説明

強化シリコーン樹脂フィルムおよびその調製方法

強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法であって、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物およびカーボンナノ材料を含むナノ材料充填シリコーン組成物中に繊維強化材を含浸する工程と、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程とを含む方法、ならびにこの方法に従って調製した強化シリコーン樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし。
【0002】
本発明は、強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法に関し、より具体的にはヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物およびカーボンナノ材料を含むナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程と、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程とを含む方法に関する。本発明は、この方法に従って調製される強化シリコーン樹脂フィルムにも関する。
【背景技術】
【0003】
シリコーン樹脂は、高い熱安定性、良好な耐湿性、優れた柔軟性、高い耐酸化性、低い誘電率および高い透明性を含めた、特性のそれらのユニークな組合せによって、様々な応用に有用である。例えば、シリコーン樹脂は、自動車、電子機器、建築、電化製品および航空宇宙産業において、保護または誘電コーティングとして広く使われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコーン樹脂コーティングは様々な基材を保護するか、絶縁するかまたは結合するために使用することができるが、自立型のシリコーン樹脂フィルムは低い引裂強度、高い脆さ、低いガラス転移温度および高い熱膨張係数のため限られた有用性を有する。従って、改善された機械的特性および熱特性を有する自立型のシリコーン樹脂フィルムについてのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法であって、
ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程であって、このナノ材料充填シリコーン組成物は、
1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物と、
カーボンナノ材料と
を含む工程と、
含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程と
を含む方法に関する。
【0006】
本発明はまた、上述した方法に従って調製される強化シリコーン樹脂フィルムにも関する。
【0007】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、カーボンナノ材料が存在しない同じシリコーン組成物から調製したシリコーン樹脂フィルムと比較して、低い熱膨張係数、高い引張強さ、熱的に誘発されたひび割れに対する高い抵抗性を有する。
【0008】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、高い熱安定性、柔軟性、機械的強度および透明性を有するフィルムを必要としている応用に有用である。例えば、このシリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、フレキシブル電子回路基板、タッチスクリーン、耐火性壁紙および衝撃耐性ウインドウの一体的要素として使用することが可能である。このフィルムは、透明または不透明な電極のための適切な基材でもある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願明細書で使用する場合、用語「脂肪族不飽和を含まない」は、ヒドロカルビルまたはハロゲン置換されたヒドロカルビル基が脂肪族の炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含まないことを意味する。また、用語「シリコーン樹脂中の基Rの…mol%は、アルケニルである」は、シリコーン樹脂中の基Rの総モル数に対する、その樹脂中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の比率を100倍したものと定義される。さらに、用語「オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の基Rの…mol%は、有機シリルアルキルである」は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の基Rの総モル数に対するその樹脂中のケイ素に結合した有機シリルアルキル基のモル数の比率を100倍したものと定義される。なおさらに、用語「シリコーン樹脂中の基Rの…mol%は水素である」は、シリコーン樹脂中の基Rのモルの総数に対するその樹脂中のケイ素に結合した水素原子のモル数の比率を100倍したものと定義される。
【0010】
本発明に係るシリコーン樹脂フィルムを調製する方法は、
ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程であって、このナノ材料充填シリコーン組成物は、
1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物と、
カーボンナノ材料と
を含む工程と、
含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂を硬化させる工程と
を含む。
【0011】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法の第1の工程では、繊維強化材は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を含む縮合硬化性シリコーン組成物およびカーボンナノ材料を含むナノ材料充填シリコーン組成物中で含浸される。
【0012】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を含むいかなるヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物であってもよい。典型的には、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、上述したシリコーン樹脂と、このシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物であって、1分子あたり平均少なくとも2つの、このシリコーン樹脂中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子と反応できるケイ素に結合した水素原子またはケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む。
【0013】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物のシリコーン樹脂は、典型的には、Mおよび/またはDシロキサン単位と組み合わせてT単位、TおよびQ単位またはTおよび/もしくはQシロキサン単位を含む共重合体である。さらにシリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5および第6の実施形態について後述する、ゴムで変性されたシリコーン樹脂であってよい。
【0014】
第1の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただしこのシリコーン樹脂は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する)と、(B)上記シリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む。
【0015】
成分(A)は、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有する少なくとも1つのシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただしこのシリコーン樹脂は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する)である。
【0016】
により表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、脂肪族不飽和を含まず、典型的には1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子を有する。少なくとも3つの炭素原子を含む非環状ヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、分枝状または非分枝状の構造を有することができる。Rにより表されるヒドロカルビル基の例としては、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシル)、シクロアルキル(例えばシクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシル)、アリール(例えばフェニルおよびナフチル)、アルカリール(例えばトリルおよびキシリル)、ならびにアラルキル(例えばベンジルおよびフェネチル)が挙げられるが、これらに限定されない。Rにより表されるハロゲン置換されたヒドロカルビル基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルおよび2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
により表されるアルケニル基(同じであってもよいし、異なっていてもよい)は、典型的には、2〜約10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子を有し、例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニルおよびオクテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
上記シリコーン樹脂の式(I)において、添え字w、x、yおよびzは、モル分率である。添え字wは、典型的には0〜0.95、あるいは0.02〜0.75、あるいは0.05〜0.3の値を有し、添え字xは典型的には0〜0.95、あるいは0〜0.7、あるいは0〜0.25の値を有し、添え字yは、典型的には0〜1、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8の値を有し、添え字zは、典型的には0〜0.95、あるいは0〜0.7、あるいは0〜0.15の値を有する。また、和y+zは、典型的には0.05〜1、あるいは0.5〜0.95、あるいは0.65〜0.9である。さらに、和w+xは、典型的には0〜0.95、あるいは0.05〜0.5、あるいは0.1〜0.35である。
【0019】
典型的には、上記シリコーン樹脂中の基Rの少なくとも50mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも80mol%は、アルケニルである。
【0020】
シリコーン樹脂は、典型的には、500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(M)を有し、ここでこの分子量は、小角レーザー光散乱検出器、または屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標品を用いるゲル透過クロマトグラフィにより測定されるものである。
【0021】
25℃での上記シリコーン樹脂の粘度は、典型的には0.01〜100,000Pa・s、あるいは0.1〜10,000Pa・s、あるいは1〜100Pa・sである。
【0022】
シリコーン樹脂は、29Si NMRによって測定する場合、典型的には10%未満(重量/重量)、あるいは5%(重量/重量)未満、あるいは2%(重量/重量)未満のケイ素に結合したヒドロキシ基を含む。
【0023】
上記シリコーン樹脂は、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わせて、RSiO3/2単位(すなわちT単位)、RSiO3/2単位(すなわちT単位)およびSiO4/2単位(すなわちQ単位)、またはRSiO3/2単位(すなわちT単位)および/もしくはSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含み、RおよびRは上に記載され例示されたとおりである。例えば、シリコーン樹脂は、T樹脂、TQ樹脂、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MQ樹脂、DQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、DTQ樹脂またはMDTQ樹脂であり得る。
【0024】
上記シリコーン樹脂の例としては、以下の式を有する樹脂が挙げられるが、これらに限定されない:
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(ViMeSiO1/20.25(MeSiO3/20.25(PhSiO3/20.50、(ViMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.1、および(ViMeSiO1/20.15(ViMeSiO1/20.1(PhSiO3/20.75(式中、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルであり、かつ括弧の外側の数の添え字はモル分率を意味する)。また、前述の式では、単位の配列は特定されない。
【0025】
成分(A)は、単一のシリコーン樹脂、または2つ以上の異なるシリコーン樹脂(各々は上記のとおり)を含む混合物であってもよい。
【0026】
