説明

弾性波デバイス

【課題】電極パッドの腐食を抑制できる信頼性の高い弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】圧電基板2と、圧電基板2上に形成された弾性波素子4と、圧電基板2上に形成され、少なくとも1つ以上の金属層からなり、弾性波素子4と電気的に接続された電極パッド14と、弾性波素子4を封止する封止部6と、封止部6を貫通して電極パッド14上に形成され、電極パッド14と電気的に接続された電極ポスト8と、電極パッドを形成する金属層のうち、少なくとも1つの金属層の上であって、封止部6と電極ポスト8との界面の少なくとも一部の下に形成された絶縁膜12と、を具備する弾性波デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、弾性波デバイスに関し、特に弾性波素子を封止した弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動体通信機器等に使用されるフィルタやデュプレクサとして弾性波デバイスが広く使用されている。近年、小型化の要求に応え、弾性波素子のサイズまで弾性波デバイスのパッケージを小型化したWLP(Wafer Level Package:ウェハ・レベル・パッケージ)型弾性波デバイスが開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、圧電基板に近いほうから順に、Al/Ti/Au/Tiにより電極パッドを形成し、弾性波素子を封止する樹脂部と電極パッドとの密着性を高める弾性波デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−159124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の弾性波デバイスでは、電極ポストと樹脂部との界面から浸入した水分により、電極パッドが腐食することがあった。
【0006】
本願発明は上記課題に鑑み、電極パッドの腐食を抑制できる信頼性の高い弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された弾性波素子と、前記圧電基板上に形成され、少なくとも1つ以上の金属層からなり、前記弾性波素子と電気的に接続された電極パッドと、前記弾性波素子を封止する封止部と、前記封止部を貫通して前記電極パッド上に形成され、前記電極パッドと電気的に接続された電極ポストと、前記電極パッドを形成する金属層のうち、少なくとも1つの金属層の上であって、前記封止部と前記電極ポストとの界面の少なくとも一部の下に形成された絶縁膜と、を具備する弾性波デバイスである。本発明によれば、絶縁膜により水分の浸入を抑制することで、電極パッドを形成する金属層の腐食を抑制することができる。従って、弾性波デバイスの信頼性が向上する。
【0008】
上記構成において、前記絶縁膜は、前記封止部と前記電極ポストとの界面の全ての下において形成されている構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に水分の浸入を抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記電極パッドを形成する金属層のうち最下層の金属層は、前記弾性波素子の電極を形成する金属と同じ金属からなる構成とすることができる。この構成によれば、工程を簡略化することができる。
【0010】
上記構成において、前記弾性波素子の電極、及び前記電極パッドの最下層の金属層は、Al又はAlを含む合金からなる構成とすることができる。この構成によれば、良好なデバイス特性を得ることができ、かつ電極パッドの腐食を抑制して弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。
【0011】
上記構成において、前記絶縁膜は、シリコン化合物からなる構成とすることができる。この構成によれば、絶縁膜が水分の浸入しにくい材料で形成されるため、水分の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0012】
上記構成において、前記絶縁膜は、酸化シリコン又は窒化シリコンから構成とすることができる。この構成によれば、絶縁膜が水分の浸入しにくい材料で形成されるため、水分の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0013】
上記構成において、前記電極パッドは複数の金属層からなり、前記絶縁膜は、前記複数の金属層のうち、少なくとも1つの金属層の上であって、前記少なくとも1つの金属層の上に形成された他の金属層の下に形成されている構成とすることができる。この構成によれば、電極パッドの電気抵抗を低減し、かつ工程を効率化することができる。
【0014】
