説明

強化ハロゲンフリー難燃性ポリエステル組成物

本発明は、ハロゲンフリー難燃剤系、熱可塑性ポリエステルおよび1〜20重量%の量の、熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロックを含む、ハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物に関する。本発明はまた、繊維、フィルムおよび射出または押出成形品の製造への、ハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステルとハロゲンフリー難燃剤系(halogen free flame retardant system)とを含むハロゲンフリー難燃性ポリエステル組成物に関する。本発明は特に、電気および電子用途、とりわけランプ部品に使用できる構造部品の製造に用いることができるハロゲンフリー難燃性ポリエステル組成物に関する。
【0002】
電気および電子用途に用いられる熱可塑性ポリマー組成物の市場は、長年にわたりハロゲン含有難燃剤を含んでいる難燃性組成物に頼ってきた。さまざまな理由のため、ここ数年の間にハロゲン含有難燃剤を受け入れる傾向は非常に劇的に変化し、その結果として、ハロゲンフリーの代替手段への市場の関心が著しく高まってきた。このことはハロゲンフリー難燃性ポリエステル組成物についても当てはまる。
【0003】
そのような組成物は独国特許出願公開第19827845A1号明細書から知られている。この周知の組成物は、熱可塑性ポリエステルおよび窒素化合物と無機リン化合物と有機リン化合物とを組み合わせて含んでいるハロゲンフリー難燃剤系を含み、それらの化合物の存在量はそれぞれ全組成物を基準にして1〜30重量%でなければならない。独国特許出願公開第19827845A1号明細書によれば、熱可塑性材料に原則として使用できるハロゲンフリー難燃剤には4つのグループがあり、それらは無機難燃剤、(メラミンシアヌレートのような)窒素含有の難燃剤、リン含有の難燃剤、ならびにリンおよび窒素含有の難燃剤である。また独国特許出願公開第19827845A1号明細書によれば、それらのグループのそれぞれには特有の欠点があり、非常に多量の場合しか機能しないか(無機難燃剤)またはポリエステルではまったく機能しないか(リン含有の難燃剤)または単独で使用した場合にポリエステルで機能しない(窒素含有の難燃剤)といった欠点がある。そのほかにも、機械的性質の問題(特に、含まれる補強剤が10%未満である組成物の場合)、加工の問題、ならびに移行およびブルーミングの問題がある。前述のように独国特許出願公開第19827845A1号明細書の周知の組成物は、3種類の難燃性化合物を組み合わせたものを含んでいる。独国特許出願公開第19827845A1号明細書中の実施例は、典型的には、45重量%のポリエステル(ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリエチレンテレフタレート(PET)など)、25重量%の前記難燃剤の組合わせ)、および30重量%のガラス繊維補強材を含んでいる。独国特許出願公開第19827845A1号明細書は、ガラス繊維の含量の少ない実施例も、さらにはガラス繊維を含まない実施例も含んでいない。
【0004】
幾つかの用途では、流動性を損なわずに、30重量%のような多くの量のガラス繊維補強材を使用することはできないか、さらにはまったく使用することができず、一方では、他の特定の場合には25重量%よりもさらに多くの量の難燃剤が必要とされることを、本発明者らは経験から知るようになった。例えば、強化されていないポリエステル組成物において窒素含有の化合物(メラミンシアヌレートなど)が主要な難燃剤としてかなり多量に使用されると、良好な難燃特性(flame retardancy properties)を得ることができることが見出された。しかし、含まれる補強剤が少なく、かつ/または含まれる難燃剤の多いそのようなポリエステル組成物は機械的性質が劣るということも経験から知った。特に、補強剤を含まずかつ難燃剤の含量が多い組成物は、構造部品に用いるのに十分の剛性を有するが、そのような用途の場合にはあまりにも砕けやすく、かつ破断点伸びが低すぎる。
【0005】
したがって本発明の目的は、難燃性ポリエステル組成物を強化すること、すなわち、ハロゲンを含まず、優れた難燃性を有し、しかも十分な剛性および強度を保持するとともに延性および破断点伸びが向上しているという点で機械的性質の向上したポリエステル組成物を提供することである。
【0006】
この目的は、組成物が、熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロック(soft blocks)を熱可塑性ポリエステルとソフトブロックの全重量を基準にして1〜20重量%で含む、本発明による難燃性熱可塑性ポリエステル組成物によって達成された。熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロックを1〜20重量%で含む本発明による組成物の熱可塑性ポリエステルの効果は、剛性および強度が十分であるという点で優れた機械的性質を保持しつつ、組成物の延性および破断点伸びが向上する一方、難燃性はほんの少しの程度しか影響されず、良好なレベルに保たれることである。さらなる効果として、特別の場合には、難燃剤系の量をさらに増やしてもよく、それによって難燃性は向上し、その一方で、難燃剤含量の少ない文献の未変性難燃性組成物の破断点伸びよりも高い破断点伸びが維持されるという点がある。
【0007】
この効果は、難燃性ポリエステル組成物が、例えば、40重量%の量で使用できるゴムエラストマーを含むことがあることを述べている独国特許出願公開第19827845A1号明細書を考慮しても意外なことである(独国特許出願公開第19827845A1号明細書、第8頁第63行〜第11頁第48行)。そのようなポリマーは一般にプラスチック配合物の強化剤(tougheners)として使用され、また独国特許出願公開第19827845A1号明細書で引用されているように、例えば、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,Bd 14/1(Georg−Thieme Verlag,Stuttgart,1061),page 392−406および“Toughened Plastic”by C.B.Bucknall(Applied Scientific Publishers,London,1977)に記載されている。本発明者らが見出したように、本発明による共重合ソフトブロックの効果と比べて、そのようなゴムエラストマーの場合、難燃剤の含量が多く、かつガラス繊維補強材の含量が少ないかまたはまったくないハロゲンフリー難燃性ポリエステル組成物の耐衝撃性への効果が限られており、その伸長特性への効果があまり良好でなく、それと同時に、40重量%よりかなり少ない使用量の場合でさえ、難燃性への効果が著しくおもわしくない。
【0008】
ソフトブロックという用語は、本明細書では、ガラス転移温度の低い非晶質ポリマー相を有するポリマーとなるようにするポリマーの構造要素または成分と理解される。さらに、ガラス転移温度の低いポリマー相は分離相を形成するソフトブロックによって起こり、一方、ガラス転移温度(Tg)は一般にソフトブロックの軟化点に近くなる。このため、非晶質ポリマー相のTgは本明細書ではソフトブロックのTgとして示される。
【0009】
好適には、本発明による組成物の熱可塑性ポリエステルにおいて共重合されているソフトブロックは、Tgが0℃以下、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下、もっとも好ましくは−40℃〜−60℃である。
【0010】
「熱可塑性ポリエステル」という用語は、本明細書では、次式Iで表わされる、二酸およびジオールの残余構成要素から本質的に構成されるポリマーと理解される。
HO−[−{−C(O)−R−C(O)−}−{O−R−O−}−]−H (I)
(式中、−C(O)−R−C(O)−は、ジカルボン酸の残余構成要素を表し、−O−R−O−はジオールの残余構成要素を表す。)
【0011】
そのようなポリエステルは、当該技術分野における周知の方法を用いて、二酸またはそのエステル誘導体とジオールとを重縮合させることによって調製できる。二酸またはそのエステル誘導体およびジオールのほかに、任意選択的に少量の他の成分(一官能価および三官能価のアルコールおよび三官能価のカルボン酸を含む)を重縮合のときに使用でき、その残余構成要素が熱可塑性ポリマー中に存在していてよい。但し、これらのポリエステルが溶融加工可能のままであるという条件付きである。