シリコーン樹脂を調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの樹脂の多くは市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、有機溶媒(例えばトルエン)中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を同時加水分解することによって調製される。例えば、本質的にRSiO1/2単位およびRSiO3/2単位からなるシリコーン樹脂は式RSiClを有する化合物および式RSiClを有する化合物をトルエン中で同時加水分解することにより調製することができる(式中、RおよびRは、上で定義され例示されたとおりである)。塩酸およびシリコーン加水分解物は分離され、この加水分解物は残留する酸を除去するために水で洗浄され、穏やかな縮合触媒の存在下で加熱され、樹脂は必要な粘度まで「増粘される(body)」。必要に応じて、樹脂は、ケイ素に結合したヒドロキシ基の含量を減らすために、有機溶媒中で縮合触媒でさらに処理することができる。あるいはクロロ以外の加水分解性基(−Br、−I、−OCH、−OC(O)CH、−N(CH、NHCOCH、および−SCHなど)を含むシランは、同時加水分解反応の出発物質として利用できる。樹脂生成物の特性は、シランの種類、シランのモル比、縮合度および処理条件に依存する。
【0027】
成分(B)は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物である。
【0028】
この有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子、あるいは1分子あたり少なくとも3つのケイ素に結合した水素原子を有する。成分(A)中の1分子あたりのアルケニル基の平均数および成分(B)中の1分子あたりのケイ素に結合した水素原子の平均数の合計が4より大きいときに、架橋が発生することは一般に理解される。
【0029】
この有機ケイ素化合物は、オルガノハイドロジェンシラン(organohydrogensilane)またはオルガノハイドロジェンシロキサン(organohydrogensiloxane)であってよい。オルガノハイドロジェンシランは、モノシラン、ジシラン、トリシランまたはポリシランであってよい。同様に、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサンまたはポリシロキサンであってよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖状、分枝状、環状、または樹脂状であってよい。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には、3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素に結合した水素原子は、末端位置、ペンダント位置、または末端位置およびペンダント位置の両方に存在してよい。
【0030】
オルガノハイドロジェンシランの例としては、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレンおよびポリ(メチルシリレン)メチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
オルガノハイドロジェンシランは、式HRSi−R−SiRHを有していてもよい(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10ハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらは両方とも脂肪族不飽和を含まず、かつRは以下から選択される式を有する脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビレン基である:
【化1】

(式中、gは1〜6である))。Rにより表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂について定義され例示されたとおりである。
【0032】
式HRSi−R−SiRH(式中、RおよびRは上で記載され例示されたとおりである)を有するオルガノハイドロジェンシランの例としては、以下の式を有するシランが含まれるが、これらに限定されない。
【化2】

【0033】
オルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、および本質的にHMeSiO1/2単位、MeSiO1/2単位およびSiO4/2単位からなる樹脂(式中、Meはメチルである)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
オルガノハイドロジェンシロキサンは、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(II)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂であってもよい(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらは両方とも脂肪族不飽和を含まず、RはRまたは少なくとも1つのケイ素に結合した水素原子を有する有機シリルアルキル基であり、wは0〜0.8であり、xは0〜0.6であり、yは0〜0.99であり、zは0〜0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.2〜0.99であり、かつw+xは0.01〜0.8であるが、ただし基Rの少なくとも50mol%は有機シリルアルキルである)。
【0035】
により表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基は、成分(A)のシリコーン樹脂について上に記載され例示されたとおりである。Rにより表される有機シリルアルキル基の例としては、以下の式を有する基が挙げられるが、これらに限定されない:
【化3】

(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、添え字nは2〜10までの値を有する)。
【0036】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂の式(II)において、添え字w、x、yおよびzは、モル分率である。添え字wは、典型的には0〜0.8、あるいは0.02〜0.75、あるいは0.05〜0.3の値を有し、添え字xは典型的には0〜0.6、あるいは0〜0.45、あるいは0〜0.25の値を有し、添え字yは典型的には0〜0.99、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8の値を有し、添え字zは典型的には0〜0.35、あるいは0〜0.25、あるいは0〜0.15の値を有する。また、和y+zは、典型的には0.2〜0.99、あるいは0.5〜0.95、あるいは0.65〜0.9である。さらに、和w+xは、典型的には0.01〜0.80、あるいは0.05〜0.5、あるいは0.1〜0.35である。
【0037】
典型的には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の基Rの少なくとも50mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも80mol%は、少なくとも1つのケイ素に結合した水素原子を有する有機シリルアルキル基である。
【0038】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、典型的には500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(M)を有し、この分子量は小角レーザー光散乱検出器または、屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標品を使用するゲル透過クロマトグラフィにより測定されるものである。
【0039】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、典型的には、29Si NMRによって測定する場合、10%未満(重量/重量)、あるいは5%(重量/重量)未満、あるいは2%(重量/重量)未満のケイ素に結合したヒドロキシ基を含む。
【0040】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わせて、RSiO3/2単位(すなわちT単位)および/またはSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含む(式中、RおよびRは上に記載して例示したとおりである)。例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂およびMTQ樹脂、およびMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂またはMDQ樹脂であってよい。
【0041】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂の例としては、以下の式を有する樹脂が挙げられるが、これらに限定されない:
((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.12(PhSiO3/20.88、((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(PhSiO3/20.83、((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.17(MeSiO3/20.17(PhSiO3/20.66、((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.15(PhSiO3/20.75(SiO4/20.10、および((HMeSiCSiMeCHCHMeSiO1/20.08(HMeSiCSiMeCHCH)MeSiO1/20.06(PhSiO3/20.86(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Cはパラ−フェニレン基を表し、かつ括弧の外側の数の添え字はモル分率を意味する)。また、前述の式では、単位の配列は特定されない。
【0042】
成分(B)は、単一の有機ケイ素化合物、または2つ以上の異なる有機ケイ素化合物(各々は上記のとおり)を含む混合物であってよい。例えば、成分(B)は、単一のオルガノハイドロジェンシラン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシランの混合物、単一のオルガノハイドロジェンシロキサン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物またはオルガノハイドロジェンシランおよびオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物であってよい。特に、成分(B)は、成分(B)の総重量に基づいて、少なくとも0.5%(重量/重量)、あるいは少なくとも50%(重量/重量)、あるいは少なくとも75%(重量/重量)の、式(II)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂、およびオルガノハイドロジェンシランおよび/またはオルガノハイドロジェンシロキサン(このオルガノハイドロジェンシロキサンはオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂とは異なる)を含む混合物であってよい。
【0043】
成分(B)の濃度は、成分(A)中のシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な濃度である。成分(B)の正確な量は、硬化の所望の程度に依存するが、それは成分(A)のアルケニル基のモル数に対する成分(B)中のケイ素に結合した水素原子のモル数の比率が増加するにつれて、一般に増加する。成分(B)の濃度は、典型的には、成分(A)のアルケニル基1モルあたり、0.4〜2モルのケイ素に結合した水素原子、あるいは0.8〜1.5モルのケイ素に結合した水素原子、あるいは0.9〜1.1モルのケイ素に結合した水素原子を提供するのに十分な濃度である。
【0044】
ケイ素に結合した水素原子を含む有機ケイ素化合物を調製する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、オルガノハイドロジェンシランは、グリニャール試薬とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応により調製することができる。特に、式HRSi−R−SiRHを有するオルガノハイドロジェンシランは、式Rを有するアリールジハロゲン化物をエーテル中でマグネシウムで処理して、対応するグリニャール試薬を生成し、次いでこのグリニャール試薬を式HRSiClを有するクロロシランで処理することにより調製することができる(式中、RおよびRは上で記載して例示したとおりである)。
【0045】
オルガノハイドロジェンシロキサンを調製する方法(例えば、有機ハロシランの加水分解および縮合)も、当該技術分野で周知である。
【0046】
加えて、式(II)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、(a)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2を有するシリコーン樹脂を、(b)1分子あたり平均2〜4つのケイ素に結合した水素原子を有しかつ1,000未満の分子量を有する有機ケイ素化合物と、(c)ヒドロシリル化触媒および、任意に、(d)有機溶媒の存在下で反応することにより調製することができる(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらは両方とも脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、wは0〜0.8であり、xは0〜0.6であり、yは0〜0.99であり、zは0〜0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.2〜0.99であり、かつw+xは0.01〜0.8であるが、ただしシリコーン樹脂(a)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、かつ(a)中のアルケニル基に対する(b)中のケイ素に結合した水素原子のモル比は1.5〜5である)。
【0047】
有機ケイ素化合物(b)は、1分子あたり平均2〜4つのケイ素に結合した水素原子を有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物である。あるいは、この有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均2〜3つのケイ素に結合した水素原子を有する。この有機ケイ素化合物は、典型的には1,000未満、あるいは750未満、あるいは500未満の分子量を有する。この有機ケイ素化合物中のケイ素に結合した有機基は、成分(A)のシリコーン樹脂の式のRについて上に記載され例示されているヒドロカルビルおよびハロゲン置換されたヒドロカルビル基(これらはともに脂肪族不飽和を含まない)から選択される。
【0048】