上記構成において、前記弾性波素子と前記電極パッドとを接続する配線を備え、前記配線は、互いに接触する前記複数の金属層からなる構成とすることができる。この構成によれば、配線の電気抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電極パッドの腐食を抑制できる信頼性の高い弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は実施例1に係る弾性波デバイスを例示する平面図であり、図1(b)及び図1(c)は実施例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。
【図2】図2は実施例1に係る弾性波デバイスの電極パッド周辺を例示する断面図である。
【図3】図3(a)から図3(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
初めに、実施例1に係る弾性波デバイスの構成について説明する。図1(a)は実施例1に係る弾性波デバイスを例示する平面図であり、図1(b)及び図1(c)は実施例1に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。図1(a)において、封止部6に封止されている弾性波素子4及び配線10は、破線で図示している。また図1(a)において、後述する絶縁膜12の開口部11は点線で図示している。図1(b)は図1(a)のA−Aに沿った断面図であり、図1(c)はB−Bに沿った断面図である。
【0019】
図1(a)から図1(c)に示すように、弾性波デバイスは圧電基板2、IDT(Inter Digital Transducer)や反射器等からなる弾性波素子4、封止部6、電極ポスト8、配線10、絶縁膜12、電極パッド14を備える。
【0020】
図1(a)に示すように、例えばLiTaOやLiNbO等の圧電体からなる圧電基板2上に、例えばAl等の金属からなるIDT及び反射器を備えた複数の弾性波素子4が形成されている。複数の弾性波素子4は配線10を介して相互に接続される。また弾性波素子4と後述する電極パッド14とは、配線10を介して接続される。さらに弾性波素子4は、配線10及び電極パッド14を介して電極ポスト8と接続される。電極ポスト8は、図中に点線で示す開口部11、つまり絶縁膜12の端部と重なっている。次にA−Aに沿った断面を参照して、弾性波デバイスの構成について説明する。
【0021】
図1(b)に示すように、弾性波素子4の電極は一層構造であり、例えばAl等の金属からなる。圧電基板2上には、弾性波素子4を覆うように、例えばSiO等の絶縁体からなる絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12上には、例えばエポキシ樹脂等の感光性樹脂からなる封止部6及び7が形成されている。封止部6は、弾性波素子4が形成されている領域には形成されない。封止部7は、封止部6及び弾性波素子4上に、弾性波素子4を覆うように形成される。つまり封止部6及び7は、弾性波素子4上に中空部5が形成されるように、弾性波素子4を封止する。中空部5が形成されるため、弾性波素子4の励振は抑制されない。次にB−Bに沿った断面を参照して、弾性波デバイスの構成についてさらに説明する。
【0022】
図1(c)に示すように、圧電基板2上に複数の電極パッド14が形成されており、電極パッド14間は配線10により接続されている。配線10及び電極パッド14は複数の金属層からなり、最下層であるAl層16、及びAl層16上に例えば下から順にTi/Au/Ti等の金属からなる金属層18が積層されてなる。Al層16は、弾性波素子4の電極を形成する金属と同じ金属からなる。また、電極パッド14のAl層16と金属層18との間には、絶縁膜12が形成されている。電極パッド14の構成については、図2を参照して後述する。
【0023】
配線10及び電極パッド14の金属層18上には封止部6が形成され、封止部6上には封止部7が形成されている。電極パッド14の金属層18上には、封止部6及び7を貫通して、例えばCu等の金属からなる電極ポスト8が形成されている。弾性波素子4は、配線10、電極パッド14を介して電極ポスト8と電気的に接続される。電極パッド14は、弾性波デバイスの外部端子として機能する。なお、圧電基板2の上面から封止部7の上面までの高さは例えば75μm、封止部6の厚さは例えば30μmである。絶縁膜12の厚さは例えば120nm、Al層16の厚さは例えば350nm、金属層18の厚さは例えば650nm、である。
【0024】
次に、電極パッド14周辺の構成について詳述する。図2は実施例1に係る弾性波デバイスの電極パッド周辺を例示する断面図である。
【0025】
