説明

弾性波デバイス

【課題】弾性波デバイスの共振特性を向上させること。
【解決手段】基板10と、前記基板上に形成された下部電極12と、前記下部電極上に形成された少なくとも2層の圧電膜14と、前記少なくとも2層の圧電膜に挟まれた絶縁膜28と、前記少なくとも2層の圧電膜上に形成された上部電極16と、を具備し、前記下部電極と前記上部電極とが対向する領域における前記少なくとも2層の圧電膜のうち最上の圧電膜の外周51は、前記上部電極の外周53より内側に位置する弾性波デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関し、例えば圧電薄膜共振器を含む弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電薄膜共振器を用いた弾性波デバイスは、例えば無線機器等のフィルタとして用いられている。圧電薄膜共振器は、圧電膜を挟み下部電極と上部電極が対向する構造を有している。圧電薄膜共振器を用いた弾性波デバイスとして、フィルタおよびデュープレクサがある。これら弾性波デバイスにおいては、共振周波数、反共振周波数および通過帯域等が温度により変化する。これらの温度変化を補償する技術として、圧電膜内に絶縁膜を設ける技術が知られている(例えば特許文献1および非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−48694号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proc. IEEE Ultrasonics Symposium 2009, pp859-862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術においては弾性波デバイスのQ値および機械電気結合係数等の共振特性が十分ではない。本発明は、弾性波デバイスの共振特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された少なくとも2層の圧電膜と、前記少なくとも2層の圧電膜に挟まれた絶縁膜と、前記少なくとも2層の圧電膜上に形成された上部電極と、を具備し、前記下部電極と前記上部電極とが対向する領域における前記少なくとも2層の圧電膜のうち最上の圧電膜の外周は、前記上部電極の外周より内側に位置することを特徴とする弾性波デバイスである。本発明によれば、弾性波デバイスの共振特性を向上させることができる。
【0007】
上記構成において、前記最上の圧電膜の外周が前記上部電極の外周より内側に形成された領域において、前記少なくとも2層の圧電膜のうち最下の圧電膜の外周は、前記上部電極の外周より外側に位置する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記下部電極の下に空隙または音響反射膜が設けられ、前記最上の圧電膜の外周が前記上部電極の外周より内側に形成された領域において、前記空隙または音響反射膜の外周は、前記上部電極の外周より外側に位置する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記下部電極の下に空隙が設けられ、前記最上の圧電膜の外周が前記上部電極の外周より内側に形成された領域において、前記空隙の外周は、前記上部電極の外周より外側に位置し、かつ前記最下の圧電膜の外周の内側に位置する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記絶縁膜は、前記少なくとも2層の圧電膜の弾性定数の温度係数とは逆符号の弾性定数の温度係数を有する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記少なくとも2層の圧電膜は2層であり、前記絶縁膜は1層である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記少なくとも2層の圧電膜は主に窒化アルミニウムを含み、前記絶縁膜は主に酸化シリコンを含む構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記上部電極が形成されている領域のうち前記下部電極が形成されていない領域の少なくとも一部の領域内の前記上部電極と前記基板との間には前記絶縁膜が形成されていない構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、複数の上記弾性波デバイスを含む弾性波共振子を具備し、前記複数の弾性波共振器の前記下部電極は互いに接続され、接続された下部電極上には、前記複数の弾性波共振器の前記最下の圧電膜および前記最下の圧電膜上の絶縁膜の少なくとも一方が互いに接続されるように形成されている構成とすることができる。
