説明

弁体変位検出機能付き弁および同機能付き逆止弁

【課題】従来の構成では検知が困難であった小さな異物を噛み込んだことによる微量の逆流をも効果的に検知することができる弁体変位検出機能付きの逆止弁を提供する。
【解決手段】弁胴内にバネ圧によって閉弁方向に付勢した弁体の二次側に通水方向に沿ってスライドする弁軸を備えた逆止弁であって、前記弁軸の二次側に一体的に設けた電磁感応性を有する測定対象部と、コイルに高周波電流を流して高周波磁界を発生し、前記測定対象部との離間距離に応じてコイルインピーダンスが変化する位置に設けたセンサヘッドと、このセンサヘッドからの発振出力に基づいて前記弁体の変位を算出する変位算出部とからなる。また、弁胴の二次側に非磁性体からなるセンサケーシングを直管状に連結し、該センサケーシングの二次側に防水壁を介してセンサヘッドを設けると共に、弁軸の二次側に測定対象部を前記センサケーシング内まで延設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁体の移動量や位置を検出することが可能な変位センサを内蔵した弁に係り、より詳しくは、変位センサとして渦電流式センサを採用した構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、直結給水方式の普及と共に、給水装置が高度・多様化してきており、その種類、設置数も多くなっている。これら給水装置に対する不適切な施工管理は、建築物内の給水システムのみならず、水道配管系統へも悪影響を及ぼす恐れがあるため、給水装置における安全性の確保を重要課題の一つである。給水装置の重要構成である逆流防止装置について、これまでも、その特性を評価し、逆流の危険度に応じた効果的な逆流防止法が検討されてきたが、通常設置下での作動状況については未だ把握されていないのが現状である。このような中、逆止弁の異常検知システムとして、特許文献1・2に示される構成が公知である。
【0003】
【特許文献1】特開平8−178805号公報
【特許文献2】特開2006−177316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、逆止弁は、その名の通り、管路における逆流を防止するためのものであり、これに故障や異常が発生すれば当然に逆流が発生する恐れがある。言い換えれば、逆流があったときに逆止弁を異常と判断すればよく、逆流の流量が比較的大きな変化を示すとき、逆止弁の異常を疑うことは容易である。しかしながら、針金程度の小さな異物を噛み込んだような場合、流量の変化は極めて小さく、その原因を究明することは容易ではなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、従来の構成では検知が困難であった小さな異物を噛み込んだことによる微量の逆流をも効果的に検知することができる弁体変位検出機能付きの逆止弁を提供することである。また、開閉時に直線状に作動する弁体を備えた弁についても、開度を検出することが可能な弁体変位検出機能付き弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために本発明では、開閉時に直線状に作動する弁体を備えた弁であって、前記弁体に電磁感応性を有する測定対象部を一体的に設けると共に、前記弁体の作動軸線上に渦電流式センサを設けるという手段を用いる。これを逆止弁に適用する場合は、弁胴内に閉弁方向に付勢した弁体の二次側に通水方向に沿って直線状にスライドする弁軸を備えた逆止弁であって、前記弁軸に一体的に設けた電磁感応性を有する測定対象部と、前記弁体の作動軸線上において前記測定対象部との離間距離に応じてコイルインピーダンスが変化可能な高周波磁界を発生するセンサヘッドと、このセンサヘッドからの発振出力に基づいて前記弁体の変位を算出する変位算出部とから弁体変位検出機能付き逆止弁を構成する。測定対象部とセンサヘッドは渦電流式変位センサを構成する。即ち、センサヘッドの高周波磁界内に測定対象部が位置すると、電磁誘導作用によって、測定対象部の表面に時速の通過と垂直方向の渦電流が発生し、センサヘッドとの離間距離に応じてセンサヘッドのコイルインピーダンスが変化する。そして、本発明では、この現象による発振状態の変化により、弁体の変位を検出し、変位量を測定する。
【0007】
具体的態様としては、弁胴の二次側に非磁性体からなるセンサケーシングを直管状に連結し、該センサケーシングの二次側に防水壁を介してセンサヘッドを設けると共に、弁軸の二次側に測定対象部を前記センサケーシング内まで延設するという手段を選択的に用いる。つまり、既存の逆止弁に上述したセンサ構造を付設する場合、既存では弁胴が金属製であるため、高周波磁界と緩衝し、分解能が低下するおそれがある。そこで、この手段では、樹脂などの非磁性体からなるセンサケーシングを連結することで、弁胴が金属製である場合の上記問題点を解消している。
【0008】
なお、弁体の変位量を検出するには、測定対象部とセンサヘッドの距離から求められるが、その一つの手段として、変位算出部は、センサヘッドから出力される発振の振幅および位相に基づいて弁体の変位量を算出する。この算出手段によれば、発振の振幅と位相の変化によって、上記距離とほぼ比例した値が得られる。
【0009】
