強心配糖体で神経学的状態を治療する方法
強心配糖体の投与によって対象者における神経学的状態を治療する方法が提供される。アルツハイマー病、ハンチントン病又は脳卒中が、被験体へ治療有効量の強心配糖体を投与することによって治療される。強心配糖体は投薬形態で存在し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、強心配糖体化合物又はそれらを含有する調製物で神経学的状態を治療する方法に関する。特に、本発明は、その必要がある対象者への強心配糖体の投与によって神経学的疾患又は障害を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経学的疾患又は障害は脳機能に影響を与える。これらの疾患及び障害についての治癒的な又は改善的な療法を開発するために、多くの努力がなされてきた;しかし、様々な異なる疾患及び障害に対して有効であることが判明した多数の薬物療法学的アプローチがたとえ存在するとしても、包括的な又は普遍的に治癒的な療法は開発されていない。
【0003】
ハンチントン病(HD)は、神経系に影響を与える脳の遺伝病である。それは、親から子へ遺伝する欠陥遺伝子によって引き起こされる。HD遺伝子は、適切な脳発達に非常に重要であるようである「ハンチントン」として公知の特定のタンパク質の産生を妨げる。HDの典型的な徴候としては、情動障害、認知障害及び運動障害が挙げられる。ハンチントン病は、律動性不随意運動(舞踏病)を特徴とするが、時には、異常な運動を伴わない硬直、四肢の使用における変化(失行)、身体機能の制御不能、並びに認知症、例えば、記憶、思考の速度、判断の進行性の劣化、及び立案及び問題の認識の欠如を引き起こす。ハンチントン病についての公知の治療法は存在しない。情動及び運動障害などのHDと関連する症状を制御するのを助けるために多数の薬剤が存在するが、疾患の経過を停止させるか又は逆転させる治療法は存在しない。ハンチントン病は、全体的な膜異常を伴う疾患として認識されてきた。Na,K−ATPアーゼの著しく上昇したレベル及び活性(10倍増加)が、正常なものと比較してハンチントン病患者の基底核及び赤血球の膜において観察された(非特許文献1)。ハンチントン病患者の皮膚から得られた線維芽細胞膜(非特許文献2)。
【0004】
アルツハイマー病は、認知症のある形態である−脳の知的機能(記憶、見当識、計算など)を損傷するが、通常その運動機能を維持する神経変性疾患。アルツハイマー病において、知力は徐々に低下し、記憶喪失、錯乱、失見当識、判断力の衰え、及び正常な日周活動を行う人の能力に影響を与え得る他の問題が引き起こされる。精神変化のタイプ、重篤度、順序及び進行は、大幅に異なる。アルツハイマー病について公知の治療法及びその進行を遅らせる公知の方法はない。疾患の初期又は中期段階の一部の人について、タクリンなどの薬剤がいくらかの認知症状を緩和し得る。アリセプト(Aricept)(ドネペジル)及びエクセロン(Exelon)(リバスチグミン)は、アルツハイマー型の軽度から中程度の認知症の治療について指示される可逆性アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。これらの薬物(コリンエステラーゼ阻害剤と呼ばれる)は、神経伝達物質であるアセチルコリンの脳のレベルを増加させ、脳細胞間の伝達を修復するのを助けることによって、作用する。ある薬剤は、不眠、動揺、徘徊、不安、及び意気消沈などの行動症状を制御するのを助け得る。これらの治療は、患者をより快適にすることを目的としている。アルツハイマー病を治す公知の薬剤はないが、コリンエステラーゼ阻害剤は、日周活動のパフォーマンスを改善し得、又は行動的問題を減少させ得る。現在試験されているアルツハイマー病の治療用の薬剤としては、エストロゲン、非ステロイド性抗炎症薬、ビタミンE、セレジリン(カルベックス(Carbex)、エルデプリル(Eldepryl))及び植物産物であるイチョウ(gingko biloba)が挙げられる。
【0005】
正常な状態下では、ニューロンは、膜結合型恒常性エネルギー依存性Na,K−ATPアーゼ
ポンプによって調節されるそれらの静止膜電位(testing membrane potential)及び機能を維持する。虚血は、不可逆的な組織損傷を潜在的にもたらす、イオン恒常性の変化を誘発する。損なわれたNa,K−ATPアーゼ活性は、局所虚血及び外傷性脳損傷のあるモデルにおける神経病理学的アポトーシスプロセスにおいて役割を果たすことが示唆された。脳卒中仲介虚血性脳損傷におけるNa,K−ATPアーゼの役割は、いくつかの異なる分子機構と関連することが報告された。Na,K−ATPアーゼ触媒活性の阻害は、例えば、虚血再灌流の間のATP消費の減少をもたらし得る。さらに、細胞質ゾルCa2+の欠失は、ニューロンの細胞死を引き起こし得る。従って、強心配糖体によるような、Na,K−ATPアーゼの阻害は、細胞内Ca2+レベルの増加及びNa−Ca交換体による細胞内Ca2+の排出の減少を生じさせ得る。これと一致して、海馬CA1ニューロン中の細胞内Ca2+の比較的より低いレベルが、一過性虚血の3日後に観察され、カルシウムレベルの上昇は、広範囲の虚血後治療時間にわたって遅発性神経細胞死に対する保護を提供すると考えられる。
【0006】
強心配糖体の薬理学的作用機構の1つは、イオン交換ポンプであるNa,K−ATPアーゼへ結合しこの特定の酵素の活性を阻害するそれらの能力を必要とする。形質膜を横切ってのNa+及びK+の能動輸送を触媒する膜貫通タンパク質である、Na,K−ATPアーゼは、強心配糖体についての十分に確立された薬理学的受容体である。この酵素は、ATPを加水分解し、それらの電気化学的勾配に反して、細胞内へのK+及び細胞外へのNa+の輸送を駆動するために自由エネルギーを使用する(非特許文献3)。
【0007】
Na,K−ATPアーゼは、2つのヘテロ二量体サブユニットである、触媒α−サブユニット及びグリコシル化β−サブユニットから構成されている。γサブユニットも存在するが、それは詳細に研究されていない。α−サブユニットは、ATP、Na+、K+、及び強心配糖体についての結合部位を有する。β−サブユニットは、触媒α−サブユニットを安定させるように機能し、また調節的役割を果たし得る。4つの異なるαアイソフォーム(α1、α2、α3、α4)及び3つの異なるβアイソフォーム(β1、β2、及びβ3)が哺乳動物細胞において同定された。各サブユニットタイプの相対的発現は、正常状態及び疾患状態において著しく変化する。さらに、異なるαアイソフォームへの強心配糖体の見かけの親和性は、全く異なる。α1アイソフォームへの強心配糖体の結合は、このタイプの薬物による阻害に対して250倍又はそれ以上より敏感であるα2及びα3アイソフォームで生じるものよりも少ない(非特許文献4)。Sakaiら(非特許文献5)は、α3サブユニットアイソフォームの発現が、正常結腸直腸細胞と比較してヒト結腸直腸癌細胞において増加することを報告している。
【0008】
強心配糖体の脂溶性に対する相対的水溶性は広範囲に及ぶ。大抵の強心配糖体はNa,K−ATPアーゼ活性へ結合しこれを阻害し得る一方、脂溶性(親油性又は疎水性)よりも比較的より水溶性(親水性)である強心配糖体は、血液脳関門として公知の脳への脂質関門を通過する限られた能力しか有さない。血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)中の脈絡叢によって維持される、循環血液と脳脊髄液(CSF)との分離である。内皮細胞は、小さな疎水性の分子(O2、ホルモン、脂溶性強心配糖体など)の拡散を可能にする一方、CSF中への微視的な物体(例えば、細菌)及び大きな又は親水性の分子の拡散を制限する。
【0009】
ネリウム・オレアンダー(Nerium oleander)は、亜熱帯アジア、米国南西部、及び地中海に広く分布している観賞植物である。その医学的及び毒物学的性質は、長い間、認識されてきた。それは、例えば、痔、潰瘍、ハンセン病、ヘビ咬傷の治療において、及び流産の誘発においてさえも使用されてきた。オレアンダー抽出物の重要であるが唯一の成分ではない、オレアンドリンは、強心配糖体である。
【0010】
ネリウム種の植物からの配糖体の抽出は、ネリウム・オレアンダーから薬理学的に/治療的に活性な成分を提供した。これらの中にはオレアンドリン、ネリイホリン(nerifoli
n)、及び他の強心配糖体化合物がある。商標ANVIRZEL(商標)で販売される、ネリウム・オレアンダーの熱水抽出によって得られたオレアンドリン抽出物は、ネリウム・オレアンダーの熱水抽出物の濃縮形態又は粉末形態を含有する。熱水オレアンダー抽出物(即ち、Anvirzel(商標))の第I相試験が完了した(非特許文献6)。約57 ugオレアンドリン/日を提供する、オレアンダー抽出物は、1.2 ml/m2/dまでの用量で安全に投与され得ると結論付けられた。用量制限毒性は見られなかった。
【0011】
Huachansuはヒキガエルの皮膚から得られる抽出物であり、それは、強心配糖体であるブファリンなどのブファジエノリドを含む。HuaChanSuは、中国において癌治療についての承認薬である。それは、肝癌、胃癌、肺癌、皮膚癌及び食道癌を含む、様々な癌を治療するために使用されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Butterfield DA, Oeswein JQ, Prunty ME, Hisle KC, Markesbery WR. Increased sodium, potassium adenosine triphosphatase activity in erythrocyte membranes in Huntington's disease. Ann Neurology, 4:60−62, 1978
【非特許文献2】Schroeder F, Goetz IE, Roberts E, Membrane anomalies in Huntington's disease fibroblasts. J. Neurochem. 43: 526−539, 1984
【非特許文献3】Hauptman, P. J., Garg, R., and Kelly, R. A. Cardiac glycosides in the next millennium. Prog. Cardiovasc. Dis. 41: 247−254, 1999
【非特許文献4】Blanco, G. and Mercer, R. W. Isozymes of the Na, K−ATPase: heterogeneity in structure, diversity in function. Am. J. Physiol. 275 (Renal Physiol. 44): F633−F650, 1998
【非特許文献5】Sakai et al., FEBS Letters 563: 151−154, 2004
【非特許文献6】Mekhail et al., Am. Soc. Clin. Oncol., vol. 20, p. 82b, 2001
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、神経学的状態を治療する方法であって、該神経学的状態を治療するための有効量で強心配糖体を含有する組成物をその必要がある対象者(subject)へ投与する工程を含む方法を提供する。
【0014】
本発明の別の局面は、その必要がある対象者において、強心配糖体を含む組成物を用いて、変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を治療する方法であって、
対象者が、変化したNa,K−ATPアーゼα3アイソフォーム対α1アイソフォームサブユニット比と関連するか又は変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;及び
対象者への強心配糖体を含む組成物の投与を指示する工程
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明のある実施態様は、以下のものを含む:1)強心配糖体を含む組成物の治療的に適切な用量を対象者に処方及び投与する;2)処方された投薬計画に従って、強心配糖体を含む組成物を対象者に投与する;3)強心配糖体を含む抽出物を含む組成物を対象者に投与する;4)抽出物が、抽出中に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む;5)抽出物が、抽出中に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む;6)組成物が、1つ又はそれ以上の他の非強心配糖体治療有効薬剤、即ち、強心配糖体ではない薬剤をさらに含む;及び/又は7)強心配糖体を含有する植物又は動物源の熱水抽出物を2 mg〜22.5 mg/日、又は強心配糖体の植物又は動物源の濃縮抽出物(例えば、超臨界CO2抽出物又は有機溶媒抽出物)0.6〜4.8 mg、又は強心配糖体の純粋単一化学形態10〜500 ugを、対象者に投与する。
【0016】
本発明はまた、その必要がある対象者における神経学的状態を治療する方法であって、
対象者における神経学的状態が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態であるか否かを決定する工程;
強心配糖体の投与を指示する工程;
一定期間の間、処方された初期投薬計画に従って対象者へ初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を定期的に決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含む方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、その危険性がある対象者の集団における神経学的状態の発生を予防する又は発生率を下げる方法であって、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団中の1又はそれ以上の対象者へ、長期間、繰り返しベースで、有効用量の強心配糖体を投与し、それによって集団における神経学的状態の発生を予防する又は発生率を下げる工程を含む方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、以下の実施態様を含む:a)方法が、1又はそれ以上の対象者への強心配糖体の投与を指示する工程をさらに含む;b)方法が、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ有効用量の強心配糖体を投与する工程をさらに含む;c)方法が、強心配糖体での治療に対する1又はそれ以上の対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を定期的に決定する工程をさらに含む;d)対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、方法が、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程をさらに含む;e)対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、方法が、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程をさらに含む;f)強心配糖体を集団中の複数の対象者へ投与する;g)繰り返しベースが、毎日、1日おき、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、1週おき、2週ごと、3週ごと、毎月、隔月、半月ごと、1ヶ月おき 2ヶ月ごと、四半期ごと、1四半期おき、三半期ごと、季節ごと、半年ごと及び/又は毎年である;h)長期間が、1週又はそれ以上、1ヶ月又はそれ以上、1四半期又はそれ以上及び/又は1年又はそれ以上である;i)有効用量を1日に1回又はそれ以上投与する;j)方法が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団を同定する工程をさらに含む;及び/又はk)危険性がある対象者の集団が、対象者の加齢、神経学的状態の家族歴、神経学的状態の発生の遺伝的素因、対象者におけるApoE4遺伝子の存在及び発現、女性(男性よりも2倍多くの女性がアルツハイマー病になる)、心血管疾患(例えば、高血圧及び高コレステロールレベル)、糖尿病(特に2型又はこの疾患の成人発症型)、ダウン症候群、頭部外傷、低レベルの正規の教育、喫煙、過剰なアルコール摂取及び/又は薬物乱用によって特徴付けられる。
【0019】
本発明はまた、対象者における脳卒中を治療する時間遅延方法であって、
対象者が脳卒中に罹った後の受容可能な遅延期間内に、初期投薬計画に従って初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含む方法を提供する。
【0020】
本発明のある実施態様は、以下のものを含む:1)遅延期間が、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内又は10分以内である;2)対象者の臨床及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程が、身体の片側の顔、腕及び/又は脚のいずれかの脱力、身体の片側の顔、腕及び/又は脚の知覚低下、音声言語を理解することができないこと、話す又は明瞭に話すことができないこと、書くことができないこと、めまい及び/又は歩行不均衡、複視並びに異常に重篤な頭痛の評価によって行われる;又は3)それらの組み合わせ。
【0021】
本発明はまた、対象者における神経学的状態の治療用の医薬の製造における強心配糖体の使用を提供する。ある実施態様において、このような医薬の製造は、強心配糖体を提供する工程;強心配糖体の用量を薬学的投薬形態に含める工程;及び薬学的投薬形態を包装する工程を含む。ある実施態様において、製造は、PCT国際出願第PCT/US06/29061号に記載されるように行われ得る。製造はまた、1つ又はそれ以上の追加の工程:例えば、売主(小売業者、卸売業者及び/又は流通業者)へ包装された投薬形態を届ける工程;神経学的状態を有する対象者へ包装された投薬形態を販売するか又は他の方法で提供する工程;使用、投薬計画、投与、内容物及び投薬形態の毒性プロフィールについての説明書を提供するラベル及び添付文書を医薬と共に含める工程を含み得る。ある実施態様において、神経学的状態の治療は、以下を含む:対象者が神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;投薬計画に従う対象者への強心配糖体の投与を指示する工程;強心配糖体を含有する1つ又はそれ以上の薬学的投薬形態を対象者へ投与する工程、ここで、1つ又はそれ以上の薬学的投薬形態は投薬計画に従って投与される。
【0022】
本発明はまた、神経学的状態の治療のための、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物、即ち、薬学的製剤又は投薬形態を提供する。ある実施態様において、強心配糖体含有組成物は、本明細書に又は米国特許第7,402,325号、PCT国際出願第PCT/US06/29061号、米国出願第12/019435号に記載される通りであり、これらの全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0023】
ある実施態様において、神経学的状態を有する対象者、即ち、その必要がある対象者は、このような対象者の集団の一部である。本発明は、神経学的状態を有する対象者の集団中の統計的に有意な数の対象者の臨床状態を改善するための方法であって、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を対象者の集団へ投与する工程;及び対象者の臨床状態を測定する工程を含む方法を提供する。ある実施態様において、統計的に有意な数は、集団の少なくとも5%である。
【0024】
ある実施態様において、神経学的状態は、本明細書に記載されるような、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態である。医薬は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含有する薬学的投薬形態に強心配糖体を含めることによって製造され得る。
【0025】
強心配糖体での対象者の治療は必要に応じて継続される。用量又は投薬計画は、疾患と関連する特定の神経学的症状の減少又は緩和などの所望の臨床的エンドポイントに患者が達するまで、必要に応じて調節され得る。臨床反応及び/又は治療反応の妥当性の決定は、治療される神経学的状態に精通している医師によって行われ得る。
【0026】
ある実施態様において、神経学的状態は、神経学的疾患、神経学的障害、及び脳卒中からなる群より選択される。ある実施態様において、神経学的疾患は、神経変性疾患である。ある実施態様において、神経変性疾患は、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ウシ海綿状脳症、多発性硬化症、糖尿病性神経障害、自閉症及び若年型神経セロイドリポフスチン症からなる群より選択される。ある実施態様において、脳卒中は、虚血性脳卒中又は脳卒中仲介虚血性損傷である。
【0027】
ある実施態様において:1)強心配糖体は、オレアンドリン、ウアバイン、ブファリン、ジギトキシン、シノブファタリン(cinobufatalin)、シノブファギン、及びレジブホゲニン(resibufogenin)からなる群より選択される;2)植物又は動物源の抽出によって誘導されたか、入手可能な強心配糖体の化学修飾(例えば、誘導体化)によって合成又は製造されたかにかかわらず、強心配糖体は純粋な形態で存在する;3)強心配糖体は抽出物中に存在する;4)強心配糖体は薬学的製剤又は組成物中に存在する;5)強心配糖体はオレアンダー植物マス(oleander plant mass)から得られた;6)オレアンダー植物マスは、ネリウム属の種、例えば、ネリウム・オレアンダー、又はテベティア(Thevetia)属の種、例えば、テベティア・ネリイフォリア(Thevetia neriifolia)(そうでなければイエローオレアンダー(yellow oleander)として公知)を含む;7)強心配糖体は対象者への投与後に血液脳関門(BBB)を通過する;8)強心配糖体抽出物は、場合によりボディファイヤーの存在下で、超臨界流体(SCF)抽出によって調製された;9)強心配糖体がオレアンドリンである;10)強心配糖体は、4 L/hr以下の脳組織についてのクリアランス速度を有する;及び/又は11)本明細書に開示の任意の経路によるその投与後、強心配糖体は、少なくとも8時間の間、脳組織中に保持される。ある実施態様において、強心配糖体はネリイホリン(neriifolin)を除外する。
【0028】
ある実施態様において:1)SCF抽出物は、強心配糖体に加えて少なくとも1つの他の薬理学的活性薬剤をさらに含み、該他の薬理学的活性薬剤は、抽出物を作製するために使用された抽出プロセスの間に強心配糖体と共に得られた;2)SCF抽出物は、少なくとも1つの他の非強心配糖体薬理学的活性薬剤をさらに含む;3)他の薬理学的活性薬剤は、抽出物が対象者へ投与される場合、強心配糖体の治療効能に寄与し得る;4)他の薬理学的活性薬剤は、強心配糖体の治療効能に寄与するように相加的に又は相乗的に機能する;及び/又は5)抽出物は、ヒキガエルの皮膚又はそこからの分泌物から得られた。
【0029】
ある実施態様において、神経学的状態は、若年性自閉症と関連するものなどの酵素活性の増加(Clin. Biochem. 2009; 42(10−11), 949−957)、糖尿病性神経障害(Neuroscience 2009)、バッテン病(Exp. Cell Res. 2008, 314(15):2895−2905)、加齢性認知症及びアルツハイマー病(J. Alzheimers Dis. 2008, 14(1): 85−93; Neurobiol. Aging 2007, 28(7):987−994)において見られるものなどの酵素活性の減少、又はパーキンソン病と関連するものなどのNa,K−ATPアーゼサブユニット構造の特定の突然変異(Human Gen. 2009, 126(3):431−447)のいずれかによるNa,K−ATPアーゼ活性の特定の変化と関連する病因を有する。
【0030】
本発明の方法の個々の工程は、別個の設備で又は同一の設備内で行われ得る。
【0031】
ある実施態様において、ニューロンは、インビトロ、エクスビボ又はインビボにある。
ある実施態様において、ニューロンはCA−1ニューロンである。
【0032】
本発明はまた、神経学的状態を治療する方法;変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を、その必要がある対象者において、治療する方法;神経学的状態の治療用の医薬の製造における強心配糖体の使用;及び/又は本明細書に実質的に示され記載される神経学的状態の治療用の強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を提供する。
【0033】
本発明は、本明細書に開示される本発明の局面、実施態様及びサブ実施態様の全ての組み合わせを含む。
【0034】
下記の図は、本明細書の一部を形成し、特許請求される発明の例示的な実施態様を説明する。当業者は、これらの図及び本明細書中の説明を考慮して、過度の実験をすることなく、本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。3つの独立した実験の結果が示される。
【図1B】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。3つの独立した実験の結果が示される。
【図1C】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。3つの独立した実験の結果が示される。
【図1D】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例11)におけるオレアンドリン対コントロールであるネリイホリンの比較評価から得られた濃度−反応データを示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。
【図1E】本明細書に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例11)におけるオレアンドリン含有SCF抽出物についての濃度−反応アッセイの結果を示し、ここで、酸素又はグルコース欠乏無しがコントロールとして使用される。
【図2A】神経保護脳スライスベース「非脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下でOGD無しで測定される。
【図2B】神経保護脳スライスベース「非脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下でOGD無しで測定される。
【図2C】神経保護脳スライスベース「非脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下でOGD無しで測定される。
【図3A】神経保護脳スライスベース「アルツハイマー病」アッセイ(実施例9)におけるオレアンドリン対オレアンドリン抽出物の比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、種々の量のそれらの薬剤の存在又は非存在下でAPP/Aβ誘発変性後に測定される。
【図3B】神経保護脳スライスベース「アルツハイマー病」アッセイ(実施例9)におけるオレアンドリン対オレアンドリン抽出物の比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、種々の量のそれらの薬剤の存在又は非存在下でAPP/Aβ誘発変性後に測定される。
【図3C】神経保護脳スライスベース「アルツハイマー病」アッセイ(実施例9)におけるオレアンドリン対オレアンドリン抽出物の比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、種々の量のそれらの薬剤の存在又は非存在下でAPP/Aβ誘発変性後に測定される。
【図4A】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4B】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4C】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4D】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4E】ハンチントン病のトランスフェクションに起因するニューロンの損傷及び死を救出するその相対的能力の観点からのオレアンドリンについての濃度−反応曲線を示す(インビトロアッセイからの結果;実施例10)。
【図5】本明細書に記載される時間遅延神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例13)の結果を示し、ここで、「脳卒中」脳組織は、OGD後の約2、約4又は約6時間の終了後に強心配糖体含有溶液(オレアンドリン含有SCF抽出物)で処理される。
