説明

強化用繊維のためのサイズ剤として用いるアルキルメタクリレート/アルキルアクリレートコポリマー

熱可塑性又は熱硬化性マトリクス樹脂において用いるための強化用繊維を、(a)40℃より高いTgを有する少なくとも1種類のアルキルメタクリレート5〜90pphwm;及び(b)0℃より低いTgを有する少なくとも1種類のアルキルアクリレート5〜50pphwm;及び(c)少なくとも1種類のC〜C不飽和カルボン酸0.1〜20pphwm;並びに(d)(i)少なくとも1種類のネオアルカン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び(ii)少なくとも1種類のα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル10〜60pphwm、及び(iii)芳香族カルボン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び(iv)他のコモノマーを含む群から選択される少なくとも1種類の更なるコモノマー;を反応させることによって得られる1種類以上のコポリマー組成物でサイジング処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月29日出願の同じ表題の米国仮特許出願61/203,847を基礎とするものである。ここに米国仮特許出願61/203,847の優先権を主張し、その開示事項を参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、メチルメタクリレート(MMA)のようなアルキルメタクリレート、ブチルアクリレート(BA)のようなアルキルアクリレート、及びメタクリル酸のような不飽和カルボン酸を、一般に例えばα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル、例えばビニル−2−エチルヘキサノエートモノマー、ネオアルカン酸のビニルエステル、例えばVeoVA 10TM、芳香族カルボン酸のビニルエステル、例えば安息香酸ビニルなどから選択される少なくとも1種類の更なるコモノマーと共に含むポリマーの製造及び使用に関する。かかるポリマーは、プラスチックを強化するのに用いる繊維のためのサイズ剤として特に有用である。
【背景技術】
【0003】
EP−0486110(メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、バーサティック酸エステル、及びアクリル酸のコポリマーラテックスが開示されている)によれば、MMA及びBAのタイプのモノマーを使用すると、乾燥後の被覆膜の機械特性、耐化学薬品性、及び耐水性が向上する傾向がある。3頁を参照。(a)メチルメタクリレート;(b)ブチルアクリレート;(c)VeoVa 10TMのような1種類以上の飽和モノカルボン酸のビニルエステル;及び(d)0.5〜5.0重量%の範囲の量の安定化モノマー;を含む出発コモノマー混合物からインターポリマーが誘導される。好ましい態様の1つは、以下のコモノマー出発混合物:(a)15〜65重量%のメチルメタクリレート;(b)0.5〜20重量%のブチルアクリレート;(c)20〜85重量%のVeoVa 10TM;及び(d)0.5〜2重量%のアクリル酸;を含む。
【0004】
SwarupらのWO−99/42500においては、アクリル酸エステル及び酢酸ビニルのようなエチレン性不飽和コモノマーと重合したネオC〜C13カルボン酸ビニルエステルから誘導されるポリマー組成物が開示されている。このポリマー組成物は、建築などの用途、金属への直接被覆、及び船舶被覆、並びに輸送機関の維持用途のために用いられる。
【0005】
Tomohikoらの特開2002−136815においては、エアフィルター媒体がガラス繊維から実質的に構成されるエアフィルター用のフィルター媒体が開示されている。ビニル重合樹脂のようなビニルエステルモノマー及びVeoVaモノマーを含むバインダーを用いることができる。メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等のような追加のモノマーを用いることもできる。更に、これらへの共重合を行うために、アクリロニトリル(AN)、スチレン、酢酸ビニル(VAc)、1,3−ブタジエン(BD)等を用いることができる。
【0006】
Seijiらの特開2004−217724においては、優れた耐水性、重合安定性、及び貯蔵安定性を有する水性エマルジョン、及びエマルジョンポリマーを製造する方法が開示されている。用いることのできるビニルエステルモノマーは、エチレンを加えた酢酸ビニルである。このエマルジョンは、紙加工、一般的な木工品用の接着剤、及び不織布製品用のバインダーとして用いることができる。
【0007】
Tanimotoらの米国特許出願公開2002/0065361においては、高い粘度及び良好な耐水性を有するポリビニルエステル樹脂エマルジョンが開示されている。このエマルジョンは、保護コロイドとして働くポリビニルアルコールの存在下、及び水不溶性のヒドロキシル基含有化合物の存在下においてビニルエステルモノマーを重合する方法において製造され、透明フィルムに容易に形成することができる接着剤として用いることができる。この発明において用いることができるビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びピバル酸ビニルが挙げられる。3〜35重量%の範囲のエチレンをエマルジョンに加えて、耐水性及び耐熱性を向上させることができる。
【0008】
