説明

弁装置

【課題】シール性能を低下させることがなく構造を簡素化すると共に、製造工程を簡略化することにより製造コストを低減すること。
【解決手段】インレットポート12とアウトレットポート14とを有するバルブボデイ16と、帯状の弾性シート体20aを側面視して略U字形状に折曲して形成された弁体20と、前記弁体20を空間部18の内周面に沿って回動させる回動機構22とを備え、前記弁体20は、前記バルブボデイ16の内周面に沿って回動可能に設けられ、前記弁体20が第1シート部24a及び第2シート部24bに着座した際、形状弾性力によって前記弁体20の側部28bが前記第1シート部24a及び第2シート部24bに対して押圧されることにより、シール性能が発揮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を開閉する開閉弁又は複数の流路間の連通状態を切り換える切換弁のいずれにも適用することが可能な弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バルブボデイの内部空間内に、ステム軸回りの回転により流路を開閉する球状の弁体と、前記弁体の外表面を囲繞するように配設されたシートリングとを有するボール弁が知られている。このボール弁は、例えば、流体が流通する流路を切り換える手段や流体が流通する流路を開閉する手段として用いられている。
【0003】
この種のボール弁は、球状の弁体をシートリングに押し付けてシール機能を発揮するように設けられているため、前記球状の弁体をステム軸回りに回動させる際に発生する摺動抵抗により、回動トルク(弁開閉操作時における操作トルク)が大きくなる。
【0004】
そこで、前記回動トルクを低減させるために、例えば、特許文献1には、球状の弁体の外表面にフッ素樹脂コーティングを施すことにより潤滑性を高める技術的思想が開示され、また、特許文献2には、弁体とシートリングとの間に間隙を設け、前記間隙を通じて一次側流体の一部がボールキャビティに導入されることにより、前記ボールキャビティ内の圧力を一次側流体の圧力と等しくする技術的思想が開示されている。
【特許文献1】特開2003−336752号公報
【特許文献2】特開2005−114116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、球状の弁体の外表面に対してフッ素樹脂コーティングを施す工程が必要となり、製造工程が複雑化すると共に、製造コストが高騰するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された従来技術では、流路側とボールキャビティとの圧力を均一化するために一次側シートリングやOリング等の部品が必要となって部品点数が増大すると共に、比較的高い加工精度が要求されるために製造コストが高騰するという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、シール性能を低下させることがなく構造を簡素化すると共に、製造工程を簡略化することにより製造コストを低減し、しかも従来と比較して回動トルクを低減させることが可能な弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、流体が出入する複数のポートを有するバルブボデイと、前記バルブボデイの内壁に形成されたシート部に着座して前記ポート間の連通状態を遮断すると共に、前記シート部から離間して前記ポート間を連通させる弁体とを備え、前記弁体は、帯状の弾性シート体が折曲して形成されて前記バルブボデイの内壁に沿って回動可能に設けられ、前記弁体が前記シート部に着座した際、形状弾性力によって前記弁体の側部が前記シート部に対して押圧されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、弁体が着座するシート部を有するバルブボデイと、前記バルブボデイの内壁に沿って回動可能に設けられ帯状の弾性シート体が折曲して形成された弁体とによって簡単に構成されることにより、シール性能を低下させることがなく装置の全体構造を簡素化することができると共に、組み付け作業が簡便となって製造工程を簡略化することにより、製造コストを低減することができる。
【0010】
この場合、前記弁体を、少なくとも、側面視して略U字形状又は略W字形状に折曲して形成することにより、簡便に製造することができる。
【0011】
また、本発明によれば、前記弁体が回動機構によって保持され、前記回動機構によって前記バルブボデイの内周面に沿って回動可能に設けられることにより、前記弁体を回動させる際、前記弁体の側部がバルブボデイの内壁形状に沿って内側に向かって容易に弾性変形するため、回動トルク(操作トルク)を従来と比較して低減(軽減)させることができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、バルブボデイに、流体が導入されるインレットポートと、流体が導出されるアウトレットポートとを設け、前記弁体を構成する一対の側部が、前記バルブボデイの内壁に相互に対向して形成された第1シート部及び第2シート部にそれぞれ着座することにより、前記インレットポートと前記アウトレットポートとの連通状態が遮断された弁閉状態となる。一方、前記弁閉状態から前記弁体を所定角度回動させ、前記弁体を構成する一対の側部が前記第1シート部及び第2シート部から離間することにより、前記インレットポートと前記アウトレットポートとが連通した弁開状態となる。このように本発明では、インレットポートとアウトレットポートとの連通路を開閉する開閉弁に好適に適用することができる。
