説明

強制発泡型有機物混合液処理装置と処理方法

【課題】 異常発泡による装置の運転停止等がなく安定した連続運転を可能とし、高濃度の混合液であっても希釈することなく処理することができ、長期間腐敗しない安定した、再利用が可能で二次公害もない処理液を作り出す強制発泡型有機物混合液処理装置と処理方法を提供する。
【解決手段】 密封構造の発泡タンク(1)の天井部に液投入口(29)と混合液供給弁(30)を設け、発泡タンク(1)の底部より泡発生器(13)、泡液混練器(15)、循環ポンプ(16)を直列に接続し天井部液投入口(29)へと連結する。また、発泡タンク(1)の下部にばっ気管(7)とばっ気ブロワ(6)を設置し、発泡タンク(1)の上部と密封構造の泡受タンク(10)の上部を泡液分離器(8)で連結し、泡受タンク(10)の底部から泡供給弁(14)を介して泡液混練器(15)に接続して泡受タンク(10)の天井部に排気ファン(19)を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畜産廃液や生活・産業廃液及びその他の有機物混合液を、微生物を利用して短時間に再利用可能な処理液にする有機物混合液の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの家畜の糞尿液や人間の生活廃水及び産業分野での有機物を含んだ廃水等有機物混合液の処理方法としては、大きく分けて物理化学的処理方法と生物処理方法とがある。
【0003】
この二つの処理方法のうち、生物処理方法は好気性処理(活性汚泥法、生物膜法、酸化池法)、嫌気性処理(嫌気性消化法、嫌気性ラグーン法)、特定微生物による処理等があり、いずれの方法も微生物の代謝反応を利用して主として有機物を除くために利用され、中でも特に処理後の残渣物による二次公害が少ないとされ、処理効率が高いと言われる活性汚泥法が最も普及してきた。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらは以下のような欠点があった。
イ.沈殿槽やばっ気槽等各槽の水質や生物相がしばしば不安定になり、処理性能の維持管理が非常に難しかった。
ロ.処理過程において時折異常発泡を引き起こすので連続運転を妨げられ、場合によっては処理プラントの運転を停止しなければならなかった。
ハ.高濃度の混濁水は予め希釈処理しなければならないので膨大な面積の処理槽が必要で、処理時間も長くかかった。
ニ.汚泥等残渣物発生量も多く、そのあと処理は焼却や海洋投棄等捨てるために莫大な費用がかかり、しかもそれは二次公害を引き起こす場合もあった。
ホ.近年処理水及び汚泥等残渣物の有効利用も研究されてはいるが、処理後も悪臭を放ちそのまま放置すれば短時間のうちに腐敗等変質し、他用途への再利用もできない状態であった。
本発明は、これらの欠点を解決するために発明されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
密封構造の発泡タンク(1)の天井部に液投入口(29)と混合液供給弁(30)を設け、発泡タンク(1)の底部より二方向へ分岐し、一方は処理液取出弁(26)へ、もう一方は泡発生器(13)、泡液混練器(15)、循環ポンプ(16)を直列に接続し天井部液投入口(29)へと連結する。また、発泡タンク(1)の下部にばっ気管(7)とばっ気ブロワ(6)を設置する。
【0006】
そして、発泡タンク(1)の上部と密封構造の泡受タンク(10)の上部を泡液分離器(8)で連結し、泡受タンク(10)の底部から泡供給弁(14)を介して泡液混練器(15)に接続する。また、泡受タンク(10)の天井部に排気ファン(19)を連結する。
本発明は以上の構成よりなる、強制発泡型有機物混合液処理装置である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(イ)強固で密封構造の発泡タンク(1)の天井部に液投入口(29)を設け、その上位側に混合液供給弁(30)を取り付ける。
(ロ)発泡タンク(1)の底部より水平二方向へ分岐し、一方は処理液取出弁(26)を設け処理液の取り出し口とし、もう一方は泡発生器(13)と液と泡を混練する泡液混練器(15)及び泡液混合液を循環させる循環ポンプ(16)を直列に接続して、発泡タンク(1)の天井部の液投入口(29)と混合液供給弁(30)の間に連結する。
(ハ)発泡タンク(1)の下部にばっ気管(7)を挿入し、ばっ気ブロワは発泡タンク(1)より高位置に設置する。
(ニ)発泡タンク(1)の上部と密封構造の泡受タンク(10)の上部を適当な角度で山型に屈折した泡液分離器(8)で連結する。
