説明

弾性境界波装置の製造方法

【課題】圧電基板上に第1及び第2の誘電体層が形成されている弾性境界波装置を高い良品率で製造できる方法を提供する。
【解決手段】複数の素子領域11aが形成されており、複数の素子領域11aのそれぞれの上にIDT電極12が形成されている圧電基板ウエハ11と、圧電基板ウエハ11の上に、IDT電極12を覆うように形成されている第1の誘電体膜13とを有する積層体10を形成する。第1の誘電体膜13の隣り合う素子領域11aの境界B上に位置する部分の厚みを低減する。第1の誘電体膜13の上に、第2の誘電体膜15を形成する。第2の誘電体膜15が形成された積層体10を、隣り合う素子領域11aの境界Bで切断することにより弾性境界波装置16を複数形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性境界波装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性境界波を利用した弾性境界波装置が知られている。弾性境界波装置では、一般的に、表面にIDT電極が形成されている圧電基板上に、第1の誘電体膜が形成されており、さらにその第1の誘電体膜の上に第2の誘電体膜が形成されている。このように、基板の上に薄膜を形成した場合、薄膜の応力によって基板が反り、搬送工程などにおいて基板が割れる場合があるという問題があった。また、第1の誘電体膜の膜応力により圧電基板が沿ってしまうと、第2の誘電体膜が均一な厚みで作製し難いという問題もあった。
【0003】
堆積膜が形成された基板の反りを低減する技術としては、例えば下記の特許文献1において、ダイシングにより基板の表面に複数の溝を形成した後に、堆積膜を形成する技術が開示されている。特許文献1には、基板に溝を予め形成しておくことにより、堆積膜の膜応力を分散させることができるため、膜応力により発生する基板の反り、膜剥がれ等を抑制できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−286568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように、基板の表面に溝を形成した場合、基板自体の剛性が低下する。従って、特許文献1に記載の方法では、膜応力に起因する基板の反り等は低減できるものの、溝を形成したことによる基板の剛性低下に起因して、搬送工程などにおいて、基板が割れたり、基板にクラックが生じたりする場合があった。その結果、良品率が低下する場合があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電基板上に第1及び第2の誘電体層が形成されている弾性境界波装置を高い良品率で製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法は、圧電基板と、圧電基板の上に形成されているIDT電極と、圧電基板の上に、IDT電極を覆うように形成されている第1の誘電体膜と、第1の誘電体膜の上に形成されており、第1の誘電体膜よりも音速が高い第2の誘電体膜とを備える弾性境界波装置の製造方法に関する。本発明に係る弾性境界波装置の製造方法は、複数の素子領域が形成されており、複数の素子領域のそれぞれの上にIDT電極が形成されている圧電基板ウエハと、圧電基板ウエハの上に、IDT電極を覆うように形成されている第1の誘電体膜とを有する積層体を形成する工程と、第1の誘電体膜の隣り合う素子領域の境界上に位置する部分の厚みを低減する厚み低減工程と、第1の誘電体膜の上に、第2の誘電体膜を形成する工程と、第2の誘電体膜が形成された積層体を、隣り合う素子領域の境界で切断することにより弾性境界波装置を複数形成する切断工程とを備えている。
【0008】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法のある特定の局面では、厚み低減工程は、第1の誘電体膜の隣り合う素子領域の境界上に位置する部分を除去する工程である。この構成によれば、第2の誘電体膜の膜応力をより効果的に分散させることができる。従って、基板が割れることや、基板にクラックが生じることをより確実に抑制できるため、より高い良品率を実現することができる。
【0009】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法の他の特定の局面では、第1の誘電体膜を厚さ方向に貫通し、IDT電極に至る貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔に導体を埋設することによりIDT電極に接続されているビアホール電極を形成する工程とをさらに備え、厚み低減工程は、貫通孔形成工程と同時に行われる。この構成によれば、ビアホール電極形成用の貫通孔の形成と、第1の誘電体膜の厚み低減とを同時に行えるため、弾性境界波装置の製造工程を簡略化することができる。
