説明

引戸装置

【課題】 引戸装置において、気密構造を簡単かつ安価に提供でき、しかも操作性が良く、十分な気密を得ることができるようにする。
【解決手段】
屋内側引戸10の屋外側の面および屋外側引戸10の屋内側の面には全周にわたって連続したシール材15が設けられている。上枠の屋内側案内通路51には、屋内側引戸10が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋内側引戸の上側走行体82を屋外に向かうように案内する傾斜部51xが設けられ、屋外側案内通路52には、屋外側引戸10が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋外側引戸10の上側走行体82を屋内に向かうように案内する傾斜部52xが設けられている。下枠にも同様の案内通路が設けられている。屋内側引戸10と屋外側引戸が閉じ位置にあるとき、これら引戸10の上下縁のシール材15が上枠、下枠のシール用突条に当たり、これら引戸の側縁のシール材同士が当たる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大型の引き違い窓装置として提供される引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の引き違い窓装置は、上枠と、下枠と、これらの間に引き違い式に配置された複数の引戸とを備えている。上記引戸の上框および下框には、それぞれ上側走行体と下側走行体が設けられ、上記上枠には、屋内側および屋外側の引戸の上側走行体をそれぞれ案内する真直ぐな屋内側案内通路と屋外側案内通路が設けられ、上記下枠にも、屋内側および屋外側の引戸の下側走行体をそれぞれ案内する真直ぐな屋内側案内通路と屋外側案内通路が設けられている。
【0003】
上記引き違い窓装置は引戸が閉じ位置にあるときに気密を維持することが要求される。そのため、従来では寄せ機構を用いて、屋内側の引戸と屋外側の引戸を互いに離す方向に、すなわち屋内側の引戸を屋内方向に、屋外側の引戸を屋外側に変位させる。この際、屋内側の引戸の屋内側の面の上下框に取り付けられたシール材が、上枠と下枠の屋内側の部位に形成されたシール壁に当たるとともに、屋外側の引戸の屋外側の面の上下框に取り付けられたシール材が、上枠と下枠の屋外側の部位に形成されたシール壁に当たる。これと同時に、引戸の左右縦框のフランジに取り付けられたシール材同士が当たる。このようにして、引戸の上框、下框、左右縦框がそれぞれシール材によりシールされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の引き違い窓装置では、気密を実現するための寄せ機構が引戸の複数個所を連動させて変位させる構造であるため、その構造が複雑かつ高価であった。また、寄せ機構はレバー操作で上記引戸の変位を実現させるのが一般的であるが、大型で重い引戸の場合、このレバー操作に大きな力を要し、操作性も悪かった。
さらに、引戸の上框、下框のシール材が屋内側または屋外側の面に設けられ、左右の縦框のシール材がフランジに設けられているため、これらシール材同士を連続させることができず、十分な気密性を達成することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、上枠と、下枠と、これらの間に引き違い式に配置された複数の引戸とを備え、上記引戸の上縁および下縁には、それぞれ上側走行体と下側走行体が設けられ、上記上枠には、屋内側,屋外側の引戸の上側走行体をそれぞれ案内する屋内側案内通路と屋外側案内通路が設けられ、上記下枠にも、屋内側,屋外側の引戸の下側走行体をそれぞれ案内する屋内側案内通路と屋外側案内通路が設けられている引戸装置において、上記屋内側引戸の屋外側の面および屋外側引戸の屋内側の面には、引戸の上下縁および左右の側縁に沿って延び全周にわたってほぼ連続するシール材が設けられ、上記上枠および下枠には、上記屋内側案内通路と屋外側案内通路の間に位置しこれら案内通路に沿って延びるシール用突条が設けられ、上記上枠および下枠の屋内側案内通路には、屋内側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋内側引戸の上側,下側の走行体をそれぞれ屋外に向かうように案内する傾斜部が設けられ、上記上枠および下枠の屋外側案内通路には、屋外側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋外側引戸の上側,下側の走行体をそれぞれ屋内に向かうように案内する傾斜部が設けられ、上記屋内側引戸と屋外側引戸が閉じ位置にあるとき、これら引戸の上下縁のシール材が上枠、下枠のシール用突条に当たり、これら引戸の側縁のシール材同士が当たることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、屋内側引戸と屋外側引戸は、開き位置から閉じ位置に向かう際に案内通路の傾斜部に案内されることにより、互いに近づくように変位してシールを行う。