【0012】
本発明による組成物に使用する熱可塑性ポリエステルは、好適には非晶質ポリエステルまたは半結晶質ポリエステルである。熱可塑性ポリエステルは、典型的にはガラス転移温度(Tg)を有する非晶質ポリエステルまたは溶融温度(Tm)を有する半結晶質ポリエステルであり、ここでTgおよびTmはそれぞれ室温よりかなり上であり、好ましくは150℃より上、より好ましくは180℃より上である。なおTgおよびTmはそれぞれ250℃より高くてもよく、実に300℃もの高さであるか、さらにはそれよりも高くてもよい。したがって熱可塑性ポリエステルは、ハードポリエステルと見なすこともでき、これは低いTgを有するソフトブロックとは対照的である。
【0013】
好ましくは、熱可塑性ポリエステルは、溶融温度Tmが200℃〜300℃、より好ましくは220℃〜250℃の範囲のある半結晶質ポリエステルである。TgまたはTmの最小値が大きくなると、本発明の組成物から製造される成形物の使用温度範囲(temperature application range)が広くなるが、TgまたはTmの最大値が小さい場合ならびに半結晶質ポリエステルの場合には、加工特性が向上し、前記使用温度範囲での伸び率の点で機械的性質が向上する。
【0014】
溶融温度という用語は、本明細書では、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定された場合に、融点範囲に含まれ、かつ最大溶融速度を示す温度と理解されるという点が注目される。
【0015】
同様に、ガラス転移温度という用語は、本明細書では、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定された場合に、ガラス転移域に含まれ、かつ最大ガラス転移速度を示す温度と理解される。
【0016】
より好ましくは、熱可塑性ポリエステルは半結晶質の半芳香族(semi−aromatic)ポリエステルである。前記半結晶質の半芳香族ポリエステルは一般には、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、および少なくとも1種のアルキレンジオールおよび/または芳香族ジオールから得られ、ホモポリマーならびにコポリマーを含む。そのような半芳香族ポリエステルは、式I(式中、Rは芳香族基を表し、Rはアルキレンまたは芳香族基を表す)によって表わされる。
【0017】
好適な芳香族二酸の例として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などがあり、テレフタル酸が好ましい。好適なアルキレンジオールとしては、脂肪族ジオールおよび脂環式ジオール((cyclo)aliphatic for diols)の両方がある。好適な芳香族ジオールは、例えば、ヒドロキノン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオールである。エチレンジオール、プロピレンジオール、1,4−ブチレンジオールまたはブタンジオール、ネオペンチルジオール(neopentyldiol)、およびシクロヘキサンジメタノールのようなアルキレンジオールが好ましい。
【0018】
こうした半芳香族ポリマーは、例えば、脂肪族ジカルボン酸、一官能価のアルコールおよび/またはカルボン酸および三官能価またはそれ以上のアルコールおよび/またはカルボン酸を少量だけさらに含んでもよい。好ましくは、こうしたポリエステル中の他成分の含量は、ポリエステルが半結晶性であるようにするために、ポリエステルの全重量を基準にして20重量%未満、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。
【0019】
より好ましくは、本発明による難燃性ポリエステル組成物中の「ハード」熱可塑性ポリエステルは、二酸、ジオールおよび任意選択の少量の一官能価および/または三官能価成分の、残余構成要素からなる半芳香族ポリエステルであって、二酸の残余構成要素は二酸の残余構成要素の全重量を基準にしてその少なくとも90重量%が芳香族二酸から得られ、ジオールの残余構成要素はジオールの残余構成要素の全重量を基準にしてその少なくとも90重量%が2〜6個のC原子を有する短鎖アルキレンジオールから得られる半芳香族ポリエステルである。
【0020】
本発明による組成物に使用できる好適な半芳香族熱可塑性ポリエステルは、例えば、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレート、およびポリアルキレンビスベンゾエート(polyalkylene bisbenzoates)およびそれらの任意のコポリマーおよび任意の混合物である。これらのポリエステルは、アルキレンジオールと、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸および4,4’−ジフェニルジカルボン酸のそれぞれから得られる。
【0021】
好適には、ポリアルキレンテレフタレートは、ポリ(1,4−シクロヘキサン−ジメチレンテレフタレート)(PCT)、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、およびポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(または単にポリブチレンテレフタレート(PBT)と呼ばれる)のような2〜6個の炭素原子を有する脂肪族ジオールをベースにしたポリ(アルキレンテレフタレート)である。
【0022】
好適なポリ(アルキレンナフタレート)としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリブチレンナフタレート(PBN)がある。好適なポリアルキレンビスベンゾエートとしては、ポリエチレンビスベンゾエート(PEBB)およびポリブチレンビスベンゾエート(PBBB)がある。好適には、これらの半芳香族熱可塑性ポリエステルは、少量の別のジカルボン酸またはジオールを含む。
【0023】
これらのポリエステルのうち、PET、PTT、PBT、PEN、PTN、PBN、およびこれらの任意の混合物またはコポリマーが好ましい。より好ましくは、熱可塑性ポリエステルはPBTを含むか、さらには本質的に、さらには完全にPBTから構成される。これは、PBTにより機械的性質、難燃性、加工性および経済性の最適な組合わせが得られるからである。
【0024】
「熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロック」という表現における「化学結合した」という用語は、本明細書では、ソフトブロックが「ハード」熱可塑性ポリエステルと単にブレンドされているのではなく、ソフトブロックが熱可塑性ポリエステルまたはその少なくとも一部と共重合した(または反応した)化学過程の結果としてその一体部分を形成することと理解される。
【0025】
「熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロック」という用語によって、本明細書では、上述の化学過程で前記化学結合ソフトブロックによって変性された熱可塑性ポリエステルからなるもの以外の、難燃性熱可塑性ポリマー組成物中のポリマーおよび、任意選択で、熱可塑性ポリエステルとは異なる他の熱可塑性ポリマーが、前記化学結合ソフトブロックよって変性された熱可塑性ポリエステルと未変性熱可塑性ポリエステル(すなわち、ソフトブロックで変性されていない熱可塑性ポリエステル)と、任意選択で、熱可塑性ポリエステルとは異なる他の熱可塑性ポリマーとのブレンドから構成されていてもよいということも理解される。
【0026】
ソフトブロックは、エステル結合、ウレタン結合および/またはアミド結合によって「ハード」熱可塑性ポリエステルに化学結合させることができる。エステル結合、アミド結合、ウレタン結合および/または尿素結合によって熱可塑性ポリエステルに化学結合されるソフトブロックはそれぞれ、ヒドロキシル官能性成分をカルボキシル官能性成分と反応させ(こうしてエステル結合が形成される)、カルボキシル官能性成分をアミン官能性成分と反応させ(こうしてアミド結合が形成される)、ジイソシアネートで変性されたヒドロキシル官能性成分を他のヒドロキシル官能性成分と反応させ(こうしてウレタン結合が形成される)、またジイソシアネートで変性されたヒドロキシル官能性成分をアミン官能性成分と反応させる(こうして尿素結合が形成される)方法によって調製できる。