FaustらのEP−1580244においては、改良された耐熱性及び延長されたポットライフを有する水性二成分系木材用接着剤が開示されている。この接着剤は、酢酸ビニル、及び架橋剤としてN−メチロールアクリルアミドを含み、2−フェノキシエチルアクリレート及び/又はイソボルニルメタクリレートのような芳香族及び/又は脂環式モノマー、並びにメチルメタクリレートも含む。用いることができる更なるビニルエステルは、ギ酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、ビニル−2−エチルヘキサノエート、酸基中に9〜10個の炭素原子を有する飽和分岐モノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa 9又はVeoVa 10、比較的長鎖の飽和又は不飽和脂肪酸のビニルエステル、例えばラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、並びに安息香酸及び安息香酸の置換誘導体のビニルエステル、例えばp−tert−ブチル安息香酸ビニルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP−0486110
【特許文献2】WO−99/42500
【特許文献3】特開2002−136815
【特許文献4】特開2004−217724
【特許文献5】米国特許出願公開2002/0065361
【特許文献6】EP−1580244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートを、場合によっては複合体の特性を向上させるための更なるモノマーと共に含むエマルジョンコポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、部分的には、少なくとも、メチルメタクリレートのようなアルキルメタクリレート、及びn−ブチルアクリレートのようなアルキルアクリレート、並びにC〜C不飽和カルボン酸を、少なくとも1種類の更なるモノマーと共に含む新規なポリマー組成物に関する。このポリマーは、繊維強化熱可塑性材料(FRTP)及び他のポリマー複合体のような複合体において用いる繊維をサイジング処理するのに特に有用である。したがって、熱可塑性又は熱硬化性マトリクス樹脂、並びに、(a)40℃より高いTgを有する少なくとも1種類のアルキルメタクリレート5〜90pphwm;及び(b)0℃より低いTgを有する少なくとも1種類のアルキルアクリレート5〜50pphwm;及び(c)少なくとも1種類のC〜C不飽和カルボン酸0.1〜20pphwm;並びに(d)(i)少なくとも1種類のネオアルカン酸のビニルエステル5〜50pphwm、(ii)少なくとも1種類のα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル、例えばビニル−2−エチルヘキサノエート10〜60pphwm、(iii)芳香族カルボン酸のビニルエステル、例えば安息香酸ビニル5〜50pphwm、及び(iv)他のコモノマー、例えばα−オレフィンを含む群から選択される少なくとも1種類の更なるコモノマー;を反応させることによって得られるポリマー組成物でサイジング処理されている強化用繊維を含むポリマー複合体が提供される。
【0012】
ネオアルカン酸のビニルエステルの好ましい範囲としては、10〜45pphwm又は20〜40pphwmを挙げることができる。α−モノ置換脂肪酸のビニルエステルの好ましい範囲としては、15〜50pphwm又は20〜40pphwmを挙げることができる。芳香族カルボン酸のビニルエステルの好ましい範囲としては、10〜40pphwm又は15〜30pphwmを挙げることができ、一方、多くの組成物において、0.5〜10又は1〜10pphwmの少なくとも1種類のC〜C不飽和カルボン酸を用いる。
【0013】
1つの好ましい態様においては、コポリマーは、(a)メチルメタクリレート20〜80pphwm;(b)ブチルアクリレート5〜50pphwm;(c)メタクリル酸又はアクリル酸1〜10pphwm;及び(d)ネオアルカン酸のビニルエステル15〜45pphwm;を反応させることによって得られる。他の態様においては、コポリマーは、(a)メチルメタクリレート5〜50pphwm;(b)ブチルアクリレート5〜50pphwm;(c)メタクリル酸又はアクリル酸1〜10pphwm;(d)ビニル−2−エチルヘキサノエート15〜40pphwm、及び安息香酸ビニル5〜30pphwm;を反応させることによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
更なる詳細は以下の議論から明らかになるであろう。
以下において、幾つかの態様及び数多くの例を参照して本発明を詳細に記載する。かかる議論は例示のみの目的のものである。本発明の精神及び範囲内の特定の例に対する修正は当業者には容易に明らかになるであろう。ここで用いる用語は、ここでの代表的な定義と合致するその通常の意味で与えられる。
【0015】
「pphwm」という略語は、他に示さない限りにおいて反応媒体に供給するモノマーを基準とするモノマー100重量部あたりの部を指す。
「アルキル(メタ)アクリレート」という用語及び同様の用語は、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート、一般的にはC〜C12アルキル、例えばn−ブチルアクリレートなどを指す。
【0016】
モノマーのTgに言及する場合は、その材料のホモポリマーのTgを指す。
他の用語及び略語は以下に示す。
本発明のコポリマーは、多くの態様において、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、及びC〜C不飽和カルボン酸モノマー単位を含む。
【0017】
本発明のコポリマーにおいて用いる更なるモノマーとしては、芳香族カルボン酸のビニルエステル、α−モノ置換脂肪酸のビニルエステル、例えばビニル−2−エチルヘキサノエート(V2EH)、及びネオアルカン酸のビニルエステルが挙げられる。
【0018】
芳香族カルボン酸のビニルエステル:
【0019】
【化1】

【0020】
安息香酸ビニルはR=フェニルの場合である。Rは、任意のC〜C12芳香族部分、例えばナフチル、ビフェニル等であってよく、その環は、ハロゲン、アルキル、ニトロ、アミンなどで更に置換されていてもよい。好適な芳香族カルボン酸エステルの更なる記載は、WO−2005/098200(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)において見られる。
【0021】