【0015】
弾性表面波縦結合二重モードフィルタにより平衡出力を出力する受信用フィルタと、少なくとも一つの上記弾性波デバイスを含む弾性波共振器をラダー型に接続した送信用フィルタと、を有することを特徴とする弾性波デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弾性波デバイスの共振特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、図1(b)および図1(c)は、図1(a)のA−A断面図である。
【図2】図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る共振器の製造方法を示す断面図である。
【図3】図3は、比較例1に係る共振器の断面図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、それぞれ比較例1および実施例1に係る共振周波数および反共振周波数の温度依存性を示す図である。
【図5】図5は、比較例2に係る共振器の断面図である。
【図6】図6(a)から図6(c)は、それぞれ共振周波数のQ値、反共振周波数のQ値および電気機械結合係数を示すシミュレーション結果である。
【図7】図7(a)および図7(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および変形例2の断面図である。
【図8】図8(a)から図8(c)は、実施例2に係る共振器の断面図である。
【図9】図9は、実施例3に係る共振器の断面図である。
【図10】図10は、実施例4に係るラダー型フィルタを示す回路図である。
【図11】図11は、実施例4に係るラティス型フィルタを示す回路図である。
【図12】図12は、実施例5に係るモジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1は、弾性波デバイスに用いられる共振器の例である。図1(a)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、図1(b)および図1(c)は、図1(b)のA−A断面図である。図1(b)は、例えばラダー型フィルタの直列共振器、図1(c)は例えばラダー型フィルタの並列共振器の断面図を示している。
【0020】
図1(a)および図1(b)を参照し、直列共振器Sの構造について説明する。Si基板である基板10上に、基板10の平坦主面との間に下部電極12側にドーム状の膨らみを有する空隙30が形成されるように下部電極12が設けられている。ドーム状の膨らみとは、例えば空隙30の周辺では空隙30の高さが小さく、空隙30の内部ほど空隙30の高さが高くなるような形状の膨らみである。下部電極12はCr(クロム)層とCr層上のRu(ルテニウム)層とを含んでいる。
【0021】
下部電極12上に、(002)方向を主軸とする窒化アルミニウム(AlN)からなる圧電膜14が設けられている。圧電膜14は少なくとも2層の圧電膜14aおよび14bからなる。例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜28が少なくとも2層の圧電膜14aおよび14bに挟まれている。実施例1においては、圧電膜14aおよび14bが2層、絶縁膜28が1層の場合を例に説明する。
【0022】
圧電膜14を挟み下部電極12と対向する領域(共振領域50)を有するように圧電膜14上に上部電極16が設けられている。上部電極16はRu層16aとRu層16a上のCr層16bとを含んでいる。
【0023】
上部電極16上には周波数調整膜24として酸化シリコン膜が形成されている。積層膜18は、下部電極12、圧電膜14、絶縁膜28、上部電極16および周波数調整膜24を含む。周波数調整膜24はパッシベーション膜として機能してもよい。
【0024】
図1(a)のように、下部電極12には犠牲層をエッチングするための導入路33が形成されている。犠牲層は空隙30を形成するための層である。導入路33の先端付近は圧電膜14で覆われておらず、下部電極12は導入路33の先端に孔部35を有する。図1(a)および図1(b)のように、圧電膜14には下部電極12と電気的に接続するための開口部36が設けられている。開口部36の底の下部電極12上には外部接続用のAu等のバンプ用下地膜が設けられていてもよい。
【0025】
図1(a)および図1(c)を参照し、並列共振器Pの構造について説明する。並列共振器Pは直列共振器Sと比較し、Ru層16aとCr層16bとの間に、Ti(チタン)層からなる質量負荷膜20が設けられている。よって、積層膜18は直列共振器Sの積層膜に加え、共振領域50内の全面に形成された質量負荷膜20を含む。その他の構成は直列共振器Sの図2(b)と同じであり説明を省略する。
