弾性波受信装置、弾性波受信方法、光音響装置及びプログラム
【課題】被検体を支持する板状部材の上をスキャンする探触子を有する弾性波受信装置において、板状部材上を探触子が移動する際の負荷の変動のために弾性波受信時の探触子の位置が目標位置から外れてしまうことを抑制する。
【解決手段】被検体101からの弾性波を受信する探触子105と、被検体101を支持し且つ探触子105がその上を走査する板状の圧迫板102と、探触子105を駆動するモータ106と、探触子105が圧迫板102上の目標位置に移動するように駆動信号をモータ106に供給するコントローラ107と、圧迫板102上の探触子105の走査の際に生じる負荷に対応する物理量を予め取得し記憶しておく負荷見積り手段109と、を備え、コントローラ107は、負荷見積り手段109に記憶されている物理量を用いて、探触子105が負荷に拘らず目標位置に移動すべく駆動信号を補正する。
【解決手段】被検体101からの弾性波を受信する探触子105と、被検体101を支持し且つ探触子105がその上を走査する板状の圧迫板102と、探触子105を駆動するモータ106と、探触子105が圧迫板102上の目標位置に移動するように駆動信号をモータ106に供給するコントローラ107と、圧迫板102上の探触子105の走査の際に生じる負荷に対応する物理量を予め取得し記憶しておく負荷見積り手段109と、を備え、コントローラ107は、負荷見積り手段109に記憶されている物理量を用いて、探触子105が負荷に拘らず目標位置に移動すべく駆動信号を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材に接触しながら当該板状部材の上をスキャンする探触子が備えられた弾性波受信装置、弾性波受信方法及び、光音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内部から発生する弾性波を探触子にて受信し、内部の構造を画像化する装置が研究、開発されている。その応用の一つとして、被検体内部にレーザ光を照射し、被検体内部で発生する光音響波を超音波探触子で受信し、被検体内部の組織画像を表示する、光音響診断装置が提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)。光音響診断装置の一例においては、被検体(乳房)をプレートと超音波探触子で圧迫し、プレート越しにパルスレーザ光を照射する。そして、披検体内部で発生する光音響波を超音波探触子で受信し、非検体内部の組織画像を再構成して表示する。そして、被検体(乳房)全体の組織画像を得るために、探触子および対向するパルスレーザ発生部を二次元的に走査可能とする二次元走査機構を備え、複数の測定点において光音響波を計測している。
【0003】
また、探触子を機械的に走査する機構を備えた超音波診断装置およびその制御方法が公知である(例えば、特許文献1を参照。)。この超音波診断装置では、探触子に位置検出器を設け、位置信号から速度信号を生成し、目標位置および目標速度との差分を探触子の駆動信号にフィードバックしている。
【0004】
これらの診断装置では、被検体内部で発生する光音響波または超音波を探触子で受信する際に、披検体と探触子との間に隙間があるとその部分の組織画像の画質が著しく悪化する。これは、隙間にある空気と被検体の間の音響インピーダンスが著しく異なり、超音波が当該隙間をほとんど透過しないためである。この問題を回避するために、音響インピーダンスが被検体と近いマッチング剤を探触子と被検体の間に挿入し、隙間ができないようにすることが行われている。また、探触子を機械的に走査する際に、隙間ができないようにするためには探触子と被検体、およびプレートを十分に密着させておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−195088号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Srirang Manohar, et. al : Region-of-interest breast studies using the Twente Photoacoustic Mammoscope (PAM), Proc. of SPIE, Vol. 6437, pp.1-9, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光音響診断装置においては、測定毎に被検体をプレートで圧迫し、マッチング剤を塗布している。この際に被検体の個体差、プレートの歪み、傷、マッチング剤の塗布状況、雰囲気温度の変動などのために探触子にプレート上を移動させる際の負荷が変動する場合があった。そうすると、この負荷変動のために光音響波受信時の探触子の位置が目標位置とずれてしまい、再構成された組織画像の精度が低下する場合があった。また、探触子にプレート上を移動させる際の負荷が大きくなり探触子の位置が著しくずれた場合には、測定のやり直しとなり、被検体に余分なレーザ光照射が必要となり、患者負担が増加してしまう問題があった。さらに、大きな負荷に対しても目標位置に正確に
探触子を駆動させるためには、より容量の高いアクチュエータが必要となり、装置のコストダウンを妨げてしまう問題があった。
【0008】
本発明では、上記のような従来技術の状況を鑑みて案出されたものである。そして、その目的は、探触子にプレート上を移動させる際の負荷に変動がある状況でも、コストを増加させずに探触子の位置精度を高めることを可能にする弾性波受信装置及び、弾性波受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検体から発生する弾性波を受信する探触子と、
板状の形状を有し、片側の面である支持面において前記被検体を支持するとともに該支持面の逆側の面である走査面を前記探触子が走査して弾性波を受信する板状部材と、
前記探触子を、前記板状部材の前記走査面の上を走査すべく駆動する駆動部と、
前記探触子が前記走査面の上の予め定められた目標位置に移動するように駆動信号を前記駆動部に供給する駆動制御部と、
前記走査面の上を前記探触子が走査する際に前記駆動部に生じる負荷に対応する物理量を予め取得し記憶しておく情報取得部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記情報取得部に記憶されている前記物理量を用いて、前記探触子が前記負荷に拘らず前記目標位置に移動するべく、前記駆動信号を補正することを特徴とする弾性波受信装置である。
【0010】
また、本発明は、探触子を予め定められた目標位置に移動させるべき指令信号によって、被検体を支持する板状部材上を前記探触子に走査させ、該探触子で前記被検体から発生する弾性波を受信する弾性波受信方法であって、
前記板状部材の上における、前記探触子の移動に必要な負荷に対応する物理量を予め取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程において取得された前記物理量を用いて、前記指令信号を補正する指令信号補正工程と、
前記指令信号補正工程により補正された指令信号によって前記探触子を目標位置に移動させる駆動工程と、
を備えることを特徴とする弾性波受信方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば探触子に板状部材上を走査させる際の負荷を見積もり、探触子が目標位置に移動できるように駆動方法を変更することで、コストを増加させずに探触子の位置精度を高め、組織画像の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る弾性波受信装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る測定フローを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1に係る探触子の走査の態様を示す図である。
【図4】探触子についての目標位置と時刻の関係を示す図である。
【図5】探触子についての測定位置と時刻の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る弾性波受信装置のブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係る測定フローを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例3に係る弾性波受信装置のブロック図である。
【図9】本発明の実施例3に係る測定フローを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例3における歪みゲージの配置を示す図である。
【図11】本発明の実施例3における圧迫板の状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る弾性波受信装置の概略構成を示すブロック図である。図1において光源104を除いた構成は弾性波受信装置に相当し、光源104を含む構成は光音響装置に相当する。図1において101は被検体である乳房である。被検体101は、板状部材としての板状の形状を有する圧迫板102および103により挟まれて圧迫されることで支持される。圧迫板102は、片側の面の支持面において被検体を圧迫支持する。この状態で、パルスレーザ光源104より被検体101に光音響波を発生させるためのレーザ光Lが照射される。この際パルスレーザ光源104は一定周波数でレーザ光Lをパルス状に変動させつつ被検体101に照射する。そして、照射されたレーザ光のエネルギが被検体101に吸収され、発散されることで発生した光音響波は、探触子105に弾性波Wとして受信され、電気信号に変換される。探触子105は駆動部としてのモータ106によって駆動されることで、被検体101全体にわたって圧迫板102の支持面の逆側の面である走査面の上を2次元的に走査することが可能となっている。
【0015】