幾つかの態様においては、α−モノ置換脂肪酸のビニルエステル、例えばビニル−2−エチルヘキサノエート(V2EH)からのモノマー単位を与える。
【0022】
【化2】

【0023】
ビニル−2−エチルヘキサノエートはR=エチルの場合である。
より一般的には、任意のα−モノ置換アルカン酸ビニルエステル、例えば式:
【0024】
【化3】

【0025】
のアルカン酸エステルを用いることができる。
ここで、R=直鎖、分岐、又は環式のアルキル基である。例えば、2−アルキルブタン酸(n=1)であり、又はアルキルプロパン酸はn=0の場合である。nは好適には2〜20である。好適な分岐酸アルカノエートはまた、Blincowらの米国特許5,371,137(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)において見ることができる。
【0026】
ネオアルカン酸のビニルエステルは、次の一般的な構造:
【0027】
【化4】

【0028】
(ここで、R及びRはアルキル基であり、一緒に通常は合計で約6〜8個の炭素原子を含んでいてよい)
を有する。VeoVaTMネオアルカン酸ビニルエステルは、Columbus, OhioのHexion Specialty Chemicalsから入手できる。VeoVaTM 9においては、R及びRは一緒に約6個の炭素原子を含む。VeoVaTM 10においては、R及びRは一緒に約7個の炭素原子を含む。VeoVaTM 11においては、R及びRは一緒に約8個の炭素原子を含む。ポリマー系中にネオアルカン酸ビニルエステルを含ませると、ポリマーに疎水性を導入して炭化水素可溶性又は低エネルギー表面への接着性を与え、更にポリマーに立体的な嵩を加えてより大きな加水分解安定性を与えることができる。
【0029】
所望の場合には、α−オレフィンモノマー、官能性モノマーなどのような場合によって用いる更なるモノマーを含ませることもできる。好適なα−オレフィンモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、α−ブチレン、α−ペンチレン、α−ヘキシレン、α−オクチレンなどが挙げられる。
【0030】
本発明のコポリマーは、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4版, vol.24, pp.954-963 (Wiley 1996)(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているようなバルク、溶液、懸濁、及び乳化プロセスなどによる、付加ポリマーを製造する種々の技術によって製造することができる。本発明の組成物の製造は、遊離基乳化重合の連続又は不連続プロセスを用いて行うことができる。重合は、ループ又は撹拌反応器のような通常の反応容器を用いて行うことができる。バッチ、混合バッチ/供給流、純粋供給流プロセス、又は成核粒子上への供給流プロセスのような不連続プロセスを用いることが好ましい。
【0031】
これらのプロセスにおいては、ペルオキソジスルフェート、アゾ化合物、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシド、又はジベンゾイルペルオキシドのような水溶性及び/又は油溶性開始剤系を用いる。これらは、単独か、或いは、酸化還元触媒系として、Fe(II)塩、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸のような還元性化合物と組み合わせて用いることができる。重合前、重合中、又は重合後に、乳化剤、及び/又は適当な場合には保護コロイド、添加剤、及び/又は助剤を加えることができる。乳化剤の例としては、それぞれ好ましくは分子あたり8〜50モルのエチレンオキシド単位を有するアルキルアリールポリグリコールエーテル及びアルキルポリグリコールエーテル、それぞれ好ましくは脂溶性部分に8〜18個の炭素原子及び親水性部分に50以下のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド単位を有する、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド、アルキルスルホネート又はアルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキル及びアリールエーテルスルフェート並びにホスフェートとのブロックコポリマー、並びにそれぞれ好ましくはアルキル基中に8〜18個の炭素原子を有するスルホコハク酸又はアルキルフェノールのモノエステル又はジエステルが挙げられる。好ましいタイプの乳化剤は脂溶性部分に線状アルキルフェノール単位を含まない。
【0032】
本発明のポリマーを製造するために用いるアルキルアクリレート及びメタクリレートの代表例としては、アルキル基が1〜12個又は1〜10個の炭素原子を含むものが挙げられる。また、ブテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのような酸のエステルをコモノマーとして用いることもできる。エチレン性不飽和を有する好ましい他のエステルの代表例としては、ギ酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられる。アクリル酸エステルラテックスにおけるポリマー骨格は親水性又は疎水性のいずれかであってよく、重合した軟質モノマー及び/又は硬質モノマーを含んでいてよい。軟質及び硬質モノマーは、重合すると軟質又は硬質ポリマー或いは中間のポリマーを生成するモノマーである。好ましい軟質アクリル酸エステルモノマーは、アルキル基中に2〜8個の炭素原子を含むアルキルアクリレートから選択され、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。硬質アクリル酸エステルモノマーは、アルキル基中に3個以下の炭素原子を含むアルキルメタクリレート、並びにスチレン及び置換スチレン類、アクリロニトリル、塩化ビニル、並びに一般に、そのホモポリマーが50℃より高いTgを有する任意の適合性のモノマーのような非アクリルモノマーから選択される。好ましいアクリル酸エステルモノマーは、アルキル基中に1〜12個の炭素原子を含むアルキルメタクリレートから選択され、特にメチルメタクリレートである。Garrettらの米国特許5,021,519を参照。