【0010】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法の別の特定の局面では、厚み低減工程は、ドライエッチング法またはウエットエッッチング法により、第1の誘電体膜の隣り合う素子領域の境界上に位置する部分をエッチングすることにより、当該部分の厚みを低減する工程である。この構成によれば、例えば、ダイシングプレートを用いて厚み低減工程を行う場合と比べて、厚み低減工程において第1の誘電体膜に溝またはスリットを形成する際に、第1の誘電体膜にクラックなどが生じ難い。従って、さらに高い良品率を実現することができる。
【0011】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法のさらに他の特定の局面では、切断工程は、第2の誘電体膜が形成された積層体を、ダイシングプレートを用いて、隣り合う素子領域の境界上で切断する工程であり、厚み低減工程において第1の誘電体膜の厚みが低減された部分の幅は、ダイシングプレートの幅よりも大きい。この構成によれば、第1の誘電体膜の端面が第2の誘電体膜により覆われるため、第1の誘電体膜の耐湿性を向上することができる。
【0012】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法のさらに別の特定の局面では、第1の誘電体膜は、酸化ケイ素からなり、第2の誘電体膜は窒化珪素からなる。窒化珪素は、特に耐湿性が高いため、この構成によれば、第1の誘電体膜の耐湿性をさらに向上することができる。
【0013】
本発明に係る弾性境界波装置の製造方法のまた他の特定の局面では、厚み低減工程において、第1の誘電体膜に厚みが低減された部分を複数形成する。この構成によれば、第1の誘電体膜の膜応力をより効果的に分散できるため、圧電基板ウエハの反りをより効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、基板に溝などを形成せず、第1の誘電体膜の隣り合う素子領域の境界上に位置する部分の厚みを低減するため、基板の剛性を低下させることなく第1及び第2の誘電体膜の膜応力を分散させることができ、従って、基板が割れたり基板にクラックが生じたりすることを抑制でき、高い良品率で弾性境界波装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態における弾性境界波装置の製造方法を表すフローチャートである。
【図2】積層体の一部分を表す模式的平面図である。
【図3】積層体の一部分を表す略図的断面図である。
【図4】第1の誘電体膜に溝を形成した積層体の一部分を表す略図的断面図である。
【図5】第2の誘電体膜が形成された積層体の一部分を表す略図的断面図である。
【図6】弾性境界波装置の一部を表す断面図である。
【図7】第2の実施形態における第2の誘電体膜が形成された積層体の一部分を表す略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態では、まず、ステップS1において、圧電基板ウエハ11(図3を参照)を準備する。この圧電基板ウエハ11は、複数の弾性境界波装置の圧電基板を形成するためのものであり、後の工程において切断されて複数の圧電基板となる。このため、圧電基板ウエハ11には、図2に示すように、各弾性境界波装置の圧電基板を構成する素子領域11aが複数形成されている。この複数の素子領域11aのそれぞれから各弾性境界波装置の圧電基板が形成される。
【0018】
圧電基板ウエハ11の材質は、特に限定されず、例えば、LiNbOやLiTaOなどの適宜の圧電材料により圧電基板ウエハ11を形成することができる。
【0019】
次に、図1に示すステップS2において、圧電基板ウエハ11の各素子領域11aの上に、図2及び図3に示すIDT電極12を形成する。IDT電極12の形成方法は、特に限定されない。IDT電極12は、例えば、スパッタ法や蒸着法などの薄膜形成法により形成した薄膜をフォトリソグラフィー法などのパターニング方法によりパターニングすることにより形成することができる。
【0020】
IDT電極12の形成材料は、導電材料である限りにおいて特に限定されず、IDT電極12は、例えば、Au、Ag、Pt、Ni、Cuなどの金属、これらの金属の少なくともひとつを含む合金などにより形成することができる。なお、図2では、描画の便宜上、IDT電極12を単なる矩形として描画しているが、実際は、IDT電極12は、互いに間挿し合う一対のくし歯電極により構成されている。
【0021】
次に、図1に示すステップS3において、図3に示すように、複数のIDT電極12が形成された圧電基板ウエハ11の上に、IDT電極12を覆うように第1の誘電体膜13を形成する。これにより、圧電基板ウエハ11と、IDT電極12と、第1の誘電体膜13とを含む積層体10を形成する(ステップS1)。なお、このステップS1終了時においては、第1の誘電体膜13の厚みはほぼ均一である。具体的には、第1の誘電体膜13の境界B以外の部分の厚みH1と、境界Bにおける厚みH2とは略同一となっている。