モータ106は、駆動制御部としてのコントローラ107が生成するパルス信号S3が供給されることにより駆動されるバルスモータであり、コントローラ107から出力されるパルス信号S3の数及び周波数に応じてモータ106の駆動が制御される。具体的にはパルス信号S3の数に比例してモータ106の回転角度は変化する。また、パルス信号S3の周波数に比例してモータ106の回転速度は変化する。すなわち、コントローラ107から出力されるパルスの数及び周波数を制御することで、探触子105の位置、速度、加速度を制御することができる。探触子105の圧迫板102上における位置情報は位置検知手段としてのエンコーダ108によって取得される。
【0016】
エンコーダ108により取得された探触子105の位置情報S1は情報取得部としての負荷見積り手段109に送られる。この負荷見積り手段109においては、探触子105の位置情報S1に基づいて、探触子105に圧迫板102上を移動させる際の負荷に相当する見積もり値が算出され記憶される。この負荷見積り手段109はマイクロコントローラ(またはコンピューター)およびそれに組み込まれたソフトウェア(またはプログラム)によって構成される。負荷見積もり手段109によって算出された負荷に相当する見積もり値S2は、コントローラ107に送られる。コントローラ107は送られた見積もり値S2に基づいてモータ106の駆動パルス信号の数およびタイミングを変更させる機能を有する。また、ユーザインタフェース110は、操作者が弾性波受信装置の動作開始指示、終了指示、受信データ閲覧などを行うためのインタフェースである。
【0017】
図2には、本実施例に係る弾性波受信装置を用いた場合の、被検体101を圧迫板102および103で圧迫することで支持してから、探触子105で弾性波を受信・記録するまでの測定フローを示す。本測定フローが開始されると、まず、ステップS201において、被検体101が圧迫板102及び103で圧迫・支持され、被検体101のセットアップが完了したことが検知される。具体的には、操作者は、被検体101の圧迫、固定、マッチング剤塗布などの一連の準備を行った後に、ユーザインタフェース110を介してコントローラ107に動作開始指示信号を送付する。そして、この動作開始指示信号をコントローラ107が検出することで、被検体101のセットアップ完了が検知される。
【0018】
次にステップS202においてコントローラ107は予め定められた探触子105の各時刻における目標位置に基づいて、モータ駆動信号を発生させ、探触子105の走査を開始させる。ここで、図3及び図4を用いて探触子105の走査の詳細について説明する。図3は、被検体101及び圧迫板102を探触子105の方向から見た図である。図3に
おいて302は、探触子105が被検体101に対して走査すべき領域である走査領域を示している。図3においては、走査領域302の図中左上の隅部を原点とし、水平方向右向きにX軸、垂直方向下向きにY軸を定義している。本実施例では、コントローラ107は矢印301で示すパターンで探触子105に走査領域302を走査させる。ここでは簡単のため探触子105がX軸方向に一回走査する場合を想定して説明する。
【0019】
図4は予め決められた各時刻における目標位置f(t)を示す図である。図においては操作者が測定開始指示を行った時刻を0とし、横軸に時刻tがとられている。また縦軸に
探触子105の水平位置Xがとられている。各時刻における探触子105の目標位置f(t)は実線405で示されている。f(t)においてはポイント401の時刻において探触子105が移動を開始し、ポイント402の時刻まで等加速度で加速する。その後、ポイント403で示される時刻まで等速度で移動し、その後ポイント404で示される時刻まで等加速度で減速する。ポイント404で示される時刻において探触子105は走査領域の右端に到達する。
【0020】
ここで、図2の測定フローの説明に戻る。各時刻における探触子105の目標位置f(t)は一定の時間間隔dtごとに予め計算され、コントローラ107の内部のメモリに保存されている。ステップS202においてコントローラ107がモータ106に時刻tから時刻t+dtの間に入力するパルスの数N(t)は以下の式(1)で算出される。
【数1】
ここで、モータ106に一回パルス信号を入力したことによる探触子105の移動量をpとする。
【0021】
実際の弾性波測定においては、この走査をパターン301に沿って繰り返し、走査領域302全体に探触子105を走査させる。探触子105の走査が開始されると、次にステップS203において、エンコーダ108を用いて一定の時間間隔で探触子105の位置データを取得する。各位置データとそのときの時刻を示すデータは負荷見積もり手段109に入力される。
【0022】
探触子105の走査中はS203の処理が継続される。そして、S204において探触子105の走査が終了すると、続いてステップS205において負荷見積もり手段109により探触子105を圧迫板102の上を移動させる際の(移動に必要な)負荷を見積もる。この負荷の見積もり方法について図5を用いて詳しく説明する。図5において実線405は探触子105の目標位置f(t)である。また、破線501はステップS203において測定された探触子105の実際の位置を示す。破線501のXの値が実線405の同じ時刻におけるXの値より大きくなっている場所では探触子105を圧迫板102の上を移動させる際の負荷は想定された値よりも小さいと判断する。一方、破線501のXの値が実線405の同じ時刻におけるXの値より小さくなっている場所では探触子105を圧迫板102の上を走査させる際の負荷は想定された値よりも大きいと判断する。
【0023】
例えば、図5に示すポイント502付近においては、実際の探触子105の位置501の傾きが減少し、目標位置405から外れ出していることが分かる。これは、探触子105を圧迫板102の上で移動させる際の負荷がこの付近で増加し、ステップS202で行われた探触子15の位置制御では、各時刻における目標位置に正確に移動できていないことを示す。これに対し本実施例では、負荷補正関数C(t)を算出して、この負荷補正関数C(t)を用いて、探触子105の位置を補正することとした。ここで、破線501で示される時刻tにおける探触子105の実際の測定位置をg(t)とし、kを予め決めら
れた正の定数として、負荷補正関数C(t)を以下の式(2)のように定義する。
【数2】
例えば点502付近においては、負荷補正関数C(t)は正の値となる。
【0024】
S205の処理が終了すると、続いてステップS206において、負荷見積もり手段109は負荷補正関数C(t)に基づいてモータ106の駆動方法(制御パラメータ)を変更し、コントローラ107に設定する。本実施例では予め設定されていた時間間隔dt毎のパルスの入力数N(t)に負荷補正関数C(t)を加えたものを補正後のパルス入力数N´(t)とする。コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)をdt毎の時間間隔で再計算し、コントローラ107の内部のメモリ内容を更新する。
【0025】
S206の処理が終了すると続いてステップS207において光源104からパルスレーザ光を一定周期で繰り返し発光させる制御が開始される。S207の処理に続いてステップS208においてコントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を用いて、モータ106(および探触子105)の駆動を開始する。これと同時に光源104も探触子105と対向させて駆動し、パルスレーザ光により被検体101内部で発生した光音響波が探触子105にて受信されるようになる。
【0026】
例えば点502付近では、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させ、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、点502付近で探触子105の移動時の負荷が大きくなっている場合にも、各時刻における探触子105の実際の位置を最初の目標位置f(t)に近づけることが可能である。S208において探触子105の走査が開始されると、ステップS209においては、探触子105で被検体101内部から発生した光音響波を受信し、電気信号に変換する制御が実行される。この電気信号は図示しない他のルーチンによって信号処理および画像化され、ユーザインタフェース110で表示されるようにしてもよい。探触子105が走査領域の右端Xmaxに到達するまで、探触
子の移動および光音響波の受信が繰り返し行われる。探触子105が走査領域の右端Xmaxに到達するとS210において探触子の走査が終了し、弾性波の受信及び記録も終了す
る。
【0027】
なお、上記の測定フローにおいて、S202〜S204の処理は情報取得工程に相当する。また、S205〜S206の処理は指令信号補正工程に相当する。さらに、S208〜S210の処理は駆動工程に相当する。またパルス入力数N(t)は指令信号に相当する。なお、例えば圧迫板102のある部分の摩擦係数が少なく負荷が小さい場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より少なくパルス信号を発生させる。これにより、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。そうすれば、探触子105の移動時の負荷が小さくなっている場合にも、各時刻における探触子105の実際の位置を最初の目標位置f(t)に近づけることが可能である。
【0028】
上記の例では探触子105を図3におけるX方向に一回走査する場合について説明した。しかしながら、実際には、各Y座標についても目標位置f(t)の値を保存しておき、同様の方法で補正後のパルス入力数N´(t)を各Y座標で算出する。このことで、走査領域302全体で、探触子105に圧迫板102の上を移動させる際の負荷の場所毎のばらつきを補正することができる。また、上記の例では負荷補正関数C(t)として測定位置と目標位置の差分を正の定数倍した式を用いたが、負荷補正関数C(t)は必ずしもこの式に限定されるものではない。測定位置と目標位置の差分に応じて変化する他の関数を
用いてもよい。なお、本実施例において、測定位置と目標位置の差分は、駆動部に生じる負荷に対応する物理量に相当する。
【0029】