【0027】
好適には、本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物中のソフトブロックは、長鎖脂肪族ジカルボン酸、長鎖脂肪族ジオール、長鎖脂肪族ジアミン、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルグリコール、ソフトポリエステルおよびソフトポリカーボネート、およびそれらの組合わせからなる群から選択される化合物から得られるポリマーセグメントから構成される。
【0028】
ソフトセグメントを得ることができる長鎖脂肪族二酸は、ハードブロック(hard block)ポリエステルセグメントから相分離することができる任意の脂肪族二酸であってよく、こうしてゴム状弾性を有するコポリエステルエラストマーが得られる。
【0029】
好適な長鎖脂肪族二酸の例として、ダイマー脂肪酸(dimer fatty acids)(例えば、オレイン酸とリノール酸から得られる)として知られる化合物がある。長鎖脂肪族二酸は、好適には直鎖または分岐であってよい。ダイマー脂肪酸は、例えば、オランダ国のUnichemaからPripolという商品名で入手できる。
【0030】
ソフトセグメントを得ることができる長鎖脂肪族ジオールは、末端ヒドロキシル基を有する任意の脂肪族ポリマーであってよい。好適には、長鎖脂肪族ジオールはポリエンジオール、例えば、ポリブタジエンジオールまたはその水素化誘導体である。
【0031】
長鎖脂肪族ジアミンは、末端第一アミン基を有する任意の脂肪族ポリマーであってよい。好適には、長鎖脂肪族ジオールはポリエンジオールであり、例えば、ポリブタジエンジオールまたは水素化誘導体(ヒドロキシル基が第一アミン基で置換されたもの)である。
【0032】
長鎖脂肪族二酸ならびに長鎖脂肪族ジオールおよび長鎖脂肪族ジアミンは、数平均分子量(Mn)が広い範囲にわたってさまざまであってよく、数平均分子量はわずか400であるか、さらにはそれより小さくてよく、また2000もの大きさであるか、さらにはそれより大きくてもよい。好ましくは、長鎖脂肪族二酸、長鎖脂肪族ジオールおよび長鎖脂肪族ジアミンはそれぞれ数平均分子量(Mn)が500〜1200、より好ましくは550〜1000、さらには600〜800の範囲である。分子量が大きくなると、相分離が改善され、ゴム状弾性が増大するという利点がある。
【0033】
ソフトブロックを得ることができる好適なポリエーテルグリコールは、例えば、ポリアルキレンオキシドグリコール(polyalkylene oxide glycols)である。好適には、ポリアルキレンオキシドグリコールは、オキシラン誘導体、オキセタン誘導体および/またはオキソラン誘導体をベースにしたホモポリマーまたはコポリマーである。ポリアルキレンオキシドグリコールのベースとなりうる好適なオキシラン誘導体の例として、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドがある。対応するポリアルキレンオキシドグリコールホモポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはポリエチレンオキシドグリコール(またPEGまたはpEOと略される)、およびポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドグリコール(またPPGまたはPPOと略される)という名前でそれぞれ知られている。ポリアルキレンオキシドグリコールのベースとなりうる好適なオキセタンの例は、1,3−プロパンジオールである。対応するポリアルキレンオキシドグリコールホモポリマーは、ポリ(トリメチレン)グリコールという名前で知られている。ポリアルキレンオキシドグリコールのベースとなりうる好適なオキソランの例は、テトラヒドロフランである。対応するポリアルキレンオキシドグリコールホモポリマーは、ポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG)またはポリテトラヒドロフラン(PTHF)という名前で知られている。ポリアルキレンオキシドグリコールコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはそれらの混合構造体であってよい。好適なコポリマーとして、例えば、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(またはEO/POブロックコポリマー)、特に末端がエチレンオキシドのポリプロピレンオキシドグリコールがある。
【0034】
ポリアルキレンオキシドは、アルキレンジオールまたはアルキレンジオール混合物または低分子量ポリアルキレンオキシドグリコールまたは前述のグリコール類の混合物の、エーテル化生成物をベースにすることもできる。
【0035】
好ましくは、本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物中のソフトブロックに使用するポリアルキレンオキシドグリコールは、ポリプロピレンオキシドグリコールホモポリマー(PPG)、エチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(EO/POブロックコポリマー)およびポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG)、およびそれらの組合わせからなる群から選択される。より好ましくは、ポリアルキレンオキシドグリコールはポリテトラメチレンオキシドグリコールを含むか、またはさらにはそれから構成される。
【0036】
好適なポリエーテルジアミンは、例えば、ヒドロキシル末端基が第一アミン基で置換された、ポリアルキレンオキシドグリコールから得られるジアミンである。好適には、ポリエーテルジアミンは、ポリエーテルグリコールに関して本明細書で上述した1種または複数種のポリアルキレンオキシドグリコールから得られる。ポリアルキレンオキシドグリコールから得られるそのようなポリエーテルジアミンは、Jeffamineという商品名で市販されている。
【0037】
好ましくは、ポリエーテルジアミンは、ポリテトラメチレンオキシドグリコールを含むかさらにはそれから構成されるポリアルキレンオキシドグリコールから得られる。
【0038】
ソフトブロック中のポリエステルポリマーセグメントを得ることができるソフトポリエステルは、好適には、少なくとも1種のアルキレンジオールおよび少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸から得られかつ/または少なくとも1種のラクトンおよび/またはヒドロキシル官能性脂肪族カルボン酸から得られる、反復単位から構成される。
【0039】
好適な脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、およびそれらの混合物がある。また、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールあるいは1,3−または1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサンなどの他のグリコール類を、低融点成分に組み込むこともできる。ある状況下では、例えば、最終生成物の溶融粘度を増大させる場合には、いくらかの少量の高官能性化合物を取り込むことを推奨できる。そのような化合物の例として、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびヘキサントリオールがある。
【0040】
好ましくは、ソフトポリエステルポリマーセグメント中の脂肪族ジオールは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、およびそれらの組合わせを、ソフトポリエステルポリマーセグメント中の脂肪族ジオールの総モル量を基準にして、少なくとも50モル%、さらにより好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも90モル%で含み、さらにはその100%が前記脂肪族ジオールで構成される。
【0041】