有機ケイ素化合物(b)は、オルガノハイドロジェンシランまたはオルガノハイドロジェンシロキサンであってよい。オルガノハイドロジェンシランは、モノシラン、ジシラン、トリシランまたはポリシランであってよい。同様に、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサンまたはポリシロキサンであってよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよいし、または環状であってもよい。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素に結合した水素原子は、末端位置、ペンダント位置、または末端位置およびペンダント位置の両方に存在してよい
【0049】
オルガノハイドロジェンシランの例としては、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼンおよび1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシランが挙げられるが、これらに限定されない。オルガノハイドロジェンシランは、式HRSi−R−SiRHを有することもできる(式中、RおよびRは上に記載され例示されたとおりである)。
【0050】
オルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランおよび1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
有機ケイ素化合物(b)は、単一の有機ケイ素化合物、または2つ以上の異なる有機ケイ素化合物(各々は上記の通り)を含む混合物であってよい。例えば、成分(B)は、単一のオルガノハイドロジェンシラン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシランの混合物、単一のオルガノハイドロジェンシロキサン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物またはオルガノハイドロジェンシランおよびオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物であってよい。
【0052】
オルガノハイドロジェンシランを調製する方法、例えば上記のグリニャール試薬とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応は、当該技術分野で周知である。同様に、オルガノハイドロジェンシロキサンを調製する方法、例えば有機ハロシランの加水分解および縮合は、当該技術分野で周知である。
【0053】
ヒドロシリル化触媒(c)は、白金族金属(すなわち白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウム)、または白金族金属を含む化合物を含む周知のヒドロシリル化触媒のいずれであってよい。好ましくは、この白金族金属は、ヒドロシリル化反応のその高い活性に基づいて、白金である。
【0054】
ヒドロシリル化触媒としては、米国特許第3,419,593号でWillingにより開示される塩化白金酸および特定のビニル含有オルガノシロキサンの錯体が挙げられる。この米国特許は参照により本願明細書に引用したものとする。この種類の触媒は、塩化白金酸および1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0055】
ヒドロシリル化触媒は、表面上に白金族金属を有する固体支持体を含む担持型ヒドロシリル化触媒でもあってよい。担持触媒は、例えば、反応混合物を濾過することによって、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂生成物から簡便に分離することができる。担持触媒の例としては、白金−炭素、パラジウム−炭素、ルテニウム−炭素、ロジウム−炭素、白金−シリカ、パラジウム−シリカ、白金−アルミナ、パラジウム−アルミナおよびルテニウム−アルミナが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
有機溶媒(d)は、少なくとも1つの有機溶媒である。有機溶媒は、本発明の方法の条件下でシリコーン樹脂(a)、有機ケイ素化合物(b)またはオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂と反応せず、かつ成分(a)、(b)およびオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂と混和性であるいかなる非プロトン性または双極性の非プロトン性有機溶媒であってもよい。
【0057】
有機溶媒の例としては、飽和脂肪族炭化水素(例えばn−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンおよびドデカン)、脂環式炭化水素(例えばシクロペンタンおよびシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレン)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサン)、ケトン(例えばメチルイソブチルケトン(MIBK))、ハロゲン化アルカン(例えばトリクロロエタン)、ならびにハロゲン化芳香族炭化水素(例えばブロモベンゼンおよびクロロベンゼン)が挙げられるが、これらに限定されない。有機溶媒(d)は、単一の有機溶媒、または2つ以上の異なる有機溶媒(各々は上記のとおり)を含む混合物であってよい。
【0058】
反応は、ヒドロシリル化反応に適している任意の標準反応器中で実施することができる。好適な反応器としては、ガラス反応器およびテフロン(登録商標)で裏打ちされたガラス反応器が挙げられる。好ましくは、反応器は、かき混ぜ(例えば、撹拌すること)の手段を備えている。また、好ましくは、上記反応は、湿分の非存在下で、不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中で実施される。
【0059】
シリコーン樹脂、有機ケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒および、任意に有機溶媒は、任意の順序で混合することができる。典型的には、有機ケイ素化合物(b)およびヒドロシリル化触媒(c)は、シリコーン樹脂(a)および、任意に有機溶媒(d)の導入の前に混合される。
【0060】
反応は、典型的には0〜150℃、あるいは室温(約23±2℃)〜115℃の温度で実施される。温度が0℃未満の場合、反応速度は典型的には非常に遅い。
【0061】
反応時間は、いくつかの要因、例えばシリコーン樹脂および有機ケイ素化合物の構造および温度に依存する。反応の時間は、典型的には室温(約23±2℃)〜150℃の温度で、1〜24時間である。最適反応時間は、下記の実施例の節に記載される方法を使用して、日常的な試験で決定できる。
【0062】
シリコーン樹脂(a)中のアルケニル基に対する有機ケイ素化合物(b)中のケイ素に結合した水素原子のモル比は、典型的には1.5〜5、あるいは1.75〜3、あるいは2〜2.5である。
【0063】
ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)と有機ケイ素化合物(b)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒(c)の濃度は、シリコーン樹脂(a)および有機ケイ素化合物(b)の合わせた重量に基づいて、0.1〜1000ppmの白金族金属、あるいは1〜500ppmの白金族金属、あるいは5〜150ppmの白金族金属を提供するのに十分な濃度である。反応速度は、0.1ppm未満の白金族金属の下では非常に遅い。1000ppmより多い白金族金属の使用は、反応速度の顕著な増大をもたらさず、従って、不経済である。
【0064】
有機溶媒(d)の濃度は、典型的には、反応混合物の総重量に基づいて、0〜99%(重量/重量)、あるいは30〜80%(重量/重量)、あるいは45〜60%(重量/重量)である。
【0065】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態では、単離または精製なしで用いることが可能であり、またはその樹脂は、従来の気化の方法によって、溶媒の大部分から分離することができる。例えば、この反応混合物は、減圧下で加熱してもよい。さらに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を調製するために使用されるヒドロシリル化触媒が上記のように担持触媒である場合、この樹脂は、反応混合物を濾過することによって、ヒドロシリル化触媒から直ちに分離することができる。しかしながら、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂がその樹脂を調製するために使用されるヒドロシリル化触媒から分離されない場合、その触媒は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第1の実施形態の成分(C)として用いることが可能である。
【0066】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の成分(C)は、成分(A)と成分(B)との付加反応を促進する少なくとも1つのヒドロシリル化触媒である。このヒドロシリル化触媒は、白金族金属を含む周知のヒドロシリル化触媒、白金族金属を含む化合物、またはマイクロカプセル化された白金族金属含有触媒のいずれであってもよい。白金族金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウムが挙げられる。好ましくは、この白金族金属は、ヒドロシリル化反応のその高い活性に基づいて、白金である。
【0067】
好適なヒドロシリル化触媒としては、米国特許第3,419,593号でWillingにより開示される塩化白金酸および特定のビニル含有オルガノシロキサンの錯体が挙げられる。この米国特許は参照により本願明細書に引用したものとする。この種類の好適な触媒は、塩化白金酸および1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0068】
ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性樹脂にカプセル化される白金族金属を含むマイクロカプセル化された白金族金属含有触媒でもあってよい。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒を含む組成物は、常温常圧で長期間(典型的には数ヵ月以上)の間安定であるが、なお熱可塑性樹脂の融点または軟化点より上の温度で比較的急速に硬化させる。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒およびそれらを調製する方法は、米国特許第4,766,176号およびその中の引用文献、ならびに米国特許第5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野で周知である。
【0069】
成分(C)は、単一のヒドロシリル化触媒、または少なくとも1つの特性(例えば構造、形態、白金族金属、錯体を形成する配位子および熱可塑性樹脂)において異なる2つ以上の異なる触媒を含む混合物であってよい。
【0070】
成分(C)の濃度は、成分(A)と成分(B)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、成分(C)の濃度は、成分(A)および成分(B)の合わせた重量に基づいて、0.1〜1000ppmの白金族金属、好ましくは1〜500ppmの白金族金属、より好ましくは5〜150ppmの白金族金属を提供するのに十分な濃度である。硬化速度は、0.1ppm未満の白金族金属の下では非常に遅い。1000ppmより多い白金族金属の使用は、反応速度の顕著な増大をもたらさず、従って、不経済である。
【0071】
第2の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有するシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、Rは、Rまたは−Hであり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただしこのシリコーン樹脂は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する)と、(B’)このシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む。
【0072】
成分(A’)は、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有する少なくとも1つのシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたは−Hであり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただしこのシリコーン樹脂は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する)である。式(III)では、R、w、x、y、z、y+zおよびw+xは、式(I)を有するシリコーン樹脂について上で記載され例示されたとおりである。
【0073】
典型的には、シリコーン樹脂中の基Rの少なくとも50mol%、あるいは少なくとも65mol%、あるいは少なくとも80mol%は、水素である。
【0074】
このシリコーン樹脂は、典型的には500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(M)を有し、ここで、分子量は、小角レーザー光散乱検出器、または屈折率検出器およびシリコーン樹脂(MQ)標品を用いるゲル透過クロマトグラフィにより測定されるものである。
【0075】
25℃でのシリコーン樹脂の粘度は、典型的には0.01〜100,000Pa・s、あるいは0.1〜10,000Pa・s、あるいは1〜100Pa・sである。
【0076】
上記シリコーン樹脂は、29Si NMRによって測定する場合に、典型的には、10%(重量/重量)未満、あるいは5%(重量/重量)未満、あるいは2%(重量/重量)未満のケイ素に結合したヒドロキシ基を含む。
【0077】
上記シリコーン樹脂は、RSiO1/2単位(すなわちM単位)および/またはRSiO2/2単位(すなわちD単位)と組み合わせて、RSiO3/2単位(すなわちT単位)、RSiO3/2単位(すなわちT単位)およびSiO4/2単位(すなわちQ単位)、またはRSiO3/2単位(すなわちT単位)および/もしくはSiO4/2単位(すなわちQ単位)を含む。例えば、このシリコーン樹脂は、T樹脂、TQ樹脂、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MQ樹脂、DQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、DTQ樹脂またはMDTQ樹脂であってよい。
