説明

弁構造体および該弁構造体を備えた逆止弁

【課題】シール材が不要であるとともに、弁室の内部に弁座部材を圧入して固定する場合において、圧入によって削り取られた切削粉が、弁座部材のシート面に付着して、弁シール性が低下することのない弁構造体を提供すること。
【解決手段】弁室と、弁室の内部に固定された弁座部材と、弁室の内部に収容された弁本体と、を備えた弁構造体であって、弁座部材には、少なくとも、弁室の内部に圧入される圧入部が形成されているとともに、弁座部材の一端側には、弁室の内部に収容された弁本体が接離するシート面が形成されており、弁座部材が、シート面が形成されていないその他端側から弁室の内部に挿入されて、弁室の内部の所定の位置に位置するまでその圧入部が弁室の内部に圧入されることで、弁座部材が弁室の内部に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座部材が圧入によって弁室内に固定される弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気圧縮式の冷凍サイクル等において、サイクル回路を流れる冷媒の逆流を防止するため、逆止弁が用いられている。逆止弁は、流体の順方向の流れに対しては弁開状態となって流路を開放するとともに、流体の逆方向の流れに対しては弁閉状態となって流路を閉止する。このような逆止弁として、例えば、特許文献1、2に開示されているものがある。
【0003】
図10は、従来の特許文献1の逆止弁を示した断面図である。図10に示したように、この特許文献1の逆止弁100は、弁室110の内部に弁座部材130が固定されるとともに、同じく弁室110の内部に弁本体120が収容されている。そして、入口側継手部104から弁室110に向かって(図中の矢印方向に)流体が流れる場合には、弁本体120が図中の上方に押し上げられて弁ポート140が開放されるようになっている。一方、出口側継手部106から弁室110に向かって流体が流れる場合には、弁本体120のシール部122が弁座部材130に押し付けられて、弁ポート140を閉止するようになっている。
【0004】
この特許文献1の逆止弁100では、弁座部材130は次のようにして弁室110の内部に固定されている。先ず、出口側継手部106が形成されていない図中の点線に示した状態にて、弁座部材130を図中の上側から弁室110に挿入し、内壁110aのテーパー部112aに当接させて、弁座部材130の位置決めを行う。次に、この状態で弁室110の所定の箇所を外側から加締めて、内壁110aに凸部134aを形成する。そして、この凸部134aと弁座部材130の外周面に形成されている凹部134とが嵌合することで、弁座部材130が弁室110の内部に固定される。
【0005】
また、弁座部材130の外周面と弁室110の内壁110aとの間には、シール部材132が装着されている。特許文献1の逆止弁100では、このシール部材132によって、弁座部材130と弁室110の内壁110aとの間のシール性が確保されるようになっている。
【0006】
図11は、従来の特許文献2の逆止弁を示した断面図である。図11に示したように、この特許文献2の逆止弁200は、弁室210の内部に弁座部材230が固定されるとともに、同じく弁室210の内部に断面略凸状の弁本体220が収容されている。この弁本体220は、弁座部材230の中央部に形成されている開口部232にその凸部が進退自在に嵌挿されるとともに、コイルバネ222によって弁ポート240を閉止する方向に付勢されている。そして、図の左側から右側に向かって(図中の矢印方向に)流体が流れる場合には、コイルバネ222の付勢力に抗して弁本体220が図中の右側に移動して、弁ポート240が開放されるようになっている。一方、図の右側から左側に向かって流体が流れる場合には、流体の圧力とコイルバネ222の付勢力によって弁本体220が弁座部材230のシート面230aに押しつけられて、弁ポート240が閉止されるようになっている。
【0007】
また、この特許文献2の逆止弁200では、弁座部材230は弁室210の内部に圧入されることで固定されている。すなわち、弁座部材230の外径は、弁室210の内径よりも圧入代の分だけ大きく形成されており、この弁座部材230を図中の左側から弁室210の内部に向かって、内壁210aに形成されている段差部236aと当接する位置まで押し込むことで、弁座部材230が弁室210の内部に固定されている。
【0008】
この特許文献2の逆止弁200では、上述したように、弁座部材230が弁室210の内部に圧入されることで固定されており、弁座部材230の外周面と内壁210aとは隙間なく密接した状態となる。したがって、シール部材がなくとも、弁座部材230と内壁210aとの間のシール性が確保されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−138927号公報
【特許文献2】特開2010−249253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した特許文献1の逆止弁100は、シール部材132によって弁座部材130と弁室110の内壁110aとの間のシール性を確保する構造であるため、シール部材132の装着状態によってシール性が大きく左右される。しかしながら、この特許文献1の逆止弁100は、弁室110と、入口側継手部104および出口側継手部106とが同一の配管を加工することで形成されているため、弁座部材130を弁室110の内部に固定した後は、シール部材132の装着状態を外側から確認するのが難しいとの問題があった。
【0011】
また、このシール部材132はゴムや樹脂などから形成されるが、流体の種類や温度によっては、腐食や熱膨張等によってシール部材132が損傷してシール性が低下し、逆止弁100が使用できなくなる場合があった。
【0012】
また、この特許文献1の逆止弁100では、上述したように、弁座部材130と、内壁110aのテーパー部112aとを当接させることで、弁座部材130の位置決めを行っている。このテーパー部112aは、配管をスピニング加工などの方法によって縮径することで形成されるため、その加工によるテーパー部112aの仕上がり具合によっては、弁座部材130が傾いた状態で位置決めされてしまい、傾いた状態のまま弁室110の内部に固定されることがある。
【0013】