【0013】
さらにまた、本発明によれば、バルブボデイに、流体が導入されるインレットポートと、流体が導出される第1アウトレットポート及び第2アウトレットポートとをそれぞれ設け、前記弁体を構成する側部が、前記バルブボデイの内壁に形成されたシート部に着座することにより、前記インレットポートと前記第2アウトレットポートとの連通状態が遮断されると共に、前記インレットポートと前記第1アウトレットポートとが連通した第1弁切換状態となる。一方、前記第1弁切換状態から前記弁体を所定角度だけ回動させ、前記弁体を構成する側部が前記シート部から離間することにより、前記インレットポートと前記第1アウトレットポート及び前記第2アウトレットポートがそれぞれ連通した第2弁切換状態となる。このように本発明では、第1弁切換状態と第2弁切換状態とを切り換える切換弁に好適に適用することができる。
【0014】
またさらに、本発明によれば、側面視して略U字形状又は略W字形状に折曲して形成された弁体が、前記バルブボデイの空間部内に装填される前の自由状態において、一対の側部間の外幅寸法(A)が、前記バルブボデイの内壁の内径寸法であるシール面幅寸法(B)よりも大きく設定されることにより(A>B)、前記弁体がバルブボデイの空間部内に装填された際、形状弾性力によって弁体の側部がシート部にそれぞれ押圧されて面接触した状態で密着することにより、流体の漏洩が阻止されてシート性を向上させることができる。
【0015】
またさらに、本発明によれば、回動機構に、側面視して弁体を略W字形状とするために、帯状の弾性シート体の中間の折り曲げ部を係止する係止部材を設けることにより、弁体を簡便に組み付けることができ、製造工程を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、シール性能を低下させることがなく構造を簡素化すると共に、製造工程を簡略化することにより製造コストを低減し、しかも従来と比較して回動トルクを低減させることが可能な弁装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
先ず、2ポートの二方弁からなる開閉弁に適用した本実施形態に係る弁装置を以下に説明する。図1(a)は、本発明の実施形態に係る弁装置の弁閉状態における縦断面図、図1(b)は、前記弁装置の弁開状態における縦断面図、図2は、前記弁装置の分解斜視図、図3は、第1変形例に係る弁体を含む弁装置の縦断面図、図4は、第2変形例に係る弁体を含む弁装置の縦断面図、図5(a)は、前記弁装置の弁閉状態を示す動作説明図、図5(b)は、前記弁装置の弁開状態を示す動作説明図である。
【0019】
図1及び図2に示されるように、この弁装置10は、基本的に、流体が導入されるインレットポート12と前記流体が導出されるアウトレットポート14とを有するバルブボデイ16と、前記インレットポート12と前記アウトレットポート14とに連通するバルブボデイ16の空間部18内に配設される弁体20と、前記弁体20を回動可能に保持(支持)すると共に、前記弁体20を前記空間部18の内周面に沿って回動させる回動機構22とを備える。
【0020】
バルブボデイ16は、有底円筒状体からなり、前記バルブボデイ16の内部には、平面視して円形状に形成された内壁によって弁体20を収納するための空間部18が形成される。前記バルブボデイ16の相互に対向する内壁には、弁体20が着座する第1シート部24a及び第2シート部24bがそれぞれ中心に向かって僅かに膨出して形成され、前記第1シート部24a及び第2シート部24bのシート面は、平坦面に形成される(図2参照)。
【0021】
図1(a)に示されるように、前記第1シート部24aには、インレットポート12と空間部18とを連通させる第1流路26aが設けられ、前記第1シート部24aに弁体20が着座して弁閉状態となることにより、インレットポート12と空間部18との連通状態が遮断される。
【0022】
図1(a)に示されるように、前記第2シート部24bには、アウトレットポート14と空間部18とを連通させる第2流路26bが設けられ、前記第2シート部24bに弁体20が着座して弁閉状態となることにより、アウトレットポート14と空間部18との連通状態が遮断される。
【0023】
