説明

建設機械

【課題】 既存のエンジンに加工を施すことなく、尿素水タンク内の尿素水を加熱する尿素水加熱部に対しエンジンの冷却水を容易に供給できるようにする。
【解決手段】 尿素水タンク25内には、温められたエンジン8の冷却水を熱源として尿素水を加熱する尿素水加熱部30を設け、暖房用室内機28にエンジン8の冷却水を循環供給する暖房用循環路29と尿素水加熱部30との間には、暖房用循環路29から分岐した分岐循環路31を設ける構成としている。従って、分岐循環路31は、暖房用循環路29から分岐して設けているから、尿素水加熱部30をエンジン8に直接的に接続する場合に比較して、分岐循環路31の長さ寸法を大幅に短く形成することができる。しかも、エンジン8には、新たに配管を接続するための加工を施す必要がないから、尿素水加熱部30を容易に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中の窒素酸化物を除去するためのNOx浄化装置と尿素水タンクを搭載した油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、前記旋回フレームの左前側に設けられたキャブとを備え、該キャブ内には、オペレータが着座する運転席等が設けられている。
【0004】
油圧ショベルのエンジンにはディーゼルエンジンが用いられている。このディーゼルエンジンは、窒素酸化物(以下、NOxという)等を多く排出するとされている。そこで、ディーゼルエンジンの排気ガスの後処理装置として、NOxを浄化するためのNOx浄化装置がある。このNOx浄化装置は、例えばエンジンの排気管に設けられ排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒等から構成されている。また、NOx浄化装置に付随して尿素水タンクが設けられ、該尿素水タンク内には、還元剤としての尿素水(尿素水溶液)が貯えられている。この尿素水タンクは、尿素選択還元触媒よりも上流側位置に設けた尿素水噴射弁に対し接続配管を介して接続されている。
【0005】
ここで、油圧ショベルを寒冷地で使用した場合には、尿素水が−11℃以下で凍結してしまう。このために、NOx浄化装置を備えた油圧ショベルでは、尿素水タンクに尿素水加熱部を設け、尿素水加熱部とエンジンとを管路で接続することにより、この尿素水加熱部は、温められたエンジンの冷却水を尿素水タンク内で流通させることにより、尿素水を加熱する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−13844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1によるものでは、尿素水加熱部にエンジンの冷却水を供給するために、該尿素水加熱部とエンジンとの間を接続するように管路を設けている。この場合、エンジンと尿素水加熱部との間で冷却水を循環して流通させる必要があるから、管路は往路と復路の2本となっている。従って、エンジンには、2本の管路を接続するための接続口が新たに2個必要になる。
【0008】
然るに、エンジンに対しウォータジャケットに連通する新たな接続口を設けるためには、該エンジンの大幅な設計変更が必要になる。このため、既存のエンジンに接続口を設けるのは困難であり、尿素水加熱部を設けるのに多大な費用や手間を要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、既存のエンジンに手を加えることなく、エンジンの冷却水を尿素水加熱部に供給できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、自走可能な車体と、該車体の前側に設けられオペレータが搭乗するキャブと、前記車体の後側に搭載されたエンジンと、該エンジンを冷やして温度上昇した冷却水の熱を下げるために該エンジンのウォータジャケットとラジエータ循環路を介して接続されたラジエータと、前記エンジンの排気管に設けられ排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒を備えたNOx浄化装置と、前記エンジンの排気管の途中であって該NOx浄化装置の上流側に設けられた尿素水噴射弁と、還元剤である尿素水を貯えるために中空な容器からなる尿素水タンクと、該尿素水タンクと前記尿素水噴射弁との間を接続する接続配管と、前記キャブ内に設けられ前記エンジンの冷却水の熱を利用してキャブ内に温風を吹出す暖房用室内機と、前記エンジンの冷却水を該暖房用室内機との間で循環流通させる暖房用循環路とを備えている。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記尿素水タンクには、前記エンジンの冷却水を流通させることにより尿素水を加熱する尿素水加熱部を設け、前記暖房用循環路と前記尿素水加熱部との間には、前記暖房用循環路から分岐した分岐循環路を設ける構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記分岐循環路には、前記尿素水加熱部に供給する冷却水の流量を制御する流量制御弁を設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記分岐循環路には、前記暖房用循環路から分かれて該分岐循環路を流れる冷却水を前記尿素水加熱部に向けて供給するための補助ポンプを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、暖房用循環路と尿素水加熱部との間は、暖房用循環路から分岐した分岐循環路によって接続する構成としているから、エンジンのウォータジャケットから流出する冷却水は、暖房用循環路から分岐循環路を介して尿素水加熱部に供給することができる。
【0015】