また、上記実施例では補正後のパルス入力数として、補正前のパルス入力数と負荷補正関数C(t)を加算した式を用いた。しかしながら、必ずしもこの式に限定されるものではない。負荷補正関数C(t)の値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では、負荷補正関数C(t)によらず加速開始時刻は同じである方法を示したが、加速開始時刻を併せて変化させてもよい。例えば、負荷が大きく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにパルス入力のタイミングを早める(駆動速度と駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を早める)ように駆動方法を変更する。このことで、光音響波が発生する前に余裕を持って探触子を目標位置に移動させることができる。一方、例えば、負荷が小さく見積もられた場合にはパルス入力数を減少させるとともにパルス入力のタイミングを遅くする(駆動速度と駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を遅くする)ように駆動方法を変更する。このことで、探触子を目標位置に移動させることができる。
【0030】
また、上記実施例ではモータ106がパルスモータである例を用いて説明したが、本発明はモータの種類に限定されるものではない。コントローラ107から位置や速度が制御可能であれば、サーボモータなど他の種類のモータを用いてもよい。
【0031】
<実施例2>
図6は本発明に係る弾性波受信装置の実施例2を示すブロック構成図である。本実施例の弾性波受信装置においては、温度変動による探触子105の移動に係る負荷のばらつきを補正するために、温度センサ601および負荷見積もり手段602を設ける。図6において、被検体101、圧迫板102、圧迫板103、光源104、探触子105、モータ106、コントローラ107、ユーザインタフェース110については実施例1と同様であるので説明を省略する。図7に本発明の実施例2における被検体101を圧迫板102および圧迫板103で挟んで圧迫・支持してから、探触子105で弾性波を受信するまでの、弾性波受信装置を用いた測定フローを示す。
【0032】
ステップS701においては、操作者が被検体101の圧迫、固定、マッチング剤塗布などの一連の準備を行った後にコントローラ107に動作開始指示信号を送付し、これをコントローラ107が検出することで、被検体101のセットアップ完了が検知される。次にステップS702において温度検知手段としての温度センサ601により圧迫板102の温度を測定する。ここでは、圧迫板102上にサーミスタ素子を貼り付けておき、サーミスタ素子の抵抗値から圧迫板102の温度を測定する。続いてステップS703において負荷見積もり手段602は図4の実線405で示される目標位置f(t)とステップS702で測定された温度Tをもとに探触子105の移動に係る負荷を見積もる。
【0033】
マッチング剤の温度Tにおける粘度をu(T)とすると、探触子105が圧迫板102の上を移動する際のマッチング剤の粘性による負荷D(t)は粘度と速度に比例する。速度はf(t)を時間微分することで得られる。即ち負荷D(t)はu(T)とf(t)を用いて以下の式(3)で見積もられる。
【数3】
また、負荷補正関数C(t)は以下の式(4)で算出される。kは予め内部に保存されている定数である。
【数4】
一般にマッチング剤の粘性による負荷D(t)は温度Tが低いほど大きな値になる。また、マッチング剤の粘性による負荷D(t)が大きい場合には負荷補正関数C(t)も大きな値になる。
【0034】
次に、ステップS704において、負荷見積もり手段109は負荷補正関数C(t)をもとに目標位置を変更し、コントローラ107に設定する。本実施例では予め定められたパルス入力数N(t)に負荷補正関数C(t)を加えたものを補正後のパルス入力数N´(t)とする。コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を時間dt間隔で再計算し、内部のメモリを更新する。続いてステップS705において光源104からパルスレーザを一定周期で繰り返し発光する制御が開始される。続いてステップS706にてコントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を用いて、モータ106および探触子105の駆動を開始する。これと同時に光源104も探触子105と対向させるように駆動し、パルスレーザ光により被検体101内部で発生した光音響波が探触子105にて受信できるようにする。
【0035】
例えば圧迫板102の温度が低く、探触子105の移動に係る負荷が大きいと予想される場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させる。そして、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、低温により探触子105の移動に係る負荷が大きくなっている場合にも、探触子105の位置と時刻を目標位置f(t)に近づけることが可能となる。例えば圧迫板102の温度が高く、探触子105の移動に係る負荷が小さいと予想される場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より少なくパルス信号を発生させる。そして、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、高温により探触子105の移動に係る負荷が小さくなっている場合にも、探触子105の位置と時刻を目標位置f(t)に近づけることが可能となる。
【0036】
続いてステップS707において探触子105で被検体101内部から発生した光音響波を受信し、電気信号に変換する制御を実行する。この電気信号は外部で信号処理および画像化され、ユーザインタフェース110で表示するようにしてもよい。そして、ステップS708において探触子105の走査と、弾性波の受信とを終了する。なお、上記の測定フローにおいて、S702の処理は情報取得工程に相当する。また、S703〜S704の処理は指令信号補正工程に相当する。さらに、S706〜S708の処理は駆動工程に相当する。またパルス入力数N(t)は指令信号に相当する。
【0037】
以上のように、本発明の実施例2によれば、測定前に探触子105を走査させずに、簡便な方法で温度変動に伴う探触子105の移動に係る負荷の変動を見積もることができる。そのため、測定時間を増加させずに、温度変動に伴う負荷変動を補正し、探触子105の位置精度を向上させることができる。なお、上記実施例では負荷補正関数C(t)として粘度と速度の積を正の定数倍した式を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。温度に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では補正後のパルス入力数N´(t)として、補正前のパルス入力数N(t)と負荷補正関数C(t)とを加算した式を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。負荷補正関数C(t)の値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。なお、本実施例において圧迫板102の温度は、駆動部に生じる負荷に対応する物理量に相当する。
【0038】
また、上記実施例では、負荷補正関数C(t)によらず探触子105の加速開始時刻は
同じである方法を示したが、入力パルス数の変更と併せて加速開始時刻を変化させてもよい。例えば探触子105の移動に係る負荷が大きく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにパルス入力のタイミングを早める(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を早める)ように駆動方法を変更する。このことで、光音響波が発生する前に余裕を持って探触子105を目標位置に移動させることができる。一方、例えば探触子105の移動に係る負荷が小さく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにパルス入力のタイミングを遅くする(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を遅くする)ように駆動方法を変更する。このことで、探触子105を目標位置に移動させることができる。
【0039】
<実施例3>
図8は本発明に係る弾性波受信装置の実施例3を示すブロック構成図である。本実施例の弾性波受信装置においては、被検体101を圧迫板102に固定した際に生じる圧迫板の102の歪みによる摩擦負荷のばらつきを補正するために、歪み検知手段としての歪みセンサ801および情報取得部としての負荷見積もり手段802を設ける。図8において、被検体101、圧迫板102、圧迫板103、光源104、探触子105、モータ106、コントローラ107、ユーザインタフェース110については実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0040】
図9に本発明の実施例3における被検体101を圧迫板102および圧迫板103で固定してから、探触子105で弾性波を受信するまでの、弾性波受信装置を用いた測定フローを示す。ステップS901においては、実施例1及び2と同様、被検体101のセットアップが完了したことが検知される。次にステップS902に進み歪みセンサ801によって圧迫板102の歪みを測定する。ここで、歪みセンサ801の配置の詳細について図10に示す。圧迫板102の探触子105側の面の両端に歪みゲージ1001及び歪みゲージ1002が貼り付けられている。また、被検体101側の面の両端に歪みゲージ1003及び歪みゲージ1004が貼り付けられている。そして、S902においては各歪みゲージの抵抗値を検出する。なお、図10において紙面に対し手前側が探触子105側の面、奥側が被検体101側の面である。
【0041】