そのため、複雑かつ高価な寄せ機構を省くことができる。また、シールのための引戸の変位は基本的に引戸を閉じ位置に向かって移動させるだけで済むので操作性もよい。さらに、シール材は引戸の全周にわたってほぼ連続しているので、十分なシール性も発揮できる。
【0007】
好ましくは、上記引戸の上側走行体および下側走行体が左右に一対ずつ設けられ、上枠,下枠の屋内側案内通路が互いに同一形状をなして上下に対峙するとともに、これら上枠,下枠に沿って同一直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の走行体に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、案内通路の両端から離れた副通路部分は屋外に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、同様に、上枠,下枠の屋外側案内通路も互いに同一形状をなして上下に対峙とともに、これら上枠,下枠に沿って同一直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の走行体に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、案内通路の両端から離れた副通路部分は屋内に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、上記引戸が開き位置にある時には引戸の走行体が案内通路の主通路部分に位置し、引戸が閉じ位置にある時には引戸の走行体が山形をなす副通路部分の頂部に位置する。
この構成によれば、特に引戸の数が多い場合に引戸の移動範囲を広げることができる。しかも、その広い移動範囲において引戸が移動する際、走行体が山形の副通路部分を通過するため、案内通路が一直線の場合に生じる可能性がある引戸の暴走を、防止ことができる。
【0008】
好ましくは、各引戸はその上框に取り付けられた左右一対の吊具を介して上記上枠に吊り下げ支持されるようになっており、上記上枠は屋外側案内通路の両側と屋外側案内通路の両側にそれぞれ一対の走行支持部を有し、上記吊具は、上枠から上方に垂直に延びて上記案内通路を貫通するシャフトと、このシャフトの上部に設けられた支持体と、この支持体に支持された少なくとも一対の戸車とを有し、上記シャフトが上記案内通路に沿って走行する上側走行体として提供され、上記戸車が上記走行支持部の上面に乗ることにより上記引戸の荷重を担う。
この構成によれば、特に引戸の荷重が大である場合に、その荷重をしっかりと担うことができる。
【0009】
好ましくは、各吊具が上記支持体を一対備え、これら支持体が上記シャフトに回動可能に連結され、各支持体に上記対をなす戸車が設けられるとともに上方に突出する補助走行体が設けられ、上記上枠には当該補助走行体を案内する屋内側、屋外側の補助案内通路が設けられ、上記屋内側の補助案内通路には、屋内側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋内側引戸の補助走行体を屋外に向かうように案内する傾斜部が設けられ、上記屋外側の補助案内通路には、屋外側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋外側引戸の補助走行体を屋内に向かうように案内する傾斜部が設けられている。
この構成によれば、吊具の戸車を対応する補助走行体の進行方向と平行な姿勢に近づけることができ、円滑な走行を行うことができる。
【0010】