【0026】
直列共振器Sと並列共振器Pとの共振周波数の差は、質量負荷膜20の膜厚を用い調整する。直列共振器Sと並列共振器Pとの両方の共振周波数の調整は、周波数調整膜24の膜厚を調整することにより行なう。
【0027】
図1(a)から図1(c)に示すように、実施例1においては、共振領域50の外周の少なくとも一部において、下部電極12と上部電極16とが対向する領域52における圧電膜14bの外周51は、上部電極16の外周53より距離d1内側の領域に位置する。また、圧電膜14bの外周51が上部電極16の外周53より内側に形成された領域において、圧電膜14aの外周55は、外周53より距離d2外側に位置する。絶縁膜28の外周は圧電膜14aの外周55とほぼ同じである。圧電膜14を挟み上部電極16と下部電極12とが対向する共振領域50は、距離d1分小さくなる。共振領域50が厚み縦振動モードの弾性波が共振する領域である。圧電膜14aと下部電極12との重なる領域54は、距離d2分大きくなる。
【0028】
2GHzの共振周波数を有する圧電薄膜共振器の場合、下部電極12のCr層の膜厚は100nm、Ru層の膜厚は200nm、AlN層からなる圧電膜14aおよび14bの膜厚はそれぞれ600nmである。酸化シリコン膜からなる絶縁膜28の膜厚は25nmである。Ru層16aの膜厚は230nm、Cr層16bの膜厚は20nmである。各層の膜厚は、所望の共振周波数を得るため適宜設定することができる。
【0029】
下部電極12および上部電極16としては、CrおよびRu以外にもAl(アルミニウム)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)もしくはIr(イリジウム)等の金属単層膜またはこれらの複合膜を用いることができる。質量負荷膜20については、Ti以外にも、Ru、Cr、Al、Cu、Mo、W、Ta、Pt、RhもしくはIr等の金属単層膜またはこれらの複合膜を用いることができる。また、例えば窒化シリコンまたは酸化シリコン等の窒化金属または酸化金属からなる絶縁膜を用いることもできる。質量負荷膜20を、下部電極12の層間、上部電極16の層間、下部電極12と圧電膜14との間および圧電膜14と上部電極16との間に形成する場合、低抵抗化のため金属膜を用いることが好ましい。
【0030】
基板10としては、Si基板以外に、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板等を用いることができる。圧電膜14は窒化アルミニウム以外にも、ZnO(酸化亜鉛)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PbTiO3(チタン酸鉛)等を用いることができる。また、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主に含み、共振特性を向上または温度特性の改善のため他の元素を添加した膜でもよい。絶縁膜28は、酸化シリコン膜(SiO2)以外にも、窒化シリコン(Si3N4)を用いることができる。また、絶縁膜28は、酸化シリコンまたは窒化シリコンを主に含み、共振特性の向上または温度依存性の改善のため他の元素を添加した膜でもよい。
【0031】
図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る共振器の製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、平坦主面を有する基板10上に空隙を形成するための犠牲層38を形成する。犠牲層38の膜厚は、例えば10〜100nmであり、MgO、ZnO、Ge、SiO2等のエッチング液またはエッチングガスに容易に溶解できる材料から選択される。その後、犠牲層38を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用い所望の形状にパターニングする。次に、犠牲層38および基板10上に下部電極12を形成する。犠牲層38および下部電極12は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い成膜される。その後、下部電極12を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用い所望の形状にパターニングする。
【0032】
図2(b)に示すように、下部電極12および基板10上に圧電膜14a、絶縁膜28、圧電膜14bおよび上部電極16を、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い成膜する。上部電極16を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用い所望の形状にパターニングする。