弁体20は、長手方向に沿って略一定幅の帯状体からなり(図2参照)、例えば、ゴムや樹脂等の弾性体で形成された弾性シート体20aが側面視して略U字形状に折曲して構成される(図1参照)。略U字形状の弾性シート体20aからなる弁体20は、バルブボデイ16の底壁に沿って水平方向に延在する基部28a(U字形状の下部)と、前記基部28aの長手方向に沿った両端部からそれぞれ略鉛直上方向に向かって立ち上がり、所定距離離間して相互に対向する一対の側部28b(U字形状の側辺部)とから構成される。
【0024】
前記弁体20において、一方の側部28bと他方の側部28bとの間は、所定間隔離間することにより、流体が流通可能に設けられる。なお、ゴムと樹脂とを二色成形することによって一体的な弾性シート体20aを形成してもよい。
【0025】
この場合、図1(a)に示されるように、略U字形成からなる弾性シート体20aの弾性力(形状弾性力)により、相互に対向する一対の側部28bは、互いに離間する方向(矢印X方向)に向かって付勢されている。この結果、弁体20の一対の側部28bがそれぞれ第1シート部24a及び第2シート部24bにそれぞれ押圧されて着座することによりシール機能が発揮され、弁閉状態となる。
【0026】
すなわち、図2に示されるように、弁体20がバルブボデイ16の空間部18内に収納される前の自由状態において、弁体20である弾性シート体20aの一対の側部28b間の外幅寸法Aが、バルブボデイ16の内壁の内径寸法であるシール面幅寸法Bよりも大きく設定されている(A>B)。
【0027】
前記弁体20がバルブボデイ16の空間部18内に装填された際に弾性シート体20aが弾性変形し、相互に対向する一対の側部28bがその弾性力によって互いに離間する方向に復帰しようとするため、前記一対の側部28bに対し矢印X方向の力が作用する。この結果、弁体20を構成する一対の側部28bは、バルブボデイ16の内壁に設けられた第1シート部24a及び第2シート部24bにそれぞれ着座して弁閉状態となる。
【0028】
なお、前記弁体20は、帯状の弾性シート体20aを略U字形状に折曲したものに限定されるものではなく、図3の第1変形例に係る弁体21aに示されるように、例えば、帯状の弾性シート体20aを略W字形状に折曲するように構成し、また、図4の第2変形例に係る弁体21bに示されるように、バルブボデイ16の底壁と接触する山部が3個形成されるように複数折曲して構成してもよい。この場合、略W字形状及び山部が3個形成された弁体21a、21bの側部28bには、図1と同様の形状弾性によって、矢印X方向に向かう力が作用する。
【0029】
回動機構22は、バルブボデイ16の開口部を閉塞するカバー部材30と、前記カバー部材30に設けられ弁体20をバルブボデイ16の内壁に沿って周方向に回動させる操作レバー32と、ボルト34によってカバー部材30の下部に締結されることにより、弾性シート体20aの両端部を挟持(保持)するプレート36とを有する。前記バルブボデイ16と前記カバー部材30との結合部位には、空間部18内の気密性乃至液密性を保持するためのシール部材38が装着される。
【0030】
なお、本実施形態では、操作レバー32を手動操作することによって弁体20を回動させているが、例えば、図示しない電動モータ等の回転駆動源や空気圧シリンダ等の流体圧シリンダからなる駆動装置に連結されて弁体20が回動するように構成してもよい。また、図示しない変位機構を設けて、弁体20を上下方向に沿って直線状に昇降させるように構成してもよい。例えば、図示しないモータ軸に連結されたピニオンと、前記ピニオンに噛合する図示しないラックとによって弁体20を上下方向に変位させるようにしてもよい。
【0031】
本実施形態に係る弁装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0032】
図5(a)に示されるように、弁体20を構成する一対の側部28bが、バルブボデイ16の内壁に相互に対向して形成された第1シート部24a及び第2シート部24bにそれぞれ着座してシール機能が発揮されることにより、インレットポート12とアウトレットポート14との連通状態が遮断された弁閉状態となる。この場合、形状弾性力によって弁体20の一対の側部28bが第1シート部24a及び第2シート部24bにそれぞれ押圧されて面接触した状態で密着することにより、流体の漏洩が阻止されてシート性を向上させることができる。
【0033】
一方、前記弁閉状態から操作レバー32を手動で所定角度だけ回すことにより弁体20が回動し、図5(b)に示されるように、弁体20を構成する一対の側部28bが第1シート部24a及び第2シート部24bから離間してインレットポート12及びアウトレットポート14にそれぞれ連通する第1流路26a及び第2流路26bが開口することにより、前記インレットポート12と前記アウトレットポート14とが連通した弁開状態となる。なお、バルブボデイ16の内壁に図示しない突起部を設けてストッパとすることにより、弁体20の回動角度を規制することができる。
【0034】
前記弁開状態では、弁体20を構成する一対の側部28bが二股に分岐して所定間隔離間するように設けられているため、バルブボデイ16の空間部18内を流通する流体の大部分が前記一対の側部28b間の離間空間に沿って円滑に流通させることができ、前記流通する流体の圧力損失を抑制することができる。