【0033】
アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート単位を含む本発明のコポリマーは、エチレン性不飽和のイオン性モノマー単位、例えばそれぞれのモノマーの二重結合に直接隣接している少なくとも1つのカルボン酸、スルホン酸、リン酸、又はホスホン酸基を有するか、或いはスペーサーを介してそれに結合している単位を更に含む。例としては、
α,β−不飽和C〜Cモノカルボン酸、好ましくはα,β−不飽和C〜Cモノカルボン酸、α,β−不飽和C〜Cジカルボン酸、及びこれらの無水物、並びにα,β−不飽和C〜Cジカルボン酸のモノエステルが挙げられる。
【0034】
α,β−不飽和C〜Cモノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸が好ましい。これらの無水物、及び/又は不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸、並びにそれらとC〜C12アルカノールとのモノエステル、例えばマレイン酸モノメチル及びマレイン酸モノ−n−ブチルを用いることもできる。更に好ましいエチレン性不飽和イオン性モノマーは、エチレン性不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシ−及び2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシ−及び3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、及びビニルベンゼンスルホン酸、並びにエチレン性不飽和ホスホン酸、例えばビニルホスホン酸である。
【0035】
更に、言及した酸と同様に、その塩、好ましくはそのアルカリ金属塩又はそのアンモニウム塩、特にそのナトリウム塩、例えばビニルスルホン酸及び2−アクリルアミドプロパンスルホン酸のナトリウム塩を用いることもできる。
【0036】
言及したエチレン性不飽和遊離酸は、pH11の水溶液中において、主としてアニオン形態のそれらの共役塩基の形態で存在し、言及した塩と同様にアニオン性モノマーと呼ぶことができる。
【0037】
また、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートのようなエポキシド官能性コモノマーも好適である。更なる例は、ケイ素官能性コモノマー、例えばアクリロキシ−プロピルトリ(アルコキシ)シラン及びメタクリロキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシランであり、存在してよいアルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、及びエトキシプロピレングリコールエーテル基である。ヒドロキシ又はCO基を有する有用なモノマー、例えばヒドロキシアルキルメタクリレート及びアクリレート、例えばヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、又はヒドロキシブチルアクリレート又はメタクリレート、並びにジアセトンアクリルアミド、及びアセチルアセトキシエチルアクリレート又はメタクリレートのような化合物を言及することもできる。Weitzelの米国特許出願公開2007/0112117を参照。
【0038】
更に、本発明によれば、(a)40℃より高いTgを有するアルキルメタクリレートモノマー単位10〜90pphwm;(b)0℃より低いTgを有するアルキルアクリレートモノマー単位5〜50pphwm;(c)ネオアルカン酸のビニルエステルからのモノマー単位5〜50pphwm;及び(d)C〜C不飽和カルボン酸モノマー単位1〜20pphwm;を反応させることによって得られ、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー複合体において用いる強化用繊維をサイジング処理するのに好適なように合成及び構成されるポリマー組成物が提供される。アルキルメタクリレートモノマー単位は通常はメチルメタクリレートモノマー単位であり、一方、アルキルアクリレートモノマー単位はブチルアクリレートモノマー単位であってよい。ネオアルカン酸のビニルエステルは、好ましくは構造式:
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、R及びRは、一緒に合計で約6〜8個の炭素原子を含んでいてよいアルキル基である)のものである。他の組成物は、(a)メチルメタクリレートモノマー単位20〜80pphwm;(b)ブチルアクリレートモノマー単位5〜50pphwm;(c)ネオアルカン酸のビニルエステルからのモノマー単位15〜45pphwm;及び(d)メタクリル酸又はアクリル酸モノマー単位1〜10pphwm;を反応させることによって得られる。
【0041】
本発明の更に他の形態は、熱可塑性又は熱硬化性マトリクス樹脂、並びに、(a)40℃より高いTgを有するアルキルメタクリレートモノマー単位10〜90pphwm;(b)0℃より低いTgを有するアルキルアクリレートモノマー単位5〜50pphwm;(c)ネオアルカン酸のビニルエステルからのモノマー単位5〜50pphwm;(d)C〜C不飽和カルボン酸モノマー単位1〜20pphwm;を反応させることによって得られるポリマー組成物でサイジング処理されている強化用繊維を含み、強化用繊維がガラス繊維又は他の無機繊維であるポリマー複合体に関する。
【0042】
本発明の更に他の形態は、(a)40℃より高いTgを有するアルキルメタクリレートモノマー単位10〜90pphwm;(b)0℃より低いTgを有するアルキルアクリレートモノマー単位5〜50pphwm;(c)ネオアルカン酸のビニルエステルからのモノマー単位5〜50pphwm;(d)C〜C不飽和カルボン酸モノマー単位1〜20pphwm;を反応させることによって得られるポリマー組成物でサイジング処理されているガラス繊維又は他の無機繊維である強化用繊維である。
