説明

強化ポリエステル樹脂組成物

【課題】結晶化速度が速く優れた成形性を有し、収縮異方性が小さく、表面特性に優れる成形品を得ることのできる強化ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂100質量部に対して、
(A)成分として、無機充填剤を0.01〜400質量部、
(B)成分として、下記一般式(1)、


(式中、R及びRは各々独立して、水素原子等を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、nは1又は2の数を表し、nが1の場合、Mはアルカリ金属原子等を表し、nが2の場合、複数あるRとRは各々異なっていてもよく、Mは2価の金属原子、連結基を表し、Mが連結基の場合はR、Rのいずれかがアルカリ金属である)で表される構造を有するスルホンアミド化合物の金属塩を0.001〜10質量部を含有することを特徴とする強化ポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化速度が速く優れた成形性を有し、収縮異方性が小さく、表面特性に優れる成形品を得ることのできる強化ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと略記することがある。)やポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBTと略記することがある。)、ポリ乳酸などの熱可塑性ポリエステル樹脂は、それ自体で機械的特性、電気特性に優れているほか、耐薬品性、耐熱性などにも優れているので、エンジニアリングプラスチックとして、各種の電気・電子機器部品、および自動車、列車、電車などの車両用内外装部品、その他の一般工業製品製造用材料として広く使用されている。さらに、これらの熱可塑性ポリエステル樹脂に無機充填剤等の強化剤、中でも繊維状強化剤を配合した、いわゆる繊維強化ポリエステル樹脂は、機械的特性が大幅に向上するので、その利用範囲が拡大している。
【0003】
特に、自動車、列車、電車などの車両用内外装部品、航空機などの機体用内外装部品等、具体的には、例えば、室内のインナーミラーステイ、ドアハンドル、吊革、取っ手用の部品、室外にあるワイパーアームなどのワイパー部品、ドアハンドル、ドアミラーステイ、ルーフレールなどにおいては、軽量、高強度・高剛性、および優れた外観が要求される。これら部品の製造用材料には、例えば、強化熱可塑性樹脂、中でも繊維強化ポリエステル樹脂が使用されている。
【0004】
繊維強化熱可塑性樹脂から得られる樹脂成形品の強度や剛性を向上させるためには、基体となる熱可塑性樹脂に配合する充填剤、例えば繊維状充填剤(強化剤または補強剤)の量を増やす必要がある。しかし強化剤の配合量を増やすと、繊維強化樹脂組成物の成形性(流動性)が低下し、配合した繊維状強化剤が製品(成形品)の表面に浮き出し易くなり、表面の荒れや光沢の低下などの、製品の外観の悪化や、成形品の反りなどの、成形品の収縮異方性(成形収縮率)等が問題となっている。
【0005】
これら繊維状強化剤の添加により強度を向上させつつ、外観などの表面性を損なわないことを目的として、繊維状強化剤の表面処理や、エポキシ樹脂やシランカップリング剤の使用などが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、基体樹脂と繊維状強化剤との界面の接着性(親和性)を改良する目的で、繊維状強化剤の表面を多官能化合物(例えば、エポキシシラン、イソシアネート系化合物、ポリカルボン酸無水物など)で処理するか、または繊維状強化剤と共に基体樹脂に配合した樹脂組成物が提案されている。
【0007】
また、特許文献2〜特許文献6には、PBT組成物などに配合する繊維状補強剤として、特定の化合物、例えば、エポキシ樹脂とアミノシランカップリング剤とによって表面処理した繊維状強化剤を使用することによって、強化樹脂組成物の電気的特性、機械的性質を改善する技術が提案されている。
【0008】
一方、特許文献7には、ポリエステル樹脂の結晶化速度改良のために、スルホンアミド化合物の金属塩を添加することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭51−7702号公報
【特許文献2】特開平9−301746号公報
【特許文献3】特開2001−172055号公報
【特許文献4】特開2001−172056号公報
【特許文献5】特開2001−172057号公報
【特許文献6】特開2006−16557号公報
【特許文献7】特開2007−327028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これら特許文献1〜6に記載の技術は、繊維状強化剤に特別の処理を施す必要や、特別な強化剤を必要とするなど、自由度が低く、経済的にも問題があり、さらに、得られる成形品の外観等の表面性は満足のいくものではなく、成形品の収縮異方性も問題となっている。また、特許文献7には、繊維状充填剤と併用した場合、表面性を改善できること、収縮異方性がなく優れた成形品を得られることは記載がされておらず、その知見を得ることもできない。
【0011】
そこで本発明の目的は、結晶化速度が速く優れた成形性を有し、反り等の収縮異方性が小さく、外観等の表面特性に優れる成形品を得ることのできるポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリエステル樹脂に無機充填剤および特定のスルホンアミド化合物の金属塩を添加することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、
(A)成分として、無機充填剤を0.01〜400質量部、
(B)成分として、下記一般式(1)、

