説明

引戸装置

【課題】面積等が小さい材料で沓摺り部材を生産することが可能となり、沓摺り部材の製造コストを低減できるようになる引戸装置を提供すること。
【解決手段】扉体1で開閉される開口部となっている出入口2の外枠構造は、全閉となった扉体1の戸先部1Cが当たる戸先側縦枠部材11と、出入口2の下端の床4に配置され、扉体1の開閉移動方向の長さを有する沓摺り部材15とを含んで構成され、戸先側縦枠部材11の扉体1と対面する面11Aには、扉体1の閉じ側へ窪んだ凹部11Bが形成され、沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側の先端がこの凹部11Bに挿入されており、沓摺り部材15の扉体厚さ方向の幅寸法W1は、凹部11Bの扉体厚さ方向の幅寸法W2よりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出入口等の開口部が扉体で開閉される引戸装置に係り、例えば、扉体がガイド手段から吊り下げられた上吊り式となっている引戸装置に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
出入口等の開口部が扉体で開閉される引戸装置には、全閉となった扉体の戸先部が当たる戸先側縦枠部材が、この開口部の外枠構造を構成する部材として設置されている。この戸先側縦枠の扉体と対面する面には、下記の特許文献1に示されているように、扉体の閉じ側へ窪んだ凹部が設けられ、全閉となった扉体の戸先部がこの凹部に挿入した状態となって、この戸先部が戸先側縦枠部材に当たることにより、扉体の全閉時における扉体と戸先側縦枠部材との間の密閉性が確保されるようになっている。
【0003】
また、下記の特許文献2に示されているように、開口部の外枠構造を構成する部材として、開口部の下端の床に、扉体の開閉移動方向の長さを有する沓摺り部材が配置され、この沓摺り部材により、全閉となった扉体で区分けされる開口部の両側の空間の床を仕切ることが行われる場合がある。
【0004】
このように開口部の外枠構造を構成する部材として、扉体と対面する面に扉体の閉じ側へ窪んだ凹部が設けられていて、全閉となったときに扉体の戸先部が当たる戸先側縦枠部材と、扉体の開閉移動方向の長さを有していて、開口部の下端の床に配置された沓摺り部材とが用いられている従来の引戸装置では、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側の先端は、戸先側縦枠部材の凹部に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−186977号公報(図3)
【特許文献2】特開平11−172994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来の引戸装置において、沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法は、上述の凹部の扉体厚さ方向の幅寸法と同じになっている。このため、沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法は、凹部の扉体厚さ方向の幅寸法と同じ大きな寸法となっており、したがって、沓摺り部材を生産するためには面積等が大きい材料が必要になるなど、沓摺り部材の製造コストを低減することが難しい。
【0007】
本発明の目的は、面積等が小さい材料で沓摺り部材を生産することが可能となり、沓摺り部材の製造コストを低減できるようになる引戸装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る引戸装置は、扉体で開閉される開口部の外枠構造が、全閉となった前記扉体の戸先部が当たる戸先側縦枠部材と、前記開口部の下端の床に配置され、前記扉体の開閉移動方向の長さを有する沓摺り部材とを含んで構成され、前記戸先側縦枠の前記扉体と対面する面に、前記扉体の閉じ側へ窪んだ凹部が形成されているとともに、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側の先端が前記凹部に挿入されている引戸装置において、前記沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法が、前記凹部の扉体厚さ方向の幅寸法よりも小さくなっていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法が、全閉となった前記扉体の戸先部が当たる戸先側縦枠部材の扉体と対面する面に形成されている凹部の扉体厚さ方向の幅寸法よりも小さくなっているため、面積等が小さい材料により沓摺り部材を生産することが可能となり、したがって、沓摺り部材の製造コストを低減できるようになる。
【0010】
なお、沓摺り部材は、例えば、板金の折り曲げで生産してもよく、このように沓摺り部材を板金の折り曲げ品とする場合には、面積が小さい板金により沓摺り部材を生産することができる。また、沓摺り部材は、例えば、鋳造で生産してもよく、このように沓摺り部材を鋳造品とする場合には、少ない鋳造材料により沓摺り部材を生産することができる。さらに、沓摺り部材は、例えば、押し出し成形又は引き抜き成形で生産してもよく、このように沓摺り部材を押し出し成形品又は引き抜き成形品とする場合には、少ない押し出し成形材料又は引き抜き成形材料により沓摺り部材を生産することができる。
【0011】
また、本発明において、沓摺り部材の扉体厚さ方向の中心位置と、全閉となったときの扉体の扉体厚さ方向の中心位置とを一致させてもよく、これらの中心位置をずらしてもよい。
【0012】
沓摺り部材の扉体厚さ方向の中心位置と、全閉となったときの扉体の扉体厚さ方向の中心位置とをずらせた場合には、扉体を全閉又は半閉とした状態でも、沓摺り部材の設置作業や、沓摺り部材及び沓摺り部材関連部材に関するメンテナンス作業等の各種作業を行えることになり、作業性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明において、上述したように、沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法を、全閉となった扉体の戸先部が当たる戸先側縦枠部材の扉体と対面する面に形成されている凹部の扉体厚さ方向の幅寸法よりも小さくして、この凹部の内部に、沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側の先端を挿入、配置する場合においては、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側の先部の扉体厚さ方向における一方の側面を、凹部の扉体厚さ方向における一方の側面に当接させてもよい。
【0014】
