部12A、下面部12B、前面部12C、後面部12Dによって略角筒状に形成されている。また、前面部12Cの左,右方向の中央側は、右前脚フレーム12と接合するために左,右方向にほぼ真直ぐに延びている。一方、後面部12Dの中央側は、後脚フレーム13と接合するために湾曲して後側に延びている。また、左,右の前脚フレーム12の前側には、左,右方向の中央寄り(脚の付根部分)に位置して後述する排土装置取付部18の突出フレーム部19が鋳造時に一体的に設けられている。
【0029】
そして、4本の脚フレーム12,13からなるセンタフレーム11は、中央部の上面に大径な円筒状の丸胴14が設けられ、該丸胴14上には旋回装置3が取付けられる。また、センタフレーム11には、左,右の排土装置取付部18間に位置して前方に延びるように後述のシリンダ取付部17が設けられている。
【0030】
15はセンタフレーム11の左側に一体的に接合された左サイドフレーム、16はセンタフレーム11の右側に一体的に接合された右サイドフレームをそれぞれ示している。この左サイドフレーム15は、左脚フレーム12,13の先端部に取付けられた状態で前,後方向に延び、右サイドフレーム16は、右脚フレーム12,13の先端部に取付けられた状態で前,後方向に延びている。また、各サイドフレーム15,16には、前,後方向の一方側に履帯張り装置(図示せず)を介して遊動輪7が取付けられ、他方側に油圧モータ(図示せず)によって駆動される駆動輪8が取付けられている。
【0031】
17はセンタフレーム11の前部中央に設けられたシリンダ取付部で、該シリンダ取付部17は、左,右方向に所定の間隔をもって前方に延びた2枚の取付板17Aにより形成され、該各取付板17Aの先端側には、排土シリンダ6Dをピン結合するためのピン孔17Bが形成されている。
【0032】
次に、シリンダ取付部17の左,右両側に設けられた本発明の特徴部分となる排土装置取付部18について述べる。
【0033】
即ち、18はトラックフレーム10を構成するセンタフレーム11の前,後方向の一方側に左,右方向に間隔をもって設けられた左,右の排土装置取付部を示している。この排土装置取付部18は、排土装置6を構成する左,右の支持アーム6Aのボス部6A1が回動可能に取付けられるものである。そして、排土装置取付部18は、センタフレーム11の前脚フレーム12に一体的に設けられた後述の突出フレーム部19と、該突出フレーム部19を挟むように設けられた一対のブラケット23とにより構成されている。
【0034】
19はセンタフレーム11の中央寄りに位置して前脚フレーム12の前面部12C側に設けられた突出フレーム部で、該突出フレーム部19は、図4、図5に示すように、前脚フレーム12の一部を形成して前面部12Cから前方に突出している。ここで、突出フレーム部19は、前脚フレーム12を鋳造手段を用いて製造するときに、この前脚フレーム12と一緒に鋳造されることにより一体的な鋳造品として形成されている。また、突出フレーム部19は、図4、図7に示すように、側方から見ると、上面側が下向きに傾斜し、その先端側が円弧状に湾曲して底面側に繋がっている。
【0035】
そして、突出フレーム部19は、図5に示す如く、前脚フレーム12の前面部12C側に位置する左,右方向に広幅な基端広幅部20と、該基端広幅部20の先端側を狭めて設けられた段差部21と、該段差部21から前方に延びて設けられ前記基端広幅部20よりも狭幅な先端狭幅部22とにより内部が中空な略凸字形状の突起として構成されている。
【0036】
まず、突出フレーム部19の基端側に位置する基端広幅部20は、縦長な角筒状に形成され、その左,右方向の幅寸法は先端狭幅部22よりも大きな寸法、即ち広幅に形成されている。また、基端広幅部20の左,右の側面部20Aは、突出フレーム部19にブラケット23を取付けたときに該ブラケット23の後端部が段差部21を介して接合されるもので、ブラケット23の真直ぐ後方に位置している。ここで、側面部20Aは、板厚寸法T1をもって形成され、この板厚寸法T1は後述するブラケット23の板厚寸法T3とほぼ同じ寸法に設定されている。
【0037】
基端広幅部20の先端側に設けられた左,右の段差部21は、基端広幅部20の先端側を左,右方向に狭めることによって形成されている。即ち、段差部21は、側面部20Aの先端から互いに接近するようにハ字状に形成されている。ここで、左,右の段差部21は、基端広幅部20の側面部20A前端と先端狭幅部22の側面部22A後端との間を接続するもので、所定の角度寸法をもった傾斜面として形成されている。
【0038】
具体的に、段差部21は、左,右方向の幅寸法T2がブラケット23の板厚寸法T3とほぼ同じ寸法に設定されている。また、段差部21は、先端狭幅部22の側面部22Aに直交する線に対して角度θだけ基端広幅部20側に傾斜している。この段差部21の傾斜角度θは、例えば15〜45度、好ましくは20〜25度の範囲に設定されている。この傾斜角度θは、突出フレーム部19とブラケット23との間に溶接手段を施すときに、溶接トーチ、溶接棒等の溶接具を溶接部位に適正な角度で配置できるようにするものである。