(式中、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は、置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、nは1又は2の数を表し、nが1の場合、Mはアルカリ金属原子またはAl(OH)3−nを表し、nが2の場合、複数あるRとRは各々異なっていてもよく、Mはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、およびハフニウムから選択される2価の金属原子、Al(OH)3−n、又は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基で中断された炭素原子数5〜20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される連結基を表し、Mが連結基の場合はR、Rのいずれかがアルカリ金属である)で表される構造を有するスルホンアミド化合物の金属塩を0.001〜10質量部を含有することを特徴とするものである。
【0014】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、さらに(C)成分として、ポリエーテルエステル系可塑剤及び/または安息香酸エステル系可塑剤の少なくとも一種を、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部含有することが好ましい。
【0015】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分を表す一般式(1)中のMがアルカリ金属原子であることが好ましい。
【0016】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(2)、

(式中、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表す。)で表される構造を有することが好ましい。
【0017】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(3)、

(式中、環Aは炭素原子数3〜30の環状基を表し、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜27の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の整数の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、環AとすべてのRの合計炭素原子数は3〜30である)で表される構造を有することが好ましい。
【0018】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(4)、

(式中、環A及び環Bは各々独立して炭素原子数3〜30の環状基を表し、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜27の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、qは0〜3の整数を表し、qが2以上の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、環AとすべてのRの合計炭素原子数、環BとすべてのRの合計炭素原子数はそれぞれ3〜30である。)で表される構造を有することが好ましい。
【0019】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(5)、

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜24の環状基を表し、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合複数あるRは各々異なるものであってもよい。)で表される構造を有することが好ましい。
【0020】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(6)、

(式中、RおよびRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい環状基を表し、Rが環状基の場合、炭素原子数は3〜30であり、Rが環状基の場合、炭素原子数は3〜23であり、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合複数あるRは各々異なるものであってもよい。)で表される構造を有することが好ましい。
【0021】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(7)、