これによると、凹部の内部に、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側の先端を挿入、配置する作業を行うに際に、凹部に対して、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側の先部を、凹部の扉体厚さ方向における一方の側面を位置決め基準面にして、位置決めすることができることになり、このため、上述の挿入、配置作業の正確性向上や作業の容易化を達成することができる。
【0015】
また、扉体で開閉される開口部の床に、扉体の開閉移動を案内するためのガイドローラが配設されているベース部材が設置される場合には、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面を、ベース部材の扉体厚さ方向における一方の側面に当接させてもよい。
【0016】
これによると、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部を配置する作業を行うに際に、この後部を、ベース部材の扉体厚さ方向における一方の側面を位置決め基準面にして、位置決めすることができ、この作業の正確性向上や作業の容易化を達成することができる。
【0017】
さらに、扉体で開閉される前述の開口部よりも扉体開き側に、この開口部を開いたときの扉体が収納される戸袋が設けられ、この戸袋の下端に下枠が配設される場合には、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面を、下枠の扉体厚さ方向における一方の側面に当接させてもよい。
【0018】
これによっても、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部を配置する作業を行うに際に、この後部を、下枠の扉体厚さ方向における一方の側面を位置決め基準面にして、位置決めすることができ、この作業の正確性向上や作業の容易化を達成することができる。
【0019】
なお、上述の戸袋は任意な形式のものでよく、その一例は、壁の内部に設けられている壁収納式の戸袋であり、他の例は、外部から視認できる、すなわち、外部に露出した外部露出式の戸袋である。また、戸袋は、この戸袋に収納された扉体の扉体厚さ方向両側の面を隠す両面式の戸袋でもよく、扉体厚さ方向両側の面のうち、一方の面だけを隠す片面式の戸袋でもよい。
【0020】
また、上述の下枠の形状も任意なものでよく、その一例の下枠は、戸袋の厚さ寸法と同じ又は略同じとなっている扉体厚さ方向の幅寸法を有する本体部と、この本体部から戸先側縦枠部材の側へ突出し、本体部よりも小さい扉体厚さ方向の幅寸法を有する突出部とを備えたものである。
【0021】
このような下枠については、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面を、突出部の扉体厚さ方向における一方の側面に当接させることができる。
【0022】
また、このような下枠においては、突出部の上面に、扉体の開閉移動を案内するためのガイドローラが配設されたベース部材を取り付けてよい。
【0023】
さらに、扉体で開閉される前述の開口部よりも扉体開き側に、この開口部を開いたときの扉体が収納される戸袋が設けられ、この戸袋の開口部の側の端部には竪額縁部材が取り付けられる場合には、沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面を、竪額縁部材の戸袋内側の内面に当接させてもよい。
【0024】
これによると、沓摺り部材における戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部を配置する作業を行うに際に、この後部を、竪額縁部材の戸袋内側の内面を位置決め基準面にして、位置決めすることができ、この作業の正確性向上や作業の容易化を達成することができる。
【0025】
以上説明した本発明は、任意なタイプの引戸装置に適用することができる。すなわち、本発明に係る引戸装置は、扉体がこの扉体の開閉移動を案内するガイド部材から吊り下げられた上吊り式の扉体となっているものでもよく、また、扉体の下側に配設されたガイドレール等のガイド部材に案内されて扉体が移動するものでもよく、扉体の下側と上側の両方に配設されたガイドレール等のガイド部材に案内されて扉体が移動するものでもよい。そして、扉体が上述の上吊り式の扉体となっている引戸装置の場合には、上述のガイド部材はガイドレールでもよく、スライドベアリングが用いられたスライドレール等でもよい。
【0026】
また、本発明に係る引戸装置の扉体の個数は、1個でもよく、あるいは、開閉移動方向に並ぶことにより出入口等の開口部を閉じる複数個でもよい。扉体の個数が複数個である場合には、これらの扉体は引き違い式に配置されたものでもよく、入れ子式に配置されたもの、すなわち、扉体厚さ方向の寸法が大きい扉体の内部に、扉体厚さ方向の寸法が小さい扉体が出入自在に収納可能となっているものでもよい。
【0027】
さらに、本発明に係る引戸装置は、扉体の開き移動と閉じ移動のうち、少なくとも一方が駆動装置で自動的に行われるものでもよく、扉体の開き移動と閉じ移動の両方が手操作で行われる手動式のものでもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、面積等が小さい材料で沓摺り部材を生産することが可能となり、沓摺り部材の製造コストを低減できるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のS2−S2線断面図である。
【図3】図3は、図1のS3−S3線断面図である。
【図4】図4は、図1で示されている上枠部材の内部に収納配置されている扉体移動機構を示す正面図であって、扉体が閉じ限位置(全閉位置)まで移動したときを示す図である。
【図5】図5は、扉体が開き限位置(全開位置)まで移動したときを示す図3と同様の図である。
【図6】図6は、図1のS6−S6線断面図である。
【図7】図7は、沓摺り部材を配置するときの状態を示す図6と同様の図である。
【図8】図8は、沓摺り部材を配置した後に、下枠の突出部の上面にガイドローラのベース部材を配置したときを示す図6と同様の図である。
【図9】図9は、全閉時の扉体と沓摺り部材との間の密閉性を確保することができる実施形態を示す図3と同様の図である。
【図10】図10は、戸先側縦枠部材と上枠部材との合理的な結合を実現するための実施形態を示す図であって、戸先側縦枠部材の上部と結合される上枠部材の扉体閉じ側の端部を示す側面図である。
【図11】図11は、図10のS11矢視図であって、上枠部材の扉体閉じ側の端部を示す正面図である。
【図12】図12は、図10のS12矢視図であって、上枠部材の扉体閉じ側の端部を示す底面図である。
【図13】図13は、戸先側縦枠部材の上部と上枠部材の扉体閉じ側の端部とを結合したときを示す図12と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る引戸装置は、開閉移動する扉体の個数が1個であって、この扉体が、扉体の上方に配置されたガイド部材であるガイドレールから吊り下げられた上吊り式の扉体となっており、また、開き移動した扉体が収納される戸袋が、壁の内部に設けられている壁収納式の戸袋となっている引戸装置である。