ここで、分岐循環路は、暖房用循環路から分岐して設けているから、エンジンに直接的に接続する場合に比較し、その長さ寸法を短く形成することができ、組立作業時には容易に取回すことができる。しかも、分岐循環路は、一般的に金属配管、可撓性のホース等を用いて形成することができるから、一部の長さを変更することで、途中部位に分岐循環路を簡単に接続することができる。
【0016】
この結果、エンジンの設計変更、追加工等を行うことなく、該エンジンで温められた冷却水を尿素水加熱部に供給することができるから、該尿素水加熱部は、簡単な構成でエンジンの冷却水を熱源として尿素水タンク内の尿素水を効果的に加熱することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、分岐循環路に設けた流量制御弁は、尿素水加熱部に供給する冷却水の流量を制御することができる。即ち、流量制御弁は、エンジンの冷却水が冷えているときには、尿素水加熱部への冷却水の流れを遮断または流量を最小限とすることができる。また、尿素水の温度が低下して凍結の虞があるときには、冷却水の流量を増大することができる。さらに、尿素水の温度が高くなってきたときには、遮断または流量を最小限に調整することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、分岐循環路に設けた補助ポンプは、暖房用循環路から分かれて分岐循環路を流れる冷却水を尿素水加熱部に向けて積極的に供給することができる。これにより、分岐循環路で冷却水を流通させるときの負荷が、エンジンの冷却水を循環させるためのポンプに作用するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態が適用される油圧ショベルの正面図である。
【図2】上部旋回体をキャブの天井部の一部と建屋カバーとを省略した状態で示す平面図である。
【図3】排気ガス後処理装置と尿素水加熱部の構成をエンジン、暖房用室内機等と共に示す構成図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による尿素水加熱部、分岐循環路が設けられた上部旋回体を図2と同様位置から見た平面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による尿素水加熱部、分岐循環路が設けられた上部旋回体を図2と同様位置から見た平面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による尿素水加熱部、分岐循環路が設けられた上部旋回体を図2と同様位置から見た平面図である。
【図7】本発明の変形例による暖房用循環路を排気ガス後処理装置、尿素水加熱部等と一緒に示す図3と同様位置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態では、尿素水タンクは、キャブと左,右方向の反対側に配置された物品収容箱内に設ける構成とした場合を例示している。また、第1の実施の形態では、暖房用循環路をエンジンに設けられた接続口を介してウォータジャケットから分岐させる場合を例示している。
【0022】
図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械としての油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。
【0023】
作業装置4は、後述の旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cの前側位置に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、該ブーム4Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアームと、該アームの先端部に回動可能に取付けられたバケット等の作業具(いずれも図示せず)とにより大略構成されている。
【0024】
さらに、作業装置4には、ブーム4Aを俯仰動するためのブームシリンダ4Bが設けられ、該ブームシリンダ4Bは、基端側が左,右の縦板5B,5Cの最前部に回動可能に取付けられ、先端側がブーム4Aの中間位置に取付けられている。同様に、ブーム4Aとアームとの間にはアームシリンダが設けられ、アームと作業具との間には作業具シリンダ(いずれも図示せず)が設けられている。
【0025】
上部旋回体3は、図2に示すように、後述の旋回フレーム5、キャブ6、エンジン8、熱交換装置10、ラジエータ循環路14、物品収容箱18、排気ガス後処理装置21、尿素水噴射弁24、尿素水タンク25、接続配管26、暖房用室内機28、暖房用循環路29、尿素水加熱部30、分岐循環路31等により大略構成されている。
【0026】
5は上部旋回体3の支持構造体を形成する旋回フレームである。この旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの左,右方向の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、前記底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向の外側に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5Fと、前記底板5A、各縦板5B,5Cと各サイドフレーム5D,5Eとの間を覆うアンダカバー5Gとにより大略構成されている。
【0027】
6は左縦板5Bの左側に位置して旋回フレーム5上に搭載されたキャブである。このキャブ6は、オペレータが搭乗するもので、その内部にはオペレータが着座する運転席6A、作業用レバー6B、走行用レバー6C等(いずれも図示せず)が配設されている。キャブ6内には、例えば運転席6Aの後側に位置して後述の暖房用室内機28が設けられている。