【0022】
第1の誘電体膜13の形成方法は、特に限定されず、例えば、スパッタ法や蒸着法などの薄膜形成法により形成することができる。第1の誘電体膜13の形成材料は、特に限定されず、例えば、SiOなどの酸化ケイ素や、SiNなどの窒化珪素などにより第1の誘電体膜13を形成することができる。
【0023】
次に、図1に示すステップS4において、第1の誘電体膜13の隣り合う素子領域11aの境界B上に位置する部分の厚みを低減する厚み低減工程を行う。具体的には、本実施形態では、図4に示すように、第1の誘電体膜13の境界B上に位置する部分を除去して溝13aを形成する。本実施形態において溝13aは圧電基板ウエハ11に達しているが、溝13aは、圧電基板ウエハ11に達していなくてもよい。すなわち、本発明において、第1の誘電体膜13の境界B上に位置する部分は、完全に除去しなくてもよい。
【0024】
なお、本発明において、第1の誘電体膜の一部を除去するとは、その部分の第1の誘電体膜の膜厚をゼロにすることを意味する。
【0025】
溝13aの形成方法は、特に限定されず、例えば、ダイシングプレートを用いて行ってもよいが、本実施形態では、ドライエッチング法やウエットエッチング法などのエッチング法により行われる。このように、エッチング法により溝13aを形成することにより、溝13aの形成時に第1の誘電体膜13や圧電基板ウエハ11にクラック等が発生することが効果的に抑制される。
【0026】
また、本実施形態では、溝13aを形成するステップS4において、第1の誘電体膜13を厚さ方向に貫通し、IDT電極12に達する、ビアホール電極形成用の貫通孔13bも形成される。すなわち、ステップS4では、第1の誘電体膜13をエッチングすることにより、溝13aと貫通孔13bとを一度に形成する。このように、エッチング法を用いて、溝13aと貫通孔13bとを同時に形成することにより、弾性境界波装置の製造工程数を少なくすることができる。
【0027】
次に、図1に示すステップS5において、図4に示すように、貫通孔13bに導体を埋設することによりIDT電極12に接続されているビアホール電極14を形成する。ビアホール電極14の形成方法は、特に限定されず、導電性ペーストを用いる方法や、薄膜形成法を用いてビアホール電極14を形成することができる。ビアホール電極14の形成材料は、導電性材料である限りにおいて特に限定されず、例えば、Al、Ti、Au、Ag、Pt、Ni、Cuなどの金属、これらの金属の少なくともひとつを含む合金などにより形成することができる。
【0028】
次に、図1に示すステップS6において、ステップS5において形成したビアホール電極14を用いてIDT電極12に電圧を印加し、IDT電極12において生じる弾性波の周波数を測定する。そして、その測定された周波数と、予め定められた設定周波数との差に応じて周波数特性の調整を行う。周波数特性の調整方法は特に限定されず、例えば、第1の誘電体膜13の厚さを調整する方法、後の工程で形成する第2の誘電体膜の形成厚さを変更する方法などを用いて周波数特性の調整を行うことができる。弾性境界波装置では、第2の誘電体膜を形成した後は、周波数特性の調整が困難であるため、本実施形態のように、第1の誘電体膜13を形成した時点で、周波数特性を調整しておくことにより、所望の周波数特性を有する弾性境界波装置を高い良品率で製造することができる。
【0029】
次に、図1に示すステップS7において、図5に示すように、第1の誘電体膜13の上に、第2の誘電体膜15を形成する。第2の誘電体膜15の形成方法は特に限定されず、第2の誘電体膜15は、例えば、例えば、スパッタ法や蒸着法などの薄膜形成法により形成することができる。第2の誘電体膜15の材料は、第1の誘電体膜13の材料よりも音速が高い材料であれば特に限定されず、例えば、SiOなどの酸化ケイ素や、SiNなどの窒化珪素などにより第2の誘電体膜15を形成することができる。例えば、第1の誘電体膜13をSiOなどの酸化ケイ素により形成した場合、第2の誘電体膜15は、SiNなどの窒化珪素により形成することができる。
【0030】
そして、第2の誘電体膜15を形成した後に、第2の誘電体膜15への貫通孔の形成、膜上配線の形成、ポリイミド膜などの保護膜の形成、アンダーバンプメタルの形成などを適宜行う。
【0031】
次に、図1に示すステップS8において、図5に示すダイシングプレート20を用いて、第2の誘電体膜15が形成された積層体10を境界B上で切断する(切断工程)。これにより、第2の誘電体膜15が形成された積層体10から複数の弾性境界波装置16(図6を参照)を形成するする。本実施形態では、上述の厚み低減工程において第1の誘電体膜13の厚みが低減されている分、ダイシングプレート20の摩耗を低減することができる。