続いてステップS903において負荷見積もり手段802はステップS902で測定された各歪みゲージの抵抗値をもとに位置ごとの摩擦負荷を見積もる。基本的な考え方は以下のとおりである。すなわち、歪みゲージ1001及び1002の抵抗値が増加し、歪みゲージ1003及び1004の抵抗値が減少した場合には圧迫板102は図11(a)に示すように探触子側に凸となるように歪んでいると考えられる。その場合には、探触子105と圧迫板102の間の摩擦力は圧迫板102中央部付近で大きく、端部付近で小さくなる。一方、歪みゲージ1001及び1002の抵抗値が減少し歪みゲージ1003及び1004の抵抗値が増加した場合には圧迫板102は図11(b)に示すように探触子105側が凹むように歪んでいると考えられる。その場合には、探触子105と圧迫板102の間の摩擦力は圧迫板102の中央部付近で小さくなり、端部付近で大きくなる。
【0042】
次に、具体的な摩擦負荷の見積り手法について説明する。本実施例では負荷補正関数C(t)として以下の二次関数(5)を採用する。
【数5】
Bは、A<0のとき、(6)式のように定義される。
【数6】
また、A≧0のとき、B=0と定義される。hは、図11(a)及び(b)において、圧迫板102の下端から上端までの長さ(高さ)である。
【0043】
また、Aは式(7)で定義され、圧迫板102が探触子側に凸に歪んでいる場合に負、圧迫板102が探触子側に凹に歪んでいる場合に正になる係数である。kは装置出荷時に定めた正の定数である。Aの値は、S902で検出された歪みゲージ1001、1002、1003及び1004の各々の抵抗値R1001、R1002、R1003及びR1004に応じて定められ保存される。
A=k{(R1003・R1004)/(R1002・R1001)−1}・・・(7)
【0044】
ここで、例えば、図11(a)に示すように圧迫板102が探触子側に凸に歪んだ場合には、(R1002・R1001)>(R1003・R1004)となるので、結果としてAは負の値となる。この場合は、圧迫板102の端部(f(t)=0及びf(t)=h)においては、C(t)=0となり摩擦負荷が小さくが見積もられる。また、圧迫板102の中央(f(t)=h/2)においてC(t)=−A(h2/4)となり、摩擦負荷が大きく見積もられる。また、例えば、図11(b)に示すように圧迫板102が凹に歪んだ場合には、(R1002・R1001)<(R1003・R1004)となるので、Aは正の値となる。この場合は、圧迫板102の端部(f(t)=0及びf(t)=h)においては、C(t)=A(h2/4)となり、摩擦負荷が大きく見積もられる。また、圧迫板102の中央(f(t)=h/2)においてC(t)=0となり摩擦負荷が小さく見積もられる。因みに、圧迫板102が歪んでいない場合には、(R1002・R1001)=(R1003・R1004)となるので、結果としてA=B=0となる。この場合は、常にC(t)=0となる。
【0045】
次に、ステップS904において、負荷見積もり手段802は負荷補正関数C(t)に基づいて目標位置を変更し、コントローラ107に設定する。本実施例では予め定められたパルス入力数N(t)に負荷補正関数C(t)を加えたものを補正後のパルス入力数N´(t)とする。コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)は一定の時間間隔で再計算し、内部のメモリを更新する。続いてステップS905において光源104からパルスレーザを一定周期で繰り返し発光開始させる制御を開始する。さらにステップS906にてコントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を用いて、モータ106および探触子105の駆動を開始する。これと同時に光源104も探触子105と対向させて駆動し、パルスレーザ光により被検体101内部で発生した光音響波が探触子105にて受信できるようにする。
【0046】
ここで、圧迫板102が探触子105側に凸に歪んでおり、中心部付近で摩擦負荷が大きいと予想される場合の探触子105の動作について考える。この場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、圧迫板102の中心付近で最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させる。これにより、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。一方、圧迫板102が凹に歪んでおり、端部付近で摩擦負荷が大きいと予想される場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、圧迫板102の端部付近で最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させる。これにより、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、圧迫板102の歪みにより摩擦負荷が場所により変化している場合にも、探触子105の各時刻における位置を目標位置f(t)に近づけることができる。
【0047】
続いてステップS907において探触子105を用いて被検体101内部で発生した光音響波を受信し、電気信号に変換する制御を実行する。この電気信号は他のルーチンによって信号処理および画像化され、ユーザインタフェース110を介して表示されるようにしてもよい。そして、ステップS908において探触子105の走査と弾性波の測定を終了する。本発明の実施例3によれば、測定前に探触子105を走査させずに、圧迫板102の歪みに伴う摩擦負荷の変動を簡便な方法で補正することができる。そのため、測定時間を増加させずに、圧迫板102の歪みに伴う負荷変動を補正し、探触子105の位置精度を向上させることができる。なお、上記の測定フローにおいて、S902の処理は情報取得工程に相当する。また、S903〜S904の処理は指令信号補正工程に相当する。さらに、S906〜S908の処理は駆動工程に相当する。またパルス入力数N(t)は指令信号に相当する。
【0048】
なお、上記実施例では負荷補正関数C(t)として、式(5)による二次関数を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。歪みゲージの測定値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では補正後のパルス入力数N´(t)として、補正前のパルス入力数N(t)と負荷補正関数C(t)とを加算した式を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。負荷補正関数C(t)の値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では、負荷補正関数C(t)に拘らず加速開始時刻は同じである方法を示した。しかしながら、パルス入力数の変更と併せて加速開始時刻を変化させてもよい。例えば負荷が大きく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにタイミングを早める(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を早める)ように駆動方法を変更する。このことで、光音響波が発生する前に余裕を持って探触子105を目標位置に移動させることができる。一方、例えば負荷が小さく見積もられた場合にはパルス入力数を減少させるとともにタイミングを遅くする(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を遅くする)ように駆動方法を変更する。このことで、探触子105を目標位置に移動させることができる。なお、本実施例において圧迫板102の歪みは、駆動部に生じる負荷に対応する物理量に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の弾性波受信装置および弾性波受信方法は、光音響装置や超音波診断装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
101・・・被検体、102・・・圧迫板、103・・・圧迫板、104・・・光源、105・・・探触子、106・・・モータ、107・・・コントローラ、108・・・エンコーダ、109・・・負荷見積もり手段、110・・・ユーザインタフェース、301・・・探触子の走査パターン、302・・・探触子の走査領域、401・・・加速開始ポイント、402・・・加速終了ポイント、403・・・減速開始ポイント、404・・・減速終了ポイント、405・・・目標位置、501・・・測定位置、502・・・ポイント、601・・・温度センサ、602・・・負荷見積もり手段、801・・・歪みセンサ、802・・・負荷見積もり手段、1001・・・歪みゲージ、1002・・・歪みゲージ、1003・・・歪みゲージ、1004・・・歪みゲージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材に接触しながら当該板状部材の上をスキャンする探触子が備えられた弾性波受信装置、弾性波受信方法及び、光音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内部から発生する弾性波を探触子にて受信し、内部の構造を画像化する装置が研究、開発されている。その応用の一つとして、被検体内部にレーザ光を照射し、被検体内部で発生する光音響波を超音波探触子で受信し、被検体内部の組織画像を表示する、光音響診断装置が提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)。光音響診断装置の一例においては、被検体(乳房)をプレートと超音波探触子で圧迫し、プレート越しにパルスレーザ光を照射する。そして、披検体内部で発生する光音響波を超音波探触子で受信し、非検体内部の組織画像を再構成して表示する。そして、被検体(乳房)全体の組織画像を得るために、探触子および対向するパルスレーザ発生部を二次元的に走査可能とする二次元走査機構を備え、複数の測定点において光音響波を計測している。
【0003】
また、探触子を機械的に走査する機構を備えた超音波診断装置およびその制御方法が公知である(例えば、特許文献1を参照。)。この超音波診断装置では、探触子に位置検出器を設け、位置信号から速度信号を生成し、目標位置および目標速度との差分を探触子の駆動信号にフィードバックしている。
【0004】