【図6】CD1マウスにおけるオレアンドリン含有SCF抽出物(三角、識別コード:PBI−05204)及びオレアンドリン(丸)のi.p.投与後の24時間期間にわたるオレアンドリンについての血漿及び脳組織中における濃度−時間関係のプロットを示す。5匹のマウスについての脳(ng/g)及び血漿(ng/ml)中の平均値±SDオレアンドリン濃度が示される。PBI−05204(オレアンドリン0.8 mg/kgを含有する38 mg/kg、50μl)及びオレアンドリン(3 mg/kg、100μl)を、DMSO:PEG400ビヒクルに50:50 v/v(PBI−05204、28.6 mg/ml)又は25:75 v/v(オレアンドリン、1 mg/ml)で溶解した。コントロール群はDMSO:PEG400ビヒクルのみを受けた。0.5、1、2、4、8及び24時間で、血漿及び脳組織をLC/MS/MS分析のために採取した。急速かつ持続的なCNS浸透がPBI−05204及びオレアンドリンの投与後の両方で観察された。
【図7A】本明細書に記載されるように行われた神経保護脳スライスベースアッセイの結果を示す。図7Aは、オレアンドリン(灰色丸)についての関係を表す濃度−反応曲線を示す。100%へ設定された各実行についての内部ポジティブ(非OGD)及びネガティブ(OGD)コントロール間の差異に対して標準化された6個の実行の要約;平均値±SEMが示される。ネリイホリン(白四角)についての濃度関係が、比較のためにWangら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006), 103(27), 10461−10466)から抜粋されてここに複写されている。
【図7B】本明細書に記載されるように行われた神経保護脳スライスベースアッセイの結果を示す。図7Bは、PBI−05204(黒四角)についての関係を表す濃度反応曲線を示す。100%へ設定された各実行についての内部ポジティブ(非OGD)及びネガティブ(OGD)コントロール間の差異に対して標準化された13個の実行の要約;平均値±SEMが示される。オレアンドリンについての図7Aからのデータが、PBI−05204抽出物中のオレアンドリンについて3%組成物を仮定して、図7Bに再プロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、その必要がある対象者への有効用量の強心配糖体の投与によって神経学的状態を治療する方法を提供する。強心配糖体は、治療される神経学的状態についての従来の臨床プラクティス及び臨床治療エンドポイントに従って臨床的に決定される用量及び投薬計画の適切性である、対象者に最も適した投薬計画に従って投与される。
【0037】
ある実施態様において、治療される神経変性障害又は神経学的状態は、Na,K−ATPアーゼ結合活性と又は細胞又は組織内でのNa,K−ATPアーゼの調節障害(disregulation)と関連する病因を有する。ある実施態様において、治療される神経変性障害又は神経学的状態は、HIF−1α結合活性と又は細胞又は組織内でのHIF−1αの調節障害と関連する病因を有する。このような調節障害は、例えば、酵素活性の程度の著しい変化として生じ得る。これは、順番に、酵素機能の変化、酵素含有量の変化、又は患部組織内での分布の変化にさえ起因し得る。
【0038】
本発明に従って治療される対象者は治療反応を示す。「治療反応」によって、疾患又は障害に苦しむ対象者が、強心配糖体での治療の結果として以下の臨床的利益の少なくとも1つを享受することが意味される:疾患又は障害の改善、疾患又は障害と関連する症状の発生の減少、疾患又は障害の部分寛解、疾患又は障害の完全寛解、又は進行までの時間の増加。換言すれば、治療反応は完全な又は部分的な治療反応であり得る。
【0039】
治療反応はまた、神経変性疾患に苦しむ患者のクオリティ・オブ・ライフが改善されるものとして記載され得る。クオリティ・オブ・ライフの改善は、例えば、疾患と関連する症状(例えば、振戦、不随意筋肉運動、神経−筋肉協調の喪失又は部分的喪失、記憶保持など)の発生、頻度又は重篤度の減少によって生じ得る。
【0040】
「危険性がある対象者の集団における神経学的状態の発生を予防すること」は、神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の人工統計学的に予め決定された集団において、予め決定された期間の間、神経学的状態が生じないことを意味する。予め決定された期間の間の予防は、その集団中の対象者が本発明の方法に従って強心配糖体を投与されたことの結果として生じる。一例として、強心配糖体含有組成物が、脳卒中に罹患する危険性がある対象者の集団における対象者へ予め決定された期間投与される場合、予め決定された期間の間、脳卒中がそれらの対象者において生じない。特に、強心配糖体含有組成物は、アルツハイマー病に罹患する危険性がある対象者の集団へ1年の期間にわたって慢性的に投与され、その集団中の対象者は、その1年の期間の間、アルツハイマー病と関連する症状を示さない。
【0041】
「危険性がある対象者の集団における神経学的状態の発生率を下げること」は、「発生率を下げること」が、対象者の人工統計学的に予め決定された集団における神経学的状態の発生を、但し、本発明の方法に従って強心配糖体含有組成物が投与されないその他の点では人工統計学的に類似する危険性がある対象者の予め決定された集団と比較して減少した発生率で又は重篤度レベルで、許容することを除いては、「発生を予防すること」と意味において関連する。
【0042】
本明細書において使用される場合、「進行までの時間」は、疾患が診断された(又は治療された)後から疾患が悪化し始めるまでの、時間の期間、長さ又は継続である。それは、その間に疾患のレベルが疾患の更なる進行なしで維持される時間の期間であり、時間の期間は、疾患が再び進行し始める時に終了する。疾患の進行は、療法の開始前又は開始時に神経学的状態に苦しむ対象者を「病期分類する」ことによって決定される。例えば、対象者の神経学的健康が療法の開始前又は開始時に決定される。次いで、対象者は強心配糖体で治療され、神経学的健康が定期的にモニタリングされる。いくらか後の時点で、神経学的状態の症状が悪化し得、従って、疾患の進行及び「進行までの時間」の終了が印される。その間に疾患が進行しなかったか又はその間に疾患のレベル又は重篤度が悪化しなかった時間の期間が、「進行までの時間」である。
【0043】
投薬計画は、投薬スケジュールに従って投与される治療的に適切な用量(又は有効用量)の1つ又はそれ以上の強心配糖体を含む。従って、治療的に適切な用量は、強心配糖体での治療に対する疾患又は障害の治療反応が観察され、かつ、過度の量の望まれないか又は有害な副作用無しで、対象者が強心配糖体を投与され得る、治療用量である。それが患者においていくらかの副作用を引き起こし得るが、治療的に適切な用量は対象者に対して致死的ではない。それは、そこで強心配糖体を投与される対象者に対する臨床的利益のレベルが、強心配糖体の投与に起因して対象者によって経験される有害な副作用のレベルを上回る用量である。治療的に適切な用量は、多様な確立された薬理学的、薬力学的及び薬物動態的な原理に従って、対象者ごとに変わる。しかし、治療的に適切な用量(例えば、オレアンドリンに関連して)は、通常、25、100、250、500又は1000マイクログラムの強心配糖体/日を超えないか、又はそれは、25〜500又は25〜1000マイクログラムの強心配糖体/日の範囲内にあり得る。対象者において標的治療結果を提供するために必要とされる薬物の実際の量は、薬学の基本原理に従って対象者ごとに変わることが、当技術分野において公知である。
【0044】
治療的に適切な用量は、神経学的又は神経変性疾患又は障害の治療において通常使用される任意の投薬計画に従って投与され得る。治療的に適切な用量は、1日1回、2回、3回又はそれ以上の投薬スケジュールで投与され得る。それは、1日おき、3日ごと、4日ごと、5日ごと、週2回、毎週、隔週、3週ごと、4週ごと、毎月、隔月、半月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、半年ごと、毎年、又は適切な投薬スケジュールに達するための上記のもののいずれかの組み合わせに従って、投与され得る。例えば、治療的に適切な用量は、1週間又はそれ以上の間、1日1回投与され得る。
【0045】
下記の実施例は、神経学的疾患、神経学的障害及び脳卒中などの神経学的状態における強心配糖体の効能の証拠を含む。実施例3は、強心配糖体又は強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせを用いてアルツハイマー病を治療する方法を詳述する。実施例4は、強心配糖体又は強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせを用いてハンチントン病を治療する方法を詳述する。実施例5は、強心配糖体又は強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせを用いて脳卒中仲介虚血性脳損傷を治療する方法を詳述する。
【0046】
一般的に、神経学的状態を有する対象者は以下のように治療される。神経学的状態を示す対象者は、神経学的状態がアルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態であるか否かを決定するために評価される。強心配糖体の投与が指示される。ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ初期用量の強心配糖体が投与される。対象者の臨床反応及び治療反応のレベルが定期的に測定される。治療反応のレベルがある用量で低すぎる場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させる。強心配糖体での対象者の治療が必要に応じて継続される。用量又は投薬計画は、疾患自体の停止、疾患関連症状の減少、及び/又は疾患経過の進行の減少などの所望の臨床的エンドポイントに患者が達するまで、必要に応じて調節され得る。
【0047】
実施例8は、脳卒中仲介虚血性ニューロン損傷の治療についての強心配糖体の効能を評価するために使用したインビトロアッセイの詳細な説明を提供する。アッセイは、24時間までに健康な皮質ニューロンの≧50%損失を誘発するために使用される酸素及びグルコース欠乏(OGD)についての脳スライスベースアッセイである。強心配糖体ネリイホリン(3μM)はポジティブコントロールとして使用される。オレアンドリンをOGD処理脳スライス(脳卒中モデル、図1A〜1C)及び非OGD処理脳スライス(非脳卒中モデル、図2A〜2C)において試験した。データは、脳スライス(ニューロン)が0.1〜3μMの濃度範囲のオレアンドリンの溶液へ曝されると、オレアンドリンが実質的な神経保護を提供することを示している。オレアンドリンの全身投薬後に直接的な測定をヒト脳において行っていないが、オレアンダー抽出物の第I相試験において得られたデータ、並びに血液脳関門を特異的に通過するオレアンドリンの能力が試験された齧歯動物研究において以前得られたデータから、ヒト脳においてオレアンドリンのこの濃度に達するための用量レベルは恐らく約1〜10 ng、約3〜6 ng、又は約4 ngであると考えられ得る。
【0048】
SCF抽出物中の、オレアンドリン以外の、1つ又はそれ以上の薬理学的に活性な成分の存在の証拠は、純粋なオレアンドリンを含有する溶液対SCF抽出物を含有するものについての濃度−反応曲線を比較することによって得られた。図1Dは、実施例11に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおける純粋なオレアンドリンを含有する水溶液についての濃度−反応アッセイの結果を示す。水溶液中のオレアンドリン濃度を0.0069から230μg/mlへ変えた。図1Eは、本明細書(実施例11)に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおけるオレアンドリン含有SCFネリウム種抽出物についての濃度−反応アッセイの結果を示す。データは、抽出物が純粋なオレアンドリンよりも効果的であることを実証し、これは、神経保護を提供する1つ又はそれ以上の薬理学的活性薬剤を抽出物が含有することを意味している。
【0049】
実施例11は、脳卒中仲介虚血性ニューロン損傷の治療についての、抽出物、又はその組成物の、効能を評価するために使用したインビトロアッセイの詳細な説明を提供する。アッセイは、24時間までに健康な皮質ニューロンの≧50%損失を誘発するために使用される酸素及びグルコース欠乏(OGD)についての脳スライスベースアッセイである。ネリウム種、例えば、ネリウム・オレアンダーの親未分画SCF抽出物を、ポジティブコントロールとして使用する。
【0050】
従って、本発明は、有効量のオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物へ酸素枯渇及び/又はグルコース枯渇ニューロンを曝し、活性の減少を最小限にし、活性の減少率を減らし、活性の減少を停止し、活性の減少の開始を遅らせ、及び/又は酸素枯渇及び/又はグルコース枯渇条件へ曝すことによって引き起こされたニューロンの機能を保護することによって、酸素枯渇又は酸素−グルコース枯渇によって引き起こされた活性の減少からニューロンを保護する方法を提供する。
【0051】
実施例9は、アルツハイマー病の治療についての強心配糖体の効能を評価するために使用したインビトロアッセイの詳細な説明を提供する。アッセイは、皮質錐体ニューロンのAPP/Aβ誘発(APP:アミロイド前駆タンパク質)変性についての脳スライスベースアッセイである。セクレターゼ酵素によって切断されると、APPは、βアミロイド斑形成における原因因子であると考えられるAβペプチドへ縮小される。Aβタンパク質は、βアミロイド斑形成と関連付けられ、アルツハイマー病における病因因子でないとしても特徴であると考えられている。微粒子銃トランスフェクションが、YFP(マーカー、黄色蛍光タンパク質)などのバイタルマーカーを導入するため、及び脳スライス中の同一のニューロン集団中へ疾患遺伝子構築物を導入するために使用される。YFPはAPPアイソフォームと同時トランスフェクションされ、脳スライス作製及びトランスフェクション後3〜4日間にわたって皮質錐体ニューロンの進行性変性がもたらされる。データ(図3A〜3C)は、オレアンドリン及びオレアンドリン含有SCF抽出物は、APPがトランスフェクションされた脳スライスに対して濃度依存性神経保護を提供し、それによって、BACE阻害薬、即ち、βセクレターゼ阻害薬によって提供されるのと同一のレベルに近いレベルが救出されることを示している。βセクレターゼ酵素は、APP前駆タンパク質を毒性Aβタンパク質へ切断する。オレアンドリン含有SCF抽出物は、オレアンドリン単独よりも大きな神経保護を提供するようであった。図3A〜3C中のデータは、アルツハイマー病を表すこのインビトロアッセイにおいてニューロンの著しい保護を示す化合物又は治療戦略は文献においてほとんどなかった点で重要である。データは、オレアンドリンなどの強心配糖体が、単一の薬剤として、又はアルツハイマー病の治療用のBASE阻害剤などの他のプロダクトと組み合わせて又は単一の療法として使用される抽出物中に存在する場合、有効であることを示している。
【0052】
従って、本発明は、アルツハイマー病によって引き起こされる活性の減少からニューロンを保護する方法であって、アルツハイマー病の特徴を示すニューロンを有効量のオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物へ曝し、活性の減少を最小限にし、活性の減少率を減らし、活性の減少を停止し、活性の減少の開始を遅らせる工程を含む方法を提供する;及び/又はアルツハイマー病によって引き起こされるニューロンの重要な機能。
【0053】
実施例10は、ハンチントン病の治療についての強心配糖体の効能を評価するために使用したアッセイの詳細な説明を提供する。突然変異httタンパク質を、皮質ニューロン、線条体ニューロン、及びグリアの高密度混合共培養物中へエレクトロポレーションによって導入する。線条体及び皮質ニューロンに異なる色の蛍光タンパク質をトランスフェクションし、それによって、共培養物中の異なるタイプのニューロンの個々の識別を容易にする。蛍光タンパク質は、蛍光性であり、適切な波長の光源での活性化で色を「発光する」。データ(図4A〜4D)は、オレアンドリン及びオレアンドリン含有SCF抽出物が、より多数の生存ニューロンを提供する点から、KW6002(アデノシン2a受容体アンタゴニスト)よりも有効であることを示している。従って、本発明は、ハンチントン病によって引き起こされる活性の減少からニューロンを保護する方法であって、ハンチントン病の特徴を示すニューロンを有効量のオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物へ曝し、活性の減少を最小限にし、活性の減少率を減らし、活性の減少を停止し、活性の減少の開始を遅らせる工程を含む方法を提供する;及び/又はハンチントン病によって引き起こされるニューロンの正常な機能。
【0054】
実施例13は、脳卒中後の遅延期間の完了後の対象者における脳卒中の治療における強心配糖体の効能を評価するためのモデルとして使用した例示的な脳スライスアッセイを詳述する。酸素グルコース欠乏を用いての脳スライスアッセイを、本明細書に記載される通りに行い;しかし、脳スライスを強心配糖体で予防的に処理したのではなく、それらを0、1、2、4、及び6時間の遅延期間後に強心配糖体で処理した。図5に要約されるデータは、強心配糖体、例えば、オレアンドリン又はオレアンドリンを含有するSCF抽出物が、脳卒中後1時間まで、2時間まで、3時間まで、4時間まで、5時間まで、約6時間までの遅延期間の間、著しい神経保護を提供する点で有効であることを実証している。
【0055】
従って、本発明は、対象者が脳卒中に罹った後の対象者へ強心配糖体の用量の投与によって対象者における脳卒中を治療する時間遅延方法を提供する。対象者が脳卒中に罹った後の受容可能な遅延期間内に、初期用量の強心配糖体が初期投薬計画に従って投与される。次いで、強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性が決定される。対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、強心配糖体での治療が、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて継続される。あるいは、対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる。投薬頻度又は用量投与の全期間の変化などの、投薬計画の変化と共に、用量の段階的な増加又は段階的な減少が行われ得る。
【0056】
OGD前に脳組織を強心配糖体で処理する条件下で、本明細書中の脳スライスアッセイのいくつかを行う。それらの条件下で、データは、脳卒中によって引き起こされる損傷に対して神経保護を予防的に提供する使用される強心配糖体の有用性を確立している。
【0057】
臨床医が強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせで神経学的状態を有する対象者を治療しようとし、対象者が有する特定の神経学的状態が該1つ又はそれ以上の他の治療剤での治療に対して少なくとも部分的に治療反応性であることが公知である場合、本方法発明は、以下を含む:治療的に適切な用量の強心配糖体及び治療的に適切な用量の該1つ又はそれ以上の他の治療剤をその必要がある対象者へ投与する工程、ここで、強心配糖体は第1投薬計画に従って投与され、1つ又はそれ以上の他の治療剤は第2投薬計画に従って投与される。ある実施態様において、第1及び第2投薬計画は同一である。ある実施態様において、第1及び第2投薬計画は異なる。
【0058】
治療される神経学的状態がアルツハイマー病である場合、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、BACE阻害剤又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤からなる群より選択され得る。ある実施態様において、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、ナメンダ(Namenda)(商標)(メマンチンHCl)、アリセプト(商標)(ドネペジル)、ラザダイン(Razadyne)(商標)(ガランタミン)、エクセロン(商標)(リバスチグミン)、及びコグネックス(Cognex)(商標)(タクリン)からなる群より選択され得る。
【0059】
治療される神経学的状態がハンチントン病である場合、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、天然産物、抗痙攣薬、NMDA(n−メチルd−アスパルテート)受容体アンタゴニスト、及びナトリウムチャネル遮断薬からなる群より選択され得る。例示的な薬剤としては、ビタミンE、バクロフェン(Baclofen)(CoQ10の誘導体)、ラモトリギン(Lamotrigine)(抗痙攣薬)、レマセミド(低親和性NMDAアンタゴニストである麻酔薬)、及びリルゾール(Naチャネル遮断薬)が挙げられる。これらの薬剤の各々の効能は単独では低いと考えられ(Mestre T. et al, Chochrane Database Systematic Reviews July 8, 2009; 8(3):
CD006455);しかし、1つ又はそれ以上のこれらの他の薬物を受ける対象者へのオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物を含有する投薬形態の投与は、神経学的障害を有する対象者に、これらの薬剤を欠くオレアンドリンの投与と比較して改善された臨床効果を提供することが、予想される。
【0060】
治療される神経学的状態が脳卒中仲介虚血性脳損傷(虚血性脳卒中)である場合、文献(Gutierrez M. et al. “Cerebral protection, brain repair, plasticity and cell therapy in ischemic stroke” Cerebrovasc. Dis. 2009; 27 Suppl 1:177−186)に開示される治療処置、例えば、静脈内血栓溶解が、本発明のオレアンドリン又はオレアンドリン抽出物に基づく方法に加えて用いられ得る。ある実施態様において、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、アルテプラーゼ(Alteplase)(血栓溶解剤)などの薬物からなる群より選択され得る。
【0061】
1つ又はそれ以上の他の治療剤は、治療的に有効であると臨床医により認識される用量で及び投薬計画に従って、又はサブ治療的に有効であると臨床医により認識される用量で、投与され得る。強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせの投与によって提供される臨床的利益及び/又は治療効果は、相加的又は相乗的であり得、このような利益又は効果のレベルは、組み合わせの投与を個々の強心配糖体及び1つ又はそれ以上の他の治療剤の投与と比較することによって決定される。1つ又はそれ以上の他の治療剤は、食品医薬品局、世界保健機関、欧州医薬品庁(E.M.E.A.)、治療製品局(Therapeutic Goods Administration)(TGA、オーストラリア)、全米保健機構(PAHO)、医薬医療器具管理局(Medicines and Medical Devices Safety Authority)(Medsafe、ニュージーランド)、又は世界中の様々な厚生省によって提案又は記載される用量で及び投薬計画に従って投与され得る。
【0062】
強心配糖体は、Na,K−ATPアーゼ結合活性及び/又はHIF−1α(低酸素誘導因子α)結合活性を有することが公知の任意の強心配糖体であり得る。強心配糖体は、血液脳関門を通過し、投与後長時間の間、脳組織中に保持されることができる。この点に関して、強心配糖体は、組織結合及び結果として生じる低クリアランス速度に起因して、強心配糖体の投与後少なくとも8時間、脳中に保持される。
【0063】
強心配糖体は、純粋な形態で又は1つ又はそれ以上の他の化合物の混合物として存在し得る。強心配糖体は抽出物として存在し得る。抽出物は、超臨界流体(SCF)二酸化炭素(CO2)抽出によって作製され得るか、又はこのような抽出物の化学修飾形態であり得る(例えば、エタノールを含むか又はSCF CO2及びエタノールを使用して作製された抽出物;実施例1)。抽出物は、有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール又は他のこのような溶媒での植物材料の抽出によって得ることができる。抽出物は、植物又は動物材料から得ることができる。動物材料は、ヒキガエル(例えば、ブフォ・ブフォ(Bufo bufo))の滲出物であり得る。植物材料は、ネリウム・オレアンダーなどのネリウム種、又はテベティア・ネリイフォリア若しくはテベティア・プルビアナ(Thevetia puruviana)(そうでなければイエローオレアンダーとして公知)などのテベティア種から得られるような植物マスであり得る。抽出プロセスは、これらの全開示が参照により本明細書に組み入れられる、Addingtonの名前で2005年2月15日に出願された現在係属中の米国仮出願第60/653,210号又はAddingtonの名前で2006年1月26日に出願された米国出願第11/340,016号、Addingtonの名前で2006年7月28日に出願された米国出願第11/191,650号、(2008年7月22日に発行された、現在の米国特許第7,402,325号)、又は2006年7月26日に出願されたPCT国際特許出願第PCT/US06/29061号において記載されたプロセスに従って、又は本明細書に記載されたプロセスによって、作製されたネリウム・オレアンダーの葉の乾燥粉末に対して行われ得る。
【0064】
本明細書において使用される場合、用語「オレアンドリン」は、特に明記しない限り、オレアンドリンの全ての公知の形態を意味するように解釈される。オレアンドリンは、ラセミ体の、光学的に純粋な又は光学的に富んだ形態で存在し得る。ネリウム・オレアンダー植物材料は、例えば、Aldridge Nursery, Atascosa, Texasなどの市販植物供給業者から得ることができる。
【0065】
本発明者らの研究は、オレアンドリンがBBBを通過し、いったん脳組織中にあると長時間の間そこに存在する良好な能力を有することを示した。即ち、脳中におけるオレアンドリンの滞留時間は、実験動物の血漿からのこの分子のクリアランスを考えて予想されるものよりも長い。従って、脳中におけるオレアンドリンの比較的長い滞留時間は、ジゴキシンなどの水溶性強心配糖体と比較してこの脂溶性強心配糖体の明白な利点を提供する。
【0066】
抽出物は、強心配糖体含有植物マスの改変(例えば、エタノール)又は未改変超臨界流体抽出によって得ることができる。臨界流体抽出物は、抽出物が対象者へ投与される場合に強心配糖体の治療効能に寄与する、少なくとも1つの他の強心配糖体薬理学的活性薬剤及び/又は少なくとも1つの他の非強心配糖体薬理学的活性薬剤を含み得る。それは強心配糖体の治療効能に相加的に又は相乗的に寄与し得る。本明細書において使用される場合、用語「非強心配糖体薬理学的活性薬剤」(又は成分)は、強心配糖体ではない化合物を意味する。
【0067】
抽出物は、種々の異なるプロセスによって製造され得る。抽出物は、Huseyin Ziya Ozel博士によって開発されたプロセスに従って製造され得る(米国特許第5,135,745号に、水中で植物の抽出物を製造する手順が述べられている)。伝えられるところでは、水性抽出物は、分子量が2KDから30KDまで変わる幾つかの多糖類、オレアンドリン及びオレアンドリゲニン、オドロシド及びネリタロシドを含有する。伝えられることろでは、多糖類は、酸性ホモポリガラクツロナン又はアラビノガラツロナン(arabinogalaturonan)を含有する。Selvarajらの米国特許第5,869,060号はネリウム種の熱水抽出物及びその製造方法を開示している;例えば、実施例2。得られた抽出物は粉末を製造するために次いで凍結乾燥され得る。米国特許第6,565,897号(Selvarajらの米国付与前公告第20020114852号及びPCT国際公開公報第WO2000/016793号)は、実質的に無菌の抽出物を製造するための熱水抽出プロセスを開示している。Erdemogluら(J. Ethnopharmacol. (2003) Nov. 89(1), 123−129)は、抗侵害受容及び抗炎症活性に基づくネリウム・オレアンダーを含む植物の水性及びエタノール抽出物の比較についての結果を開示している。ネリウム・オレアンダーの有機溶媒抽出物が、Adomeら(Afr. Health Sci. (2003) Aug. 3(2), 77−86;エタノール抽出物)、el−Shazlyら(J. Egypt Soc. Parasitol. (1996), Aug. 26(2), 461−473;エタノール抽出物)、Begumら(Phytochemistry (1999) Feb. 50(3), 435−438;メタノール抽出物)、Ziaら(J. Ethnolpharmacol. (1995) Nov. 49(1), 33−39;メタノール抽出物)及びVlasenkoら(Farmatsiia. (1972) Sept.−Oct. 21(5), 46−47;アルコール抽出物)によって開示されている。Singhらの米国付与前特許出願公開公報第20040247660号は、癌の治療において使用するための、オレアンドリンのタンパク質安定化リポソーム製剤の製造を開示している。Singhらの米国付与前特許出願公開公報第20050026849号は、シクロデキストリンを含有するオレアンドリンの水溶性製剤を開示している。Singhらの米国付与前特許出願公開公報第20040082521号は、熱水抽出物からのオレアンドリンのタンパク質安定化ナノ粒子製剤の製造を開示している。
【0068】