【0039】
段差部21から前方に延びて設けられた先端狭幅部22は、側方視で略D字状に形成されている。また、先端狭幅部22の左,右方向の幅寸法は、基端広幅部20の幅寸法よりも、ブラケット23の2枚分の板厚寸法(T3×2)だけ小さな寸法、即ち狭幅に形成されている。また、先端狭幅部22の左,右の側面部22Aは、ブラケット23の基端側が密着して当接できるように平坦面として形成されている。なお、左,右の側面部22Aの板厚寸法は、例えばブラケット23の板厚寸法T3よりも小さな寸法に設定されている。
【0040】
このように形成された突出フレーム部19は、前脚フレーム12の一部を形成しつつ該前脚フレーム12から前方に突出させることにより形成しているから、溶接手段等の作業を行うことなく容易に設けることができる。
【0041】
次に、23は排土装置取付部18を構成するブラケットで、該ブラケット23は、突出フレーム部19を左,右方向から挟む2枚を1対として設けられている。この一対のブラケット23は、突出フレーム部19の先端狭幅部22を左,右方向から挟む位置に対面し、互いに平行をなすように配置されている。また、ブラケット23は、基端側が上,下方向に広幅となり先端側に向けて下向きに狭くなり、先端部が円弧状をした略三角形状に形成されている。
【0042】
このブラケット23は、基端側の側面を先端狭幅部22の側面部22Aに当接させた状態で、その基端縁23Aと段差部21との間に溶接手段を施すことにより、後述の溶接ビード部24によって突出フレーム部19に接合されている。この取付状態では、ピン孔23Bが形成されたブラケット23の先端側が先端狭幅部22よりも前方に延びている。これにより、各ブラケット23の先端側には、ピン孔23Bに挿通した連結ピン(図示せず)を介して排土装置6の支持アーム6Aのボス部6A1を回動可能に取付けることができる。さらに、ブラケット23の全長寸法(前,後方向の長さ寸法)は、突出フレーム部19の前,後方向の長さ寸法よりも小さな長さ寸法L1となっている。
【0043】
ここで、排土装置取付部18を構成する突出フレーム部19とブラケット23の各部の寸法関係について述べると、段差部21の幅寸法T2とブラケット23の板厚寸法T3とをほぼ同じ寸法に設定しているから、基端広幅部20の側面部20Aとブラケット23の側面とがほぼ同一平面をなすように該ブラケット23を配置することができる。しかも、基端広幅部20の側面部20Aの板厚寸法T1は、ブラケット23の板厚寸法T3とをほぼ同じ寸法に設定しているから、このブラケット23と基端広幅部20の側面部20Aとは、一定の板厚となった一枚の板体をなすように前,後方向に連続して延びている。
【0044】
このように、段差部21は、基端広幅部20とブラケット23との間の段差をほぼ無くすことにより、段差部分に集中し易い応力を分散でき、また、平坦な外観とすることができる。また、ブラケット23と基端広幅部20の側面部20Aとは、一枚の板体のように前,後方向に延びて形成することにより、作業時に排土装置6から伝わる負荷をブラケット23、基端広幅部20の側面部20Aを介してセンタフレーム11側にスムーズに伝えることができる。
【0045】
さらに、段差部21は、先端狭幅部22側よりも基端広幅部20側でブラケット23から離間するように傾斜した傾斜面とし、その傾斜角度θを、例えば15〜45度、好ましくは20〜25度の範囲に設定している。この角度θを利用して、突出フレーム部19とブラケット23との間に溶接トーチ、溶接棒等の溶接具を適正な角度で差入れることができる。
【0046】
なお、24は突出フレーム部19にブラケット23を接合するために両者間に形成された溶接ビード部で、該溶接ビード部24は、突出フレーム部19の段差部21とブラケット23の基端縁23Aとの間に上,下方向に延びて形成されている。
【0047】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、本実施の形態の特徴部分である排土装置取付部18の製造方法について述べる。まず、左,右の前脚フレーム12を鋳造手段を用いて鋳造するときに、前面部12Cから前方に突出するように突出フレーム部19を前脚フレーム12と一緒に成型する。次に、予めピン孔23Bが形成された2枚のブラケット23を用意し、該各ブラケット23を突出フレーム部19を左,右方向から挟むように配置し、この状態で溶接手段を用いて突出フレーム部19に接合することにより、排土装置取付部18を製造することができる。
【0048】
また、センタフレーム11に排土装置取付部18を設けたら、各ブラケット23間に排土装置6の支持アーム6Aに設けたボス部6A1を配置し、両者間に亘って連結ピンを挿嵌する。これにより、センタフレーム11の前方に排土装置6を回動可能に取付けることができる。