好適な脂肪族ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、イソセバシン酸およびリシノール酸である。またヘテロ原子を有する脂肪族ジカルボン酸(チオジプロピオン酸など)を低融点の二官能性化合物に使用してよい。加えて、さらに脂環式ジカルボン酸(1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など)およびテレフタル酸およびイソフタル酸などを挙げることができ、これらはソフトポリエステルセグメント中に少量含まれてもよい。
【0042】
好ましくは、ソフトポリエステルポリマーセグメント中のジカルボン酸はアジピン酸を含み、より好ましくはソフトポリエステルポリマーセグメント中のジカルボン酸の総モル量を基準にしてその少なくとも50モル%、さらにより好ましくは少なくとも70モル%、さらには少なくとも90モル%がアジピン酸で構成され、さらにはその100%がアジピン酸で構成される。
【0043】
ソフトブロック中のポリカーボネートポリマーセグメントを好適に得ることができるソフトポリカーボネートは、式IIで表わされる反復単位を含むポリアルキレンポリカーボネートから好適に得ることができる。
[−(CR−O−C(O)−O−] (II)
上式で、RおよびRは同じかまたは異なり、かつ水素原子、アルキル基および/またはアリール基であり、xは2〜20の範囲の整数である。好適には、反復単位はヘキサメチレンカーボネート(hexamethylene carbonate)である。すなわち、RおよびRが水素基であり、xが6である。好ましくは、ソフトブロック中のポリカーボネートポリマーセグメントは、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)から構成される。
【0044】
また好適には、ソフトブロック中のポリマーセグメントは、ソフトポリカーボネートの反復単位とソフトポリエステルの反復単位とのコポリマーを含むか、またはそれから構成される。言い換えれば、ポリマーセグメントは、(i)少なくとも1種のアルキレンジオールおよび少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸から得られ、かつ/または少なくとも1種のラクトンおよび/またはヒドロキシル官能性脂肪族カルボン酸から得られる反復単位、および(ii)上述の式IIに従った反復単位(式中、RおよびRは同じかまたは異なり、かつ水素原子、アルキル基および/またはアリール基であり、xは2〜20の範囲の整数である)を含むか、またはそれらから構成される。ここで、反復単位はそれぞれ、ソフトポリカーボネートおよびソフトポリエステルに関して本明細書で上述したものと同じであってよい。
【0045】
ポリエーテルグリコール、ならびにポリエーテルジアミン、ソフトポリエステルおよびポリカーボネートは、数平均分子量(Mn)が広い範囲にわたってさまざまであってよく、数平均分子量はわずか500であるか、さらにはそれより小さくてよく、また5000もの大きさであるか、さらにはそれより大きくてもよい。好ましくは、ポリエーテルグリコール、ポリエーテルジアミン、ソフトポリエステルおよびポリカーボネートはそれぞれ、数平均分子量(Mn)が800〜3000の範囲、より好ましくは1000〜2000、さらには1200〜1800の範囲である。分子量が大きくなると、相分離が改善され、ゴム状弾性が増大するという利点がある。
【0046】
本発明による熱可塑性組成物に化学結合したソフトブロック間のウレタン結合または尿素結合に使用できる好適なジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、フェニルジイソシアネートおよびメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)などの芳香族ジイソシアネート、ならびにヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートまたはジイソシアン酸イソホロン(IPDI)などの脂肪族ジイソシアネートがある。好ましくは、ジイソシアネートは芳香族ジイソシアネートであり、より好ましくはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)である。
【0047】
本発明の好ましい実施態様では、ソフトブロックは、ポリ(テトラメチレン)グリコールから得られるソフトブロックを含むか、またはそれから構成される。ソフトブロックがポリ(テトラメチレン)グリコールから得られるこの実施態様は、難燃性熱可塑性ポリマー組成物中に所与の量のソフトブロックが存在すると、組成物は、他のソフトブロックと比べて伸び率が大きくなり、それと共に弾性率がよく保持されるという利点がある。
【0048】
好適には、本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物中の熱可塑性ポリマーは、未変性熱可塑性ポリエステルと化学結合ソフトブロックで変性された熱可塑性ポリエステルとのブレンドを含み、ソフトブロックが多量に(例えば、熱可塑性ポリエステルとソフトブロックの全重量を基準にして35〜75重量%の範囲で)存在する。
【0049】
「未変性熱可塑性ポリエステル」という用語は、本明細書では、化学結合ソフトブロックで変性されていない熱可塑性ポリエステルと理解される。これは、化学結合ソフトブロックで変性された熱可塑性ポリエステルとは対照をなす。
【0050】
化学結合ソフトブロックで変性された熱可塑性ポリエステルであって、ソフトブロックがそのように多量に存在し、かつ長鎖脂肪族ジカルボン酸、長鎖脂肪族ジオールおよびソフトポリエステルから得られるポリマーセグメントから構成される、熱可塑性ポリエステルおよびその製造については、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.12,page 107−109に記載されているのに対し、ポリエーテルグリコールから得られるポリマーセグメントからなるソフトブロックで変性された対応する熱可塑性ポリエステルは、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.12,page 75−85に記載されており、またソフトポリカーボネートから得られるソフトブロックで変性された熱可塑性ポリエステルについては、例えば、欧州特許第0868478B1号明細書に記載されている。
【0051】
多量の化学結合ソフトブロックで変性された熱可塑性ポリエステルは、ポリエステルエラストマーとしても知られている。
【0052】
本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物で使用する、1〜20重量%の化学結合ソフトブロックで変性された熱可塑性ポリエステルは、熱可塑性ポリエステルをそのようなポリエステルエラストマーとブレンドして製造すること以外は、ポリエステルエラストマーに関して使用される同様な方法で製造できるが、但し、ソフトブロックの量を1〜20重量%に調節する。
【0053】
本発明の好ましい実施態様では、難燃性熱可塑性ポリマー組成物は、未変性熱可塑性ポリエステルと、ウレタン基を介して熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトポリエステルから得られるソフトブロックで変性された半結晶質熱可塑性ポリエステルからなるコポリエステル−エステルエラストマーとのブレンドを含む。未変性熱可塑性ポリエステルと前記コポリエステル−エステルエラストマーとのブレンドを含むこの実施態様の場合、所与の量のソフトブロックが難燃性熱可塑性ポリマー組成物中に存在すると、組成物は、別のソフトブロックを有する他の組成物と比べて、難燃性がよりいっそう保持され、その結果として難燃性等級が高くなり、かつ/または同じ難燃性等級を得るために使用する難燃剤が少なくてすむことになるという利点がある。
【0054】
難燃性熱可塑性ポリマー組成物中のソフトブロックは、熱可塑性ポリエステルとソフトブロックの重量を基準にして、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは5〜12重量%の量、もっとも好適には7.5〜10重量%の範囲で存在する。最小量が多くなると、伸び率がさら増大し、かつ/または難燃剤がさらに多く存在してよいので難燃性の性能の向上が可能になるという利点がある。一方、最大量が少なくなると、大きな弾性率が得られ、無充填の未変性熱可塑性ポリエステルの弾性率に匹敵するか、さらにはそれより上のレベルに維持されるという利点がある。