SCF抽出は、植物マスからの所望の化合物の抽出を高めるために、エタノールなどの、超臨界流体中においてモディファイヤーの存在下で行われ得る。モディファイヤーは、超臨界流体のそれと抽出される化合物のそれとの間の揮発性を一般的に有し、それらは超臨界流体と混和性でなければならない。ある実施態様において、モディファイヤーは、周囲条件で液体である。例としてかつ非限定的に、モディファイヤーは、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレンなどからなる群より選択され得る。
【0069】
抽出物は、薬理学的に活性な化合物、例えば、オレアンドリン又は他の強心配糖体、オレアシド、及び他の植物材料の混合物である。超臨界流体プロセス由来のオレアンドリン抽出物は、質量で0.9%〜2.5%の理論範囲のオレアンドリンを含有する。様々な量のオレアンドリンを含むSCF抽出物が得られた。一実施態様において、SCF抽出物はオレアンドリンを約2質量%含む。
【0070】
SCF抽出物は、様々な成分の混合物を含み得る。それらの成分のいくつかとしては、オレアンドリン、オレアシドA、オレアンドリゲニン、ネリタロシド、オドルシド(odorside)(Wang X, Plomley JB, Newman RA and Cisneros A. LC/MS/MS analyses of an oleander extract for cancer treatment, Analytical Chem. 72: 3547−3552, 2000)、及び他の未同定成分が挙げられる。SCF抽出物のSCF抽出可能な未同定成分は、SCF抽出物中のオレアンドリンの効能に寄与する少なくとも1つの他の強心配糖体薬理学的活性成分及び/又は少なくとも1つの他の非強心配糖体薬理学的活性成分を含み得る。即ち、少なくとも1つの他のSCF抽出可能成分は、観察される効能を提供するためにオレアンドリンと相加的に又は相乗的に機能する。
【0071】
オレアンドリン又はオレアンドリン及び1つ又はそれ以上の他の薬理学的に活性な成分(強心配糖体及び/又は非強心配糖体)を含む抽出物は神経保護を提供し得ることが測定された。従って、本発明のSCF抽出物は、神経保護を提供する、それら自体が強心配糖体又は非強心配糖体であり得る、1つ又はそれ以上の他の生物学的に活性な成分及びオレアンドリンを含む(又はから本質的になる)。
【0072】
SCF抽出物中の、オレアンドリン以外の、1つ又はそれ以上の生物学的に活性な成分の存在のさらなる証拠が、純粋なオレアンドリンを含有する水溶液対SCF抽出物を含有するものについての濃度−反応曲線を比較することによって得られた。図1Dは、実施例11に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおける純粋なオレアンドリンを含有する水溶液についての濃度−反応アッセイの結果を示す。水溶液中のオレアンドリン濃度を0.0069から230μg/mlへ変えた。
【0073】
図1Eは、本明細書に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおけるオレアンドリン含有SCF抽出物についての濃度−反応アッセイの結果を示す。データは、抽出物が純粋なオレアンドリンよりも効果的であることを実証し、これは、神経保護を提供する1つ又はそれ以上の薬理学的活性薬剤を抽出物が含有することを意味している。
【0074】
抽出物はまた、本明細書に含まれるアッセイにおける効能によって決定されるようなそれらの相対的パフォーマンスにおいて異なる場合がある。そうであっても、治療的に適切な用量を製造し得るために、もし強心配糖体が抽出物中に十分に高い量又は濃度で存在するならば、その抽出物は本発明の部分と考えられる。
【0075】
強心配糖体は、任意の適切な薬学的に許容される投薬形態に処方され得る。非経口、耳、眼、鼻、吸入、頬側、舌下、腸内、局所、経口、経口的、及び注射可能な投薬形態が特に有用である。特定の投薬形態としては、固体又は液体投薬形態が挙げられる。例示的で適切な投薬形態としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、カプレット剤、トローチ剤、小袋(sache)、液剤、懸濁剤、ディスパージョン、バイアル、バッグ、ボトル、注射可能な液剤、i.v.(静脈内)、i.m.(筋内)又はi.p.(腹腔内)投与可能な液剤、及び薬学における当業者に公知の他のこのような投薬形態が挙げられる。
【0076】
本発明の用量に組み入れられる強心配糖体の量は、少なくとも1つ又はそれ以上の投薬形態であり、薬学の公知の原理に従って選択され得る。有効量又は治療的に適切な量の治療用化合物が具体的に熟慮される。用語「有効量」によって、例えば、医薬品に関しては、薬学的に有効な量が熟慮されていることが理解される。薬学的に有効な量は、要求される又は望ましい治療応答に対して十分である有効成分の量又は分量、又は言い換えれば、患者に投入されたときに、明らかな生物学的応答を誘発するために十分である量である。明らかな生理学的応答が、活性物質の単独又は複数の用量の投与の結果として生じ得る。用量は、1つ又はそれ以上の投薬形態を含み得る。如何なる患者に対する特定の用量レベルも、治療される適応症、適応症の重症度、患者の健康、年齢、性別、体重、食事、薬理学的応答、採用される特定の投薬形態、及びその他のこのような因子を含む種々の因子に依存することが理解される。
【0077】
僅か1個のそして10個もの数の投薬形態が投与され得るが、経口投与についての所望の用量は、5個までの投薬形態である。例示的な投薬形態は、1投薬形態当たりSCF抽出物を0.6 mg含有し、1用量当たり計0.6〜60 mg(1〜10用量レベル)である。
【0078】
強心配糖体は、12〜1200 ug、又はそれより多い又は少ないオレアンドリンの初期用量を対象者に提供するために十分な量で投薬形態中に存在し得る。投薬形態は、オレアンドリン、オレアンドリン抽出物、又はオレアンドリンを含有するネリウム・オレアンダーの抽出物を0.01〜100 mg含み得る。
【0079】
哺乳動物の治療における使用について、強心配糖体は投薬形態中に含まれ得る。投薬形態のある実施態様は、腸溶コーティングされておらず、強心配糖体のそれらのチャージを0.5〜1時間以内の期間内で放出する。投薬形態のある実施態様は、腸溶コーティングされており、強心配糖体のそれらのチャージを、空腸、回腸、小腸、及び/又は大腸(結腸)からなど、胃の下流で放出する。腸溶コーティングされた投薬形態は、経口投与後1〜10時間以内に体循環中へ強心配糖体を放出する。
【0080】
予備動物投薬データに基づけば、オレアンダー抽出物の投与用量の50〜75%が経口的に生物学的利用可能であることが予想され、従って、投薬形態当たりオレアンドリン0.25〜0.4 mg、0.1〜50 mg、0.1〜40 mg、0.2〜40 mg、0.2〜30 mg、0.2〜20 mg、0.2〜10 mg、0.2〜5 mg、0.2〜2.5 mg、0.2〜2 mg、0.2〜1.5 mg、0.2〜1 mg、0.2〜0.8 mg、0.2〜0.7、又は0.25〜0.5 mgが提供される。成人における平均血液容量を5リットルとすると、予想されるオレアンドリン血漿中濃度は、0.05〜2 ng/ml、0.005〜10 ng/mL、0.005〜8 ng/mL、0.01〜7 ng/mL、0.02〜7 ng/mL、0.03〜6 ng/mL、0.04〜5 ng/mL、又は0.05〜2.5 ng/mLの範囲内にある。SCF抽出物中に存在する、オレアンドリンの推奨される日用量は、一般的に、約0.25〜約50 mgを1日2回又は約0.9〜5 mgを1日2回若しくは約12時間ごとである。用量は、約0.5〜約100 mg/日、約1〜約80 mg/日、約1.5〜約60 mg/日、約1.8〜約60 mg/日、約1.8〜約40 mg/日であり得る。最大耐用量は、約100 mg/日、約80 mg/日、約60 mg/日、約40 mg/日、約38.4 mg/日又は約30 mg/日の、オレアンドリンを含有するオレアンダー抽出物であり得、最小有効用量は、約0.5 mg/日、約1 mg/日、約1.5 mg/日、約1.8 mg/日、約2 mg/日、又は約5 mg/日であり得る。
【0081】
本明細書中の化合物は本発明の製剤において1つ又はそれ以上の機能を有し得ることが注意されるべきである。例えば、化合物は、界面活性剤及び水混和性溶媒の両方として、又は界面活性剤及び水非混和性溶媒の両方として、役立ち得る。
【0082】
液体組成物は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される液体担体を含み得る。液体担体は、水性、非水性、極性、非極性、及び/又は有機担体であり得る。液体担体としては、例としてかつ非限定的に、水混和性溶媒、水非混和性溶媒、水、緩衝液及びそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
本明細書において使用される場合、用語「水溶性溶媒」又は「水混和性溶媒」は、これらの用語は交換可能に使用されるが、水と二相混合物を形成しないか又は水に十分に可溶性であり、液相を分離することなく少なくとも5パーセントの溶媒を含有する水性溶媒混合物を提供する有機液体を指す。溶媒は、ヒト又は動物への投与に適している。例示的な水溶性溶媒としては、例としてかつ非限定的に、PEG(ポリ(エチレングリコール))、PEG400(分子量約400程度を有するポリ(エチレングリコール))、エタノール、アセトン、アルカノール、アルコール、エーテル、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、ポリ(プロピレングリコール)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン))、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ピリジン、プロパノール、N−メチルアセトアミド、ブタノール、ソルフォール(soluphor)(2−ピロリドン)、ファルマソルブ(N−メチル−2−ピロリドン)が挙げられる。
【0084】
本明細書において使用される場合、用語「水不溶性溶媒」又は「水非混和性溶媒」は、これらの用語は交換可能に使用されるが、水と二相混合物を形成するか又は水中の溶媒濃度が5パーセントを超える場合に相分離する有機液体を指す。溶媒は、ヒト又は動物への投与に適している。例示的な水不溶性溶媒としては、例としてかつ非限定的に、中/長鎖
トリグリセリド、油、ヒマシ油、トウモロコシ油、ビタミンE、ビタミンE誘導体、オレイン酸、脂肪酸、オリーブ油、ソフチザン645(ジグリセリルカプリレート/カプレート/ステアレート/ヒドロキシステアレートアジペート)、ミグリオール、キャプテックス(captex)(Captex350:グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレートトリグリセリド;Captex 355:グリセリルトリカプリレート/カプレートトリグリセリド;Captex 355 EP/NF:グリセリルトリカプリレート/カプレート中鎖トリグリセリド)が挙げられる。
【0085】
適切な溶媒は、“International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use (ICH) guidance for industry Q3C Impurities: Residual Solvents” (1997)に列挙されており、これは、医薬中でどれ位の量の残留溶媒が安全であると考えられるかについて推奨している。例示的な溶媒はクラス2又はクラス3溶媒として列挙される。クラス3溶媒としては、例えば、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル(tert−butlymethyl ether)、クメン、エタノール、エチルエーテル、酢酸エチル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、又は酢酸プロピルが挙げられる。
【0086】
本発明において水非混和性溶媒として使用され得る他の物質としては、以下が挙げられる:Captex 100:プロピレングリコールジカプレート;Captex 200:プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート;Captex 200P:プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート;プロピレングリコールジカプリロカプレート;Captex 300:グリセリルトリカプリレート/カプレート;Captex 300 EP/NF:グリセリルトリカプリレート/カプレート中鎖トリグリセリド;Captex 350:グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレート;Captex 355:グリセリルトリカプリレート/カプレート;Captex 355 EP/NF:グリセリルトリカプリレート/カプレート中鎖トリグリセリド;Captex 500:トリアセチン;Captex 500P:トリアセチン(医薬グレード);Captex 800:プロピレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート(2−Ethythexanoate));Captex 810 D:グリセリルトリカプリレート/カプレート/リノレート;Captex 1000:グリセリルトリカプレート;Captex CA:中鎖トリグリセリド;Captex MCT−170:中鎖トリグリセリド;Capmul GMO:グリセリルモノオレエート;Capmul GMO−50 EP/NF:グリセリルモノオレエート;Capmul MCM:中鎖モノ及びジグリセリド;Capmul MCM C8:グリセリルモノカプリレート;Capmul MCM C10:グリセリルモノカプレート;Capmul PG−8:プロピレングリコールモノカプリレート;Capmul PG−12:プロピレングリコールモノラウレート;Caprol 10G10O:デカグリセロールデカオレエート;Caprol 3GO:トリグリセロールモノオレエート;Caprol ET:混合脂肪酸のポリグリセロールエステル;Caprol MPGO:ヘキサグリセロールジオレエート;Caprol PGE 860:デカグリセロールモノ−,ジオレエート。
【0087】
本明細書において使用される場合、「界面活性剤」は、極性又は帯電親水性部分並びに無極性疎水性(親油性)部分を含む化合物を指し;即ち、界面活性剤は両親媒性である。用語、界面活性剤は、化合物の1つ又は混合物を指し得る。界面活性剤は、可溶化剤、乳化剤又は分散剤であり得る。界面活性剤は、親水性又は疎水性であり得る。
【0088】
親水性界面活性剤は、薬学的組成物における使用に適した任意の親水性界面活性剤であり得る。このような界面活性剤は、非イオン性親水性界面活性剤が現在好ましいが、アニオン性、カチオン性、両性イオン性又は非イオン性であり得る。上記で議論したように、これらの非イオン性親水性界面活性剤は、約10を超えるHLB値を一般的に有する。親水性界面活性剤の混合物も本発明の範囲内にある。
【0089】
同様に、疎水性界面活性剤は、薬学的組成物における使用に適した任意の疎水性界面活性剤であり得る。一般的に、適切な疎水性界面活性剤は、約10未満のHLB値を有する。疎水性界面活性剤の混合物も本発明の範囲内にある。
【0090】
さらなる適切な可溶化剤の例としては、アルコール及びポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びそれらの異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体;約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール(glycofurol)、商品名テトラグリコール(Tetraglycol)の下でBASFから市販)又はメトキシPEG(Union Carbide);アミド、例えば、2−ピロリドン、2−ピペリドン、カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、及びポリビニルピロリドン(polyvinypyrrolidone);エステル、例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、カプロラクトン及びその異性体、バレロラクトン及びその異性体、ブチロラクトン及びその異性体;並びに当技術分野において公知の他の可溶化剤、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(アラソルブ(Arlasolve)DMI(ICI))、N−メチルピロリドン(ファルマソルブ(Pharmasolve)(ISP))、モノオクタノイン、ジエチレングリコールノノエチルエーテル(商品名トランスクトール(Transcutol)の下でGattefosseから入手可能)、及び水が挙げられる。可溶化剤の混合物も本発明の範囲内にある。
【0091】
示された場合を除いて、本明細書に記載された化合物は、標準市販供給源から容易に入手可能である。
【0092】
透明液体組成物は、組成物の全質量に基づいて5質量%未満、3質量%未満、又は1質量%未満の懸濁固体を含有するので、肉眼には視覚的に透明である。
【0093】
必要ではないが、本発明の組成物又はキットは、キレート化剤、保存剤、抗酸化剤、吸着剤、酸性化剤、アルカリ化剤、消泡剤、緩衝剤、着色剤、電解質、塩、安定剤、張度調節剤、希釈剤、他の薬学的賦形剤、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0094】
本明細書において使用される場合、用語「抗酸化剤」は、酸化を抑制し従って酸化プロセスによる調製物の劣化を防止するために使用される薬剤を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、アスコルビン酸、アスコルビックパルミタート(ascorbic palmitate)、ビタミンE、ビタミンE誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び当業者に公知の他のこのような物質が挙げられる。
【0095】
本明細書において使用される場合、用語、キレート化剤は、溶液中の金属イオンをキレートする化合物を意味するように意図される。例示的なキレート化剤としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸テトラナトリウム)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸ペンタナトリム)、HEDTA(N−(ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸のトリナトリウム塩)、NTA(ニトリロ三酢酸トリナトリウム)、ジナトリウムエタノールジグリシン(Na2EDG)、ナトリウムジエタノールグリシン(DEGNa)、クエン酸、及び当業者に公知の他の化合物が挙げられる。
【0096】
本明細書において使用される場合、用語「吸着剤」は、物理的又は化学的(化学吸着)手段によってその表面上に他の分子を保持することができる薬剤を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、粉末化された及び活性化された炭、及び当業者に公知の他の物質が挙げられる。
【0097】
本明細書において使用される場合、用語「アルカリ化剤」は、アルカリ性媒体を提供するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、及びトロラミン、並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0098】
本明細書において使用される場合、用語「酸性化剤」は、酸性媒体を提供するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、酢酸、アミノ酸、クエン酸、フマル酸及び他のα−ヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸、及び硝酸、並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0099】
本明細書において使用される場合、用語「消泡剤」は、充填組成物の表面上に生じる発泡を防ぐか又が発泡の量を減らす化合物を意味するように意図される。適切な消泡剤としては、例としてかつ非限定的に、ジメチコーン、SIMETHICONE、オクトキシノール及び当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0100】
本明細書において使用される場合、用語「緩衝剤」は、酸又はアルカリの希釈又は添加時のpHの変化に耐えるために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基性酢酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウム無水物及び脱水物、並びに当業者に公知の他のこのような物質が挙げられる。
【0101】
本明細書において使用される場合、用語「希釈剤」又は「充填剤」は、錠剤及びカプセルの製造において、所望のバルク、流動性及び圧縮特性を与えるために充填剤として使用される不活性物質を意味するように意図される。このような化合物には、例としてかつ非限定的に、二塩基性リン酸カルシウム、カオリン、ラクトース、スクロース、マンニトール、微結晶性セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、ソルビトール、及び澱粉、並びに当業者に公知の他の物質が挙げられる。
【0102】
本明細書において使用される場合、用語「保存剤」は、微生物の増殖を妨げるために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、ミリスチルガンマピコリニウムクロリド、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チモール、及びメチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン、並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0103】
本明細書において使用される場合、用語「着色剤」は、医薬品に色を付与するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、FD&CレッドNo.3、FD&CレッドNo.20、FD&CイエローNo.6、FD&CブルーNo.2、FD&CグリーンNo.5、FD&CオレンジNo.5、FD&CレッドNo.8、カラメル及び酸化鉄(黒、赤、黄)、他のFD&C色素、及び天然着色剤、例えば、ブドウ皮抽出物、ビートの赤色粉末、β−カロテン、アナトー、カルミン、ウコン、パプリカ、それらの組み合わせ、並びに当業者に公知の他のこのような物質が挙げられる。
【0104】
本明細書において使用される場合、用語「安定剤」は、もし使用しなければ薬剤の治療活性を低減する物理的、化学的、又は生化学的プロセスに対して活性薬剤を安定化するために使用される化合物を意味するように意図される。適切な安定剤としては、例としてかつ非限定的に、アルブミン、シアル酸、クレアチニン、グリシン及び他のアミノ酸、ナイアシンアミド、ナトリウムアセチルトリプトホネート(sodium acetyltryptophonate)、酸化亜鉛、スクロース、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、カプリル酸ナトリウム及びサッカリンナトリウム並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0105】
本明細書において使用される場合、用語「張度調節剤」は、液体製剤の張度を調節するために使用され得る化合物を意味するように意図される。適切な張度調節剤としては、グリセリン、ラクトース、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、及び当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0106】
本発明の組成物はまた、油、例えば、不揮発性油、落花生油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油及びオリーブ油;脂肪酸、例えば、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸;並びに脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド及びアセチル化脂肪酸グリセリドを含み得る。組成物はまた、アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール及びプロピレングリコール;グリセロールケタール、例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール;エーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)450;石油炭化水素、例えば、鉱油及びペトロラタム;水;薬学的に適切な界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤;又はそれらの混合物を含み得る。
【0107】
薬学的製剤の技術分野において使用される化合物は、一般的に種々の機能又は目的に役立つことが理解される。従って、本明細書において名前を挙げられた化合物が、本明細書において2つ以上の用語を定義するために使用されるか又は一度だけ記載されるならば、その目的又は機能は、その名前を挙げられた目的又は機能のみに限定されないと解釈されるべきである。
【0108】
製剤の1つ又はそれ以上の成分は、その遊離塩基又は薬学的に又は分析的に許容される塩形態で存在し得る。本明細書において使用される場合、「薬学的に又は分析的に許容される塩」は、イオン結合対を形成するために必要に応じてそれを酸と反応させることによって修飾された化合物を指す。許容される塩の例としては、例えば非毒性無機又は有機酸から、形成される従来の非毒性塩が挙げられる。適切な非毒性塩としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸及び当業者に公知の他のものから誘導されるものが挙げられる。塩は、有機酸、例えば、アミノ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、及び当業者に公知の他のものから作製される。他の適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th. ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985, p. 1418において見られ、この関連する開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0109】
句「薬学的に許容される」は、本明細書において、正しい医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適しており、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他のいずれかの問題若しくは合併症なしで、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合っている、それらの化合物、物質、組成物及び/又は投薬形態を指すために本明細書において用いられる。
【0110】
投薬形態は、製薬産業において公知の任意の従来の手段によって作製され得る。液体投薬形態は、容器中に少なくとも1つの液体担体及びオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物を提供することによって作製され得る。1つ又はそれ以上の他の賦形剤が液体投薬形態中に含まれ得る。固体投薬形態は、少なくとも1つの固体担体及びオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物を提供することによって作製され得る。1つ又はそれ以上の他の賦形剤が固体投薬形態中に含まれ得る。
【0111】
投薬形態は、従来の包装装置及び材料を使用して包装され得る。それは、パック、ボトル、バイアル(via)、バッグ、注射器、包み、パケット、ブリスターパック、箱、アンプル、又は他のこのような容器中に含められ得る。
【0112】
本発明は、神経学的状態を有する対象者の集団中の統計的に有意な数の対象者の臨床状態を改善するための方法であって、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を対象者の集団へ投与する工程;及び対象者の臨床状態を測定する工程を含む方法を含む。ある実施態様において、統計的に有意な数は、集団の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%である。ある実施態様において、組成物は、オレアンドリン、又はオレアンドリンを含む抽出物を含む。抽出物は、対象者の臨床状態を改善するためにオレアンドリンと協力する1つ又はそれ以上の他の薬理学的に活性な化合物を場合により含む。
【0113】