好ましくは、上記屋内側の補助案内通路は、上枠,下枠に沿って直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の吊具に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、補助案内通路の両端から離れた副通路部分は屋外に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、同様に、屋外側の補助案内通路も上枠,下枠に沿って直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の吊具に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、補助案内通路の両端から離れた副通路部分は屋内に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、上記副通路部分の頂部は主通路部分と平行をなして真直ぐに延びており、上記引戸が開き位置にある時には各吊具の一対の補助走行体が補助案内通路の主通路部分に位置し、引戸が閉じ位置にある時には各吊具の一対の補助走行体が上記補助案内通路の副通路部分における真直ぐな頂部に位置し、これにより、吊具の一対の支持体が一直線上に配置されるとともに、上記吊具の全ての戸車が引戸と平行をなす。
この構成によれば、引戸の閉じ位置において吊具の戸車が引戸と平行をなしているので、引戸を左右いずれかに移動して閉じ位置から開き位置に向かわせる際に、その始動を円滑に行うことができる。
【0011】
好ましくは、上記下枠のシール用突条が下枠の上面から僅かに突出し、下側のシール材の下面が引戸の下縁と同一高さに位置するか、それより僅かに下方に突出している。
これによれば、下枠上面を床面とほぼ一致させる場合に、下枠のシール用突条が邪魔にならずバリアフリーを実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引戸装置の気密構造が簡単かつ安価であり、しかも操作性が良く、十分な気密を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態をなす大型の引き違い窓装置(引戸装置)を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、この窓装置は、窓開口を画成する窓枠1と、この窓開口を開閉するために引き違い式に配置された複数の引戸10とを備えている。本実施形態では引戸10が屋内側に2枚、屋外側に2枚、合計4枚装備されている。
【0014】
窓枠1は、上枠20および下枠30と、左右の縦枠40(図10参照)とを備えている。上枠20はブラケット2を介して天井スラブ(上階の床スラブ)に固定され、下枠30は高さ調節機能付き支持機構3を介して床スラブ4に固定されている。
【0015】
さらに、図1を参照しながら窓装置の周辺構成について簡単に説明する。屋内側、屋外側(ベランダ側)に配置された天井材5aおよび軒下材5bは、ほぼ同一高さをなして上枠20に近接して配置されている。また、床スラブ4には屋内側、屋外側に床材6a,デッキ材6bが設置されている。これら床材6a、デッキ材6bは、その上面すなわち床面がほぼ同一高さをなして下枠30に近接して配置されている。さらにベランダ側には樋7およびこの樋7を塞ぐ通水性の蓋8が配置されている。この蓋8は、床材6a,6bとほぼ同一高さをなしている。
【0016】
図2〜図6に示すように、各引戸10は例えば縦幅、横幅が3〜4mをなす矩形の枠体11と、枠体11にはめ込まれたガラス板12を有している。
各引戸10の一方の面(すなわち屋内側の引戸10の場合には屋外側の面、屋外側の引戸10の場合には屋内側の面)には、中空の弾性押出材からなるシール材15が取り付けられている。
【0017】
より具体的には、アルミ等の押出材からなる枠体11の上框11a(上縁)、下框11b(下縁)および左右の縦框11c(側縁)の上記一方の面には、これら框11a〜11cの長手方向に延びる一対の突条13(取付部)が形成されており、シール材15の裏側の突条15aがこれら突条13間に嵌り込むようにして取り付けられている。
図4に最も良く示すように、上記上框11a、下框11bと左右の縦框11cは上記突条13が連なるようにして連結されており、これにより、各框11a,11b,11cに取り付けられたシール材15同士も連なるように取り付けることができる。その結果、シール材15は引戸10の一方の面に全周にわたって連続して取り付けられている。
なお、図2に示すように下側のシール材15の下面は、下框11bの下縁とほぼ同じ高さか僅かに(例えば2mm程度)下方に突出している。この突出量は後述するシール用突条33の突出量より小さい。
【0018】