(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、XおよびXは各々独立してアルカリ金属原子を表し、Lは連結基であって、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基で中断された全炭素原子数5〜20のアルキレン基、又は、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基を表す。)で表される構造を有することが好ましい。
【0022】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の平均粒子径が、10μm以下であることが好ましい。
【0023】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の含水率が3質量%以下であることが好ましい。
【0024】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(A)成分の無機充填剤が、繊維状無機充填剤であることが好ましい。
【0025】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記(A)成分の無機充填剤が、ガラス繊維であることが好ましい。
【0026】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ乳酸からなる群から選択される少なくとも一種以上を含むものであることが好ましい。
【0027】
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートを含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、結晶化速度が速く優れた成形性を有し、反り等の収縮異方性が小さく、外観等の表面特性に優れる成形品を得ることのできる強化ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。本発明で使用されるスルホンアミド化合物の金属塩が、優れた効果を奏する理由は定かではないが、おそらく以下のように考えられる。本発明のスルホンアミド化合物の金属塩の作用機構として、核剤(スルホンアミド化合物の金属塩)表面の助けを借りて樹脂の結晶化を促進する作用機構と、ケミカルニュークリエーションと呼ばれる核剤と樹脂の反応物を起点とする作用機構が考えられる。これら2つの作用機構は、本発明のスルホンアミド化合物の金属塩の構造に由来する特徴的なものであり、本発明では、それらの相乗効果により優れた効果を奏していると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物について、以下に詳述する。
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物に用いられるポリエステル樹脂は、通常の熱可塑性ポリエステル樹脂が用いられ、特別の制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリエステルの構成成分と他の酸成分及び/又はグリコール成分(例えばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタール酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の酸成分と、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールアルキレンオキシド付加体等のグリコール成分)を共重合したポリエーテルエステル樹脂;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;芳香族ポリエステル/ポリエーテルブロック共重合体、芳香族ポリエステル/ポリラクトンブロック共重合体、ポリアリレートなどの広義のポリエステル樹脂も使用される。なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ乳酸から選択される一種以上のポリエステル樹脂が好ましく使用され、特にポリエチレンテレフタレートが発明の効果が顕著であるので好ましい。
【0030】
また、上記熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独又は複数樹脂のブレンド、例えば、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド等、もしくはそれらの共重合体、例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体等であってもよい。特に融点が200℃〜300℃のものが耐熱性に優れた特性を示すため、好ましく使用される。
【0031】
次に本発明の(A)成分である無機充填剤について説明する。
本発明における(A)成分の無機充填剤は、本発明に係る強化ポリエステル樹脂組成物を補強するように機能する。(A)成分の無機充填剤は、従来から熱可塑性樹脂の補強用に使用されているものの中から、目的に応じて適宜選択すればよい。無機充填剤は、その外観から繊維状、板状、粒状物と分類することができる。繊維状充填剤の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維、金属繊維、セラミックスウィスカー、ワラストナイトなどが挙げられる。板状充填剤としては、ガラスフレーク、マイカ、タルクなどが挙げられ、粒状充填剤としては、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0032】
(A)成分の無機充填剤は、最終的に得られる成形品(製品)に付与する性質により選択される。例えば、成形品に機械的強度や剛性を付与するには、繊維状物、特にガラス繊維が選ばれ、異方性やソリが少ない成形品とする場合には、板状物、特にマイカ、ガラスフレークなどが選ばれる。粒状物は、成形品製造時の流動性を勘案し、物性全体がバランスのとれるような最適なものが選ばれる。
【0033】
本発明では、特に繊維状の無機充填剤が、成形品に機械的強度や剛性を付与するとともに、結晶化速度が速く優れた成形性を有し、収縮異方性が小さく、表面特性に優れる成形品が得られるという効果が高いことから好ましい。繊維状の無機充填剤のなかでもガラス繊維が最も好ましい。
【0034】
上記(A)成分の無機充填剤の配合量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.01〜400質量部であり、得られる成形品の機械的強度や剛性、収縮異方性、表面特性の点から、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらにより好ましくは10〜100質量部、最も好ましくは10〜50質量部である。0.01質量部より少ないと、成形品の機械的強度や剛性が低下し、400質量部を超えると外観が劣化し、表面荒れなどが発生し、表面特性が劣ることになる。
【0035】
上記(A)成分の無機充填剤は、強化ポリエステル樹脂成分との界面との親和性、接着性を改良する目的で、あらかじめ表面処理剤で処理してあるものも好ましい。表面処理剤は、例えば、アミノシラン化合物、エポキシ樹脂の一種以上を含む表面処理剤が好適である。アミノシラン化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
上記表面処理剤中におけるエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂に大別されるが、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。このノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能型エポキシ樹脂が好ましい。
【0037】
表面処理剤は、(A)成分の無機充填剤の表面に付着させてあることが好ましい。この処理の方法は、従来から知られている方法によることができる。具体的には、(1)無機充填剤と表面処理剤とを所定量秤量し、ヘンシェルミキサーなどの混合機に仕込んで攪拌混合する方法、(2)ポリエステル樹脂、無機充填剤と処理剤を混合機で一括混合し、溶融混練する方法、(3)無機充填剤がガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維などの繊維状充填剤の場合は、これらの単繊維を集束するなどの紡糸工程の段階で、これらの表面に表面処理剤を付着させる方法、などが挙げられる。
【0038】
表面処理剤には、上記アミノシラン化合物、エポキシ樹脂以外に、その性質を阻害しない範囲で、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、帯電防止剤、潤滑剤および撥水剤などの成分を配合してあるものでもよい。さらに、他の表面処理剤として、ノボラック型およびビスフェノール型以外のエポキシ樹脂、エポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などがあげられる。
【0039】
本発明で最も好適に用いられるガラス繊維のガラスの種類は、特に限定されず、公知のものや市販のものでよいが、たとえばガラスの種類は、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Tガラス、Hガラス、Aガラス、Sガラス、S−2ガラス、シリカガラスなどの1種または2種以上が挙げられ、アルカリ性成分が少なく、電気的特性が良好なEガラスが特に好ましい。ガラス繊維の平均繊維長は、0.1〜20.0mmの範囲が好ましい。平均繊維長を0.1mm以上とすることにより、ガラス繊維による補強効果がより効果的に発揮され、平均繊維長を20mm以下とすることにより、ポリエステル樹脂との溶融混練操作や、強化ポリエステル樹脂組成物からの成形品の製造がより容易になり、さらには収縮異方性や表面特性に優れる。平均繊維長のより好ましい範囲は、1〜10mmである。
【0040】
次に本発明の(B)成分であるスルホンアミド化合物の金属塩について説明する。
本発明の(B)成分は、本発明に係る強化ポリエステル樹脂組成物の結晶化速度を速くし優れた成形性を得るために機能する。また、収縮異方性が小さく、表面特性に優れる成形品を得られるようにも機能する。
【0041】
本発明の(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、下記一般式(1)で表される。

式(1)中、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は、置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、nは1又は2の数を表し、nが1の場合、Mはアルカリ金属原子またはAl(OH)3−nを表し、nが2の場合、複数あるRとRは各々異なっていてもよく、Mはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、およびハフニウムから選択される2価の金属原子、Al(OH)3−n、又は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基で中断された炭素原子数5〜20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される連結基を表し、Mが連結基の場合はR、Rのいずれかがアルカリ金属である。
【0042】
また、一般式(1)で表される(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。

式(2)中、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表す。
【0043】
また、一般式(1)で表される(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、一般式(3)で表される構造を有するものが好ましい。

式(3)中、環Aは炭素原子数3〜30の環状基を表し、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜27の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の整数の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、環AとすべてのRの合計炭素原子数は3〜30である。
【0044】
また、一般式(1)で表される(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、一般式(4)で表される構造を有するものが好ましい。