【0078】
成分(A’)としての使用に適しているシリコーン樹脂の例としては、以下の式を有する樹脂が挙げられるが限定されない:(HMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75、(HMeSiO2/20.3(PhSiO3/20.6(MeSiO3/20.1、および(MeSiO1/20.1(HSiO2/20.1(MeSiO3/20.4(PhSiO3/20.4(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、括弧の外側の数の添え字はモル分率を意味する)。また、前述の式では、単位の配列は特定されない。
【0079】
成分(A’)は、単一のシリコーン樹脂、または2つ以上の異なるシリコーン樹脂(各々は上記の通り)を含む混合物であってよい。
【0080】
ケイ素に結合した水素原子を含むシリコーン樹脂を調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの樹脂の多数は市販されている。シリコーン樹脂は、典型的には、有機溶媒(例えばトルエン)中でクロロシラン前駆体の適切な混合物を同時加水分解することによって調製される。例えば、本質的にRSiO1/2単位およびRSiO3/2単位からなるシリコーン樹脂は、式RSiClを有する化合物および式RSiClを有する化合物をトルエン中で同時加水分解することにより調製することができる(式中、RおよびRは上で記載され例示されたとおりである)。塩酸およびシリコーン加水分解物は分離され、この加水分解物は残留する酸を除去するために水で洗浄され、穏やかな非塩基性縮合触媒の存在下で加熱され、樹脂は必要な粘度まで「増粘される(body)」。必要に応じて、樹脂は、ケイ素に結合したヒドロキシ基の含量を減らすために、有機溶媒中で非塩基性の縮合触媒でさらに処理することができる。あるいは、クロロ以外の加水分解性基、例えば−Br、−I、−OCH、−OC(O)CH、−N(CH、NHCOCH、および−SCHを含むシランは、同時加水分解反応の出発物質として利用できる。樹脂生成物の特性は、シランの種類、シランのモル比、縮合度および処理条件に依存する。
【0081】
成分(B’)は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物である。
【0082】
この有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基、あるいは1分子あたり少なくとも3つのケイ素に結合したアルケニル基を含む。成分(A’)中の1分子あたりのケイ素に結合した水素原子の平均数および成分(B’)中の1分子あたりのケイ素に結合したアルケニル基の平均数の合計が4より大きいときに架橋が発生すると、通常理解される。
【0083】
上記有機ケイ素化合物は、有機シランまたはオルガノシロキサンであってよい。有機シランは、モノシラン、ジシラン、トリシランまたはポリシランであってよい。同様に、オルガノシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサンまたはポリシロキサンであってよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖状、分枝状、環状、または樹脂状であってよい。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には、3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素に結合したアルケニル基は、末端位置、ペンダント位置、または末端位置およびペンダント位置の両方に存在してよい。
【0084】
成分(B’)としての使用に適している有機シランの例としては、以下の式を有するシランが挙げられるが、これらに限定されない:ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiViおよびPhSi(CHCH=CH(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつViはビニルである)。
【0085】
成分(B’)としての使用に適しているオルガノシロキサンの例としては、以下の式を有するシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない:PhSi(OSiMeVi)、Si(OSiMeVi)、MeSi(OSiMeVi)およびPhSi(OSiMeVi)(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつViはビニルである)。
【0086】
成分(B’)は、単一の有機ケイ素化合物、または2つ以上の異なる有機ケイ素化合物(各々は上記の通り)を含む混合物であってよい。例えば、成分(B’)は、単一の有機シラン、2つの異なる有機シランの混合物、単一のオルガノシロキサン、2つの異なるオルガノシロキサンの混合物または有機シランおよびオルガノシロキサンの混合物であってよい。
【0087】
成分(B’)の濃度は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な濃度である。成分(B’)の正確な量は、硬化の所望の程度に依存し、それは、成分(A’)中のケイ素に結合した水素原子のモル数に対する成分(B’)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の比が増加するにつれて、一般に増加する。成分(B’)の濃度は、典型的には、成分(A’)のケイ素に結合した水素原子1モルあたり、0.4〜2モルのケイ素に結合したアルケニル基、あるいは0.8〜1.5モルのケイ素に結合したアルケニル基、あるいは0.9〜1.1モルのケイ素に結合したアルケニル基を提供するのに十分な濃度である。
【0088】
ケイ素に結合したアルケニル基を含む有機シランおよびオルガノシロキサンを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの化合物の多数は市販されている。
【0089】
本シリコーン組成物の第2の実施形態の成分(C)は、第1の実施形態の成分(C)について上で記載して例示したとおりである。
【0090】
第3の実施形態によれば、本ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂と、(B)このシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒と、(D)(i)RSiO(RSiO)SiR(IV)および(ii)RSiO(RSiO)SiR(V)から選択される式を有するシリコーンゴム(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字aおよびbは各々1〜4の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、w+xは0〜0.95であるが、ただし上記シリコーン樹脂およびシリコーンゴム(D)(i)は、各々、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、シリコーンゴム(D)(ii)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、かつシリコーン樹脂(A)中のケイ素に結合したアルケニル基に対するシリコーンゴム(D)中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子のモル比は0.01〜0.5である)とを含む。
【0091】
シリコーン組成物の第3の実施形態の成分(A)、(B)および(C)は、第1の実施形態について上で記載され例示されたとおりである。
【0092】
成分(B)の濃度は、成分(A)のシリコーン樹脂を硬化させる(架橋)のに十分な濃度である。成分(D)が(D)(i)である場合、成分(B)の濃度は、成分(A)および成分(D)(i)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の合計に対する成分(B)中のケイ素に結合した水素原子のモル数の比が、典型的には0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1であるような濃度である。さらに、成分(D)が(D)(ii)である場合、成分(B)の濃度は、成分(A)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数に対する成分(B)および成分(D)(ii)中のケイ素に結合した水素原子のモル数の合計の比が典型的には0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1であるような濃度である。
【0093】
成分(D)は、(i)RSiO(RSiO)SiR(IV)および(ii)RSiO(RSiO)SiR(V)から選択される式を有するシリコーンゴムである(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、かつ添え字aおよびbは、各々、1〜4の値を有するが、ただし上記シリコーンゴム(D)(i)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、かつシリコーンゴム(D)(ii)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する)。
【0094】
成分(D)(i)は、式RSiO(RSiO)SiR(IV)を有する少なくとも1つのシリコーンゴムである(式中、RおよびRは上で記載され例示されるとおりであり、添え字aは1〜4の値を有するが、ただしシリコーンゴム(D)(i)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する)。あるいは、添え字aは2〜4、または2〜3値を有する。
【0095】
成分(D)(i)としての使用に適しているシリコーンゴムの例としては、以下の式を有するシリコーンゴムが挙げられるが、これらに限定されない:ViMeSiO(MeSiO)SiMeVi、ViMeSiO(PhSiO)SiMeVi、およびViMeSiO(PhMeSiO)SiMeVi(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、かつ添え字aは1〜4の値を有する)。
【0096】
成分(D)(i)は、単一のシリコーンゴムであってもよいし、または各々が式(IV)を有する2つ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってよい。
【0097】
成分(D)(ii)は、式RSiO(RSiO)SiR(V)を有する少なくとも1つのシリコーンゴムである(式中、RおよびRは上に記載され例示されたとおりであり、添え字bは1〜4の値を有するが、ただしシリコーンゴム(D)(ii)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する)。あるいは、添え字bは2〜4、または2〜3の値を有する。
【0098】
成分(D)(ii)としての使用に適しているシリコーンゴムの例としては、以下の式を有するシリコーンゴムが挙げられるが、これらに限定されない:HMeSiO(MeSiO)SiMeH、HMeSiO(PhSiO)SiMeH、HMeSiO(PhMeSiO)SiMeH、およびHMeSiO(PhSiO)(MeSiO)SiMeH(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、添え字bは1〜4の値を有する)。
【0099】
成分(D)(ii)は単一のシリコーンゴムであってもよいし、または各々が式(V)を有する2つ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってよい。
【0100】
シリコーン樹脂(A)中のケイ素に結合したアルケニル基に対するシリコーンゴム(D)中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子のモル比は、典型的には0.01〜0.5、あるいは0.05〜0.4、あるいは0.1〜0.3である。
【0101】
ケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を含むシリコーンゴムを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの化合物の多数は市販されている。
【0102】
第4の実施形態によれば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A’)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有するシリコーン樹脂と、(B’)このシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒と、(D)(i)RSiO(RSiO)SiR(IV)および(ii)RSiO(RSiO)SiR(V)から選択される式を有するシリコーンゴム(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字aおよびbは各々1〜4の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし上記シリコーン樹脂およびシリコーンゴム(D)(ii)は各々1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、シリコーンゴム(D)(i)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、シリコーン樹脂(A’)中のケイ素に結合した水素原子に対するシリコーンゴム(D)中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子のモル比は0.01〜0.5である)とを含む。
【0103】
シリコーン組成物の第4の実施形態の成分(A’)(B’)および(C)は、第2の実施形態について上で記載され例示されたとおりであり、第4の実施形態の成分(D)は、第3の実施形態について上で記載され例示されたとおりである。
【0104】