【0055】
熱可塑性ポリエステルおよび化学結合ソフトブロックのほかに、難燃性熱可塑性ポリマー組成物は、未変性熱可塑性ポリエステルとコポリエステルエラストマーとのブレンドの形で任意選択的に、熱可塑性ポリアミド、コポリアミドエラストマーおよび熱可塑性ポリカーボネートなどの他の熱可塑性ポリマーを含め他のポリマーを含んでもよい。任意の他のポリマーが存在する場合、コポリアミドエラストマーが好ましい。利点として、破断点伸びおよび熱的性質がよりいっそう保持されるか、さらには向上するということがある。
【0056】
好ましくは、難燃性熱可塑性ポリマー組成物は、前記他のポリマーを、難燃性熱可塑性ポリマー組成物中のポリマー成分の全重量を基準にして50重量%以下、より好ましくは25重量%以下、10重量%さらには5重量%以下の量で含む。
【0057】
本発明によるハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物は、ハロゲンフリー難燃剤系を含む。この難燃剤系は、好適には、窒素含有の難燃剤、リン含有の難燃剤、リンおよび窒素含有の難燃剤および無機難燃剤からなる群から選択される1種または複数種の難燃性化合物を含む。ハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物はまた、好ましくは赤リンなどの元素リン(elementary phosphorous)を含まない。上述の群から選択される難燃性化合物は、化合物という言葉からすでに示唆されているように、元素リンを明確に除外している。
【0058】
これらの難燃性化合物として、単独使用した場合に難燃剤であり、かつ/または1種または複数種の他の難燃剤と組み合わせて使用した場合には難燃相乗剤である、任意の窒素および/またはリン含有の化合物または無機化合物を選択してよい。難燃相乗剤とは、本明細書では、1種または複数種の他の難燃剤を含む熱可塑性ポリマー組成物の難燃特性を向上させることができ、かつ別の難燃剤を含んでいない組成物で同じ化合物を使用した場合と比べて、より効果的にそのように機能する(すなわち、効果のより大きい)化合物と理解される。
【0059】
成分(C)として使用できる好適な窒素含有および窒素およびリン含有の化合物については、例えば、PCT/EP97/01664号明細書、独国特許出願公開第19734437号明細書、独国特許出願公開第1973772号明細書、および独国特許出願公開第19614424号明細書に記載されている。
【0060】
好適には、窒素含有の難燃剤は、グリコウリル(glycouril)、ジシアンジアミド、アラントイン、トリアジン、グアナミン、グアニジン、シアヌレート、イソシアヌレート、カルボジイミド、ならびにそれらの任意の誘導体、混合物および塩からなる群から選択される。窒素含有の難燃剤の好適な塩は、例えば、リン酸塩、ホウ酸塩およびシュウ酸塩である。リン酸塩については、窒素およびリン含有の化合物の部分でさらに詳しく扱われることになる。
【0061】
好適なグアナミンの例はベンゾグアナミンである。好適なイソシアヌレートの例として、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートがある。好適なトリアジンの例は、メラミンおよびメラミン系難燃剤(メラミンシアヌレートおよびメラミン縮合物など)である。メラミンの縮合物として、例えば、メレム(melem)、メラム(melam)およびメロン(melon)、さらにより高度な誘導体(higher derivatives)ならびにそれらの混合物がある。これらの縮合物は一般に、メラミンの種々のオリゴマーの混合物を含む。主要成分としてメラム、メレム、およびメロンはそれぞれ、メラミンのダイマー、トリマーおよびテトラマーを含む。メラミン縮合物は、例えば、国際公開第96/16948A号パンフレットに記載されている方法で得ることができる。メラミン塩の例として、メラミン(ポリ)リン酸塩、ホウ酸メラミン(melamine borates)およびシュウ酸メラミン(melamine oxalates)がある。
【0062】
好ましくは、窒素含有の難燃剤は、メラミンシアヌレート、メラミン縮合物、および/またはメラミン塩、より好ましくはメラミンシアヌレートを含む。メラミンシアヌレートの利点は、熱可塑性ポリエステルにおいて非常に優れた難燃特性を有する一方、高温条件/高湿度条件下で特性の保持を向上させることである。
【0063】
メラミンシアヌレートは、好ましくは等モル量のメラミンおよびシアヌル酸またはイソシアヌル酸の反応精製物である。これは、出発化合物の水溶液を90〜100℃で転化させることによって製造できる。メラミンシアヌレートは、粒径が広い範囲にわたってさまざまでありうる(一般には0.1〜100μmの範囲内)粒径分布を有する白色製品として市販されている。使用するメラミンシアヌレートは好ましくは粒径が小さいか、あるいは混合時にポリエステル連続相中で容易に分散させて小粒子にすることができる。好適には、メラミンシアヌレートの粒径分布は、中間粒径(d50)が約25マイクロメートル(μm)より小さく、かつ0.5μmより大きい。好ましくは中間粒径d50が1〜15μmの範囲内、より好ましくは2〜10μmの範囲内にある。中間粒径d50が2.5〜5μmの範囲にあるのが非常に好適である。
【0064】
本発明による難燃化熱可塑性ポリマー組成物に使用できる好適なリン含有の難燃剤としては、例えば、リン酸塩、ホスフィン酸塩およびホスホン酸塩およびそれらのオリゴマーおよびポリマー誘導体がある。好適には、これらのリン含有の難燃剤は金属塩の形で存在する。
【0065】
好ましくは、リン含有の難燃剤は、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸(diphosphinic acid)の1種または複数種の金属塩またはそれらのポリマー誘導体からなるホスフィン酸金属(metal phosphinate)である。
【0066】
好適には、ホスフィン酸金属は、式[RP(O)O]m+(式III)のホスフィン酸金属および/または式[O(O)PR−R−PR(O)O]2−m+(式IV)のジホスフィン酸金属および/またはそれらのポリマーであり、ここで、
− RおよびRは、水素、直鎖、分岐および環状のC1〜C6の脂肪族基、および芳香族基からなる群から選択される、同じかまたは異なる置換基であり、
− Rは、直鎖、分岐および環状のC1〜C10の脂肪族基およびC6〜C10の芳香族および脂肪族−芳香族基からなる群から選択され、
− Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、およびKからなる群から選択される金属であり、さらに
− m、nおよびxは、1〜4の範囲の同じかまたは異なる整数である。
【0067】
本発明中の成分Bとして使用できる好適なホスフィン酸金属については、例えば、独国特許出願公開第2252258号明細書、独国特許出願公開第2447727号明細書、PCT/国際公開第97/39053号パンフレットおよび欧州特許第0932643B1号明細書に記載されている。好ましいホスフィン酸塩は、ホスフィン酸アルミニウム、ホスフィン酸カルシウムおよびホスフィン酸亜鉛(すなわち、金属MがそれぞれAl、Ca、Znであるホスフィン酸金属)およびそれらの組合わせである。RおよびRが同じであるかまたは異なっており、かつH、直鎖または分岐のC〜Cのアルキル基、および/またはフェニルと等しいホスフィン酸金属も好ましい。特に好ましくは、RおよびRは同じかまたは異なっており、水素(H)、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびフェニルからなる群から選択される。より好ましくは、RおよびRは同じかまたは異なっており、H、メチルおよびエチルからなる置換基の群から選択される。
【0068】
また好ましくは、Rは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレンおよびナフチレンからなる群から選択される。
【0069】
