説明

弾性ローラとその製造方法、現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】寸法精度、特には振れ(弾性層の厚み精度)の良い、ローコストな弾性ローラとその製造方法を提供する。より高画質化が可能な電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸芯体を上下軸方向に把持する把持工程;軸芯体の位置を検出する軸芯体位置検出工程;軸芯体の位置を補正する軸芯体位置補正工程;軸芯体の外周に液状材料を塗工する環状塗工ヘッドの位置を補正する環状塗工ヘッド位置補正工程;および、軸芯体の外周に、環状塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の液状材料を層厚0.5mm以上10.0mm以下で塗工する塗工工程を有する弾性ローラの製造方法。この方法により製造された弾性ローラ。この弾性ローラを現像ローラとして備える電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機等の画像形成装置および電子写真プロセスカートリッジに好適に用いられる弾性ローラ及びその製造方法に関する。また本発明は、現像剤を担持する現像ローラ、現像ローラを具備した電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真記録装置について、以下に説明する。この装置の本体内部には画像形成部が設置され、画像がクリーニング、帯電、潜像形成、現像、転写、定着のプロセスを経て形成される。画像形成部は像担持体である感光ドラムを備えており、クリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部および転写部を備えている。この画像形成部で形成された感光ドラム上の画像は転写部材により、記録材に転写され、搬送された後、定着部にて加熱、加圧され定着された記録画像として排出される。
【0003】
電子写真方式を用いたプリンターにおいて、感光ドラムは帯電ローラにより均一に帯電され、レーザー等により静電潜像を形成する。次に、現像容器内の現像剤が現像剤塗布ローラおよび現像剤規制部材により適正電荷で均一に現像ローラ上に塗布され、感光ドラムと現像ローラとの接触部で現像剤の転写(現像)が行われる。その後、感光ドラム上の現像剤は、転写ローラにより記録紙に転写され、熱と圧力(加圧ローラと定着ローラ)により定着され、感光ドラム上に残留した現像剤はクリーニングブレードによって除かれ、一連のプロセスが完了する。
【0004】
電子写真装置において、例えば現像ローラの場合、常時感光ドラム及び現像剤規制部材に圧接された状態にあり、現像を行なう際には現像ローラと感光ドラム、現像ローラと現像剤規制部材の間に現像剤が介在して圧接している。感光ドラムに転写されない現像剤は、現像剤塗布ローラによって剥ぎ取られ再度現像容器内に戻り、容器内で攪拌され再び現像剤塗布ローラによって現像ローラ上に搬送される。これらの工程を繰り返すうちに現像剤は大きなストレスを受けるという結果になる。そこで、現像剤へのストレスを軽減するという目的から現像ローラは適度な弾性を有する材料で形成されている。また、現像ローラや帯電ローラの場合、常に他部材と接触した状態で回転しているので、接触状態を安定に保つ必要があるためにローラとして高い寸法精度が必要とされる。接触状態を安定に保つことができないと現像剤の供給量がばらついたり、感光ドラムに対する圧力分布がばらつくなどして画像に影響を及ぼす場合がある。
【0005】
また近年、電子写真のカラー化及び高画質化のニーズが高まり、電子写真用弾性ローラの外形寸法や振れ(厚み精度)の高精度化が厳しく要求されている。例えば、接触式現像方式において、現像ローラは上述したように、感光ドラム表面に対し接触しているため、外形寸法や振れ(厚み精度)が正確でないと、感光ドラムとローラ間のニップ幅やニップ力に変動が生じ濃度ムラ等の画像欠陥が発生することがある。
【0006】
このような接触現像方式に用いられる現像ローラとしては、軸芯体の周囲に弾性層を設けた構成の弾性ローラとなっている。さらに必要に応じて、弾性層の外周側に表面性を付与するために各種の樹脂溶液を塗布し、表面層を設けた構成の弾性ローラもある。
【0007】
従来、弾性ローラを製造するため、金型を用いた成形方法がとられることが多い。例えば、軸芯体受け部に一つまたは複数の溜め溝を設けた金型成形技術がある(特許文献1参照)。これによると、溜め溝部に過剰の弾性層材料を逃がすことによって、弾性ローラの寸法精度を落とすことなく良好な成形ができるとしている。このように、高精度の弾性ローラを成形するには金型を用いた成形方法が一般的となっている。しかし、金型成形技術においては、高精度な金型を多数必要とし、勢い生産設備の高額化は避けられない。上述した性能面の特性を満足させる一方で、弾性ローラの製造方法によるローコスト化も要求されている。
【0008】
また、金型を使用せずに軸芯体外周上に弾性層材料を成形する方法として、例えば、スプレー塗工法、浸漬塗工法、ロール塗工法、ブレード塗工法、環状塗工槽で塗工する方法、環状塗工ヘッドを用いた塗工法等種々検討されている。
【0009】
弾性ローラの様々な用途に応じて、軸芯体外周上に所望の機能を有する弾性層を形成させている。特に近年では、そのような所望の機能を発現させるために、均一な薄層から数ミリ程度の厚みまでの弾性層が要求され、かつ、塗工する弾性層材料そのものが多様化している。それに伴って弾性層材料も低粘度から高粘度になるものもあり、そのため、従来の塗工法においてはそのような弾性層材料の塗工範囲をカバーできなくなってきている。
【0010】
例えば、スプレー塗工法は粘度が低い弾性層材料しか使用できず、弾性層の厚みが最大数百μm程度である。弾性層材料の粘度が高いと、弾性層材料の霧化が困難になってしまう。
【0011】
ブレード塗工法及びロール塗工法は、例えば、塗工される軸芯体の軸線方向にブレードもしくはロールを配置し、その軸芯体を回転させながらブレードまたはロールによって弾性層材料を塗工する。軸芯体を1〜数回転だけ回転させた後、ブレードまたはロールを後退させて塗工を終了する。この塗工終了時にブレードやロールを後退させ、まだ未硬化未乾燥である弾性層材料から離す際、弾性層材料の粘性によって軸芯体外周上の弾性層材料の一部に他の部分より厚い部分あるいは薄い部分が発生することがある。特に、弾性層材料の粘度が高い場合には、この厚みに問題が生じた部分が、その後、弾性層のレベリングにおいても回復できないほどになってしまい、外形寸法や振れ(厚み精度)が正確な弾性層が得られにくい。
【0012】
また、浸漬塗工法では、ブレード塗工法及びロール塗工法等における弾性層の不均一性の問題は改良される。しかしながら、弾性層の厚みの制御が弾性層材料の物性、例えば、弾性層材料の粘度、表面張力及び密度、その他温度等に支配されるため、弾性層材料の物性を常時一定にしておくことが必要であるが、一定に保つことは難しい。また、実際の使用量に対して、大量の弾性層材料が必要となり、生産性が悪い。更には弾性ローラの長手方向で重力の要因による弾性層材料の液垂れが生じやすく、特に塗工開始時と終了直後に弾性層材料の液垂れが生じやすいため、外形寸法や振れ(厚み精度)を正確にするには浸漬あるいは引上げる速度を精密に制御する必要がある。
【0013】
また、環状塗工槽で弾性層材料を塗工する方法が知られている(特許文献2および3参照)。この塗工法は、弾性層材料を環状塗工槽に保持し、環状塗工槽から軸芯体を上昇させ、軸芯体の表面に弾性層材料を塗工する方法である。この方法においては、浸漬塗工方法と比較して浸漬時間がかからないため生産速度が早くなる、少量の弾性層材料で塗工が可能となる、及び、軸芯体を連続的に環状塗工槽に供給することによって、連続した塗工が可能となる等の利点を有する。さらには、軸芯体の位置検出器により得られる軸芯体の中心位置に対して、環状塗工槽の位置を補正する手段を有しているので、外径寸法や振れ(厚み精度)をある程度、正確にすることができる。このような環状塗工槽での塗工方法にあっては、弾性層材料の表面張力により軸芯体上に弾性層材料を塗工しているので、弾性層の厚みとしては、最大でも数百μm程度が限界である。つまり、ある程度の低粘度範囲でしか塗工ができない。ここで、低粘度の弾性層材料であると、レベリングにより液状材料の層厚が均一になりやすい。一方、高粘度の弾性層材料であると、十分なレベリングが得られにくく、層厚のバラツキが大きくなりやすい。また、高粘度弾性層材料であると、環状塗工槽からの弾性層材料の吐出が不均一となり、液状材料の層厚も不均一なものとなってしまうことがある。液状材料の層厚が不均一であると当然ながら硬化後の層厚(弾性層の厚さ)が不均一になる。また、環状塗工槽による塗工方法では、外径寸法や振れ(厚み精度)をさらに正確にするため、塗工時の軸芯体傾斜を補正するためには、軸芯体の位置検出器をさらに一組追加する必要があり、コスト高となる。
【0014】