成分(B’)の濃度は、成分(A’)のシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な濃度である。成分(D)が(D)(i)である場合、成分(B’)の濃度は、成分(A’)中のケイ素に結合した水素原子のモル数に対する成分(B’)および成分(D)(i)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の合計の比が典型的には0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1であるような濃度である。さらに、成分(D)が(D)(ii)である場合、成分(B’)の濃度は、成分(A’)および成分(D)(ii)中のケイ素に結合した水素原子のモル数の合計に対する成分(B’)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の比が、典型的には0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1であるような濃度である。
【0105】
シリコーン樹脂(A’)中のケイ素に結合した水素原子に対するシリコーンゴム(D)中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子のモル比は、典型的には、まで0.01〜0.5、あるいは0.05〜0.4、あるいは0.1〜0.3である。
【0106】
第5の実施形態によれば、本ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A”)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂および式RSiO(RSiO)SiR(VI)を有するシリコーンゴムを、ヒドロシリル化触媒および任意に有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することにより調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、cは4より大きい〜1,000の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただしシリコーン樹脂(I)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、シリコーンゴム(VI)は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、かつシリコーン樹脂(I)中のケイ素に結合したアルケニル基に対するシリコーンゴム(VI)中のケイ素に結合した水素原子のモル比は、0.01〜0.5である)と、(B)このゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む。
【0107】
シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(B)および(C)は、第1の実施形態について記載され例示されたとおりである。
【0108】
成分(B)の濃度は、上記ゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な濃度である。成分(B)の濃度は、シリコーン樹脂(I)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数に対する成分(B)およびシリコーンゴム(VI)中のケイ素に結合した水素原子のモル数の合計の比が、典型的には0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1であるような濃度である。
【0109】
成分(A”)は、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有する少なくとも1つのシリコーン樹脂および式RSiO(RSiO)SiR(VI)を有する少なくとも1つのシリコーンゴムを、ヒドロシリル化触媒、および任意に有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することにより調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂である(式中、R、R、R、w、x、y、z、y+zおよびw+xは上で記載され例示されたとおりであり、かつ添え字cは4より大きい〜1,000の値を有する)。
【0110】
式(I)を有するシリコーン樹脂は、シリコーン組成物の第1の実施形態について上で記載され例示されたとおりである。また、ヒドロシリル化触媒および有機溶媒は、式(II)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を調製する方法において上で記載され例示されたとおりである。本願明細書で使用する場合、用語「可溶性の反応生成物」は、有機溶媒が存在するときに、成分(A”)を調製するための反応の生成物がその有機溶媒に混和性であり、沈殿物または懸濁液を形成しないことを意味する。
【0111】
シリコーンゴムの式(VI)において、RおよびRは上で記載され例示されたとおりであり、添え字cは典型的には4より大きい〜1,000、あるいは10〜500、あるいは10〜50の値を有する。
【0112】
式(VI)を有するシリコーンゴムの例としては、以下の式を有するシリコーンゴムが挙げられるが、これらに限定されない:HMeSiO(MeSiO)50SiMeH、HMeSiO(MeSiO)10SiMeH、HMeSiO(PhMeSiO)25SiMeH、およびMeSiO(MeHSiO)10SiMe(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、かつ数字の添え字は各種類のシロキサン単位の数を示す)。
【0113】
式(VI)を有するシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴムであってもよいし、または各々が式(VI)を有する2つ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってよい。
【0114】
ケイ素に結合した水素原子を含むシリコーンゴムを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの化合物の多数は市販されている。
【0115】
シリコーン樹脂(I)、シリコーンゴム(VI)、ヒドロシリル化触媒および有機溶媒は、任意の順序で混合されてもよい。典型的には、シリコーン樹脂、シリコーンゴムおよび有機溶媒は、ヒドロシリル化触媒の導入の前に混合される。
【0116】
上記反応は、典型的には室温(約23±2℃)〜150℃、あるいは室温〜100℃の温度で実施される。
【0117】
反応時間は、シリコーン樹脂およびシリコーンゴムの構造ならびに温度を含むいくつかの要因に依存する。成分は、典型的には、ヒドロシリル化反応を完了するのに十分な期間の間、反応される。これは、FTIR分光測定法によって測定する場合に、典型的には、シリコーンゴム中にもともと存在するケイ素に結合した水素原子の少なくとも95mol%、あるいは少なくとも98mol%、あるいは少なくとも99mol%がヒドロシリル化反応で消費されるまで、成分が反応されることを意味する。反応の時間は、典型的には室温(約23±2℃)〜100℃の温度で、0.5〜24時間である。最適反応時間は、下記の実施例の節に記載される方法を使用して、日常的な試験で決定できる。
【0118】
シリコーン樹脂(I)中のケイ素に結合したアルケニル基に対するシリコーンゴム(VI)中のケイ素に結合した水素原子のモル比は、典型的には0.01〜0.5、あるいは0.05〜0.4、あるいは0.1〜0.3である。
【0119】
ヒドロシリル化触媒の濃度は、シリコーン樹脂(I)とシリコーンゴム(VI)との付加反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化触媒の濃度は、樹脂およびゴムの合わせた重量に基づいて、0.1〜1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な濃度である。
【0120】
有機溶媒の濃度は、典型的には、反応混合物の総重量に基づいて、0〜95%(重量/重量)、あるいは10〜75%(重量/重量)、あるいは40〜60%(重量/重量)である。
【0121】
上記ゴムで変性されたシリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5の実施形態では単離または精製なしで用いることもできるし、またはその樹脂は従来の気化の方法によって溶媒の大部分から分離することもできる。例えば、反応混合物は、減圧下で加熱してもよい。さらに、ヒドロシリル化触媒が上記のように担持触媒である場合、ゴムで変性されたシリコーン樹脂は反応混合物を濾過することによって、ヒドロシリル化触媒から直ちに分離することができる。しかしながら、ゴムで変性されたシリコーン樹脂がその樹脂を調製するために用いるヒドロシリル化触媒から分離されない場合、その触媒はヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(C)として用いることが可能である。
【0122】
第6の実施形態によれば、本ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(A”’)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有するシリコーン樹脂および式RSiO(RSiO)SiR(VII)を有するシリコーンゴムを、ヒドロシリル化触媒および任意に有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することによって調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字dは4より大きい〜1,000の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただしシリコーン樹脂(III)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、シリコーンゴム(VII)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、シリコーン樹脂(III)中のケイ素に結合した水素原子に対するシリコーンゴム(VII)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル比は0.01〜0.5である)と、(B’)このゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む。
【0123】
シリコーン組成物の第6の実施形態の成分(B’)および(C)は、第2の実施形態について上に記載され例示されたとおりである。
【0124】
成分(B’)の濃度は、上記ゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な濃度である。成分(B’)の濃度は、シリコーン樹脂(III)中のケイ素に結合した水素原子のモル数に対する成分(B’)およびシリコーンゴム(VII)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル数の合計の比が、典型的には0.4〜2、あるいは0.8〜1.5、あるいは0.9〜1.1であるような濃度である。
【0125】
成分(A”’)は、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有する少なくとも1つのシリコーン樹脂および式RSiO(RSiO)SiR(VII)を有するおよび少なくとも1つのシリコーンゴムを、ヒドロシリル化触媒および有機溶媒の存在下で反応させて、可溶性の反応生成物を形成することによって調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂である(式中、R、R、R、w、x、y、z、y+zおよびw+xは上で記載され例示されたとおりであり、かつ添え字dは4より大きい〜1,000の値を有する)。
【0126】
式(III)を有するシリコーン樹脂は、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の第2の実施形態について上で記載して例示したとおりである。また、ヒドロシリル化触媒および有機溶媒は、式(II)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を調製する方法において上で記載され例示されたとおりである。シリコーン組成物のこれまでの実施形態においてのように、用語「可溶性の反応生成物」は、有機溶媒が存在するときに、成分(A”’)を調製するための反応の生成物がその有機溶媒に混和性であり、沈殿物または懸濁液を形成しないことを意味する。
【0127】
シリコーンゴムの式(VII)において、RおよびRは上で記載され例示されたとおりであり、添え字dは典型的には4〜1,000、あるいは10〜500、あるいは10〜50値を有する。
【0128】
式(VII)を有するシリコーンゴムの例としては、例えば以下の式を有するシリコーンゴムが挙げられる:ViMeSiO(MeSiO)50SiMeVi、ViMeSiO(MeSiO)10SiMeVi、ViMeSiO(PhMeSiO)25SiMeVi、およびViMeSiO(PhMeSiO)25SiMeVi(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、かつ数字の添え字はシロキサン単位の数または各種類を示す)。
【0129】
式(VII)を有するシリコーンゴムは、単一のシリコーンゴムであってもよいし、または各々が式(VII)を有する2つ以上の異なるシリコーンゴムを含む混合物であってよい。
【0130】
ケイ素に結合したアルケニル基を含むシリコーンゴムを調製する方法は当該技術分野で周知であり、これらの化合物の多数は市販されている。
【0131】
成分(A”’)を調製するための反応は、式(I)を有するシリコーン樹脂および式(VI)を有するシリコーンゴムが、それぞれ式(III)を有する樹脂および式(VII)を有するゴムと置き換えられることを除いて、シリコーン組成物の第5の実施形態の成分(A”)を調製するために上に記載した方法で実施することができる。シリコーン樹脂(III)中のケイ素に結合した水素原子に対するシリコーンゴム(VII)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル比は、0.01〜0.5、あるいは0.05〜0.4、あるいは0.1〜0.3である。さらに、シリコーン樹脂およびシリコーンゴムは、典型的にはヒドロシリル化反応を完了するのに十分な時間、反応される。これは、FTIR分光測定法によって測定する場合に、典型的にはもともとゴム中に存在するケイ素に結合したアルケニル基の少なくとも95mol%、あるいは少なくとも98mol%、あるいは少なくとも99mol%中がヒドロシリル化反応で消費されるまで、上記成分が反応されることを意味する。
【0132】