図2に示すように、電極パッド14の周辺部には下から順に、Al層16、絶縁膜12、金属層18が積層されている。絶縁膜12は、金属層18が露出するような開口部11を有している。つまり、電極パッド14の中央部には下から順に、Al層16、金属層18が積層されている。金属層18上には、電極ポスト8、封止部6及び7が形成されている。封止部6及び7は、電極パッド14の上面が露出するような開口部9を有している。開口部9には、封止部6及び7を貫通するように、電極ポスト8が形成されている。電極ポスト8の下面は電極パッド14と、側面は封止部6及び7と、それぞれ接触している。また、絶縁膜12はAl層16の上面に接触している。
【0026】
封止部6及び7が有する開口部9の開口長L1は例えば120μmである。絶縁膜12が有する開口部11の開口長L2は例えば80μmである。つまり、絶縁膜12の端部は、封止部6及び7の端部より、電極パッド14の中央部側に位置する。言い換えれば、絶縁膜12は、封止部6及び7と電極ポスト8との界面の下に形成されている。さらに図1(a)に点線で示すように、絶縁膜12は、封止部6及び7と電極ポスト8との界面の全ての下において形成されている。
【0027】
次に実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。図3(a)から図3(e)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を例示する断面図である。なお、図3(a)から図3(e)は、図1(a)におけるC−C断面を例示する。
【0028】
図3(a)に示すように、まず圧電基板2上に、例えば蒸着法及びリフトオフ法により、弾性波素子4の電極、及び電極パッド14の最下層となるAl層16を形成する。
【0029】
図3(b)に示すように、例えばスパッタ法により、弾性波素子4及びAl層16を覆う絶縁膜12を形成する。
【0030】
図3(c)に示すように、例えばドライエッチングにより、絶縁膜12の一部を除去し、開口部11を形成する。Al層16の上面の一部は開口部11から露出する。Al層16の上面の周辺部には、絶縁膜12が残存する。Al層16の露出した上面及び絶縁膜12の上面に、例えば蒸着法により、例えばTi/Au/Ti等の金属を下から順に積層し、金属層18を形成する。Al層16の露出した上面と金属層18とは接触する。
【0031】
図3(d)に示すように、例えばテンティング法によりエポキシ系感光性樹脂を、弾性波素子4、絶縁膜12、及び金属層18上に形成し、露光現像することにより、封止部6及び7を形成する。弾性波素子4上において、封止部6は除去され、弾性波素子4と離間して封止部7が形成される。つまり、封止部6及び7により、弾性波素子4上に中空部5が形成される。また、封止部6及び7には、金属層18上に開口部9が形成される。
【0032】
図3(e)に示すように、例えばメッキ法により、開口部9に金属層18の上面に接触する電極ポスト8を形成する。電極ポスト8の側面は、開口部9の端部の封止部6及び7と接触する。以上の工程により、実施例1に係る弾性波デバイスが完成する。
【0033】
実施例1によれば、封止部6及び7と電極ポスト8との界面の下に形成された絶縁膜12が、封止部6及び7と電極ポスト8との界面から浸入する水分を遮断する。このため、水分が電極パッド14最下層のAl層16に到達することが抑制され、Al層16の腐食が抑制される。つまり電極パッド14の腐食が抑制され、弾性波デバイスの信頼性が向上する。
【0034】
また絶縁膜12により、配線10最下層のAl層16及び弾性波素子4の電極に水分が到達することも抑制される。従って、配線10及び弾性波素子4の腐食が抑制され、弾性波デバイスの信頼性が向上する。
【0035】
絶縁膜12が、電極ポスト8と封止部6及び7との界面の少なくとも一部の下に形成されていれば、水分の浸入を抑制することができる。ただし、水分の浸入を効果的に抑制するためには、図1(a)に示すように、絶縁膜12が電極ポスト8と封止部6及び7との界面の全ての下において形成されることが好ましい。
【0036】
電極パッド14の最下層(実施例1ではAl層16)は、弾性波素子4の電極と同じ金属からなることが好ましい。これにより、図3(a)に示すように、Al層16と弾性波素子4の電極とを、同じ工程で製造することができ、工程を簡略化することができる。
【0037】
弾性波素子4の電極はAl以外の金属を用いて形成してもよい。しかし、良好なデバイス特性を得るためには、弾性波素子4の電極をAl、又はAlを含む合金を用いて形成することが好ましい。この場合、電極パッド14及び配線10の最下層もAl又はAlを含む合金からなる。実施例1によれば、絶縁膜12によって水分の浸入を抑制し、水分によって腐食しやすいAl又はAlを含む合金を保護することができる。従って、良好なデバイス特性を得ることができ、かつ電極パッドの腐食を抑制して弾性波デバイスの信頼性を高めることができる。
【0038】
絶縁膜12にはSiO以外の絶縁物を用いてもよい。ただし水分の浸入をより効果的に抑制するためには、絶縁膜12は水分を通しにくい材料からなることが好ましい。絶縁膜12の材料としては、例えばSiOやSiNのようなシリコン化合物を用いることが好ましい。