【0028】
7は旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるものである。カウンタウエイト7は、前面が平坦面となり、後面が湾曲するように突出した中空容器として形成され、その内部には、鉄スクラップ、コンクリート等の重量物が充填されている。また、カウンタウエイト7の前側には、後述のエンジン8等が配設されている。
【0029】
8は旋回フレーム5の後側に設けられたエンジンである。このエンジン8は、ディーゼルエンジンとして構成され、旋回フレーム5上に横置き状態で搭載されている。このエンジン8には、外気を吸込んで後述の熱交換装置10に供給するための冷却ファン8Aが設けられている。エンジン8内には、図3に示すように、稼動時の温度上昇を抑えるための冷却水が流通するウォータジャケット8Bが設けられ、該ウォータジャケット8Bの流入側には、冷却水を圧送供給するための冷却水ポンプ8Cが設けられている。さらに、エンジン8の外面には、ウォータジャケット8Bに接続するための4個の接続口8D,8E,8F,8Gが設けられている。
【0030】
流出側に位置する主接続口8Dは、ウォータジャケット8Bを通って温度上昇した冷却水をラジエータ11に向けて流出させるもので、後述するラジエータ循環路14の往路14Aが接続される。流入側に位置する主接続口8Eは、ラジエータ11によって冷却された冷却水が流入するもので、ラジエータ循環路14の復路14Bが接続される。次に、流出側に位置する副接続口8Fは、温度上昇した冷却水を暖房用室内機28に設けられたヒータコア28Bに向けて流出させるもので、後述する暖房用循環路29の往路29Aが接続される。流入側に位置する副接続口8Gは、ヒータコア28Bから戻される冷却水が流入するもので、暖房用循環路29の復路29Bが接続される。なお、冷却水は、エンジン8を冷却するものであり、大部分はラジエータ11に送って冷却する必要がある。従って、流出側に位置する副接続口8Fに対応する通路には、冷却水の流出量を制限するための絞り部8Hが設けられている。
【0031】
ここで、ディーゼルエンジン8は、高効率で耐久性に優れているが、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質が排気ガスと一緒に排気管9から排出されてしまう。そこで、排気管9に取付けられる後述の排気ガス後処理装置21は、粒子状物質を除去するPM捕集装置22と、窒素酸化物(NOx)を除去するNOx浄化装置23とを備えている。
【0032】
10はエンジン8の冷却ファン8Aに対面して設けられた熱交換装置(図2参照)で、該熱交換装置10は、エンジン8の冷却水を冷却するためのラジエータ11と、作動油を冷却するためのオイルクーラ12と、エンジン8が吸込む空気を冷却するインタクーラ13等とにより構成されている。ラジエータ11には、図3に示すように、温度上昇した冷却水が流入する流入口11Aと、冷却後の冷却水が流出する流出口11Bとが設けられている。
【0033】
14はエンジン8とラジエータ11との間を接続して設けられたラジエータ循環路で、該ラジエータ循環路14は、冷却水をエンジン8のウォータジャケット8Bとラジエータ11との間で循環流通させるものである。ラジエータ循環路14は、エンジン8の主接続口8Dとラジエータ11の流入口11Aとの間を接続する往路14Aと、エンジン8の主接続口8Eとラジエータ11の流出口11Bとの間を接続する復路14Bとによって構成されている。
【0034】
15はエンジン8を挟んで熱交換装置10と反対側に取付けられた油圧ポンプで、該油圧ポンプ15は、エンジン8によって駆動されることにより、後述の作動油タンク16からの作動油を圧油として各種アクチュエータに向けて吐出するものである。
【0035】
16はエンジン8(油圧ポンプ15)の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられた作動油タンクで、この作動油タンク16は、油圧ポンプ15に供給する作動油を貯えるものである。17は作動油タンク16の前側に隣接するように旋回フレーム5上に設けられた燃料タンクで、この燃料タンク17は、エンジン8に供給する燃料を貯えるものである。
【0036】
18はキャブ6と左,右方向の反対側となる燃料タンク17の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられた物品収容箱である(図1参照)。この物品収容箱18は、内部が空洞となるボックス構造をなし、その内部には、後述の尿素水タンク25等が収容されている。
【0037】
19はキャブ6の後側に位置して旋回フレーム5上に設けられたユーティリティ室を示している。このユーティリティ室19内には、メンテナンス用の工具、グリースガン、消耗部品、油圧機器等を収容することができる。ユーティリティ室19は、キャブ6の後面に対面するように左,右方向に延びて立設された前仕切板19Aと、熱交換装置10の前側に位置して左,右方向に延びて立設された後仕切板19Bと、後述する建屋カバー20の上面カバー部20B等によって画成されている。
【0038】
20はエンジン8、熱交換装置10等を覆う建屋カバーで、該建屋カバー20は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5上に設けられている。そして、建屋カバー20は、熱交換装置10、ユーティリティ室19等の側方を覆うキャブ側カバー部(図示せず)と、油圧ポンプ15等の側方を覆うポンプ側カバー部20Aと、側面の両カバー部20Aの上側に位置してエンジン8、ユーティリティ室19等の上側を覆う上面カバー部20Bとにより大略構成されている。また、上面カバー部20B上には、エンジン8等のメンテナンス作業を行うときに開閉されるエンジンカバー部20Cが設けられている。