【0031】
図1は、例えば、建物内における廊下と部屋との間に仕切り手段として配置され、扉体1で開閉される開口部が出入口2となっている本実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。この引戸装置の全体の枠組みは、無目である上枠部材10と、扉体1が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの扉体1の戸先部が当接する戸先側縦枠部材11と、この戸先側縦枠部材11とは扉体1の移動方向反対側に配置されている戸尻側縦枠部材12と、これらの縦枠部材11と12の間に配置されているとともに、出入口2を開けたときの扉体1が収納される戸袋3における出入口2の側の端部に配置された竪額縁部材13と、床4における戸袋3の下端に配置された下枠14と、出入口2の下端の床4に配置され、戸先側縦枠部材11から竪額縁部材13まで延びている沓摺り部材15とにより形成されている。
【0032】
したがって、板金の折り曲げ品となっているこれらの上枠部材10と戸先側縦枠部材11と戸尻側縦枠部材12と竪額縁部材13と下枠14と沓摺り部材15は、引戸装置の全体の枠組みを形成するための枠部材となっている。
【0033】
また、出入口2は、これらの枠部材10〜15で形成された外枠組みの内側の一部の空間となっている。本実施形態では、出入口2における床4には沓摺り部材15が配置されているため、出入口2の外枠構造は、上枠部材10と戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13と沓摺り部材15とにより形成された四方枠式のものとなっている。
【0034】
また、出入口2は扉体1で開閉され、この出入口2を開けるために開き移動したときの扉体1が収納される戸袋3は、壁5の内部に設けられた壁収納型の戸袋となっている。上枠部材10は、戸先側縦枠部材11から戸尻側縦枠部材12まで延びる長さを有し、上記枠部材10〜15のうちの1つとなっている竪額縁部材13は、戸袋3における出入口2の側の見切り部材となっている。
【0035】
また、壁5の内部に設けられている戸袋3は、図1のS2−S2線断面図である図2で示されているように、ハット形状の断面が上枠部材10及び下枠14の長手方向(図1では左右方向)に連続している補強部材20によって補強された構造となっており、板金の折り曲げ成形品となっているこの補強部材20は、扉体1の厚さ方向でもある戸袋3の厚さ方向の両側に設けられているとともに、縦枠部材11,12及び竪額縁部材13の長手方向でもある上下方向に複数個配設されている。そして、これらの補強部材20の上下において、石膏ボード等で形成された内側壁材21が両面粘着テープ等による結合具で補強部材20に結合され、これらの内側壁材21の外側に、大面積の石膏ボードで形成された外側壁材22が配置され、補強部材20にビスやステープル等の結合具で結合されているこの外側壁材22の表面に、クロス等の壁仕上げ材が取り付けられている。
【0036】
このため、これらの内側壁材21と外側壁材22と壁仕上げ材により、戸袋3の部分の壁5が形成され、戸袋3は、補強部材20が構造材となって壁5の内部に形成されている。この壁5は、図1から分かるように、上枠部材10の上側や、戸先側縦枠部材11に対して出入口2とは反対側の部分、戸尻側縦枠部材12に対して戸袋3とは反対側にも設けられている。壁5のこれらの部分の表面は、戸袋3における壁5の部分の表面と面一状態となっている。
【0037】
図3は図1のS3−S3線断面図である。この図3で示されているように、上枠部材10は、上枠部材10の上側の壁5の下地材27にアンカー部材28を介して結合された上面部10Aと、この上面部10Aにおける上枠部材10の幅方向(図3では左右方向)の一方の端部から垂下した垂下部10Bと、この垂下部10Bの下端から上枠部材10の幅方向の外側へ延出した壁材見切り部10Cと、この壁材見切り部10Cの先端から起立した起立部10Dと、この起立部10Dから垂下部10Bの側へ屈曲した屈曲部10Eとを有する。これらの上面部10Aと垂下部10Bと壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eのうち、上面部10Aと垂下部10Bは、上枠部材10の全長に渡って連続して設けられ、壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eは、出入口2と対応する部分だけに設けられている。そして、壁材見切り部10Cの上側に、壁5における垂下部10Bの幅方向外側の部分を形成する内側壁材29と外側壁材30が配置され、これらの内側壁材29と外側壁材30は、壁材見切り部10Cとは上枠部材10の幅方向反対側において、上枠部材10の上側にも配置されている。そして、壁材見切り部10Cの上側に配置された内側壁材29と外側壁材30は、図2における戸袋3の左側では、図2で示されている内側壁材21と外側壁材22となっている。
【0038】
また、図3に示されているように、上枠部材10の上面部10Aにおける垂下部10Bとは反対側の幅方向の端部には、僅かに下方へ延びた下方延出部10Fが形成され、この下方延出部10Fの下端には、斜め上方であって、上記壁材見切り部10Cとは反対側の幅方向外側へ延出した傾斜延出部10Gが設けられている。これらの延出部10F,10G及び後述する点検カバー31と対応する高さ位置における戸袋3の上部箇所には、図1で示されている上下複数個の前記補強部材20のうち、最上部の補強部材20Aが配置されている。
【0039】
図3で示されている下方延出部10Fの下方への延出量は小さいため、この下方延出部10Fの下側は、上枠部材10の開口部10Hとなっており、この開口部10Hから、上枠部材10の内部空間に収納配置されている扉体移動機構についての点検及び整備を含む各種の作業を行えるようになっている。
【0040】
通常時の開口部10Hは点検カバー31で塞がれており、この点検カバー31は、上端に斜め下向きに形成され、上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止される係止部31Aと、この係止部31Aから鉛直又は略鉛直下向きに延びている正面部31Bと、この正面部31Bの下端から上枠部材10の内側へ水平又は略水平に屈曲している下面部31Cと、この下面部31Cの先端から立ち上がった立上部31Dとを有する。係止部31Aと下面部31Cと立上部31Dにより、板金の折り曲げで形成されている点検カバー31の全体の剛性が確保されている。
【0041】