一方、変位算出部は、センサヘッドから出力される発振の振幅を整流して得られる直流電圧に基づいて弁体の変位量を算出することであってもよい。この算出手段であっても、整流された電圧信号と距離はほぼ比例することになるが、リニアライズ回路によって直線性補正を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上述べた本発明では、弁軸に設けた測定対象部とセンサヘッドにより渦電流式センサを構成し、その出力によって弁体の変位を検出するようにしたので、弁体の開度を検出できると共に、不用意な開弁状態を検知することができる。また、非常に優れた分解能によって、弁体の微小な変位量も検出でき、例えば針金程度の小さな異物の噛み込みによる弁体変位も検知することが可能となる。また、弁体の変位量から開度を算出することも可能であるため、流量や弁差圧の検出と併用することで、異物噛み込みのみならず、経年的な劣化によるバネ圧の低下や給水圧の低下、通水不良、センサの不具合など、多岐にわたる異常を判別し、検知することも可能である。さらに、こうした事後的な異常検出だけでなく、弁設置時の試験通水においても、その給水管路における弁の特性や適性を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る逆止弁の特に二次側構成を示したものである。なお、この実施形態ではバネ式の逆止弁を例示するが、そのセルフシーリング構造および一次側構成は、従来の逆止弁と何ら変わるところがないため、詳細を割愛する。即ち、この実施形態に係る逆止弁の二次側は、弁胴1の二次側接続口1aに後述する渦電流式変位センサを備えたセンサケーシング2が直管状に連結されている。このセンサケーシング2は、弁胴1とは別にセンサ室を構成するもので、後述する渦電流式センサに不用意な磁界や導電体が緩衝しないように、アクリルに代表される樹脂等の非磁性体からなる。また、このセンサケーシング2の二次側は防水壁3によって閉塞される一方、弁胴1と連通する通水は、側壁に設けた連結口4を介して行うようにしている。つまり、このセンサケーシング2はエルボ管あるいは二次側を閉塞したT字管の態様をなしている。
【0012】
一方、弁体はバネ圧と逆圧によるセルフシーリング性により弁胴1に内蔵されており、その二次側には弁軸5が通水方向に沿ってスライドするように設けられている。つまり、弁軸5は弁体の開閉と連動して直線的にスライドするが、この弁軸5の二次側には、センサケーシング2内に位置して、金属などの磁界においたとき電磁感応性を有する測定対象部6が設けられている。なお、このとき、既存の逆止弁を用いる場合、測定対象部6がセンサケーシング2内に位置するように、弁軸5を適宜延長する。
【0013】
これと共に、センサケーシング2の二次側には防水壁3を介してセンサヘッド7が固設されている。このセンサヘッド7は、内部コイルに高周波電流を流して、センサケーシング2内に高周波磁界を形成している。そして、センサヘッド7には出力線8が設けられ、この出力線7は適宜変圧器やアンプを介してパソコンなどの変位算出部(図示せず)に接続される。
【0014】
このように測定対象部6とセンサヘッド7により渦電流式変位センサが構成され、センサヘッド7の磁界内に測定対象部6が位置すると、電磁誘導作用によって、測定対象部6の表面に磁束の通過と垂直方向に渦電流が流れて、センサヘッド7のコイルインピーダンスが変化することになる。この原理を利用すれば、弁体の開閉によって測定対象部6とセンサヘッド7の距離が近づくにつれ、センサヘッド7から出力される発振の振幅は小さく、基準波形との位相のズレが大きくなる(図2参照)。そして、この振幅と位相の変化を検出することにより、距離とほぼ比例した値が得られる。
【0015】
また、別の検出方法としては、測定対象部6とセンサヘッド7の距離が近づくにつれ、測定対象物6の渦電流が大きくなり、逆に、センサヘッド7の発振振幅は小さくなるから、この発振振幅を整流して直流電圧の変化として捉えれば、図3に示したように、距離とほぼ比例した値を測定することができる。なお、この直流電圧出力方式では、リニアライズ回路を接続して、距離により比例した出力を得ることが好ましい。
【0016】
なお、上記実施形態では、逆止弁への適用を説明したが、開閉時に直線状に作動する弁体を備えたものであれば、他の弁であっても、弁体に電磁感応性を有する測定対象部を一体的に設けると共に、前記弁体の作動軸線上に渦電流式センサを設けることによって、弁体変位検出機能付き弁を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る弁体変位検出機能付き逆止弁の二次側断面図
【図2】測定対象部の距離とセンサヘッドの出力を示した相関グラフ
【図3】別方法による測定対象部の距離とセンサヘッドの出力を示した相関グラフ
【符号の説明】
【0018】
1 弁胴
2 センサケーシング
3 防水壁
4 二次側連結口
5 弁軸
6 測定対象部
7 センサヘッド
8 出力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉時に直線状に作動する弁体を備えた弁であって、前記弁体に電磁感応性を有する測定対象部を一体的に設けると共に、前記弁体の作動軸線上に渦電流式センサを設けたことを特徴とする弁体変位検出機能付き弁。
【請求項2】
弁胴内に閉弁方向に付勢した弁体の二次側に通水方向に沿って直線状にスライドする弁軸を備えた逆止弁であって、前記弁軸に一体的に設けた電磁感応性を有する測定対象部と、前記弁体の作動軸線上において前記測定対象部との離間距離に応じてコイルインピーダンスが変化可能な高周波磁界を発生するセンサヘッドと、このセンサヘッドからの発振出力に基づいて前記弁体の変位を算出する変位算出部とからなることを特徴とした弁体変位検出機能付き逆止弁。
【請求項3】
弁胴の二次側に非磁性体からなるセンサケーシングを連結し、該センサケーシングの二次側に防水壁を介してセンサヘッドを設けると共に、弁軸の二次側に測定対象部を前記センサケーシング内まで延設した請求項2記載の弁体変位検出機能付き逆止弁。
【請求項4】
変位算出部は、センサヘッドから出力される発振の振幅および位相に基づいて弁体の変位量を算出する請求項2または3記載の弁体変位検出機能付き逆止弁。
【請求項5】
変位算出部は、センサヘッドから出力される発振の振幅を整流して得られる直流電圧に基づいて弁体の変位量を算出する請求項2または3記載の弁体変位検出機能付き逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−82384(P2008−82384A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260769(P2006−260769)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000151025)株式会社タブチ (86)
【Fターム(参考)】