【0039】
次に、粒子状物質を除去するPM捕集装置22と窒素酸化物(NOx)を除去するNOx浄化装置23とを備えた排気ガス後処理装置21の構成について、図2、図3を参照しつつ述べる。
【0040】
21はエンジン8の排気管9に接続して設けられた排気ガス後処理装置である。この排気ガス後処理装置21は、排気ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集して除去するPM捕集装置22と、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元剤となる尿素水(尿素水溶液)を用いて浄化する後述のNOx浄化装置23とを備えるものである。そして、排気ガス後処理装置21は、PM捕集装置22とNOx浄化装置23とにより大略構成されている。
【0041】
22はエンジン8の排気管9の出口側に接続して設けられたPM捕集装置(粒子状物質除去装置)である。このPM捕集装置22は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するものである。PM捕集装置22は、円筒状容器として形成された筒状ケース22Aと、該筒状ケース22A内に収容されたPM捕集フィルタ22Bとにより大略構成されている。このPM捕集フィルタ22Bは、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集し、捕集した粒子状物質を燃焼させて除去するものである。
【0042】
23はPM捕集装置22の下流側に接続して設けられたNOx浄化装置である。このNOx浄化装置23は、尿素水を利用して排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するものである。NOx浄化装置23は、筒状容器として形成された筒状ケース23Aと、該筒状ケース23Aの入口側をPM捕集装置22の出口側に接続する中間配管23Bと、前記筒状ケース23Aの出口側から上側に延びた尾管23Cと、前記筒状ケース23A内に収容された尿素選択還元触媒23Dと、該尿素選択還元触媒23Dの下流側に設けられた酸化触媒23Eとにより大略構成されている。
【0043】
ここで、NOx浄化装置23は、中間配管23Bに設けられた後述の尿素水噴射弁24により排気ガス中に尿素水を噴射し、尿素選択還元触媒23Dにより尿素水から生成されたアンモニアを用いて排気ガス中のNOxを還元反応させ、水と窒素に分解し、さらに、酸化触媒23Eでは、NOxを還元した後に残った残留アンモニアを酸化することにより、水と窒素に分離することができる。
【0044】
24はNOx浄化装置23の中間配管23Bに設けられた尿素水噴射弁で、該尿素水噴射弁24は、尿素選択還元触媒23Dの上流側となる中間配管23B内に尿素水を噴射するものである。尿素水噴射弁24は、後述の接続配管26、供給ポンプ27を介して尿素水タンク25に接続されている。
【0045】
次に、還元剤である尿素水を貯え、この貯えた尿素水をNOx浄化装置23に対して供給するための構成について説明する。
【0046】
25はNOx浄化装置23と接続して設けられた尿素水タンクを示している。この尿素水タンク25は、尿素水噴射弁24からNOx浄化装置23に噴射するための尿素水を貯えるもので、物品収容箱18内に収容されている。尿素水タンク25は、ボックス状の密閉容器として形成され、上部には給水用の給水口25Aが設けられている。一方、尿素水タンク25の下部には、後述の接続配管26が接続されている。
【0047】
ここで、尿素水は、−11℃以下で凍結するから、寒冷地で作業する場合には、尿素水が凍結しないように熱を加える必要がある。そこで、尿素水タンク25には、温度上昇したエンジン8の冷却水を利用して尿素水に熱を加える後述の尿素水加熱部30が設けられている。
【0048】
26は尿素水タンク25と尿素水噴射弁24とを接続して設けられた接続配管である。この接続配管26には、尿素水タンク25側寄りに位置して供給ポンプ27が設けられている。これにより、尿素水タンク25内の尿素水は、接続配管26を介して尿素水噴射弁24に加圧状態で供給することができる。
【0049】
28はキャブ6内に設けられた暖房用室内機である。この暖房用室内機28は、暖房専用機または冷房装置も備えた空調装置の室内機の一部として設けられている。暖房用室内機28は、ダクト状のケーシング28A内にヒータコア28Bを有し、このヒータコア28Bに向けて送風ファン(図示せず)から送風することにより、温められた温風をキャブ6内に吹き出し、キャブ6内をオペレータが好ましい温度環境に調整するものである。
【0050】
暖房用室内機28のケーシング28Aには、ヒータコア28Bの端部に位置して流入口28Cと流出口28Dが設けられている。この流入口28Cには後述する暖房用循環路29の往路29Aが接続され、流出口28Dには暖房用循環路29の復路29Bが接続されている。
【0051】
29はエンジン8のウォータジャケット8Bと暖房用室内機28のヒータコア28Bとの間を接続して設けられた暖房用循環路である。この暖房用循環路29は、エンジン8のウォータジャケット8Bと暖房用室内機28のヒータコア28Bとの間でエンジン8の冷却水(温水)を循環流通させるものである。
【0052】
暖房用循環路29は、エンジン8を冷却して温度上昇した冷却水を暖房用室内機28に供給するために、エンジン8の流出側の副接続口8Fと暖房用室内機28の流入口28Cとの間を接続した往路29Aと、ヒータコア28Bからの冷却水をウォータジャケット8Bに戻すために、エンジン8の流入側の副接続口8Gと暖房用室内機28の流出口28Dとの間を接続した復路29Bとにより構成されている。