この問題に対処するために、特許文献1の逆止弁100では、弁座部材130が傾いて固定された場合であっても、弁ポート140が弁本体120によって確実に閉止されるように、弁本体120と内壁110aとの間に所定のクリアランスが確保されている。すなわち、弁ポート140が確実に閉止されるためには、弁本体120のシール部122が弁座部材130に対して垂直に押し付けられる必要があるところ、弁座部材130が傾いて固定され、この傾いた弁座部材130に対して弁本体120が垂直に押し付けられたとしても、弁本体120のガイド部124と内壁110aとが接触しないように、弁本体120と内壁110aとの間に大きなクリアランスc´が予め形成されている。
【0014】
よって、この特許文献1の逆止弁100は、上述したクリアランスc´が大きい分だけ、弁本体120が長く形成されている。すなわち、弁本体120が回転したり、振動したり、または弁室110の内部で傾いた状態のまま固定されてしまう等の弁本体120の不所望の動作を防止するために、ガイド部122が長く形成されている。したがって、弁本体120が長く形成されている分だけ、逆止弁100が大型化してしまう他、弁本体120の重量も重くなってしまい、弁本体120の弁開閉性に劣るところがあった。
【0015】
また、上述した特許文献2の逆止弁200は、弁座部材230が圧入によって弁室210の内部に固定されるため、圧入工程時に内壁210aが削られてしまう。そして、削り取られた切削粉が、弁座部材230のシート面230aに付着して、弁シール性が低下する場合があった。
【0016】
また、削り取られた切削粉が弁座部材230と段差部236aとの間に挟まってしまい、弁座部材230が所定の位置に位置決めされなかったり、傾いて固定されてしまう場合もあった。この際、逆止弁200が継手部(不図示)との一体成型によって製作される場合や、弁室210に継手部(不図示)が接続された後では、弁座部材230の固定位置の異常を外側から確認することができないとの問題があった。
【0017】
また、特許文献2の逆止弁200は、上述したように、弁座部材230の開口部232に弁本体220の凸部が嵌挿されるとともに、弁座部材230と弁本体220とがコイルバネ222を介して接続される構造となっており、構造が複雑で部品点数も多いものであった。さらに、弁室210に圧入された弁座部材230は、圧縮されて、その中央部に形成されている開口部232の口径が変化するため、開口部232に嵌挿される弁本体220の製作寸法に高い管理精度が要求されていた。
【0018】
また、この特許文献2の逆止弁200では、弁座部材230を圧入のみによって弁室210の内部に固定する構造であり、弁座部材230を弁室210の内部に確実に固定するためには、弁座部材230の圧入代を大きくとる必要がある。よって、弁座部材230の圧入に大きな圧入荷重が必要となり、圧入設備が大型化する他、圧入工程における弁座部材230の圧入位置の管理も難しいものであった。
【0019】
本発明は、上述したような従来技術の課題に鑑みなされた発明であって、弁座部材を弁室の内部に圧入によって固定することで、シール部材を用いずとも、弁座部材と弁室の内壁との間のシール性を確保することができ、したがって、長期間の使用によってもシール性が低下することがなく、弁構造体の長寿命化を図れるとともに、従来のシール部材を用いた弁構造体では対応できなかった高温環境下などで使用した場合でも、安定したシール性を発揮することができる弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することを目的としている。
【0020】
また、本発明は、弁室の内部に弁座部材を圧入して固定する場合において、削り取られた切削粉が弁座部材のシート面に付着することがなく、切削粉の影響によって弁シール性が低下することのない弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することを目的としている。
【0021】
また、本発明は、弁室の内部に弁座部材を圧入して固定する場合において、弁座部材がずれて位置決めされたり、弁座部材が傾いて固定されてしまうことのない弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することを目的としている。
【0022】
また、本発明は、小さな圧入荷重で弁座部材を弁室の内部に圧入することができ、圧入設備の小型化を図ることができるとともに、圧入工程における弁座部材の圧入位置の管理が容易となる弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上述した目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の弁構造体は、
弁室と、該弁室の内部に固定された弁座部材と、該弁室の内部に収容された弁本体と、を備えた弁構造体であって、
前記弁座部材には、少なくとも、前記弁室の内部に圧入される圧入部が形成されているとともに、前記弁座部材の一端側には、前記弁室の内部に収容された弁本体が接離するシート面が形成されており、
前記弁座部材が、前記シート面が形成されていないその他端側から弁室の内部に挿入されて、前記弁室の内部の所定の位置に位置するまでその圧入部が前記弁室の内部に圧入されることで、前記弁座部材が前記弁室の内部に固定されていることを特徴とする。
【0024】
このように構成することによって、弁座部材が弁室の内部に圧入されることで固定されているため、シール部材を用いずとも、弁座部材と弁室の内壁との間のシール性を確保することができる。したがって、長期間の使用によってもシール性が低下することがなく、弁構造体の長寿命化が図れるとともに、従来のシール部材を用いた弁構造体では対応できなかった高温環境下などで使用した場合でも、安定したシール性が発揮される。
【0025】
また、弁座部材を弁室の内部に固定する際に、シート面が形成されていない他端側から、弁室の内部に圧入されるように構成されている。したがって、圧入工程時に弁室の内壁が削り取られて切削粉が発生したとしても、その切削粉はシート面の反対側に押し出されるため、切削粉がシート面に付着することがない。よって、切削粉の影響によって弁シール性が低下することもない。
【0026】
上記発明において、
前記弁座部材の外周面には凹部が形成されており、
前記弁座部材の圧入部が前記弁室の内部に圧入され、前記弁座部材が所定の位置に位置している状態で、前記弁座部材の凹部に対応する前記弁室の所定の箇所を外側から押圧して、前記弁室の内壁に凸部を形成することで、該凸部と前記弁座部材の凹部とが嵌合していることが望ましい。