極めて好ましくは、ホスフィン酸金属は、次リン酸塩および/またはC〜Cジアルキルホスフィン酸塩(dialkylphosphinate)、より好ましくは次リン酸カルシウムおよび/またはC〜Cジアルキルホスフィン酸アルミニウム(すなわち、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウムおよび/またはジエチルホスフィン酸アルミニウム)を含む。
【0070】
本発明による反射要素における難燃化ポリエステル組成物中の難燃剤として用いるのに適した窒素およびリン含有の化合物としては、本明細書で上述したリン含有の化合物および窒素含有の化合物の塩がある。
【0071】
好適には、窒素/リン含有の難燃剤は、アンモニア、メラミンおよび/またはその縮合物と、リン酸またはそのポリリン酸形態(polyphosphate modification)との反応生成物である。メラミン/またはその縮合物とリン酸との反応生成物とは、本明細書では、メラミンまたはメラミン縮合物(例えば、メレム、メラムおよびメロン)とリン酸との反応の結果生じる化合物と理解される。
【0072】
メラミンおよび/またはその縮合物とリン酸またはそのポリリン酸形態との反応生成物の例としては、例えば、PCT/国際公開第98/39306号パンフレットに記載されているリン酸ジメラミン(dimelaminephosphate)、ピロリン酸ジメラミン(dimelamine pyrophosphate)、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン(melamine polyphosphate)、ピロリン酸メラミン(melamine pyrophosphate)、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム(melam polyphosphate)、ポリリン酸メロン(melon polyphosphate)およびポリリン酸メレム(melem polyphosphate)がある。
【0073】
アンモニアとリン酸またはそのポリリン酸形態との反応生成物の好適な例としては、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびポリリン酸アンモニウムがある。
【0074】
より好ましくは、窒素/リン含有の難燃剤は、ポリリン酸アンモニウムおよび/またはポリリン酸メラミン、さらにより好ましくはポリリン酸メラミンを含む。
【0075】
好適には、本発明による組成物中の難燃剤系に使用できる無機化合物は、塩基性酸化物、両性酸化物、水酸化物、カーボネート、ケイ酸塩、ホウ酸塩、スズ酸塩、混合酸化物−水酸化物、酸化物−水酸化物−カーボネート、水酸化物−ケイ酸塩および水酸化物−ホウ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物を含む。
【0076】
好ましい金属酸化物は、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガンおよび酸化スズである。
【0077】
好ましい水酸化物は、水酸化アルミニウム、ボーマイト(bohmite)、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ジハイドロタルサイト(dihydrotalcite)、ハイドロカルマイト、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物(stannum oxidehydrate)および水酸化マンガンである。
【0078】
好ましくは、無機化合物は、ホウ酸亜鉛、塩基性のケイ酸亜鉛およびスズ酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ハイドロタルサイト、ジハイドロタルサイトおよびボーマイト、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される化合物を含むか、さらにはそのような化合物そのものであり、より好ましくはホウ酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトおよびジハイドロタルサイト、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される化合物を含むか、さらにはそのような化合物そのものである。
【0079】
もっとも好ましくは、無機化合物はホウ酸亜鉛を含むか、またはホウ酸亜鉛そのものである。
【0080】
好ましくは、難燃剤系は、窒素含有の難燃剤および/または窒素およびリン含有の難燃剤を含み、より好ましくは、メラミンシアヌレート、メラミン縮合物およびポリリン酸メラミンからなる群から選択されるメラミン系難燃剤を含み、もっとも好ましくはメラミンシアヌレートを含む。
【0081】
本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物は、総量が広い範囲にわたってさまざまである1種または複数種の難燃性化合物からなる難燃剤系を含むことができる。好適には、その量は組成物の全重量を基準にして少なくとも15重量%であるが、難燃性の要求条件がそれほど厳しくない用途の場合、使用量を少なくすることができる。好ましくは、難燃剤系を構成する1種または複数種の難燃性化合物の総量は、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%、30重量%、35重量%あるいはさらに40重量%であるが、その量は50、または55または60重量%、さらにそれを超えるほどであってよい。量が多くなるほど、ポリエステル組成物は一般に機械的性質の点でより重要なものとなり、また機械的性質への本発明によるソフトブロックの影響が大きくなる。
【0082】
本発明の好ましい実施態様では、難燃性熱可塑性ポリマー組成物は、窒素含有の難燃剤、リン含有の難燃剤、リンおよび窒素含有の難燃剤および無機難燃剤からなる群から選択される1種または複数種の難燃性化合物を、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして20〜60重量%の総量で含む。
【0083】
より好ましくは、前記総量は30〜55重量%、さらにより好ましくは40〜50重量%である。
【0084】
またより好ましくは、窒素含有の難燃剤、さらにより好ましくはメラミン系難燃剤、もっとも好ましくはメラミンシアヌレートが、それぞれ20〜60重量%、30〜55重量%および40〜50重量%の前記総量で含まれる。
【0085】
好適には、窒素含有の難燃剤、メラミン系難燃剤およびメラミンシアヌレートはそれぞれ、前記1種または複数種の難燃性化合物の総量の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%、60重量%またはさらには75重量%を占め、もっとも好ましくはその90〜100重量%を占める。本明細書におけるこの重量%は、前記1種または複数種の難燃性化合物の全重量を基準にしたものである。
【0086】
本明細書において上述した構成成分(すなわち、ポリマー成分および難燃剤系)に加えて、本発明による難燃化熱可塑性組成物は、充填剤、補強剤、安定剤、加工助剤、着色剤などの1種または複数種の補助添加剤をさらに含んでよい。
【0087】
難燃化ポリエステル組成物に使用できる充填剤、補強剤および他の補助添加剤は、難燃性熱可塑性組成物に従来使用されている任意のそのような化合物であってよい。
【0088】
補強剤は一般に、無機繊維材料から構成される。好適な補強剤としては、ガラス繊維および炭素繊維がある。本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物では、補強剤は広範囲にわたるさまざまな量で存在してよい。好ましくは、補強剤は、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして30重量%未満、より好ましくは0〜20重量%、もっとも好ましくは0〜10重量%の量で存在する。
【0089】
充填剤は一般に、小粒子からなる材料のような粉末で、典型的には粒径が1mm未満、好ましくは0.1mm未満、より好ましくは10μm未満のものである。充填剤の好適な例は、炭酸マグネシウム、カオリン、石英、炭酸カルシウムである。
【0090】