前述の開口部10Hを塞いでいるときの点検カバー31は、図3で示されているとおり、係止部31Aが上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止され、これにより点検カバー31の重量が上枠部材10で支持されている。また、図1で示されているとおり、戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13に取り付けられているブラケット32,33に、点検カバー31の下面部31Cがねじ部材34,35で止められている。
【0042】
前述した扉体移動機構についての点検等の作業を行うために、点検カバー31を取り外して上枠部材10の上記開口部10Hを開けるときには、ねじ部材34,35を取り外し、これにより、点検カバー31は、上端の係止部31Aを中心に上枠部材10の内外方向に揺動可能となるため、点検カバー31を上枠部材10の外側方向へ揺動させることにより、係止部31Aを上枠部材10の傾斜延出部10Gから抜き取る。なお、本実施形態では、図3で示されているように、上枠部材10の傾斜延出部10Gには、点検カバー31の係止部31Aがこの傾斜延出部10Gに直接接触することを防止するゴムや合成樹脂等による冠部材40が被せられ、これにより、上枠部材10と点検カバー31の材料である金属同士が直接接触して点検カバー31の取付作業時や取外作業時等において異音が発生することや、上枠部材10及び/又は点検カバー31に傷が生ずること等を防止している。
【0043】
次に、上枠部材10の内部空間に収納配置されている前述の扉体移動機構について説明する。図4は、この扉体移動機構によって扉体1が閉じ限位置に達しているときを示し、図5は、扉体1が開き限位置に達しているときを示している。
【0044】
図4に示すように、上枠部材10の内部には扉体1の移動を案内するためのガイド部材であるガイドレール50が組み込まれ、上記扉体移動機構の主要な構成部材となっていて、上枠部材10の略全長に渡る長さを有するこのガイドレール50は、図3に示すとおり、上枠部材10の内面にビス51で取り付けられている。同一断面形状が長さ方向に連続しているこのガイドレール50は、ビス51で上枠部材10の垂下部10Bの内面に取り付けられた基部50Aと、この基部50Aの下端から扉体1の厚さ方向(上枠部材10の厚さ方向内側)に水平に延びるアーム部50Bと、このアーム部50Bの先端から垂直に立ち上がった係合部50Cとを有する。
【0045】
図4で示すように、扉体1には、扉体1の上面に結合されたローラブラケット53,54に回転自在に取り付けられた2個のローラ55,56が扉体1の開閉移動方向に配設され、ローラブラケット53,54を介して扉体1の上方に配置されているこれらのローラ55,56は、図3に示すように、扉体1の上方に不動部材となって水平に架設されてガイドレール50の係合部50Cに係合している。このため、扉体1は、ローラ55,56が係合部50C上を転動することによりガイドレール50に沿って開閉移動するとともに、扉体1は、ガイドレール50にローラ55,56及びローラブラケット53,54を介して吊り下げられた上吊り式となっている。
【0046】
また、図1に示すように、戸袋3に近い前記出入口2の床4には、垂直軸を中心に回転自在となったガイドローラ57が配置され、このガイドローラ57は、図3に示すとおり、扉体1の下端に下向きに開口して配置されたチャンネル部材1Bの内部に挿入されており、ガイドレール50に沿った扉体1の開閉移動は、扉体1の下端がこのガイドローラ57に案内されながら行われる。
【0047】
図4に示されているように、ガイドレール50の扉体開き移動方向の端部には、扉体1を開き限位置(全開位置)に停止させるためのストップ装置70が取り付けられ、このストップ装置70は、扉体閉じ方向に向けて本体71に突設されたゴム等の弾性材料からなるストップ部材72と、本体71に取り付けられ、板ばねの折り曲げで形成されている係止部材73とを有する。一方、扉体1に設けられている2個のローラブラケット53,54のうち、扉体開き方向に配置されたローラブラケット54の後端には板状の受け部材74が結合され、この受け部材74には、小径ローラによる被係止部材75が取り付けられている。
【0048】
扉体1を、図1で示す把持部1Aを握った手により開き方向に移動させ、この移動が開き限位置に達すると、図5に示されているように、被係止部材75は、一旦上向きに湾曲変形してもとの形状に弾性復帰する係止部材73に係止されるとともに、受け部材74はストップ部材72に当接し、係止部材73が被係止部材75を係止することにより、扉体1は開き限位置に停止する。
【0049】
また、扉体1の把持部1Aに扉体閉じ方向への手操作力を作用させた場合には、被係止部材75は上向きに弾性変形する係止部材73から離脱するため、扉体1は、ガイドレール50とガイドローラ57に案内されて閉じ方向へ移動する。
【0050】
また、図4及び図5に示されているように、ガイドレール50の扉体閉じ方向の端部には、扉体1を自動的に閉じ移動させるための駆動装置80が配置され、この駆動装置80は、図5で示されているとおり、駆動装置80のブラケット81がガイドレール50に取り付けられることにより、ガイドレール50に組み付けられている。
【0051】
駆動装置80は、装置本体となっているケーシング80Aの内部に回転自在に収納されたリール83を有し、このリール83の内部には渦巻きばねが配置され、この渦巻きばねの一端はリール83に結合されているとともに、他端はケーシング80Aに結合されている。また、リール83には、図4及び図5で示されているナイロン紐又はワイヤー等からなる紐状部材84が巻回されているとともに、この紐状部材84の一端がリール83に結合され、この紐状部材84はケーシング80Aから導出され、紐状部材84の他端は、扉体1に2個設けられているローラブラケット53,54のうち、扉体閉じ方向に配置されたローラブラケット53に結合されている。
【0052】
図4で示すように閉じ限位置(全閉位置)に達している扉体1を把持部1Aにより図5で示すように開き方向へ移動させたときには、紐状部材84がリール83を回転させながら駆動装置80から繰り出され、このとき、リール83の内部の上記渦巻きばねがリール83の回転で蓄圧されるようになっている。このため、この後に把持部1Aから手を離すと(扉体1が図5のように閉じ限位置に達しているときには、前述したように、把持部1Aに扉体閉じ方向への手操作力を作用させて被係止部材75を係止部材73から離脱させると)、渦巻きばねの蓄圧力によってリール83には、扉体1の開き移動時とは逆方向へリール83を回転させようとする回転力が生じているため、この回転力で緊張している紐状部材84の引張力により扉体1は閉じ方向へ引っ張られ、これにより、扉体1は閉じ限位置まで自動的に移動する。
【0053】