本発明の方法のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物はさらなる成分を含むことができるが、それは、シリコーン組成物が硬化して、後述するような低い熱膨張係数、高い引張強さおよび高い弾性率を有する硬化したシリコーン樹脂を形成することをその成分が妨げない場合に限る。さらなる成分の例としては、ヒドロシリル化触媒抑制剤(例えば3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、ビニルシクロシロキサンおよびトリフェニルホスフィン)、接着促進剤(米国特許第4,087,585号および同第5,194,649号で教示される接着促進剤など)、染料、色素、酸化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、流動性調整用添加物、および希釈剤(例えば、有機溶媒および反応性希釈剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
例えば、本ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、(E)(i)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基および25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有するオルガノシロキサン((E)(i)の粘度は、上記シリコーン組成物のシリコーン樹脂(例えば、成分(A)、(A’)、(A”)(A”’))の粘度の20%以下であり、このオルガノシロキサンは、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、mは0〜0.8であり、n=0〜1であり、p=0〜0.25であり、q=0〜0.2であり、m+n+p+q=1であり、かつm+nは0に等しくないが、ただしp+q=0であるとき、nは0に等しくなく、かつ上記アルケニル基はすべてが末端にあるわけではない)を有する)と、(ii)(E)(i)中のアルケニル基1モルあたり0.5〜3モルの(E)(ii)中のケイ素に結合した水素原子を提供するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子および25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有するオルガノハイドロジェンシロキサン(このオルガノハイドロジェンシロキサンは式(HRSiO1/2(RSiO3/2(SiO4/2を有する(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10ハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、sは0.25〜0.8であり、tは0〜0.5であり、vは0〜0.3であり、s+t+v=1であり、かつt+vは0に等しくない))とを含む、反応性希釈剤を含むことができる。
【0134】
成分(E)(i)は、1分子あたり平均少なくとも2つのアルケニル基および25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有する少なくとも1つのオルガノシロキサンである((E)(i)の粘度は、上記シリコーン組成物のシリコーン樹脂の粘度の20%以下であり、このオルガノシロキサンは、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、mは0〜0.8であり、n=0〜1であり、p=0〜0.25であり、q=0〜0.2であり、m+n+p+q=1であり、かつm+nは0に等しくないが、ただしp+q=0であるとき、nは0に等しくなく、かつ上記アルケニル基はすべてが末端にあるわけではない(すなわち、上記オルガノシロキサン中のアルケニル基のすべてがRSiO1/2単位にあるわけではない))を有する)。さらに、オルガノシロキサン(E)(i)は、直鎖状、分枝状、または環状構造を有することができる。例えば、オルガノシロキサン(E)(i)の式中の添え字m、pおよびqが各々0に等しい場合、このオルガノシロキサンは有機シクロシロキサンである。
【0135】
25℃でのオルガノシロキサン(E)(i)の粘度は、典型的には0.001〜2Pa・s、あるいは0.001〜0.1Pa・s、あるいは0.001〜0.05Pa・sである。さらに、25℃でのオルガノシロキサン(E)(i)の粘度は、典型的には、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物中のシリコーン樹脂の粘度の20%以下、あるいは10%以下、あるいは1%以下である。
【0136】
オルガノシロキサン(E)(i)としての使用に適しているオルガノシロキサンの例には、限定されないが、以下の式を有するオルガノシロキサンが含まれる:(ViMeSiO)、(ViMeSiO)、(ViMeSiO)、(ViMeSiO)、(ViPhSiO)、(ViPhSiO)、(ViPhSiO)、(ViPhSiO)、ViMeSiO(ViMeSiO)SiMeVi、MeSiO(ViMeSiO)SiMe、および(ViMeSiO)Si(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルであり、かつ添え字nはこのオルガノシロキサンが25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有するような値を有する)。
【0137】
成分(E)(i)は、単一のオルガノシロキサン、または2つ以上の異なるオルガノシロキサン(各々は上記の通り)を含む混合物であってよい。アルケニル官能性オルガノシロキサンを作製する方法は、当該技術分野で周知である。
【0138】
成分(E)(ii)は、(E)(i)中のアルケニル基1モルに対して0.5〜3モルの(E)(ii)中のケイ素に結合した水素原子を提供するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子および25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有する少なくとも1つのオルガノハイドロジェンシロキサン(このオルガノハイドロジェンシロキサンは式(HRSiO1/2(RSiO3/2(SiO4/2を有する(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10ハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、sは0.25〜0.8であり、tは0〜0.5であり、vは0〜0.3であり、s+t+v=1であり、かつt+vは0に等しくない))である。
【0139】
25℃でのオルガノハイドロジェンシロキサン(E)(ii)の粘度は、典型的には0.001〜2Pa・s、あるいは0.001〜0.1、あるいは0.001〜0.05Pa・sである。
【0140】
オルガノハイドロジェンシロキサン(E)(ii)としての使用に適しているオルガノハイドロジェンシロキサンの例には、限定されないが、以下の式を有するオルガノハイドロジェンシロキサンが含まれる:PhSi(OSiMeH)、Si(OSiMeH)、MeSi(OSiMeH)、(HMeSiO)SiOSi(OSiMeH)および(HMeSiO)SiOSi(Ph)(OSiMeH)(式中、Meはメチルであり、かつPhはフェニルである)。
【0141】
成分(E)(ii)は、単一のオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよいし、2つ以上の異なるオルガノハイドロジェンシロキサン(各々は上記の通り)を含む混合物であってよい。オルガノハイドロジェンシロキサンを作製する方法は、当該技術分野で周知である。
【0142】
成分(E)(ii)の濃度は、成分(E)(i)中のアルケニル基1モルあたり0.5〜3モルのケイ素に結合した水素原子、あるいは0.6〜2モルのケイ素に結合した水素原子、あるいは0.9〜1.5モルのケイ素に結合した水素原子を提供するのに十分な濃度である。
【0143】
上記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物中の反応性希釈剤(E)(成分(E)(i)および(E)(ii)合わせて)の濃度は、典型的には、上記の実施形態におけるシリコーン樹脂(成分(A)、(A’)、(A”)、または(A”’))および有機ケイ素化合物(成分(B)または(B’))の合わせた重量に基づいて、0〜90%(重量/重量)、あるいは0〜50%(重量/重量)、あるいは0〜20%(重量/重量)、あるいは0〜10%(重量/重量)である。
【0144】
ナノ材料充填シリコーン組成物のカーボンナノ材料は、約200nm未満の少なくとも1つの物理的な寸法(例えば粒径、繊維径、層厚)を有するいかなるカーボン材料であってもよい。カーボンナノ材料の例としては、約200nm未満の3つの寸法を有するカーボンナノ粒子(例えば量子ドット、中空球およびフラーレンなど)、約200nm未満の2つの寸法を有する繊維状カーボンナノ材料(例えばナノチューブ(例えば単層ナノチューブおよび多層ナノチューブ)およびナノ繊維(例えば、軸方向に整列配置されたプレートレット、およびヘリングボーン型(herringbone)またはフィッシュボーン型(fishbone)ナノ繊維)、ならびに約200nm未満の1つの寸法を有する層をなしたカーボンナノ材料、例えばカーボンナノプレートレット(例えば膨張黒鉛およびグラフェンシート)が挙げられるが、これらに限定されない。カーボンナノ材料は、導電性であってもよいし、半導電性であってもよい。
【0145】
カーボンナノ材料はまた、上述したカーボンナノ材料を高い温度で酸化性酸または酸の混合物で処理することにより調製される酸化されたカーボンナノ材料であってもよい。例えば、カーボンナノ材料は、濃硝酸および濃硫酸の混合物(1:3 体積/体積、炭素1gあたり25mL)中で、40〜150℃の温度で1−3時間、その材料を加熱することによって、酸化できる。
【0146】
カーボンナノ材料は、単一のカーボンナノ材料であってもよいし、または少なくとも2つの異なるカーボンナノ材料(各々は上記のとおり)を含む混合物であってもよい。
【0147】
カーボンナノ材料の濃度は、典型的には、ナノ材料充填シリコーン組成物の総重量に基づいて0.0001〜99%(重量/重量)、あるいは0.001〜50%(重量/重量)、あるいは0.01〜25%(重量/重量)、あるいは0.1〜10%(重量/重量)、あるいは1〜5%(重量/重量)である。
【0148】
カーボンナノ材料を調製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、カーボンナノ粒子(例えば、フラーレン)ならびに繊維状カーボンナノ材料(例えば、ナノチューブおよびナノ繊維)は、以下の方法のうちの少なくとも1つを使用して調製できる:アーク放電、レーザーアブレーションおよび触媒的化学気相成長。アーク放電プロセスにおいて、2本の黒鉛ロッド間のアーク放電は、ガス雰囲気に応じて、単層ナノチューブ、多層ナノチューブおよびフラーレンを生成する。レーザーアブレーション法では、金属触媒を載せる黒鉛ターゲットは、管炉中でレーザーによって照射を受け、単層および多層のナノチューブを生成する。触媒的化学気相成長法では、カーボン含有ガスまたはガス混合物は、金属触媒を含む管炉に500〜1000℃の温度で(そして、様々な圧力で)導入され、カーボンナノチューブおよびナノ繊維を生成する。カーボンナノプレートレットは、黒鉛のインターカレーションおよび膨張化(exfoliation)により調製できる。
【0149】
ナノ材料充填シリコーン組成物は、単一部分にシリコーン樹脂、有機ケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒およびカーボンナノ材料を含む一部組成物(one−part composition)であってもよいし、あるいは2以上の部分にこれらの構成要素を含む多部組成物(multi−part composition)であってもよい。
【0150】
一部ナノ材料充填シリコーン組成物は、典型的には、有機溶媒の支援を借りて、または借りずに常温でヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物、カーボンナノ材料およびあらゆる任意の成分を示された比率で混合することによって調製される。シリコーン組成物が直ちに用いられることになっている場合は、種々の成分の添加の順序は重要ではないが、ヒドロシリル化触媒は、組成物の早すぎる硬化を防止するために約30℃未満の温度で最後に加えることが好ましい。また、多部ナノ材料充填シリコーン組成物は、成分を各部で混合することにより調製することができる。
【0151】
混合は、当該技術分野で公知の任意の技法(例えば、バッチプロセスまたは連続プロセスのいずれかでのロール練り、混練および撹拌)で達成できる。特定の装置は、成分の粘度および最終的なシリコーン組成物の粘度で決定される。
【0152】
強化材が高い弾性率および高い引張強さを有するならば、繊維強化材は、繊維を含むいかなる強化材であってもよい。繊維強化材は、典型的には、25℃で少なくとも3GPaのヤング率を有する。例えば、この強化材は、25℃で典型的には3〜1,000GPa、あるいは3〜200GPa、あるいは10〜100GPaのヤング率を有する。さらにこの強化材は、25℃で典型的には少なくとも50MPaの引張強さを有する。例えば、この強化材は、25℃で典型的には50〜10,000MPa、あるいは50〜1,000MPa、あるいは50〜500MPaの引張強さを有する。
【0153】
繊維強化材は、織布(例えば布)、不織布(例えばマットまたはロービング)、または束ねられていない(個々の)繊維であってよい。強化材の繊維は、典型的には円筒形状であり、1〜100μm、あるいは1〜20μm、あるいは1〜10μmの直径を有する。束ねられていない繊維は連続的なものでもよく、これは繊維がほぼ破断しない形で強化シリコーン樹脂フィルムの全体にわたって延びることを意味する)、またはぶつ切りのものでもよい。
【0154】
繊維強化材は、典型的には、有機混入物質を除去するために、使用の前に熱処理される。例えば、繊維強化材は、典型的には、適切な時間の間(例えば2時間)、高温(例えば575℃)で、空気中で加熱される。
【0155】
繊維強化材の例としては、ガラス繊維、石英繊維、グラファイト繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維(例えばケブラー(登録商標)およびノーメックス(登録商標)、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、および炭化ケイ素繊維を含む強化材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
繊維強化材は、様々な方法を使用してナノ材料充填シリコーン組成物中で含浸できる。例えば、第1の方法によれば、繊維強化材は、(i)ナノ材料充填シリコーン組成物を剥離ライナーに塗布してシリコーンフィルムを形成し、(ii)繊維強化材をそのフィルムに包埋し、そして(iii)包埋された繊維強化材に上記ナノ材料充填シリコーン組成物を塗布し、含浸された繊維強化材を形成することによって、含浸させることができる。