【0039】
実施例1では、電極パッド14は複数の金属層からなる多層構造としたが、一層構造でもよい。電極パッド14が一層構造の場合、電極パッド14の周辺部に絶縁膜12が形成され、絶縁膜12の開口部11から露出する電極パッド14の上面に電極ポスト8が形成される。ただし、電極パッド14の電気抵抗の低減や、電極ポスト8を形成するメッキ工程の効率化のためには、電極パッド14を多層構造として、上層にAuやTiのような金属を用いることが好ましい。
【0040】
また、実施例1では電極パッド14の最下層であるAl層16の上面に絶縁膜12を形成するとしたが、構成はこれに限定されない。例えば電極パッド14の金属層18を形成するAu層やTi層の上面に絶縁膜12を形成してもよい。ただし上記のように、電気抵抗の低減や、メッキ工程の効率化のために、絶縁膜12の上に少なくとも1つの金属層を形成することが好ましい。つまり、絶縁膜12は、多層構造の金属パッド14を形成する金属層の少なくとも1つの金属層の上であって、少なくとも1つの金属層の上に形成された他の金属層の下に形成されることが好ましい。
【0041】
図1(c)に示すように、絶縁膜12があるため、電極パッド14の周辺部においてはAl層16と金属層18とは接触していない。これに対し、配線10においては、Al層16と金属層18とが接触している。言い換えれば、配線10は互いに接触する複数の金属層からなる。これにより、配線10の電気抵抗を低減することができる。
【0042】
実施例1では弾性表面波デバイスについて説明したが、本願発明は弾性境界波デバイス、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator:圧電薄膜共振器)等、他の弾性波デバイスにも適用可能である。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
圧電基板 2
弾性波素子 4
封止部 6
電極ポスト 8
開口部 9,11
配線 10
絶縁膜 12
電極パッド 14
Al層 16
金属層 18

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された弾性波素子と、
前記圧電基板上に形成され、少なくとも1つ以上の金属層からなり、前記弾性波素子と電気的に接続された電極パッドと、
前記弾性波素子を封止する封止部と、
前記封止部を貫通して前記電極パッド上に形成され、前記電極パッドと電気的に接続された電極ポストと、
前記電極パッドを形成する金属層のうち、少なくとも1つの金属層の上であって、前記封止部と前記電極ポストとの界面の少なくとも一部の下に形成された絶縁膜と、を具備することを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記絶縁膜は、前記封止部と前記電極ポストとの界面の全ての下において形成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記電極パッドを形成する金属層のうち最下層の金属層は、前記弾性波素子の電極を形成する金属と同じ金属からなることを特徴とする請求項1又は2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記弾性波素子の電極、及び前記電極パッドの最下層の金属層は、Al又はAlを含む合金からなることを特徴とする請求項3記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記絶縁膜は、シリコン化合物からなることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記絶縁膜は、酸化シリコン又は窒化シリコンからなることを特徴とする請求項5記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記電極パッドは複数の金属層からなり、
前記絶縁膜は、前記複数の金属層のうち、少なくとも1つの金属層の上であって、前記少なくとも1つの金属層の上に形成された他の金属層の下に形成されていることを特徴とする請求項1から6いずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記弾性波素子と前記電極パッドとを接続する配線を備え、
前記配線は、互いに接触する前記複数の金属層からなることを特徴とする請求項1から7記載の弾性波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−166530(P2011−166530A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28115(P2010−28115)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】