図2,図3,図7,図8に示すように、上記引戸10は、その上框11aの左右端部の2箇所に取り付けた吊具80を介して、上枠20に吊り下げ支持されている。この吊具80は、引戸10の上框11aに固定されたロッド81と、このロッド81に螺合固定されて引戸10から上方に垂直に突出するシャフト82(上側走行体)と、このシャフト82に回動可能に連結された一対の支持体83と、各支持体83に水平軸を中心として回転可能に支持された一対の戸車84と、各支持体83に垂直軸を中心として回転可能にかつ上方に突出するようにして支持された回転ローラ85(補助走行体)とを備えている。
【0019】
図2、図3に示すように、引戸10の下縁の左右端部には、回転ローラ90(下側走行体)が垂直軸を中心として回転可能に取り付けられている。これら回転ローラ90は、上述した吊具80のシャフト82のちょうど真下に位置している。
図1にのみ示すように、各引戸10にはその閉じ位置で下枠30にロックする錠前9a,9bが設けられている。
【0020】
次に、上記上枠20について図2,図3,図7,図9を参照しながら説明する。上枠20は、断面ほぼ逆U字形をなす第1枠材21と、この第1枠材21内に収容されてその上壁部中央に固定された第2枠材22とを有している。これにより、上枠20は、下部に開口する細長い空間を屋内側と屋外側に有している。なお、これら枠材21、22はアルミ等の押出材からなる。
【0021】
上記第1枠材21の屋内側、屋外側の側壁下部には水平の支持壁21a(走行支持部)が形成されており、第2枠材22の下部の両側には支持壁21aと同一高さで間隔をおいて対峙する水平の支持壁22a(走行支持部)が形成されている。
【0022】
上記支持壁21aの縁にはその長手方向に延びるガイド部材23a,23bが交互に取り付けられている。同様に、支持壁22aの縁にもその長手方向に延びるガイド部材24a,24bが交互に取り付けられている。ガイド部材23a,24aは樹脂の押出材からなり、長尺に形成されている。ガイド部材23b,24bは樹脂の射出成形品からなり長手方向に断面形状が変化する。
【0023】
屋内側に位置するガイド部材23a,23bの縁は互いに連続し、これに対峙するガイド部材24a,24bの縁も連続している。これらガイド部材23a,23bとガイド部材24a,24bの対峙する縁は一定間隔をなして離れており、これにより、屋内側案内通路51が形成されている。この屋内側案内通路51に、上記屋内側引戸10の吊具80のシャフト82が入り込み、案内されるようになっている。
【0024】
図9(B)に最も良く示すように、ガイド部材23a,24aの縁間の領域は、屋内側案内通路51の真直ぐな主通路部分51aとして提供され、射出成形品からなるガイド部材23b、24bの縁間の領域は、屋内側案内通路51の副通路部分51bとして提供される。この副通路部分51bは平面形状が山形をなし、屋外側に向かって突出し、その両側が傾斜部51xとなっている。なお、この副通路部分51bの山形の頂部を符号51yで示す。
【0025】
同様にして屋外側のガイド部材23a,23bとガイド部材24a,24bにより、屋外側案内通路52が形成されている。この屋外側案内通路52に、上記屋外側引戸10の吊具80のシャフト82が入り込み、案内されるようになっている。
この屋外側案内通路52も真直ぐな主通路部分51aと山形をなす副通路部分51bとを有しているが、この副通路部分51bは屋内側に向かって突出している。副通路部分52bも傾斜部52xと頂部52yを有している。
【0026】
上記上枠20は更に、上記案内通路51、52の上方に位置する補助案内通路53,54を有している。これら補助案内通路53、54は、案内通路51,52と同様に、第1枠材21に取り付けられた樹脂製のガイド部材25a,25bと第2枠材22に取り付けられた樹脂製のガイド部材26a,26bにより形成される。ガイド部材25a,26aは押出材からなりガイド部材25b、26bは射出成形品からなる。
屋内側の補助案内通路53には、屋内側引戸10の吊具80のローラ85が入り込んで案内されるようになっており、屋外側の補助案内通路54には屋外側引戸10の吊具80のローラ85が入り込んで案内されるようになっている。
【0027】
図9(A)に最も良く示すように、上記補助案内通路53、54は真直ぐな主通路部分53a,54aと山形をなす副通路部分53b、54bとを有している。案内通路51、52と同様に、屋内側の補助案内通路53の副通路部分53bは山形をなし屋外側に突出し、屋外側の補助案内通路54の副通路部分54bは山形をなし屋内側に突出している。