本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物では、充填剤は広範囲にわたるさまざまな量で存在してよい。好ましくは、充填剤は、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして30重量%未満、より好ましくは0〜20重量%、もっとも好ましくは0〜10重量%の量で存在する。
【0091】
他の補助添加剤は、好適には、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして0〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、または0.1〜5重量%、もっとも好ましくは1〜3重量%の総量で存在する。
【0092】
好適な安定剤としては、例えば、エステル交換抑制剤、紫外線安定剤、熱安定剤および酸化防止剤、ならびに熱酸化複合(combined thermo−oxidative)安定剤がある。熱安定剤および/または酸化防止剤として好適な添加剤は、例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノンである。好適な紫外線安定化剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、レソルシノール、およびサリチレート(salycilates)である。安定剤は好適には、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして0〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、または0.05〜2重量%、もっとも好ましくは0.1〜1重量%の総量で存在する。
【0093】
好適な加工助剤としては、脂肪酸およびその誘導体などの離型剤(ステアリン酸、ステアリルアルコール(stearic alcohol)およびステアリルアミド(stearic amide)を含む)、滑剤または粘度低下剤、および成核剤(タルクなど)がある。これらの添加剤は好適には、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして0〜3重量%、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の総量で使用する。
【0094】
好適な着色剤としては、顔料(二酸化チタンおよびカーボンブラックなど)、および染料(ニグロシンなど)がある。着色剤も好適には、難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして0〜3重量%、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の総量で使用する。
【0095】
本発明の特定の実施態様では、難燃化熱可塑性ポリマー組成物は、
A)熱可塑性ポリエステルとソフトブロックの全重量を基準にして1〜20重量%の量の、熱可塑性ポリエステルおよび熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロック、および任意選択の
B)1種または複数種の他のポリマー成分(ここで、(A)は(A)と(B)の全重量を基準にして少なくとも50重量%の量で存在する)、
C)15から60重量%の間の、窒素含有の難燃剤、リン含有の難燃剤、リンおよび窒素含有の難燃剤ならびに無機難燃剤からなる群から選択される1種または複数種の難燃性化合物を含むハロゲンフリー難燃剤系、
D)0〜20重量%の補強剤、
E)0〜20重量%の1種または複数種の充填剤、および
F)0〜20重量%の1種または複数種の他の補助添加剤
からなり、ここで、(C)、(D)、(E)および(F)の重量パーセントは難燃化熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にしており、(A)〜(F)の合計は100%である。
【0096】
本発明の好ましい実施態様では、難燃化熱可塑性ポリマー組成物は、
A)熱可塑性ポリエステルとソフトブロックの全重量を基準にして1〜20重量%の量の、熱可塑性ポリエステルおよび熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロック、および任意選択の
B)1種または複数種の他のポリマー成分(ここで、(A)は(A)と(B)の全重量を基準にして少なくとも50重量%の量で存在する)、
C)20から60重量%の間の、難燃剤系の全重量を基準にして少なくとも50重量%の量の窒素含有の難燃剤を含むハロゲンフリー難燃剤系、
D)0〜10重量%の補強剤、
E)0〜10重量%の1種または複数種の充填剤、および
F)0〜10重量%の1種または複数種の他の補助添加剤
からなり、ここで、(C)、(D)、(E)および(F)の重量パーセントは難燃化熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にしており、(A)〜(F)の合計は100%である。
【0097】
本発明のより好ましい実施態様では、難燃化熱可塑性ポリマー組成物は、
A)熱可塑性ポリエステルとソフトブロックの全重量を基準にして1〜20重量%の量の、熱可塑性ポリエステル、および熱可塑性ポリエステルに化学結合したポリテトラメチレングリコール(PTMG)から得られ、かつ/またはウレタン結合によって熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトポリエステルから得られるソフトブロック、および任意選択の
B)1種または複数種の他のポリマー成分(ここで、(A)は(A)と(B)の全重量を基準にして少なくとも50重量%の量で存在する)、
C)20から60重量%の間の、難燃剤系の全重量を基準にして少なくとも50重量%の量のメラミン系難燃剤を含むハロゲンフリー難燃剤系、
D)0〜10重量%の補強剤、
E)0〜10重量%の1種または複数種の充填剤、および
F)0〜10重量%の1種または複数種の他の補助添加剤
からなり、ここで、(C)、(D)、(E)および(F)の重量パーセントは難燃化熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にしており、(A)〜(F)の合計は100%である。
【0098】
本発明による難燃化熱可塑性ポリマー組成物は、従来の方法を用いて製造できる。調製する場合、好適には、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ブラベンダーミキサー(Brabender mixers)およびバンバーリーニーダー(Banburry kneaders)などの溶融混合装置を使用できる。
【0099】
本発明の組成物は、射出成形、押出成形および/またはオーバーモールド(overmoulding)を含むさまざまな成形技術によって成形品を製造するのに非常に適しており、特に電気用途、電子用途および自動車用途で使用される硬質構造部品の作製に非常に適している。これらの用途の場合、比較的大きな伸び率および弾性率であるとともに、難燃特性が良好であることが非常に有利である。
【0100】
したがって、本発明はまた、射出成形品、押出成形品またはオーバーモールド品(overmoulded part)を製造するための成形方法への、本発明による難燃性熱可塑性ポリマー組成物の使用に関する。
【0101】
本発明はまた、成形品を製造するための造形方法であって、成形品が、本発明による組成物またはその任意の好ましい実施態様を射出成形または押出成形することによって、またはコア部分(core part)の上に本発明による組成物またはその任意の好ましい実施態様をオーバーモールドすることによって造形されるステップを含む造形方法に関する。
【0102】
本発明はまた、本発明による難燃性組成物から製造される繊維およびフィルム、および本発明による難燃性組成物またはその任意の好ましい実施態様によって少なくとも部分的に製造される成形品(好ましくは、射出成形品または押出成形品)に関する。
【0103】
好適には、成形品は、電気部品、電子部品、または自動車部品、すなわち電気用途、電子用途、または自動車用途にそれぞれ用いるのに特に適した成形品である。好適な用途は、特にコネクター、ランプ基部とランプホルダー、プラグとソケット、ボビンキャリヤ、コンデンサー(condensators)用ハウジング、および開閉器(例えば、遮断器)用ハウジングである。
【0104】
成形品は、好適には、OA機器用および家電機器用ハウジング、ならびに船、バス、列車および飛行機などの公共輸送機関に用いられる部品にすることもできる。