本明細書において使用される場合、「誘導体」は、a)第1化学物質と構造的に関連しそれから理論的に誘導可能である化学物質;b)第1化合物の1つの原子が別の原子又は原子団で置換される場合、類似する第1化合物から形成される化合物又は別の第1化合物から生じることが想像され得る化合物;c)親化合物から誘導されるか又は得られかつ親化合物の本質的な要素を含む化合物;又はd)1つ又はそれ以上の工程で同様の構造の第1化合物から生成され得る化学化合物である。
【0114】
上記の説明及び下記の実施例を考慮して、当業者は、過度の実験なしに、特許請求される本発明を実施することができる。前述のことは、本発明の実施態様の製造について特定の手順を詳述する下記の実施例を参照して、より十分に理解される。これらの実施例に対して行われる全ての参照は、説明を目的とする。以下の実施例は、網羅的とみなされるべきではなく、本発明によって企図される多くの実施態様のうちのいくつかのみを単に説明しているとみなされるべきである。
【0115】
オレアンドリンは、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO)から購入され得る。
【実施例】
【0116】
実施例1
粉末状のオレアンダーの葉の超臨界流体抽出
方法A.二酸化炭素を用いて
オレアンダーの葉材料を収集、洗浄及び乾燥し、次いでオレアンダーの葉材料を粉砕及び脱水装置、例えば米国特許第5,236,132号、第5,598,979号、第6,517,015号及び第6,715,705号に記載されるものに通過させることによって、粉末状のオレアンダーの葉を製造した。使用した出発材料の質量は、3.94kgであった。
【0117】
抽出装置中、圧力300 bar(30MPa,4351psi)及び温度50℃(122°F)で出発材料を純粋なCO2と合わせた。合計197kgのCO2を使用して、溶媒対原材料の比率を50:1にした。次いで、CO2及び原材料の混合物を分離装置に通過させ、ここで混合物の圧力及び温度を変えて二酸化炭素から抽出物を分離した。
【0118】
良い芳香を有する褐色がかった粘着性の粘稠材料として抽出物(65g)が得られた。色は、おそらく葉緑素によって生じた。正確な収率測定のため、管及び分離器をアセトンですすぎ、アセトンを蒸発させて追加の抽出物9gを得た。全抽出物量は74gであった。出発材料の質量に基づいて、抽出物の収率は1.88%であった。抽出物中のオレアンドリン含量は、高圧液体クロマトグラフィー及び質量分析法を用いて算出し、560.1mg、即ち、収率0.76%であった。
【0119】
方法B.二酸化炭素及びエタノールの混合物を用いて
オレアンダーの葉材料を収集、洗浄及び乾燥し、次いでオレアンダーの葉材料を粉砕及び脱水装置、例えば米国特許第5,236,132号、第5,598,979号、第6,517,015号及び第6,715,705号に記載されるものに通過させることによって、粉末状のオレアンダーの葉を製造した。使用した出発材料の質量は、3.85kgであった。
【0120】
抽出装置中、圧力280bar(28MPa,4061psi)及び温度50℃(122°F)で、出発材料を純粋なCO2及びモディファイヤーとしての5%エタノールと合わせた。合計CO2160kg及びエタノール8kgを使用して、溶媒対原材料の比率を43.6対1にした。次いで、CO2、エタノール及び原材料の混合物を分離装置に通過させ、ここで混合物の圧力及び温度を変えて二酸化炭素から抽出物を分離した。
【0121】
エタノールを除去した後、明らかに若干の葉緑素を含有する濃緑色で粘着性の粘稠な塊として抽出物(207g)が得られた。出発材料の質量に基づき、抽出物の収率は5.38%であった。抽出物中のオレアンドリン含量は、高圧液体クロマトグラフィー及び質量分析法を用いて算出し、1.89g、即ち、収率2.1%であった。
【0122】
実施例2
粉末状のオレアンダーの葉の熱水抽出
熱水抽出は、通常、オレアンダーの葉からオレアンドリン及び他の活性成分を抽出するために使用される。熱水抽出方法の例は、米国特許第5,135,745号及び第5,869,060号に見られ得る。
【0123】
粉末状のオレアンダーの葉5gを使用して、熱水抽出を行った。沸騰水10容積(オレアンダー出発材料の質量による)を粉末状のオレアンダーの葉へ添加し、混合物を6時間、常に撹拌した。次いで、混合物を濾過し、葉の残留物を集め、同一の条件下で再び抽出した。濾液を合わせて凍結乾燥した。抽出物の外観は、褐色であった。乾燥した抽出物材料は、質量約1.44gであった。抽出物材料34.21mgを水に溶解し、高圧液体クロマトグラフィー及び質量分析法を用いてオレアンドリン含量分析に供した。オレアンドリンの量を測定し、3.68mgであった。抽出物の量に基づくオレアンドリン収率を算出し、0.26%であった。下の表は、実施例1の2つの超臨界二酸化炭素抽出及び熱水抽出についてのオレアンドリン収率の比較を示している。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例3
アルツハイマー病を含むがこれに限定されない神経学的状態の治療
方法A.強心配糖体療法
アルツハイマー病を示す対象者に強心配糖体を処方し、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ治療的に適切な用量を投与した。治療反応の対象者のレベルを定期的に測定した。治療反応のレベルがある用量で低すぎた場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させた。強心配糖体での対象者の治療を必要に応じて継続し、用量又は投薬計画は、患者が所望の臨床的エンドポイントに達するまで必要に応じて調節され得た。
【0126】
方法B.併用療法:強心配糖体及び別の薬剤
アルツハイマー病又はその症状の治療用の1つ又はそれ以上の他の治療剤を対象者に処方及び投与したこと以外、上記方法Aに従った。その場合、1つ又はそれ以上の他の治療剤を強心配糖体の前、後又はと共に投与することができた。1つ又はそれ以上の他の治療剤の用量の段階的な増加(又は段階的な減少)も行うことができた。適切な1つ又はそれ以上の他の治療剤としては、ナメンダ(商標)(メマンチンHCl)、アリセプト(商標)(ドネペジル)、ラザダイン(商標)(ガランタミン)、エクセロン(商標)(リバスチグミン)、及びコグネックス(商標)(タクリン)が含まれた。
【0127】
実施例4
ハンチントン病を含むがこれに限定されない神経学的状態の治療
方法A.強心配糖体療法
ハンチントン病を示す対象者に強心配糖体を処方し、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ治療的に適切な用量を投与した。治療反応の対象者のレベルを定期的に測定した。治療反応のレベルがある用量で低すぎた場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させた。強心配糖体での対象者の治療を必要に応じて継続し、用量又は投薬計画は、患者が所望の臨床的エンドポイントに達するまで必要に応じて調節され得た。投与した用量は、実施例3又はそうでなければ本明細書に記載のものと同様であり得た。
【0128】
方法B.併用療法:強心配糖体及び別の薬剤
ハンチントン病又はその症状の治療用の1つ又はそれ以上の他の治療剤を対象者に処方及び投与したこと以外、上記方法Aに従った。1つ又はそれ以上の他の治療剤を強心配糖体の前、後又はと共に投与することができた。1つ又はそれ以上の他の治療剤の用量の段階的な増加(又は段階的な減少)も行うことができた。適切な1つ又はそれ以上の他の治療剤としては、ビタミンE、バクロフェン(CoQ10の誘導体)、ラモトリギン(抗痙攣薬)、レマセミド(低親和性NMDAアンタゴニストである麻酔薬)、及びリルゾール(Naチャネル遮断薬)が含まれた。
【0129】
実施例5
虚血性脳卒中を含むがこれに限定されない神経学的状態の治療
方法A.強心配糖体療法
虚血性脳卒中を示す対象者に強心配糖体を処方し、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ治療的に適切な用量を投与した。治療反応の対象者のレベルを定期的に測定した。治療反応のレベルがある用量で低すぎた場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させた。強心配糖体での対象者の治療を必要に応じて継続し、用量又は投薬計画は、患者が所望の臨床的エンドポイントに達するまで必要に応じて調節され得た。投与した用量は、実施例3又はそうでなければ本明細書に記載のものと同様であり得た。
【0130】
方法B.併用療法:強心配糖体及び別の薬剤
虚血性脳卒中又はその症状の治療用の1つ又はそれ以上の他の治療剤を対象者に処方及び投与したこと以外、上記方法Aに従った。1つ又はそれ以上の他の治療剤を強心配糖体の前、後又はと共に投与することができた。1つ又はそれ以上の他の治療剤の用量の段階的な増加(又は段階的な減少)も行うことができた。
【0131】
実施例6
オレアンドリンを含有する溶液のHPLC分析
サンプル(オレアンドリン標準、SCF抽出物及び熱水抽出物)を、以下の条件:Symmetry C18カラム(5.0μm,150×4.6mm ID.;Waters);移動相 MeOH:水=54:46(v/v)、及び流速1.0ml/分を使用してHPLC(Waters)で分析した。検出波長は、217nmに設定した。化合物又は抽出物を固定量のHPLC溶媒に溶解してオレアンドリンのおよその標的濃度を達成することによって、サンプルを調製した。
【0132】
実施例7
正常なニューロン組織におけるα3及びα1発現の測定
Phoenix Biotechnology, Inc.の名前で2008年11月6日に出願されたPCT国際出願第PCT/US08/82641号に記載の手順に従うことができ、この全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0133】
実施例8
脳卒中及び非脳卒中についてのインビトロアッセイにおける強心配糖体の評価
方法A.脳卒中:皮質脳スライスの作製及びOGD
新皮質脳スライスをPND 7 Sprague−Dawleyラットの仔から作製した。大脳皮質を切開し、400ミクロン厚のスライスへ切断し、平板培養の前に、1 uM MK−801と共に冷人工脳脊髄液を含有する容器中へ移した;MK−801はその後の手順に含めなかった。一過性酸素グルコース欠乏(OGD)を使用して虚血性損傷を模倣するために、各脳の一方の半球からのスライスを、低O2(0.5%)環境において7.5分間、グルコースフリーのN2通気した人工脳脊髄液へ曝した。次いで、OGDを行わなかったことを除いては同一に作製したニトロセルロース又はMillicell(Millipore)透過膜上の対側の半球由来のコントロールスライスと並んで、OGDスライスを平板培養した。平板培養の30分後、脳スライス対をトランスフェクションし、24ウェルプレートへ移し、加湿したチャンバ中において5% CO2下にて37℃でインキュベートした。各実験において、5〜6分の酸素グルコース欠乏(OGD)を使用し、24時間まで健康な皮質ニューロンの>50%損失を誘発した(図1A中の最初の2つのバーを比較する)。設定濃度(3μM)のネリイホリンを内部ポジティブコントロールとして使用した。オレアンドリンについて、0.3〜3μMの全ての3つの濃度は、最初の2つの実験(図1A及び1B)において神経保護を提供するようであり、従って、試験したオレアンドリン濃度を第3実行(図1C)において下げ、神経保護についての閾値濃度は0.1〜0.3μMにあることが示唆された。
【0134】
方法B.非脳卒中:脳スライスアッセイ
オレアンドリン及びPBI−05204を、「非脳卒中」脳スライス;即ち、スライスしYFPをトランスフェクションしたがOGDによる追加の外傷へ供しなかったものにおいて試験した。上記に概説した実験手順を参照のこと。本発明者らは、ネリイホリンを含む多数の神経保護化合物が、恐らくスライス及び培養自体のプロセスによって引き起こされた外傷から保護することによって、このような脳スライスへ適度のレベルの神経保護を提供し得ることを観察した。図2A〜2Cにおいて見られ得るように、オレアンドリンは、ネリイホリンと同様のレベルまでこのような「非OGD」脳スライスへ神経保護を提供することができるようであり、このことは、強心配糖体が酸素又はグルコース欠乏の非存在下でさえ神経保護を媒介することを表している。
【0135】
実施例9
アルツハイマー病についてのインビトロAPPアッセイにおける強心配糖体の評価
皮質錐体ニューロンのAPP/Aβ誘発変性についてのラット脳スライスモデルにおいて、微粒子銃トランスフェクションを使用し、YFPなどのバイタルマーカーを導入しただけでなく、脳スライス中の同一のニューロン集団中へ疾患遺伝子構築物も導入した。従って、APP/Aβ脳スライスモデルにYFP及びAPPアイソフォームを同時トランスフェクションし、脳スライス作製及びトランスフェクション後の3〜4日間にわたって皮質錐体ニューロンの進行性変性がもたらされた。図3A〜3Cにおける3つの実行において見られ得るように、オレアンドリン及びPBI−05204は両方とも、APPがトランスフェクションされた脳スライスに対して用量依存性神経保護を提供することができるようであり、BACE阻害薬によって提供され得るものに近いレベルへ救出された。
【0136】
実施例10
ハンチントン病についてのインビトロ皮質線条体共培養アッセイにおける強心配糖体の評価
このアッセイにおいて、インタクトな脳スライスを使用する代わりに、突然変異httを、96ウェルプレート中に配置された皮質ニューロン、線条体ニューロン及びグリアの高密度混合共培養物中へエレクトロポレーションによって導入した。このアッセイプラットフォームの目的は、インビボでの疾患関連ニューロン集団の相互接続性の重要な局面を再現する複合初代培養系の生物学的/臨床的な関連性と、大規模完全自動スクリーニングキャンペーンを行う能力とを組み合わせることであった。このアッセイにおいて、インビトロで1〜2週間にわたって、トランスフェクションされた突然変異htt構築物は、線条体ニューロン及び皮質ニューロンの両方の進行性変性を誘発し、これらを、Cellomics Arrayscan VTIプラットフォームにおいて自動画像獲得及びオブジェクト検出アルゴリズムを使用して続いて定量化した。各データポイントを、自動的にキャプチャーされた各ウェル中16個の画像を伴って6個のウェルから引き抜き、処理し、Cure Huntington's Disease Initiativeの協力によって大規模スクリーニングキャンペーンが行われている間に開発されたプロトコルを使用してCellomics Arrayscanにおいて分析した。全実行において、約25,000個の画像を収集し、4サイクル/週で、各サイクルにおいて分析した。
【0137】
皮質−線条体共培養アッセイプラットフォーム
コンフルエントなグリアベッドを有する96ウェルプレートを確立するためにニューロン平板培養より前に、純粋なグリア培養物を作製した。次いで、皮質及び線条体組織を別々に分離し、適切なDNA構築物で「ヌクレオフェクション(nucleofected)」し、YFP、CFP、及びmCherryなどの異なる蛍光タンパク質の発現によって後で識別可能とした。これらの別々にトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンを、次いで、徹底的に混合し、前もって平板培養されたグリア単層を含有する96ウェルプレート中へ平板培養した。
【0138】
オレアンドリン及びPBI−05204(ネリウム・オレアンダーの超臨界CO2抽出物)の両方を、この皮質−線条体共培養プラットフォームにおいて試験し、予備的に、これらの化合物は、このアッセイシステムにおいて評価されてきた>400個の後期薬物分子のうち現在までのところ本発明者らが観察した最も強いヒットであるようであった。比較のために、この共培養アッセイについてポジティブコントロールとして本発明者らがルーチン的に含めた化合物である、KW6002(アデノシン2a受容体アンタゴニスト)についての用量−反応グラフを含める(図4Eを参照のこと)。オレアンドリンの効能はKW6002と同様であり、一方、その効力は約100倍より大きいようであった。
【0139】
実施例11
脳卒中及び非脳卒中についてのインビトロアッセイにおける本発明の強心配糖体及び抽出物の評価
方法A.脳卒中:皮質脳スライスの作製及びOGD
新皮質脳スライスをPND 7 Sprague−Dawleyラットの仔から作製した。大脳皮質を切開し、400μ厚のスライスへ切断し、平板培養の前に、1 uM MK−801と共に冷人工脳脊髄液を含有する容器中へ移した;MK−801はその後の手順に含めなかった。一過性酸素グルコース欠乏(OGD)を使用して虚血性損傷を模倣するために、各脳の一方の半球からのスライスを、低O2(0.5%)環境において7.5分間、グルコースフリーのN2通気した人工脳脊髄液へ曝した。次いで、OGDを行わなかったことを除いては同一に作製したニトロセルロース又はMillicell(Millipore)透過膜上の対側の半球由来のコントロールスライスと並んで、OGDスライスを平板培養した。平板培養の30分後、脳スライス対をトランスフェクションし、24ウェルプレートへ移し、加湿したチャンバ中において5% CO2下にて37℃でインキュベートした。各実験において、5〜6分の酸素グルコース欠乏(OGD)を使用し、24時間まで健康な皮質ニューロンの>50%損失を誘発した。設定濃度(3μM)のネリイホリン(強心配糖体)を内部ポジティブコントロールとして使用した。オレアンドリン(強心配糖体)について、0.3〜3μMの全ての3つの濃度は、最初の2つの実験において神経保護を提供するようであり、従って、試験したオレアンドリン濃度を第3実行において下げ、神経保護についての閾値濃度は0.1〜0.3μMにあることが示唆された。例えば、ネリウム種の未分画抽出物、又はそのフラクションもまた、オレアンドリンについて記載したように使用することができた。
【0140】
方法B.非脳卒中:脳スライスアッセイ
オレアンドリン、及びネリウム・オレアンダーの未分画SCF抽出物であるPBI−05204を、「非脳卒中」脳スライス;即ち、スライスしYFPをトランスフェクションしたがOGDによる追加の外傷へ供しなかったものにおいて試験した。上記に概説した実験手順を参照のこと。本発明者らは、ネリイホリンを含む多数の神経保護化合物が、恐らくスライス及び培養自体のプロセスによって引き起こされた外傷から保護することによって、このような脳スライスへ適度のレベルの神経保護を提供し得ることを観察した。データは、オレアンドリン及び抽出物は、ネリイホリンと同様のレベルまでこのような「非OGD」脳スライスへ神経保護を提供することができるようであることを実証しており、このことは、強心配糖体が酸素又はグルコース欠乏の非存在下でさえ神経保護を媒介することを表している。
【0141】
実施例12
SCF抽出物のHPLC分析
このアッセイの目的は、強心配糖体を含有する抽出物を同定することであった。各抽出物からのサンプルを以下のように分析した。抽出物(1〜3 mg)を水性メタノール(水中80%メタノール)1〜5 mlに溶解した。移動相として水中80%メタノール、0.7 mL/分の流量、及び以下の波長でのDAD−UV流出物モニタリング:203、210、217、230、254、280、310及び300 nmを使用して、希釈サンプル(10〜25μl)をAgilent Zorbax SB−C18カラムを用いて分析した。ポジティブ同定は、抽出物サンプルの保持時間及びスペクトルを参照サンプルと比較した場合のクロマトグラム上のピーク形成によって確認された。
【0142】
実施例13
神経保護の測定についての時間遅延脳スライスアッセイ
このアッセイを、以下の変更を行ったことを除いては、実施例11に従って行った。OGDと提案される神経保護剤の導入との間で、指定の長さの時間を可能にした。OGD処理のタイミングと比べて処理を遅らせた場合の、脳スライスへ神経保護を提供するPBI−05204の能力を、測定した。データは、ネリウム・オレアンダー抽出物の2時間遅延は十分に許容されたことを示し、これは、OGD処理直後のPBI−05204の適用で達成されるものと同様のレベルの神経保護を示している。神経保護的利益は、PBI−05204の投与の4〜6時間の遅延で減少したが、依然として著しくかつ生理学的に関連性がある神経保護レベルであった。
【0143】
本明細書において使用される場合、用語「約」又は「およそ」は、指定の値の±10%、±5%、±2.5%又は±1%を意味するように解釈される。本明細書において使用される場合、用語「実質的に」は、「かなり」又は「の少なくとも大部分」又は「の50%超」を意味するように解釈される。
【0144】
上記のものは、本発明の特定の実施態様の詳細な説明である。本発明の特定の実施態様が例示の目的のために本明細書において記載されたが、様々な改変が本発明の精神及び範囲を逸脱することなく行われ得ることが認識される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によるものを除き、限定されない。本明細書に開示及び特許請求される実施態様の全ては、本開示を考慮して過度の実験無しに、実行及び実施され得る。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、強心配糖体化合物又はそれらを含有する調製物で神経学的状態を治療する方法に関する。特に、本発明は、その必要がある対象者への強心配糖体の投与によって神経学的疾患又は障害を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経学的疾患又は障害は脳機能に影響を与える。これらの疾患及び障害についての治癒的な又は改善的な療法を開発するために、多くの努力がなされてきた;しかし、様々な異なる疾患及び障害に対して有効であることが判明した多数の薬物療法学的アプローチがたとえ存在するとしても、包括的な又は普遍的に治癒的な療法は開発されていない。
【0003】
ハンチントン病(HD)は、神経系に影響を与える脳の遺伝病である。それは、親から子へ遺伝する欠陥遺伝子によって引き起こされる。HD遺伝子は、適切な脳発達に非常に重要であるようである「ハンチントン」として公知の特定のタンパク質の産生を妨げる。HDの典型的な徴候としては、情動障害、認知障害及び運動障害が挙げられる。ハンチントン病は、律動性不随意運動(舞踏病)を特徴とするが、時には、異常な運動を伴わない硬直、四肢の使用における変化(失行)、身体機能の制御不能、並びに認知症、例えば、記憶、思考の速度、判断の進行性の劣化、及び立案及び問題の認識の欠如を引き起こす。ハンチントン病についての公知の治療法は存在しない。情動及び運動障害などのHDと関連する症状を制御するのを助けるために多数の薬剤が存在するが、疾患の経過を停止させるか又は逆転させる治療法は存在しない。ハンチントン病は、全体的な膜異常を伴う疾患として認識されてきた。Na,K−ATPアーゼの著しく上昇したレベル及び活性(10倍増加)が、正常なものと比較してハンチントン病患者の基底核及び赤血球の膜において観察された(非特許文献1)。ハンチントン病患者の皮膚から得られた線維芽細胞膜(非特許文献2)。
【0004】
アルツハイマー病は、認知症のある形態である−脳の知的機能(記憶、見当識、計算など)を損傷するが、通常その運動機能を維持する神経変性疾患。アルツハイマー病において、知力は徐々に低下し、記憶喪失、錯乱、失見当識、判断力の衰え、及び正常な日周活動を行う人の能力に影響を与え得る他の問題が引き起こされる。精神変化のタイプ、重篤度、順序及び進行は、大幅に異なる。アルツハイマー病について公知の治療法及びその進行を遅らせる公知の方法はない。疾患の初期又は中期段階の一部の人について、タクリンなどの薬剤がいくらかの認知症状を緩和し得る。アリセプト(Aricept)(ドネペジル)及びエクセロン(Exelon)(リバスチグミン)は、アルツハイマー型の軽度から中程度の認知症の治療について指示される可逆性アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。これらの薬物(コリンエステラーゼ阻害剤と呼ばれる)は、神経伝達物質であるアセチルコリンの脳のレベルを増加させ、脳細胞間の伝達を修復するのを助けることによって、作用する。ある薬剤は、不眠、動揺、徘徊、不安、及び意気消沈などの行動症状を制御するのを助け得る。これらの治療は、患者をより快適にすることを目的としている。アルツハイマー病を治す公知の薬剤はないが、コリンエステラーゼ阻害剤は、日周活動のパフォーマンスを改善し得、又は行動的問題を減少させ得る。現在試験されているアルツハイマー病の治療用の薬剤としては、エストロゲン、非ステロイド性抗炎症薬、ビタミンE、セレジリン(カルベックス(Carbex)、エルデプリル(Eldepryl))及び植物産物であるイチョウ(gingko biloba)が挙げられる。
【0005】
正常な状態下では、ニューロンは、膜結合型恒常性エネルギー依存性Na,K−ATPアーゼ
ポンプによって調節されるそれらの静止膜電位(testing membrane potential)及び機能を維持する。虚血は、不可逆的な組織損傷を潜在的にもたらす、イオン恒常性の変化を誘発する。損なわれたNa,K−ATPアーゼ活性は、局所虚血及び外傷性脳損傷のあるモデルにおける神経病理学的アポトーシスプロセスにおいて役割を果たすことが示唆された。脳卒中仲介虚血性脳損傷におけるNa,K−ATPアーゼの役割は、いくつかの異なる分子機構と関連することが報告された。Na,K−ATPアーゼ触媒活性の阻害は、例えば、虚血再灌流の間のATP消費の減少をもたらし得る。さらに、細胞質ゾルCa2+の欠失は、ニューロンの細胞死を引き起こし得る。従って、強心配糖体によるような、Na,K−ATPアーゼの阻害は、細胞内Ca2+レベルの増加及びNa−Ca交換体による細胞内Ca2+の排出の減少を生じさせ得る。これと一致して、海馬CA1ニューロン中の細胞内Ca2+の比較的より低いレベルが、一過性虚血の3日後に観察され、カルシウムレベルの上昇は、広範囲の虚血後治療時間にわたって遅発性神経細胞死に対する保護を提供すると考えられる。
【0006】
強心配糖体の薬理学的作用機構の1つは、イオン交換ポンプであるNa,K−ATPアーゼへ結合しこの特定の酵素の活性を阻害するそれらの能力を必要とする。形質膜を横切ってのNa+及びK+の能動輸送を触媒する膜貫通タンパク質である、Na,K−ATPアーゼは、強心配糖体についての十分に確立された薬理学的受容体である。この酵素は、ATPを加水分解し、それらの電気化学的勾配に反して、細胞内へのK+及び細胞外へのNa+の輸送を駆動するために自由エネルギーを使用する(非特許文献3)。
【0007】
Na,K−ATPアーゼは、2つのヘテロ二量体サブユニットである、触媒α−サブユニット及びグリコシル化β−サブユニットから構成されている。γサブユニットも存在するが、それは詳細に研究されていない。α−サブユニットは、ATP、Na+、K+、及び強心配糖体についての結合部位を有する。β−サブユニットは、触媒α−サブユニットを安定させるように機能し、また調節的役割を果たし得る。4つの異なるαアイソフォーム(α1、α2、α3、α4)及び3つの異なるβアイソフォーム(β1、β2、及びβ3)が哺乳動物細胞において同定された。各サブユニットタイプの相対的発現は、正常状態及び疾患状態において著しく変化する。さらに、異なるαアイソフォームへの強心配糖体の見かけの親和性は、全く異なる。α1アイソフォームへの強心配糖体の結合は、このタイプの薬物による阻害に対して250倍又はそれ以上より敏感であるα2及びα3アイソフォームで生じるものよりも少ない(非特許文献4)。Sakaiら(非特許文献5)は、α3サブユニットアイソフォームの発現が、正常結腸直腸細胞と比較してヒト結腸直腸癌細胞において増加することを報告している。
【0008】
強心配糖体の脂溶性に対する相対的水溶性は広範囲に及ぶ。大抵の強心配糖体はNa,K−ATPアーゼ活性へ結合しこれを阻害し得る一方、脂溶性(親油性又は疎水性)よりも比較的より水溶性(親水性)である強心配糖体は、血液脳関門として公知の脳への脂質関門を通過する限られた能力しか有さない。血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)中の脈絡叢によって維持される、循環血液と脳脊髄液(CSF)との分離である。内皮細胞は、小さな疎水性の分子(O2、ホルモン、脂溶性強心配糖体など)の拡散を可能にする一方、CSF中への微視的な物体(例えば、細菌)及び大きな又は親水性の分子の拡散を制限する。
【0009】
ネリウム・オレアンダー(Nerium oleander)は、亜熱帯アジア、米国南西部、及び地中海に広く分布している観賞植物である。その医学的及び毒物学的性質は、長い間、認識されてきた。それは、例えば、痔、潰瘍、ハンセン病、ヘビ咬傷の治療において、及び流産の誘発においてさえも使用されてきた。オレアンダー抽出物の重要であるが唯一の成分ではない、オレアンドリンは、強心配糖体である。
【0010】
ネリウム種の植物からの配糖体の抽出は、ネリウム・オレアンダーから薬理学的に/治療的に活性な成分を提供した。これらの中にはオレアンドリン、ネリイホリン(nerifoli
n)、及び他の強心配糖体化合物がある。商標ANVIRZEL(商標)で販売される、ネリウム・オレアンダーの熱水抽出によって得られたオレアンドリン抽出物は、ネリウム・オレアンダーの熱水抽出物の濃縮形態又は粉末形態を含有する。熱水オレアンダー抽出物(即ち、Anvirzel(商標))の第I相試験が完了した(非特許文献6)。約57 ugオレアンドリン/日を提供する、オレアンダー抽出物は、1.2 ml/m2/dまでの用量で安全に投与され得ると結論付けられた。用量制限毒性は見られなかった。
【0011】