【0028】
補助案内通路53、54の副通路部分53b、54bは真下にある案内通路51、52の副通路部分51b、52bと対応した位置関係にあるが、これより長く形状も異なっている。すなわち、両側が傾斜部53x、54xをなし、頂部53y、54yが主通路部分53a,54aと平行をなし短い距離であるが真直ぐになっている。
【0029】
図10(B)に示すように、上枠20の案内通路51,52の副通路部分51b,52bは、閉じ位置にある引戸10の吊具80に対応して設けられており、本実施形態では各案内通路51,52に4箇所ずつ形成されている。各案内通路51,52の主通路部分51a,52aは,上枠20に沿って一直線上に配置されている。
図10(A)に示すように、補助案内通路53,54の副通路部分53b,54bは、閉じ位置にある引戸10の吊具80に対応して設けられており、本実施形態では各補助案内通路53,54に4箇所ずつ形成されている。各補助案内通路53,54の主通路部分53a,54aは,上枠20に沿って一直線上に配置されている。
【0030】
図2,図3に示すように、上記第2枠材21の下面には下方に垂直に突出するシール用突条27が形成されている。このシール用突条27は上枠20の長手方向に沿ってその全長にわたって延び、2つの案内通路51、52間に位置している。
【0031】
次に、図2、図3を参照しながら下枠30について詳述する。下枠30は、アルミ等の押出材からなる第1枠材31と2本の第2枠材32とを有している。第1枠材31は互いに離間した3つの起立壁を有しており、屋内側起立壁と中央起立壁との間および屋外側起立壁と中央起立壁との間に、それぞれ第2枠材32が収容固定されている。中央起立壁の上縁部33は厚肉をなして第2枠材32の上面(下枠30の上面)から僅かに(例えば5mm程度)上方に突出しており、シール用突条として提供される。
【0032】
図3に示すように、上記屋内側、屋外側の第2枠材32は、それぞれその長手方向に延びる溝を有しており、この溝は屋内側案内通路61および屋外側案内通路62の主通路部分61a,62aを構成している。
図2に示すように、上記屋内側、屋外側の第2枠材32は、複数個所で切り欠かれており、この切欠部には樹脂製またはアルミ製のガイド部材35がはめ込まれて固定されている。このガイド部材35は、下枠20の長手方向に延びる射出成形品からなり、溝を有している。この溝は上記第2枠材32の溝と同一幅を有し、屋内側案内通路61および屋外側案内通路62の副通路部分61b,62bを構成している。
【0033】
図10(C)に示すように、下枠30の屋内側案内通路61および屋外側案内通路62は、上枠20の屋内側案内通路51および屋外側案内通路52と同一形状(中心線が同一形状であり、幅は同じでも異なっていてもよい。)真上から見たとき重なっている。図10(C)において、副通路部分61b,62bの傾斜部を符号61x、62xで示し、頂部を符号61y、62yで示す。
【0034】
次に、図10を参照しながら左右の縦枠40について説明する。これら縦枠40はその幅方向ほぼ中央にシール用突条41を有している。このシール用突条41は縦枠40の全長にわたって垂直に延びている。
【0035】
次に、上記窓装置の作用を説明する。図11に示すように、4枚の引戸10が全て閉じ位置にあり窓開口を塞いでいる状態では、屋内側引戸10と屋外側引戸10が交互に配置されている。
閉じ位置にある2枚の屋内側引戸10の合計4つのシャフト82は、図9(B),図11(B)に示すように上枠20の屋内側案内通路51の副通路部分51bの頂部51yに位置し、4つのローラ90は、図11(C)に示すように下枠30の屋内側案内通路61の副通路部分61bの頂部61yに位置している。その結果、閉じ位置にある屋内側引戸10は後述の開き位置にある場合よりも屋外側に変位している。
【0036】
同様に、閉じ位置にある2枚の屋外側引戸10の合計4つのシャフト82は、図11(B)に示すように上枠20の屋外側案内通路52の副通路部分52bの頂部52yに位置し、4つのローラ90は,図11(C)に示すように下枠30の屋外側案内通路62の副通路部分62bの頂部62yに位置している。その結果、閉じ位置にある屋外側引戸10は開き位置にある場合よりも屋内側に変位している。
【0037】