【0033】
図2(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用い圧電膜14bを所望の形状にパターニングする。圧電膜14bのエッチングは、例えば燐酸を含む溶液を用い、圧電膜14bの外周の少なくとも一部が上部電極16の外周より内側に位置するように行なう。圧電膜14bの外周の位置は、例えばエッチング時間により制御することができる。
【0034】
図2(d)に示すように、周波数調整膜24を例えばスパッタリング法またはCVD法を用い形成する。フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用い周波数調整膜24を所望の形状にパターニングする。次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用い絶縁膜28および圧電膜14aを所望の形状にパターニングする。これにより、下部電極12が開口部36に露出する。よって、開口部36を介し下部電極12にAu等のバンプを電気的に接続することができる。
【0035】
その後、孔部35および導入路33(図1(a)参照)を介し、犠牲層38のエッチング液を下部電極12の下の犠牲層38に導入する。これにより、犠牲層38が除去される。犠牲層38をエッチングする媒体としては、犠牲層38以外の共振器を構成する材料をエッチングしない媒体であることが好ましい。特に、エッチング媒体は、エッチング媒体が接触する下部電極12がエッチングされない媒体であることが好ましい。積層膜18の応力を圧縮応力となるように設定しておく。これにより、犠牲層38が除去されると、積層膜18が基板10の反対側に基板10から離れるように膨れる。下部電極12と基板10との間にドーム状の膨らみを有する空隙30が形成される。以上により、図1(a)および図1(b)に示した直列共振器Sが完成する。図1(c)に示した並列共振器Pは、図2(b)において、Ru層16aとCr層16bとの間に、質量負荷膜20を形成することにより作製される。
【0036】
実施例1に係る共振器の共振周波数および反共振周波数の温度依存性を測定した。比較のため比較例1に係る共振器を作製した。図3は、比較例1に係る共振器の断面図である。実施例1の図1(b)と比較し、絶縁膜28が形成されていない。圧電膜14の外周は上部電極16の外周より外側に位置している。その他の構成は実施例1の図1(b)と同じであり、説明を省略する。実施例1において、各膜厚、材料は、図1(a)および図1(b)の説明において例示したものを用いた。上部電極16と下部電極12が対向する領域52の形状は楕円形であり、長軸は175μm、短軸は110μmである。距離d1は0.2μm、d2は5μmである。比較例1において、上部電極16と下部電極12が対向する領域の形状および大きさは実施例1と同じである。
【0037】
図4(a)および図4(b)は、それぞれ比較例1および実施例1に係る共振周波数および反共振周波数の温度依存性を示す図である。共振周波数frは共振器の反射特性S11を測定することにより求めた。反共振周波数faは共振器の通過特性S21を測定することにより求めた。図4(a)および図4(b)は、共振器のS11およびS21を−35℃から85℃まで20℃間隔で測定した結果である。図4(a)および図4(b)より、比較例1および実施例1の共振周波数および反共振周波数の温度係数は以下のようになった。
比較例1
共振周波数の温度係数 −29.6ppm/℃
反共振周波数の温度係数 −31.0ppm/℃
実施例1
共振周波数の温度係数 −18.3ppm/℃
反共振周波数の温度係数 −20.1ppm/℃
【0038】
以上のように、実施例1において、周波数の温度係数が小さくなるのは、圧電膜14と絶縁膜28の弾性係数の温度係数が逆符号であるためである。このように、圧電膜14aおよび14bの間に絶縁膜28を挟むことにより共振周波数および反共振周波数の温度依存性を抑制できる。
【0039】
次に、実施例1に係る共振器の共振特性をシミュレーションした。比較のため比較例2に係る共振器を想定した。図5は、比較例2に係る共振器の断面図である。実施例1の図1(b)と比較し、圧電膜14bの外周51と圧電膜14aの外周55とがほぼ一致している。圧電膜14bの外周51と圧電膜14aの外周55は、上部電極16の外周53より距離d2外側に形成されている。その他の構成は実施例1の図1(b)と同じであり、説明を省略する。実施例1において、距離d2を5μmとし、距離d1を0.2μmから1.5μmの間で7点変化させシミュレーションした。比較例2において、d2を5μmとした。各膜厚および材料は図1(a)および図1(b)の説明において例示したものである。