【0157】
工程(i)において、上記のナノ材料充填シリコーン組成物は、シリコーン膜を形成するために、剥離ライナに塗布される。剥離ライナーは、後述するように、シリコーン樹脂が硬化した後、強化シリコーン樹脂フィルムが層間剥離によって、損傷なしに取り除くことができる表面を有するいかなる剛性または可撓性材料でもあってもよい。剥離ライナの例には、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
ナノ材料充填シリコーン組成物は、スピンコーティング、浸漬、噴霧、ブラッシング、押出またはスクリーン印刷などの従来のコーティング技術を使用して、剥離ライナに塗布することができる。このシリコーン組成物は、下記の工程(ii)で繊維強化材を包埋するのに十分な量で塗布される。
【0159】
工程(ii)において、繊維強化材はシリコーンフィルムに包埋される。繊維強化材は、単に強化材をフィルム上に配置して、フィルムのシリコーン組成物にその強化材を飽和させることによって、シリコーンフィルムに包埋させることが可能である。
【0160】
工程(iii)において、ナノ材料充填シリコーン組成物は、包埋された繊維強化材に塗布され、含浸された繊維強化材を形成する。シリコーン組成物は、工程(i)について上に記載したとおり、従来の方法を使用して包埋された繊維強化材に塗布できる。
【0161】
第1の方法は、(iv)第2の剥離ライナーを含浸された繊維強化材に塗布してアセンブリを形成する工程、および(v)そのアセンブリを圧縮する工程をさらに含むことができる。また、第1の方法は工程(ii)の後でかつ工程(iii)の前に、包埋された繊維強化材からガスを除去する工程、および/または工程(iii)の後でかつ工程(iv)の前に、含浸された繊維強化材からガスを除去する工程をさらに含むことができる。
【0162】
このアセンブリは、過剰な組成物および/または入り込んだ空気を除去して、含浸された繊維強化材の厚みを減らすために圧縮できる。アセンブリは、従来の設備(例えばステンレス鋼ローラー、液圧プレス、ゴムローラーまたは積層ロールセット)を使用して圧縮できる。アセンブリは、典型的には1,000Pa〜10MPaの圧力で、室温(約23±2℃)〜50℃の温度で圧縮される。
【0163】
包埋された繊維強化材または含浸された繊維強化材は、室温(約23±2℃)〜60℃の温度で、包埋された強化材中に入り込んだ空気を除去するのに十分な期間、それを真空にさらすことによって、ガスを除去できる。
【0164】
あるいは、第2の方法によれば、繊維強化材は、(i)繊維強化材を剥離ライナー上に置き、(ii)ナノ材料充填シリコーン組成物に繊維強化材を包埋し、(iii)包埋された繊維強化材にナノ材料充填シリコーン組成物を塗布して含浸された繊維強化材を形成することによって、ナノ材料充填シリコーン組成物中に含浸できる。第2の方法は、(iv)含浸された繊維強化材に第2の剥離ライナーを塗布してアセンブリを形成する工程、および(v)このアセンブリを圧縮する工程をさらに含むことができる。第2の方法において、工程(iii)〜(v)は、ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸させる第1の方法について上に記載したとおりである。また、第2の方法は、工程(ii)の後でかつ工程(iii)の前に、包埋された繊維強化材からガスを除去する工程、および/または工程(iii)の後でかつ工程(iv)の前に、含浸された繊維強化材からガスを除去する工程をさらに含むことができる。
【0165】
工程(ii)において、繊維強化材は、ナノ材料充填シリコーン組成物に包埋される。強化材は、単に強化材を組成物でおおって、その組成物に強化材を飽和させることによって、ナノ材料充填シリコーン組成物に包埋することができる。
【0166】
さらに、繊維強化材が織布または不織布である場合、その強化材は、ナノ材料充填シリコーン組成物にそれを通すことによって、組成物中で含浸できる。布は、典型的には室温(約23±2℃)で、1〜1,000cm/秒の速度で、このナノ材料充填シリコーン組成物を通過する。
【0167】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法の第2工程では、含浸された繊維強化材のシリコーン樹脂が硬化される。このシリコーン樹脂は、大気圧で、含浸された繊維強化材を室温(約23±2℃)〜250℃、あるいは室温〜200℃、あるいは室温〜150℃の温度に曝露することによって硬化できる。強化材は、典型的にはシリコーン樹脂を硬化(架橋)させるのに十分な時間の間、特定の温度に曝露される。例えば、含浸された繊維強化材は、典型的には150〜200℃の温度で0.1〜3時間の間加熱される。
【0168】
あるいは、含浸された繊維強化材は、含浸された繊維強化材を100〜200℃の温度および1,000〜20,000Paの圧力で0.5〜3時間、真空中で加熱することができる。含浸された繊維強化材は、従来の真空バッグ加圧プロセス(vacuum bagging process)を使用して真空中で硬化できる。典型的なプロセスでは、ブリーダー(bleeder)(例えばポリエステル)が含浸された繊維強化材にわたって付与され、ブリーザー(breather)(例えば、ナイロン、ポリエステル)がこのブリーダーにわたって付与され、真空ノズルを備えている真空バッグ用フィルム(例えばナイロン)がこのブリーザーにわたって付与され、このアセンブリはテープで封止され、真空(例えば1,000Pa)が密封されたアセンブリに適用され、真空にされたバッグは上記のとおりに加熱される。
【0169】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法は、硬化したシリコーン樹脂フィルムを剥離ライナー(1層または多層)から分離する工程をさらに含むことができる。硬化したシリコーン樹脂フィルムは、機械的に剥離ライナーからそのフィルムを剥ぐことによって、剥離ライナーから切り離することができる。
【0170】
同じナノ材料充填シリコーン組成物が飽和ごとに用いられるならば、本発明の方法は、含浸および硬化の工程を繰り返してシリコーン樹脂フィルムの厚みを増加させる工程をさらに含むことができる。
【0171】
本発明の方法は、コーティングを強化シリコーン樹脂フィルムの少なくとも一部分の上に形成する工程をさらに含むことができるが、ただしこれは、コーティング、およびフィルムの硬化したシリコーン樹脂が厚み、ポリマー組成、架橋密度およびカーボンナノ材料または繊維強化材の濃度を含む多数の物理的および化学的特性のうちの少なくとも1つにおいて異なる場合に限る。コーティングの例としては、ヒドロシリル化硬化性シリコーン樹脂または縮合硬化性シリコーン樹脂を硬化させることにより調製される硬化したシリコーン樹脂、有機シルセスキオキサン樹脂のゾルを硬化することによって調製される硬化したシリコーン樹脂、無機酸化物(例えば酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素および二酸化チタン)、無機窒化物(例えば窒化ケイ素および窒化ガリウム)、金属(例えば銅、銀、金、ニッケルおよびクロム)、ならびにシリコン(例えばアモルファスシリコン、微結晶シリコンおよび多結晶シリコン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的に、10〜99%(重量/重量)、あるいは30〜95%(重量/重量)、あるいは60〜95%(重量/重量)、あるいは80〜95%(重量/重量)の硬化したシリコーン樹脂を含む。また、強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には15〜500μm、あるいは15〜300μm、あるいは30〜125μm、あるいは20〜150μm、あるいは30〜125μmの厚みを有する。
【0173】
強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には、柔軟性がASTM規格D522−93a、方法Bに記載されているようにして測定される場合、フィルムが3.2mm以下の直径を有する円筒状鋼鉄心棒の上でひび割れずに曲げることが可能であるような、柔軟性を有する。
【0174】
この強化シリコーン樹脂フィルムは、カーボンナノ材料が存在しないシリコーン組成物から調製したシリコーン樹脂フィルムと比較して、低い線形熱膨張係数(CTE)、高い引張強さ、高い弾性率および熱的に誘発される割れに対する高い抵抗性を有する。例えば、このフィルムは、室温(約23±2℃)〜200℃の温度で、典型的に0〜80μm/m℃、あるいは0〜20μm/m℃、あるいは2〜10μm/m℃のCTEを有する。また、このフィルムは、25℃で典型的には50〜200MPa、あるいは80〜200MPa、あるいは100〜200MPaの引張強さを有する。さらに、この強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には25℃で2〜10GPa、あるいは2〜6GPa、あるいは3〜5GPaのヤング率を有する。
【0175】
この強化シリコーン樹脂フィルムの透明性は、多くの要因(例えば硬化したシリコーン樹脂の組成、フィルムの厚みならびに強化材の屈折率)に依存する。この強化シリコーン樹脂フィルムは、典型的には、電磁スペクトルの可視領域で、少なくとも5%、あるいは少なくとも20%、あるいは少なくとも50%、あるいは少なくとも75%の透明性(%透過率)を有する。
【0176】
本発明の強化シリコーン樹脂フィルムは、高い熱安定性、柔軟性、機械的強度および透明性を有するフィルムを必要としている応用に有用である。例えば、このシリコーン樹脂フィルムは、フレキシブルディスプレイ、太陽電池、フレキシブル電子回路基板、タッチスクリーン、耐火性壁紙および衝撃耐性ウインドウの一体的要素として使用することが可能である。このフィルムは、透明または不透明な電極のための適切な基材でもある。
【実施例】
【0177】
以下の実施例は、本発明の強化シリコーン樹脂フィルムおよび方法をよりよく例示するために示されるが、これらは、添付の特許請求の範囲に詳細に記述される本発明を限定すると見なされるべきものではない。特に明記しない限り、実施例において報告するすべての部数および割合(%)は、重量によるものである。実施例では以下の方法および材料を使用した。
【0178】
(機械的特性の測定)
ヤング率、引張強さおよび破断時の引張ひずみは、100−Nロードセルを備えたエムティーエスアライアンス(MTS Alliance) RT/5試験フレームを使用して測定した。ヤング率、引張強さおよび引張ひずみは、実施例4および実施例5の試験片については室温(約23±2℃)で測定した。
【0179】
試験片を、25mm離れて間隔を置いた2つの空気式グリップにセットし、1mm/分のクロスヘッド速度で引っ張った。荷重および変位データを、連続的に収集した。荷重−変位曲線の初期の区画における最も急な傾斜を、ヤング率として採用した。ヤング率(MPa)、引張強さ(MPa)および引張ひずみ(%)について報告した値は、各々、同じシリコーン樹脂フィルムからの異なるダンベル形の試験片に対して行った3つの測定の平均を表す。
【0180】
荷重−変位曲線の最も高い位置を用いて、下記の方程式に従って引張強さを算出した:
σ=F/(Wb)
(式中、
σ=引張強さ(MPa)、
F=最大の力(N)、
w=試験片の幅(mm)、および
b=試験片の厚み(mm))。
【0181】
破断時の引張ひずみは、下記の方程式に従って、試験の前後でのグリップの離れた距離の差を初期のグリップの離れた距離で割ることによって、近似した:
ε=100(l−l)/l
(式中、
ε=破壊の引張ひずみ(%)、
=グリップの最終の離れた距離(mm)、および
=グリップの初期の離れた距離(mm))。
【0182】
パイログラフプロダクツ社(Pyrograf Products,Inc.)(オハイオ州、シーダービル)から市販されている、パイログラフ(Pyrograf)(登録商標)−III等級HHT−19カーボンナノ繊維は、直径100〜200nmおよび長さ30,000〜100,000nmを有する熱処理(最高3000℃)されたカーボンナノ繊維である。
【0183】
シリコーンベースA:約1700の重量平均分子量、約1440の数平均分子量を有し、約1mol%のケイ素に結合したヒドロキシ基を含む式(PhSiO3/20.75(ViMeSiO1/20.25を有するシリコーン樹脂82%、および18%の1,−4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを含有する混合物。29Si NMRおよび13C NMRによって測定する場合の、シリコーン樹脂のケイ素に結合したビニル基に対する1,−4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンのケイ素に結合した水素原子のモル比は、1.1:1である。
【0184】
シリコーンベースB:約1700の重量平均分子量、約1440の数平均分子量を有し、約1mol%のケイ素に結合したヒドロキシ基を含む式(PhSiO3/20.75(ViMeSiO1/20.25を有するシリコーン樹脂76%、9.5%のフェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、および14.5%の1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサンを含有する混合物。29Si NMRおよび13C NMRによって測定する場合の、シリコーン樹脂のケイ素に結合したビニル基に対するフェニルトリス(ジメチルシロキシ)シランのケイ素に結合した水素原子、およびケイ素に結合したビニル基に対する1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン中のケイ素に結合した水素原子のモル比は、各々0.55:1である。
【0185】
デュポン帝人フィルム(Dupont Teijin Films)(バージニア州、ホープウェル)によって販売されるメリネックス(Melinex)(登録商標)516は、滑るように片側が剥離剤で前処理された、125μmの厚みを有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0186】
ガラスファブリック(Glass Fabric)は、平織りおよび37.5μmの厚みを有するスタイル106の電気ガラス布(electrical glass fabric)を575℃で6時間加熱することにより調製される熱処理されたガラス布である。
【0187】
(実施例1)