【0043】
任意の上記のポリマー複合体又は以下に記載するものは、強化用繊維を有するポリマー複合体の製造において用いることができ、或いはサイズ剤としてガラス繊維又は無機繊維に施すことができる。
【0044】
1つの好ましい組成物は、(a)40℃より高いTgを有するアルキルメタクリレートモノマー単位10〜60pphwm;(b)0℃より低いTgを有するアルキルアクリレートモノマー単位5〜50pphwm;(c)α−モノ置換脂肪酸のビニルエステルからのモノマー単位10〜60pphwm;(d)芳香族カルボン酸のビニルエステルからのモノマー単位5〜50pphwm;及び(e)C〜C不飽和カルボン酸モノマー単位1〜20pphwm;を反応させることによって得られる。α−モノ置換モノマー単位はビニル−2−エチルヘキサノエートモノマー単位であってよく、カルボン酸ビニルエステルモノマー単位は安息香酸ビニルモノマー単位であってよく、一方、他の成分は上記に記載の通りである。
【0045】
本発明の更なる形態は、(a)メチルメタクリレートモノマー単位10〜40pphwm;(b)ブチルアクリレートモノマー単位5〜50pphwm;(c)ビニル−2−エチルヘキサノエートモノマー単位15〜40pphwm;(d)安息香酸ビニルモノマー単位5〜30pphwm;及び(e)メタクリル酸又はアクリル酸モノマー単位1〜10pphwm;を反応させることによって得られ、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー複合体において用いる強化用繊維をサイジング処理するのに好適なように合成及び構成されているポリマー組成物である。
【0046】
一般的に、以下に議論するように、強化用繊維を本発明のコポリマーでサイジング処理して、熱可塑性マトリクス樹脂又は熱硬化性樹脂マトリクス中に埋封する。繊維をその中に埋封する1つの熱可塑性マトリクスは好適にはナイロン又はポリアミドポリマーを含むが、他のマトリクスポリマーを同様に用いることができる。一般的に、シート、フィルム、又は繊維形成のために好適なポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、及び他のポリマーを用いることができる。用いることができるポリエステルは、一般に、公知の重合法によって、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と飽和脂肪族及び芳香族ジオールとから得られる。好ましい芳香族二酸モノマーは、テレフタル酸又はイソフタル酸の低級アルキルエステル、例えばジメチルエステルである。代表的な脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。好ましい芳香族ジカルボン酸又はそのエステル若しくは無水物を、飽和脂肪族又は芳香族ジオールを用いてエステル化又はエステル交換及び重縮合する。代表的な飽和脂肪族ジオールとしては、好ましくは低級アルカンジオール、例えばエチレングリコールが挙げられる。代表的な脂環式ジオールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。代表的な芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン、レゾルシノール、及びナフタレンジオールの異性体(1,5−、2,6−、及び2,7−)のような芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族及び芳香族ジカルボン酸と飽和脂肪族及び芳香族ジオールの種々の混合物を用いることもできる。最も通常的には、芳香族ジカルボン酸を脂肪族ジオールと共に重合して、ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸+エチレングリコール)のようなポリエステルを製造する。更に、芳香族ジカルボン酸を芳香族ジオールと共に重合して、ポリフェニレンテレフタレート(テレフタル酸+ヒドロキノン)のような全芳香族ポリエステルを製造することができる。これらの全芳香族ポリエステルの幾つかは溶融状態で液晶相を形成し、したがって「液晶ポリエステル」又はLCPと呼ばれる。
【0047】
また、A−Bモノマーを含むポリエステルも含まれる。上記に記載のポリエステルは、A−A及びB−Bタイプのモノマーとして知られるものから誘導される。即ち、二酸(テレフタル酸)であろうと又はジオール(エチレングリコール)であろうと同じ重合性基を含むモノマーである。しかしながら、ポリエステルは、A−Bモノマーとして知られるそれぞれの分子上に2種類の異なる重合性基が存在するものから誘導することもできる。A−Bモノマーの例としては、4−ヒドロキシ安息香酸(HBA)、及びヒドロキシナフトエ酸(HNA)の種々の異性体が挙げられる。これらのモノマーは、重合させてポリ(HBA)のようなホモポリエステルを形成するか、或いは任意のA−A及び/又はB−Bモノマーと共重合させることができる。
【0048】
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート;ポリ(1,4−ブチレン)テレフタレート;及び1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー;並びに、他の線状ホモポリマーエステルであって、芳香族ジカルボン酸(例えばイソフタル酸、ビ安息香酸、ナフタレン−ジカルボン酸、例えば1,5−、2,6−、及び2,7−ナフタレン−ジカルボン酸、4,4−ジフェニレン−ジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン酸、エチレン−ビス−p−安息香酸、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香酸)、エチレンビス(p−オキシ安息香酸)、1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