【0035】
前記弁開状態から操作レバー32を手動操作で前記とは逆方向に所定角度だけ回すことにより、再び弁閉状態に復帰させることができる。このように、略U字形状に屈曲する弾性シート体20aからなる弁体20をバルブボデイ16の内周面に沿って所定方向に回動させることにより、インレットポート12とアウトレットポート14との連通が遮断された弁閉状態と、インレットポート12とアウトレットポート14とが連通した弁開状態とを、簡便に切り換えることができる。
【0036】
本実施形態では、弁体20が着座する第1シート部24a及び第2シート部24bが膨出形成されたバルブボデイ16と、前記バルブボデイ16の内周面に沿って回動可能に設けられ略U字形状(略W字形状等を含む)に折曲して形成された帯状の弾性シート体20aからなる弁体20とによって簡単に構成されることにより、シール性能を低下させることがなく装置の全体構造を簡素化することができると共に、バルブボデイ16へ弁体20を装填した後に前記バルブボデイ16に対してカバー部材30を装着するだけでよいため、組み付け作業が簡便となって製造工程を簡略化することにより、製造コストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態では、弁閉状態と弁開状態とを切り換えるために、略U字形状に折曲させた弾性シート体20aからなる弁体20を回動させる際、前記弁体20の側部28bがバルブボデイ16の内壁形状に沿って内側に向かって容易に弾性変形するため、手動操作するときに操作レバー32に付与される操作トルク(回動トルク)を、従来と比較して低減(軽減)させることができる。
【0038】
換言すると、本実施形態では、弾性シート体20aからなる弁体20を用いることにより、弁閉状態と弁開状態との切換時においてフリクションを抑制することができるため、回動トルクを低減(軽減)させることができるのに対し、従来のボール弁では、球状の弁体のシートリングとの摺動抵抗によってフリクションが発生し回動トルクが大きくなる。
【0039】
さらに、本実施形態では、弁体20が略U字形状に折曲して形成された弾性シート体20aからなるため、従来のボール弁と比較して軽量化を達成することができると共に、高い加工精度が要求されることがなく、加工作業量を削減することができる。この結果、本実施形態では、量産性を向上させた弁装置10を得ることができる。
【0040】
さらにまた、本実施形態では、略U字形状からなる弾性シート体20aの一対の側部28bと第1シート部24a及び第2シート部24bとが面接触する面シール構造とすることができ、シート面の面圧を高めて良好なシール性能を得ることができると共に、シール特性を向上させることができる。
【0041】
次に、3ポートの三方弁からなる切換弁に適用した他の実施形態に係る弁装置を図6及び図7に示す。なお、図1及び図2に示される前記実施形態と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
図6(a)は、本発明の他の実施形態に係る弁装置の弁閉状態における縦断面図、図6(b)は、前記弁装置の弁開状態における縦断面図、図7は、前記弁装置の分解斜視図である。
【0043】
図6及び図7に示されるように、この弁装置100は、流体が導入されるインレットポート12がカバー部材30の上下方向に沿って貫通して形成され、前記流体が導出される第1アウトレットポート14a及び第2アウトレットポート14bを有するバルブボデイ116を含む。
【0044】
前記インレットポート12、前記第1アウトレットポート14a、第2アウトレットポート14bにそれぞれ連通する空間部18内には、帯状の弾性シート体120aが略W字形状に折曲して形成された弁体120が配設される。
【0045】
前記弁体120は、回動機構22を介して、回動可能に保持されると共に、前記空間部18の内周面に沿って回動するように設けられている。なお、帯状の弾性シート体120aの長手方向に沿った両端部を、それぞれカバー部材30とで挟持するプレート36には、空間部18と第1流路26aとを連通させる円形状の孔部121が形成されている。
【0046】
バルブボデイ116の底部には、空間部18と第1アウトレットポート14aとを連通させる第2流路26bが下方斜め方向に傾斜して形成され、前記バルブボデイ116の外周部には、空間部18と第2アウトレットポート14bとを連通させる第3通路26cが略水平方向に沿って延在するように形成される。前記第3流路26cに連通するバルブボデイ116の内壁には、弁体120が着座するシート部24が中心に向かって僅かに膨出して形成され、前記シート部24のシート面は、平坦面に形成される(図7参照)。
【0047】
弁体120は、長手方向に沿って略一定幅の帯状体からなり(図7参照)、例えば、ゴムや樹脂等の弾性体で形成された弾性シート体120aが側面視して略W字形状に複数折曲して構成される(図6参照)。略W字形状の弾性シート体120aからなる弁体120は、バルブボデイ116の底壁に接触する第1屈曲部128a及び第2屈曲部128bと、前記第1屈曲部128a及び第2屈曲部128bからそれぞれ略鉛直上方向に向かって立ち上がり、所定距離離間して相互に対向する一対の側部128cとを有する。