この実施例は、化学的に酸化されたカーボンナノ繊維の調製を示す。パイログラフ(登録商標)−IIIカーボンナノ繊維(2.0g)、12.5mLの濃硝酸および37.5mLの濃硫酸を、冷却器、温度計、テフロン(登録商標)コートの磁気撹拌子および温度制御器を備えている500mLの3つ口フラスコの中で順次混合した。この混合物を80℃まで加熱し、この温度に3時間保った。次いでこの混合物を、フラスコを1ガロン(約3.8リットル)のバケツ中のドライアイスの層に置くことによって、冷却した。この混合物を、ナイロン膜(0.8μm)を含むブフナー漏斗に注ぎ込み、カーボンナノ繊維を減圧濾過によって、集めた。膜上に残っているナノ繊維を、濾液のpHが洗浄水のpHに等しくなるまで、脱イオン水で数回洗浄した。最後の洗浄後、このカーボンナノ繊維を、続けて真空を適用しながらさらに15分間、漏斗に保った。次いで、フィルター膜上に支持されたナノ繊維を、100℃で1時間、オーブン中に置いた。このカーボンナノ繊維を、フィルター膜から除去し、乾燥した密封されたガラスジャーで保存した。
【0188】
(実施例2)
実施例1の酸化したカーボンナノ繊維(0.1g)を、ガラスバイアル中でシリコーンベースA(9.9g)と混合し、次いで4.0gのヘプタンを加えた。このバイアルを、115分間、超音波浴に置いた。次いでこの混合物を、1500回転/分で30分間、遠心分離にかけた。上澄みを、きれいなバイアルへ移し、真空下(45mmHg(約6kPa))で50℃に90分間保ち、大部分のヘプタンを取り除いた。
【0189】
(実施例3)
実施例1の酸化したカーボンナノ繊維(0.04g)をガラスバイアル中でシリコーンベースB(20.0g)と混合し、次いで8.0gのヘプタンを加えた。このバイアルを、115分間、超音波浴に置いた。次いでこの混合物を、1500回転/分で30分間、遠心分離にかけた。上澄みを、きれいなバイアルへ移し、真空下(45mmHg(約6kPa))で50℃に90分間保ち、大部分のヘプタンを取り除いた。
【0190】
(実施例4)
実施例2のシリコーン組成物(4.0g)を、トルエン中の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金(0)錯体からなり、かつ1000ppmの白金を含む触媒0.05gと混合した。得られた組成物(2.0g)を、メリネックス(登録商標)516 PETフィルム(8インチ×11インチ(約20cm×約28cm))の剥離剤処理した表面に塗布した。PETフィルムと同じ寸法を有するガラス布を、このシリコーン膜上に慎重に置き、充分な時間、上記組成物が完全にファブリックを濡らすようにした。次いで実施例2のシリコーン組成物を、この包埋したファブリックに一様に塗布した。同一のPETフィルムを、剥離剤処理した側がシリコーン組成物と接触するようにして、コーティングの上に配置した。次いでこの重ねたものを、300μmの距離だけ離れた2本のステンレス鋼棒間に通した。この積層体を、以下のサイクルに従ってオーブン中で加熱した:2℃/分で室温から80℃まで、80℃で30分間、2℃/分で80℃から160℃まで、160℃で60分間、2℃/分で160℃から200℃まで、200℃で60分間。オーブンのスイッチを切り、積層体をオーブン中で室温まで放冷した。上側のPETフィルムを、強化シリコーン樹脂フィルムから分離し(剥ぎ取り)、次いでシリコーン樹脂フィルムを下側のPETフィルムから分離した。この強化シリコーン樹脂フィルムの機械的特性を、表1に示す。
【0191】
(実施例5)
強化シリコーン樹脂フィルムを、実施例2のシリコーン組成物の代わりに実施例3のシリコーン組成物を用いたことを除いて、実施例4の方法に従って調製した。この強化シリコーン樹脂フィルムの機械的特性を、表1に示す。
表1
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化シリコーン樹脂フィルムを調製する方法であって、
ナノ材料充填シリコーン組成物中で繊維強化材を含浸する工程であって、前記ナノ材料充填シリコーン組成物は、
1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物と、
カーボンナノ材料と
を含む工程と、
前記含浸された繊維強化材の前記シリコーン樹脂を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、(A)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する)と、(B)前記シリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、(A’)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有するシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、Rは、Rまたは−Hであり、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する)と、(B’)前記シリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、(A)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂と、(B)前記シリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒と、(D)(i)RSiO(RSiO)SiR(IV)および(ii)RSiO(RSiO)SiR(V)から選択される式を有するシリコーンゴム(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字aおよびbは各々1〜4の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、w+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂および前記シリコーンゴム(D)(i)は、各々、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、前記シリコーンゴム(D)(ii)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、かつ前記シリコーン樹脂(A)中のケイ素に結合したアルケニル基に対する前記シリコーンゴム(D)中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子のモル比は0.01〜0.5である)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、(A’)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有するシリコーン樹脂と、(B’)前記シリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒と、(D)(i)RSiO(RSiO)SiR(IV)および(ii)RSiO(RSiO)SiR(V)から選択される式を有するシリコーンゴム(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字aおよびbは各々1〜4の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂および前記シリコーンゴム(D)(ii)は各々1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、前記シリコーンゴム(D)(i)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、前記シリコーン樹脂(A’)中のケイ素に結合した水素原子に対する前記シリコーンゴム(D)中のケイ素に結合したアルケニル基またはケイ素に結合した水素原子のモル比は0.01〜0.5である)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、(A”)式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(I)を有するシリコーン樹脂および式RSiO(RSiO)SiR(VI)を有するシリコーンゴムを、ヒドロシリル化触媒および任意に有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することにより調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字cは4より大きい〜1,000の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂(I)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、前記シリコーンゴム(VI)は、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、かつ前記シリコーン樹脂(I)中のケイ素に結合したアルケニル基に対する前記シリコーンゴム(VI)中のケイ素に結合した水素原子のモル比は、0.01〜0.5である)と、(B)前記ゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、(A”’)ヒドロシリル化触媒および任意に有機溶媒の存在下で、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(III)を有するシリコーン樹脂および式RSiO(RSiO)SiR(VII)を有するシリコーンゴムを、ヒドロシリル化触媒および任意に有機溶媒の存在下で反応させて可溶性の反応生成物を形成することによって調製されるゴムで変性されたシリコーン樹脂(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、RはRまたは−Hであり、添え字dは4より大きい〜1,000の値を有し、wは0〜0.95であり、xは0〜0.95であり、yは0〜1であり、zは0〜0.95であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.05〜1であり、かつw+xは0〜0.95であるが、ただし前記シリコーン樹脂(III)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有し、前記シリコーンゴム(VII)は1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有し、前記シリコーン樹脂(III)中のケイ素に結合した水素原子に対する前記シリコーンゴム(VII)中のケイ素に結合したアルケニル基のモル比は0.01〜0.5である)と、(B’)前記ゴムで変性されたシリコーン樹脂を硬化させるのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が、さらに(E)(i)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合したアルケニル基および25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有するオルガノシロキサン((E)(i)の粘度は、前記シリコーン組成物の前記シリコーン樹脂の粘度の20%以下であり、前記オルガノシロキサンは、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、RはRまたはアルケニルであり、mは0〜0.8であり、n=0〜1であり、p=0〜0.25であり、q=0〜0.2であり、m+n+p+q=1であり、かつm+nは0に等しくないが、ただしp+q=0であるとき、nは0に等しくなく、かつ前記アルケニル基はすべてが末端にあるわけではない)を有する)と、(ii)(E)(i)中のアルケニル基1モルあたり0.5〜3モルの(E)(ii)中のケイ素に結合した水素原子を提供するのに十分な量の、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子および25℃で0.001〜2Pa・sの粘度を有するオルガノハイドロジェンシロキサン(前記オルガノハイドロジェンシロキサンは式(HRSiO1/2(RSiO3/2(SiO4/2を有する(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10ハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらはともに脂肪族不飽和を含まず、sは0.25〜0.8であり、tは0〜0.5であり、vは0〜0.3であり、s+t+v=1であり、かつt+vは0に等しくない))とを含む、反応性希釈剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記成分(B)の有機ケイ素化合物が、式(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(II)(式中、RはC〜C10のヒドロカルビルまたはC〜C10のハロゲン置換されたヒドロカルビルであり、これらは両方とも脂肪族不飽和を含まず、RはRまたは少なくとも1つのケイ素に結合した水素原子を有する有機シリルアルキル基であり、wは0〜0.8であり、xは0〜0.6であり、yは0〜0.99であり、zは0〜0.35であり、w+x+y+z=1であり、y+zは0.2〜0.99であり、かつw+xは0.01〜0.8であるが、ただし基Rのうちの少なくとも50mol%は有機シリルアルキルである)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、請求項2、請求項4、または請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノ粒子、繊維状カーボンナノ材料および層をなしたカーボンナノ材料から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維強化材がガラス繊維または石英繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記シリコーン樹脂フィルムの少なくとも一部分の上にコーティングを形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティングが硬化したシリコーン樹脂である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1または請求項12に記載の方法に従って調製した強化シリコーン樹脂フィルム。

【公表番号】特表2010−519381(P2010−519381A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550872(P2009−550872)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/001314
【国際公開番号】WO2008/103227
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(506143975)ダウ コーニング コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】