香酸)、及び1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香酸));及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、一般式:HO(CHOH(式中、nは2〜10の整数である)の脂肪族グリコール(例えばエチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコール、及び1,3−プロピレングリコール)、一般式:HO(CHCHO)H(式中、nは2〜10,000の整数である)のポリエチレングリコール、並びに芳香族ジオール(ヒドロキノン、レゾルシノール、及びナフタレンジオールの異性体(1,5−、2,6−、及び2,7−))、からなる群から選択されるジオール;から誘導される上記線状ホモポリマーエステル;が挙げられる。また、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような1種類以上の脂肪族ジカルボン酸を存在させることもできる。
【0049】
また、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド、ポリエステル無水物、ポリエステルエーテル、ポリエステルケトンなどのようなコポリマーを含むポリエステルも含まれる。
本発明の実施において有用である可能性があるポリアミド樹脂は、当該技術において周知であり、例えば等モル量の4〜12個の炭素原子を含む飽和ジカルボン酸とジアミンとの重縮合、ラクタムの開環重合、又はポリアミドと他の成分との共重合(例えばポリエーテルポリアミドブロックコポリマーを形成する)によって製造することができる半結晶質及びアモルファスの樹脂が挙げられる。ポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラアミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(ナイロン612)、ポリドデカメチレンドデカノアミド(ナイロン1212)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリラウリンラクタム、ポリ−11−アミノウンデカン酸、並びにアジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンのコポリマーが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は本発明を更に例示するために示すものであり、本発明(その精神及び範囲は特許請求の範囲において示す)を限定するようにみなしてはならない。実施例において示す部及びパーセントは、他に示さない限りにおいて重量基準である。
【0051】
略語:
V2EH:Japan VAM and Poval Co., Ltd.によって供給される20ppmのMEHQで安定化したビニル−2−エチルヘキサノエートモノマー。
【0052】
VB:Japan VAM and Poval Co., Ltd.によって供給される40ppmのMEHQで安定化した安息香酸ビニル。
MMA:メチルメタクリレート。
【0053】
BA:ブチルアクリレート。
MAA:メタクリル酸。
VeoVa(又はVV):VeovaTMビニルエステルは、Hexion Specialty Chemicals, Columbus, Ohioによって供給されるバーサティック酸のエステルである。
【0054】
コモノマーとしてブチルアクリレート、メチルメタクリレート、VeoVaTM 10、安息香酸ビニル、ビニル−2−エチルヘキサノエート、及びメタクリル酸を用いる、ポリアミド強化のために用いるガラス繊維サイジング処理用のバインダーの製造:
実施例1−FRTPサイズ剤
アルコールエトキシレート非イオン性界面活性剤(BASFからのEmulan(登録商標) TO2080)の80%水溶液99.9g、スルホコハク酸アニオン性界面活性剤のジナトリウムエトキシル化アルコール(C10〜C12)ハーフエステル(CytecからのAerosol(登録商標) A102)の30%水溶液32.0g、及び硫酸第1鉄アンモニウムの1%水溶液0.41gを、撹拌しながら1058gの脱イオン水に加えることによって水溶液を調製した。水溶液を、スターラー及び投与ポンプを取り付けた3Lの反応器に充填した。
【0055】
反応器を40℃に加熱した。435.8gのメチルメタクリレート、284.2gのVeoVaTM10、180gのn−ブチルアクリレート、及び5.3gのメタクリル酸を含むモノマー混合物の10%を反応器にポンプで投入した。次に、40.1gの脱イオン水中に溶解した2.5gのメタ重亜硫酸ナトリウムを加えた。5分後、40.1gの脱イオン水中に溶解した5.7gの過硫酸ナトリウムを加えた。
【0056】
最大発熱において、上記に記載の残りの90%のモノマー混合物の添加を180分間で行い、反応混合物の温度を60℃に保持しながら、160.3gの脱イオン水中に溶解した1.1gのメタ重亜硫酸ナトリウム、及び2.0gの過硫酸ナトリウムの添加を別の供給流で210分間で行った。全ての添加が完了した後、反応温度を80℃に上昇させ、この温度に1時間保持した。
【0057】
保持時間の後、反応混合物を50℃に冷却した。16.0gの脱イオン水中の1.68gのメタ重亜硫酸ナトリウムの溶液を加え、反応混合物を更に15分間撹拌し、次に16.0gの脱イオン水中の2.49gのt−ブチルヒドロペルオキシドの溶液を加え、更に15分間保持した。混合物を30℃より低く冷却し、次に27.2gの脱イオン水中に溶解した3.65gの酢酸ナトリウムを加え、得られた分散液を180μのメッシュを通して濾過した。得られた分散液は、39.0%の固形分含量、23mPa・秒の粘度、2.9のpH、0.051のグリット(40μメッシュ上で測定)、及び31.0℃のTg(開始温度、DSCによる)を有していた。
【0058】
実施例2−FRTPサイズ剤