Huachansuはヒキガエルの皮膚から得られる抽出物であり、それは、強心配糖体であるブファリンなどのブファジエノリドを含む。HuaChanSuは、中国において癌治療についての承認薬である。それは、肝癌、胃癌、肺癌、皮膚癌及び食道癌を含む、様々な癌を治療するために使用されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Butterfield DA, Oeswein JQ, Prunty ME, Hisle KC, Markesbery WR. Increased sodium, potassium adenosine triphosphatase activity in erythrocyte membranes in Huntington's disease. Ann Neurology, 4:60−62, 1978
【非特許文献2】Schroeder F, Goetz IE, Roberts E, Membrane anomalies in Huntington's disease fibroblasts. J. Neurochem. 43: 526−539, 1984
【非特許文献3】Hauptman, P. J., Garg, R., and Kelly, R. A. Cardiac glycosides in the next millennium. Prog. Cardiovasc. Dis. 41: 247−254, 1999
【非特許文献4】Blanco, G. and Mercer, R. W. Isozymes of the Na, K−ATPase: heterogeneity in structure, diversity in function. Am. J. Physiol. 275 (Renal Physiol. 44): F633−F650, 1998
【非特許文献5】Sakai et al., FEBS Letters 563: 151−154, 2004
【非特許文献6】Mekhail et al., Am. Soc. Clin. Oncol., vol. 20, p. 82b, 2001
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、神経学的状態を治療する方法であって、該神経学的状態を治療するための有効量で強心配糖体を含有する組成物をその必要がある対象者(subject)へ投与する工程を含む方法を提供する。
【0014】
本発明の別の局面は、その必要がある対象者において、強心配糖体を含む組成物を用いて、変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を治療する方法であって、
対象者が、変化したNa,K−ATPアーゼα3アイソフォーム対α1アイソフォームサブユニット比と関連するか又は変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;及び
対象者への強心配糖体を含む組成物の投与を指示する工程
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明のある実施態様は、以下のものを含む:1)強心配糖体を含む組成物の治療的に適切な用量を対象者に処方及び投与する;2)処方された投薬計画に従って、強心配糖体を含む組成物を対象者に投与する;3)強心配糖体を含む抽出物を含む組成物を対象者に投与する;4)抽出物が、抽出中に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む;5)抽出物が、抽出中に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む;6)組成物が、1つ又はそれ以上の他の非強心配糖体治療有効薬剤、即ち、強心配糖体ではない薬剤をさらに含む;及び/又は7)強心配糖体を含有する植物又は動物源の熱水抽出物を2 mg〜22.5 mg/日、又は強心配糖体の植物又は動物源の濃縮抽出物(例えば、超臨界CO2抽出物又は有機溶媒抽出物)0.6〜4.8 mg、又は強心配糖体の純粋単一化学形態10〜500 ugを、対象者に投与する。
【0016】
本発明はまた、その必要がある対象者における神経学的状態を治療する方法であって、
対象者における神経学的状態が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態であるか否かを決定する工程;
強心配糖体の投与を指示する工程;
一定期間の間、処方された初期投薬計画に従って対象者へ初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を定期的に決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含む方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、その危険性がある対象者の集団における神経学的状態の発生を予防する又は発生率を下げる方法であって、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団中の1又はそれ以上の対象者へ、長期間、繰り返しベースで、有効用量の強心配糖体を投与し、それによって集団における神経学的状態の発生を予防する又は発生率を下げる工程を含む方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、以下の実施態様を含む:a)方法が、1又はそれ以上の対象者への強心配糖体の投与を指示する工程をさらに含む;b)方法が、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ有効用量の強心配糖体を投与する工程をさらに含む;c)方法が、強心配糖体での治療に対する1又はそれ以上の対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を定期的に決定する工程をさらに含む;d)対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、方法が、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程をさらに含む;e)対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、方法が、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程をさらに含む;f)強心配糖体を集団中の複数の対象者へ投与する;g)繰り返しベースが、毎日、1日おき、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、1週おき、2週ごと、3週ごと、毎月、隔月、半月ごと、1ヶ月おき 2ヶ月ごと、四半期ごと、1四半期おき、三半期ごと、季節ごと、半年ごと及び/又は毎年である;h)長期間が、1週又はそれ以上、1ヶ月又はそれ以上、1四半期又はそれ以上及び/又は1年又はそれ以上である;i)有効用量を1日に1回又はそれ以上投与する;j)方法が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団を同定する工程をさらに含む;及び/又はk)危険性がある対象者の集団が、対象者の加齢、神経学的状態の家族歴、神経学的状態の発生の遺伝的素因、対象者におけるApoE4遺伝子の存在及び発現、女性(男性よりも2倍多くの女性がアルツハイマー病になる)、心血管疾患(例えば、高血圧及び高コレステロールレベル)、糖尿病(特に2型又はこの疾患の成人発症型)、ダウン症候群、頭部外傷、低レベルの正規の教育、喫煙、過剰なアルコール摂取及び/又は薬物乱用によって特徴付けられる。
【0019】
本発明はまた、対象者における脳卒中を治療する時間遅延方法であって、
対象者が脳卒中に罹った後の受容可能な遅延期間内に、初期投薬計画に従って初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含む方法を提供する。
【0020】
本発明のある実施態様は、以下のものを含む:1)遅延期間が、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、45分以内、30分以内、20分以内又は10分以内である;2)対象者の臨床及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程が、身体の片側の顔、腕及び/又は脚のいずれかの脱力、身体の片側の顔、腕及び/又は脚の知覚低下、音声言語を理解することができないこと、話す又は明瞭に話すことができないこと、書くことができないこと、めまい及び/又は歩行不均衡、複視並びに異常に重篤な頭痛の評価によって行われる;又は3)それらの組み合わせ。
【0021】
本発明はまた、対象者における神経学的状態の治療用の医薬の製造における強心配糖体の使用を提供する。ある実施態様において、このような医薬の製造は、強心配糖体を提供する工程;強心配糖体の用量を薬学的投薬形態に含める工程;及び薬学的投薬形態を包装する工程を含む。ある実施態様において、製造は、PCT国際出願第PCT/US06/29061号に記載されるように行われ得る。製造はまた、1つ又はそれ以上の追加の工程:例えば、売主(小売業者、卸売業者及び/又は流通業者)へ包装された投薬形態を届ける工程;神経学的状態を有する対象者へ包装された投薬形態を販売するか又は他の方法で提供する工程;使用、投薬計画、投与、内容物及び投薬形態の毒性プロフィールについての説明書を提供するラベル及び添付文書を医薬と共に含める工程を含み得る。ある実施態様において、神経学的状態の治療は、以下を含む:対象者が神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;投薬計画に従う対象者への強心配糖体の投与を指示する工程;強心配糖体を含有する1つ又はそれ以上の薬学的投薬形態を対象者へ投与する工程、ここで、1つ又はそれ以上の薬学的投薬形態は投薬計画に従って投与される。
【0022】
本発明はまた、神経学的状態の治療のための、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物、即ち、薬学的製剤又は投薬形態を提供する。ある実施態様において、強心配糖体含有組成物は、本明細書に又は米国特許第7,402,325号、PCT国際出願第PCT/US06/29061号、米国出願第12/019435号に記載される通りであり、これらの全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0023】
ある実施態様において、神経学的状態を有する対象者、即ち、その必要がある対象者は、このような対象者の集団の一部である。本発明は、神経学的状態を有する対象者の集団中の統計的に有意な数の対象者の臨床状態を改善するための方法であって、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を対象者の集団へ投与する工程;及び対象者の臨床状態を測定する工程を含む方法を提供する。ある実施態様において、統計的に有意な数は、集団の少なくとも5%である。
【0024】
ある実施態様において、神経学的状態は、本明細書に記載されるような、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態である。医薬は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を含有する薬学的投薬形態に強心配糖体を含めることによって製造され得る。
【0025】
強心配糖体での対象者の治療は必要に応じて継続される。用量又は投薬計画は、疾患と関連する特定の神経学的症状の減少又は緩和などの所望の臨床的エンドポイントに患者が達するまで、必要に応じて調節され得る。臨床反応及び/又は治療反応の妥当性の決定は、治療される神経学的状態に精通している医師によって行われ得る。
【0026】
ある実施態様において、神経学的状態は、神経学的疾患、神経学的障害、及び脳卒中からなる群より選択される。ある実施態様において、神経学的疾患は、神経変性疾患である。ある実施態様において、神経変性疾患は、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ウシ海綿状脳症、多発性硬化症、糖尿病性神経障害、自閉症及び若年型神経セロイドリポフスチン症からなる群より選択される。ある実施態様において、脳卒中は、虚血性脳卒中又は脳卒中仲介虚血性損傷である。
【0027】
ある実施態様において:1)強心配糖体は、オレアンドリン、ウアバイン、ブファリン、ジギトキシン、シノブファタリン(cinobufatalin)、シノブファギン、及びレジブホゲニン(resibufogenin)からなる群より選択される;2)植物又は動物源の抽出によって誘導されたか、入手可能な強心配糖体の化学修飾(例えば、誘導体化)によって合成又は製造されたかにかかわらず、強心配糖体は純粋な形態で存在する;3)強心配糖体は抽出物中に存在する;4)強心配糖体は薬学的製剤又は組成物中に存在する;5)強心配糖体はオレアンダー植物マス(oleander plant mass)から得られた;6)オレアンダー植物マスは、ネリウム属の種、例えば、ネリウム・オレアンダー、又はテベティア(Thevetia)属の種、例えば、テベティア・ネリイフォリア(Thevetia neriifolia)(そうでなければイエローオレアンダー(yellow oleander)として公知)を含む;7)強心配糖体は対象者への投与後に血液脳関門(BBB)を通過する;8)強心配糖体抽出物は、場合によりボディファイヤーの存在下で、超臨界流体(SCF)抽出によって調製された;9)強心配糖体がオレアンドリンである;10)強心配糖体は、4 L/hr以下の脳組織についてのクリアランス速度を有する;及び/又は11)本明細書に開示の任意の経路によるその投与後、強心配糖体は、少なくとも8時間の間、脳組織中に保持される。ある実施態様において、強心配糖体はネリイホリン(neriifolin)を除外する。
【0028】
ある実施態様において:1)SCF抽出物は、強心配糖体に加えて少なくとも1つの他の薬理学的活性薬剤をさらに含み、該他の薬理学的活性薬剤は、抽出物を作製するために使用された抽出プロセスの間に強心配糖体と共に得られた;2)SCF抽出物は、少なくとも1つの他の非強心配糖体薬理学的活性薬剤をさらに含む;3)他の薬理学的活性薬剤は、抽出物が対象者へ投与される場合、強心配糖体の治療効能に寄与し得る;4)他の薬理学的活性薬剤は、強心配糖体の治療効能に寄与するように相加的に又は相乗的に機能する;及び/又は5)抽出物は、ヒキガエルの皮膚又はそこからの分泌物から得られた。
【0029】
ある実施態様において、神経学的状態は、若年性自閉症と関連するものなどの酵素活性の増加(Clin. Biochem. 2009; 42(10−11), 949−957)、糖尿病性神経障害(Neuroscience 2009)、バッテン病(Exp. Cell Res. 2008, 314(15):2895−2905)、加齢性認知症及びアルツハイマー病(J. Alzheimers Dis. 2008, 14(1): 85−93; Neurobiol. Aging 2007, 28(7):987−994)において見られるものなどの酵素活性の減少、又はパーキンソン病と関連するものなどのNa,K−ATPアーゼサブユニット構造の特定の突然変異(Human Gen. 2009, 126(3):431−447)のいずれかによるNa,K−ATPアーゼ活性の特定の変化と関連する病因を有する。
【0030】
本発明の方法の個々の工程は、別個の設備で又は同一の設備内で行われ得る。
【0031】
ある実施態様において、ニューロンは、インビトロ、エクスビボ又はインビボにある。
ある実施態様において、ニューロンはCA−1ニューロンである。
【0032】
本発明はまた、神経学的状態を治療する方法;変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を、その必要がある対象者において、治療する方法;神経学的状態の治療用の医薬の製造における強心配糖体の使用;及び/又は本明細書に実質的に示され記載される神経学的状態の治療用の強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を提供する。
【0033】
本発明は、本明細書に開示される本発明の局面、実施態様及びサブ実施態様の全ての組み合わせを含む。
【0034】
下記の図は、本明細書の一部を形成し、特許請求される発明の例示的な実施態様を説明する。当業者は、これらの図及び本明細書中の説明を考慮して、過度の実験をすることなく、本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。3つの独立した実験の結果が示される。
【図1B】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。3つの独立した実験の結果が示される。
【図1C】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。3つの独立した実験の結果が示される。
【図1D】神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例11)におけるオレアンドリン対コントロールであるネリイホリンの比較評価から得られた濃度−反応データを示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下で酸素及びグルコース欠乏(OGD)の5〜6分後に測定される。
【図1E】本明細書に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例11)におけるオレアンドリン含有SCF抽出物についての濃度−反応アッセイの結果を示し、ここで、酸素又はグルコース欠乏無しがコントロールとして使用される。
【図2A】神経保護脳スライスベース「非脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下でOGD無しで測定される。
【図2B】神経保護脳スライスベース「非脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下でOGD無しで測定される。
【図2C】神経保護脳スライスベース「非脳卒中」アッセイ(実施例8)におけるオレアンドリン対ネリイホリンの比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、それらの薬剤の存在又は非存在下でOGD無しで測定される。
【図3A】神経保護脳スライスベース「アルツハイマー病」アッセイ(実施例9)におけるオレアンドリン対オレアンドリン抽出物の比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、種々の量のそれらの薬剤の存在又は非存在下でAPP/Aβ誘発変性後に測定される。
【図3B】神経保護脳スライスベース「アルツハイマー病」アッセイ(実施例9)におけるオレアンドリン対オレアンドリン抽出物の比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、種々の量のそれらの薬剤の存在又は非存在下でAPP/Aβ誘発変性後に測定される。
【図3C】神経保護脳スライスベース「アルツハイマー病」アッセイ(実施例9)におけるオレアンドリン対オレアンドリン抽出物の比較評価の結果を示し、ここで、健康な皮質ニューロンの数は、種々の量のそれらの薬剤の存在又は非存在下でAPP/Aβ誘発変性後に測定される。
【図4A】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4B】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4C】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4D】神経保護皮質−線条体共培養ニューロンベース「ハンチントン病」アッセイ(実施例10)におけるオレアンドリンの比較評価の二重実験からの結果を示し、ここで、ハンチントン(htt)タンパク質の突然変異形態がトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンの、コントロールと比べての、パーセント救出は、種々の量のオレアンドリンの存在又は非存在下で測定される。
【図4E】ハンチントン病のトランスフェクションに起因するニューロンの損傷及び死を救出するその相対的能力の観点からのオレアンドリンについての濃度−反応曲線を示す(インビトロアッセイからの結果;実施例10)。
【図5】本明細書に記載される時間遅延神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイ(実施例13)の結果を示し、ここで、「脳卒中」脳組織は、OGD後の約2、約4又は約6時間の終了後に強心配糖体含有溶液(オレアンドリン含有SCF抽出物)で処理される。
【図6】CD1マウスにおけるオレアンドリン含有SCF抽出物(三角、識別コード:PBI−05204)及びオレアンドリン(丸)のi.p.投与後の24時間期間にわたるオレアンドリンについての血漿及び脳組織中における濃度−時間関係のプロットを示す。5匹のマウスについての脳(ng/g)及び血漿(ng/ml)中の平均値±SDオレアンドリン濃度が示される。PBI−05204(オレアンドリン0.8 mg/kgを含有する38 mg/kg、50μl)及びオレアンドリン(3 mg/kg、100μl)を、DMSO:PEG400ビヒクルに50:50 v/v(PBI−05204、28.6 mg/ml)又は25:75 v/v(オレアンドリン、1 mg/ml)で溶解した。コントロール群はDMSO:PEG400ビヒクルのみを受けた。0.5、1、2、4、8及び24時間で、血漿及び脳組織をLC/MS/MS分析のために採取した。急速かつ持続的なCNS浸透がPBI−05204及びオレアンドリンの投与後の両方で観察された。
【図7A】本明細書に記載されるように行われた神経保護脳スライスベースアッセイの結果を示す。図7Aは、オレアンドリン(灰色丸)についての関係を表す濃度−反応曲線を示す。100%へ設定された各実行についての内部ポジティブ(非OGD)及びネガティブ(OGD)コントロール間の差異に対して標準化された6個の実行の要約;平均値±SEMが示される。ネリイホリン(白四角)についての濃度関係が、比較のためにWangら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006), 103(27), 10461−10466)から抜粋されてここに複写されている。
【図7B】本明細書に記載されるように行われた神経保護脳スライスベースアッセイの結果を示す。図7Bは、PBI−05204(黒四角)についての関係を表す濃度反応曲線を示す。100%へ設定された各実行についての内部ポジティブ(非OGD)及びネガティブ(OGD)コントロール間の差異に対して標準化された13個の実行の要約;平均値±SEMが示される。オレアンドリンについての図7Aからのデータが、PBI−05204抽出物中のオレアンドリンについて3%組成物を仮定して、図7Bに再プロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、その必要がある対象者への有効用量の強心配糖体の投与によって神経学的状態を治療する方法を提供する。強心配糖体は、治療される神経学的状態についての従来の臨床プラクティス及び臨床治療エンドポイントに従って臨床的に決定される用量及び投薬計画の適切性である、対象者に最も適した投薬計画に従って投与される。
【0037】
ある実施態様において、治療される神経変性障害又は神経学的状態は、Na,K−ATPアーゼ結合活性と又は細胞又は組織内でのNa,K−ATPアーゼの調節障害(disregulation)と関連する病因を有する。ある実施態様において、治療される神経変性障害又は神経学的状態は、HIF−1α結合活性と又は細胞又は組織内でのHIF−1αの調節障害と関連する病因を有する。このような調節障害は、例えば、酵素活性の程度の著しい変化として生じ得る。これは、順番に、酵素機能の変化、酵素含有量の変化、又は患部組織内での分布の変化にさえ起因し得る。
【0038】
本発明に従って治療される対象者は治療反応を示す。「治療反応」によって、疾患又は障害に苦しむ対象者が、強心配糖体での治療の結果として以下の臨床的利益の少なくとも1つを享受することが意味される:疾患又は障害の改善、疾患又は障害と関連する症状の発生の減少、疾患又は障害の部分寛解、疾患又は障害の完全寛解、又は進行までの時間の増加。換言すれば、治療反応は完全な又は部分的な治療反応であり得る。
【0039】
治療反応はまた、神経変性疾患に苦しむ患者のクオリティ・オブ・ライフが改善されるものとして記載され得る。クオリティ・オブ・ライフの改善は、例えば、疾患と関連する症状(例えば、振戦、不随意筋肉運動、神経−筋肉協調の喪失又は部分的喪失、記憶保持など)の発生、頻度又は重篤度の減少によって生じ得る。
【0040】
「危険性がある対象者の集団における神経学的状態の発生を予防すること」は、神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の人工統計学的に予め決定された集団において、予め決定された期間の間、神経学的状態が生じないことを意味する。予め決定された期間の間の予防は、その集団中の対象者が本発明の方法に従って強心配糖体を投与されたことの結果として生じる。一例として、強心配糖体含有組成物が、脳卒中に罹患する危険性がある対象者の集団における対象者へ予め決定された期間投与される場合、予め決定された期間の間、脳卒中がそれらの対象者において生じない。特に、強心配糖体含有組成物は、アルツハイマー病に罹患する危険性がある対象者の集団へ1年の期間にわたって慢性的に投与され、その集団中の対象者は、その1年の期間の間、アルツハイマー病と関連する症状を示さない。
【0041】
「危険性がある対象者の集団における神経学的状態の発生率を下げること」は、「発生率を下げること」が、対象者の人工統計学的に予め決定された集団における神経学的状態の発生を、但し、本発明の方法に従って強心配糖体含有組成物が投与されないその他の点では人工統計学的に類似する危険性がある対象者の予め決定された集団と比較して減少した発生率で又は重篤度レベルで、許容することを除いては、「発生を予防すること」と意味において関連する。
【0042】
本明細書において使用される場合、「進行までの時間」は、疾患が診断された(又は治療された)後から疾患が悪化し始めるまでの、時間の期間、長さ又は継続である。それは、その間に疾患のレベルが疾患の更なる進行なしで維持される時間の期間であり、時間の期間は、疾患が再び進行し始める時に終了する。疾患の進行は、療法の開始前又は開始時に神経学的状態に苦しむ対象者を「病期分類する」ことによって決定される。例えば、対象者の神経学的健康が療法の開始前又は開始時に決定される。次いで、対象者は強心配糖体で治療され、神経学的健康が定期的にモニタリングされる。いくらか後の時点で、神経学的状態の症状が悪化し得、従って、疾患の進行及び「進行までの時間」の終了が印される。その間に疾患が進行しなかったか又はその間に疾患のレベル又は重篤度が悪化しなかった時間の期間が、「進行までの時間」である。
【0043】
投薬計画は、投薬スケジュールに従って投与される治療的に適切な用量(又は有効用量)の1つ又はそれ以上の強心配糖体を含む。従って、治療的に適切な用量は、強心配糖体での治療に対する疾患又は障害の治療反応が観察され、かつ、過度の量の望まれないか又は有害な副作用無しで、対象者が強心配糖体を投与され得る、治療用量である。それが患者においていくらかの副作用を引き起こし得るが、治療的に適切な用量は対象者に対して致死的ではない。それは、そこで強心配糖体を投与される対象者に対する臨床的利益のレベルが、強心配糖体の投与に起因して対象者によって経験される有害な副作用のレベルを上回る用量である。治療的に適切な用量は、多様な確立された薬理学的、薬力学的及び薬物動態的な原理に従って、対象者ごとに変わる。しかし、治療的に適切な用量(例えば、オレアンドリンに関連して)は、通常、25、100、250、500又は1000マイクログラムの強心配糖体/日を超えないか、又はそれは、25〜500又は25〜1000マイクログラムの強心配糖体/日の範囲内にあり得る。対象者において標的治療結果を提供するために必要とされる薬物の実際の量は、薬学の基本原理に従って対象者ごとに変わることが、当技術分野において公知である。
【0044】
治療的に適切な用量は、神経学的又は神経変性疾患又は障害の治療において通常使用される任意の投薬計画に従って投与され得る。治療的に適切な用量は、1日1回、2回、3回又はそれ以上の投薬スケジュールで投与され得る。それは、1日おき、3日ごと、4日ごと、5日ごと、週2回、毎週、隔週、3週ごと、4週ごと、毎月、隔月、半月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、半年ごと、毎年、又は適切な投薬スケジュールに達するための上記のもののいずれかの組み合わせに従って、投与され得る。例えば、治療的に適切な用量は、1週間又はそれ以上の間、1日1回投与され得る。
【0045】
下記の実施例は、神経学的疾患、神経学的障害及び脳卒中などの神経学的状態における強心配糖体の効能の証拠を含む。実施例3は、強心配糖体又は強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせを用いてアルツハイマー病を治療する方法を詳述する。実施例4は、強心配糖体又は強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせを用いてハンチントン病を治療する方法を詳述する。実施例5は、強心配糖体又は強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせを用いて脳卒中仲介虚血性脳損傷を治療する方法を詳述する。