上記した従来の塗工方法においては、数ミリ程度の厚みの弾性層を達成するためには、高粘度の弾性層材料を溶媒により希釈し、その弾性層材料を、塗工に必要な粘度にまで下げた状態で塗工する。その後、弾性層材料の希釈に使用した溶媒を、例えば、蒸発等により、除去して弾性層を形成する。形成された弾性層上にさらに弾性材料を上塗りおよび溶媒の除去といった工程を繰り返すしかなく、非常に生産性が悪かった。また、このように製造された弾性ローラは、多数の工程を繰り返すために、寸法精度や振れ(厚み精度)の公差が積み上がり、弾性ローラとしての寸法精度や振れ(厚み精度)の制御が困難であった。
【0015】
高粘度の弾性層材料を軸芯体に直接塗工する方法として、環状塗工ヘッドを用いた塗工法がある(特許文献4参照)。これによれば、弾性層材料の粘度や弾性層の厚さによる塗工工程の制限をある程度除去し、より容易な装置で軸芯体外周上に弾性層材料を直接塗工して、良好かつ均一な弾性層を形成することができる。この方法では、軸芯体の中心線が水平方向と平行となった状態で弾性層材料を軸芯体の表面に塗工する。この塗工法は次の工程を有する。軸芯体の表面に弾性層材料を塗工した後の軸芯体の外径と略等しい内径を有する環状塗工ヘッドを用意する工程。軸芯体を塗工ヘッドの内側に同軸上に配置させる工程。塗工ヘッドの内周面と軸芯体の間の隙間に弾性層材料を供給する工程。及び軸芯体に対して前記塗工ヘッドを軸芯体の軸方向に軸線と同軸に相対移動させる工程。
【0016】
この塗工法では、塗工ヘッドの内周面と軸芯体との隙間部分に弾性層材料を供給し、軸芯体を水平状態とし、塗工ヘッドを軸芯体の軸線方向にその軸線と同軸に相対移動させることで軸芯体外周面に弾性層材料が塗工される。軸芯体は水平状態であるため、弾性ローラの長手方向で、重力の要因による弾性層材料の液垂れを減らすことができる。
【特許文献1】特開2000−006163号公報
【特許文献2】特許第2756830号公報
【特許文献3】特許第2764435号公報
【特許文献4】特開2003−190870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、弾性層材料を軸芯体に塗工する方法が種々検討されているが、高画質化などにより寸法精度に対する要求がますます厳しくなっており、更なる改善が望まれる。
【0018】
本発明の目的は、寸法精度、特には振れ(弾性層の厚み精度)の良い、ローコストな弾性ローラとその製造方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、より高画質化が可能な電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明により、軸芯体を上下軸方向に把持する把持工程;
該軸芯体の位置を検出する軸芯体位置検出工程;
該軸芯体の位置を補正する軸芯体位置補正工程;
該軸芯体の外周に液状材料を塗工する環状塗工ヘッドの位置を補正する環状塗工ヘッド位置補正工程;および、
該軸芯体の外周に、該環状塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の液状材料を硬化後の層厚が0.5mm以上10.0mm以下になるよう塗工する塗工工程
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法が提供される。
【0021】
本発明により、上記製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラが提供される。
【0022】
本発明により、現像ローラの表面に現像剤の層を形成して、該現像剤の層を像担持体に接触させて該現像剤を該像担持体に供給することにより、該像担持体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラが、上記弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジが提供される。
【0023】
本発明により、現像ローラの表面に現像剤の層を形成して、該現像剤の層を像担持体に接触させて該現像剤を該像担持体に供給することにより、該像担持体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、
該現像ローラが、上記弾性ローラであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、寸法精度、特には振れ(弾性層の厚み精度)の良い、ローコストな弾性ローラとその製造方法が提供される。
【0025】
本発明により、より高画質化が可能な電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明による弾性ローラの製造方法、この製造方法により製造された現像ローラ、ならびにこの現像ローラ具備する電子写真プロセスカートリッジおよび画像形成装置について詳細に説明する。
【0027】
本発明に係る弾性ローラの製造方法は、次の工程を有する。軸芯体を上下軸方向に把持する把持工程。軸芯体の位置を検出する軸芯体位置検出工程。軸芯体の位置を補正する軸芯体位置補正工程。軸芯体の外周に液状材料を塗工する環状塗工ヘッドの位置を補正する環状塗工ヘッド位置補正工程。軸芯体の外周に環状塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の液状材料を硬化後の層厚が0.5mm以上10.0mm以下になるよう塗工する塗工工程。
【0028】
〔軸芯体〕
本発明で使用できる軸芯体は、例えば電子写真用弾性ローラの軸芯体として公知のものから適宜選んで用いることができる。さらに軸芯体として導電性を有する軸芯体を用いることができる。導電性軸芯体は、電極および支持部材として機能するものである。軸芯体は、例えばアルミニウム、銅合金,ステンレス鋼、鉄等の金属または合金、合成樹脂等の材質で構成される。必要に応じてクロムやニッケル等で鍍金処理を施しても良い。形状は、円柱形や中心部を空洞化した円筒形が好ましい。軸芯体の外径は適宜決めることができるが、現像ローラの場合は通常4mm〜20mmの範囲にする。
【0029】
〔塗工〕
本発明の弾性ローラの製造方法に好適に用いることができる環状塗工ヘッドを有するリングコート機の概略説明図を図1に示す。
【0030】
このリングコート機は、架台31の上に略鉛直にコラム32が取り付けられ、架台31とコラム32の上部に精密ボールネジ33が略鉛直に取り付けられている。44はリニアガイドであり、精密ボールネジ33と平行にコラム32にリニアガイド44が2本取り付けられている。LMガイド34はリニアガイド44と精密ボールネジ33とを連結し、サーボモータ35よりプーリ36を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム32には環状塗工ヘッド固定テーブル45が取り付けられている。環状塗工ヘッド固定テーブル45には、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46が取り付けられており、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46上に環状塗工ヘッド38が取り付けられている。また、環状塗工ヘッド固定テーブル45には、軸芯体の位置および塗工ヘッドの位置を検出する光学式測長器48がXY方向にそれぞれ一つずつ取り付けられている。なお、XY(座標)は、一つの平面(ここでは水平面)における直交座標である。
【0031】
LMガイド34にはブラケット37が取り付けられる。ブラケット37には、軸芯体位置補正XYステージ47が取り付けられており、軸芯体位置補正XYステージ47上に軸芯体101を保持し固定する軸芯体下保持軸39が、略鉛直に取り付けられている。また、逆側のローラの軸芯体101を保持する軸芯体上保持軸40の中心軸がブラケット37の上部に取り付けられ、軸芯体上保持軸40は軸芯体下保持軸39に対向して略同心になるように配置して軸芯体を保持している。
【0032】
環状塗工ヘッド38の中心軸は、軸芯体下保持軸39と軸芯体上保持軸40の移動方向と平行となるようにそれぞれに支持されている。また、軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40の昇降移動時において、環状塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットになっている吐出口の中心軸と、軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40の中心軸が略同心になるように調節してある。
【0033】
弾性層を形成するための材料(弾性層材料)である液状材料の供給口41は、配管42を介して供給弁43に接続されている。材料供給弁43は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の液状材料を吐出可能としている。液状材料は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された液状材料は、材料供給弁43から配管42を経由して、供給口41に送られる。