【0040】
図6(a)から図6(c)は、それぞれ共振周波数のQ値、反共振周波数のQ値および電気機械結合係数を示すシミュレーション結果である。図6(a)から図6(c)に示すように、実施例1に係る共振器は、比較例2に係る共振器に比べ、共振周波数のQ値、反共振周波数のQ値および電気機械結合係数が向上している。これは、実施例1においては、圧電膜14bの外周51が上部電極16の外周53より内側に位置するため、圧電膜14b内の弾性波が共振領域50の外側に漏洩することが抑制されるためである。
【0041】
実施例1の変形例について説明する。図7(a)および図7(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および変形例2の断面図である。図7(a)に示すように、基板10の上面に窪みが形成され、窪みにより空隙30が形成されていてもよい。さらに、空隙30は、基板を貫通する貫通孔でもよい。図7(b)に示すように、空隙30の代わりに音響反射膜31を用いてもよい。音響反射膜31は、音響インピーダンスの高い膜と低い膜を弾性波の波長の膜厚で交互に積層した膜を用いることができる。これにより、音響反射膜31は、縦方向の弾性波を反射することができる。
【0042】
実施例1およびその変形例によれば、領域52における圧電膜14bの外周51が上部電極16の外周53より内側に位置する。これにより、図6(a)から図6(c)のように、共振特性を向上させることができる。
【0043】
圧電膜14aおよび14bは、下部電極12上に少なくとも2層形成されていればよい。絶縁膜28は、少なくとも2層の圧電膜14aおよび14bに挟まれていればよい。この場合、領域52における少なくとも2層の圧電膜のうち最上の圧電膜14bの外周51が上部電極16の外周53より内側に位置すればよい。
【0044】
また、圧電膜14bの外周51が上部電極16の外周53の内側に形成された上部電極16の外周53の領域において、圧電膜14aの外周55は、上部電極16の外周53より外側に位置する。これにより、圧電膜14aの外周55が上部電極16の外周53より内側に位置する場合に比べ積層膜18の強度を確保できる。なお、少なくとも2層の圧電膜が形成されている場合、少なくとも2層の圧電膜のうち最下の圧電膜の外周が上部電極の外周より外側に位置すればよい。
【0045】
なお、空隙30または音響反射膜31の外周は、上部電極16の外周53より外側に位置することが好ましい。これにより、共振領域50が空隙30に含まれるため、共振特性が向上する。
【0046】
実施例1のように、下部電極12の下に空隙30が設けられている場合に、圧電膜14bの外周51が上部電極16の外周53より内側に形成された領域において、空隙30の外周は、上部電極16の外周53より外側に位置し、かつ圧電膜14aの外周55の内側に位置することが好ましい。これにより、外周51を外周53より内側に設けることにより、共振特性を向上させることができる。さらに、空隙30が設けられる場合、積層膜18の強度が小さくなりやすいが、空隙30の外周より外周55が外側に位置することにより、積層膜18の強度を大きくすることができる。
【0047】
さらに、絶縁膜28は、少なくとも2層の圧電膜14の弾性定数の温度係数とは逆符号の弾性定数の温度係数を有することが好ましい。これにより、共振周波数等の周波数の温度依存性を小さくできる。このような材料として、少なくとも2層の圧電膜14は主に窒化アルミニウムを含み、絶縁膜28は主に酸化シリコンを含むことができる。
【0048】
実施例1およびその変形例においては、圧電膜14aの外周55と絶縁膜28の外周とがほぼ一致するが、絶縁膜28の外周は圧電膜14bの外周51とほぼ一致してもよい。また、絶縁膜28の外周は、圧電膜14bの外周51と圧電膜14aの外周55との間に位置してもよい。
【0049】
実施例1およびその変形例において、圧電膜14aおよび14bの外周55および51の端部は、圧電膜14aおよび14bの膜厚方向に平行であるが、外周55および51の端部は圧電膜14aおよび14bの膜厚方向に斜めでもよい。この場合、圧電膜14bの外周51の端部の最も内側が上部電極16の外周53の端部より内側に位置すればよい。特に、圧電膜14bの外周51の端部が上部電極16に接する位置が上部電極16の外周53の端部より内側にあることが好ましい。
【実施例2】
【0050】