図4及び図5に示すように、ガイドレール50には、閉じ方向への扉体1の移動速度を低速化させて制動させ、扉体1を閉じ限位置に減速させて到達させるための制動装置90が取り付けられている。この制動装置90は、シリンダ本体91と、シリンダ本体91にガイドレール50の長さ方向に伸縮自在に挿入されたピストンロッド92とを有するシリンダ装置で構成され、シリンダ本体91は、不動部材となっているガイドレール50に取り付けられている。この取り付けは、図3に示すとおり、ガイドレール50の溝50D付きの取付部50Eにビス93と板ナット93Aにより行われている。
【0054】
図4及び図5で示すように、扉体1に2個設けられているローラブラケット53,54のうち、扉体開き移動方向に配置されたローラブラケット54には、ピストンロッド92の先端部が挿抜自在となったキャッチ部材94が取り付けられ、ピストンロッド92の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材94の内部とのうち、一方には磁石が設けられ、他方にはこの磁石に吸着する磁性材料が設けられている。このため、ピストンロッド92とキャッチ部材94とは、磁力で接続分離自在となっている。
【0055】
図4に示すように扉体1が閉じ限位置に達しているときには、シリンダ本体91に対して収縮しているピストンロッド92の先端部がキャッチ部材94の内部に挿入された状態になっており、扉体1を開き方向へ移動させると、ピストンロッド92の先端部とキャッチ部材94とが上記磁力で接続されているため、ピストンロッド92はシリンダ本体91に対して伸び作動する。このピストンロッド92が伸び作動限に達してもさらに扉体1が開き方向に移動すると、図5に示すように、ピストンロッド92とキャッチ部材94とが分離し、ピストンロッド92はその位置で停止する。また、扉体1が前述の引張式駆動装置80の駆動力で閉じ方向へ移動し始め、そして扉体1が所定位置に達すると、キャッチ部材94はピストンロッド92に当接してこれらのキャッチ部材94とピストンロッド92とが上記磁力で再度接続され、扉体1がさらに閉じ方向へ移動することにより、ピストンロッド92はシリンダ本体91に対して収縮作動する。
【0056】
なお、ピストンロッド92の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材94の内部とに互いに磁性が逆となった磁石を設けることにより、ピストンロッド92とキャッチ部材94とを上述と同様に接続分離自在としてもよい。
【0057】
シリンダ本体91には、ピストンロッド92が伸び作動したときに多量のエアをシリンダ本体91の内部に吸引し、ピストンロッド92が収縮作動したときにはこのエアを絞りながら排出するバルブが設けられている。このため、ピストンロッド92が伸び作動する扉体1の開き移動時には、扉体1を軽く移動させることができ、また、ピストンロッド92が収縮作動する扉体1の閉じ移動時には、扉体1がシリンダ本体91の内部のエア圧力によって制動されながら移動し、これにより、扉体1は、減速された速度で閉じ限位置に達するようになっている。
【0058】
このため、本実施形態における制動装置90は、シリンダ装置による流体圧力式制動装置となっている。
【0059】
なお、扉体1を自動的に閉じ移動させるための本実施形態に係る駆動装置80は、前述したように、渦巻きばねとリールと紐状部材による引っ張り式のものであったが、この駆動装置はリニアモータによるものでもよい。また、リニアモータ等による駆動装置により、扉体1の閉じ移動と開き移動の両方を行わせ、この駆動装置により扉体1の閉じ移動と開き移動の両方を自動移動としてもよい。
【0060】
また、閉じ方向への扉体1の移動速度を低速化させるための本実施形態に係る制動装置90は、シリンダ装置によるものとなっていたが、この制動装置を、扉体1の閉じ移動がラック及びピニオンを介して回転運動として伝達されるロータリ式のオイルダンパーによるものとしてもよい。
【0061】
図6は、図1のS6−S6線断面図である。前述した戸先側縦枠部材11は、壁5の下地材60にアンカー部材61を介して結合されているとともに、戸尻側縦枠部材12は、壁5の下地材62にアンカー部材63を介して結合されている。また、図1及び図2で説明した壁5の補強部材20は、図6に示されているように、前述した竪額縁部材13と戸尻側縦枠部材12との間に架け渡されており、上下方向に複数個設けられているこれらの補強部材20の扉体開閉移動方向両端部のうち、扉体閉じ方向端部は、竪額縁部材13にビス等の結合具64で結合され、扉体開き方向端部は、戸尻側縦枠部材12にビス等の結合具65で結合されている。
【0062】
出入口2よりも扉体1の開き側に設けられていて、この出入口2を開けるために開き移動した扉体1が収納される前述の戸袋3は、壁5の内部に設けられている壁収納型の戸袋となっているため、この戸袋3は、扉体1の扉体厚さ方向両側の面を隠す両面式の戸袋となっており、そして、戸袋3における出入口2の側の端部に配置されている竪額縁部材13は、戸袋3の厚さ方向両側(扉体1の厚さ方向両側)に設けられている。
【0063】
また、図6に示されているように、戸先側縦枠部材11の出入口2の側に向いている面11Aには、言い換えると、戸先側縦枠部材11の扉体1と対面する面11Aには、扉体1の閉じ側へ窪んだ凹部11Bが形成され、この凹部11Bの内部に、図1で説明した出入口2の外枠構造を構成する部材となっている沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側の先端が挿入され、扉体1の開閉移動方向の長さを有しているこの沓摺り部材15は、戸先側縦枠部材11から竪額縁部材13まで達している。このような沓摺り部材15により、全閉となった扉体1で区分けされる出入口2の両側の空間の床が仕切られているとともに、扉体1のゴムや軟質合成樹脂等で形成されている戸先部1Cが凹部11Bの底部に当たって扉体1が戸先側縦枠部材11に当接し、扉体1が全閉となることにより、この全閉時における扉体1と戸先側縦枠部材11との間の密閉性が確保されるようになっている。
【0064】
また、戸袋3に下端に配置されている図1で説明した下枠14は、図6に示されているように、戸袋3の厚さ寸法と同じ又は略同じとなっている扉体厚さ方向の幅寸法を有する本体部14Aと、この本体部14Aから戸先側縦枠部材11の側へ突出し、本体部14Aよりも小さい扉体厚さ方向の幅寸法を有する突出部14Bとからなり、本体部14Aの扉体厚さ方向中心位置と突出部14Bの扉体厚さ方向中心位置は、一致している。突出部14Bの先部の上面には、図1及び図3で示されている前述のガイドローラ57を床4に設置するためのベース部材57Aが配置され、図3にも示されているように、突出部14Bの先部の上面に止着具57Bで取り付けられたベース部材57Aには、支柱57Cが立設されており、この支柱57Cの上部にガイドローラ57が水平回転自在に配置されている。
【0065】
ベース部材57Aの扉体厚さ方向の幅寸法は、突出部14Bの扉体厚さ方向の幅寸法と同じであり、突出部14Bの扉体厚さ方向両側の端縁とベース部材57Aの扉体厚さ方向両側の端縁とが一致して、突出部14Bの先部の上面にベース部材57Aが載せられて、このベース部材57Aは突出部14Bに止着具57Bで取り付けられている。