【0034】
供給口41より送り込まれた液状材料は、環状塗工ヘッド38内の流路を通り、環状塗工ヘッド38のノズルから吐出する。ノズルは環状ヘッド内面全周に渡って開口している。そして、吐出された液状材料は軸芯体の周面に塗布される。液状材料を均一な厚さに塗布するために、環状塗工ヘッドノズルからの吐出量と材料供給ポンプからの供給量を一定にして、保持されている軸芯体101を鉛直方向(軸芯体の中心軸方向)に上方へ移動させる。これにより、軸芯体101は環状塗工ヘッド38に対して相対的に軸方向に移動し、軸芯体101の外周上に液状材料からなる円筒形状(ロール形状)の層102が形成される。
【0035】
上記環状塗工ヘッドを有するリングコート機を用いて、本発明に係る弾性ローラを製造することができる。弾性ローラを製造するにあたり、まず基準とする軸芯体上保持軸または下保持軸が塗工ヘッドの中心になるよう塗工ヘッドの位置を調整する。どちらを基準にしても良いが通常軸芯体上保持軸を基準にする。以下軸芯体上保持軸を基準とした際の補正手法について記す。まず、図1で示したLMガイドを鉛直方向に移動させ、軸芯体上保持軸40の先端が光学式測長器48−1及び48−2の測定範囲に入るよう調整し、軸芯体上保持軸の中心の位置座標(水平面におけるXおよびY座標)を読み取る。
【0036】
続いて環状塗工ヘッド38の位置を補正する。塗工ヘッドの位置を補正する手法として例えば環状塗工ヘッドの位置を接触式で求めて調整する方法や、環状塗工ヘッドに基準となるピンを立て、環状塗工ヘッドの位置座標を光学式測長器によって非接触で求める方法などが挙げられる。その一例として、軸芯体上保持軸40の位置座標を基準とした場合の環状塗工ヘッド38の位置の合わせ方を、図2を用いて説明する。その方法としては、まず、軸芯体上保持軸40を環状塗工ヘッド38の内側に開口している吐出口に接触できるようLMガイド(図2には不図示)を鉛直方向に移動させる。その後、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッドを水平方向(X方向およびY方向)にそれぞれ動かす。環状塗工ヘッドが軸芯体上保持軸と接触した位置をX方向およびY方向で検出する。環状塗工ヘッドのX方向およびY方向の移動量から、軸芯体上保持軸の中心と塗工ヘッド内面の中心が重なるように塗工ヘッドを移動する。この操作により軸芯体上保持軸の中心に軸芯体が把持されれば塗工ヘッドの中心座標と軸芯体の中心座標が同一になり、均一な厚さで塗工が可能となる。
【0037】
図3および図4を用いて本発明に係る弾性ローラの製造方法を説明する。上記のように予め環状塗工ヘッドが位置調整されたリングコート機において、軸芯体101は、軸芯体上保持軸40および軸芯体下保持軸39によって上下軸方向に把持される。
【0038】
本発明において、軸芯体を上下軸方向に把持するとは、図3(A)に示すように軸芯体を鉛直方向になるよう軸芯体の端部を把持するものである。
【0039】
次に、上下軸方向に軸芯体101を把持した状態で、LMガイド(図3には不図示)が下降する。この時、光学式測長器48によって、例えば軸芯体の軸方向(長手方向)位置101−1および101−2の二箇所における位置座標(水平面におけるXおよびY座標)を検出する(図3(B))。水平位置座標を検出する軸芯体の長手方向位置は、軸芯体の長さにもよるが、通常軸芯体両端からそれぞれ好ましくは80mm以内、より好ましくは50mm以内の二点を選ぶ。端部により近い方が精度の面で好ましい。
【0040】
軸芯体上保持軸40の下端の位置座標を、光学式測長器48によって検出するまで、LMガイドを下降させる(図3(C))。
【0041】
次に軸芯体の長手方向位置101−1における位置座標と軸芯体の長手方向位置101−2における位置座標の差を解消するように差異と同じ量だけ軸芯体位置補正XYステージ47により軸芯体下保持軸を移動させて補正する(図3(D))。これにより、軸芯体の倒れを補正することができる。さらに、軸芯体の位置101−1における位置座標と予め測定しておいた軸芯体上保持軸の中心座標との差を打ち消すように環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、補正する(図3(D))。これにより、液状材料を塗工したときの弾性層の偏りを補正することができる。
【0042】
その後、環状塗工ヘッド38から液状材料を吐出させ、保持されている軸芯体101を鉛直方向(軸芯体の中心軸方向)に上方へ移動させることで、軸芯体101の外周上に液状材料からなる円筒形状(ロール形状)の層102が形成される(図4(A))。
【0043】
そして、軸芯体上保持軸40を上昇させ、リングコート機から軸芯体を取り外すことで弾性ローラ(未硬化)が製造される(図4(B))。
【0044】
このようにして、軸芯体の位置補正工程、および、環状塗工ヘッドの位置補正工程により、弾性層の厚み精度を良くすることができ、振れの小さい弾性ローラを製造することができる。
【0045】
なお、液状材料を塗布する厚さは硬化した際の厚さ(弾性層の厚さ)が通常0.5mm以上10.0mm以下の範囲となるようにする。好ましくは、2.0mm以上6.0mm以下である。
【0046】
リングコート機としては、特許文献4にて開示されているように、環状塗工ヘッドが横方向に移動させるもの(横型)があり、場合によっては弾性層の均一性が十分にえられる。例えば、弾性層の厚みが2.0mm以下である場合、横型のリングコート機でも有用である。しかしながら、電子写真方式の画像形成装置に用いられる弾性ローラでは弾性層の厚みが一般的に2.0mm以上である。このような弾性ローラは、他の部材と接触した状態で回転しており、接触状態を安定に保つ必要があるからである。しかし、弾性層の厚さが2.0mm以上となるように横型のリングコート機を用いて塗布すると、液状材料の自重により重力方向に垂れが生じ、弾性層の厚みのばらつきが大きくなり、振れが大きくなることが考えられる。したがって、本発明では、上記するような縦型のリングコート機を用いることが好ましい。
【0047】
弾性層の厚さが0.5mm未満であると、例えば現像ローラの場合、好適な弾性が得られず、現像剤へのストレスを低減させることができない。帯電ローラにおいても弾性が不足すると感光ドラムに対して均一に当接することが難しくなり、帯電ムラによる画像不良の原因となる。また、弾性層の厚みが10.0mmを超えると、縦型リングコート機においても、液状材料の自重により重力方向に垂れが生じ、外径寸法や振れを悪化させることがある。
【0048】
弾性ローラとして好ましく使用できる振れ(弾性層の厚みムラ)は、装置のグレードや耐久性にもよるが、90μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、特に現像ローラでは30μm以下が好ましい。30μm以下であると、他部材に与える応力に偏りが生じ、ストレスが大きな部分の磨耗や劣化を早める原因となることを防止でき、電荷や現像剤の供給バランスがくずれることによる画像弊害、特には濃度ムラなどが生じる原因となることを防止できる。弾性層の厚みムラを上記の範囲するには前述のように軸芯体の倒れ及び塗工ヘッドの位置を検出し、必要に応じて適正な位置に補正することと塗工する材料の粘度特性の選択によって達成することが出来る。
【0049】
軸芯体の外周に環状塗工ヘッドで塗布する液状材料の粘度は、10Pa・s以上5000Pa・s以下とする。粘度は25℃における、せん断速1s-1での値である(以下同じ)。液状材料の粘度を10Pa・s以上とすることにより、液状材料の自重により重力方向に垂れが生じず、外径寸法や振れの精度を良くできる。また、弾性層材料の粘度を5000Pa・s以下とすることにより、材料供給における配管内のせん断速度において、弾性層材料粘度が高いために装置に高負荷がかかり安定した材料供給に困難が生じることを防止することができる。
【0050】
また本発明では、軸芯体を上下軸方向に把持する部材が一対で、軸芯体の固体別に、軸芯体位置検出工程、軸芯体位置補正工程、環状塗工ヘッド位置補正工程、および、軸芯体の外周に液状材料を塗工する工程を繰り返すことが好ましい。
【0051】
軸芯体を上下軸方向に把持する部材とは、軸芯体下保持軸39と軸芯体上保持軸40である。軸芯体下保持軸と軸芯体上保持軸が一対で軸芯体を上下方向に把持する。保持軸は内面にテーパ−をつけ、鉛直方向に上下方向から荷重をかけ軸芯体を把持するものや、水平方向に開平するチャック機構により、軸芯体を掴んで把持するもの等が使用出来る。
【0052】