上述のように全ての引戸10が閉じ位置にある時、屋内側引戸10と屋外側引戸10は互いに近接した位置にあり、図2に示すようにこれら引戸10の上框のシール材15が上枠20のシール用突条27に弾性変形を伴って当たり、その下框のシール材15が下枠30のシール用突条35に弾性変形を伴って当たり、図5に示すように屋内側の引戸10と屋外側引戸10の左右の側縁のシール材15同士が弾性変形を伴って当たる。また、図11に示すように、右端に位置する屋内側引戸10の右側縁のシール材15と、左端に位置する屋外側引戸10の左側縁のシール材15が、それぞれ縦枠40のシール用突条41に弾性変形を伴って当たる。
上記のようにして全ての引戸10がそれぞれ全周にわたってシールされるので、窓装置全体で高い気密性を確保することができる。
【0038】
図11(A)に示すように、引戸10が閉じ位置にある時、引戸10の吊具80の2つのローラ85が、補助案内通路53、54の副通路部分53b、54bの真直ぐな頂部53y、54yに位置しており、一対の支持体83は一直線をなし、戸車84は引戸10と平行をなしている。そのため、引戸10を左右に移動させて開き位置に向かわせる際に、その始動を円滑に行える。
【0039】
図12は両端の2枚の引戸10を閉じ位置に維持したまま中央の2枚の引戸10のみを左右に移動させて開き位置にした状態を示し、窓開口は半開状態となる。図13は両端の2枚の引戸10を閉じ位置に維持したまま中央の2枚の引戸10のみを左右に移動させて両端の引戸10に重ねるような開き位置にした状態を示し、窓開口は全開状態となる。
図12、図13に示すように、上記引戸10が開き位置にある時、吊具80のシャフト82は案内通路51、52の主通路部分51a,52aに位置し、ローラ90は案内通路61,62の主通路部分61a,62aに位置し、ローラ85は補助案内通路53,54の主通路部分53a,54aに位置する。
【0040】
屋内側引戸10が開き位置にある時には、閉じ位置にある場合より屋内側に位置し、屋外側引戸10が開き位置にある時には、閉じ位置にある場合より屋外側に位置する。したがって、開き位置にある引戸10のシール材15は図3に示すようにシール用突条27,33から離れる。また、屋内側引戸10と屋外側引戸10がともに開き位置にある時には、両者は引戸10と直交する方向に最大限離れることになる。図6参照。
【0041】
なお、図12の状態から両端の引戸10を移動させて、隣接する引戸10と重ねることにより窓開口を全開にすることもできる。この状態では全ての引戸10が開き位置にある。
【0042】
次に、引戸10が開き位置から閉じ位置に至るまでの作用について説明する。引戸10が開き位置から左右いずれかに移動して閉じ位置に向かう過程で、左右の吊具80のシャフト82は対応する案内通路51,52の副通路部分51b,52bの一方の傾斜部51x、52xを通る。同時に左右のローラ90が対応する案内通路61,62の副通路部分61b,62bの一方の傾斜部61x、62xを通る。そのため、引戸10は窓枠1と平行をなしたまま斜め移動し、屋内側引戸10が屋外へ屋外側引戸10が屋内へと円滑に変位し、上述した閉じ位置に達する。
【0043】
上記引戸10が開き位置から閉じ位置まで移動する過程で、吊具80の2つのローラ85が補助案内通路53,54の傾斜部53x、54xを順次通過する。この際、2つの支持体83がシャフト82を中心として回動するため、各戸車84は対応するローラ85の走行方向と平行に近い姿勢をとることができ、支持壁21a,22a上を円滑に走行することができる。
【0044】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様が可能である。例えば、窓のみならず倉庫のシャッター装置にも適用できる。引戸の数は2枚,3枚でもよいし、5枚以上でもよい。また、簡単な寄せ機構を補助的に用いてもよい。
案内通路、補助案内通路の副通路部分は種々の形状を採用することができ、その傾斜部は直線でもよいし湾曲してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態をなす引き違い窓装置を閉じ状態で示す縦断面図である。
【図2】同窓装置の要部を閉じ状態で示す拡大縦断面図である。
【図3】同窓装置の要部を開き状態で示す拡大縦断面図である。
【図4】同窓装置の引戸を示す正面図である。
【図5】同窓装置の隣接する引戸を閉じ状態で示す拡大平断面図である。
【図6】同窓装置の隣接する引戸を開き状態で示す平断面図である。
【図7】同窓装置の引戸を吊り下げ支持するための吊具を示す正面図である。