【0053】
次に、本実施の形態の特徴部分である尿素水タンク25内の尿素水を加熱するための構成、具体的には、尿素水加熱部30、分岐循環路31、補助ポンプ32、流量制御弁33の構成について述べる。
【0054】
30は尿素水タンク25に設けられた尿素水加熱部で、該尿素水加熱部30は、エンジン8で温度上昇した冷却水を熱源として利用し、尿素水タンク25内に貯留された尿素水が凍結しないように加熱するものである。尿素水加熱部30は、尿素水タンク25内を延びる伝熱管30Aを有し、該伝熱管30A内には温度上昇した冷却水が流通する。伝熱管30Aの流入口30Bには、後述する分岐循環路31の往路31Aが接続され、流出口30Cには、分岐循環路31の復路31Bが接続されている。
【0055】
31は暖房用循環路29と尿素水加熱部30との間に設けられた分岐循環路を示している。この分岐循環路31は、暖房用循環路29と尿素水加熱部30との間で、暖房用に供給されるエンジン8の冷却水(温水)を循環流通させるものである。分岐循環路31は、暖房用循環路29のうち、キャブ6(暖房用室内機28)寄りの途中部位から分岐し、その先端部が尿素水加熱部30に接続されている。分岐循環路31は、供給側の往路31Aと戻し側の復路31Bとにより構成されている。
【0056】
分岐循環路31の往路31Aは、熱源となるエンジン8の冷却水を尿素水加熱部30に供給するもので、基端側が暖房用循環路29の往路29Aの途中部位にT字継手31Cを用いて接続され、先端側は尿素水加熱部30の流入口30Bに接続されている。一方、分岐循環路31の復路31Bは、尿素水加熱部30を通過した冷却水を暖房用循環路29に戻すもので、基端側が暖房用循環路29の復路29Bの途中部位にT字継手31Cを用いて接続され、先端側は尿素水加熱部30の流出口30Cに接続されている。
【0057】
ここで、分岐循環路31は、暖房用循環路29から分岐して設けているから、その分岐位置を尿素水加熱部30に近い位置とすることにより、エンジン8に直接的に接続する場合に比較して、長さ寸法を大幅に短く形成することができる。この場合には、製造コストを低減できる上に、組立作業時の取回しも容易となる。しかも、暖房用循環路29を、金属配管、可撓性のホースのいずれで形成した場合でも、金属配管やホースの長さを一部変更することで、それぞれの途中部位に容易にT字継手31Cを接続することができる。
【0058】
32は分岐循環路31の往路31Aに設けられた補助ポンプで、該補助ポンプ32は、暖房用循環路29の往路29Aから分かれて分岐循環路31の往路31Aを流れる冷却水を、尿素水加熱部30に向けて積極的に供給するものである。この補助ポンプ32は、例えばギヤポンプ、ロータリポンプ等の容積形ポンプや遠心ポンプ、軸流ポンプ等のターボ形ポンプにより構成されている。補助ポンプ32は、暖房用循環路29の往路29Aから分流した冷却水を、尿素水加熱部30で流通させた後に復路29Bに合流できればよいから、出力の小さなポンプ装置を用いることができる。さらに、分岐循環路31の往路31Aに補助ポンプ32を設けたことにより、エンジン8の冷却水ポンプ8Cの負担を軽減することができる。
【0059】
33は補助ポンプ32よりも下流側に位置して分岐循環路31の往路31Aに設けられた流量制御弁で、該流量制御弁33は、尿素水加熱部30に供給する冷却水の流量を制御するものである。この流量制御弁33は、コントローラ(図示せず)から制御信号が出力されると、この制御信号に基いて冷却水の流量を調整している。流量制御弁33の具体例としては、開閉する2ポート2位置の切換弁、固定式の絞り通路と全開通路とを切換える2ポート3位置の切換弁、可変式の絞り弁からなる流量調整弁等により構成されている。流量制御弁33の制御の一例としては、エンジン8の冷却水が冷えているときには尿素水加熱部30への冷却水の流れを遮断または流量を最小限としている。また、尿素水タンク25内の尿素水の温度が低下して凍結の虞があるときには冷却水の流量を増大させる。さらに、尿素水の温度が高くなって結晶化する虞があるときには遮断または流量を最小限とする調整を行っている。
【0060】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0061】
オペレータは、キャブ6に搭乗し、エンジン8を始動して油圧ポンプ15を駆動する。そして、運転席6Aに着座した状態で走行用レバー6Cを操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、作業用レバー6Bを操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0062】
エンジン8の稼動時には、排気管9から有害物質である粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)等が排気ガスの一部として排出される。このときに、PM捕集装置22は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)をPM捕集フィルタ22Bによって捕集し、捕集した粒子状物質を燃焼させて除去することができる。
【0063】
一方、NOx浄化装置23は、尿素水タンク25内の尿素水を、供給ポンプ27を用いて接続配管26から尿素水噴射弁24に圧送供給する。これにより、NOx浄化装置23は、中間配管23Bを通る排気ガス中に尿素水噴射弁24から尿素水を噴射してアンモニアを生成する。これにより、尿素選択還元触媒23Dでは、窒素酸化物を水と窒素に還元し、酸化触媒23Eでは、NOxを還元した後に残った残留アンモニアを酸化して水と窒素に分離すことにより、窒素酸化物(NOx)の排出量を低減することができる。
【0064】