実施例2は、フィルタのように、基板上に複数の共振器が形成されれた例である。図8(a)から図8(c)は、実施例2に係る共振器の断面図である。図8(a)から図8(c)においては、基板10上に2つの共振器が形成されている。基板10に窪みが設けられ、窪みが空隙30として機能する。基板10上に空隙30を介し、下部電極12、圧電膜14a、絶縁膜28、圧電膜14bおよび上部電極16が形成されている。圧電膜14を挟み上部電極16と下部電極12とが対向する共振領域50が2つ設けられている。
【0051】
図8(a)の例においては、共振領域50間には圧電膜14aが連続して形成され、絶縁膜28は形成されていない。図8(b)の例においては、共振領域50間には圧電膜14aおよび絶縁膜28が連続して形成されている。図8(c)の例においては、共振領域50間には圧電膜14aは連続して形成されておらず、絶縁膜28が連続して形成されている。
【0052】
実施例2のように、基板10に複数の共振器が形成された場合、複数の共振器の下部電極12は互いに接続され、接続された下部電極12上には、圧電膜14a(最下の圧電膜)および絶縁膜28(最下の圧電膜上の絶縁膜)の少なくとも一方が互いに接続されるように形成することもできる。これにより、共振器同士を接近して形成でき、チップの小型化が可能となる。空隙30の外周部は、下部電極12と、圧電膜14aおよび絶縁膜28の少なくとも一方が形成されており、積層膜18の強度を大きくすることができる。
【0053】
さらに、接続された下部電極12上には、絶縁膜28が互いに接続されるように形成されていることが好ましい。これにより、静電気破壊耐性を向上させることができる。
【実施例3】
【0054】
図9は、実施例3に係る共振器の断面図である。図9のように、上部電極16が形成されている領域のうち下部電極12が形成されていない領域の少なくとも一部の領域内の上部電極16と基板10との間には絶縁膜28が形成されていない。絶縁膜28が形成されていない領域の上部電極16上にバンプを形成し、フリップチップボンディングする場合、またはボンディングワイヤを接続する場合、絶縁膜28と圧電膜14とが剥離することを抑制できる。
【実施例4】
【0055】
実施例4は、弾性波デバイスとして、実施例1から実施例3に係る共振器をフィルタに用いた例である。図10は、実施例4に係るラダー型フィルタを示す回路図である。図10のように、ラダー型フィルタ100は、直列共振器S1〜S4および並列共振器P1〜P3を備えている。直列共振器S1〜S4は、入出力端子T1とT2との間に直列に接続されている。並列共振器P1〜P3は、入出力端子T1とT2との間に並列に接続されている。直列共振器S1〜S4および並列共振器P1〜P3の少なくとも一つを実施例1から実施例3に例示した共振器とすることができる。
【0056】
図11は、実施例4に係るラティス型フィルタを示す回路図である。ラティス型フィルタ102は、直列共振器S5およびS6、および並列共振器P4およびP5を備えている。端子T3とT5の間に直列共振器S5が接続され、端子T4とT6との間に直列共振器S6が接続されている。端子T3とT6の間に並列共振器P4が接続され、端子T4とT5との間に並列共振器P5が接続されている。このようなラティス型フィルタ102の直列共振器および並列共振器として、実施例1から実施例3において例示した共振器を用いることができる。実施例4によれば、フィルタの特性を向上させることができる。
【実施例5】
【0057】
実施例5は、移動体通信用RF(Radio Frequency)モジュールの例である。図12は、実施例5に係るモジュールのブロック図である。図12のように、モジュール70は、分波器62とパワーアンプ64を備えている。分波器62は、受信用フィルタ62aおよび送信用フィルタ62bを備えている。受信用フィルタ62aはアンテナ端子61と受信端子63a、63bとの間に接続されている。受信用フィルタ62aは、アンテナ端子61から入力した信号のうち受信帯域の信号を通過させ他の信号を抑圧する。受信帯域の信号は受信端子63aおよび63bから出力される。受信端子63aおよび63bからは平衡信号が出力される。送信用フィルタ62bはパワーアンプ64とアンテナ端子61との間に接続されている。送信用フィルタ62bは、パワーアンプ64から入力した信号のうち送信帯域の信号を通過させ他の信号を抑圧する。送信帯域の信号はアンテナ端子61から出力される。パワーアンプ64は、送信端子65から入力した信号を増幅し、送信用フィルタ62bに出力する。受信用フィルタ62aおよび62bのうち少なくとも一方が実施例4のフィルタを含むことができる。
【0058】
