説明

強風による橋梁における列車転覆防止装置

【課題】 鉄道車両の軒けたに対応した橋梁の斜材または垂直材の上部に走行方向に延びるレールを配置することにより、強風による橋梁における列車転覆防止装置を提供する。
【解決手段】 強風による橋梁における列車転覆防止装置において、鉄道車両の軒けた6に対応した橋梁1の斜材または垂直材2の上部に走行方向に延びる列車転覆防止用レール3を配置し、強風時の列車の転覆を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強風時に橋梁を走行する車両の脱線転覆事故を防止する、強風による橋梁における列車転覆防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、異常気象が引き起こす災害が数多く見受けられる。特に、竜巻等による強風災害も見受けられ、橋梁や吊り橋を走行する車両の脱線転覆事故を防止することが急務となってきている。
【0003】
従来、走行車両の地震時における転倒事故を防止するようにしたものが下記特許文献1に開示されている。これは、車両の下側両面に車両転倒防止用側壁が配置されるように構成されている。
【特許文献1】特開2005−76392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した車両転倒防止用側壁は、専ら地震時の対策であり、車両の下側両面に配置されるようになっている。また、特に、橋梁における強風対策として構成されたものではない。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、鉄道車両の軒けたに対応した橋梁の斜材または垂直材の上部に走行方向に延びるレールを配置することにより、強風による橋梁における列車転覆防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕強風による橋梁における列車転覆防止装置において、鉄道車両の軒けたに対応した橋梁の斜材または垂直材の上部に走行方向に延びる列車転覆防止用レールを配置し、強風時の列車の転覆を防止することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の強風による橋梁における列車転覆防止装置において、前記レールを列車の走行路の両側に配置することを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔1〕記載の強風による橋梁における列車転覆防止装置において、上り線路と下り線路を有する場合において、前記橋梁の中央の斜材または垂直材に上り線路と下り線路用のレールを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉄道車両の軒けたに対応した橋梁の斜材または垂直材の上部に走行方向に延びるレールを配置することにより、強風による橋梁における列車の転覆を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の強風による列車転覆防止装置は、鉄道車両の軒けたに対応した橋梁の斜材または垂直材の上部に走行方向に延びるレールを配置し、強風時の列車の転覆を防止する。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の強風による列車転覆防止装置を備えた橋梁の模式図、図2は本発明の強風による列車転覆防止装置と列車の走行の説明図であり、図2(a)は橋梁において強風が吹いていない時の車両の走行状態を示す図、図2(b)は橋梁において強風時の車両の走行状態を示す図、図3はトラス橋梁の模式図である。
【0013】
これらの図において、1は橋梁、2は橋梁1の斜材または垂直材、3は斜材または垂直材2に走行方向に配置される列車転覆防止用レール、4は列車の軌道(レール)、5は列車の車体、6は列車の車体5の軒けた、7は列車の車輪である。
【0014】
強風時に橋梁を走行する車両が横方向の大きな空気力を受けることにより、脱線転覆事故が起きる可能性がある。
【0015】
図2(a)に示すように、橋梁において強風が吹いていない時の車両は、問題なく走行ができる。しかし、橋梁において強風時には車両は、風圧を受けて風下側に向けて煽られるが、車体5の軒けた6が、橋梁1の斜材または垂直材2に配置された列車転覆防止用レール3に接触することにより列車の転覆は防止されることになる。
【0016】
特に、車体5は大きく傾かない角度で、列車転覆防止用レール3に接触することができることになるので、列車転覆防止用レール3への衝撃が大きくならなくて済む。また、ときによっては、車体5を自動的に正規の姿勢に戻すこともできる。
【0017】
図4は本発明の強風による列車転覆防止装置を備えた橋梁を示す図(その1)である。
【0018】
図4において、11は橋梁、12は橋梁11の右側の斜材または垂直材、13は右側の斜材または垂直材12に走行方向に配置される列車転覆防止用レール、14は列車の軌道(レール)、15は列車の車体、16は列車の車体15の軒けた、17は列車の車輪、18は橋梁11の左側の斜材または垂直材、19は左側の斜材または垂直材18に走行方向に配置される列車転覆防止用レールである。
【0019】