式(4)中、環A及び環Bは各々独立して炭素原子数3〜30の環状基を表し、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜27の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、qは0〜3の整数を表し、qが2以上の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、環AとすべてのRの合計炭素原子数、環BとすべてのRの合計炭素原子数はそれぞれ3〜30である。
【0045】
また、一般式(1)で表される(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、一般式(5)で表される構造を有するものが好ましい。

式(5)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜24の環状基を表し、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合複数あるRは各々異なるものであってもよい。
【0046】
また、一般式(1)で表される(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、一般式(6)で表される構造を有するものが好ましい。

式(6)中、RおよびRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい環状基を表し、Rが環状基の場合、炭素原子数は3〜30であり、Rが環状基の場合、炭素原子数は3〜23であり、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合複数あるRは各々異なるものであってもよい。
【0047】
また、一般式(1)で表される(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、一般式(7)で表される構造を有するものが好ましい。

式(7)中、R、Rは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、XおよびXは各々独立してアルカリ金属原子を表し、Lは連結基であって、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基で中断された全炭素原子数5〜20のアルキレン基、又は、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基を表す。
【0048】
上記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩における金属とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、卑金属、貴金属、重金属、軽金属、半金属、レアメタル等が挙げられ、具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブテン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、アルミニウム、亜鉛、金、白金、イリジウム、オスミウム、水銀、カドミウム、ヒ素、タングステン、錫、ビスマス、ホウ素、珪素、ゲルマニウム、テルル、ボロニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ルビジウム、ジルコニウム、インジウム、アンチモン、セシウム、ハフニウム、タンタル、レニウム等が挙げられるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウム、ハフニウム又はアルミニウムの水酸化物であるものが好ましく使用される。、特に、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属が好ましい。
【0049】
前記(B)成分の一般式(1)〜(7)中において、R〜Rで表される分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、デシル等が挙げられるが、かかるアルキル基中の任意の−CH−は−O−、−CO−、−COO−又は−SiH−で置換されていてもよく、一部あるいは全部の水素原子が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基によって置換されていてもよい。
【0050】
前記(B)成分の一般式(1)〜(7)中において、R〜Rで表される分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられるが、かかるアルコキシ基中の任意の−CH−は−O−、−CO−、−COO−又は−SiH−で置換されていてもよく、一部あるいは全部の水素原子が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基によって置換されていてもよい。
【0051】
前記(B)成分の一般式(1)〜(7)中において、R〜Rで表される置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基とは、単環、多環、縮合環又は集合環であってもよく、芳香族環状基、飽和脂肪族環状基の区別無く使用することができ、環の炭素原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子等に置換されていてもよく、環中にアシル基を有してもよく、環の水素原子の一部又は全部が、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基で置換されていてもよい。かかる炭素原子数3〜30の環状基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、フェニル、ナフチル、アントラセン、ビフェニル、トリフェニル、2−メチルフェニル(o−トリル、クレジル)、3−メチルフェニル(m−トリル)、4−メチルフェニル(p−トリル)、4−クロロフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル(キシリル)、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル(メシチル)、4−アミノフェニル、5−ジメチルアミノナフチル、6−エトキシ−ベンゾチアゾーリル、2,6−ジメトキシ−4−ピリミジル、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル、5−メチル−3−イソキサゾールイル等が挙げられる。また、炭素原子数3〜23、炭素原子数3〜24、炭素原子数3〜27の環状基としては上記のうち対応する炭素原子数の物が挙げられる。さらに、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRとが連結することにより形成される環状基についても上記と同様のものが挙げられる。
【0052】
前記(B)成分の一般式(2)〜(7)中において、X、XおよびXで表されるアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子及びカリウム原子が挙げられるが、特にナトリウム原子は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性などの本発明の効果が顕著であるので好ましく使用される。
【0053】
前記一般式(7)において、Lで表される連結基とは、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、又はシクロアルキレン基で中断された全炭素原子数5〜20のアルキレン基、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基又はこれらの組み合わせを表し、炭素原子数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、デシレン、ドデシレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられ、炭素原子数2〜12のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン、1−メチルエテニレン、2−メチルエテニレン、プロペニレン、ブテニレン、イソブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘプテニレン、オクテニレン、デセニレン、ドデセニレン等が挙げられ、炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン、1,3−シクロブチレン、1,3−シクロペンチレン、1,4−シクロヘキシレン、1,5−シクロオクチレン等が挙げられ、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基としては、例えば、アルキレン基の炭素鎖中の末端あるいは鎖中にエーテル結合を有すもので、かかるエーテル結合は一個だけでなく複数個連続していてもよい。シクロアルキレン基で中断された全炭素原子数5〜20のアルキレン基としては、例えば、アルキレン基の炭素鎖中の末端あるいは鎖中に前記のシクロアルキレン基を有すものが挙げられ、炭素原子数6〜12のアリーレン基としては、例えば、1,4−フェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン、ビフェニル基等の芳香族環状基等が挙げられ、かかる芳香族環状基は置換基を有すものであってもよい。
【0054】
本発明において、一般式(7)のLで表される連結基は、特に、メチレン、1,4−フェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン、ビフェニル等が好適である。 本発明の(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の平均粒子径は、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性などの点から、10μm以下が好ましく、5μm以下が特に好ましい。10μmを超えると、ポリエステル樹脂に対する結晶化作用が不充分になる場合がある。
【0055】
本発明の(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の含水率は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。3質量%を超えると前記スルホンアミド化合物の金属塩は、輸送時や長期保存時に凝集し、ブロッキングが発生しやすくなる。このようなスルホンアミド化合物の金属塩を使用すると、成形加工時の樹脂溶融粘度の低下、成形加工して得られる成形品の表面にブツが発生し、外観を損ねる問題がある。
【0056】
上記(B)成分の好ましい例としては、下記の化合物No.1〜No.21が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。特に、結晶化速度、成形品の収縮異方性、表面特性の点から化合物N0.16が好ましい。