これらの診断装置では、被検体内部で発生する光音響波または超音波を探触子で受信する際に、披検体と探触子との間に隙間があるとその部分の組織画像の画質が著しく悪化する。これは、隙間にある空気と被検体の間の音響インピーダンスが著しく異なり、超音波が当該隙間をほとんど透過しないためである。この問題を回避するために、音響インピーダンスが被検体と近いマッチング剤を探触子と被検体の間に挿入し、隙間ができないようにすることが行われている。また、探触子を機械的に走査する際に、隙間ができないようにするためには探触子と被検体、およびプレートを十分に密着させておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−195088号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Srirang Manohar, et. al : Region-of-interest breast studies using the Twente Photoacoustic Mammoscope (PAM), Proc. of SPIE, Vol. 6437, pp.1-9, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光音響診断装置においては、測定毎に被検体をプレートで圧迫し、マッチング剤を塗布している。この際に被検体の個体差、プレートの歪み、傷、マッチング剤の塗布状況、雰囲気温度の変動などのために探触子にプレート上を移動させる際の負荷が変動する場合があった。そうすると、この負荷変動のために光音響波受信時の探触子の位置が目標位置とずれてしまい、再構成された組織画像の精度が低下する場合があった。また、探触子にプレート上を移動させる際の負荷が大きくなり探触子の位置が著しくずれた場合には、測定のやり直しとなり、被検体に余分なレーザ光照射が必要となり、患者負担が増加してしまう問題があった。さらに、大きな負荷に対しても目標位置に正確に
探触子を駆動させるためには、より容量の高いアクチュエータが必要となり、装置のコストダウンを妨げてしまう問題があった。
【0008】
本発明では、上記のような従来技術の状況を鑑みて案出されたものである。そして、その目的は、探触子にプレート上を移動させる際の負荷に変動がある状況でも、コストを増加させずに探触子の位置精度を高めることを可能にする弾性波受信装置及び、弾性波受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検体から発生する弾性波を受信する探触子と、
板状の形状を有し、片側の面である支持面において前記被検体を支持するとともに該支持面の逆側の面である走査面を前記探触子が走査して弾性波を受信する板状部材と、
前記探触子を、前記板状部材の前記走査面の上を走査すべく駆動する駆動部と、
前記探触子が前記走査面の上の予め定められた目標位置に移動するように駆動信号を前記駆動部に供給する駆動制御部と、
前記走査面の上を前記探触子が走査する際に前記駆動部に生じる負荷に対応する物理量を予め取得し記憶しておく情報取得部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記情報取得部に記憶されている前記物理量を用いて、前記探触子が前記負荷に拘らず前記目標位置に移動するべく、前記駆動信号を補正することを特徴とする弾性波受信装置である。
【0010】
また、本発明は、探触子を予め定められた目標位置に移動させるべき指令信号によって、被検体を支持する板状部材上を前記探触子に走査させ、該探触子で前記被検体から発生する弾性波を受信する弾性波受信方法であって、
前記板状部材の上における、前記探触子の移動に必要な負荷に対応する物理量を予め取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程において取得された前記物理量を用いて、前記指令信号を補正する指令信号補正工程と、
前記指令信号補正工程により補正された指令信号によって前記探触子を目標位置に移動させる駆動工程と、
を備えることを特徴とする弾性波受信方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば探触子に板状部材上を走査させる際の負荷を見積もり、探触子が目標位置に移動できるように駆動方法を変更することで、コストを増加させずに探触子の位置精度を高め、組織画像の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る弾性波受信装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る測定フローを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1に係る探触子の走査の態様を示す図である。
【図4】探触子についての目標位置と時刻の関係を示す図である。
【図5】探触子についての測定位置と時刻の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る弾性波受信装置のブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係る測定フローを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例3に係る弾性波受信装置のブロック図である。
【図9】本発明の実施例3に係る測定フローを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例3における歪みゲージの配置を示す図である。
【図11】本発明の実施例3における圧迫板の状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る弾性波受信装置の概略構成を示すブロック図である。図1において光源104を除いた構成は弾性波受信装置に相当し、光源104を含む構成は光音響装置に相当する。図1において101は被検体である乳房である。被検体101は、板状部材としての板状の形状を有する圧迫板102および103により挟まれて圧迫されることで支持される。圧迫板102は、片側の面の支持面において被検体を圧迫支持する。この状態で、パルスレーザ光源104より被検体101に光音響波を発生させるためのレーザ光Lが照射される。この際パルスレーザ光源104は一定周波数でレーザ光Lをパルス状に変動させつつ被検体101に照射する。そして、照射されたレーザ光のエネルギが被検体101に吸収され、発散されることで発生した光音響波は、探触子105に弾性波Wとして受信され、電気信号に変換される。探触子105は駆動部としてのモータ106によって駆動されることで、被検体101全体にわたって圧迫板102の支持面の逆側の面である走査面の上を2次元的に走査することが可能となっている。
【0015】
モータ106は、駆動制御部としてのコントローラ107が生成するパルス信号S3が供給されることにより駆動されるバルスモータであり、コントローラ107から出力されるパルス信号S3の数及び周波数に応じてモータ106の駆動が制御される。具体的にはパルス信号S3の数に比例してモータ106の回転角度は変化する。また、パルス信号S3の周波数に比例してモータ106の回転速度は変化する。すなわち、コントローラ107から出力されるパルスの数及び周波数を制御することで、探触子105の位置、速度、加速度を制御することができる。探触子105の圧迫板102上における位置情報は位置検知手段としてのエンコーダ108によって取得される。
【0016】
エンコーダ108により取得された探触子105の位置情報S1は情報取得部としての負荷見積り手段109に送られる。この負荷見積り手段109においては、探触子105の位置情報S1に基づいて、探触子105に圧迫板102上を移動させる際の負荷に相当する見積もり値が算出され記憶される。この負荷見積り手段109はマイクロコントローラ(またはコンピューター)およびそれに組み込まれたソフトウェア(またはプログラム)によって構成される。負荷見積もり手段109によって算出された負荷に相当する見積もり値S2は、コントローラ107に送られる。コントローラ107は送られた見積もり値S2に基づいてモータ106の駆動パルス信号の数およびタイミングを変更させる機能を有する。また、ユーザインタフェース110は、操作者が弾性波受信装置の動作開始指示、終了指示、受信データ閲覧などを行うためのインタフェースである。
【0017】
図2には、本実施例に係る弾性波受信装置を用いた場合の、被検体101を圧迫板102および103で圧迫することで支持してから、探触子105で弾性波を受信・記録するまでの測定フローを示す。本測定フローが開始されると、まず、ステップS201において、被検体101が圧迫板102及び103で圧迫・支持され、被検体101のセットアップが完了したことが検知される。具体的には、操作者は、被検体101の圧迫、固定、マッチング剤塗布などの一連の準備を行った後に、ユーザインタフェース110を介してコントローラ107に動作開始指示信号を送付する。そして、この動作開始指示信号をコントローラ107が検出することで、被検体101のセットアップ完了が検知される。
【0018】
次にステップS202においてコントローラ107は予め定められた探触子105の各時刻における目標位置に基づいて、モータ駆動信号を発生させ、探触子105の走査を開始させる。ここで、図3及び図4を用いて探触子105の走査の詳細について説明する。図3は、被検体101及び圧迫板102を探触子105の方向から見た図である。図3に
おいて302は、探触子105が被検体101に対して走査すべき領域である走査領域を示している。図3においては、走査領域302の図中左上の隅部を原点とし、水平方向右向きにX軸、垂直方向下向きにY軸を定義している。本実施例では、コントローラ107は矢印301で示すパターンで探触子105に走査領域302を走査させる。ここでは簡単のため探触子105がX軸方向に一回走査する場合を想定して説明する。
【0019】
図4は予め決められた各時刻における目標位置f(t)を示す図である。図においては操作者が測定開始指示を行った時刻を0とし、横軸に時刻tがとられている。また縦軸に