ここで、寒冷地で作業を行うことで、尿素水タンク25内に貯留した尿素水が凍結する虞がある場合について述べる。この場合には、流量制御弁33を開弁状態とし、補助ポンプ32を駆動する。これにより、エンジン8のウォータジャケット8Bから流出して暖房用循環路29の往路29Aを暖房用室内機28に向けて流れる冷却水は、その一部が分岐循環路31の往路31Aに流れ込み、補助ポンプ32によって尿素水加熱部30に供給される。この尿素水加熱部30は、温度上昇した冷却水(温水)を伝熱管30A内で流通させることにより、尿素水タンク25内の尿素水を内部から加熱して凍結を阻止することができる。尿素水加熱部30の伝熱管30Aを通過した冷却水は、分岐循環路31の復路31Bを通って暖房用循環路29の復路29Bに流入し、エンジン8のウォータジャケット8Bに戻される。
【0065】
かくして、第1の実施の形態によれば、尿素水タンク25内には、温められたエンジン8の冷却水を熱源として流通させることにより、貯留された尿素水を加熱する尿素水加熱部30を設ける。この上で、暖房用室内機28にエンジン8の冷却水を循環供給する暖房用循環路29と尿素水加熱部30との間には、暖房用循環路29から分岐した分岐循環路31を設ける構成としている。従って、エンジン8のウォータジャケット8Bから流出する冷却水は、暖房用循環路29から分岐循環路31を介して尿素水加熱部30に供給することができる。
【0066】
ここで、分岐循環路31は、暖房用循環路29から分岐して設けているから、その分岐位置を尿素水加熱部30に近い位置とすることにより、エンジン8に直接的に接続する場合に比較して、長さ寸法を大幅に短く形成することができる。この場合には、尿素水加熱部30を設置する場合の製造コストを低減できる上に、分岐循環路31の取回し作業を容易にして組立作業性を向上することができる。
【0067】
しかも、暖房用循環路29は、金属配管、可撓性のホース等により形成することができ、これらの金属配管やホースの長さ寸法を一部変更することで、それぞれの途中部位に分岐循環路31のT字継手31Cを容易に接続することができる。
【0068】
この結果、エンジン8の接続口8D〜8Gの数を増やすための設計変更、追加工等を行うことなく、該エンジン8の冷却水を熱源として尿素水加熱部30に供給することができるから、仕様変更に伴う費用や手間を最小限に抑えることができ、簡単な構成で尿素水タンク25内の尿素水の凍結を防止することができる。
【0069】
また、分岐循環路31の往路31Aには流量制御弁33を設けているから、尿素水加熱部30に供給する冷却水の流量を制御することができる。即ち、流量制御弁33は、エンジン8の冷却水が冷えているときには、尿素水加熱部30への冷却水の流れを遮断または流量を最小限とすることができる。また、尿素水タンク25内の尿素水の温度が低下して凍結の虞があるときには冷却水の流量を増大させることができる。さらに、尿素水の温度が高くなって結晶化する虞があるときには遮断または流量を最小限とすることができる。これにより、流量制御弁33は、エンジン8の冷却水の温度、キャブ6内の温度、尿素水の温度等の条件に応じて最適な制御を行うことができる。
【0070】
さらに、分岐循環路31の往路31Aには補助ポンプ32を設けているから、暖房用循環路29から分かれて分岐循環路31を流れる冷却水を、尿素水加熱部30に向けて積極的に供給することができる。これにより、分岐循環路31で冷却水を流通させるときの負荷が、エンジン8の冷却水ポンプ8Cに作用するのを防止することができ、既存の冷却水ポンプ8Cをそのまま使用することができる。
【0071】
次に、図4は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、尿素水タンク、尿素水加熱部をキャブの後側のユーティリティ室に設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0072】
41は第2の実施の形態による尿素水タンクで、該尿素水タンク41は、キャブ6の後側に位置するユーティリティ室19内に配置されている。この尿素水タンク41は、第1の実施の形態による尿素水タンク25とほぼ同様に、内部に尿素水を貯えるもので、ボックス状の密閉容器として形成され、その上部には給水用の給水口41Aが設けられている。尿素水タンク41は、接続配管42を介して尿素水噴射弁24に接続されている。
【0073】
43は尿素水タンク41に設けられた第2の実施の形態による尿素水加熱部で、該尿素水加熱部43は、第1の実施の形態による尿素水加熱部30と同様に、エンジン8の冷却水を熱源として尿素水タンク41内の尿素水を加熱するものである。
【0074】
44は暖房用循環路29と尿素水加熱部43との間に設けられた第2の実施の形態による分岐循環路で、該分岐循環路44は、第1の実施の形態による分岐循環路31とほぼ同様に、暖房用循環路29の途中部位から分岐し、その先端部が尿素水加熱部43に接続されている。また、分岐循環路44は、供給側の往路44Aと戻し側の復路44Bとにより構成され、往路44Aには補助ポンプ32と流量制御弁33が設けられている。
【0075】
ここで、第2の実施の形態による分岐循環路44は、尿素水タンク41を暖房用室内機28の近傍に配置したことにより、暖房用循環路29と尿素水加熱部43とを近付けることができる。これにより、暖房用循環路29と尿素水加熱部43とを接続する分岐循環路44をより一層短く形成することができる。
【0076】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、暖房用室内機28に対し尿素水タンク41を近傍に配置することで、該暖房用循環路29と尿素水加熱部43とを接続する分岐循環路44をより一層短く形成することができる。これにより、分岐循環路44を設ける場合の製造コストを低減できる上に、分岐循環路44の取回し作業を容易にして組立作業性を向上することができる。