【0027】
このように、弁座部材が弁室の内部に圧入された状態で、弁室を外側から押圧し、弁座部材の凹部と弁室の凸部とを嵌合するように構成することで、圧入だけで固定されている場合と比べて、弁座部材をより安定的に弁室の内部に固定することができる。また、圧入に加えて嵌合によって弁座部材を固定するため、圧入だけで弁座部材を固定する場合と比べて、圧入部の圧入代を小さくすることが可能となる。よって、結果として圧入荷重を小さくすることが可能となり、圧入設備を小型化できるとともに、圧入工程における弁座部材の位置決めの精度を向上させることが可能となる。
【0028】
上記発明において、
前記弁座部材が前記弁室の内部に固定されている状態において、前記弁座部材の一端側の周縁端と、前記弁室の内壁との間には隙間が形成されていることが望ましい。
【0029】
このように、弁座部材の一端側の周縁端と弁室の内壁との間に隙間が形成されていれば、弁座部材が圧入によって弁室の内部に固定され、弁座部材に対して圧縮力が作用したとしても、シート面が形成されている弁座部材の一端側には直接的に圧縮力は作用しない。よって、圧縮力によるシート面の変形を防止でき、シート面の変形による弁シール性の低下を防ぐことができる。
【0030】
上記発明において、
前記弁座部材には、少なくとも、前記圧入部よりも大きな外径で形成されたストッパ部が形成されているとともに、
前記弁室には、その内部に前記弁本体が収容される弁本体収容部と、該弁本体収容部よりも小さい内径に形成された弁座部材固定部と、を備えるとともに、該弁本本体収容部と弁座部材固定部との間には段差部が形成され、
前記弁座部材が、前記弁室の弁本体収容部側から弁室の内部に挿入され、前記弁座部材のストッパ部と前記弁室の段差部とが当接する位置まで前記弁座部材の圧入部が前記弁室の弁座部材固定部に圧入されることで、前記弁座部材が前記弁室の内部に固定されていることが望ましい。
【0031】
このように構成することで、弁座部材を弁室の内部に圧入する際に、弁座部材の圧入方向後端側に形成されているストッパ部によって、弁座部材の位置決めが行われることとなる。したがって、圧入工程時に弁室の内壁が削り取られて切削粉が発生したとしても、その切削粉はストッパ部の反対側に押し出されるため、ストッパ部と段差部との間に切削粉が挟まることがない。よって、切削粉の影響によって、弁座部材がずれて位置決めされたり、弁座部材が傾いて固定されてしまうことがない。
【0032】
また、弁座部材に対して逆方向の力が作用した場合に、弁座部材のストッパ部と、弁室の段差部とによって弁座部材が動くのを防ぐことができるため、弁座部材を安定的に弁室の内部に固定することができる。
【0033】
上記発明において、
前記弁座部材の凹部には、その断面において底部よりも頂部の方が幅広となるような2つのテーパー部が形成されており、該2つのテーパー部の内、圧入方向先端側に位置するテーパー部が前記弁室の凸部と当接することで、前記弁室の凸部と前記弁座部材の凹部とが嵌合していることが望ましい。
【0034】
このように構成することで、弁座部材に対して順方向の力が作用した場合に、弁室の凸部と、上述した弁座部材の凹部の圧入方向先端側に位置するテーパー部とによって弁座部材が動くのを防ぐことができるため、弁座部材を安定的に弁室の内部に固定することができる。
【0035】
上記発明において、
前記弁座部材の外周面に形成されている凹部が、前記圧入部よりも圧入方向先端側の位置に形成されているとともに、前記弁座部材の凹部と圧入部との間には、圧入部よりも小さな外径で形成された縮径部が形成されていることが望ましい。
【0036】
このような縮径部が凹部と圧入部との間に形成されていれば、弁室の内壁に凸部を形成する際において、圧入部と接触する弁室の弁座部材固定部の変形を緩和することができる。よって、弁座部材と弁室の内壁との間のシール性を低下させることなく、弁室の内壁の凸部を形成することができる。
【0037】
また、上記発明において、
前記弁室は、前記弁座部材よりも軟らかい材質によって形成されていることが望ましい。
【0038】
このように、弁座部材よりも軟らかい材質によって弁室が形成されていれば、圧入荷重を小さくすることでき、圧入設備を小型化することが可能となる。また、圧入によって弁座部材自体は殆ど変形しないため、弁座部材の変形による弁シール性の低下も生じない。
【0039】
また、弁座部材が圧入されている部分は弁室の外径が変化するため、弁座部材の位置を弁室の外側から確認できるようになる。したがって、弁座部材がずれて位置決めされたり、弁座部材が傾いて固定された場合であっても、その異常を弁室の外側から確認することができる。
【0040】
また、上記発明において、
前記弁構造体は、
前記弁室の弁座部材が固定されている側に連続して形成された入口側継手部と、前記弁室の弁本体が収容されている側に連続して形成された出口側継手部と、を備えるとともに、
前記弁室、前記入口側継手部、および前記出口側継手部が、それぞれ同一の配管を加工することで形成されたものであることが望ましい。
【0041】
本発明の弁構造体は、このように弁室、入口側継手部、および出口側継手部が、それぞれ同一の配管を加工することで形成された、いわゆる一体成型の弁構造体として、特に好適に用いることができる。
【0042】
また、上記発明において、
前記弁室と、前記入口側継手部および/または前記出口側継手部との間には、前記弁室から離れる方向に向かってその外径が次第に小さくなる漸縮部が形成されるとともに、
前記漸縮部は、その外周面の少なくとも一部が断面略凹凸状に形成されていることが望ましい。
【0043】
このように、漸縮部の外周面の少なくとも一部が断面略凹凸状に形成されていれば、断面が平坦状に形成されている場合と比べて、漸縮部における放熱性を高めることができる。
【0044】
また、本発明の逆止弁は、
上述した弁構造体を備え、
前記入口側継手部から前記弁室に流体が流入する場合には、前記弁本体が前記弁座部材のシート面から離間して、前記弁座部材に形成されている弁ポートが開放されるとともに、前記出口側継手部から前記弁室に流体が流入する場合には、前記弁本体が前記弁座部材のシート面と当接して、前記弁座部材に形成されている弁ポートが閉止されるように構成されていることを特徴とする。
【0045】