探触子105の水平位置Xがとられている。各時刻における探触子105の目標位置f(t)は実線405で示されている。f(t)においてはポイント401の時刻において探触子105が移動を開始し、ポイント402の時刻まで等加速度で加速する。その後、ポイント403で示される時刻まで等速度で移動し、その後ポイント404で示される時刻まで等加速度で減速する。ポイント404で示される時刻において探触子105は走査領域の右端に到達する。
【0020】
ここで、図2の測定フローの説明に戻る。各時刻における探触子105の目標位置f(t)は一定の時間間隔dtごとに予め計算され、コントローラ107の内部のメモリに保存されている。ステップS202においてコントローラ107がモータ106に時刻tから時刻t+dtの間に入力するパルスの数N(t)は以下の式(1)で算出される。
【数1】
ここで、モータ106に一回パルス信号を入力したことによる探触子105の移動量をpとする。
【0021】
実際の弾性波測定においては、この走査をパターン301に沿って繰り返し、走査領域302全体に探触子105を走査させる。探触子105の走査が開始されると、次にステップS203において、エンコーダ108を用いて一定の時間間隔で探触子105の位置データを取得する。各位置データとそのときの時刻を示すデータは負荷見積もり手段109に入力される。
【0022】
探触子105の走査中はS203の処理が継続される。そして、S204において探触子105の走査が終了すると、続いてステップS205において負荷見積もり手段109により探触子105を圧迫板102の上を移動させる際の(移動に必要な)負荷を見積もる。この負荷の見積もり方法について図5を用いて詳しく説明する。図5において実線405は探触子105の目標位置f(t)である。また、破線501はステップS203において測定された探触子105の実際の位置を示す。破線501のXの値が実線405の同じ時刻におけるXの値より大きくなっている場所では探触子105を圧迫板102の上を移動させる際の負荷は想定された値よりも小さいと判断する。一方、破線501のXの値が実線405の同じ時刻におけるXの値より小さくなっている場所では探触子105を圧迫板102の上を走査させる際の負荷は想定された値よりも大きいと判断する。
【0023】
例えば、図5に示すポイント502付近においては、実際の探触子105の位置501の傾きが減少し、目標位置405から外れ出していることが分かる。これは、探触子105を圧迫板102の上で移動させる際の負荷がこの付近で増加し、ステップS202で行われた探触子15の位置制御では、各時刻における目標位置に正確に移動できていないことを示す。これに対し本実施例では、負荷補正関数C(t)を算出して、この負荷補正関数C(t)を用いて、探触子105の位置を補正することとした。ここで、破線501で示される時刻tにおける探触子105の実際の測定位置をg(t)とし、kを予め決めら
れた正の定数として、負荷補正関数C(t)を以下の式(2)のように定義する。
【数2】
例えば点502付近においては、負荷補正関数C(t)は正の値となる。
【0024】
S205の処理が終了すると、続いてステップS206において、負荷見積もり手段109は負荷補正関数C(t)に基づいてモータ106の駆動方法(制御パラメータ)を変更し、コントローラ107に設定する。本実施例では予め設定されていた時間間隔dt毎のパルスの入力数N(t)に負荷補正関数C(t)を加えたものを補正後のパルス入力数N´(t)とする。コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)をdt毎の時間間隔で再計算し、コントローラ107の内部のメモリ内容を更新する。
【0025】
S206の処理が終了すると続いてステップS207において光源104からパルスレーザ光を一定周期で繰り返し発光させる制御が開始される。S207の処理に続いてステップS208においてコントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を用いて、モータ106(および探触子105)の駆動を開始する。これと同時に光源104も探触子105と対向させて駆動し、パルスレーザ光により被検体101内部で発生した光音響波が探触子105にて受信されるようになる。
【0026】
例えば点502付近では、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させ、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、点502付近で探触子105の移動時の負荷が大きくなっている場合にも、各時刻における探触子105の実際の位置を最初の目標位置f(t)に近づけることが可能である。S208において探触子105の走査が開始されると、ステップS209においては、探触子105で被検体101内部から発生した光音響波を受信し、電気信号に変換する制御が実行される。この電気信号は図示しない他のルーチンによって信号処理および画像化され、ユーザインタフェース110で表示されるようにしてもよい。探触子105が走査領域の右端Xmaxに到達するまで、探触
子の移動および光音響波の受信が繰り返し行われる。探触子105が走査領域の右端Xmaxに到達するとS210において探触子の走査が終了し、弾性波の受信及び記録も終了す
る。
【0027】
なお、上記の測定フローにおいて、S202〜S204の処理は情報取得工程に相当する。また、S205〜S206の処理は指令信号補正工程に相当する。さらに、S208〜S210の処理は駆動工程に相当する。またパルス入力数N(t)は指令信号に相当する。なお、例えば圧迫板102のある部分の摩擦係数が少なく負荷が小さい場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より少なくパルス信号を発生させる。これにより、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。そうすれば、探触子105の移動時の負荷が小さくなっている場合にも、各時刻における探触子105の実際の位置を最初の目標位置f(t)に近づけることが可能である。
【0028】
上記の例では探触子105を図3におけるX方向に一回走査する場合について説明した。しかしながら、実際には、各Y座標についても目標位置f(t)の値を保存しておき、同様の方法で補正後のパルス入力数N´(t)を各Y座標で算出する。このことで、走査領域302全体で、探触子105に圧迫板102の上を移動させる際の負荷の場所毎のばらつきを補正することができる。また、上記の例では負荷補正関数C(t)として測定位置と目標位置の差分を正の定数倍した式を用いたが、負荷補正関数C(t)は必ずしもこの式に限定されるものではない。測定位置と目標位置の差分に応じて変化する他の関数を
用いてもよい。なお、本実施例において、測定位置と目標位置の差分は、駆動部に生じる負荷に対応する物理量に相当する。
【0029】
また、上記実施例では補正後のパルス入力数として、補正前のパルス入力数と負荷補正関数C(t)を加算した式を用いた。しかしながら、必ずしもこの式に限定されるものではない。負荷補正関数C(t)の値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では、負荷補正関数C(t)によらず加速開始時刻は同じである方法を示したが、加速開始時刻を併せて変化させてもよい。例えば、負荷が大きく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにパルス入力のタイミングを早める(駆動速度と駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を早める)ように駆動方法を変更する。このことで、光音響波が発生する前に余裕を持って探触子を目標位置に移動させることができる。一方、例えば、負荷が小さく見積もられた場合にはパルス入力数を減少させるとともにパルス入力のタイミングを遅くする(駆動速度と駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を遅くする)ように駆動方法を変更する。このことで、探触子を目標位置に移動させることができる。
【0030】
また、上記実施例ではモータ106がパルスモータである例を用いて説明したが、本発明はモータの種類に限定されるものではない。コントローラ107から位置や速度が制御可能であれば、サーボモータなど他の種類のモータを用いてもよい。
【0031】
<実施例2>
図6は本発明に係る弾性波受信装置の実施例2を示すブロック構成図である。本実施例の弾性波受信装置においては、温度変動による探触子105の移動に係る負荷のばらつきを補正するために、温度センサ601および負荷見積もり手段602を設ける。図6において、被検体101、圧迫板102、圧迫板103、光源104、探触子105、モータ106、コントローラ107、ユーザインタフェース110については実施例1と同様であるので説明を省略する。図7に本発明の実施例2における被検体101を圧迫板102および圧迫板103で挟んで圧迫・支持してから、探触子105で弾性波を受信するまでの、弾性波受信装置を用いた測定フローを示す。
【0032】
ステップS701においては、操作者が被検体101の圧迫、固定、マッチング剤塗布などの一連の準備を行った後にコントローラ107に動作開始指示信号を送付し、これをコントローラ107が検出することで、被検体101のセットアップ完了が検知される。次にステップS702において温度検知手段としての温度センサ601により圧迫板102の温度を測定する。ここでは、圧迫板102上にサーミスタ素子を貼り付けておき、サーミスタ素子の抵抗値から圧迫板102の温度を測定する。続いてステップS703において負荷見積もり手段602は図4の実線405で示される目標位置f(t)とステップS702で測定された温度Tをもとに探触子105の移動に係る負荷を見積もる。
【0033】
マッチング剤の温度Tにおける粘度をu(T)とすると、探触子105が圧迫板102の上を移動する際のマッチング剤の粘性による負荷D(t)は粘度と速度に比例する。速度はf(t)を時間微分することで得られる。即ち負荷D(t)はu(T)とf(t)を用いて以下の式(3)で見積もられる。
【数3】