【0066】
また、図3に示されているように、本実施形態に係る沓摺り部材15は、開口側が下向きとなった断面チャンネル形状の部材となっており、板金の折り曲げ品となっているこの沓摺り部材15の扉体厚さ方向の幅寸法はW1となっており、この幅寸法W1は、図6に示されているように、扉体1の開閉移動方向である沓摺り部材15の全長に渡って連続している。
【0067】
一方、図6に示されているように、戸先側縦枠部材11の凹部11Bについての扉体厚さ方向の幅寸法はW2であり、W1はW2よりも小さい。そして、全閉位置に達しているときの扉体1の扉体厚さ方向の中心位置はC1であり、これに対して沓摺り部材15の扉体厚さ方向の中心位置はC2であり、C1に対してC2は扉体1の厚さ方向にずれている。
【0068】
本実施形態では、沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側の先部15Bの扉体厚さ方向における一方の側面15Cが、戸先側縦枠部材11の凹部11Bの扉体厚さ方向における一方の側面11Cに当接しているとともに、沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側とは反対側の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eが、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14Cに当接しており、また、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eは、ベース部材57Aの扉体厚さ方向における一方の側面57Dにも当接している。さらに、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における他方の側面15Fは、出入口2を開いたときの扉体1が収納される戸袋3の出入口2側の見切り部材となっている竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aに当接している。沓摺り部材15の後部15Dの両方の側面15E,15Fについての当接状態は、図3にも示されている。
【0069】
図3に示されているように、出入口2での床4は、床スラブによるベース部4Aの上に、モルタルの打設で形成された仕上げ部4Bを設けたものとなっている。沓摺り部材15を戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13との間に配置する作業を行う場合には、この配置作業を行う前に、沓摺り部材15の配置場所及びこの配置場所の近辺を除いた領域にモルタルの打設作業を行い、この後に、沓摺り部材15を上述した当接状態にして図3及び図6で示す所定の位置に配置する作業を行い、次いで、残りのモルタルを沓摺り部材15に接触する位置まで打設する作業を行う。
【0070】
これにより、沓摺り部材15は、沓摺り部材15で区分けされる扉体厚さ方向両側のモルタルの見切り部材となる。
【0071】
なお、以上の沓摺り部材15の配置作業は、扉体1を前述したガイドレール50に吊り下げる作業を行う前に行われるが、この沓摺り部材15の配置作業は、下枠14の突出部14Bの先部の上面に、ガイドローラ57のベース部材57Aを配置する前に行ってもよく、配置した後に行ってもよい。
【0072】
図7は、沓摺り部材15の配置作業を、下枠14の突出部14Bの先部の上面に、ガイドローラ57のベース部材57Aを配置する前に行う場合を示している。すなわち、沓摺り部材15を戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13との間に配置するときには、戸先側縦枠部材11の凹部11Bの内部に沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側の先端を挿入するとともに、この沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側の先部15Bの扉体厚さ方向における一方の側面15Cを、戸先側縦枠部材11の凹部11Bの扉体厚さ方向における一方の側面11Cに当接させるとともに、沓摺り部材15における戸先側縦枠部材11の側とは反対側の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eを、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14Cに当接させ、また、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における他方の側面15Fを、竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aに当接させる。
【0073】
これによると、沓摺り部材15の配置作業を、凹部11Bの側面11Cと、下枠14の突出部14Bの側面14C及び竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aとを位置決め基準面にして、位置決めしながら行うことができ、このため、沓摺り部材15の先端を戸先側縦枠部材11の凹部11Bに挿入する作業や、沓摺り部材15を戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13との間に配置する作業を、作業の正確性向上や作業の容易化を達成して行うことができる。
【0074】
以上の作業の後、図8に示すように、下枠14の突出部14Bの先部の上面にガイドローラ57のベース部材57Aを配置する作業を行う。
【0075】
なお、下枠14の突出部14Bの先部の上面にガイドローラ57のベース部材57Aを配置する作業を行った後に、沓摺り部材15の先端を戸先側縦枠部材11の凹部11Bに挿入する作業や、沓摺り部材15を戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13との間に配置する作業を行ってもよい。この場合には、図8に示されているように、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eを、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14Cと、ベース部材57Aの扉体厚さ方向における一方の側面57Dとの両方に当接させる。
【0076】