モノマー混合物が、361.8gのメチルメタクリレート、88.2gのn−ブチルアクリレート、172.4gの安息香酸ビニル、277.7gのビニル−2−エチルヘキサノエート、及び47.4gのメタクリル酸を含んでいた他は、同様の手順にしたがった。得られた分散液は、39.0%の固形分含量、18mPa・秒の粘度、2.8のpH、0.031%のグリット(40μメッシュ上で測定)、及び37.3℃のTg(開始温度、DSCによる)を有していた。
【0059】
実施例3−FRTPサイズ剤
モノマー混合物が、88.2gのメチルメタクリレート、361.8gのn−ブチルアクリレート、172.4gの安息香酸ビニル、277.7gのビニル−2−エチルヘキサノエート、及び47.4gのメタクリル酸を含んでいた他は、同様の手順にしたがった。得られた分散液は、39.0%の固形分含量、19mPa・秒の粘度、2.8のpH、0.21%のグリット(40μメッシュ上で測定)、及び−7.1℃のTg(開始温度、DSCによる)を有していた。
【0060】
【表1】

【0061】
ガラス繊維の製造
EC11 50texにしたがい、以下の技術パラメーターを用いてガラス繊維を製造した。
【0062】
炉温:1257℃;
サイズ剤塗布ローラーの速度:40rpm;
巻取速度:1250m/分。
【0063】
Dietze & Schell直接粗紡糸巻取装置を用いて繊維を紡糸し、次に135℃において5時間乾燥した。
サイズ剤の製造
以下の基本的処方を用いてサイズ剤を製造した。
【0064】
サイズ剤ポリマー(実施例1〜3、固形分40%):4.5重量%;
カップリング剤3−アミノプロピルトリエトキシシラン:1.0重量%;
非イオン性界面活性剤Arcopal N100:0.3重量%。
【0065】
以下の手順を用いてサイズ剤(全重量1000g)を製造した。
1.アミノシランを472gの脱イオン水にゆっくりと加え、30分間撹拌して物質が完全に加水分解するようにした。
【0066】
2.Arcopal N100を200gの脱イオン水中に溶解し、次に工程1からの溶液1に加えた。
3.サイズ剤ポリマーを脱イオン水(45g)で1:1に希釈し、工程1及び2からの1及び2の混合溶液に加えた。
【0067】
4.更なる225gの脱イオン水を加えて、混合物を更に10分間撹拌した。
上記したように炉内でガラスマーブルを溶融した直後にガラス繊維ストランドにサイズ剤をローラー塗布した。ガラス繊維ストランドは、17μmの直径を有するガラス繊維フィラメントから構成されている。ガラス繊維ストランド上のサイズ剤の通常の添加量(LOI)は0.7%であった。
【0068】
試験片の製造
Dietze & Schell粗紡糸巻取器を用いてガラス単繊維フィラメントを粗紡糸(2400texの材料)に変化させ、押出機(ZSK 30/41D、Werner & Pfleiderer GmbH)を用いて配合した。マトリクスとして、Ultramid A27(PA66、BASF AG)及びUltramid B27(PA6、BASF AG)を用いた。配合温度は、PA6に関しては255℃であり、PA66に関しては290℃であった。試験片中のガラスの含量は30重量%であった。
【0069】
対照生成物
対照のサイズ剤として、DSMからのポリマーNeoRez 970を同じ濃度で用いた。上記に示す同じ方法を用いてガラス繊維及び試験片を製造した。
【0070】
ISO−175にしたがって、製造された試験片の機械特性を試験した。試験は、破断点引張強さ及びシャルピー耐衝撃性の測定を含んでいた(表2及び3を参照)。更に、DIN−6174(又はISOの同等の規格)にしたがって、試験片の色を測定した(表2及び3を参照)。また、TGA測定を用いてバインダー自体の熱安定性を評価した(表4を参照)。
【0071】
結果を下記に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
本発明の組成物は、対照組成物と比較して、機械特性及び色(ビニルモノマーを用いた実施例2に関してより優れていた)に関して非常に似た性能を示したが、驚くべきことに熱安定性の性能に関しては優れていた。
【0076】
本発明を詳細に記載したが、本発明の精神及び範囲内の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。上記の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景及び詳細な説明に関連して上記に論じた参照文献(その開示事項は全て参照として本明細書に包含する)に鑑みると、更なる説明は不要であると考える。更に、本発明の幾つかの形態及び種々の態様の幾つかの部分を全体的又は部分的に組み合わせるか又は交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載が例示のみの目的のものであり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)40℃より高いTgを有する少なくとも1種類のアルキルメタクリレート5〜90pphwm;及び
(b)0℃より低いTgを有する少なくとも1種類のアルキルアクリレート5〜50pphwm;及び
(c)少なくとも1種類のC〜C不飽和カルボン酸0.1〜20pphwm;並びに
(d)(i)少なくとも1種類のネオアルカン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び
(ii)少なくとも1種類のα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル10〜60pphwm、及び
(iii)芳香族カルボン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び
(iv)他のコモノマー、
を含む群から選択される少なくとも1種類の更なるコモノマー;
を反応させることによって得られる1種類以上のコポリマー組成物でサイジング処理されている熱可塑性又は熱硬化性マトリクス樹脂において用いるための強化用繊維。
【請求項2】
更なるモノマー(d)がネオアルカン酸のビニルエステルである、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項3】