【0032】
なお、ステップS8において使用するダイシングプレート20の幅W2(図5を参照)は、厚み低減工程であるステップS4において第1の誘電体膜13の厚みが低減された部分、すなわち溝13aの幅W1よりも小さいことが好ましい。すなわち、溝13aの幅W1は、ダイシングプレート20の幅W2よりも大きいことが好ましい。このようにすることにより、図6に示すように、第1の誘電体膜13の端面が第2の誘電体膜15により覆われる。よって、第1の誘電体膜13の耐湿性を向上することができる。特に、第2の誘電体膜15が吸湿性の小さい窒化珪素により形成されている場合は、第1の誘電体膜13の耐湿性をより効果的に向上することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、厚み低減工程において、第1の誘電体膜13の隣り合う素子領域11aの境界B上に位置する部分の厚みが低減される。このため、第1の誘電体膜13の膜応力が、第1の誘電体膜13の厚み低減部において分断される。その結果、第1の誘電体膜13の膜応力が分散される。特に本実施形態では、第1の誘電体膜13の境界B上の部分を除去して圧電基板ウエハ11に至る溝13aを形成するため、第1の誘電体膜13の膜応力をより効果的に分散させることができる。従って、圧電基板ウエハ11の反りを低減することができる。また、圧電基板ウエハ11の割れや圧電基板ウエハ11にクラックが生じることも抑制することができる。従って、弾性境界波装置16を高い良品率で製造することができる。
【0034】
また、このように、本実施形態では、第1の誘電体膜13の膜応力に起因して圧電基板ウエハ11が反ることが抑制される。よって、第1の誘電体膜13の表面を平坦にすることができる。従って、均一な厚みの第2の誘電体膜15を容易に形成することができる。
【0035】
また、本実施形態のように、圧電基板ウエハ11の上に複数の膜を形成する場合、膜が剥離するという特有の問題が生じるおそれがある。それに対して、本実施形態では、第1の誘電体膜13の境界B上の部分を除去して圧電基板ウエハ11に至る溝13aを形成するため、第1の誘電体膜13の上に形成した第2の誘電体膜15の応力が第1の誘電体膜の溝部で緩和される。従って、第1及び第2の誘電体膜13,15が剥がれにくい。
【0036】
また、本実施形態では、圧電基板ウエハ11に溝などを形成しない。このため、圧電基板ウエハ11の剛性を低下させない。従って、圧電基板ウエハ11の剛性低下に起因する圧電基板ウエハ11の割れや圧電基板ウエハ11にクラックが生じることを効果的に抑制することができる。
【0037】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。また、下記の実施形態において、図1〜図3を上記第1の実施形態と共通に参照する。
【0038】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態における第2の誘電体膜が形成された積層体の一部分を表す略図的断面図である。図7に示すように、本実施形態では、図1に示すステップS4の厚み低減工程において、第1の誘電体膜13の境界B部分に厚み低減部を複数形成する。具体的には、第1の誘電体膜13の境界B部分に、境界Bの法線方向に沿って間隔をおいて配列された複数の溝13aを形成する。その後、図1に示すステップS7において第2の誘電体膜15を形成する。
【0039】
このように、第1の誘電体膜13の境界B部分に複数の厚み低減部を形成することにより、第1の誘電体膜13の膜応力をより効果的に分散させることができる。特に本実施形態では、複数の溝13aが形成されているため、第1の誘電体膜13の膜応力をさらに効果的に分散させることができる。従って、圧電基板ウエハ11の反りをより効果的に低減することができる。
【0040】
なお、図7では、溝13aを3本形成する例について説明したが、溝13aの本数は特に限定されず、2本であってもよいし、4本以上であってもよい。
【0041】
(実験例1)
直径10.16cm(4インチ)、厚さ0.5mmの円板状の25°カットLiNbOウエハからなる圧電基板ウエハの上に、Ti/Pt/Ti/AlCu/Ti/Pt/TiからなるIDT電極を形成し、さらに、第1の誘電体膜として、IDT電極を覆うように厚み2μmの酸化ケイ素膜をスパッタにより形成した。そして、上記の第1の実施形態のように、酸化ケイ素膜をドライエッッチング法によりエッチングすることにより、酸化ケイ素膜に溝幅5μmの、LiNbOウエハにまで達する溝を形成し、0.8mm×0.6mm角の素子領域を形成した。そして、第2の誘電体膜として、酸化ケイ素膜の上に厚み3μmの窒化珪素膜をスパッタにより形成した。その後、触針式形状測定器を用いてLiNbOウエハの反りを測定した。その結果、LiNbOウエハは、窒化珪素膜側に突出するように反っており、反り量は、331.0μmであった。