【0049】
そして、このようにして組立てられた油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場まで自走した後、例えば上部旋回体4を旋回させつつ作業装置5を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行うことができる。また、掘削して積上げられた土砂を排土する場合には、排土シリンダ6Dによって排土装置6のブレード6Bを地面まで下げ、この状態で油圧ショベル1を走行させることにより、地面に積上げられた土砂をブレード6Bによって押出すように排土することができ、作業現場の整地作業、土砂の埋戻し作業等を行うことができる。
【0050】
かくして、本実施の形態によれば、排土装置取付部18を構成する突出フレーム部19は、トラックフレーム10のセンタフレーム11の一部を形成しつつ該センタフレーム11から前方に突出させることによって形成している。これにより、排土装置取付部18の突出フレーム部19を、溶接手段等の作業を行うことなく容易に設けることができる。そして、突出フレーム部19を左,右方向から挟む位置に対面して一対のブラケット23を配置し、該各ブラケット23を突出フレーム部19に溶接手段によって接合することにより、排土装置取付部18を形成することができる。
【0051】
この結果、突出フレーム部19をセンタフレーム11と一体的に形成したことで、センタフレーム11に予め設けられた突出フレーム部19に対し、一対のブラケット23を溶接手段によって接合するだけの作業で排土装置取付部18を簡単に製造することができる。これにより、排土装置取付部18を少ない部品点数、少ない作業工数で形成することができ、製造作業、組立作業等を容易に行うことができる。
【0052】
また、後付できる各ブラケット23には、排土装置6の支持アーム6Aを取付けるためのピン孔を予め加工しておくことができるから、各ブラケット23は、それぞれのピン孔を合わせて突出フレーム部19に溶接することにより、穴あけ加工等の後加工を行うことなく、排土装置取付部18を容易に形成することができる。
【0053】
また、各ブラケット23で突出フレーム部19を挟む構成としているから、各ブラケット23の間隔寸法を突出フレーム部19によって一定にすることができる上に、前,後方向や上,下方向に容易に位置調整することができる。これにより、支持アーム6Aの取付位置の精度等を高めることができ、排土装置取付部18に対する信頼性を向上することができる。
【0054】
しかも、センタフレーム11(前脚フレーム12)と一体的に設けた突出フレーム部19は、それ自体がセンタフレーム11と同等の強度をもって形成することができる。従って、各ブラケット23の取付強度を高めることができ、排土装置取付部18の剛性を高めることができる。
【0055】
また、センタフレーム11を構成する各脚フレーム12,13は、鋳造手段を用いた鋳造品として形成しているから、各前脚フレーム12を鋳造するときに排土装置取付部18の突出フレーム部19を一体成型することができ、作業工数を増やすことなく突出フレーム部19を簡単に設けることができる。
【0056】
また、突出フレーム部19を、前脚フレーム12側の広幅な基端広幅部20と、該基端広幅部20の先端側を狭めた段差部21と、該段差部から延びた狭幅な先端狭幅部22とにより構成している。従って、一対のブラケット23は、先端狭幅部22の左,右の側面部22Aに当接させ、この状態で段差部21との間に溶接手段を施すことにより、突出フレーム部19と各ブラケット23とを一体的に接合することができる。これにより、段差部21は、ブラケット23と基端広幅部20の側面部20Aとの間の段差を小さく、ほぼ平坦にすることができるから、排土装置6から伝わ応力が一部に集中するのを抑えることができ、また、平坦な外観によって見栄えを良好にすることができる。
【0057】
一方、基端広幅部20の側面部20Aと先端狭幅部22の側面部22Aとの間の段差部21の幅寸法T2を、ブラケット23の板厚寸法T3とほぼ同じ寸法とした上で、基端広幅部20の側面部20Aの板厚寸法T1を、ブラケット23の板厚寸法T3とほぼ同じ寸法に設定している。これにより、基端広幅部20の側面部20Aとブラケット23とを、一枚の板体のように前,後方向に延びて形成することができ、作業時に排土装置6から伝わる負荷をブラケット23、基端広幅部20の側面部20Aを介してセンタフレーム11側にスムーズに伝えることができるから、板厚の変化による応力集中を防止して排土装置取付部18の耐久性を向上することができる。
【0058】
さらに、段差部21は、先端狭幅部22側よりも基端広幅部20側でブラケット23から離間するように傾斜角度θで傾斜した傾斜面としている。これにより、ブラケット23と段差部21との間に溶接手段を施すときには、この角度θを利用して突出フレーム部19とブラケット23との間に溶接トーチ、溶接棒等の溶接具を適正な角度で差入れることができ、溶接作業の作業性を向上することができる。