更なるモノマー(d)がα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル及び芳香族カルボン酸のビニルエステルである、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項4】
アルキルメタクリレートがメチルメタクリレートである、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項5】
アルキルアクリレートがブチルアクリレートである、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項6】
ネオアルカン酸のビニルエステルが、構造式:
【化1】

(式中、R及びRは、一緒に合計で約6〜8個の炭素原子を含んでいてよいアルキル基である)
のものである、請求項2に記載の強化用繊維。
【請求項7】
コポリマーが、(a)メチルメタクリレート20〜80pphwm;(b)ブチルアクリレート5〜50pphwm;(c)メタクリル酸又はアクリル酸1〜10pphwm;及び(d)ネオアルカン酸のビニルエステル15〜40pphwm;を反応させることによって得られるものである、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項8】
コポリマーが、(a)メチルメタクリレート5〜50pphwm;(b)ブチルアクリレート5〜50pphwm;(c)メタクリル酸又はアクリル酸1〜10pphwm;(d)ビニル−2−エチルヘキサノエート15〜40pphwm及び安息香酸ビニル5〜30pphwm;を反応させることによって得られるものである、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項9】
強化用繊維がガラス繊維又は他の無機繊維である、請求項1に記載の強化用繊維。
【請求項10】
熱可塑性又は熱硬化性マトリクス樹脂、及び
(a)40℃より高いTgを有する少なくとも1種類のアルキルメタクリレート5〜90pphwm;及び
(b)0℃より低いTgを有する少なくとも1種類のアルキルアクリレート5〜50pphwm;及び
(c)少なくとも1種類のC〜C不飽和カルボン酸0.1〜20pphwm;並びに
(d)(i)少なくとも1種類のネオアルカン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び
(ii)少なくとも1種類のα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル10〜60pphwm、及び
(iii)芳香族カルボン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び
(iv)他のコモノマー、
を含む群から選択される少なくとも1種類の更なるコモノマー;
を反応させることによって得られる1種類以上のコポリマー組成物でサイジング処理されている強化用繊維を含むポリマー複合体。
【請求項11】
強化用繊維がガラス繊維又は他の無機繊維である、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
(a)40℃より高いTgを有する少なくとも1種類のアルキルメタクリレート5〜90pphwm;及び
(b)0℃より低いTgを有する少なくとも1種類のアルキルアクリレート5〜50pphwm;及び
(c)少なくとも1種類のC〜C不飽和カルボン酸0.1〜20pphwm;並びに
(d)(i)少なくとも1種類のネオアルカン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び
(ii)少なくとも1種類のα−モノ置換脂肪酸のビニルエステル10〜60pphwm、及び
(iii)芳香族カルボン酸のビニルエステル5〜50pphwm、及び
(iv)他のコモノマー、
を含む群から選択される少なくとも1種類の更なるコモノマー;
を反応させることによって得られる、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー複合体において用いる強化用繊維をサイジング処理するのに好適であるように合成及び構成されているエマルジョンコポリマー組成物。
【請求項13】
アルキルメタクリレートがメチルメタクリレートである、請求項12に記載のコポリマー組成物。
【請求項14】
アルキルアクリレートがn−ブチルアクリレートである、請求項12に記載のコポリマー組成物。
【請求項15】
α−モノ置換脂肪酸ビニルエステルがビニル−2−エチルヘキサノエートである、請求項12に記載のコポリマー組成物。
【請求項16】
カルボン酸ビニルエステルが安息香酸ビニルである、請求項12に記載のコポリマー組成物。
【請求項17】
(a)メチルメタクリレート5〜50pphwm;
(b)ブチルアクリレート5〜50pphwm;
(c)ビニル−2−エチルヘキサノエート15〜40pphwm;
(d)安息香酸ビニル5〜30pphwm;及び
(e)メタクリル酸又はアクリル酸0.5〜10pphwm;
を反応させることによって得られる、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー複合体において用いる強化用繊維をサイジング処理するのに好適であるように合成及び構成されているコポリマー組成物。

【公表番号】特表2012−514135(P2012−514135A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542721(P2011−542721)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009281
【国際公開番号】WO2010/076006
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(511157686)セラニーズ・エマルジョンズ・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】