上述した本発明の弁構造体は、流体の順方向の流れに対しては弁開状態となって流路を開放し、流体の逆方向の流れに対しては弁閉状態となって流路を閉止するように構成される逆止弁に、特に好適に用いることができるものである。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、弁座部材を弁室の内部に圧入によって固定しているため、シール部材を用いずとも、弁座部材と弁室の内壁との間のシール性を確保することができ、したがって、長期間の使用によってもシール性が低下することがなく、弁構造体の長寿命化が図れるとともに、従来のシール部材を用いた弁構造体では対応できなかった高温環境下などで使用した場合でも、安定したシール性を発揮することができる弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することができる。
【0047】
また、本発明によれば、弁室の内部に弁座部材を圧入して固定する場合において、削り取られた切削粉が弁座部材のシート面に付着することがなく、切削粉の影響によって弁シール性が低下することのない弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することができる。
【0048】
また、本発明によれば、弁室の内部に弁座部材を圧入して固定する場合において、圧入工程時に発生する切削粉の影響によって、弁座部材がずれて位置決めされたり、弁座部材が傾いて固定されてしまうことのない弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することができる。
【0049】
また、本発明によれば、小さな圧入荷重で弁座部材を弁室の内部に圧入することができ、圧入設備の小型化を図ることができるとともに、圧入工程における弁座部材の圧入位置の管理が容易となる弁構造体、および該弁構造体を備えた逆止弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の逆止弁を示した断面図である。
【図2】図2は、図1の逆止弁の一部を示した部分拡大断面図であり、図2の(a)は図1のa部の拡大図、図2の(b)は図1のb部の拡大図である。
【図3】図3は、本発明の逆止弁の製作工程を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態の逆止弁を示した断面図である。
【図5】図5は、図4の逆止弁の一部を示した部分拡大断面図であり、図5の(a)はa部の拡大図、図5の(b)はb部の拡大図である。
【図6A】図6Aは、本発明の別の実施形態の逆止弁の変形例を説明するための図である。
【図6B】図6Bは、本発明の別の実施形態の逆止弁の更なる変形例を説明するための図である。
【図7A】図7Aは、本発明の更に別の実施形態の逆止弁を示した断面図である。
【図7B】図7Bは、本発明の更に別の実施形態の逆止弁を示した断面図である。
【図8】図8は、図7A,図7Bの逆止弁の一部を示した部分拡大断面図であり、図8の(a)は図7Aのa部の拡大図、図8の(b)は図7Bのb部の拡大図である。
【図9A】図9Aは、本発明の更に別の実施形態における逆止弁の変形例の部分破断側面図である。
【図9B】図9Bは、図のA−A線における断面図である。
【図10】図10は、従来の特許文献1の逆止弁を示した断面図である。
【図11】図11は、従来の特許文献2の逆止弁を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の逆止弁を示した断面図、図2は、図1の逆止弁の一部を示した部分拡大断面図であり、図2の(a)はa部の拡大図、図2の(b)はb部の拡大図である。
【0052】
図1に示したように、本発明の逆止弁1は、弁室10と、この弁室10の内部に固定されている弁座部材30と、同じくこの弁室10の内部に収容されている弁本体20と、を備えている。
【0053】
弁室10は、略円筒形状をなしており、図1に示したように、弁本体20が上下方向に移動可能に収容される弁本体収容部12と、この弁本体収容部12よりも小さい内径に形成された弁座部材固定部14と、を備えている。また、図1のa部、および図2の(a)に示したように、弁室10の内壁10aにおける、これら内径の異なる弁本体収容部12と弁座部材固定部14との間には、段差部36aが形成されている。
【0054】
また、本発明の逆止弁1は、上述した弁室10の弁座部材固定部14側に連続して形成された入口側継手部4と、弁本体収容部12側に連続して形成された出口側継手部6と、を備えている。入口側継手部4および出口側継手部6の外径および内径は、図1に示したように、弁室10のそれよりも小さくなっている。また、これら弁室10、入口側継手部4、および出口側継手部6は、後述するように、それぞれ同一の配管を加工することで形成されている。
【0055】
弁本体20は、図1に示したように、その底部外周にシール面が形成された円柱状のシール部22と、この円柱状のシール部22の外側に設けられた複数のガイド部24とから構成されている。シール部22は、弁座部材30の一端側に形成されているシート面30aと当接して、後述する弁ポート40を閉止する部分であり、ガイド部24は、このシール部22が弁座部材30のシート面の所定の位置と当接するように、弁本体20の移動方向をガイドする部分である。
【0056】
弁座部材30は、略円柱状をなしており、図1に示したように、その中央部分に流体の流路である弁ポート40が形成されている。また、この弁座部材30には、弁室10の弁座部材固定部14に圧入される圧入部32が形成されている。この圧入部32は、上述した弁座部材固定部14の内径よりも、圧入代の分だけ僅かに大きく形成されている。
【0057】
本発明の逆止弁1では、この圧入部32が弁座部材固定部14に圧入されることで、弁座部材30と弁室10の内壁10aとの間のシール性が確保される。したがって、従来の逆止弁のようにシール部材を用いずとも、弁座部材30と弁室10の内壁10aとの間のシール性を確保することができ、長期間の使用によってもシール性が低下することがなく、逆止弁1の長寿命化が図れるとともに、従来のシール部材を用いた逆止弁では対応できなかった高温環境下などで使用した場合でも、安定したシール性を発揮することができる。
【0058】
また、図1および図2の(a)に示したように、弁座部材30の一端側には、上述した弁本体20のシール部22が接離するシート面30aが形成されている。また、この弁座部材30の一端側には、上述した圧入部32よりも大きな外径を有し、且つ、弁室10の弁本体収容部12の内径よりも小さな外径を有するストッパ部36が形成されている。