【図8】同吊具の平面図である。
【図9】同装置の引戸が閉じ位置にある時の概略平面図であり、(A)は上枠の補助案内通路と引戸の吊具のローラとの位置関係を示し、(B)は上枠の案内通路と引戸の吊具のシャフトとの位置関係を示す。
【図10】同装置の各案内通路の形状を示す概略平面図であり、(A)は上枠の屋外側、屋内側の補助案内通路を示し、(B)は上枠の屋外側、屋内側の案内通路を示し、(C)は下枠の屋外側、屋内側の案内通路を示す。
【図11】全ての引戸が閉じ位置にあり、窓開口が全閉状態をなしているときの概略平面図であり、(A)は上枠の補助案内通路と吊具のローラとの位置関係を示し、(B)は上枠の案内通路と吊具のシャフトとの位置関係を示し、(C)は下枠の案内通路と下側のローラとの位置関係を示す。
【図12】両端の2枚の引戸が閉じ位置にあり、中央の2枚の引戸が少し開いた状態にあるときの概略平面図であり、(A)は上枠の補助案内通路と吊具のローラとの位置関係を示し、(B)は上枠の案内通路と吊具のシャフトとの位置関係を示し、(C)は下枠の案内通路と下側のローラとの位置関係を示す。
【図13】両端の2枚の引戸が閉じ位置にあり、中央の2枚の引戸が両端の引戸に重なることにより、窓が最大限開いた状態にあるときの概略平面図であり、(A)は上枠の補助案内通路と吊具のローラとの位置関係を示し、(B)は上枠の案内通路と吊具のシャフトとの位置関係を示し、(C)は下枠の案内通路と下側のローラとの位置関係を示す。
【符号の説明】
【0046】
10 引戸
15 シール材
20 上枠
21a,22a 支持壁(走行支持部)
27 シール用突条
30 下枠
33 シール用突条
51 上枠の屋内側案内通路
52 上枠の屋外側案内通路
51a,52a 主通路部分
51b,52b 副通路部分
51x,52x 傾斜部
51y,52y 頂部
53 屋内側補助案内通路
54 屋外側補助案内通路
53a,54a 主通路部分
53b,54b 副通路部分
53x,54x 傾斜部
53y,54y 頂部
61 下枠の屋内側案内通路
62 下枠の屋外側案内通路
61a,62a 主通路部分
61b,62b 副通路部分
61x,62x 傾斜部
61y,62y 頂部
80 吊具
82 シャフト(上側走行体)
83 支持体
84 戸車
85 ローラ(補助走行体)
90 ローラ(下側走行体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と、下枠と、これらの間に引き違い式に配置された複数の引戸とを備え、上記引戸の上縁および下縁には、それぞれ上側走行体と下側走行体が設けられ、上記上枠には、屋内側,屋外側の引戸の上側走行体をそれぞれ案内する屋内側案内通路と屋外側案内通路が設けられ、上記下枠にも、屋内側,屋外側の引戸の下側走行体をそれぞれ案内する屋内側案内通路と屋外側案内通路が設けられている引戸装置において、
上記屋内側引戸の屋外側の面および屋外側引戸の屋内側の面には、引戸の上下縁および左右の側縁に沿って延び全周にわたってほぼ連続するシール材が設けられ、
上記上枠および下枠には、上記屋内側案内通路と屋外側案内通路の間に位置しこれら案内通路に沿って延びるシール用突条が設けられ、
上記上枠および下枠の屋内側案内通路には、屋内側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋内側引戸の上側,下側の走行体をそれぞれ屋外に向かうように案内する傾斜部が設けられ、
上記上枠および下枠の屋外側案内通路には、屋外側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋外側引戸の上側,下側の走行体をそれぞれ屋内に向かうように案内する傾斜部が設けられ、
上記屋内側引戸と屋外側引戸が閉じ位置にあるとき、これら引戸の上下縁のシール材が上枠、下枠のシール用突条に当たり、これら引戸の側縁のシール材同士が当たることを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
上記引戸の上側走行体および下側走行体が左右に一対ずつ設けられ、
上枠,下枠の屋内側案内通路が互いに同一形状をなして上下に対峙するとともに、これら上枠,下枠に沿って同一直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の走行体に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、案内通路の両端から離れた副通路部分は屋外に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、