受信用フィルタ62aは、弾性表面波縦結合二重モードフィルタで構成すれば、電極指の配置の変更だけで位相を180°異ならせた出力を得ることができ、容易に平衡出力を得ることができる。送信用フィルタ62bは、実施例1に示される圧電薄膜共振器を少なくとも一つ、好ましくは全てラダー型に接続したフィルタを用いれば、弾性表面波フィルタよりQ値を高くすることができ、低損失、高抑圧、高耐電力のフィルタ実現できる。従って、分波器62は、受信用フィルタ62aに弾性表面波フィルタからなる二重モードフィルタを用い、送信用フィルタ62bに実施例1から3の圧電薄膜共振器をラダー型に接続したフィルタを用いれば、受信側に平衡出力が得られ、送信側に低損失、高抑圧、高耐電力のフィルタが実現できる。
【0059】
実施例5においては、RFモジュールを例に説明したが、その他のモジュールに実施例1から4の弾性波デバイスを用いてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 基板
12 下部電極
14 圧電膜
14a 圧電膜(最下の圧電膜)
14b 圧電膜(最上の圧電膜)
16 上部電極
28 絶縁膜
30 空隙
50 共振領域
52、54 領域
51、55 圧電膜の外周
53 上部電極の外周

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された少なくとも2層の圧電膜と、
前記少なくとも2層の圧電膜に挟まれた絶縁膜と、
前記少なくとも2層の圧電膜上に形成された上部電極と、
を具備し、
前記下部電極と前記上部電極とが対向する領域における前記少なくとも2層の圧電膜のうち最上の圧電膜の外周は、前記上部電極の外周より内側に位置することを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記最上の圧電膜の外周が前記上部電極の外周より内側に形成された領域において、前記少なくとも2層の圧電膜のうち最下の圧電膜の外周は、前記上部電極の外周より外側に位置することを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記下部電極の下に空隙または音響反射膜が設けられ、
前記最上の圧電膜の外周が前記上部電極の外周より内側に形成された領域において、前記空隙または音響反射膜の外周は、前記上部電極の外周より外側に位置することを特徴とする請求項1または2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記下部電極の下に空隙が設けられ、
前記最上の圧電膜の外周が前記上部電極の外周より内側に形成された領域において、前記空隙の外周は、前記上部電極の外周より外側に位置し、かつ前記最下の圧電膜の外周の内側に位置することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記絶縁膜は、前記少なくとも2層の圧電膜の弾性定数の温度係数とは逆符号の弾性定数の温度係数を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも2層の圧電膜は2層であり、前記絶縁膜は1層であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも2層の圧電膜は主に窒化アルミニウムを含み、前記絶縁膜は主に酸化シリコンを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記上部電極が形成されている領域のうち前記下部電極が形成されていない領域の少なくとも一部の領域内の前記上部電極と前記基板との間には前記絶縁膜が形成されていないことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
複数の請求項1〜8のいずれか一項記載の弾性波デバイスを含む弾性波共振器を具備し、
前記複数の弾性波共振器の前記下部電極は互いに接続され、接続された下部電極上には、前記複数の弾性波共振器の前記最下の圧電膜および前記最下の圧電膜上の絶縁膜の少なくとも一方が互いに接続されるように形成されていることを特徴とする請求項1から8記載のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
弾性表面波縦結合二重モードフィルタにより平衡出力を出力する受信用フィルタと、
少なくとも一つの請求項1〜9のいずれか一項記載の弾性波デバイスを含む弾性波共振器をラダー型に接続した送信用フィルタと、を有することを特徴とする弾性波デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−38658(P2013−38658A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174290(P2011−174290)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】