【0059】
なお、後述するように、この弁座部材30は、弁本体収容部12側(図1の上側)から、その圧入部32を先端側に、ストッパ部36を後端側に向けた状態で、弁室10の内部に挿入されて、弁座部材固定部14に圧入される。すなわち、弁座部材30は、シート面30aが形成されていないその他端側を先端側に向けた状態で、弁室10の内部に挿入されて、弁座部材固定部14に圧入される。
【0060】
弁座部材30の外周面には、圧入部32よりも圧入方向先端側(図1の下側)の位置に凹部34が形成されている。この凹部34は、その底部よりも頂部の方が幅広である断面略台形状に形成されており、図2の(b)に示したように、その側部には2つのテーパー部35a、35bが形成されている。また、図2の(b)に示したように、この凹部34と上述した圧入部32との間には、圧入部32よりも小さな外径を有する縮径部38が形成されている。
【0061】
また、図1に示したように、弁座部材30には、弁本体20が当接するシート面30aに隣接して溝部37が形成されている。このような溝部37が形成されていれば、流体に混入するゴミなどの異物はシート面30aに付着せずにこの溝部37に付着するようになるため、弁本体20と弁座部材30との間のシール性(弁シール性)が低下するのを防ぐことができる。
【0062】
上述した弁室10、弁本体20、および弁座部材30の材質は、特に限定されないが、弁室10および弁座部材30は金属製が好ましく、弁本体20は樹脂製が好ましい。弁本体20を軽量な樹脂製とすることで、小さな力で弁本体20を作動させることができるため、弁開閉性に優れた逆止弁1とすることができる。
【0063】
また、弁室10は、弁座部材30よりも軟らかい材質によって形成されていることが好ましい。具体的には、弁座部材30を黄銅によって形成し、弁室10を黄銅よりも軟らかい銅によって形成することが好ましい。これは、本発明の逆止弁1は、弁室10の内部に弁座部材30を圧入して固定するものであるところ、弁室10が、弁座部材30よりも軟らかい材質によって形成されていれば、圧入荷重を小さくすることができ、圧入設備を小型化することが可能となるからである。また、弁室10に対して相対的に硬質な弁座部材30は、弁室10の内部に圧入されても殆ど変形しないため、弁座部材30の変形によって、弁シール性が低下することもなくなる。
【0064】
さらに、弁室10が弁座部材30よりも軟らかい材質によって形成されていれば、弁座部材30が圧入されている部分の弁室10の外径が変化し、弁座部材30の固定状態を弁室10の外側からでも確認できるようになる。したがって、弁座部材30がずれて位置決めされたり、弁座部材30が傾いた状態で固定された場合であっても、その異常を弁室10の外側から発見することができるようになる。
【0065】
このようにして構成される本発明の逆止弁1は、入口側継手部4から弁室10に向かって(図中の矢印方向に)流体が流れる場合には、弁本体20が図中の上方に押し上げられ、弁座部材30のシート面30aから離間して、弁ポート40が開放されるようになっている。そして、弁本体20の隣接するガイド部24の間を流体が通過して、出口側継手部6から流出するようになっている。一方、出口側継手部6から弁室10に向かって流体が流れる場合には、弁本体20のシール部22が弁座部材30のシート面30aに押し付けられるように当接して、弁ポート40が閉止されるようになっている。すなわち、出口側継手部6から弁室10に流入した流体は、入口側継手部4から流出しないようになっている。
【0066】
このような本発明の逆止弁1は、図3に示したように、次のようにして製作される。ここで図3は、本発明の逆止弁の製作工程を説明するための図である。
まず、内・外径が均一に形成されている1本の配管を用意する。この配管の内径は、上述した弁室10の弁本体収容部12の内径と等しくなっている。そして、この配管をスピニング加工によって縮径して弁座部材固定部14と、段差部36aとを形成する。また、この配管の一端部側を同じくスピニング加工によって縮径して入口側継手部4を形成し、図3の(a)に示した状態とする。
【0067】
次に、シート面30aが形成されていないその他端側を先端側に向けた状態で、弁座部材30を弁室10の内部に挿入する。この際、入口側継手部4とは反対側の端部より、弁座部材30を配管内に挿入する。そして、弁座部材30の圧入部32を上述した工程で形成した弁座部材固定部14に圧入する。そして、弁座部材30のストッパ部36と、上述した段差部36aとが当接するまで弁座部材30を圧入して、図3の(b)に示した状態とする。
【0068】
次に、図3の(b)に示した状態、すなわち、弁座部材30の圧入部32が弁座部材固定部14に圧入され、弁座部材30のストッパ部36と段差部36aとが当接して、弁座部材30が位置決めされた状態で、弁座部材30の凹部34に対応する箇所を配管の外側から加締める。そして、配管の内壁10aに凸部34aを形成し、この凸部34aと弁座部材30の凹部34とを嵌合させて、図3の(c)に示した状態とする。
【0069】
この際、図2の(b)に拡大して示したように、凹部34の2つのテーパー部35a、35bの内、圧入方向先端側に位置するテーパー部35aと凸部34aとが当接するように配管を加締めることが好ましい。このようにすることで、弁座部材30に対して出口側継手部6側からの力が作用した場合には、弁座部材30のストッパ部36と弁室10の段差部36aとによって、弁座部材30が入口側継手部4側に動くのを防ぐことができるとともに、弁座部材30に入口側継手部4側からの力が作用した場合には、上述した凹部34のテーパー部35aと上述した凸部34aとによって、弁座部材30が出口側継手部6側に動くのを防ぐことができるため、弁座部材30をより安定的に弁室10の内部に固定することができるようになる。
【0070】
またこの際、図2の(b)に拡大して示したように、凹部34と圧入部32との間に、圧入部32よりも小さな外径で形成された縮径部38が形成されていれば、配管を加締めて凸部34aを形成する際において、この縮径部38が緩衝帯となって、圧入部32と接触する弁座部材固定部14の変形が緩和される。よって、この弁座部材固定部14と圧入部32との間で確保されている弁室10と弁座部材30との間のシール性に影響を及ぼすことなく、上述した凸部34aを形成することができる。
【0071】