(ホ)泡受タンク(10)の底部から泡供給弁(14)を介して泡液混練器(15)へと接続する。
(ヘ)泡受タンク(10)の天井部より排気ファン(19)を連結する。
本発明は以上のような構成よりなっている。
【0008】
本発明を使用するときは、最初混合液供給弁(30)を全開し発泡タンク(1)にタンク容量に対して70%〜80%程度の混合液(4)を投入し、その後混合液供給弁(30)は全閉とする。(本願実施例では発泡タンク(1)の外形寸法は直径0.6m×高さ1.7mの円筒形のタンクを製作し、内容量約0.15mなので混合液1回の処理量は約0.1mである。)
【0009】
この時処理液取出弁(26)、泡供給弁(14)は全閉位置で、ばっ気ブロワ(6)、排気ファン(19)、循環ポンプ(16)は停止している。その後ばっ気ブロワ(6)と排気ファン(19)が起動するが、発泡タンク(1)及び泡受タンク(10)の内圧が負圧になるようそれぞれの能力(本願実施例ではそれぞれの回転数)を調節する。
【0010】
次に循環ポンプ(16)が起動し発泡タンク(1)内の有機物混合液(4)は発泡タンク(1)の底部から泡発生器(13)、泡液混練器(15)を通って循環ポンプ(16)によって液投入口(29)を介し発泡タンク(1)内に戻される。
【0011】
ここで気泡発生(有害ガス除去)方法について詳しく説明する。
今、上記のように有機物混合液(4)が流れているとき、図2において泡発生器(13)内のバルブ(32)の開口部断面積が配管(22)の断面積よりも小さくなる方向にθだけ動いたとする。この時S1は流入側配管(22)の断面積、P1は流入側配管(22)内の圧力、V1は流入側配管(22)内の液の流速、S2は泡発生器(13)の開口部断面積、P2は泡発生器(13)内の圧力、V2は泡発生器(13)内の液の流速、S3は流出側配管(23)の断面積、P3は流出側配管(23)内の圧力、V3は流出側配管(23)内の液の流速、ρは液の密度、gは重力加速度、hは高さとすれば流体連続の法則より
ρ・S1・V1=ρ・S2・V2=ρ・S3・V3となりρは一定なのでS1・V1=S2・V2=S3・V3となる。
【0012】
この時S1>S2なのでV1<V2 ・・・・・・・・・式(1)
となりベルヌーイの定理より
P1+1/2・ρ・V1+ρ・g・h=P2+1/2・ρV2+ρ・g・hとなる。高さは水平方向なので同じとしてこの式を整理すれば
P1−P2=1/2・ρ・(V2−V1
式(1)よりV2−V1>0となるのでP1−P2>0でP1>P2となる。
【0013】
従って、泡発生器(13)の中の圧力は下がることがわかり、液の流速Vと断面積Sの関係即ち泡発生器(13)内のバルブ(32)の作動量θを適当な位置に調整すれば(本願実施例ではS2=1/2・S1になる位置)、液の中に溶け込んでいる有害ガスを気泡(31)化することができ、それは循環ポンプ(16)によって発泡タンク(1)へ運ばれ、更に泡液分離器(8)を通って泡受タンク(10)に運ばれた後排気ファン(19)によって外部へ排気される。
【0014】
次に泡液分離について詳しく説明する。
ばっ気ブロワ(6)を起動するとばっ気管(7)から空気の泡(5)が出てばっ気を始める。この時有機物混合液(4)はたんぱく質等有機物を含むコロイド溶液となっており、前記循環ポンプ(16)による液投入口(29)からの混合液のシャワー(2)により叩かれ、ばっ気による空気の泡(5)及び泡発生器(13)による泡はかなり潰されるが、ばっ気により発生した空気の泡は消滅しにくく時間の経過とともに泡は微細化され、更に潰れにくくなり大きな泡と小さな泡が混在した泡(3)になって徐々に発泡タンク(1)の上部に溜まってゆく。
【0015】
やがて泡(3)は発泡タンク(1)の上部一杯になり泡液分離器(8)を通って泡受タンク(10)へと押し出される。この時図4のように泡液分離器(8)を適当な角度(本願実施例では90度)で山型に屈折してやることにより泡(3)は泡液分離器(8)上側を押されて移動するが、泡(3)に付着した液(28)は泡液分離器(8)の下側斜面に沿って戻ってくる。これにより泡(11)だけが泡受タンク(10)に、液(28)は発泡タンク(1)に分離される。
【0016】
つづいて泡液混練について詳しく説明する。
S3、P3、V3は前出配管(23)の記号であり、S4は泡液混練器(15)の断面積、P4は泡液混練器(15)内の圧力、V4は泡液混練器(15)内の液の流速、S5は流出側配管(24)の断面積、P5は流出側配管(24)内の圧力、V5は流出側配管(24)内の液の流速とすれば、本願実施例でS3>S4となっているので前記泡発生器(13)の項で説明したのと同様に、流体連続の法則及びベルヌーイの定理によりP3>P4となり、流出側配管(24)内圧力P5は循環ポンプ(16)によって常に吸引されているのでP4≧P5となっている。