また、負荷補正関数C(t)は以下の式(4)で算出される。kは予め内部に保存されている定数である。
【数4】
一般にマッチング剤の粘性による負荷D(t)は温度Tが低いほど大きな値になる。また、マッチング剤の粘性による負荷D(t)が大きい場合には負荷補正関数C(t)も大きな値になる。
【0034】
次に、ステップS704において、負荷見積もり手段109は負荷補正関数C(t)をもとに目標位置を変更し、コントローラ107に設定する。本実施例では予め定められたパルス入力数N(t)に負荷補正関数C(t)を加えたものを補正後のパルス入力数N´(t)とする。コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を時間dt間隔で再計算し、内部のメモリを更新する。続いてステップS705において光源104からパルスレーザを一定周期で繰り返し発光する制御が開始される。続いてステップS706にてコントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を用いて、モータ106および探触子105の駆動を開始する。これと同時に光源104も探触子105と対向させるように駆動し、パルスレーザ光により被検体101内部で発生した光音響波が探触子105にて受信できるようにする。
【0035】
例えば圧迫板102の温度が低く、探触子105の移動に係る負荷が大きいと予想される場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させる。そして、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、低温により探触子105の移動に係る負荷が大きくなっている場合にも、探触子105の位置と時刻を目標位置f(t)に近づけることが可能となる。例えば圧迫板102の温度が高く、探触子105の移動に係る負荷が小さいと予想される場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、最初のパルス入力数N(t)より少なくパルス信号を発生させる。そして、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、高温により探触子105の移動に係る負荷が小さくなっている場合にも、探触子105の位置と時刻を目標位置f(t)に近づけることが可能となる。
【0036】
続いてステップS707において探触子105で被検体101内部から発生した光音響波を受信し、電気信号に変換する制御を実行する。この電気信号は外部で信号処理および画像化され、ユーザインタフェース110で表示するようにしてもよい。そして、ステップS708において探触子105の走査と、弾性波の受信とを終了する。なお、上記の測定フローにおいて、S702の処理は情報取得工程に相当する。また、S703〜S704の処理は指令信号補正工程に相当する。さらに、S706〜S708の処理は駆動工程に相当する。またパルス入力数N(t)は指令信号に相当する。
【0037】
以上のように、本発明の実施例2によれば、測定前に探触子105を走査させずに、簡便な方法で温度変動に伴う探触子105の移動に係る負荷の変動を見積もることができる。そのため、測定時間を増加させずに、温度変動に伴う負荷変動を補正し、探触子105の位置精度を向上させることができる。なお、上記実施例では負荷補正関数C(t)として粘度と速度の積を正の定数倍した式を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。温度に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では補正後のパルス入力数N´(t)として、補正前のパルス入力数N(t)と負荷補正関数C(t)とを加算した式を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。負荷補正関数C(t)の値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。なお、本実施例において圧迫板102の温度は、駆動部に生じる負荷に対応する物理量に相当する。
【0038】
また、上記実施例では、負荷補正関数C(t)によらず探触子105の加速開始時刻は
同じである方法を示したが、入力パルス数の変更と併せて加速開始時刻を変化させてもよい。例えば探触子105の移動に係る負荷が大きく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにパルス入力のタイミングを早める(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を早める)ように駆動方法を変更する。このことで、光音響波が発生する前に余裕を持って探触子105を目標位置に移動させることができる。一方、例えば探触子105の移動に係る負荷が小さく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにパルス入力のタイミングを遅くする(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を遅くする)ように駆動方法を変更する。このことで、探触子105を目標位置に移動させることができる。
【0039】
<実施例3>
図8は本発明に係る弾性波受信装置の実施例3を示すブロック構成図である。本実施例の弾性波受信装置においては、被検体101を圧迫板102に固定した際に生じる圧迫板の102の歪みによる摩擦負荷のばらつきを補正するために、歪み検知手段としての歪みセンサ801および情報取得部としての負荷見積もり手段802を設ける。図8において、被検体101、圧迫板102、圧迫板103、光源104、探触子105、モータ106、コントローラ107、ユーザインタフェース110については実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0040】
図9に本発明の実施例3における被検体101を圧迫板102および圧迫板103で固定してから、探触子105で弾性波を受信するまでの、弾性波受信装置を用いた測定フローを示す。ステップS901においては、実施例1及び2と同様、被検体101のセットアップが完了したことが検知される。次にステップS902に進み歪みセンサ801によって圧迫板102の歪みを測定する。ここで、歪みセンサ801の配置の詳細について図10に示す。圧迫板102の探触子105側の面の両端に歪みゲージ1001及び歪みゲージ1002が貼り付けられている。また、被検体101側の面の両端に歪みゲージ1003及び歪みゲージ1004が貼り付けられている。そして、S902においては各歪みゲージの抵抗値を検出する。なお、図10において紙面に対し手前側が探触子105側の面、奥側が被検体101側の面である。
【0041】
続いてステップS903において負荷見積もり手段802はステップS902で測定された各歪みゲージの抵抗値をもとに位置ごとの摩擦負荷を見積もる。基本的な考え方は以下のとおりである。すなわち、歪みゲージ1001及び1002の抵抗値が増加し、歪みゲージ1003及び1004の抵抗値が減少した場合には圧迫板102は図11(a)に示すように探触子側に凸となるように歪んでいると考えられる。その場合には、探触子105と圧迫板102の間の摩擦力は圧迫板102中央部付近で大きく、端部付近で小さくなる。一方、歪みゲージ1001及び1002の抵抗値が減少し歪みゲージ1003及び1004の抵抗値が増加した場合には圧迫板102は図11(b)に示すように探触子105側が凹むように歪んでいると考えられる。その場合には、探触子105と圧迫板102の間の摩擦力は圧迫板102の中央部付近で小さくなり、端部付近で大きくなる。
【0042】
次に、具体的な摩擦負荷の見積り手法について説明する。本実施例では負荷補正関数C(t)として以下の二次関数(5)を採用する。
【数5】
Bは、A<0のとき、(6)式のように定義される。
【数6】
また、A≧0のとき、B=0と定義される。hは、図11(a)及び(b)において、圧迫板102の下端から上端までの長さ(高さ)である。
【0043】
また、Aは式(7)で定義され、圧迫板102が探触子側に凸に歪んでいる場合に負、圧迫板102が探触子側に凹に歪んでいる場合に正になる係数である。kは装置出荷時に定めた正の定数である。Aの値は、S902で検出された歪みゲージ1001、1002、1003及び1004の各々の抵抗値R1001、R1002、R1003及びR1004に応じて定められ保存される。
A=k{(R1003・R1004)/(R1002・R1001)−1}・・・(7)
【0044】
ここで、例えば、図11(a)に示すように圧迫板102が探触子側に凸に歪んだ場合には、(R1002・R1001)>(R1003・R1004)となるので、結果としてAは負の値となる。この場合は、圧迫板102の端部(f(t)=0及びf(t)=h)においては、C(t)=0となり摩擦負荷が小さくが見積もられる。また、圧迫板102の中央(f(t)=h/2)においてC(t)=−A(h2/4)となり、摩擦負荷が大きく見積もられる。また、例えば、図11(b)に示すように圧迫板102が凹に歪んだ場合には、(R1002・R1001)<(R1003・R1004)となるので、Aは正の値となる。この場合は、圧迫板102の端部(f(t)=0及びf(t)=h)においては、C(t)=A(h2/4)となり、摩擦負荷が大きく見積もられる。また、圧迫板102の中央(f(t)=h/2)においてC(t)=0となり摩擦負荷が小さく見積もられる。因みに、圧迫板102が歪んでいない場合には、(R1002・R1001)=(R1003・R1004)となるので、結果としてA=B=0となる。この場合は、常にC(t)=0となる。
【0045】