最後に、弁本体20を入口側継手部4とは反対側の端部から配管内に挿入する。そして、スピニング加工によって配管の他端部側を縮径して出口側継手部6を形成することで、図3の(d)に示したとおり、本発明の逆止弁1が完成する。
【0072】
なお、本発明の逆止弁1の製作方法は上述した方法に限定されない。例えば、予め弁座部材30が圧入されて固定された弁室10を製作するとともに、入口側継手部4と、出口側継手部6とをそれぞれ別途作製し、弁室10の内部に弁本体20を収容した後、これらを溶接などによって一体化して、本発明の逆止弁1を製作することも可能である。
【0073】
しかしながら、本発明の逆止弁1では、上述したように、弁室10、入口側継手部4、および出口側継手部6のそれぞれを同一の配管を加工することによって形成するいわゆる一体成型の逆止弁1とする方が、部品点数を削減できるとともに、管理工数も少なくて済むため、好ましい。また、一体成型の逆止弁1とした方が、接合箇所がなく、高い気密性を確保できるため、好ましい。さらには、一体成型の逆止弁1とした方が、配管を縮径加工する場所を変えるだけで、異なるサイズの弁室および継手部を備える逆止弁1を簡単に製作することができるため、顧客のニーズ等に応じた多様なサイズの逆止弁1を提供することが容易であり、好ましい。
【0074】
また、本発明の逆止弁1では、上述したように、その弁座部材30が、シート面30aが形成されていない他端側を先端側に向けた状態で、配管内に挿入され、圧入される。すなわち、シート面30aが形成されている弁座部材30の一端側が、圧入方向の後端側に位置するようにして、弁座部材30が配管内に圧入される。したがって、圧入工程時に弁室10の内壁10aが削り取られて切削粉が発生したとしても、その切削粉はシート面30aの反対側に押し出されるため、切削粉がシート面30aに付着することがなく、切削粉の影響によって弁シール性が低下することがない。
【0075】
また、本発明の逆止弁1では、上述したように、弁座部材30を弁室10の内部に圧入する際に、圧入方向後端側に形成されているストッパ部36によって弁座部材30の位置決めが行われるようになっている。したがって、圧入工程時に弁室10の内壁10aが削り取られて切削粉が発生したとしても、その切削粉はストッパ部36の反対側に押し出されるため、ストッパ部36と段差部36aとの間に切削粉が挟まることがない。よって、切削粉の影響によって、弁座部材30がずれて位置決めされたり、弁座部材30が傾いて固定されてしまうことがない。
【0076】
また、本発明の逆止弁1では、上述したように、仮に弁座部材30が傾いて固定された場合であっても、上述したように、弁室10が弁座部材30よりも軟らかい材質によって形成されていれば、弁座部材30の固定位置の異常を弁室10の外側からでも発見することができる。
【0077】
したがって、弁座部材30が弁室10の内部に固定された後は、弁座部材30の固定位置の異常を外側から確認することができないとの、従来の一体成型の逆止弁における欠点は、本発明の逆止弁1では、そもそも殆ど問題とはならない。
【0078】
また、本発明の逆止弁1では、上述したように、弁座部材30がずれて位置決めされたり、傾いて固定されてしまうことがない。また、仮に弁座部材30が傾いて固定された場合であっても、その異常を弁室10の外側から容易に発見することができる。したがって、従来の特許文献1の逆止弁100のように、弁本体20と弁室10の内壁10aとの間に、大きなクリアランスを確保する必要がなく、結果として、弁本体20の長さを短くすることが可能となる。本発明の逆止弁1における弁本体20と弁室10の内壁10aとの間のクリアランスcは、特許文献1の逆止弁100のクリアランスc´の約1/2であり、弁本体20の長さは、特許文献1の逆止弁100の弁本体120の長さの約2/3となっている。
【0079】
このように、本発明の逆止弁1では、弁本体20の長さを短くできるため、逆止弁1の小型化を図ることが可能となる。また、弁本体20を軽量化することもでき、弁開閉性に優れた逆止弁1とすることができる。
【0080】
また、弁本体20を軽量化することで、逆止弁1から発生する騒音を少なくすることも可能となる。すなわち、本発明の逆止弁1を例えば空調装置などに組み込んだ場合に、運転開始直後などの入口側継手部4側から流入する冷媒の圧力が、所定圧力以下の低圧力の範囲にある状態では、弁本体20が弁室10内で上下動を繰り返し、弁本体20と弁室10とが衝突する衝突音が発生する。これに対して、弁本体20が軽量であれば、その分だけ弁本体20が上下動を繰り返す低圧力の範囲が狭くなり、弁本体20が早期に押し上げられた状態、または弁座部材30に押しつけられた状態となって、その上下動を停止する。
【0081】
また、本発明の逆止弁1では、上述したように、弁座部材30が弁室10の内部に圧入された状態で、弁室10を外側から加締めて、弁座部材30の凹部34と弁室10の凸部34aとを嵌合している。したがって、圧入だけで固定されている場合と比べて、弁座部材30をより安定的に弁室10の内部に固定することができる。
【0082】
また、圧入に加えて嵌合によって弁座部材30を固定するため、その圧入部32の圧入代は、弁座部材30と弁室10の内壁10aとの間のシール性を確保するのに必要な圧入代とすればよく、圧入だけで弁座部材30を固定する場合と比べて、圧入代を小さくすることが可能となる。よって、結果として圧入荷重を小さくすることが可能となり、圧入設備を小型化できるとともに、圧入工程における弁座部材30の位置決めの精度を向上させることが可能となる。また、弁座部材30の位置決め精度を向上させることができる結果、上述したような、顧客のニーズ等に応じて異なるサイズの弁室および継手部を備える態様なサイズの逆止弁1を製作する際に、その製作が容易となる。
【0083】
次に、本発明の別の実施形態の逆止弁1について、図4〜6を基に説明する。
図4は、本発明の別の実施形態の逆止弁を示した断面図、図5は、図4の逆止弁の一部を示した部分拡大断面図であり、図5の(a)はa部の拡大図、図5の(b)はb部の拡大図である。また、図6Aおよび図6Bは、本発明の別の実施形態の逆止弁の変形例を説明するための断面図である。
【0084】
この別の実施形態の逆止弁1は、上述した実施形態の逆止弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の逆止弁1は、図4に示したように、弁座部材30に、ストッパ部36が形成されておらず、シート面30aが形成されている弁座部材30の一端側が、圧入部32と同一の外径に形成されている。そして、図5の(a)に示したように、この弁座部材30の一端側の周縁端39と、弁室10の内壁10aとの間に隙間dが形成されている点が、上述した実施形態と異なっている。