【0059】
なお、実施の形態では、排土装置取付部18のブラケット23の全長寸法(前,後方向の長さ寸法)を、突出フレーム部19の前,後方向の長さ寸法よりも小さな長さ寸法L1に設定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図8に示す変形例のように構成してもよい。即ち、変形例による排土装置取付部31は、突出フレーム部32の前,後方向の長さ寸法を小さくし、ブラケット33の長さ寸法を大きくすることにより、突出フレーム部32の前,後方向の長さ寸法よりも大きな長さ寸法L2をもってブラケット33を形成する構成としてもよい。
【0060】
また、実施の形態では、突出フレーム部19を、基端広幅部20、段差部21、先端狭幅部22によって略凸字状の突起とし、先端狭幅部22にブラケット23を当接して接合する構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば突出フレーム部の側面部を、段差の無い平坦面として形成し、この平坦な側面部にブラケットを接合する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回装置
4 上部旋回体
5 作業装置
6 排土装置
6A 支持アーム
6A1 ボス部
6B ブレード
10 トラックフレーム
11 センタフレーム
12 前脚フレーム
12A 上面部
12B 下面部
12C 前面部
12D 後面部
15,16 サイドフレーム
18,31 排土装置取付部
19,32 突出フレーム部
20 基端広幅部
20A,22A 側面部
21 段差部
22 先端狭幅部
23,33 ブラケット
T1 基端広幅部の側面部の板厚寸法
T2 段差部の幅寸法
T3 ブラケットの板厚寸法
θ 段差部の傾斜角度
L1,L2 ブラケットの全長寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体の上側に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置と、前記下部走行体の前,後方向の一方側に設けられ前,後方向に延びる左,右のアームの先端に左,右方向に延びるブレードを備えた排土装置とからなり、
前記下部走行体は、前記上部旋回体を支持するセンタフレームの左,右両側に前,後方向に延びてサイドフレームが設けられたトラックフレームを有し、前記センタフレームの前,後方向の一方側には、左,右方向に間隔をもって設けられ前記排土装置の左,右のアームの基端側が回動可能に取付けられる排土装置取付部を備えてなる建設機械において、
前記排土装置取付部は、前記トラックフレームのセンタフレームの一部を形成して該センタフレームから前方に突出した突出フレーム部と、該突出フレーム部を左,右方向から挟む位置に対面して配置され基端側が該突出フレーム部に溶接手段により接合され先端側が該突出フレーム部よりも前方に延びた一対のブラケットとにより構成し、前記一対のブラケットの先端部間に前記排土装置のアームの基端側を回動可能に取付けたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記トラックフレームのセンタフレームは鋳造手段を用いた鋳造品として形成し、前記排土装置取付部の突出フレーム部は前記センタフレームと一体的に鋳造する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記排土装置取付部の突出フレーム部は、前記トラックフレームのセンタフレーム側に位置する左,右方向に広幅な基端広幅部と、該基端広幅部の先端側を狭めて設けられた段差部と、該段差部から延びて設けられ前記基端広幅部よりも狭幅な先端狭幅部とにより構成し、
前記一対のブラケットは、前記先端狭幅部の左,右の側面に当接した状態で前記段差部に溶接手段により接合する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記突出フレーム部の段差部は、前記ブラケットの板厚寸法とほぼ同じ左,右方向の幅寸法に設定し、
前記突出フレーム部の基端広幅部は、前記ブラケットが接合される側面部の板厚寸法を、前記ブラケットの板厚寸法とほぼ同じ寸法に設定してなる請求項3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255848(P2011−255848A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133913(P2010−133913)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】