【0077】
次に、図5は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、尿素水タンク、尿素水加熱部を熱交換装置の上流側のスペースに設ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0078】
51は第3の実施の形態による尿素水タンクで、該尿素水タンク51は、熱交換装置10の上流側のスペースに位置して旋回フレーム5上に配置されている。この尿素水タンク51は、第1の実施の形態による尿素水タンク25とほぼ同様に、内部に尿素水を貯えるもので、ボックス状の密閉容器として形成され、その上部には給水用の給水口51Aが設けられている。尿素水タンク51は、接続配管52を介して尿素水噴射弁24に接続されている。
【0079】
53は尿素水タンク51に設けられた第3の実施の形態による尿素水加熱部で、該尿素水加熱部53は、第1の実施の形態による尿素水加熱部30と同様に、エンジン8の冷却水を熱源として尿素水タンク51内の尿素水を加熱するものである。
【0080】
54は暖房用循環路29と尿素水加熱部53との間に設けられた第3の実施の形態による分岐循環路で、該分岐循環路54は、第1の実施の形態による分岐循環路31とほぼ同様に、暖房用循環路29の途中部位から分岐し、その先端部が尿素水加熱部53に接続されている。また、分岐循環路54は、供給側の往路54Aと戻し側の復路54Bとにより構成されている。
【0081】
ここで、第3の実施の形態による分岐循環路54は、尿素水タンク51をエンジン8の近傍に配置したことにより、暖房用循環路29と尿素水加熱部53とを近付けることができる。これにより、暖房用循環路29と尿素水加熱部53とを接続する分岐循環路54を短く形成することができる。また、第3の実施の形態では、尿素水タンク51をエンジン8の近傍に配置しているから、エンジン8から冷却水を吐出させるときの吐出力だけで、この冷却水を尿素水加熱部53に供給することができる。従って、分岐循環路54の往路54Aには流量制御弁33だけを設ける構成としている。
【0082】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態では、エンジン8の近傍に尿素水タンク51を配置することで、暖房用循環路29と尿素水加熱部53とを接続する分岐循環路54を短く形成することができる。これにより、分岐循環路54を安価に設けることができる上に、分岐循環路54を容易に取回すことができる。しかも、分岐循環路54の往路54Aから補助ポンプ32を省略できるから、構成を簡略化することができる。
【0083】
次に、図6は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、尿素水タンク、尿素水加熱部をカウンタウエイトに設ける構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0084】
61は旋回フレーム5の後端部に取付けられた第4の実施の形態によるカウンタウエイトである。このカウンタウエイト61は、第1の実施の形態によるカウンタウエイト7とほぼ同様に、作業装置4との重量バランスをとるもので、前面が平坦面となり、後面が湾曲するように突出した中空容器として形成され、その内部には、鉄スクラップ、コンクリート等の重量物が充填されている。
【0085】
しかし、第4の実施の形態によるカウンタウエイト61は、前側に位置して凹陥部61Aが設けられている点で、第1の実施の形態によるカウンタウエイト7と相違している。この凹陥部61Aは、カウンタウエイト61の上面部および前面部を切欠いてステップ状に窪ませることにより、左,右方向に長尺な直方体状の収容空間を備えている。
【0086】
ここで、カウンタウエイト61に凹陥部61Aを形成した場合、この凹陥部61Aの分だけカウンタウエイト61の容積が小さくなる。しかし、カウンタウエイト61に充填する重量物の比重を高める(例えば鉄スクラップの比率を高める)ことにより、適正な重量を得ることができる。
【0087】
62は第4の実施の形態による尿素水タンクで、該尿素水タンク62は、カウンタウエイト61の凹陥部61A内に配置されている。この尿素水タンク62は、第1の実施の形態による尿素水タンク25とほぼ同様に、内部に尿素水を貯えるもので、ボックス状の密閉容器として形成され、その上部には給水用の給水口62Aが設けられている。尿素水タンク62は、接続配管63を介して尿素水噴射弁24に接続されている。
【0088】
64は尿素水タンク62に設けられた第4の実施の形態による尿素水加熱部で、該尿素水加熱部64は、第1の実施の形態による尿素水加熱部30と同様に、エンジン8の冷却水を熱源として尿素水タンク62内の尿素水を加熱するものである。
【0089】
65は暖房用循環路29と尿素水加熱部64との間に設けられた第4の実施の形態による分岐循環路で、該分岐循環路65は、第1の実施の形態による分岐循環路31とほぼ同様に、暖房用循環路29の途中部位から分岐し、その先端部が尿素水加熱部64に接続されている。また、分岐循環路65は、供給側の往路65Aと戻し側の復路65Bとにより構成されている。
【0090】
ここで、第4の実施の形態による分岐循環路65は、尿素水タンク62をエンジン8の近傍に配置したことにより、暖房用循環路29と尿素水加熱部64とを近付けることができるから、分岐循環路65を短く形成することができる。また、第4の実施の形態では、尿素水タンク62をエンジン8の近傍に配置しているから、エンジン8から冷却水を吐出させるときの吐出力だけで、この冷却水を尿素水加熱部64に供給することができる。従って、分岐循環路65の往路65Aには流量制御弁33だけを設ける構成としている。