【0057】
上記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の配合量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部であり、結晶化速度、成形性、得られる成形品の収縮異方性、表面特性の点から、好ましくは0.005〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、さらにより好ましくは0.02〜1質量部であり、最も好ましくは0.05〜0.5質量部である。0.001質量部より少ないと、添加効果が不十分であり、10質量部を超えると成形品の外観が悪化する。
【0058】
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物は、さらに(C)成分として、可塑剤を使用することが好ましく、特に、ポリエーテルエステル系可塑剤及び/または安息香酸エステル系可塑剤の少なくとも一種を0.1〜20質量部を含有することが、結晶化速度、成形性、得られる成形品の収縮異方性、表面特性の点から好ましい。
【0059】
上記(C)成分のポリエーテルエステル系可塑剤の例としては、例えばポリエチレングリコールブタン酸エステル、ポリエチレングリコールイソブタン酸エステル、ポリエチレングリコールジ(2−エチルブチル酸)エステル、ポリエチレングリコール(2−エチルヘキシル酸)エステル、ポリエチレングリコールデカン酸エステル、アジピン酸ジブトキシエタノール、アジピン酸ジ(ブチルジグリコール)、アジピン酸ジ(ブチルポリグリコール)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシロキシエタノール)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシルジグリコール)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシルポリグリコール)、アジピン酸ジオクトキシエタノール、アジピン酸ジ(オクチルジグリコール)、アジピン酸ジ(オクチルポリグリコール)等が挙げられる。具体的には、アデカサイザーRS−107、RS−1000,RS−735、RS−700(いずれも(株)ADEKA製)等があげられる。
【0060】
上記(C)成分の安息香酸エステル系可塑剤の例としては、例えばエチレングリコール安息香酸エステル、ジエチレングリコールジ安息香酸エステル、トリエチレングリコールジ安息香酸エステル、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル、プロピレングリコールジ安息香酸エステル、ジプロピレングリコールジ安息香酸エステル、トリプロピレングリコールジ安息香酸エステル、1,3−ブタンジオールジ安息香酸エステル、1,4−ブタンジオールジ安息香酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジ安息香酸エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ安息香酸エステル、1,8−オクタンジオールジ安息香酸エステル等が挙げられる。具体的にはEB−400(三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
【0061】
上記(C)成分の好ましい配合量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であり、より好ましくは、0.5〜15質量部、さらにより好ましくは1〜10質量部、最も好ましくは1〜5質量部である。0.1質量部より少ないと効果が充分でない場合があり、20質量部を超えると可塑剤がブリードアウトする場合がある。
【0062】
本発明では、上記ポリエーテルエステル系可塑剤、安息香酸エステル系可塑剤以外の可塑剤を配合することもできる。
【0063】
上記他の可塑剤の例としては、ポリエステル系可塑剤が挙げられる。これはすなわち、多塩基酸と多価アルコールの縮合体を基本構造とし、その両末端を一価アルコール成分及び/又は一塩基酸で停止したものを意味する。
【0064】
上記多塩基酸の具体例としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;及びそれらの無水物等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0065】
上記多価アルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等の炭素数2〜18の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルレングリコールが挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0066】
上記一価アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、2−メチルオクタノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等の炭素数8〜18脂肪族アルコールや、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、1−フェニルエタノール、2−フェノキシエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−ヒドロキシエチルベンジルエーテル等の芳香族アルコール等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
前記一塩基酸の具体例としては、例えばカプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリル酸、等のモノカルボン酸類、ジカルボン酸のモノエステル類、トリカルボン酸のジエステル類等が挙げられ、それらは一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0067】
さらに上記他の可塑剤の例を挙げると、脂環式エステル系可塑剤が挙げられ、これらは例えば、シクロヘキサンジカルボン酸エステル類、エポキシ基を有するシクロヘキサンジカルボン酸エステル類等や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物等のシクロヘキサンカルボン酸無水物類等が挙げられる。
【0068】
さらに上記他の可塑剤の例を挙げると、例えば、エチルベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、イソブチルベンジルフタレート、ヘプチルベンジルフタレート、(2−エチルヘキシル)ベンジルフタレート、n−オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、イソノニルベンジルフタレート、イソデシルベンジルフタレート、ウンデシルベンジルフタレート、トリデシルベンジルフタレート、シクロヘキシルベンジルフタレート、ベンジル−3−(イソブチリルオキシ)−1−イソプロピル−2,2−ジメチルプロピルフタレート、ミリスチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、イソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレート等のイソフタル酸エステル類;ジ−2−エチルヘキシルテトラヒドロフタレート等のテトラヒドロフタル酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジイソノニルアジペート等のアジピン酸エステル類;ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類;ジ−n−ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ジ−n−ブチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエート等のマレイン酸エステル類;ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等のフマル酸エステル類;トリー(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル類;テトラ−(2−エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ−n−オクチルピロメリテート等のピロメリット酸エステル類;トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート等のクエン酸エステル類;ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネート等のイタコン酸エステル類;グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレート等のオレイン酸エステル類;グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート等のリシノール酸誘導体;グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート等のステアリン酸エステル類、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等その他の脂肪酸エステル類;トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルデシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート等のリン酸エステル類等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を併用して用いることができる。
【0069】
また本発明の強化ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて通常一般に用いられる他の添加剤を配合してもよい。
【0070】
他の添加剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系等からなる抗酸化剤;ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤等からなる光安定剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アミド化合物、脂肪族カルボン酸金属塩、又は其の他の金属石けん系等の滑剤;重金属不活性化剤;防曇剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物;リン酸エステル系化合物;リン酸アミド系化合物;メラミン系化合物;フッ素樹脂、又は金属酸化物;(ポリ)リン酸メラミン、(ポリ)リン酸ピペラジン等の難燃剤;ガラス繊維、炭酸カルシウム等の充填剤;顔料;ハイドロタルサイト、フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、珪藻土、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト、シリカ等の珪酸系無機添加剤;造核剤等を使用することができる。特に、フェノール系及びリン系からなる抗酸化剤は、ポリエステル樹脂組成物の着色防止剤としての効果があるので好ましく使用される。