従来、液状材料の粘度が10〜5000Pa・sのような高粘度の弾性層材料であると、前述したように、十分なレベリングが得られず、層厚のバラツキが大きくなることがあった。また、環状塗工槽を用いる場合でも、高粘度弾性層材料であると、環状塗工槽からの弾性層材料の吐出が不均一となり、層厚も不均一なものとなってしまうことがあった。従って、高粘度弾性層材料においては、軸芯体に対し、塗工ヘッドの位置を調整することが望まれる。さらに、前述したように電子写真用弾性ローラにおいては、外径寸法や振れの要求レベルが高く、軸芯体の固体毎の振れや、軸芯体を固体毎に把持した時の軸芯体位置のバラツキをも考慮することが望まれる。軸芯体を上下軸方向に把持する部材が一対で、軸芯体の固体毎に、軸芯体の位置検出、軸芯体の位置補正、塗工ヘッドの位置調整をすることで、より高い振れ精度を有する弾性ローラが繰返し再現性良く製造される。従って、弾性ローラの製造ロットによらない安定性がより高い製造方法となる。
【0053】
本発明では、軸芯体101を軸芯体下保持軸39および軸芯体上保持軸40で上下軸方向に把持した時の軸方向の荷重は0.5N以上200.0N以下であることが好ましい。軸方向の荷重とは軸芯体を鉛直方向の上下から把持した際に、軸芯体を上下から圧縮する方向にかかる力である。例えば、軸芯体下保持軸39にセットされた軸芯体101は、軸芯体上保持軸40を下降することで上下軸方向に把持される。この時の軸方向の荷重が0.5N以上であれば、環状塗工ヘッド38からの液状材料の吐出圧力によって軸芯体が動いてしまうことを優れて防止できる。これにより、検出した軸芯体下保持軸39、軸芯体101、軸芯体上保持軸40の位置座標が、不正確となって弾性ローラの振れが大きくなることを優れて防止できる。また、200.0N以下であれば、軸芯体101自体が撓んでしまうことを優れて防止できる。これにより、軸芯体101が撓んだままの状態で軸心体の外周上に液状材料からなる円筒形状の層102が形成されることを優れて防止できる。リングコート機から軸芯体を取り外すときに、軸芯体の軸方向の荷重が開放され、軸芯体の弾性変形により撓みが解消される。これに付随して弾性層の層厚ムラが生じて弾性ローラの振れが大きくなることを優れて防止できる。
【0054】
また、本発明では、軸芯体の位置検出を一組の検出器で行うことが好ましい。ここで、一組の検出器とは、軸芯体の軸に垂直な面において、X方向およびY方向の位置座標を検出できる構成のものである。例えば、図3(A)に示すように、X方向の位置座標を検出するX方向光学式測長器48−1とY方向の位置座標を検出するY方向光学式測長器48−2で構成される一組の検出器を用いることができる。一組の検出器で位置を検出できるので、リングコート機自体が繁雑にならない。これにより、軸心体101の外周上に液状材料からなる円筒形状の層102が形成された後、リングコート機から軸芯体を取り外すときに、複雑なハンドリング機構を必要としない。さらに、特許文献2および3にて開示されているように、軸芯体の倒れを補正するための位置検出器をさらに一組追加する必要がなく、装置コスト的にメリットがある。
【0055】
さらに、本発明では、軸芯体の位置補正工程と、環状塗工ヘッドの位置補正工程は、同時に行うことが好ましい。前述のように、軸芯体下保持軸39、軸芯体101、軸芯体上保持軸40の各位置座標を検出した後、環状塗工ヘッド38で軸芯体の外周上に液状樹脂からなる円筒形状の層102を形成させる前に、軸芯体の位置補正と環状塗工ヘッドの位置補正が行われる。このとき各々の補正を並列処理することで、軸芯体の位置補正工程と、環状塗工ヘッドの位置補正工程が同時に行われ、製造タクトが短縮できる。
【0056】
〔液状材料〕
本発明では、弾性層を形成する液状材料(弾性層材料)として、室温で流動性を持つポリマーで、加熱により硬化が進行するものを用いることができる。具体的には、液状ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等)、液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴム等が挙げられる。このようなゴムは、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。中でも、弾性層には、十分な変形回復力を持たせることが好ましいため、液状材料としては液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムを用いることが好ましい。特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることが、より好ましい。
【0057】
液状シリコーンゴムは、例えばオルガノポリシロキサン(A液)およびオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B液)を含み、さらに触媒や他の添加物を適宜含む組成物である。
【0058】
オルガノポリシロキサンはシリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが重量平均分子量1万以上100万以下が好ましく、重量平均分子量5万以上70万以下がより好ましい。
【0059】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位である。その種類は特に限定されないが、活性水素との反応が高い等の理由から、ビニル基、アリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基がより好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であり、硬化反応を良好に行わせるために、3個以上のポリマーが好ましい。
【0060】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの平均分子量は特に制限がなく、好ましい重量平均分子量は1000から10000程度である。硬化反応を適切に行わせるためには、比較的低分子量である重量平均分子量1000以上5000以下のポリマーが好ましい。
【0061】
液状シリコーンゴムは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの架橋触媒として、例えば、塩化白金酸六水和物を含むことができる。また、架橋触媒として、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用できる。
【0062】
弾性層には、所望の性能が得られる範囲内になるように、非導電性充填材、可塑剤などの各種添加剤が適宜配合されていてもよい。非導電性充填剤としては、例えば、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、アルミノケイ酸、炭酸カルシウムなどが挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンオイル、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体などが挙げられる。これら液状シリコーンゴム中にカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を適宣添加し所望の抵抗に調整するのが一般的である。
【0063】
〔塗工の後の処理〕
軸芯体の外周に塗布された液状材料の層を赤外線加熱で熱処理し硬化し、弾性ローラとすることができる。液状材料の層の表面は、粘着性を有している。このため、熱処理する方法としては非接触で、装置が簡易で、軸芯体外周上の液状材料の層を長手方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、液状材料からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物層を設けた軸芯体を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理を行うことができる。液状材料の弾性層材料表面の熱処理温度としては、使用する液状材料にもよるが、例えば付加反応架橋型液状シリコーンゴムの場合、シリコーンゴム硬化反応が開始する100℃以上250℃以下が好ましい。
【0064】
ここで、弾性層の硬化後の物性安定化、弾性層中の反応残渣及び未反応低分子分を除去する等を目的として、赤外線加熱後の弾性層に更に熱処理等の二次硬化を行ってもよい。その後、弾性層の両端を突き切って弾性層を必要な長さにすると共に、弾性層形成に際して異常が発生しやすい、液状材料を軸芯体上に形成する際の始端及び終端を予め除去することも好ましい。
【0065】
〔表面層〕
以上のようにして形成された弾性層の外周側に、耐磨耗性やトナー帯電性、離形性の観点から、さらに表面層を設けることもできる。表面層を形成する材料としては、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。これらの材料には必要に応じて各種添加剤が添加される。
【0066】