【0085】
このような逆止弁1であっても、上述した実施形態の逆止弁1と同様に、圧入部32が弁室10の内部に圧入されているため、従来の逆止弁のようにシール部材を用いずとも、弁座部材30と弁室10の内壁10aとの間のシール性を確保することができる。また、シート面30aが形成されていない他端側を先端側に向けた状態で、弁座部材30を配管内に圧入することで、切削粉の影響による弁シール性の低下を回避することができる。
【0086】
そして、このような隙間dが、弁座部材30の一端側の周縁端39と弁室10の内壁10aとの間に形成されていれば、弁座部材30が圧入によって弁室10の内部に固定され、弁座部材30に対して圧縮力が作用したとしても、シート面30aが形成されている弁座部材30の一端側には直接的に圧縮力は作用しない。よって、圧縮力によるシート面30aの変形を防止でき、シート面30aの変形による弁シール性の低下を防ぐことができる。
【0087】
また、本実施形態の逆止弁1において、図6Aに示したように、弁室10の内径を均一に形成するとともに、弁座部材30の周縁部を圧入部32よりも小さい外径に形成して、弁座部材30の一端側の周縁端39と弁室10の内壁10aとの間に隙間dを形成することも可能である。このように構成すれば、弁室10を製作する際の加工工程が少なくて済むため、本発明の逆止弁1の製作が容易となる。
【0088】
また、本実施形態の逆止弁1において、図6Bに示したように、ストッパ部36を形成することも可能である。すなわち、図1に示した本発明の逆止弁1と同様に、段差部36aとストッパ部36とを形成するとともに、弁座部材30の一端側の周縁端39と弁室10の内壁10aとの間に隙間dを形成することも可能である。このように構成すれば、弁座部材30を弁室10の内部に圧入する際に、冶具などを用いずとも弁座部材30の位置決めを行うことができるため、弁座部材30の位置決めが容易である。
【0089】
次に、本発明の更に別の実施形態の逆止弁1について、図7A,図7B、図8、図9A、図9Bを基に説明する。
図7A,図7Bは、本発明の更に別の実施形態の逆止弁を示した断面図である。図8は、図7A,図7Bの逆止弁の一部を示した部分拡大断面図であり、図8の(a)は図7Aのa部の拡大図、図8の(b)は図7Bのb部の拡大図である。また、図9A,図9Bは、本発明の更に別の実施形態の逆止弁の変形例を説明するための図であり、図9Aは、この変形例の逆止弁の部分破断側面図、図9Bは、図9AのA−A線における断面図である。
【0090】
本実施形態の逆止弁1は、上述した図1に示した実施形態の逆止弁1と、基本的には同様の構成であり、同一の部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の逆止弁1は、図7Aおよび図7Bに示したように、弁室10と入口側継手部4との間に、弁室10から入口側継手部4に向かってその外径が次第に小さくなっている入口側漸縮部5が形成されている。また、弁室10と出口側継手部6との間にも、弁室10から出口側継手部6に向かってその外径が次第に小さくなっている出口側漸縮部7が形成されている。そして、その他の点については、上述した図1に示した実施形態の逆止弁1と同様の構成となっており、逆止弁1全体の長さ、および弁室10の長さも同じ長さとなっている。
【0091】
なお、上述した漸縮部5,7は、入口側漸縮部5または出口側漸縮部7のいずれか一方だけ形成することも可能である。
このような漸縮部5,7が形成されている逆止弁1は、上述した図1に示した逆止弁1と比べて、弁室10と入口側継手部4および出口側継手部6との間に漸縮部5,7が形成されている分だけ、逆止弁1全体の外周面の面積が大きくなっており、放熱性に優れている。
【0092】
したがって、本実施形態の逆止弁1は、通過する冷媒が高温の場合や、高温環境下で逆止弁1を使用する場合において、弁室10の内部が高温になり過ぎることを効果的に防止することができるようになっている。すなわち、本実施形態の逆止弁1では、弁室10が温度変化によって撓んでしまうことや、樹脂製の弁本体20が溶けてしまうなどのトラブルが生じ難くなっている。
【0093】
また、本実施形態の逆止弁1によれば、入口側継手部4の端部4aおよび出口側継手部6aの端部6aを他の配管にロウ付けする場合において、弁室10の内部が高温になり過ぎるのも防止される。
【0094】
また、図7Bおよび図8の(b)に示したように、漸縮部5,7の外周面5a,7aが、その軸方向の断面において、断面略凹凸状に形成されていることが好ましい。すなわち、図8の(b)に拡大して示したように、その軸方向の断面において、その隣接している部分よりも突出している凸部9aと、その隣接している部分よりも窪んでいる凹部9bとが、交互に連続して形成されていることが好ましい。
【0095】
このように形成されていれば、断面が平坦状に形成されている図7Aおよび図8の(a)に示した逆止弁1と比べて、漸縮部5,7の外周面5a,7aの面積を大きくすることができる。したがって、漸縮部5,7における放熱性をより一層高めることができるとともに、図7Aに示した逆止弁1に対して、漸縮部5,7の長さを短くすることも可能となる。
【0096】
なお、漸縮部5,7におけるこのような凹凸状は、軸方向の断面に対してではなく、図9A、図9Bに示したように、例えば、軸直角方向の断面に対して形成されていてもよいものである。この際、このような凹凸状は、図9Bの(a)に示したように、漸縮部5,7の外周面5a,7aに凸部9aを隆起させることで形成してもよく、図9Bの(b)に示したように、漸縮部5,7の外周面5a,7aに凹部9bを陥没させることで形成してもよいものである。
【0097】
このように、軸直角方向の断面に対して凹凸状が形成されている漸縮部5,7を有する逆止弁1であっても、外周面5a,7aの面積が大きくなるため、高い放熱性を備えている。また、図示しないが、例えば、このような凹凸状を漸縮部5,7の外周面5a,7aに螺旋状に形成することも可能である。
【0098】
また、図示しないが、このような凹凸状の断面を、漸縮部5,7の外周面5a,7aの一部分にだけ形成することも可能である。