【0048】
この場合、第1屈曲部128aと第2屈曲部128bとの間には、帯状の弾性シート体120aの折り曲げ部128dが形成され、前記折り曲げ部128dは、ボルト34を介してカバー部材30の下面にねじ締結されるプレート状の係止部材136によって係止される。なお、弾性シート体120aの折り曲げ部128dを、カバー部材30の下部に設けられた断面L字状(鉤状)のフック部(図示せず)に引っ掛けて前記折り曲げ部128dをカバー部材30に係止するようにしてもよい。
【0049】
この場合、図6(a)に示されるように、略W字形成からなる弾性シート体120aの弾性力(形状弾性力)により、相互に対向する一対の側部128cは、互いに離間する方向(矢印X方向)に向かって付勢されている。この結果、弁体120の側部128cがシート部24に押圧されて着座することによりシール機能が発揮され、第3流路26cが閉塞される。
【0050】
なお、前記弁体120は、帯状の弾性シート体120aを略W字形状に折曲したものに限定されるものではなく、図1に示されるように、例えば、帯状の弾性シート体120aを略U字形状に折曲するように構成し、また、図4に示されるように、バルブボデイ116の底壁と接触する山部が3個形成されるように折曲して構成してもよい。
【0051】
他の実施形態に係る弁装置100は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0052】
図6(a)に示されるように、弁体120を構成する側部128cが、バルブボデイ16の内壁に形成されたシート部24に着座してシール機能が発揮されることにより第3流路26cが閉塞され、インレットポート12と第2アウトレットポート14bとの連通状態が遮断されると共に、インレットポート12と第1アウトレットポート14aとが連通した第1弁切換状態となる。この場合、形状弾性力によって弁体120の側部128cがシート部24に押圧されて面接触した状態で密着することにより、流体の漏洩が阻止されてシート性を向上させることができる。
【0053】
一方、前記第1弁切換状態から操作レバー32を手動で所定角度だけ回すことにより弁体120が回動し、図6(b)に示されるように、弁体120を構成する側部128cがシート部24から離間して第3流路26cが開口することにより、インレットポート12と第1アウトレットポート14a及び第2アウトレットポートがそれぞれ連通した第2弁切換状態となる。第1弁切換状態と第2弁切換状態とを切り換えるために、略W字形状に折曲させた弾性シート体120aからなる弁体120を回動させる際、前記弁体120の側部128dがバルブボデイ116の内壁形状に沿って内側に向かって容易に弾性変形する。
【0054】
前記第2弁切換状態では、弁体120を構成する一対の側部128cと中間の折り曲げ部128dとが所定間隔離間するように設けられているため、バルブボデイ116の空間部18内を流通する流体が前記弁体120の離間空間に沿って円滑に流通させることができ、前記流通する流体の圧力損失を抑制することができる。
【0055】
前記第2弁切換状態から操作レバー32を手動操作で前記とは逆方向に所定角度だけ回すことにより、再び第1弁切換状態に復帰させることができる。このように、略W字形状に屈曲する弾性シート体120aからなる弁体120をバルブボデイ116の内周面に沿って所定方向に回動させることにより、インレットポート12と第1アウトレットポート14aとが連通すると共に、インレットポート12と第2アウトレットポート14bとの連通が遮断された第1弁切換状態と、インレットポート12と第1アウトレットポート14a及び第2アウトレットポート14bとの両方がそれぞれ連通した第2弁切換状態とを、簡便に切り換えることができる。
【0056】
他の実施形態に係る弁装置100を、例えば、燃料電池システムの冷却機構に適用することができる。この場合、弁装置100のインレットポート12を図示しない冷媒供給源に接続し、第1アウトレットポート14aを図示しない燃料電池システムに接続し、第2アウトレットポートを図示しないリザーバタンクに接続する。弁装置100を第1弁切換状態とすることにより、第2アウトレットポート14aが閉塞されて図示しないリザーバタンクへの冷媒の供給を停止した状態で、第1アウトレットポート14aから図示しない燃料電池システムに対して冷媒を供給することができる。一方、弁装置100を第1弁切換状態から第2弁切換状態へと切り換えることにより第2流路26bが開口し、第2アウトレットポート14bから図示しないリザーバタンクへ冷媒を供給することができる。
【0057】
他の実施形態では、第1弁切換状態において、シート部24に着座した弁体120の側部128cが、弁体120の離間空間に沿って流通する流体の圧力によってシート部24側に向かって押圧されるため、シート面における密着力が増大し、より一層シール性能を向上させることができる。その他の作用効果は、前記実施形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る弁装置の弁閉状態における縦断面図、(b)は、前記弁装置の弁開状態における縦断面図である。