【0091】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態では、エンジン8の近傍に尿素水タンク62を配置することで、暖房用循環路29と尿素水加熱部64とを接続する分岐循環路65を短く形成することができる。これにより、分岐循環路65を安価に設けることができる上に、分岐循環路65を容易に取回すことができる。しかも、分岐循環路65の往路65Aから補助ポンプ32を省略できるから、構成を簡略化することができる。さらに、尿素水タンク62は、尿素水噴射弁24に対しても近傍に位置しているから、接続配管63を短く形成することができる。
【0092】
なお、第1の実施の形態では、暖房用循環路29の往路29A,復路29Bを、エンジン8の外面に設けた副接続口8F,8Gを介してウォータジャケット8Bから分岐させた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図7に示す変形例のように構成してもよい。即ち、暖房用循環路71の往路71A,復路71Bは、ラジエータ循環路14の往路14A,復路14Bから分岐して設けることで、暖房用循環路71をラジエータ循環路14を介してエンジン8′のウォータジャケット8Bに接続する構成としてもよい。さらに、暖房用循環路の往路と復路は、ラジエータ11の流入口11Aと流出口11Bから分岐して接続する構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用できるものである。
【0093】
また、第1の実施の形態では、分岐循環路31の往路31Aに流量制御弁33を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、図3中に二点鎖線で示すように、流量制御弁33′を分岐循環路31の復路31Bに設ける構成としてもよい。また、分岐循環路31の往路31Aに設けた補助ポンプ32が容積形ポンプからなり、冷却水の流量を調整することができる場合には、流量制御弁33を省略する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用できるものである。
【0094】
また、第1の実施の形態では、分岐循環路31の往路31Aに補助ポンプ32と流量制御弁33とを別個に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば補助ポンプ32と流量制御弁33とを1つの部品として構成してもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用できるものである。
【0095】
さらに、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、ホイール式の油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 旋回フレーム
6 キャブ
8,8′ エンジン
8B ウォータジャケット
9 排気管
10 熱交換装置
11 ラジエータ
14 ラジエータ循環路
14A,29A,31A,44A,54A,65A,71A 往路
14B,29B,31B,44B,54B,65B,71B 復路
23 NOx浄化装置
23D 尿素選択還元触媒
24 尿素水噴射弁
25,41,51,62 尿素水タンク
26,42,52,63 接続配管
28 暖房用室内機
29,71 暖房用循環路
30,43,53,64 尿素水加熱部
31,44,54,65 分岐循環路
32 補助ポンプ
33,33′ 流量制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、該車体の前側に設けられオペレータが搭乗するキャブと、前記車体の後側に搭載されたエンジンと、該エンジンを冷やして温度上昇した冷却水の熱を下げるために該エンジンのウォータジャケットとラジエータ循環路を介して接続されたラジエータと、前記エンジンの排気管に設けられ排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒を備えたNOx浄化装置と、前記エンジンの排気管の途中であって該NOx浄化装置の上流側に設けられた尿素水噴射弁と、還元剤である尿素水を貯えるために中空な容器からなる尿素水タンクと、該尿素水タンクと前記尿素水噴射弁との間を接続する接続配管と、前記キャブ内に設けられ前記エンジンの冷却水の熱を利用してキャブ内に温風を吹出す暖房用室内機と、前記エンジンの冷却水を該暖房用室内機との間で循環流通させる暖房用循環路とを備えてなる建設機械において、
前記尿素水タンクには、前記エンジンの冷却水を流通させることにより尿素水を加熱する尿素水加熱部を設け、
前記暖房用循環路と前記尿素水加熱部との間には、前記暖房用循環路から分岐した分岐循環路を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記分岐循環路には、前記尿素水加熱部に供給する冷却水の流量を制御する流量制御弁を設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記分岐循環路には、前記暖房用循環路から分かれて該分岐循環路を流れる冷却水を前記尿素水加熱部に向けて供給するための補助ポンプを設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−237232(P2012−237232A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106288(P2011−106288)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】