【0046】
一般的に、神経学的状態を有する対象者は以下のように治療される。神経学的状態を示す対象者は、神経学的状態がアルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態であるか否かを決定するために評価される。強心配糖体の投与が指示される。ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ初期用量の強心配糖体が投与される。対象者の臨床反応及び治療反応のレベルが定期的に測定される。治療反応のレベルがある用量で低すぎる場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させる。強心配糖体での対象者の治療が必要に応じて継続される。用量又は投薬計画は、疾患自体の停止、疾患関連症状の減少、及び/又は疾患経過の進行の減少などの所望の臨床的エンドポイントに患者が達するまで、必要に応じて調節され得る。
【0047】
実施例8は、脳卒中仲介虚血性ニューロン損傷の治療についての強心配糖体の効能を評価するために使用したインビトロアッセイの詳細な説明を提供する。アッセイは、24時間までに健康な皮質ニューロンの≧50%損失を誘発するために使用される酸素及びグルコース欠乏(OGD)についての脳スライスベースアッセイである。強心配糖体ネリイホリン(3μM)はポジティブコントロールとして使用される。オレアンドリンをOGD処理脳スライス(脳卒中モデル、図1A〜1C)及び非OGD処理脳スライス(非脳卒中モデル、図2A〜2C)において試験した。データは、脳スライス(ニューロン)が0.1〜3μMの濃度範囲のオレアンドリンの溶液へ曝されると、オレアンドリンが実質的な神経保護を提供することを示している。オレアンドリンの全身投薬後に直接的な測定をヒト脳において行っていないが、オレアンダー抽出物の第I相試験において得られたデータ、並びに血液脳関門を特異的に通過するオレアンドリンの能力が試験された齧歯動物研究において以前得られたデータから、ヒト脳においてオレアンドリンのこの濃度に達するための用量レベルは恐らく約1〜10 ng、約3〜6 ng、又は約4 ngであると考えられ得る。
【0048】
SCF抽出物中の、オレアンドリン以外の、1つ又はそれ以上の薬理学的に活性な成分の存在の証拠は、純粋なオレアンドリンを含有する溶液対SCF抽出物を含有するものについての濃度−反応曲線を比較することによって得られた。図1Dは、実施例11に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおける純粋なオレアンドリンを含有する水溶液についての濃度−反応アッセイの結果を示す。水溶液中のオレアンドリン濃度を0.0069から230μg/mlへ変えた。図1Eは、本明細書(実施例11)に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおけるオレアンドリン含有SCFネリウム種抽出物についての濃度−反応アッセイの結果を示す。データは、抽出物が純粋なオレアンドリンよりも効果的であることを実証し、これは、神経保護を提供する1つ又はそれ以上の薬理学的活性薬剤を抽出物が含有することを意味している。
【0049】
実施例11は、脳卒中仲介虚血性ニューロン損傷の治療についての、抽出物、又はその組成物の、効能を評価するために使用したインビトロアッセイの詳細な説明を提供する。アッセイは、24時間までに健康な皮質ニューロンの≧50%損失を誘発するために使用される酸素及びグルコース欠乏(OGD)についての脳スライスベースアッセイである。ネリウム種、例えば、ネリウム・オレアンダーの親未分画SCF抽出物を、ポジティブコントロールとして使用する。
【0050】
従って、本発明は、有効量のオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物へ酸素枯渇及び/又はグルコース枯渇ニューロンを曝し、活性の減少を最小限にし、活性の減少率を減らし、活性の減少を停止し、活性の減少の開始を遅らせ、及び/又は酸素枯渇及び/又はグルコース枯渇条件へ曝すことによって引き起こされたニューロンの機能を保護することによって、酸素枯渇又は酸素−グルコース枯渇によって引き起こされた活性の減少からニューロンを保護する方法を提供する。
【0051】
実施例9は、アルツハイマー病の治療についての強心配糖体の効能を評価するために使用したインビトロアッセイの詳細な説明を提供する。アッセイは、皮質錐体ニューロンのAPP/Aβ誘発(APP:アミロイド前駆タンパク質)変性についての脳スライスベースアッセイである。セクレターゼ酵素によって切断されると、APPは、βアミロイド斑形成における原因因子であると考えられるAβペプチドへ縮小される。Aβタンパク質は、βアミロイド斑形成と関連付けられ、アルツハイマー病における病因因子でないとしても特徴であると考えられている。微粒子銃トランスフェクションが、YFP(マーカー、黄色蛍光タンパク質)などのバイタルマーカーを導入するため、及び脳スライス中の同一のニューロン集団中へ疾患遺伝子構築物を導入するために使用される。YFPはAPPアイソフォームと同時トランスフェクションされ、脳スライス作製及びトランスフェクション後3〜4日間にわたって皮質錐体ニューロンの進行性変性がもたらされる。データ(図3A〜3C)は、オレアンドリン及びオレアンドリン含有SCF抽出物は、APPがトランスフェクションされた脳スライスに対して濃度依存性神経保護を提供し、それによって、BACE阻害薬、即ち、βセクレターゼ阻害薬によって提供されるのと同一のレベルに近いレベルが救出されることを示している。βセクレターゼ酵素は、APP前駆タンパク質を毒性Aβタンパク質へ切断する。オレアンドリン含有SCF抽出物は、オレアンドリン単独よりも大きな神経保護を提供するようであった。図3A〜3C中のデータは、アルツハイマー病を表すこのインビトロアッセイにおいてニューロンの著しい保護を示す化合物又は治療戦略は文献においてほとんどなかった点で重要である。データは、オレアンドリンなどの強心配糖体が、単一の薬剤として、又はアルツハイマー病の治療用のBASE阻害剤などの他のプロダクトと組み合わせて又は単一の療法として使用される抽出物中に存在する場合、有効であることを示している。
【0052】
従って、本発明は、アルツハイマー病によって引き起こされる活性の減少からニューロンを保護する方法であって、アルツハイマー病の特徴を示すニューロンを有効量のオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物へ曝し、活性の減少を最小限にし、活性の減少率を減らし、活性の減少を停止し、活性の減少の開始を遅らせる工程を含む方法を提供する;及び/又はアルツハイマー病によって引き起こされるニューロンの重要な機能。
【0053】
実施例10は、ハンチントン病の治療についての強心配糖体の効能を評価するために使用したアッセイの詳細な説明を提供する。突然変異httタンパク質を、皮質ニューロン、線条体ニューロン、及びグリアの高密度混合共培養物中へエレクトロポレーションによって導入する。線条体及び皮質ニューロンに異なる色の蛍光タンパク質をトランスフェクションし、それによって、共培養物中の異なるタイプのニューロンの個々の識別を容易にする。蛍光タンパク質は、蛍光性であり、適切な波長の光源での活性化で色を「発光する」。データ(図4A〜4D)は、オレアンドリン及びオレアンドリン含有SCF抽出物が、より多数の生存ニューロンを提供する点から、KW6002(アデノシン2a受容体アンタゴニスト)よりも有効であることを示している。従って、本発明は、ハンチントン病によって引き起こされる活性の減少からニューロンを保護する方法であって、ハンチントン病の特徴を示すニューロンを有効量のオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物へ曝し、活性の減少を最小限にし、活性の減少率を減らし、活性の減少を停止し、活性の減少の開始を遅らせる工程を含む方法を提供する;及び/又はハンチントン病によって引き起こされるニューロンの正常な機能。
【0054】
実施例13は、脳卒中後の遅延期間の完了後の対象者における脳卒中の治療における強心配糖体の効能を評価するためのモデルとして使用した例示的な脳スライスアッセイを詳述する。酸素グルコース欠乏を用いての脳スライスアッセイを、本明細書に記載される通りに行い;しかし、脳スライスを強心配糖体で予防的に処理したのではなく、それらを0、1、2、4、及び6時間の遅延期間後に強心配糖体で処理した。図5に要約されるデータは、強心配糖体、例えば、オレアンドリン又はオレアンドリンを含有するSCF抽出物が、脳卒中後1時間まで、2時間まで、3時間まで、4時間まで、5時間まで、約6時間までの遅延期間の間、著しい神経保護を提供する点で有効であることを実証している。
【0055】
従って、本発明は、対象者が脳卒中に罹った後の対象者へ強心配糖体の用量の投与によって対象者における脳卒中を治療する時間遅延方法を提供する。対象者が脳卒中に罹った後の受容可能な遅延期間内に、初期用量の強心配糖体が初期投薬計画に従って投与される。次いで、強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性が決定される。対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、強心配糖体での治療が、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて継続される。あるいは、対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる。投薬頻度又は用量投与の全期間の変化などの、投薬計画の変化と共に、用量の段階的な増加又は段階的な減少が行われ得る。
【0056】
OGD前に脳組織を強心配糖体で処理する条件下で、本明細書中の脳スライスアッセイのいくつかを行う。それらの条件下で、データは、脳卒中によって引き起こされる損傷に対して神経保護を予防的に提供する使用される強心配糖体の有用性を確立している。
【0057】
臨床医が強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせで神経学的状態を有する対象者を治療しようとし、対象者が有する特定の神経学的状態が該1つ又はそれ以上の他の治療剤での治療に対して少なくとも部分的に治療反応性であることが公知である場合、本方法発明は、以下を含む:治療的に適切な用量の強心配糖体及び治療的に適切な用量の該1つ又はそれ以上の他の治療剤をその必要がある対象者へ投与する工程、ここで、強心配糖体は第1投薬計画に従って投与され、1つ又はそれ以上の他の治療剤は第2投薬計画に従って投与される。ある実施態様において、第1及び第2投薬計画は同一である。ある実施態様において、第1及び第2投薬計画は異なる。
【0058】
治療される神経学的状態がアルツハイマー病である場合、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、BACE阻害剤又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤からなる群より選択され得る。ある実施態様において、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、ナメンダ(Namenda)(商標)(メマンチンHCl)、アリセプト(商標)(ドネペジル)、ラザダイン(Razadyne)(商標)(ガランタミン)、エクセロン(商標)(リバスチグミン)、及びコグネックス(Cognex)(商標)(タクリン)からなる群より選択され得る。
【0059】
治療される神経学的状態がハンチントン病である場合、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、天然産物、抗痙攣薬、NMDA(n−メチルd−アスパルテート)受容体アンタゴニスト、及びナトリウムチャネル遮断薬からなる群より選択され得る。例示的な薬剤としては、ビタミンE、バクロフェン(Baclofen)(CoQ10の誘導体)、ラモトリギン(Lamotrigine)(抗痙攣薬)、レマセミド(低親和性NMDAアンタゴニストである麻酔薬)、及びリルゾール(Naチャネル遮断薬)が挙げられる。これらの薬剤の各々の効能は単独では低いと考えられ(Mestre T. et al, Chochrane Database Systematic Reviews July 8, 2009; 8(3):
CD006455);しかし、1つ又はそれ以上のこれらの他の薬物を受ける対象者へのオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物を含有する投薬形態の投与は、神経学的障害を有する対象者に、これらの薬剤を欠くオレアンドリンの投与と比較して改善された臨床効果を提供することが、予想される。
【0060】
治療される神経学的状態が脳卒中仲介虚血性脳損傷(虚血性脳卒中)である場合、文献(Gutierrez M. et al. “Cerebral protection, brain repair, plasticity and cell therapy in ischemic stroke” Cerebrovasc. Dis. 2009; 27 Suppl 1:177−186)に開示される治療処置、例えば、静脈内血栓溶解が、本発明のオレアンドリン又はオレアンドリン抽出物に基づく方法に加えて用いられ得る。ある実施態様において、1つ又はそれ以上の他の治療剤は、アルテプラーゼ(Alteplase)(血栓溶解剤)などの薬物からなる群より選択され得る。
【0061】
1つ又はそれ以上の他の治療剤は、治療的に有効であると臨床医により認識される用量で及び投薬計画に従って、又はサブ治療的に有効であると臨床医により認識される用量で、投与され得る。強心配糖体と1つ又はそれ以上の他の治療剤との組み合わせの投与によって提供される臨床的利益及び/又は治療効果は、相加的又は相乗的であり得、このような利益又は効果のレベルは、組み合わせの投与を個々の強心配糖体及び1つ又はそれ以上の他の治療剤の投与と比較することによって決定される。1つ又はそれ以上の他の治療剤は、食品医薬品局、世界保健機関、欧州医薬品庁(E.M.E.A.)、治療製品局(Therapeutic Goods Administration)(TGA、オーストラリア)、全米保健機構(PAHO)、医薬医療器具管理局(Medicines and Medical Devices Safety Authority)(Medsafe、ニュージーランド)、又は世界中の様々な厚生省によって提案又は記載される用量で及び投薬計画に従って投与され得る。
【0062】
強心配糖体は、Na,K−ATPアーゼ結合活性及び/又はHIF−1α(低酸素誘導因子α)結合活性を有することが公知の任意の強心配糖体であり得る。強心配糖体は、血液脳関門を通過し、投与後長時間の間、脳組織中に保持されることができる。この点に関して、強心配糖体は、組織結合及び結果として生じる低クリアランス速度に起因して、強心配糖体の投与後少なくとも8時間、脳中に保持される。
【0063】
強心配糖体は、純粋な形態で又は1つ又はそれ以上の他の化合物の混合物として存在し得る。強心配糖体は抽出物として存在し得る。抽出物は、超臨界流体(SCF)二酸化炭素(CO2)抽出によって作製され得るか、又はこのような抽出物の化学修飾形態であり得る(例えば、エタノールを含むか又はSCF CO2及びエタノールを使用して作製された抽出物;実施例1)。抽出物は、有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール又は他のこのような溶媒での植物材料の抽出によって得ることができる。抽出物は、植物又は動物材料から得ることができる。動物材料は、ヒキガエル(例えば、ブフォ・ブフォ(Bufo bufo))の滲出物であり得る。植物材料は、ネリウム・オレアンダーなどのネリウム種、又はテベティア・ネリイフォリア若しくはテベティア・プルビアナ(Thevetia puruviana)(そうでなければイエローオレアンダーとして公知)などのテベティア種から得られるような植物マスであり得る。抽出プロセスは、これらの全開示が参照により本明細書に組み入れられる、Addingtonの名前で2005年2月15日に出願された現在係属中の米国仮出願第60/653,210号又はAddingtonの名前で2006年1月26日に出願された米国出願第11/340,016号、Addingtonの名前で2006年7月28日に出願された米国出願第11/191,650号、(2008年7月22日に発行された、現在の米国特許第7,402,325号)、又は2006年7月26日に出願されたPCT国際特許出願第PCT/US06/29061号において記載されたプロセスに従って、又は本明細書に記載されたプロセスによって、作製されたネリウム・オレアンダーの葉の乾燥粉末に対して行われ得る。
【0064】
本明細書において使用される場合、用語「オレアンドリン」は、特に明記しない限り、オレアンドリンの全ての公知の形態を意味するように解釈される。オレアンドリンは、ラセミ体の、光学的に純粋な又は光学的に富んだ形態で存在し得る。ネリウム・オレアンダー植物材料は、例えば、Aldridge Nursery, Atascosa, Texasなどの市販植物供給業者から得ることができる。
【0065】
本発明者らの研究は、オレアンドリンがBBBを通過し、いったん脳組織中にあると長時間の間そこに存在する良好な能力を有することを示した。即ち、脳中におけるオレアンドリンの滞留時間は、実験動物の血漿からのこの分子のクリアランスを考えて予想されるものよりも長い。従って、脳中におけるオレアンドリンの比較的長い滞留時間は、ジゴキシンなどの水溶性強心配糖体と比較してこの脂溶性強心配糖体の明白な利点を提供する。
【0066】
抽出物は、強心配糖体含有植物マスの改変(例えば、エタノール)又は未改変超臨界流体抽出によって得ることができる。臨界流体抽出物は、抽出物が対象者へ投与される場合に強心配糖体の治療効能に寄与する、少なくとも1つの他の強心配糖体薬理学的活性薬剤及び/又は少なくとも1つの他の非強心配糖体薬理学的活性薬剤を含み得る。それは強心配糖体の治療効能に相加的に又は相乗的に寄与し得る。本明細書において使用される場合、用語「非強心配糖体薬理学的活性薬剤」(又は成分)は、強心配糖体ではない化合物を意味する。
【0067】
抽出物は、種々の異なるプロセスによって製造され得る。抽出物は、Huseyin Ziya Ozel博士によって開発されたプロセスに従って製造され得る(米国特許第5,135,745号に、水中で植物の抽出物を製造する手順が述べられている)。伝えられるところでは、水性抽出物は、分子量が2KDから30KDまで変わる幾つかの多糖類、オレアンドリン及びオレアンドリゲニン、オドロシド及びネリタロシドを含有する。伝えられることろでは、多糖類は、酸性ホモポリガラクツロナン又はアラビノガラツロナン(arabinogalaturonan)を含有する。Selvarajらの米国特許第5,869,060号はネリウム種の熱水抽出物及びその製造方法を開示している;例えば、実施例2。得られた抽出物は粉末を製造するために次いで凍結乾燥され得る。米国特許第6,565,897号(Selvarajらの米国付与前公告第20020114852号及びPCT国際公開公報第WO2000/016793号)は、実質的に無菌の抽出物を製造するための熱水抽出プロセスを開示している。Erdemogluら(J. Ethnopharmacol. (2003) Nov. 89(1), 123−129)は、抗侵害受容及び抗炎症活性に基づくネリウム・オレアンダーを含む植物の水性及びエタノール抽出物の比較についての結果を開示している。ネリウム・オレアンダーの有機溶媒抽出物が、Adomeら(Afr. Health Sci. (2003) Aug. 3(2), 77−86;エタノール抽出物)、el−Shazlyら(J. Egypt Soc. Parasitol. (1996), Aug. 26(2), 461−473;エタノール抽出物)、Begumら(Phytochemistry (1999) Feb. 50(3), 435−438;メタノール抽出物)、Ziaら(J. Ethnolpharmacol. (1995) Nov. 49(1), 33−39;メタノール抽出物)及びVlasenkoら(Farmatsiia. (1972) Sept.−Oct. 21(5), 46−47;アルコール抽出物)によって開示されている。Singhらの米国付与前特許出願公開公報第20040247660号は、癌の治療において使用するための、オレアンドリンのタンパク質安定化リポソーム製剤の製造を開示している。Singhらの米国付与前特許出願公開公報第20050026849号は、シクロデキストリンを含有するオレアンドリンの水溶性製剤を開示している。Singhらの米国付与前特許出願公開公報第20040082521号は、熱水抽出物からのオレアンドリンのタンパク質安定化ナノ粒子製剤の製造を開示している。
【0068】
SCF抽出は、植物マスからの所望の化合物の抽出を高めるために、エタノールなどの、超臨界流体中においてモディファイヤーの存在下で行われ得る。モディファイヤーは、超臨界流体のそれと抽出される化合物のそれとの間の揮発性を一般的に有し、それらは超臨界流体と混和性でなければならない。ある実施態様において、モディファイヤーは、周囲条件で液体である。例としてかつ非限定的に、モディファイヤーは、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレンなどからなる群より選択され得る。
【0069】
抽出物は、薬理学的に活性な化合物、例えば、オレアンドリン又は他の強心配糖体、オレアシド、及び他の植物材料の混合物である。超臨界流体プロセス由来のオレアンドリン抽出物は、質量で0.9%〜2.5%の理論範囲のオレアンドリンを含有する。様々な量のオレアンドリンを含むSCF抽出物が得られた。一実施態様において、SCF抽出物はオレアンドリンを約2質量%含む。
【0070】
SCF抽出物は、様々な成分の混合物を含み得る。それらの成分のいくつかとしては、オレアンドリン、オレアシドA、オレアンドリゲニン、ネリタロシド、オドルシド(odorside)(Wang X, Plomley JB, Newman RA and Cisneros A. LC/MS/MS analyses of an oleander extract for cancer treatment, Analytical Chem. 72: 3547−3552, 2000)、及び他の未同定成分が挙げられる。SCF抽出物のSCF抽出可能な未同定成分は、SCF抽出物中のオレアンドリンの効能に寄与する少なくとも1つの他の強心配糖体薬理学的活性成分及び/又は少なくとも1つの他の非強心配糖体薬理学的活性成分を含み得る。即ち、少なくとも1つの他のSCF抽出可能成分は、観察される効能を提供するためにオレアンドリンと相加的に又は相乗的に機能する。
【0071】
オレアンドリン又はオレアンドリン及び1つ又はそれ以上の他の薬理学的に活性な成分(強心配糖体及び/又は非強心配糖体)を含む抽出物は神経保護を提供し得ることが測定された。従って、本発明のSCF抽出物は、神経保護を提供する、それら自体が強心配糖体又は非強心配糖体であり得る、1つ又はそれ以上の他の生物学的に活性な成分及びオレアンドリンを含む(又はから本質的になる)。
【0072】
SCF抽出物中の、オレアンドリン以外の、1つ又はそれ以上の生物学的に活性な成分の存在のさらなる証拠が、純粋なオレアンドリンを含有する水溶液対SCF抽出物を含有するものについての濃度−反応曲線を比較することによって得られた。図1Dは、実施例11に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおける純粋なオレアンドリンを含有する水溶液についての濃度−反応アッセイの結果を示す。水溶液中のオレアンドリン濃度を0.0069から230μg/mlへ変えた。
【0073】
図1Eは、本明細書に記載される神経保護脳スライスベース「脳卒中」アッセイにおけるオレアンドリン含有SCF抽出物についての濃度−反応アッセイの結果を示す。データは、抽出物が純粋なオレアンドリンよりも効果的であることを実証し、これは、神経保護を提供する1つ又はそれ以上の薬理学的活性薬剤を抽出物が含有することを意味している。
【0074】
抽出物はまた、本明細書に含まれるアッセイにおける効能によって決定されるようなそれらの相対的パフォーマンスにおいて異なる場合がある。そうであっても、治療的に適切な用量を製造し得るために、もし強心配糖体が抽出物中に十分に高い量又は濃度で存在するならば、その抽出物は本発明の部分と考えられる。
【0075】
強心配糖体は、任意の適切な薬学的に許容される投薬形態に処方され得る。非経口、耳、眼、鼻、吸入、頬側、舌下、腸内、局所、経口、経口的、及び注射可能な投薬形態が特に有用である。特定の投薬形態としては、固体又は液体投薬形態が挙げられる。例示的で適切な投薬形態としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、カプレット剤、トローチ剤、小袋(sache)、液剤、懸濁剤、ディスパージョン、バイアル、バッグ、ボトル、注射可能な液剤、i.v.(静脈内)、i.m.(筋内)又はi.p.(腹腔内)投与可能な液剤、及び薬学における当業者に公知の他のこのような投薬形態が挙げられる。
【0076】
本発明の用量に組み入れられる強心配糖体の量は、少なくとも1つ又はそれ以上の投薬形態であり、薬学の公知の原理に従って選択され得る。有効量又は治療的に適切な量の治療用化合物が具体的に熟慮される。用語「有効量」によって、例えば、医薬品に関しては、薬学的に有効な量が熟慮されていることが理解される。薬学的に有効な量は、要求される又は望ましい治療応答に対して十分である有効成分の量又は分量、又は言い換えれば、患者に投入されたときに、明らかな生物学的応答を誘発するために十分である量である。明らかな生理学的応答が、活性物質の単独又は複数の用量の投与の結果として生じ得る。用量は、1つ又はそれ以上の投薬形態を含み得る。如何なる患者に対する特定の用量レベルも、治療される適応症、適応症の重症度、患者の健康、年齢、性別、体重、食事、薬理学的応答、採用される特定の投薬形態、及びその他のこのような因子を含む種々の因子に依存することが理解される。
【0077】
僅か1個のそして10個もの数の投薬形態が投与され得るが、経口投与についての所望の用量は、5個までの投薬形態である。例示的な投薬形態は、1投薬形態当たりSCF抽出物を0.6 mg含有し、1用量当たり計0.6〜60 mg(1〜10用量レベル)である。
【0078】
強心配糖体は、12〜1200 ug、又はそれより多い又は少ないオレアンドリンの初期用量を対象者に提供するために十分な量で投薬形態中に存在し得る。投薬形態は、オレアンドリン、オレアンドリン抽出物、又はオレアンドリンを含有するネリウム・オレアンダーの抽出物を0.01〜100 mg含み得る。
【0079】
哺乳動物の治療における使用について、強心配糖体は投薬形態中に含まれ得る。投薬形態のある実施態様は、腸溶コーティングされておらず、強心配糖体のそれらのチャージを0.5〜1時間以内の期間内で放出する。投薬形態のある実施態様は、腸溶コーティングされており、強心配糖体のそれらのチャージを、空腸、回腸、小腸、及び/又は大腸(結腸)からなど、胃の下流で放出する。腸溶コーティングされた投薬形態は、経口投与後1〜10時間以内に体循環中へ強心配糖体を放出する。
【0080】
予備動物投薬データに基づけば、オレアンダー抽出物の投与用量の50〜75%が経口的に生物学的利用可能であることが予想され、従って、投薬形態当たりオレアンドリン0.25〜0.4 mg、0.1〜50 mg、0.1〜40 mg、0.2〜40 mg、0.2〜30 mg、0.2〜20 mg、0.2〜10 mg、0.2〜5 mg、0.2〜2.5 mg、0.2〜2 mg、0.2〜1.5 mg、0.2〜1 mg、0.2〜0.8 mg、0.2〜0.7、又は0.25〜0.5 mgが提供される。成人における平均血液容量を5リットルとすると、予想されるオレアンドリン血漿中濃度は、0.05〜2 ng/ml、0.005〜10 ng/mL、0.005〜8 ng/mL、0.01〜7 ng/mL、0.02〜7 ng/mL、0.03〜6 ng/mL、0.04〜5 ng/mL、又は0.05〜2.5 ng/mLの範囲内にある。SCF抽出物中に存在する、オレアンドリンの推奨される日用量は、一般的に、約0.25〜約50 mgを1日2回又は約0.9〜5 mgを1日2回若しくは約12時間ごとである。用量は、約0.5〜約100 mg/日、約1〜約80 mg/日、約1.5〜約60 mg/日、約1.8〜約60 mg/日、約1.8〜約40 mg/日であり得る。最大耐用量は、約100 mg/日、約80 mg/日、約60 mg/日、約40 mg/日、約38.4 mg/日又は約30 mg/日の、オレアンドリンを含有するオレアンダー抽出物であり得、最小有効用量は、約0.5 mg/日、約1 mg/日、約1.5 mg/日、約1.8 mg/日、約2 mg/日、又は約5 mg/日であり得る。
【0081】
本明細書中の化合物は本発明の製剤において1つ又はそれ以上の機能を有し得ることが注意されるべきである。例えば、化合物は、界面活性剤及び水混和性溶媒の両方として、又は界面活性剤及び水非混和性溶媒の両方として、役立ち得る。
【0082】
液体組成物は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される液体担体を含み得る。液体担体は、水性、非水性、極性、非極性、及び/又は有機担体であり得る。液体担体としては、例としてかつ非限定的に、水混和性溶媒、水非混和性溶媒、水、緩衝液及びそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