これらの表面層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させる。得られた表層形成用の分散体は、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層の表面に塗布される。表面層の厚みとしては、5μm〜50μmが好ましい。低分子量成分がしみ出してきて感光ドラムを汚染することを防止する観点から5μm以上が好ましく、ローラが硬くなり、融着が発生することを防止する観点から50μm以下が好ましい。より好ましくは10μm〜30μmである。
【0067】
〔現像ローラ、プロセスカートリッジ、画像形成装置〕
本発明の弾性ローラは上記に記載の製造方法により製造されることを特徴とする。この製造方法により製造された弾性ローラは、寸法精度、特には振れ(弾性層の厚み精度)の良い、ローコストなものである。本発明の弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。さらに本発明の電子写真プロセスカートリッジ、画像形成装置は、この現像ローラを具備する。
【0068】
本発明の弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して、当接または圧接した状態で現像剤(トナー)を担持する。そして、現像ローラは、感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像をトナー像として可視化する機能を持つ。さらに本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置は、この現像ローラとして本発明の弾性ローラを使用する。
【0069】
本発明の弾性ローラを現像ローラとして搭載した電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図5に模式図として示した。この図により以下説明する。
【0070】
なお、本画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a〜10dが4個あり、タンデム方式で設けられている。各画像形成ユニットは、感光ドラム11、帯電装置12(図では帯電ローラ)、画像露光装置(図では書き込みビーム13)、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16(図では転写ローラ)等を有する。これらの仕様が各色トナー特性に応じて少し調整に差異があるものの、基本的構成において4個の画像形成ユニット10a〜10dは同じである。また、感光ドラム11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。
【0071】
現像装置14は、一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光ドラム11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている一成分トナー5を現像ローラ1から掻き取るトナー供給ローラ7が設けられる。また現像ローラ1上の一成分トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0072】
感光ドラム11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が加増露光装置からビーム13として、帯電された感光ドラム11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明の弾性ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分トナーが供給され、感光ドラム11表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光ドラム11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写材25に転写される。
【0073】
なお、本図では4つの画像形成ユニット10a〜10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材25上に重ねて形成されている。したがって、転写材25をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、つまり、画像形成が転写材25の挿入と同期している。そのために、転写材25を輸送するための転写搬送ベルト17が感光ドラム11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされる。転写材25は転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0074】
画像が形成された転写材25は、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写材25への転写が終わった感光ドラム11はさらに回転して、クリーニング装置15により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光ドラム11は次の画像形成に供される。なお、図において、26、27はそれぞれ画像転写装置16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0075】
なお、ここでは、タンデム型の転写材上へ直接各色のトナー像を転写する装置で説明したが、その限りではない。本発明の弾性ローラを現像ローラとして適用可能な装置として、この他にも、白黒の単色画像形成装置、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成装置が挙げられる。また、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光ドラムに並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。また、プロセスカートリッジではなく、感光ドラム、帯電装置、現像装置等が直接画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【0076】
本発明の弾性ローラは、上記した現像ローラとしてばかりでなく、その弾性層の均一性が良好であることから、帯電ローラ、転写ローラ等の導電性が必要な用途にも使用可能である。
【0077】
以上のように本発明の弾性ローラの製造方法は、把持工程、軸芯体位置検出工程、軸芯体位置補正工程、環状塗工ヘッド位置補正工程、塗工工程を有する。塗工工程では、軸芯体の外周に環状塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の液状材料を硬化後の層厚が0.5mm以上10.0mm以下になるよう塗工する。これによって、寸法精度、特には振れ(弾性層の厚み精度)の良い、また繰返し再現性が良い安定したローコストな弾性ローラの製造方法を提供することが可能となる。
【0078】
また、この弾性ローラを用いることにより、優れた特性を有する現像ローラを提供することが可能となる。さらには、これらの弾性ローラを用いることにより、優れた特性を有する電子写真画プロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することが可能となる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0080】
(振れ:弾性層の厚みムラ測定)
振れは、軸芯体を回転軸としてローラを回転させ、回転軸と直角に配置した非接触光学式測長器(キーエンス製、商品名:LS−7000)で測定した弾性層の半径の最大値と最小値の差として求める。弾性層の軸方向に1cmピッチで前記半径の最大値と最小値の差を求め、その差の値の中で最大の値を弾性層の振れの値とする。
【0081】
(画像評価)
以下の実施例・比較例で作成した弾性ローラを現像ローラとして、電子写真方式の画像形成装置の電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。画像形成装置としてはヒューレット・パッカード社製の画像形成装置「HP Color LaserJet 3700」(商品名)を用いた。電子写真プロセスカートリッジは、公称寿命6000枚、A4サイズ、5%印字率、プリントカートリッジ:黒・シアン・マゼンタ・イエローのものであった。
【0082】
次いで、この電子写真プロセスカートリッジを上記画像成形装置に組み込んで、画像(ベタ画像、ハーフトーン画像、文字画像)を出力し、濃度ムラ(ローラピッチ)を目視にて観察し、下記基準で評価した。
A:全画像において良好。
B:ベタ、ハーフトーンにて濃度ムラが若干確認されるが、実用上問題ない。
C:全画像にて濃度ムラが若干確認されるが、実用上問題ない。
D:全画像において濃度ムラが確認された。
【0083】
(液状材料の粘度測定)