【0071】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0072】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0073】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0074】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物等が挙げられる。
【0075】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。
【0076】
上記滑剤として用いられる脂肪族アミド化合物としては、例えば、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のモノ脂肪酸アミド類;N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−キシリレンビスステアリン酸アミド等のN,N’−ビス脂肪酸アミド類;ステアリン酸モノメチロールアミド、やし油脂肪酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド等のアルキロールアミド類;N−オレイルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等のN−置換脂肪酸アミド類;N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等のN,N’−置換ジカルボン酸アミド類が挙げられる。これらは、1種類、又は2種類以上の混合物で用いてもよい。
【0077】
上記難燃剤としては、例えば、リン酸トリフェニル、フェノール、レゾルシノール、オキシ塩化リン縮合物、フェノール、ビスフェノールA、オキシ塩化リン縮合物、2,6−キシレノール、レゾルシノール、オキシ塩化リン縮合物等のリン酸エステル;アニリン、オキシ塩化リン縮合物、フェノール、キシリレンジアミンオキシ塩化リン縮合物等のリン酸アミド;ホスファゼン;デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン系難燃剤;リン酸メラミン、リン酸ピペラジン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン等の含窒素有機化合物のリン酸塩;赤リン及び表面処理やマイクロカプセル化された赤リン;酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛等の難燃助剤;ポリテトラフルオロエチレン、シリコン樹脂等のドリップ防止剤等が挙げられ、前記ポリエステル100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部が用いられる。
【0078】
上記造核剤としては、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムなどの芳香族カルボン酸金属塩;ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)リン酸リチウム、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等の酸性リン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトールなどの多価アルコール誘導体、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレートなどが挙げられる。
【0079】
また、本発明の強化ポリエステル樹脂組成物において、上記ポリエステル樹脂に対し、(A)成分の無機充填剤、(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩、(C)成分の可塑剤、さらには所望に応じ他の添加剤を配合する方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、上記ポリエステル樹脂の粉末あるいはペレットと配合成分をドライブレンドで混合してもよく、配合成分の一部をプレブレンドした後、残りの成分とドライブレンドしてもよい。ドライブレンドの後に、例えば、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサーなどを用いて混合し、単軸あるいは二軸押出機等を用いて混練してもよい。この混練は、通常200〜350℃程度の温度で行われる。また、ポリエステル樹脂の重合段階で化合物等を添加する方法、化合物等を高濃度で含有するマスターバッチを作製し、かかるマスターバッチをポリエステル樹脂に添加する方法等を用いることもできる。
【0080】
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物は、主として、一般のプラスチック同様に各種成形品の成形材料として用いられる。得られる成形品は、機械的強度、外観、収縮異方性に優れるため、特に自動車、列車、電車などの車両用内外装部品、航空機などの機体用内外装部品、電気・電子機器部品、機械・機構部品等に好適である。例えば、インナーミラーステイ、ドアハンドル、吊革、取っ手用の部品等の自動車内装部品;ワイパーアームなどのワイパー部品;ドアハンドル、ドアミラーステイ、ルーフレール等の自動車外装部品;排気ガスバルブ、フォグランプホルダ、ランプハウジング、オイルフィルター等の自動車部品;スイッチ、コネクタ、コイルボビン、コンデンサーケース等の電子部品;アイロンハンドル、ホットプレートフレーム、電子レンジ部品等の電気部品;その他、カメラ部品、チェアアーム、ケミカルポンプ部品、ガスメータ部品等が挙げられる。
【0081】
本発明の強化ポリエステル樹脂組成物を成形するに際しては、一般のプラスチックと同様の押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形等の成形を行うことができ、シート、棒、ビン、容器、板等の各種成形品を容易に得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下に、製造例及び実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら制限されるものではない。
【0083】
〔製造例〕
ポリエチレンテレフタレート樹脂(射出成形用、ユニチカ(株)製MA−2103、IV=0.68)100質量部と下記の表1に示した(B)成分を混合した後、この樹脂組成物を5時間150℃で減圧乾燥し定量フィーダーにより二軸押出機(TEX30α;日本製鋼(株)製)に供給した。また(C)成分は液体添加装置を用いて、(A)成分はサイドフィーダーからそれぞれ定量供給し、270℃のシリンダ温度及び200rpmのスクリュー速度で混練しペレットを得た。得られたペレットを150℃で5時間乾燥させた後、下記に示す評価を実施した。
また、使用した(B)成分である化合物No.16の平均粒子径は、2.5μm、含水率は0.1質量%であった。平均粒子径は、レーザー回析・散乱式マイクロトラック粒度分布測定装置MT−3300EX(日機装(株)製)を用いて、乾式法により測定した。
【0084】
〔結晶化温度(℃)〕
上記の得られたペレットの結晶化温度を以下の方法で測定した。
得られたペレットを300℃で溶融後、ドライアイスで冷却したメタノールを用いて急冷した。示差走査熱量測定機(ダイアモンドDSC;パーキンエルマー社製)にて、10℃/minの速度で300℃まで昇温したのち、1分間保持後−10℃/minで50℃まで冷却した。昇温時の発熱ピークトップ温度から結晶化温度(昇温)を、降温時の発熱ピークトップ温度から結晶化温度(降温)を求めた。結晶化温度(昇温)が低い程、また、結晶化温度(降温)が高い程、結晶化速度は速くなる。この結果を下記の表1に示す。
【0085】
〔収縮異方性(反り値)〕
上記で得られたペレット(150℃、5時間乾燥後のもの)を用い、金型温度110℃、樹脂温度270℃の条件で、寸法約100×100×2mmの平板状試験片を射出成形した。前記平板状試験片を水平な2枚の板に接するように挟んだときの2枚の板の間隔をノギスを用いて測定した。得られた値から試験片厚みを引いて反り値とし、5回測定の平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0086】
〔表面性(外観)〕
上記で得られた平板状試験片の表面外観を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。この結果を表1に示す。
<外観評価基準>
○:表面に荒れやガラス繊維の浮き出しが見られない。
△:ガラス繊維の浮き出しが僅かに見られ、やや表面が荒れている。
×:ガラス繊維の浮き出しが見られ、表面が荒れている。
【0087】
〔表面性(グロス)〕
上記で得られた平板状試験片のグロス(光沢度)を測定した。測定は東京電色(株)製グロスメータ、モデルTC−108Dを用いて測定角度60°のグロスを測定した。この結果を表1に示す。
【0088】
〔曲げ弾性率〕
上記で得られたペレット(150℃、5時間乾燥後のもの)を用い、金型温度110℃、樹脂温度270℃の条件で射出成形し、寸法80×10×4mmの試験片を作成し、曲げ弾性率(GPa)を、ISO178に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0089】
〔曲げ強度〕
上記で得られたペレット(150℃、5時間乾燥後のもの)を用い、金型温度110℃、樹脂温度270℃の条件で射出成形し、寸法80×10×4mmの試験片を作成し、曲げ強度(MPa)をISO178に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0090】
〔シャルピー衝撃強さ〕
上記で得られたペレット(150℃、5時間乾燥後のもの)を用い、金型温度110℃、樹脂温度270℃の条件で射出成形し、寸法80×10×4mmの試験片を作成し、ISO179に準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ(KJ/m)を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
〔荷重たわみ温度(HDT)〕
上記で得られたペレット(150℃、5時間乾燥後のもの)を用い、金型温度110℃、樹脂温度270℃の条件で射出成形し、寸法80×10×4mmの試験片を作成し、ISO75(荷重1.8MPa)に準拠して、荷重たわみ温度(℃)を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