本明細書において使用される場合、用語「水溶性溶媒」又は「水混和性溶媒」は、これらの用語は交換可能に使用されるが、水と二相混合物を形成しないか又は水に十分に可溶性であり、液相を分離することなく少なくとも5パーセントの溶媒を含有する水性溶媒混合物を提供する有機液体を指す。溶媒は、ヒト又は動物への投与に適している。例示的な水溶性溶媒としては、例としてかつ非限定的に、PEG(ポリ(エチレングリコール))、PEG400(分子量約400程度を有するポリ(エチレングリコール))、エタノール、アセトン、アルカノール、アルコール、エーテル、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、ポリ(プロピレングリコール)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン))、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ピリジン、プロパノール、N−メチルアセトアミド、ブタノール、ソルフォール(soluphor)(2−ピロリドン)、ファルマソルブ(N−メチル−2−ピロリドン)が挙げられる。
【0084】
本明細書において使用される場合、用語「水不溶性溶媒」又は「水非混和性溶媒」は、これらの用語は交換可能に使用されるが、水と二相混合物を形成するか又は水中の溶媒濃度が5パーセントを超える場合に相分離する有機液体を指す。溶媒は、ヒト又は動物への投与に適している。例示的な水不溶性溶媒としては、例としてかつ非限定的に、中/長鎖
トリグリセリド、油、ヒマシ油、トウモロコシ油、ビタミンE、ビタミンE誘導体、オレイン酸、脂肪酸、オリーブ油、ソフチザン645(ジグリセリルカプリレート/カプレート/ステアレート/ヒドロキシステアレートアジペート)、ミグリオール、キャプテックス(captex)(Captex350:グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレートトリグリセリド;Captex 355:グリセリルトリカプリレート/カプレートトリグリセリド;Captex 355 EP/NF:グリセリルトリカプリレート/カプレート中鎖トリグリセリド)が挙げられる。
【0085】
適切な溶媒は、“International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use (ICH) guidance for industry Q3C Impurities: Residual Solvents” (1997)に列挙されており、これは、医薬中でどれ位の量の残留溶媒が安全であると考えられるかについて推奨している。例示的な溶媒はクラス2又はクラス3溶媒として列挙される。クラス3溶媒としては、例えば、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル(tert−butlymethyl ether)、クメン、エタノール、エチルエーテル、酢酸エチル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、又は酢酸プロピルが挙げられる。
【0086】
本発明において水非混和性溶媒として使用され得る他の物質としては、以下が挙げられる:Captex 100:プロピレングリコールジカプレート;Captex 200:プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート;Captex 200P:プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート;プロピレングリコールジカプリロカプレート;Captex 300:グリセリルトリカプリレート/カプレート;Captex 300 EP/NF:グリセリルトリカプリレート/カプレート中鎖トリグリセリド;Captex 350:グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレート;Captex 355:グリセリルトリカプリレート/カプレート;Captex 355 EP/NF:グリセリルトリカプリレート/カプレート中鎖トリグリセリド;Captex 500:トリアセチン;Captex 500P:トリアセチン(医薬グレード);Captex 800:プロピレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート(2−Ethythexanoate));Captex 810 D:グリセリルトリカプリレート/カプレート/リノレート;Captex 1000:グリセリルトリカプレート;Captex CA:中鎖トリグリセリド;Captex MCT−170:中鎖トリグリセリド;Capmul GMO:グリセリルモノオレエート;Capmul GMO−50 EP/NF:グリセリルモノオレエート;Capmul MCM:中鎖モノ及びジグリセリド;Capmul MCM C8:グリセリルモノカプリレート;Capmul MCM C10:グリセリルモノカプレート;Capmul PG−8:プロピレングリコールモノカプリレート;Capmul PG−12:プロピレングリコールモノラウレート;Caprol 10G10O:デカグリセロールデカオレエート;Caprol 3GO:トリグリセロールモノオレエート;Caprol ET:混合脂肪酸のポリグリセロールエステル;Caprol MPGO:ヘキサグリセロールジオレエート;Caprol PGE 860:デカグリセロールモノ−,ジオレエート。
【0087】
本明細書において使用される場合、「界面活性剤」は、極性又は帯電親水性部分並びに無極性疎水性(親油性)部分を含む化合物を指し;即ち、界面活性剤は両親媒性である。用語、界面活性剤は、化合物の1つ又は混合物を指し得る。界面活性剤は、可溶化剤、乳化剤又は分散剤であり得る。界面活性剤は、親水性又は疎水性であり得る。
【0088】
親水性界面活性剤は、薬学的組成物における使用に適した任意の親水性界面活性剤であり得る。このような界面活性剤は、非イオン性親水性界面活性剤が現在好ましいが、アニオン性、カチオン性、両性イオン性又は非イオン性であり得る。上記で議論したように、これらの非イオン性親水性界面活性剤は、約10を超えるHLB値を一般的に有する。親水性界面活性剤の混合物も本発明の範囲内にある。
【0089】
同様に、疎水性界面活性剤は、薬学的組成物における使用に適した任意の疎水性界面活性剤であり得る。一般的に、適切な疎水性界面活性剤は、約10未満のHLB値を有する。疎水性界面活性剤の混合物も本発明の範囲内にある。
【0090】
さらなる適切な可溶化剤の例としては、アルコール及びポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びそれらの異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体;約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール(glycofurol)、商品名テトラグリコール(Tetraglycol)の下でBASFから市販)又はメトキシPEG(Union Carbide);アミド、例えば、2−ピロリドン、2−ピペリドン、カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、及びポリビニルピロリドン(polyvinypyrrolidone);エステル、例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、カプロラクトン及びその異性体、バレロラクトン及びその異性体、ブチロラクトン及びその異性体;並びに当技術分野において公知の他の可溶化剤、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(アラソルブ(Arlasolve)DMI(ICI))、N−メチルピロリドン(ファルマソルブ(Pharmasolve)(ISP))、モノオクタノイン、ジエチレングリコールノノエチルエーテル(商品名トランスクトール(Transcutol)の下でGattefosseから入手可能)、及び水が挙げられる。可溶化剤の混合物も本発明の範囲内にある。
【0091】
示された場合を除いて、本明細書に記載された化合物は、標準市販供給源から容易に入手可能である。
【0092】
透明液体組成物は、組成物の全質量に基づいて5質量%未満、3質量%未満、又は1質量%未満の懸濁固体を含有するので、肉眼には視覚的に透明である。
【0093】
必要ではないが、本発明の組成物又はキットは、キレート化剤、保存剤、抗酸化剤、吸着剤、酸性化剤、アルカリ化剤、消泡剤、緩衝剤、着色剤、電解質、塩、安定剤、張度調節剤、希釈剤、他の薬学的賦形剤、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0094】
本明細書において使用される場合、用語「抗酸化剤」は、酸化を抑制し従って酸化プロセスによる調製物の劣化を防止するために使用される薬剤を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、アスコルビン酸、アスコルビックパルミタート(ascorbic palmitate)、ビタミンE、ビタミンE誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び当業者に公知の他のこのような物質が挙げられる。
【0095】
本明細書において使用される場合、用語、キレート化剤は、溶液中の金属イオンをキレートする化合物を意味するように意図される。例示的なキレート化剤としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸テトラナトリウム)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸ペンタナトリム)、HEDTA(N−(ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸のトリナトリウム塩)、NTA(ニトリロ三酢酸トリナトリウム)、ジナトリウムエタノールジグリシン(Na2EDG)、ナトリウムジエタノールグリシン(DEGNa)、クエン酸、及び当業者に公知の他の化合物が挙げられる。
【0096】
本明細書において使用される場合、用語「吸着剤」は、物理的又は化学的(化学吸着)手段によってその表面上に他の分子を保持することができる薬剤を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、粉末化された及び活性化された炭、及び当業者に公知の他の物質が挙げられる。
【0097】
本明細書において使用される場合、用語「アルカリ化剤」は、アルカリ性媒体を提供するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、及びトロラミン、並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0098】
本明細書において使用される場合、用語「酸性化剤」は、酸性媒体を提供するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、酢酸、アミノ酸、クエン酸、フマル酸及び他のα−ヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸、及び硝酸、並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0099】
本明細書において使用される場合、用語「消泡剤」は、充填組成物の表面上に生じる発泡を防ぐか又が発泡の量を減らす化合物を意味するように意図される。適切な消泡剤としては、例としてかつ非限定的に、ジメチコーン、SIMETHICONE、オクトキシノール及び当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0100】
本明細書において使用される場合、用語「緩衝剤」は、酸又はアルカリの希釈又は添加時のpHの変化に耐えるために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基性酢酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウム無水物及び脱水物、並びに当業者に公知の他のこのような物質が挙げられる。
【0101】
本明細書において使用される場合、用語「希釈剤」又は「充填剤」は、錠剤及びカプセルの製造において、所望のバルク、流動性及び圧縮特性を与えるために充填剤として使用される不活性物質を意味するように意図される。このような化合物には、例としてかつ非限定的に、二塩基性リン酸カルシウム、カオリン、ラクトース、スクロース、マンニトール、微結晶性セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、ソルビトール、及び澱粉、並びに当業者に公知の他の物質が挙げられる。
【0102】
本明細書において使用される場合、用語「保存剤」は、微生物の増殖を妨げるために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、ミリスチルガンマピコリニウムクロリド、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チモール、及びメチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン、並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0103】
本明細書において使用される場合、用語「着色剤」は、医薬品に色を付与するために使用される化合物を意味するように意図される。このような化合物としては、例としてかつ非限定的に、FD&CレッドNo.3、FD&CレッドNo.20、FD&CイエローNo.6、FD&CブルーNo.2、FD&CグリーンNo.5、FD&CオレンジNo.5、FD&CレッドNo.8、カラメル及び酸化鉄(黒、赤、黄)、他のFD&C色素、及び天然着色剤、例えば、ブドウ皮抽出物、ビートの赤色粉末、β−カロテン、アナトー、カルミン、ウコン、パプリカ、それらの組み合わせ、並びに当業者に公知の他のこのような物質が挙げられる。
【0104】
本明細書において使用される場合、用語「安定剤」は、もし使用しなければ薬剤の治療活性を低減する物理的、化学的、又は生化学的プロセスに対して活性薬剤を安定化するために使用される化合物を意味するように意図される。適切な安定剤としては、例としてかつ非限定的に、アルブミン、シアル酸、クレアチニン、グリシン及び他のアミノ酸、ナイアシンアミド、ナトリウムアセチルトリプトホネート(sodium acetyltryptophonate)、酸化亜鉛、スクロース、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、カプリル酸ナトリウム及びサッカリンナトリウム並びに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0105】
本明細書において使用される場合、用語「張度調節剤」は、液体製剤の張度を調節するために使用され得る化合物を意味するように意図される。適切な張度調節剤としては、グリセリン、ラクトース、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、及び当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0106】
本発明の組成物はまた、油、例えば、不揮発性油、落花生油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油及びオリーブ油;脂肪酸、例えば、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸;並びに脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド及びアセチル化脂肪酸グリセリドを含み得る。組成物はまた、アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール及びプロピレングリコール;グリセロールケタール、例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール;エーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)450;石油炭化水素、例えば、鉱油及びペトロラタム;水;薬学的に適切な界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤;又はそれらの混合物を含み得る。
【0107】
薬学的製剤の技術分野において使用される化合物は、一般的に種々の機能又は目的に役立つことが理解される。従って、本明細書において名前を挙げられた化合物が、本明細書において2つ以上の用語を定義するために使用されるか又は一度だけ記載されるならば、その目的又は機能は、その名前を挙げられた目的又は機能のみに限定されないと解釈されるべきである。
【0108】
製剤の1つ又はそれ以上の成分は、その遊離塩基又は薬学的に又は分析的に許容される塩形態で存在し得る。本明細書において使用される場合、「薬学的に又は分析的に許容される塩」は、イオン結合対を形成するために必要に応じてそれを酸と反応させることによって修飾された化合物を指す。許容される塩の例としては、例えば非毒性無機又は有機酸から、形成される従来の非毒性塩が挙げられる。適切な非毒性塩としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸及び当業者に公知の他のものから誘導されるものが挙げられる。塩は、有機酸、例えば、アミノ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、及び当業者に公知の他のものから作製される。他の適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th. ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985, p. 1418において見られ、この関連する開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0109】
句「薬学的に許容される」は、本明細書において、正しい医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適しており、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他のいずれかの問題若しくは合併症なしで、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合っている、それらの化合物、物質、組成物及び/又は投薬形態を指すために本明細書において用いられる。
【0110】
投薬形態は、製薬産業において公知の任意の従来の手段によって作製され得る。液体投薬形態は、容器中に少なくとも1つの液体担体及びオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物を提供することによって作製され得る。1つ又はそれ以上の他の賦形剤が液体投薬形態中に含まれ得る。固体投薬形態は、少なくとも1つの固体担体及びオレアンドリン又はオレアンドリン含有抽出物を提供することによって作製され得る。1つ又はそれ以上の他の賦形剤が固体投薬形態中に含まれ得る。
【0111】
投薬形態は、従来の包装装置及び材料を使用して包装され得る。それは、パック、ボトル、バイアル(via)、バッグ、注射器、包み、パケット、ブリスターパック、箱、アンプル、又は他のこのような容器中に含められ得る。
【0112】
本発明は、神経学的状態を有する対象者の集団中の統計的に有意な数の対象者の臨床状態を改善するための方法であって、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を対象者の集団へ投与する工程;及び対象者の臨床状態を測定する工程を含む方法を含む。ある実施態様において、統計的に有意な数は、集団の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%である。ある実施態様において、組成物は、オレアンドリン、又はオレアンドリンを含む抽出物を含む。抽出物は、対象者の臨床状態を改善するためにオレアンドリンと協力する1つ又はそれ以上の他の薬理学的に活性な化合物を場合により含む。
【0113】
本明細書において使用される場合、「誘導体」は、a)第1化学物質と構造的に関連しそれから理論的に誘導可能である化学物質;b)第1化合物の1つの原子が別の原子又は原子団で置換される場合、類似する第1化合物から形成される化合物又は別の第1化合物から生じることが想像され得る化合物;c)親化合物から誘導されるか又は得られかつ親化合物の本質的な要素を含む化合物;又はd)1つ又はそれ以上の工程で同様の構造の第1化合物から生成され得る化学化合物である。
【0114】
上記の説明及び下記の実施例を考慮して、当業者は、過度の実験なしに、特許請求される本発明を実施することができる。前述のことは、本発明の実施態様の製造について特定の手順を詳述する下記の実施例を参照して、より十分に理解される。これらの実施例に対して行われる全ての参照は、説明を目的とする。以下の実施例は、網羅的とみなされるべきではなく、本発明によって企図される多くの実施態様のうちのいくつかのみを単に説明しているとみなされるべきである。
【0115】
オレアンドリンは、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO)から購入され得る。
【実施例】
【0116】
実施例1
粉末状のオレアンダーの葉の超臨界流体抽出
方法A.二酸化炭素を用いて
オレアンダーの葉材料を収集、洗浄及び乾燥し、次いでオレアンダーの葉材料を粉砕及び脱水装置、例えば米国特許第5,236,132号、第5,598,979号、第6,517,015号及び第6,715,705号に記載されるものに通過させることによって、粉末状のオレアンダーの葉を製造した。使用した出発材料の質量は、3.94kgであった。
【0117】
抽出装置中、圧力300 bar(30MPa,4351psi)及び温度50℃(122°F)で出発材料を純粋なCO2と合わせた。合計197kgのCO2を使用して、溶媒対原材料の比率を50:1にした。次いで、CO2及び原材料の混合物を分離装置に通過させ、ここで混合物の圧力及び温度を変えて二酸化炭素から抽出物を分離した。
【0118】
良い芳香を有する褐色がかった粘着性の粘稠材料として抽出物(65g)が得られた。色は、おそらく葉緑素によって生じた。正確な収率測定のため、管及び分離器をアセトンですすぎ、アセトンを蒸発させて追加の抽出物9gを得た。全抽出物量は74gであった。出発材料の質量に基づいて、抽出物の収率は1.88%であった。抽出物中のオレアンドリン含量は、高圧液体クロマトグラフィー及び質量分析法を用いて算出し、560.1mg、即ち、収率0.76%であった。
【0119】
方法B.二酸化炭素及びエタノールの混合物を用いて
オレアンダーの葉材料を収集、洗浄及び乾燥し、次いでオレアンダーの葉材料を粉砕及び脱水装置、例えば米国特許第5,236,132号、第5,598,979号、第6,517,015号及び第6,715,705号に記載されるものに通過させることによって、粉末状のオレアンダーの葉を製造した。使用した出発材料の質量は、3.85kgであった。
【0120】
抽出装置中、圧力280bar(28MPa,4061psi)及び温度50℃(122°F)で、出発材料を純粋なCO2及びモディファイヤーとしての5%エタノールと合わせた。合計CO2160kg及びエタノール8kgを使用して、溶媒対原材料の比率を43.6対1にした。次いで、CO2、エタノール及び原材料の混合物を分離装置に通過させ、ここで混合物の圧力及び温度を変えて二酸化炭素から抽出物を分離した。
【0121】
エタノールを除去した後、明らかに若干の葉緑素を含有する濃緑色で粘着性の粘稠な塊として抽出物(207g)が得られた。出発材料の質量に基づき、抽出物の収率は5.38%であった。抽出物中のオレアンドリン含量は、高圧液体クロマトグラフィー及び質量分析法を用いて算出し、1.89g、即ち、収率2.1%であった。
【0122】
実施例2
粉末状のオレアンダーの葉の熱水抽出
熱水抽出は、通常、オレアンダーの葉からオレアンドリン及び他の活性成分を抽出するために使用される。熱水抽出方法の例は、米国特許第5,135,745号及び第5,869,060号に見られ得る。
【0123】
粉末状のオレアンダーの葉5gを使用して、熱水抽出を行った。沸騰水10容積(オレアンダー出発材料の質量による)を粉末状のオレアンダーの葉へ添加し、混合物を6時間、常に撹拌した。次いで、混合物を濾過し、葉の残留物を集め、同一の条件下で再び抽出した。濾液を合わせて凍結乾燥した。抽出物の外観は、褐色であった。乾燥した抽出物材料は、質量約1.44gであった。抽出物材料34.21mgを水に溶解し、高圧液体クロマトグラフィー及び質量分析法を用いてオレアンドリン含量分析に供した。オレアンドリンの量を測定し、3.68mgであった。抽出物の量に基づくオレアンドリン収率を算出し、0.26%であった。下の表は、実施例1の2つの超臨界二酸化炭素抽出及び熱水抽出についてのオレアンドリン収率の比較を示している。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例3
アルツハイマー病を含むがこれに限定されない神経学的状態の治療
方法A.強心配糖体療法
アルツハイマー病を示す対象者に強心配糖体を処方し、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ治療的に適切な用量を投与した。治療反応の対象者のレベルを定期的に測定した。治療反応のレベルがある用量で低すぎた場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させた。強心配糖体での対象者の治療を必要に応じて継続し、用量又は投薬計画は、患者が所望の臨床的エンドポイントに達するまで必要に応じて調節され得た。
【0126】
方法B.併用療法:強心配糖体及び別の薬剤
アルツハイマー病又はその症状の治療用の1つ又はそれ以上の他の治療剤を対象者に処方及び投与したこと以外、上記方法Aに従った。その場合、1つ又はそれ以上の他の治療剤を強心配糖体の前、後又はと共に投与することができた。1つ又はそれ以上の他の治療剤の用量の段階的な増加(又は段階的な減少)も行うことができた。適切な1つ又はそれ以上の他の治療剤としては、ナメンダ(商標)(メマンチンHCl)、アリセプト(商標)(ドネペジル)、ラザダイン(商標)(ガランタミン)、エクセロン(商標)(リバスチグミン)、及びコグネックス(商標)(タクリン)が含まれた。
【0127】
実施例4
ハンチントン病を含むがこれに限定されない神経学的状態の治療
方法A.強心配糖体療法
ハンチントン病を示す対象者に強心配糖体を処方し、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ治療的に適切な用量を投与した。治療反応の対象者のレベルを定期的に測定した。治療反応のレベルがある用量で低すぎた場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させた。強心配糖体での対象者の治療を必要に応じて継続し、用量又は投薬計画は、患者が所望の臨床的エンドポイントに達するまで必要に応じて調節され得た。投与した用量は、実施例3又はそうでなければ本明細書に記載のものと同様であり得た。
【0128】
方法B.併用療法:強心配糖体及び別の薬剤
ハンチントン病又はその症状の治療用の1つ又はそれ以上の他の治療剤を対象者に処方及び投与したこと以外、上記方法Aに従った。1つ又はそれ以上の他の治療剤を強心配糖体の前、後又はと共に投与することができた。1つ又はそれ以上の他の治療剤の用量の段階的な増加(又は段階的な減少)も行うことができた。適切な1つ又はそれ以上の他の治療剤としては、ビタミンE、バクロフェン(CoQ10の誘導体)、ラモトリギン(抗痙攣薬)、レマセミド(低親和性NMDAアンタゴニストである麻酔薬)、及びリルゾール(Naチャネル遮断薬)が含まれた。
【0129】
実施例5
虚血性脳卒中を含むがこれに限定されない神経学的状態の治療
方法A.強心配糖体療法
虚血性脳卒中を示す対象者に強心配糖体を処方し、ある期間の間、処方された投薬計画に従って対象者へ治療的に適切な用量を投与した。治療反応の対象者のレベルを定期的に測定した。治療反応のレベルがある用量で低すぎた場合、対象者において所望のレベルの治療反応が達成されるまで、予め決定された用量段階的増加スケジュールに従って用量を段階的に増加させた。強心配糖体での対象者の治療を必要に応じて継続し、用量又は投薬計画は、患者が所望の臨床的エンドポイントに達するまで必要に応じて調節され得た。投与した用量は、実施例3又はそうでなければ本明細書に記載のものと同様であり得た。
【0130】
方法B.併用療法:強心配糖体及び別の薬剤
虚血性脳卒中又はその症状の治療用の1つ又はそれ以上の他の治療剤を対象者に処方及び投与したこと以外、上記方法Aに従った。1つ又はそれ以上の他の治療剤を強心配糖体の前、後又はと共に投与することができた。1つ又はそれ以上の他の治療剤の用量の段階的な増加(又は段階的な減少)も行うことができた。
【0131】
実施例6
オレアンドリンを含有する溶液のHPLC分析