粘度測定には、Haake社製RheoStress600(商品名)を用いた。液状材料(シリコーンゴム材料の場合、A液およびB液を質量基準で1:1で混合した未硬化の状態)約1gを採取した。これを試料台の上にのせ、コーンプレートを徐々に近づけて、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した(コーンプレートは直径35mm、傾斜角度1°を用いた)。そのとき、まわりに押し出された弾性層材料を奇麗に除去し測定に影響の出ないようにした。試料温度が25℃になるようにプレート台の温度は設定され、試料をセットしてから10分間放置後、測定を開始した。試料にかけるせん断速度を0.1s-1からスタートし10s-1までの範囲を、0.2s-1ずつ変化させ、せん断速度1s-1のせん断応力をせん断速1s-1で割った値を粘度とした。
【0084】
(軸芯体にかかる軸方向の荷重測定)
荷重測定には、テンションゲージ(大場計器製作所製 丸型バネ式)を用いた。軸芯体をセットしない状態で軸芯体上保持軸40を下降させ、テンションゲージで軸芯体上保持軸を押上げるのに必要な力を軸芯体にかかる軸方向の荷重とした。
【0085】
〔実施例1〕
(弾性層材料の調製)
液状材料(弾性層材料)を軸芯体に塗工する塗工装置としては、図1に示した形態の環状塗工ヘッドを有する縦型リングコート機を用いた。
【0086】
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(商品名:DY35−1265、東レダウコーニング社製)のA液およびB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)8質量部を加えた。これらをそれぞれプラネタリーミキサーで、30分間混合脱泡した。その後、カーボンブラックを配合したA液およびB液を、それぞれ塗工装置付随の原料タンクにセットし、圧送ポンプを使用して、スタテックミキサーに送り出し、A液およびB液を質量基準で1:1で混合した。このシリコーンゴム混合液を弾性層材料とした。その粘度は545Pa・sであった。
【0087】
(弾性ローラの作成の前準備)
弾性ローラを製造するにあたり、軸芯体上保持軸40の軸中心が環状塗工ヘッドの中心となるよう環状塗工ヘッドの位置を調整した。
【0088】
まず、軸芯体上保持軸の位置を光学式測長器48(キーエンス製、商品名:LS−7000。図2には不図示)で計測し、軸芯体上保持軸の中心座標を算出した。続いて、図2に示すよう軸芯体上保持軸40を環状塗工ヘッド38の内側に開口している吐出口に接触できるようLMガイド(図2には不図示)を鉛直方向に移動させる。その後、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッドをX方向およびY方向(水平方向)にそれぞれ動かした。XYステージはステッピングモータにより駆動される移動精度1μmのものを用いた。環状塗工ヘッドが軸芯体上保持軸と接触した時に、導通するように回路を組み、環状塗工ヘッドと軸芯体上保持軸が接触(導通)した時のステッピングモーターに指示した移動量をX方向およびY方向で記録した。環状塗工ヘッドのX方向およびY方向の移動量から、軸芯体上保持軸を基準とした環状塗工ヘッドの中心位置を算出し、中心位置に塗工ヘッドを動かした。具体的には図2に矢印で示したX方向及びY方向の移動距離のそれぞれ中央になる位置に途上ヘッドを移動させた。
【0089】
(弾性ローラの作成)
図3(A)に示すように軸芯体下保持軸39の上端を、環状塗工ヘッド38の中を通って環状塗工ヘッドより上(鉛直方向上)に位置させた。この状態で、軸芯体下保持軸39にセットされた長さ280mm、外直径6mmの鉄製軸芯体を、軸芯体上保持軸40を下降させることで、略鉛直方向に把持した。なお軸芯体にかかる軸方向の荷重は2Nである。その後、図3(B)に示すようにLMガイドで把持した軸芯体を下降させた。このとき、光学式測長器48によって、軸芯体の端部(下端)からの軸方向距離40mm(長手方向位置101−1)および240mm(長手方向位置101−2)の二箇所において軸芯体の座標(XおよびY)を検出した。軸芯体の長手方向位置101−1における位置座標と軸芯体の長手方向位置101−2における位置座標との差を解消するように軸芯体位置補正XYステージ47により軸芯体下保持軸を移動させ、位置補正した。また、補正後のした長手方向位置101−1における軸芯体の中心座標と、予め求めておいた軸芯体上保持軸の中心座標との差を環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッド38を移動させることにより補正した。このとき、軸芯体下保持軸39の位置補正および環状塗工ヘッド38の位置補正を並列処理で行い、同時に行った。
【0090】
その後、軸芯体保持軸を垂直に上昇(30mm/sec)させて軸芯体を移動させた。それに合わせて、環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、上記弾性層材料を2.52ml/secで吐出し、軸芯体の外周に円筒形状(ロール形状)にシリコーンゴム材料の層を形成した。リングコート機から軸芯体を取り外し、未硬化の成形物層を有するローラ(以下、未硬化のローラ)を作成した。
【0091】
この未硬化のローラを、軸芯体を中心として60rpmで回転させ、その未硬化の成形物層表面に、株式会社ハイベック製の赤外線加熱ランプ「HYL25」(商品名)で赤外線(出力1000W)を4分間照射し、成型物層を硬化させた。なお、赤外線照射時の成形物層表面とランプの距離は60mmであり、成形物層表面の温度は200℃であった。その後、硬化したシリコーンゴムの弾性層の物性を安定させ、シリコーンゴムの弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、電気炉で200℃、4時間の二次硬化を行った。こうして、軸芯体の外周上に層厚3.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0092】
このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0093】
(現像ローラの作製)
ポリウレタンポリオールプレポリマー「タケラックTE5060」(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)100質量部、イソシアネート「コロネート2521」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)77質量部およびカーボンブラック「MA100」(商品名、三菱化学株式会社製)24質量部にMEK(メチルエチルケトン)を加え、サンドミルで1時間分散した。分散後さらにMEKを加えて固形分20質量%から30質量%の範囲で塗布乾燥後の膜厚が20μmとなるように調整して、表面層用塗料を得た。
【0094】
この塗料中に、1000本作製した弾性ローラのうち、一番振れが大きい弾性ローラ(本例では振れ25μm)を浸漬して、塗料を表面に塗布した後、自然乾燥させた。次いで、140℃にて60分間加熱処理して、塗料膜を硬化し、表面層が形成された現像ローラNo.1を得た。
【0095】
(画像評価)
作成した現像ローラNo.1(振れ25μm)を現像ローラとして前記電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0096】
〔実施例2〕
付加反応架橋型液状シリコーンゴムのA液およびB液として次のものを用いた。シリコーンベースポリマー(重量平均分子量Mw=100000、東レダウコーニング社製)100質量部、カーボンブラック(商品名:MA77、三菱化学社製)3質量部、をプラネタリーミキサーで、30分間混合脱泡し、シリコーンゴムベース材料を得た。このベース材料100質量部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02質量部を加え、混合したものをA液とした。また、上記シリコーンベース材料100質量部に対して、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(粘度10mPa・s、SiH含有量1質量%、東レダウコーニング社製)1.5質量部を加え、混合したものをB液とした。弾性層形成材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、12Pa・sであった。
【0097】
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、この弾性層材料を0.30ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚0.5mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0098】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.2(振れ28μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0099】