*1:射出成形用ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製)
*2:繊維長3mmのチョップドガラスストランド(日清紡績(株)製、CS3J−941S)
*3:アデカサイザーRS−735((株)ADEKA製)
*4:EB−400(三洋化成工業(株)製)
【0093】
上記表1から明らかなように、(A)成分が添加され、(B)成分が添加されていない比較例1〜3は、実施例1〜7と比べて、結晶化温度(昇温)が高く、結晶化温度(降温)が低かった。また、外観においても、各比較例の平板状試験片は、ガラス繊維の浮き出しが見られ、表面が荒れていた。グロス(光沢度)についても各比較例の平板状試験片は低かった。さらに、各比較例においては、平板状試験片の反り値の値が大きかった。
それに対して、ポリエステル樹脂に(A)成分および(B)成分を加えた各実施例においては、結晶化温度(昇温)、結晶化温度(降温)のデータから、結晶化速度が速い樹脂組成物が得られたことが分かる。さらに、各実施例において得られた平板状試験片の外観は、表面に荒れやガラス繊維の浮き出しが見られず、グロス(光沢度)も高く、良好であった。また、各実施例において得られた平板状試験片は、反り値が小さく、収縮異方性が小さかった。
以上から、本発明の実施例において、結晶化速度が速く優れた成形性を有し、収縮異方性が小さく、表面特性に優れる成形品を得ることのできる強化ポリエステル樹脂組成物が得られることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂100質量部に対して、
(A)成分として、無機充填剤を0.01〜400質量部、
(B)成分として、下記一般式(1)、