本実施形態では、沓摺り部材15の前述した幅寸法W1は、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14C及びベース部材57Aの扉体厚さ方向における一方の側面57Dと、竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aとの間の間隔と同じであったため、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eを、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14Cと、ベース部材57Aの扉体厚さ方向における一方の側面57Dとの両方に当接させ、かつ、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における他方の側面15Fを、竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aに当接させたが、沓摺り部材15の前述した幅寸法W1が、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14C及びベース部材57Aの扉体厚さ方向における一方の側面57Dと、竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aとの間の間隔よりも小さい場合には、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eを、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14Cと、ベース部材57Aの扉体厚さ方向における一方の側面57Dとの両方に当接させることと、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における他方の側面15Fを、竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aに当接させることとのうち、一方だけを実施してもよい。
【0077】
また、沓摺り部材15の先端を戸先側縦枠部材11の凹部11Bに挿入する作業や、沓摺り部材15を戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13との間に配置する作業が、下枠14の突出部14Bの先部の上面にガイドローラ57のベース部材57Aを配置する作業を行う前に行われる場合には、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eを、下枠14の突出部14Bの扉体厚さ方向における一方の側面14Cに当接させることと、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における他方の側面15Fを、竪額縁部材13の戸袋内側の内面13Aに当接させることとのうち、一方だけを実施させてもよい。
【0078】
さらに、沓摺り部材15の先端を戸先側縦枠部材11の凹部11Bに挿入する作業や、沓摺り部材15を戸先側縦枠部材11と竪額縁部材13との間に配置する作業が、下枠14の突出部14Bの先部の上面にガイドローラ57のベース部材57Aを配置する作業を行った後に行われる場合であって、ベース部材57Aの扉体厚さ方向の幅寸法が突出部14Bの扉体厚さ方向の幅寸法と同じになっておらず、これらの幅寸法に相違があるために、ベース部材57Aと突出部14Bのうちの一方が沓摺り部材15の配置側に突出している場合には、沓摺り部材15の後部15Dの扉体厚さ方向における一方の側面15Eを、ベース部材57Aと突出部14Bのうち、沓摺り部材15の配置側に突出している一方の側面に当接させてもよい。
【0079】
以上説明した本実施形態によると、沓摺り部材15の扉体厚さ方向の幅寸法W1が、戸先側縦枠部材11の扉体1と対面する面11Aに形成されている凹部11Bの扉体厚さ方向の幅寸法W2よりも小さくなっているため、W1がW2と同じになっている場合と比較して、板金の折り曲げ品となっている沓摺り部材15を面積が小さい板金により生産できるようになり、したがって、沓摺り部材15の製造コストを低減できるようになる。
【0080】
また、沓摺り部材15の扉体厚さ方向の中心位置C2と、全閉となったときの扉体1の扉体厚さ方向の中心位置C1とがずれているため、沓摺り部材15の扉体厚さ方向の少なくとも一部が、全閉時や半閉時における扉体1から扉体厚さ方向にはみ出した状態になっており、このため、扉体1が全閉や半閉となっているときでも、沓摺り部材15及び沓摺り部材関連部材に関するメンテナンス作業等の各種作業を行えることになり、作業性を向上させることができる。
【0081】
さらに、ガイドローラ57のベース部材57Aは、沓摺り部材15の上面に取り付けられておらず、下枠14の突出部14Bに取り付けられているため、沓摺り部材15の交換作業やメンテナンス作業を、ガイドローラ57及びベース部材57Aと無関係に行えることになり、この点でも作業性を向上させることができる。
【0082】
図9は、全閉時の扉体1と沓摺り部材15との間の密閉性を確保することができる実施形態を示している。この実施形態では、扉体1の下面のうち、沓摺り部材15と上下に対面する箇所にモヘヤ等による密閉部材1Dが取り付けられ、この密閉部材1Dは、扉体1の全長に渡って設けられている。扉体1が全閉位置に達すると、密閉部材1Dは沓摺り部材15の上面に接触し、これにより、全閉時における扉体1と沓摺り部材15との間の密閉性が確保されることになる。
【0083】
図10〜図13は、戸先側縦枠部材11と前述の上枠部材10との合理的な結合構造を実現するための実施形態を示しており、図10は、戸先側縦枠部材11の上部と結合される上枠部材10の扉体閉じ側の端部を示す側面図であり、図11は、図10のS11矢視図であって、上枠部材10の扉体閉じ側の端部を示す正面図であり、図12は、図10のS12矢視図であって、上枠部材10の扉体閉じ側の端部を示す底面図である。また、図13は、戸先側縦枠部材11の上部と上枠部材10の扉体閉じ側の端部とを結合したときにおける上枠部材10の扉体閉じ側の端部を示す底面図である。
【0084】
図10に示されているように、上枠部材10の内部にはブラケット100が配置され、このブラケット100は、図3で示した上枠部材10の垂下部10Bに溶接等で結合されたベース部100Aと、このベース部100Aから直角に屈曲し、上枠部材10の下方延出部10F及び傾斜延出部10Gの側へ延出した延出部100BとからなるL字形状である。この延出部100Bはベース部100Aを越えて下方へ延びる上下長さを有しており、このため、延出部100Bと上枠部材10の垂下部10Bとの間には、上向きに切り込まれた切込部101が形成されている。
【0085】
図11及び図12に示されているように、上枠部材10の垂下部10Bと壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eの扉体閉じ側の端縁10Jは、上枠部材10の上面部10Aと下方延出部10Fと傾斜延出部10Gの扉体閉じ側の端縁10Iに対して扉体開き側へ後退しており、端縁10Jと同じ扉体開閉移動方向の位置において、下方延出部10F及び傾斜延出部10Gには、上面部10Aまで達する切込部102が形成されている。また、ブラケット100の延出部100Bは、端縁10J及び切込部102の位置を扉体閉じ側へ越えて端縁10Iに近づいた位置に配置されている。