【0042】
(実験例2)
酸化ケイ素膜に溝を形成しないこと以外は、上記実験例1と同様にして積層体を形成し、LiNbOウエハの反り量を測定した。反り量は、556.1μmであった。
【0043】
(実験例3)
上記第2の実施形態のように、第1の誘電体膜に複数の溝を形成したこと以外は、上記実験例1と同様にして積層体を形成し、LiNbOウエハの反り量を測定した。反り量は、285.3μmであった。
【0044】
なお、実施例3においては、具体的には、溝幅2μmの3本の溝を3μm間隔で形成した。
【0045】
上記実験例1〜3の結果から分かるように、第1の誘電体膜13に溝を形成することにより、圧電基板ウエハの反りを低減できることが分かる。
【0046】
また、第1の誘電体膜に溝を1本形成した実験例1よりも、溝を3本形成した実験例2の方が圧電基板ウエハの反り量が小さかった。この結果から、第1の誘電体膜に溝を複数形成することにより、圧電基板ウエハ11の反りをより効果的に低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0047】
10…積層体
11…圧電基板ウエハ
11a…素子領域
12…IDT電極
13…第1の誘電体膜
13a…溝
13b…貫通孔
14…ビアホール電極
15…第2の誘電体膜
16…弾性境界波装置
20…ダイシングプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、前記圧電基板の上に形成されているIDT電極と、前記圧電基板の上に、前記IDT電極を覆うように形成されている第1の誘電体膜と、前記第1の誘電体膜の上に形成されており、前記第1の誘電体膜よりも音速が高い第2の誘電体膜とを備える弾性境界波装置の製造方法であって、
複数の素子領域が形成されており、前記複数の素子領域のそれぞれの上に前記IDT電極が形成されている圧電基板ウエハと、前記圧電基板ウエハの上に、前記IDT電極を覆うように形成されている前記第1の誘電体膜とを有する積層体を形成する工程と、
前記第1の誘電体膜の隣り合う前記素子領域の境界上に位置する部分の厚みを低減する厚み低減工程と、
前記第1の誘電体膜の上に、前記第2の誘電体膜を形成する工程と、
前記第2の誘電体膜が形成された前記積層体を、隣り合う前記素子領域の境界で切断することにより前記弾性境界波装置を複数形成する切断工程とを備える、弾性境界波装置の製造方法。
【請求項2】
前記厚み低減工程は、前記第1の誘電体膜の隣り合う前記素子領域の境界上に位置する部分を除去する工程である、請求項1に記載の弾性境界波装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の誘電体膜を厚さ方向に貫通し、前記IDT電極に至る貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に導体を埋設することにより前記IDT電極に接続されているビアホール電極を形成する工程とをさらに備え、
前記厚み低減工程は、前記貫通孔形成工程と同時に行われる、請求項1または2に記載の弾性境界波装置の製造方法。
【請求項4】
前記厚み低減工程は、ドライエッチング法またはウエットエッッチング法により、前記第1の誘電体膜の隣り合う前記素子領域の境界上に位置する部分をエッチングすることにより、当該部分の厚みを低減する工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性境界波装置の製造方法。
【請求項5】
前記切断工程は、前記第2の誘電体膜が形成された前記積層体を、ダイシングプレートを用いて、隣り合う前記素子領域の境界上で切断する工程であり、前記厚み低減工程において前記第1の誘電体膜の厚みが低減された部分の幅は、前記ダイシングプレートの幅よりも大きい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の弾性境界波装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の誘電体膜は、酸化ケイ素からなり、前記第2の誘電体膜は窒化珪素からなる、請求項5に記載の弾性境界波装置の製造方法。
【請求項7】
前記厚み低減工程において、前記第1の誘電体膜に厚みが低減された部分を複数形成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の弾性境界波装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−258555(P2010−258555A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103772(P2009−103772)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】