〔実施例3〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を1.49ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚2.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例2と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0100】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.3(振れ30μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0101】
〔実施例4〕
軸芯体位置補正XYステージ47による軸芯体下保持軸39の位置補正を行った後、環状塗工ヘッド位置補正ステージ46による環状塗工ヘッド38の位置補正を行った(軸芯体の位置補正工程と環状塗工ヘッドの位置補正工程を逐次行った)。また環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を6.72ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚6.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例2と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。なお、軸芯体の位置補正工程と環状塗工ヘッドの位置補正工程を逐次処理したので、並列処理したときより1.2倍製造時間が長くなった。
【0102】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.4(振れ30μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0103】
〔実施例5〕
軸芯体位置補正XYステージ47による軸芯体下保持軸39の位置補正を行った後、環状塗工ヘッド位置補正ステージ46による環状塗工ヘッド38の位置補正を行った(軸芯体の位置補正工程と環状塗工ヘッドの位置補正工程を逐次行った)。また環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を14.93ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚10.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例2と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が94%で、振れ60μm以下が100%であった。繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。なお、軸芯体の位置補正工程と環状塗工ヘッドの位置補正工程を逐次処理したので、並列処理したときより1.2倍製造時間が長くなった。
【0104】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.5(振れ48μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0105】
〔実施例6〕
A液およびB液に配合するカーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)をそれぞれ16質量部にした以外、実施例1と同様に弾性層材料を調整した。弾性層形成用材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、4985Pa・sであった。
【0106】
弾性層材料として上記シリコーンゴム材料を使用した以外は実施例2と同様に弾性ローラ(層厚0.5mm)を製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0107】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.6(振れ27μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0108】
〔実施例7〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を1.49ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚2.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例6と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0109】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.7(振れ27μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0110】
〔実施例8〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を6.72ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚6.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例6と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0111】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.8(振れ26μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0112】
〔実施例9〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を14.93ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚10.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例6と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が91%、振れ60μm以下が100%であった。繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0113】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.9(振れ52μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0114】
〔実施例10〕
軸芯体にかかる軸方向の荷重が0.5Nである以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0115】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして現像ローラNo.10(振れ52μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0116】
〔実施例11〕
軸芯体にかかる軸方向の荷重が200.0Nである以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が100%で、繰返し再現性も良く、安定して弾性ローラを製造できた。
【0117】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.11(振れ30μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0118】
〔比較例1〕
軸芯体位置補正XYステージ47による軸芯体下保持軸39の位置補正、および環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46による環状塗工ヘッド38の位置補正を行わなかった以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。なお、弾性ローラを1000本作成するにあたり、最初の1本目を作成する前にのみ、基準とした軸芯体上保持軸40に対し、軸芯体下保持軸39を位置補正してある。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が14%、振れ60μm以下が43%、振れ90μm以下が78%であった。振れが小さい弾性ローラを安定して製造しづらかった。