(式中、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は、置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、nは1又は2の数を表し、nが1の場合、Mはアルカリ金属原子またはAl(OH)3−nを表し、nが2の場合、複数あるRとRは各々異なっていてもよく、Mはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタニウム、マンガン、鉄、亜鉛、珪素、ジルコニウム、イットリウムおよびハフニウムから選択される2価の金属原子、Al(OH)3−n、又は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基で中断された炭素原子数5〜20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される連結基を表し、Mが連結基の場合はR、Rのいずれかがアルカリ金属である)で表される構造を有するスルホンアミド化合物の金属塩を0.001〜10質量部を含有することを特徴とする強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(C)成分として、ポリエーテルエステル系可塑剤及び/または安息香酸エステル系可塑剤の少なくとも一種を、前記ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部を含有する請求項1記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分を表す一般式(1)中のMがアルカリ金属原子である請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(2)、

(式中、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表す。)で表される構造を有する請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(3)、

(式中、環Aは炭素原子数3〜30の環状基を表し、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜27の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の整数の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、環AとすべてのRの合計炭素原子数は3〜30である)で表される構造を有する請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(4)、

(式中、環A及び環Bは各々独立して炭素原子数3〜30の環状基を表し、R及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐や置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜27の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、qは0〜3の整数を表し、qが2以上の場合の複数あるRは各々異なるものであってもよく、環AとすべてのRの合計炭素原子数、環BとすべてのRの合計炭素原子数はそれぞれ3〜30である。)で表される構造を有する請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(5)、

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜24の環状基を表し、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合複数あるRは各々異なるものであってもよい。)で表される構造を有する請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(6)、

(式中、RおよびRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい環状基を表し、Rが環状基の場合、炭素原子数は3〜30であり、Rが環状基の場合、炭素原子数は3〜23であり、RとRが連結して環状基を形成してもよく、Xはアルカリ金属原子を表し、pは0〜3の整数を表し、pが2以上の場合複数あるRは各々異なるものであってもよい。)で表される構造を有する請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩が、下記一般式(7)、

(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子、アミノ基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、分岐又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数3〜30の環状基を表し、RとRが連結して環状基を形成してもよく、XおよびXは各々独立してアルカリ金属原子を表し、Lは連結基であって、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキレン基、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数2〜12のアルケニレン基、置換基を有してもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数4〜20のアルキレン基、シクロアルキレン基で中断された全炭素原子数5〜20のアルキレン基、又は、分岐または置換基を有してもよい炭素原子数6〜12のアリーレン基を表す。)で表される構造を有する請求項1または2記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の平均粒子径が、10μm以下である請求項1〜9のいずれか1項記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記(B)成分のスルホンアミド化合物の金属塩の含水率が3質量%以下である請求項1〜10のいずれか1項記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
前記(A)成分の無機充填剤が、繊維状無機充填剤である請求項1〜11のいずれか1項記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
前記(A)成分の無機充填剤が、ガラス繊維である請求項1〜11のいずれか1項記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項14】
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ乳酸からなる群から選択される少なくとも一種以上を含むものである請求項1〜13のいずれか1項記載の強化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項15】
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートを含むものである請求項1〜13のいずれか1項記載の強化ポリエステル樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−209302(P2010−209302A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60262(P2009−60262)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】