このように、列車の走行方向の両側に列車転覆防止用レール13と19を配置することにより、どの方向からの強風であっても、列車の車体15は煽られると列車転覆防止用レール13か19に接触することにより、列車の転覆を防止することができる。
【0020】
特に、本発明は、横風を受けた鉄道車両が橋梁上で脱線した場合に、車体の大変位を生じることがないように、車体の上部で転倒を抑止するようにしている。
【0021】
図5は本発明の強風による列車転覆防止装置を備えた橋梁を示す図(その2)であり、この例では、上り線21と下り線22の間に設置されている橋梁23の斜材または垂直材24を共用して、上り線21用の列車転覆防止用レール25と下り線22用の列車転覆防止用レール26とを橋梁27の斜材または垂直材28の両側に配置するようにしたものである。このように構成することにより、列車転覆防止用レールの配置を容易にすることができる。
【0022】
図6は本発明の強風による列車転覆防止装置をトラス構造の橋梁に適用した例を示す図である。
【0023】
この図において、トラス構造の橋梁31の左右の斜材または垂直材32に列車の走行方向に列車転覆防止用レール33を配置するようにしている。
【0024】
上記したように列車の車体の軒けたに対応する、橋梁の斜材または垂直材の上部への列車転覆防止用レールの配置により、強風が生じやすい橋梁を通過する列車に対しても脱線転覆を防止することができる。
【0025】
想定される適用箇所は、橋梁では一般的に適用できるが、吊り橋など風荷重を大きくとることができない長大橋梁では、特に大きな風圧が働きやすい区間であるので、一般的な防風対策設備である防風フェンスや防風壁のように大きな風荷重を受けることはないことから本発明は特に有効である。
【0026】
図7は本発明が適用される各種のトラス橋梁の模式図であり、図7(a)は平行弦トラス橋梁、図7(b)は曲弦トラス橋梁、図7(c)はワーレントラス橋梁、図7(d)はハウトラス橋梁、図7(e)はプラットトラス橋梁、図7(f)は上路トラス橋梁、図7(g)は下路トラス橋梁である。
【0027】
これらの橋梁において、41は斜材、42は垂直材である。これらの橋梁においても、斜材41または垂直材42の水平方向、つまり車両の走行方向に列車転覆防止用レール43を配置するようにした。
【0028】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の強風による橋梁における列車転覆防止装置は、橋梁における列車の安全走行に寄与する列車転覆防止装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の強風による列車転覆防止装置を備えた橋梁の模式図である。
【図2】本発明の強風による列車転覆防止装置と列車の走行の説明図である。
【図3】本発明の強風による列車転覆防止装置を備えたトラス橋梁の模式図である。
【図4】本発明の強風による列車転覆防止装置を備えた橋梁を示す図(その1)である。
【図5】本発明の強風による列車転覆防止装置を備えた橋梁を示す図(その2)である。
【図6】本発明の強風による列車転覆防止装置をトラス構造の橋梁に適用した例を示す図である。
【図7】本発明が適用される各種のトラス橋梁の模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1,11,23 橋梁
2,24 橋梁の斜材または垂直材
3,33 橋梁の斜材または垂直材に走行方向に配置される列車転覆防止用レール
4,14 列車の軌道(レール)
5,15 列車の車体
6,16 列車の車体の軒けた
7,17 列車の車輪
12 橋梁の右側の斜材または垂直材
13 右側の斜材または垂直材に走行方向に配置される列車転覆防止用レール
18 橋梁の左側の斜材または垂直材
19 左側の斜材または垂直材に走行方向に配置される列車転覆防止用レール
21 上り線
22 下り線
25 上り線用の列車転覆防止用レール
26 下り線用の列車転覆防止用レール
31 トラス構造の橋梁
32 左右の斜材または垂直材
41 斜材
42 垂直材
43 列車転覆防止用レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の軒けたに対応した橋梁の斜材または垂直材の上部に走行方向に延びる列車転覆防止用レールを配置し、強風時の列車の転覆を防止することを特徴とする強風による橋梁における列車転覆防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の強風による橋梁における列車転覆防止装置において、前記レールを列車の走行路の両側に配置することを特徴とする強風による橋梁における列車転覆防止装置。
【請求項3】
請求項1記載の強風による橋梁における列車転覆防止装置において、上り線路と下り線路を有する場合において、前記橋梁の中央の斜材または垂直材に上り線路と下り線路用のレールを配置することを特徴とする強風による橋梁における列車転覆防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−223438(P2008−223438A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67691(P2007−67691)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】