なお、上述したような漸縮部5,7における凹凸状の断面は、弁室10、入口側継手部4、および出口側継手部6のそれぞれを同一の配管を加工することによって形成する際に、上述したスピニング加工やプレス加工によって容易に形成することが可能である。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明の弁構造体が逆止弁1である場合を例に説明したが、本発明の弁構造体はこれに限定されない。すなわち、本発明は、弁室10と、弁室10の内部に固定された弁座部材30と、弁室10の内部に収容され、弁座部材30に形成されている弁ポート40を開放または閉止するように作動する弁本体20と、を備えた弁構造体であればよいものである。
【符号の説明】
【0100】
1 逆止弁
4 入口側継手部
5 漸縮部(入口側漸縮部)
5a 外周面
6 出口側継手部
7 漸縮部(出口側漸縮部)
7a 外周面
9a 凸部
9b 凹部
10 弁室
10a 内壁
12 弁本体収容部
14 弁座部材固定部
20 弁本体
22 シール部
24 ガイド部
30 弁座部材
30a シート面
32 圧入部
34 凹部
34a 凸部
35a、35b テーパー部
36 ストッパ部
36a 段差部
37 溝部
38 縮径部
39 周縁端
40 弁ポート
100 逆止弁
104 入口側継手部
106 出口側継手部
110 弁室
110a 内壁
112a テーパー部
120 弁本体
122 シール部
124 ガイド部
130 弁座部材
132 シール部材
134 凹部
134a 凸部
140 弁ポート
200 逆止弁
210 弁室
210a 内壁
220 弁本体
222 コイルバネ
230 弁座部材
230a シート面
232 開口部
236a 段差部
240 弁ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室と、該弁室の内部に固定された弁座部材と、該弁室の内部に収容された弁本体と、を備えた弁構造体であって、
前記弁座部材には、少なくとも、前記弁室の内部に圧入される圧入部が形成されているとともに、前記弁座部材の一端側には、前記弁室の内部に収容された弁本体が接離するシート面が形成されており、
前記弁座部材が、前記シート面が形成されていないその他端側から弁室の内部に挿入されて、前記弁室の内部の所定の位置に位置するまでその圧入部が前記弁室の内部に圧入されることで、前記弁座部材が前記弁室の内部に固定されていることを特徴とする弁構造体。
【請求項2】
前記弁座部材の外周面には凹部が形成されており、
前記弁座部材の圧入部が前記弁室の内部に圧入され、前記弁座部材が所定の位置に位置している状態で、前記弁座部材の凹部に対応する前記弁室の所定の箇所を外側から押圧して、前記弁室の内壁に凸部を形成することで、該凸部と前記弁座部材の凹部とが嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の弁構造体。
【請求項3】
前記弁座部材が前記弁室の内部に固定されている状態において、前記弁座部材の一端側の周縁端と、前記弁室の内壁との間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弁構造体。
【請求項4】
前記弁座部材には、少なくとも、前記圧入部よりも大きな外径で形成されたストッパ部が形成されているとともに、
前記弁室には、その内部に前記弁本体が収容される弁本体収容部と、該弁本体収容部よりも小さい内径に形成された弁座部材固定部と、を備えるとともに、該弁本本体収容部と弁座部材固定部との間には段差部が形成され、
前記弁座部材が、前記弁室の弁本体収容部側から弁室の内部に挿入され、前記弁座部材のストッパ部と前記弁室の段差部とが当接する位置まで前記弁座部材の圧入部が前記弁室の弁座部材固定部に圧入されることで、前記弁座部材が前記弁室の内部に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の弁構造体。
【請求項5】
前記弁座部材の凹部には、その断面において底部よりも頂部の方が幅広となるような2つのテーパー部が形成されており、該2つのテーパー部の内、圧入方向先端側に位置するテーパー部が前記弁室の凸部と当接することで、前記弁室の凸部と前記弁座部材の凹部とが嵌合していることを特徴とする請求項2に記載の弁構造体。
【請求項6】
前記弁座部材の外周面に形成されている凹部が、前記圧入部よりも圧入方向先端側の位置に形成されているとともに、前記弁座部材の凹部と圧入部との間には、圧入部よりも小さな外径で形成された縮径部が形成されていることを特徴とする請求項2または5に記載の弁構造体。
【請求項7】
前記弁室は、前記弁座部材よりも軟らかい材質によって形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の弁構造体。
【請求項8】
前記弁構造体は、
前記弁室の弁座部材が固定されている側に連続して形成された入口側継手部と、前記弁室の弁本体が収容されている側に連続して形成された出口側継手部と、を備えるとともに、
前記弁室、前記入口側継手部、および前記出口側継手部が、それぞれ同一の配管を加工することで形成されたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の弁構造体。
【請求項9】
前記弁室と、前記入口側継手部および/または前記出口側継手部との間には、前記弁室から離れる方向に向かってその外径が次第に小さくなる漸縮部が形成されるとともに、
前記漸縮部は、その外周面の少なくとも一部が断面略凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の弁構造体。
【請求項10】
請求項8または9に記載の弁構造体を備え、
前記入口側継手部から前記弁室に流体が流入する場合には、前記弁本体が前記弁座部材のシート面から離間して、前記弁座部材に形成されている弁ポートが開放されるとともに、前記出口側継手部から前記弁室に流体が流入する場合には、前記弁本体が前記弁座部材のシート面と当接して、前記弁座部材に形成されている弁ポートが閉止されるように構成されていることを特徴とする逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−145215(P2012−145215A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36867(P2011−36867)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】