同様に、上枠,下枠の屋外側案内通路も互いに同一形状をなして上下に対峙とともに、これら上枠,下枠に沿って同一直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の走行体に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、案内通路の両端から離れた副通路部分は屋内に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、
上記引戸が開き位置にある時には引戸の走行体が案内通路の主通路部分に位置し、引戸が閉じ位置にある時には引戸の走行体が山形をなす副通路部分の頂部に位置することを特徴とする請求項1に記載の引戸装置。
【請求項3】
各引戸はその上縁に取り付けられた左右一対の吊具を介して上記上枠に吊り下げ支持されるようになっており、
上記上枠は屋外側案内通路の両側と屋外側案内通路の両側にそれぞれ一対の走行支持部を有し、
上記吊具は、上枠から上方に垂直に延びて上記案内通路を貫通するシャフトと、このシャフトの上部に設けられた支持体と、この支持体に支持された少なくとも一対の戸車とを有し、上記シャフトが上記案内通路に沿って走行する上側走行体として提供され、上記戸車が上記走行支持部の上面に乗ることにより上記引戸の荷重を担うことを特徴とする請求項2に記載の引戸装置。
【請求項4】
各吊具が上記支持体を一対備え、これら支持体が上記シャフトに回動可能に連結され、各支持体に上記対をなす戸車が設けられるとともに上方に突出する補助走行体が設けられ、上記上枠には当該補助走行体を案内する屋内側、屋外側の補助案内通路が設けられ、
上記屋内側の補助案内通路には、屋内側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋内側引戸の補助走行体を屋外に向かうように案内する傾斜部が設けられ、
上記屋外側の補助案内通路には、屋外側引戸が開き位置から閉じ位置に向かって移動する際に屋外側引戸の補助走行体を屋内に向かうように案内する傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の引戸装置。
【請求項5】
上記屋内側の補助案内通路は、上枠,下枠に沿って直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の吊具に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、補助案内通路の両端から離れた副通路部分は屋外に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、
同様に、屋外側の補助案内通路も上枠,下枠に沿って直線上に延びる複数の主通路部分と、これら主通路部分に連なるとともに閉じ位置の引戸の吊具に対応した箇所に設けられた複数の副通路部分とを有し、補助案内通路の両端から離れた副通路部分は屋内に向かって突出する山形をなし、その両側が上記傾斜部として提供され、
上記副通路部分の頂部は主通路部分と平行をなして真直ぐに延びており、
上記引戸が開き位置にある時には各吊具の一対の補助走行体が補助案内通路の主通路部分に位置し、引戸が閉じ位置にある時には各吊具の一対の補助走行体が上記補助案内通路の副通路部分における真直ぐな頂部に位置し、これにより、吊具の一対の支持体が一直線上に配置されるとともに、上記吊具の全ての戸車が引戸と平行をなすことを特徴とする請求項4に記載の引戸装置。
【請求項6】
上記下枠のシール用突条が下枠の上面から僅かに突出し、下側のシール材の下面が引戸の下縁と同一高さに位置するか、それより僅かに下方に突出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−57265(P2008−57265A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237349(P2006−237349)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000187057)昭和鋼機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】