【0017】
今、泡供給弁(14)が開になるとベンチュリー管の原理により、図4のように泡受タンク(10)側の配管(25)内の泡(11)は泡液混練器(15)内を流れる液に吸引され、渦流に練り込まれながら液循環のプロセスへと組み込まれ、大きな泡は潰され微細な泡となって液の中に溶け込んでゆく。この時点での泡は前出ばっ気でできた空気の泡がほとんどなので効率良く溶存酸素量を高められる。
【0018】
上述これら一連の動作を連続的に繰り返し行うことによって、悪臭成分や微生物代謝物等微生物増殖阻害物質などの混合液の中に溶け込んだ有害ガスが、極めて短時間(本願実施例で4〜5時間)で排気できた。
【0019】
また、泡受タンク(10)に溜まった泡(所謂コロイド溶液のような粘性を持った液体中で発生した泡)には微生物の増殖に必要な有機物養分が付着しており、それを繰り返し循環供給することにより微生物の培地を連続供給して、培地面積の増大化(泡の微細化で表面積の増大化)を行っていることになり、好気性、嫌気性、通性嫌気性等複合微生物の対数増殖を極めて短時間で可能にした。
【0020】
(本願実施例では酸化還元電位−400mVが4〜5時間で±0mV、12〜15時間で+50mV、30〜48時間で+100mV程度になった。また、菌密度は培養レベルで最終3×1011になった。)
【発明の効果】
【0021】
本発明を使用することにより強制的な発泡を継続し、積極的に泡を循環することで異常発泡による運転停止等の問題がなく安定した連続運転ができ、混合液中に溶け込んだ有害ガスを極めて短時間で効率良く排気し、極めて短時間で微生物の対数増殖域に移行させることができるので、高濃度の混合液であっても希釈することなく原液のまま処理することができ、長期間腐敗しない安定した処理液を作り出し、処理過程で薬品も使用しないため有機質肥料等としての再利用も可能で、二次公害も防ぐことができるという画期的な効果がもたらされた。なお、本願実施例はあくまでも一実施例であり、本実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による強制発泡型有機物混合液処理装置の一実施例図である。
【図2】本発明を説明するための泡発生器の断面図である。
【図3】本発明を説明するための泡液混練器の断面図である。
【図4】本発明を説明するための泡液分離器の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
(1) 発泡タンク
(2) 有機物混合液シャワー
(3) 大小混在泡
(4) 有機物混合液
(5) ばっ気泡
(6) ばっ気ブロワ
(7) ばっ気管
(8) 泡液分離器
(10) 泡受タンク
(11) 分離後泡
(13) 泡発生器
(14) 泡供給弁
(15) 泡液混練器
(16) 循環ポンプ
(19) 排気ファン
(22) 配管
(23) 配管
(24) 配管
(25) 配管
(26) 処理液取出弁
(28) 付着液
(29) 液投入口
(30) 混合液供給弁
(31) 気泡
(32) バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封構造の発泡タンクと密封構造の泡受タンクを泡と液を分離する手段で連結し、該タンク内を排気する手段とばっ気する手段を備え、液に溶解したガスを気泡化する手段と泡と液を混練する手段、及び該混合液を循環する手段並びにそれらを制御する手段を備えたことを特徴とする強制発泡型有機物混合液処理装置。
【請求項2】
前記循環処理の中に該気泡化処理と該泡液分離処理した該泡を該泡液混練処理することを組み込み、該排気しながら同時に該ばっ気することを組み合わせてなる、特許請求項1に基づく強制発泡型有機物混合液処理装置を用いた有機物混合液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−247132(P2010−247132A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113039(P2009−113039)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(595113923)
【出願人】(509126933)
【出願人】(509126944)
【Fターム(参考)】