【0119】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.12(振れ120μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0120】
〔比較例2〕
シリコーンゴムベース材料に配合するカーボンブラック(商品名:MA77、三菱化学社製)を1質量部にした以外は実施例2と同様に弾性層材料を調整した。弾性層形成材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、8Pa・sであった。弾性層材料としてこのシリコーンゴム材料を用いたこと以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が8%、振れ60μm以下が74%、振れ90μm以下が100%であった。振れが小さい弾性ローラを安定して製造しづらかった。
【0121】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.13(振れ85μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0122】
〔比較例3〕
A液およびB液に配合するカーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)をそれぞれ20質量部にした以外は実施例1と同様に弾性層材料を調整した。弾性層形成用材料であるシリコーンゴム混合液粘度は、6520Pa・sであった。弾性層材料としてこのシリコーンゴム材料を用いたこと以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が12%、振れ60μm以下が71%、振れ90μm以下が100%であった。振れが小さい弾性ローラを安定して製造しづらかった。
【0123】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.14(振れ80μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0124】
〔比較例4〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、シリコーンゴム材料を20.16ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚12.0mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。弾性ローラの振れ30μm以下が32%、振れ60μm以下が78%、振れ90μm以下が100%であった。振れが小さい弾性ローラを安定して製造しづらかった。
【0125】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.15(振れ90μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0126】
〔比較例5〕
環状塗工ヘッドの内側に開口した環状スリットから、弾性層材料を0.18ml/secで吐出し、軸芯体の外周上に層厚0.3mmのシリコーン層を有する弾性ローラを得た以外は実施例1と同様に弾性ローラを製造した。このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。弾性ローラの振れ30μm以下が100%であった。この弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。
【0127】
また、ここで作成した弾性ローラのうち最も振れの大きいものを用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラNo.16(振れ28μm)を得、これを現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表2に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
※比較例5においては、層厚が0.3mmであるため、弾性層の弾性が得られず、現像剤がストレスを受け劣化してしまい、画像ががさついたものとなり濃度ムラの評価ができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明において好適に用いることのできるリングコート機の例の概略を表す模式図である。
【図2】環状塗工ヘッド位置座標の求め方の一例を説明するための模式図である。
【図3】本発明における位置検出及び位置補正の例を説明するための模式図である。
【図4】本発明における塗工の例を説明するための模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置の例の概略を表す模式図である。
【符号の説明】
【0132】
1 現像ローラ
5 非磁性一成分トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光ドラム
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置からの書き込みビーム
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 転写材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)
31 架台
32 コラム
33 ボールネジ
34 LMガイド
35 サーボモータ
36 プーリ
37 ブラケット
38 環状塗工ヘッド
39 軸芯体下保持軸
40 軸芯体上保持軸
41 供給口
42 配管
43 材料供給弁
44 リニアガイド
45 環状塗工ヘッド固定テーブル
46 環状塗工ヘッド位置補正XYステージ
47 軸芯体位置補正XYステージ
48−1 X方向光学式測長器
48−2 Y方向光学式測長器
101 軸芯体
102 弾性層(未硬化の状態を含む)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体を上下軸方向に把持する把持工程;
該軸芯体の位置を検出する軸芯体位置検出工程;
該軸芯体の位置を補正する軸芯体位置補正工程;
該軸芯体の外周に液状材料を塗工する環状塗工ヘッドの位置を補正する環状塗工ヘッド位置補正工程;および、
該軸芯体の外周に、該環状塗工ヘッドで粘度10Pa・s以上5000Pa・s以下の液状材料を硬化後の層厚が0.5mm以上10.0mm以下になるように塗工する塗工工程
を有することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記軸芯体を上下軸方向に把持する部材が一対で、
該軸芯体の固体毎に、前記軸芯体位置検出工程、軸芯体位置補正工程、環状塗工ヘッド位置補正工程、および塗工工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記液状材料の硬化後の層厚が2.0mm以上6.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記軸芯体を上下軸方向に把持したときの軸方向の荷重が、0.5N以上200.0N以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記軸芯体の位置検出を、一組の検出器で行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
前記軸芯体位置補正工程と、前記環状塗工ヘッド位置補正工程とを、同時に行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【請求項8】
前記弾性ローラが現像ローラであることを特徴とする請求項7記載の弾性ローラ。
【請求項9】
現像ローラの表面に現像剤の層を形成して、該現像剤の層を像担持体に接触させて該現像剤を該像担持体に供給することにより、該像担持体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラが、請求項7に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項10】
現像ローラの表面に現像剤の層を形成して、該現像剤の層を像担持体に接触させて該現像剤を該像担持体に供給することにより、該像担持体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、
該現像ローラが、請求項7に記載の弾性ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−164987(P2008−164987A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355051(P2006−355051)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】