【図2】図1に示す弁装置の分解斜視図である。
【図3】第1変形例に係る弁体を含む弁装置の縦断面図である。
【図4】第2変形例に係る弁体を含む弁装置の縦断面図である。
【図5】(a)は、前記弁装置の弁閉状態を示す動作説明図、図5(b)は、前記弁装置の弁開状態を示す動作説明図である。
【図6】(a)は、本発明の他の実施形態に係る弁装置の弁閉状態における縦断面図、(b)は、前記弁装置の弁開状態における縦断面図である。
【図7】図6に示す前記弁装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10、100 弁装置
12 インレットポート
14、14a、14b アウトレットポート
16、116 バルブボデイ
18 空間部
20、21a、21b、120 弁体
20a、120a 弾性シート体
22 回動機構
24a、24b、24 シート部
26a〜26c 流路
28b、128c 側部
128d 折り曲げ部
136 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が出入する複数のポートを有するバルブボデイと、
前記バルブボデイの内壁に形成されたシート部に着座して前記ポート間の連通状態を遮断すると共に、前記シート部から離間して前記ポート間を連通させる弁体と、
を備え、
前記弁体は、帯状の弾性シート体が折曲して形成されて前記バルブボデイの内壁に沿って回動可能に設けられ、前記弁体が前記シート部に着座した際、形状弾性力によって前記弁体の側部が前記シート部に対して押圧されることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の弁装置において、
前記弁体には、少なくとも、側面視して略U字形状又は略W字形状に折曲して形成される弁体が含まれることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の弁装置において、
前記弁体は、回動機構によって保持され、前記回動機構によって前記バルブボデイの内周面に沿って回動可能に設けられることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弁装置において、
前記バルブボデイには、流体が導入されるインレットポートと、流体が導出されるアウトレットポートとが設けられ、
前記弁体を構成する一対の側部が、前記バルブボデイの内壁に相互に対向して形成された第1シート部及び第2シート部にそれぞれ着座することにより、前記インレットポートと前記アウトレットポートとの連通状態が遮断された弁閉状態となり、
前記弁閉状態から前記弁体を所定角度回動させ、前記弁体を構成する一対の側部が前記第1シート部及び第2シート部から離間することにより、前記インレットポートと前記アウトレットポートとが連通した弁開状態となることを特徴とする弁装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弁装置において、
前記バルブボデイには、流体が導入されるインレットポートと、流体が導出される第1アウトレットポート及び第2アウトレットポートがそれぞれ設けられ、
前記弁体を構成する側部が、前記バルブボデイの内壁に形成されたシート部に着座することにより、前記インレットポートと前記第2アウトレットポートとの連通状態が遮断されると共に、前記インレットポートと前記第1アウトレットポートとが連通した第1弁切換状態となり、
前記第1弁切換状態から前記弁体を所定角度だけ回動させ、前記弁体を構成する側部が前記シート部から離間することにより、前記インレットポートと前記第1アウトレットポート及び前記第2アウトレットポートがそれぞれ連通した第2弁切換状態となることを特徴とする弁装置。
【請求項6】
請求項2記載の弁装置において、
側面視して略U字形状又は略W字形状に折曲して形成された前記弁体は、前記バルブボデイの空間部内に装填される前の自由状態において、一対の側部間の外幅寸法(A)が、前記バルブボデイの内壁の内径寸法であるシール面幅寸法(B)よりも大きく設定される(A>B)ことを特徴とする弁装置。
【請求項7】
請求項3記載の弁装置において、
前記回動機構には、側面視して弁体を略W字形状とするために、帯状の弾性シート体の中間の折り曲げ部を係止する係止部材が設けられることを特徴とする弁装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−106875(P2010−106875A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276838(P2008−276838)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】