サンプル(オレアンドリン標準、SCF抽出物及び熱水抽出物)を、以下の条件:Symmetry C18カラム(5.0μm,150×4.6mm ID.;Waters);移動相 MeOH:水=54:46(v/v)、及び流速1.0ml/分を使用してHPLC(Waters)で分析した。検出波長は、217nmに設定した。化合物又は抽出物を固定量のHPLC溶媒に溶解してオレアンドリンのおよその標的濃度を達成することによって、サンプルを調製した。
【0132】
実施例7
正常なニューロン組織におけるα3及びα1発現の測定
Phoenix Biotechnology, Inc.の名前で2008年11月6日に出願されたPCT国際出願第PCT/US08/82641号に記載の手順に従うことができ、この全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0133】
実施例8
脳卒中及び非脳卒中についてのインビトロアッセイにおける強心配糖体の評価
方法A.脳卒中:皮質脳スライスの作製及びOGD
新皮質脳スライスをPND 7 Sprague−Dawleyラットの仔から作製した。大脳皮質を切開し、400ミクロン厚のスライスへ切断し、平板培養の前に、1 uM MK−801と共に冷人工脳脊髄液を含有する容器中へ移した;MK−801はその後の手順に含めなかった。一過性酸素グルコース欠乏(OGD)を使用して虚血性損傷を模倣するために、各脳の一方の半球からのスライスを、低O2(0.5%)環境において7.5分間、グルコースフリーのN2通気した人工脳脊髄液へ曝した。次いで、OGDを行わなかったことを除いては同一に作製したニトロセルロース又はMillicell(Millipore)透過膜上の対側の半球由来のコントロールスライスと並んで、OGDスライスを平板培養した。平板培養の30分後、脳スライス対をトランスフェクションし、24ウェルプレートへ移し、加湿したチャンバ中において5% CO2下にて37℃でインキュベートした。各実験において、5〜6分の酸素グルコース欠乏(OGD)を使用し、24時間まで健康な皮質ニューロンの>50%損失を誘発した(図1A中の最初の2つのバーを比較する)。設定濃度(3μM)のネリイホリンを内部ポジティブコントロールとして使用した。オレアンドリンについて、0.3〜3μMの全ての3つの濃度は、最初の2つの実験(図1A及び1B)において神経保護を提供するようであり、従って、試験したオレアンドリン濃度を第3実行(図1C)において下げ、神経保護についての閾値濃度は0.1〜0.3μMにあることが示唆された。
【0134】
方法B.非脳卒中:脳スライスアッセイ
オレアンドリン及びPBI−05204を、「非脳卒中」脳スライス;即ち、スライスしYFPをトランスフェクションしたがOGDによる追加の外傷へ供しなかったものにおいて試験した。上記に概説した実験手順を参照のこと。本発明者らは、ネリイホリンを含む多数の神経保護化合物が、恐らくスライス及び培養自体のプロセスによって引き起こされた外傷から保護することによって、このような脳スライスへ適度のレベルの神経保護を提供し得ることを観察した。図2A〜2Cにおいて見られ得るように、オレアンドリンは、ネリイホリンと同様のレベルまでこのような「非OGD」脳スライスへ神経保護を提供することができるようであり、このことは、強心配糖体が酸素又はグルコース欠乏の非存在下でさえ神経保護を媒介することを表している。
【0135】
実施例9
アルツハイマー病についてのインビトロAPPアッセイにおける強心配糖体の評価
皮質錐体ニューロンのAPP/Aβ誘発変性についてのラット脳スライスモデルにおいて、微粒子銃トランスフェクションを使用し、YFPなどのバイタルマーカーを導入しただけでなく、脳スライス中の同一のニューロン集団中へ疾患遺伝子構築物も導入した。従って、APP/Aβ脳スライスモデルにYFP及びAPPアイソフォームを同時トランスフェクションし、脳スライス作製及びトランスフェクション後の3〜4日間にわたって皮質錐体ニューロンの進行性変性がもたらされた。図3A〜3Cにおける3つの実行において見られ得るように、オレアンドリン及びPBI−05204は両方とも、APPがトランスフェクションされた脳スライスに対して用量依存性神経保護を提供することができるようであり、BACE阻害薬によって提供され得るものに近いレベルへ救出された。
【0136】
実施例10
ハンチントン病についてのインビトロ皮質線条体共培養アッセイにおける強心配糖体の評価
このアッセイにおいて、インタクトな脳スライスを使用する代わりに、突然変異httを、96ウェルプレート中に配置された皮質ニューロン、線条体ニューロン及びグリアの高密度混合共培養物中へエレクトロポレーションによって導入した。このアッセイプラットフォームの目的は、インビボでの疾患関連ニューロン集団の相互接続性の重要な局面を再現する複合初代培養系の生物学的/臨床的な関連性と、大規模完全自動スクリーニングキャンペーンを行う能力とを組み合わせることであった。このアッセイにおいて、インビトロで1〜2週間にわたって、トランスフェクションされた突然変異htt構築物は、線条体ニューロン及び皮質ニューロンの両方の進行性変性を誘発し、これらを、Cellomics Arrayscan VTIプラットフォームにおいて自動画像獲得及びオブジェクト検出アルゴリズムを使用して続いて定量化した。各データポイントを、自動的にキャプチャーされた各ウェル中16個の画像を伴って6個のウェルから引き抜き、処理し、Cure Huntington's Disease Initiativeの協力によって大規模スクリーニングキャンペーンが行われている間に開発されたプロトコルを使用してCellomics Arrayscanにおいて分析した。全実行において、約25,000個の画像を収集し、4サイクル/週で、各サイクルにおいて分析した。
【0137】
皮質−線条体共培養アッセイプラットフォーム
コンフルエントなグリアベッドを有する96ウェルプレートを確立するためにニューロン平板培養より前に、純粋なグリア培養物を作製した。次いで、皮質及び線条体組織を別々に分離し、適切なDNA構築物で「ヌクレオフェクション(nucleofected)」し、YFP、CFP、及びmCherryなどの異なる蛍光タンパク質の発現によって後で識別可能とした。これらの別々にトランスフェクションされた皮質ニューロン及び線条体ニューロンを、次いで、徹底的に混合し、前もって平板培養されたグリア単層を含有する96ウェルプレート中へ平板培養した。
【0138】
オレアンドリン及びPBI−05204(ネリウム・オレアンダーの超臨界CO2抽出物)の両方を、この皮質−線条体共培養プラットフォームにおいて試験し、予備的に、これらの化合物は、このアッセイシステムにおいて評価されてきた>400個の後期薬物分子のうち現在までのところ本発明者らが観察した最も強いヒットであるようであった。比較のために、この共培養アッセイについてポジティブコントロールとして本発明者らがルーチン的に含めた化合物である、KW6002(アデノシン2a受容体アンタゴニスト)についての用量−反応グラフを含める(図4Eを参照のこと)。オレアンドリンの効能はKW6002と同様であり、一方、その効力は約100倍より大きいようであった。
【0139】
実施例11
脳卒中及び非脳卒中についてのインビトロアッセイにおける本発明の強心配糖体及び抽出物の評価
方法A.脳卒中:皮質脳スライスの作製及びOGD
新皮質脳スライスをPND 7 Sprague−Dawleyラットの仔から作製した。大脳皮質を切開し、400μ厚のスライスへ切断し、平板培養の前に、1 uM MK−801と共に冷人工脳脊髄液を含有する容器中へ移した;MK−801はその後の手順に含めなかった。一過性酸素グルコース欠乏(OGD)を使用して虚血性損傷を模倣するために、各脳の一方の半球からのスライスを、低O2(0.5%)環境において7.5分間、グルコースフリーのN2通気した人工脳脊髄液へ曝した。次いで、OGDを行わなかったことを除いては同一に作製したニトロセルロース又はMillicell(Millipore)透過膜上の対側の半球由来のコントロールスライスと並んで、OGDスライスを平板培養した。平板培養の30分後、脳スライス対をトランスフェクションし、24ウェルプレートへ移し、加湿したチャンバ中において5% CO2下にて37℃でインキュベートした。各実験において、5〜6分の酸素グルコース欠乏(OGD)を使用し、24時間まで健康な皮質ニューロンの>50%損失を誘発した。設定濃度(3μM)のネリイホリン(強心配糖体)を内部ポジティブコントロールとして使用した。オレアンドリン(強心配糖体)について、0.3〜3μMの全ての3つの濃度は、最初の2つの実験において神経保護を提供するようであり、従って、試験したオレアンドリン濃度を第3実行において下げ、神経保護についての閾値濃度は0.1〜0.3μMにあることが示唆された。例えば、ネリウム種の未分画抽出物、又はそのフラクションもまた、オレアンドリンについて記載したように使用することができた。
【0140】
方法B.非脳卒中:脳スライスアッセイ
オレアンドリン、及びネリウム・オレアンダーの未分画SCF抽出物であるPBI−05204を、「非脳卒中」脳スライス;即ち、スライスしYFPをトランスフェクションしたがOGDによる追加の外傷へ供しなかったものにおいて試験した。上記に概説した実験手順を参照のこと。本発明者らは、ネリイホリンを含む多数の神経保護化合物が、恐らくスライス及び培養自体のプロセスによって引き起こされた外傷から保護することによって、このような脳スライスへ適度のレベルの神経保護を提供し得ることを観察した。データは、オレアンドリン及び抽出物は、ネリイホリンと同様のレベルまでこのような「非OGD」脳スライスへ神経保護を提供することができるようであることを実証しており、このことは、強心配糖体が酸素又はグルコース欠乏の非存在下でさえ神経保護を媒介することを表している。
【0141】
実施例12
SCF抽出物のHPLC分析
このアッセイの目的は、強心配糖体を含有する抽出物を同定することであった。各抽出物からのサンプルを以下のように分析した。抽出物(1〜3 mg)を水性メタノール(水中80%メタノール)1〜5 mlに溶解した。移動相として水中80%メタノール、0.7 mL/分の流量、及び以下の波長でのDAD−UV流出物モニタリング:203、210、217、230、254、280、310及び300 nmを使用して、希釈サンプル(10〜25μl)をAgilent Zorbax SB−C18カラムを用いて分析した。ポジティブ同定は、抽出物サンプルの保持時間及びスペクトルを参照サンプルと比較した場合のクロマトグラム上のピーク形成によって確認された。
【0142】
実施例13
神経保護の測定についての時間遅延脳スライスアッセイ
このアッセイを、以下の変更を行ったことを除いては、実施例11に従って行った。OGDと提案される神経保護剤の導入との間で、指定の長さの時間を可能にした。OGD処理のタイミングと比べて処理を遅らせた場合の、脳スライスへ神経保護を提供するPBI−05204の能力を、測定した。データは、ネリウム・オレアンダー抽出物の2時間遅延は十分に許容されたことを示し、これは、OGD処理直後のPBI−05204の適用で達成されるものと同様のレベルの神経保護を示している。神経保護的利益は、PBI−05204の投与の4〜6時間の遅延で減少したが、依然として著しくかつ生理学的に関連性がある神経保護レベルであった。
【0143】
本明細書において使用される場合、用語「約」又は「およそ」は、指定の値の±10%、±5%、±2.5%又は±1%を意味するように解釈される。本明細書において使用される場合、用語「実質的に」は、「かなり」又は「の少なくとも大部分」又は「の50%超」を意味するように解釈される。
【0144】
上記のものは、本発明の特定の実施態様の詳細な説明である。本発明の特定の実施態様が例示の目的のために本明細書において記載されたが、様々な改変が本発明の精神及び範囲を逸脱することなく行われ得ることが認識される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によるものを除き、限定されない。本明細書に開示及び特許請求される実施態様の全ては、本開示を考慮して過度の実験無しに、実行及び実施され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における神経学的状態を治療する方法であって、該神経学的状態を治療するための有効量で強心配糖体を含有する組成物をその必要がある対象者へ投与する工程を含み、ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって調製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出中に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、上記方法。
【請求項2】
治療の必要がある対象者における神経学的状態を治療する方法であって、
対象者における神経学的状態が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態であるか否かを決定する工程;
強心配糖体の投与を指示する工程;
一定期間の間、処方された初期投薬計画に従って対象者へ初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を定期的に決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
神経学的状態が、変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害であり、強心配糖体を含む組成物を用いる請求項1に記載の方法であって、
対象者が、
変化したNa,K−ATPアーゼα3アイソフォーム対α1アイソフォームサブユニット比と関連するか又は変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する、
病因を有する神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;及び
対象者への強心配糖体を含む組成物の投与を指示する工程;
を含む、上記方法。
【請求項4】
神経学的状態が、変化したHIF−1α活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害であり、強心配糖体を含む組成物を用いる請求項1に記載の方法であって、
対象者が、変化したHIF−1α活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;及び
対象者への強心配糖体を含む組成物の投与を指示する工程;
を含む、上記方法。
【請求項5】
神経学的状態を有する対象者の集団中の統計的に有意な数の対象者の臨床状態を改善する方法であって、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を対象者の集団へ投与する工程;及び対象者の臨床状態を測定する工程を含み、ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって作製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出の間に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、上記方法。
【請求項6】
神経学的状態の発生の危険性がある対象者の集団におけるその発生を予防する又は発生率を下げる方法であって、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団中の1又はそれ以上の対象者へ、長期間、繰り返しベースで、有効用量の強心配糖体を投与し、それによって集団における神経学的状態の発生を予防する又は発生率を下げる工程を含み、ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって作製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出の間に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、上記方法。
【請求項7】
対象者における脳卒中を治療する時間遅延方法であって、
対象者が脳卒中に罹った後の受容可能な遅延期間内に、初期投薬計画に従って初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含み、
ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって作製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出の間に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、
上記方法。
【請求項8】
投与後、強心配糖体が、血液脳関門を通過し、少なくとも8時間の期間中、脳組織中に保持される、請求項1に記載の発明。
【請求項9】
神経学的状態が虚血性脳卒中又は脳卒中仲介虚血性脳損傷である、請求項1に記載の発明。
【請求項10】
強心配糖体を含む組成物の治療的に適切な用量を対象者に処方及び投与する、請求項1に記載の発明。
【請求項11】
処方された投薬計画に従って、強心配糖体を含む組成物を対象者に投与する、請求項1に記載の発明。
【請求項12】
組成物が1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、請求項1に記載の発明。
【請求項13】
強心配糖体を含む植物又は動物源の熱水抽出物を2mg〜22.5mg/日、又は強心配糖体を含む植物又は動物源の超臨界CO2抽出物又は有機溶媒抽出物0.6〜4.8mg/日を、対象者に投与する、請求項1に記載の発明。
【請求項14】
繰り返しベースが、毎日、1日おき、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、1週おき、2週ごと、3週ごと、毎月、隔月、半月ごと、1ヶ月おき 2ヶ月ごと、四半期ごと、1四半期おき、三半期ごと、季節ごと、半年ごと及び/又は毎年である、請求項6に記載の発明。
【請求項15】
長期間が、1週又はそれ以上、1ヶ月又はそれ以上、1四半期又はそれ以上、及び/又は1年又はそれ以上である、請求項6に記載の発明。
【請求項16】
有効用量を1日に1回又はそれ以上投与する、請求項6に記載の発明。
【請求項17】
方法が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団を同定する工程をさらに含む、請求項6に記載の発明。
【請求項18】
危険性がある対象者の集団が、対象者の加齢、神経学的状態の家族歴、神経学的状態の発生の遺伝的素因、対象者におけるApoE4遺伝子の存在及び発現、女性、心血管疾患、糖尿病、ダウン症候群、頭部外傷、低レベルの正規の教育、喫煙、過剰なアルコール摂取及び/又は薬物乱用によって特徴付けられる、請求項17に記載の発明。
【請求項19】
遅延期間が、10時間又はそれ未満、8時間又はそれ未満、6時間又はそれ未満、4時間又はそれ未満、3時間又はそれ未満、2時間又はそれ未満、1時間又はそれ未満、45分又はそれ未満、30分又はそれ未満、20分又はそれ未満又は10分又はそれ未満である、請求項7に記載の発明。
【請求項20】
対象者の臨床及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程が、身体の片側の顔、腕及び/又は脚のいずれかの脱力、身体の片側の顔、腕及び/又は脚の知覚低下、音声言語を理解することができないこと、話す又は明瞭に話すことができないこと、書くことができないこと、めまい及び/又は歩行不均衡、複視並びに異常に重篤な頭痛の評価によって行われる、請求項2に記載の発明。
【請求項21】
神経変性疾患が、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ウシ海綿状脳症、多発性硬化症、糖尿病性神経障害、自閉症及び若年型神経セロイドリポフスチン症からなる群より選択される、請求項1に記載の発明。
【請求項22】
強心配糖体が、4L/hr以下の脳組織についてのクリアランス速度を有する、請求項1に記載の発明。
【請求項23】
強心配糖体が、ネリイホリンを除く、請求項1に記載の発明。
【請求項1】
対象者における神経学的状態を治療する方法であって、該神経学的状態を治療するための有効量で強心配糖体を含有する組成物をその必要がある対象者へ投与する工程を含み、ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって調製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出中に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、上記方法。
【請求項2】
治療の必要がある対象者における神経学的状態を治療する方法であって、
対象者における神経学的状態が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態であるか否かを決定する工程;
強心配糖体の投与を指示する工程;
一定期間の間、処方された初期投薬計画に従って対象者へ初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を定期的に決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
神経学的状態が、変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害であり、強心配糖体を含む組成物を用いる請求項1に記載の方法であって、
対象者が、
変化したNa,K−ATPアーゼα3アイソフォーム対α1アイソフォームサブユニット比と関連するか又は変化したNa,K−ATPアーゼ活性と関連する、
病因を有する神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;及び
対象者への強心配糖体を含む組成物の投与を指示する工程;
を含む、上記方法。
【請求項4】
神経学的状態が、変化したHIF−1α活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害であり、強心配糖体を含む組成物を用いる請求項1に記載の方法であって、
対象者が、変化したHIF−1α活性と関連する病因を有する神経学的疾患又は障害を有することを決定する工程;及び
対象者への強心配糖体を含む組成物の投与を指示する工程;
を含む、上記方法。
【請求項5】
神経学的状態を有する対象者の集団中の統計的に有意な数の対象者の臨床状態を改善する方法であって、強心配糖体又は強心配糖体含有組成物を対象者の集団へ投与する工程;及び対象者の臨床状態を測定する工程を含み、ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって作製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出の間に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、上記方法。
【請求項6】
神経学的状態の発生の危険性がある対象者の集団におけるその発生を予防する又は発生率を下げる方法であって、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団中の1又はそれ以上の対象者へ、長期間、繰り返しベースで、有効用量の強心配糖体を投与し、それによって集団における神経学的状態の発生を予防する又は発生率を下げる工程を含み、ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって作製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出の間に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、上記方法。
【請求項7】
対象者における脳卒中を治療する時間遅延方法であって、
対象者が脳卒中に罹った後の受容可能な遅延期間内に、初期投薬計画に従って初期用量の強心配糖体を投与する工程;
強心配糖体での治療に対する対象者の臨床反応及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程;及び
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が妥当である場合、所望の臨床的エンドポイントが達成されるまで必要に応じて強心配糖体での治療を継続する工程;又は
対象者の臨床反応及び/又は治療反応が初期用量及び初期投薬計画で妥当でない場合、対象者において所望の臨床反応及び/又は治療反応が達成されるまで用量を段階的に増加させるか又は段階的に減少させる工程;
を含み、
ここで、強心配糖体が、オレアンダー植物マスからの超臨界流体抽出によって作製された抽出物中に含まれるオレアンドリンであり、抽出物が、抽出の間に強心配糖体と共に得られた1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、
上記方法。
【請求項8】
投与後、強心配糖体が、血液脳関門を通過し、少なくとも8時間の期間中、脳組織中に保持される、請求項1に記載の発明。
【請求項9】
神経学的状態が虚血性脳卒中又は脳卒中仲介虚血性脳損傷である、請求項1に記載の発明。
【請求項10】
強心配糖体を含む組成物の治療的に適切な用量を対象者に処方及び投与する、請求項1に記載の発明。
【請求項11】
処方された投薬計画に従って、強心配糖体を含む組成物を対象者に投与する、請求項1に記載の発明。
【請求項12】
組成物が1つ又はそれ以上の他の治療有効薬剤をさらに含む、請求項1に記載の発明。
【請求項13】
強心配糖体を含む植物又は動物源の熱水抽出物を2mg〜22.5mg/日、又は強心配糖体を含む植物又は動物源の超臨界CO2抽出物又は有機溶媒抽出物0.6〜4.8mg/日を、対象者に投与する、請求項1に記載の発明。
【請求項14】
繰り返しベースが、毎日、1日おき、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、1週おき、2週ごと、3週ごと、毎月、隔月、半月ごと、1ヶ月おき 2ヶ月ごと、四半期ごと、1四半期おき、三半期ごと、季節ごと、半年ごと及び/又は毎年である、請求項6に記載の発明。
【請求項15】
長期間が、1週又はそれ以上、1ヶ月又はそれ以上、1四半期又はそれ以上、及び/又は1年又はそれ以上である、請求項6に記載の発明。
【請求項16】
有効用量を1日に1回又はそれ以上投与する、請求項6に記載の発明。
【請求項17】
方法が、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経学的状態などの神経学的状態に罹患する危険性がある対象者の集団を同定する工程をさらに含む、請求項6に記載の発明。
【請求項18】
危険性がある対象者の集団が、対象者の加齢、神経学的状態の家族歴、神経学的状態の発生の遺伝的素因、対象者におけるApoE4遺伝子の存在及び発現、女性、心血管疾患、糖尿病、ダウン症候群、頭部外傷、低レベルの正規の教育、喫煙、過剰なアルコール摂取及び/又は薬物乱用によって特徴付けられる、請求項17に記載の発明。
【請求項19】
遅延期間が、10時間又はそれ未満、8時間又はそれ未満、6時間又はそれ未満、4時間又はそれ未満、3時間又はそれ未満、2時間又はそれ未満、1時間又はそれ未満、45分又はそれ未満、30分又はそれ未満、20分又はそれ未満又は10分又はそれ未満である、請求項7に記載の発明。
【請求項20】
対象者の臨床及び/又は治療反応の妥当性を決定する工程が、身体の片側の顔、腕及び/又は脚のいずれかの脱力、身体の片側の顔、腕及び/又は脚の知覚低下、音声言語を理解することができないこと、話す又は明瞭に話すことができないこと、書くことができないこと、めまい及び/又は歩行不均衡、複視並びに異常に重篤な頭痛の評価によって行われる、請求項2に記載の発明。
【請求項21】
神経変性疾患が、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ウシ海綿状脳症、多発性硬化症、糖尿病性神経障害、自閉症及び若年型神経セロイドリポフスチン症からなる群より選択される、請求項1に記載の発明。
【請求項22】
強心配糖体が、4L/hr以下の脳組織についてのクリアランス速度を有する、請求項1に記載の発明。
【請求項23】
強心配糖体が、ネリイホリンを除く、請求項1に記載の発明。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2013−516491(P2013−516491A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548205(P2012−548205)
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/020672
【国際公開番号】WO2011/085307
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508025518)フェニックス・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/020672
【国際公開番号】WO2011/085307
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508025518)フェニックス・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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