【0086】
図13に示されているように、戸先側縦枠部材11の前述した凹部11Bは、ブラケット100の延出部100Bの扉体閉じ側の外面100Cにあてがわれ、戸先側縦枠部材11における凹部11B及びこの凹部11Bから切込部102に対応する位置までは、上枠部材10の上面部10Aの下面に当接しているが、戸先側縦枠部材11における切込部102に対応する位置から戸先側縦枠部材11における一方の端部11Dまでは、切込部102への差し込みにより、上枠部材10の上面部10Aの上面と同じ高さ位置に達している。また、戸先側縦枠部材11における凹部11Bからブラケット100のベース部100Aに対応する位置までは、切込部101に差し込まれることにより、この切込部101の上端まで達しており、戸先側縦枠部材11におけるブラケット100のベース部100Aに対応する位置から戸先側縦枠部材11における他方の端部11Eまでは、切込部101への差し込みにより、上枠部材10の上面部10Aの上面と同じ高さ位置に達している。
【0087】
以上を言い換えると、戸先側縦枠部材11の上端は段付き形状となっており、これにより、戸先側縦枠部材11の上端には、上枠部材10の上面部10Aの上面と同じ高さ位置に達している部分と、上枠部材10の上面部10Aの下面に当接している部分と、切込部101の上端に当接している部分とがある。
【0088】
戸先側縦枠部材11の前述した凹部11Bは、ブラケット100の延出部100Bの扉体閉じ側の外面100Cに溶接又はボルト、ナット等の結合具で結合され、これにより、戸先側縦枠部材11の上部と上枠部材10の扉体閉じ側の端部とがブラケット100を介して結合されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、扉体で開閉される出入口等の開口部の下端に沓摺り部材が配置され、扉体が、例えば、ガイド手段から吊り下げられた上吊り式となっている引戸装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 扉体
1C 戸先部
2 開口部である出入口
3 戸袋
4 床
11 戸先側縦枠部材
11A 戸先側縦枠部材の扉体と対面する面
11B 凹部
11C 側面
13 竪額縁部材
13A 戸袋内側の内面
14 下枠
14A 本体部
14B 突出部
14C 側面
15 沓摺り部材
15B 先部
15C 側面
15D 後部
15E,15F 側面
W1 沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法
W2 凹部の扉体厚さ方向の幅寸法
C1 全閉となったときの扉体の扉体厚さ方向の中心位置
C2 沓摺り部材の扉体厚さ方向の中心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体で開閉される開口部の外枠構造が、全閉となった前記扉体の戸先部が当たる戸先側縦枠部材と、前記開口部の下端の床に配置され、前記扉体の開閉移動方向の長さを有する沓摺り部材とを含んで構成され、前記戸先側縦枠の前記扉体と対面する面に、前記扉体の閉じ側へ窪んだ凹部が形成されているとともに、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側の先端が前記凹部に挿入されている引戸装置において、
前記沓摺り部材の扉体厚さ方向の幅寸法が、前記凹部の扉体厚さ方向の幅寸法よりも小さくなっていることを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の引戸装置において、前記沓摺り部材の扉体厚さ方向の中心位置と、全閉となったときの前記扉体の扉体厚さ方向の中心位置とがずれていることを特徴とする引戸装置。
【請求項3】
請求項2に記載の引戸装置において、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側の先部の扉体厚さ方向における一方の側面が、前記凹部の扉体厚さ方向における一方の側面に当接していることを特徴とする引戸装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の引戸装置において、前記床には、前記扉体の開閉移動を案内するためのガイドローラが配設されているベース部材が設置され、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面が、前記ベース部材の扉体厚さ方向における一方の側面に当接していることを特徴とする引戸装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の引戸装置において、前記開口部よりも扉体開き側には、この開口部を開いたときの前記扉体が収納される戸袋が設けられているとともに、この戸袋の下端に下枠が配設され、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面が、前記下枠の扉体厚さ方向における一方の側面に当接していることを特徴とする引戸装置。
【請求項6】
請求項5に記載の引戸装置において、前記下枠は、前記戸袋の厚さ寸法と同じ又は略同じとなっている扉体厚さ方向の幅寸法を有する本体部と、この本体部から前記戸先側縦枠部材の側へ突出し、前記本体部よりも小さい扉体厚さ方向の幅寸法を有する突出部とを備えており、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面は、前記突出部の扉体厚さ方向における一方の側面に当接していることを特徴とする引戸装置。
【請求項7】
請求項6に記載の引戸装置において、前記突出部の上面には、前記扉体の開閉移動を案内するためのガイドローラが配設されたベース部材が取り付けられていることを特徴とする引戸装置。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の引戸装置において、前記開口部よりも扉体開き側には、この開口部を開いたときの前記扉体が収納される戸袋が設けられているとともに、この戸袋の前記開口部の側の端部には竪額縁部材が取り付けられ、前記沓摺り部材における前記戸先側縦枠部材の側とは反対側の後部の扉体厚さ方向における一方の側面が、前記竪額縁部材の戸袋内側の内面に当接していることを特徴とする引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−2093(P2013−2093A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132816(P2011−132816)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】