【0105】
本発明を、以下の実施例および比較実験を用いてさらに説明する。
【0106】
[材料]
PBT: ポリブチレンテレフタレート;
ゴム: Lotader AX8900(エチレン−メタクリレート−メタクリル酸グリシジルコポリマー);
Pripol: Pripol 1007、C36−ダイマー脂肪酸;
PTMO: 数平均分子量(Mn)が1000、Mw/Mnが約2のポリテトラメチレングリコール;
TPE−E: ポリブチレンテレフタレートセグメントからなる60重量%のハードセグメントと、5重量%のMDIに基づくウレタン基によってそのセグメントに結合された、ブチレンアジペートからなる35重量%のソフトセグメントとからなる、ポリエステルエステルエラストマー;
MC50: メラミンシアヌレート(d50が約4.2μmおよびd99が約45μmである粒径分布);
安定剤: Irganox 1330。
【0107】
[PBTの調製]
撹拌機および凝縮器を備えた50リットルの反応器に、テレフタル酸ジメチル18730g、1,4−ブタンジオール10250gおよびテトラ−n−ブトキシドチタン(titanium tetra n−butoxide)触媒が1,4−ブタンジオール中に含まれた溶液(溶液1グラム当たり40mgの触媒)85.0 170+42.5=212.5gを仕込んだ。反応器を窒素で3回フラッシュした後、攪拌しながら大気圧下で反応器の内容物を1時間以内に150℃の温度まで徐々に加熱し、この温度に半時間だけ維持し、その後さらに2時間以内に235℃の温度まで加熱した。その後、こうして得られたエステル交換生成物を、240℃で減圧下(50〜100Pa)において20RPMの攪拌速度で120分間さらに重合させた。次いで、70gの安定剤(重合生成物の重量を基準にして約0.25重量%の量に相当する)を加えた。重合生成物を窒素圧下で反応器からストランドの形で押し出し、水中で冷却し、ペレタイザーでペレット化した。
【0108】
[ポリエステルのソフトブロック変性]
熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロックで変性されたPBTポリマーの調製では、ある量のPripolまたはPTMOをそれぞれ加えたこと以外は、上で述べたのと同じ手順を使用した。使用量はそれぞれ、ジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールの全重量を基準にして4重量%、7重量%および10重量%であった。得られた重合生成物中のPripolまたはPTMOの量は、重合生成物の全重量を基準にしてそれぞれ4重量%、7重量%、10重量%と等しいかまたはそれに近いことが確認された。
【0109】
[配合]
成形組成物(moulding compositions)を調製するために、原料成分を表1および2に示す比率で配合した。成形組成物は、キャボット(Cabot)スクリューを備えたBerstorf ZE25押出機(スクリュー回転数600rpm、押出量30kg/時間、および240℃に調節された溶融温度という設定値を使用)で、変性および/または未変性の熱可塑性ポリエステルを、難燃性成分、安定剤および任意選択の他の成分と溶融ブレンドして調製した。得られた溶融物をダイを通して押出機から押し出し、冷却してから粒状化した。押出機中で配合して得られた粒体は、さらに用いる前に120℃で24時間乾燥させた。
【0110】
[試験試料の成形]
機械的性質および難燃特性を試験するための試験試料をEngel 80 A型の射出成形機で作製した。この射出成形では、235〜245℃の設定温度(set temperatures)を使用した。金型温度は90℃であった。試験体のサイクルタイムは約50秒であった。
【0111】
[試験法]
機械的性質:引張試験は、成形時乾燥(dry−as−moulded)試料を用いてISO 527/1Aに従って実施した。引張試験の試験体の大きさ:厚さ4mm
難燃性:試料の作製および試験をそれぞれUL−94−Vに従って実施した。試験体の厚さは1.6mmであった。
【0112】
比較実験A〜D(CE−A〜CE−D)および本発明による実施例I〜XII(EX−I〜EX−XII)の組成を有する配合物を上述のように調製し、試験した。組成および試験結果を表1および2に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステルとハロゲンフリー難燃剤系とを含むハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物であって、前記熱可塑性ポリマー組成物が前記熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトブロックを1〜20重量%の量で含み、前記重量%が前記熱可塑性ポリエステルと前記ソフトブロックの全重量を基準にしたものである、ハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルが少なくとも180℃の融点を有する半結晶質ポリエステルであり、前記ソフトブロックが20℃以下のガラス転移温度を有する非晶相を形成する、請求項1に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記ソフトブロックが、長鎖脂肪族ジカルボン酸、長鎖脂肪族ジオール、長鎖脂肪族ジアミン、ポリエーテルグリコール、ポリエーテルジアミン、ソフトポリエステルおよびソフトポリカーボネート、およびそれらの組合わせからなる群から選択される化合物から得られるポリマーセグメントから構成される、請求項1または2に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項4】
ソフトブロックが、前記熱可塑性ポリエステルに化学結合したポリテトラメチレングリコール(PTMG)から得られ、かつ/またはウレタン結合によって前記熱可塑性ポリエステルに化学結合したソフトポリエステルから得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記ソフトブロックが、前記熱可塑性ポリエステルと前記ソフトブロックの重量を基準にして2〜15重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記ハロゲンフリー難燃剤系が、無機難燃剤、窒素含有の難燃剤、リン含有の難燃剤およびリンおよび窒素含有の難燃剤からなる群から選択される1種または複数種の難燃剤を、前記ハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物の全重量を基準にして20〜60重量%の総量で含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記熱可塑性ポリエステル、前記熱可塑性ポリエステルに化学結合した前記ソフトブロック、および前記ハロゲンフリー難燃剤系のほかに、1種または複数種の他のポリマー成分および/または充填剤、補強剤および他の添加剤の群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項8】
繊維、フィルムあるいは射出または押出成形品の製造への、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物の使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物で製造された繊維およびフィルム。
【請求項10】
少なくとも一部が請求項1〜7のいずれか一項に記載のハロゲンフリー難燃性熱可塑性ポリマー組成物からなる、成形品。
【請求項11】
前記成形品が、電気部品、電子部品、自動車部品、OA機器用または家電機器用ハウジング、あるいは公共輸送機関に用いる部品である、請求項10に記載の成形品。

【公表番号】特表2009−544827(P2009−544827A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522115(P2009−522115)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005346
【国際公開番号】WO2008/011940
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】