次に、ステップS904において、負荷見積もり手段802は負荷補正関数C(t)に基づいて目標位置を変更し、コントローラ107に設定する。本実施例では予め定められたパルス入力数N(t)に負荷補正関数C(t)を加えたものを補正後のパルス入力数N´(t)とする。コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)は一定の時間間隔で再計算し、内部のメモリを更新する。続いてステップS905において光源104からパルスレーザを一定周期で繰り返し発光開始させる制御を開始する。さらにステップS906にてコントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)を用いて、モータ106および探触子105の駆動を開始する。これと同時に光源104も探触子105と対向させて駆動し、パルスレーザ光により被検体101内部で発生した光音響波が探触子105にて受信できるようにする。
【0046】
ここで、圧迫板102が探触子105側に凸に歪んでおり、中心部付近で摩擦負荷が大きいと予想される場合の探触子105の動作について考える。この場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、圧迫板102の中心付近で最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させる。これにより、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。一方、圧迫板102が凹に歪んでおり、端部付近で摩擦負荷が大きいと予想される場合には、コントローラ107は補正後のパルス入力数N´(t)に基づき、圧迫板102の端部付近で最初のパルス入力数N(t)より多くパルス信号を発生させる。これにより、探触子105が目標位置f(t)に追従できるようにする。これにより、圧迫板102の歪みにより摩擦負荷が場所により変化している場合にも、探触子105の各時刻における位置を目標位置f(t)に近づけることができる。
【0047】
続いてステップS907において探触子105を用いて被検体101内部で発生した光音響波を受信し、電気信号に変換する制御を実行する。この電気信号は他のルーチンによって信号処理および画像化され、ユーザインタフェース110を介して表示されるようにしてもよい。そして、ステップS908において探触子105の走査と弾性波の測定を終了する。本発明の実施例3によれば、測定前に探触子105を走査させずに、圧迫板102の歪みに伴う摩擦負荷の変動を簡便な方法で補正することができる。そのため、測定時間を増加させずに、圧迫板102の歪みに伴う負荷変動を補正し、探触子105の位置精度を向上させることができる。なお、上記の測定フローにおいて、S902の処理は情報取得工程に相当する。また、S903〜S904の処理は指令信号補正工程に相当する。さらに、S906〜S908の処理は駆動工程に相当する。またパルス入力数N(t)は指令信号に相当する。
【0048】
なお、上記実施例では負荷補正関数C(t)として、式(5)による二次関数を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。歪みゲージの測定値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では補正後のパルス入力数N´(t)として、補正前のパルス入力数N(t)と負荷補正関数C(t)とを加算した式を用いたが、必ずしもこの式に限定されるものではない。負荷補正関数C(t)の値に応じて変化する他の関数を用いてもよい。また、上記実施例では、負荷補正関数C(t)に拘らず加速開始時刻は同じである方法を示した。しかしながら、パルス入力数の変更と併せて加速開始時刻を変化させてもよい。例えば負荷が大きく見積もられた場合にはパルス入力数を増加させるとともにタイミングを早める(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を早める)ように駆動方法を変更する。このことで、光音響波が発生する前に余裕を持って探触子105を目標位置に移動させることができる。一方、例えば負荷が小さく見積もられた場合にはパルス入力数を減少させるとともにタイミングを遅くする(駆動速度および駆動タイミング(または、移動速度と移動タイミング)を遅くする)ように駆動方法を変更する。このことで、探触子105を目標位置に移動させることができる。なお、本実施例において圧迫板102の歪みは、駆動部に生じる負荷に対応する物理量に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の弾性波受信装置および弾性波受信方法は、光音響装置や超音波診断装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
101・・・被検体、102・・・圧迫板、103・・・圧迫板、104・・・光源、105・・・探触子、106・・・モータ、107・・・コントローラ、108・・・エンコーダ、109・・・負荷見積もり手段、110・・・ユーザインタフェース、301・・・探触子の走査パターン、302・・・探触子の走査領域、401・・・加速開始ポイント、402・・・加速終了ポイント、403・・・減速開始ポイント、404・・・減速終了ポイント、405・・・目標位置、501・・・測定位置、502・・・ポイント、601・・・温度センサ、602・・・負荷見積もり手段、801・・・歪みセンサ、802・・・負荷見積もり手段、1001・・・歪みゲージ、1002・・・歪みゲージ、1003・・・歪みゲージ、1004・・・歪みゲージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から発生する弾性波を受信する探触子と、
板状の形状を有し、片側の面である支持面において前記被検体を支持するとともに該支持面の逆側の面である走査面を前記探触子が走査して弾性波を受信する板状部材と、
前記探触子を、前記板状部材の前記走査面の上を走査すべく駆動する駆動部と、
前記探触子が前記走査面の上の予め定められた目標位置に移動するように駆動信号を前記駆動部に供給する駆動制御部と、
前記走査面の上を前記探触子が走査する際に前記駆動部に生じる負荷に対応する物理量を予め取得し記憶しておく情報取得部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記情報取得部に記憶されている前記物理量を用いて、前記探触子が前記負荷に拘らず前記目標位置に移動するべく、前記駆動信号を補正することを特徴とする弾性波受信装置。
【請求項2】
前記情報取得部は前記探触子の位置を検知する位置検知手段を有し、
予め前記探触子に前記走査面の上を走査させ、その際に前記位置検知手段により検知された前記探触子の位置と前記目標位置との差を、前記負荷に対応する物理量として前記情報取得部が記憶することを特徴とする請求項1に記載の弾性波受信装置。
【請求項3】
前記物理量を取得する際には、前記被検体から弾性波を発生させない状態で、前記探触子に前記走査面の上を走査させることを特徴とする請求項2に記載の弾性波受信装置。
【請求項4】
前記情報取得部は前記板状部材の温度を検知する温度検知手段を有し、該温度検知手段が取得した温度を、前記負荷に対応する物理量として前記情報取得部が記憶することを特徴とする請求項1に記載の弾性波受信装置。
【請求項5】
前記情報取得部は前記板状部材の歪みを検知する歪み検知手段を有し、該歪み検知手段が検知した歪みを、前記負荷に対応する物理量として前記情報取得部が記憶することを特徴とする請求項1に記載の弾性波受信装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より大きい場合には前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを早めることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波受信装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より小さい場合には前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを遅らせることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波受信装置。
【請求項8】
探触子を予め定められた目標位置に移動させるべき指令信号によって、被検体を支持する板状部材の上を前記探触子に走査させ、該探触子で前記被検体から発生する弾性波を受信する弾性波受信方法であって、
前記板状部材の上における、前記探触子の移動に必要な負荷に対応する物理量を予め取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程において取得された前記物理量を用いて、前記指令信号を補正する指令信号補正工程と、
前記指令信号補正工程により補正された指令信号によって前記探触子を目標位置に移動させる駆動工程と、
を備えることを特徴とする弾性波受信方法。
【請求項9】
前記情報取得工程においては、前記被検体から弾性波を発生させない状態で前記板状部
材の上を前記探触子に走査させることで、前記物理量を取得することを特徴とする請求項8に記載の弾性波受信方法。
【請求項10】
前記情報取得工程においては、前記板状部材の上を前記探触子に走査させることで前記探触子の位置情報を前記負荷に対応する物理量として取得するとともに、取得された位置情報と前記探触子の目標位置との差を算出し、
前記指令信号補正工程においては、前記探触子の位置と前記目標位置との差が少なくなるように前記探触子の移動速度または移動タイミングを変化させることを特徴とする請求項8または9に記載の弾性波受信方法。
【請求項11】
前記情報取得工程においては、前記板状部材の温度を前記負荷に対応する物理量として取得することを特徴とする請求項8記載の弾性波受信方法。
【請求項12】
前記情報取得工程においては、前記板状部材の歪みを前記負荷に対応する物理量として取得することを特徴とする請求項8に記載の弾性波受信方法。
【請求項13】
前記情報取得工程において取得した前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より大きい場合には、
前記指令信号補正工程において、前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを早めるように前記指令信号を補正することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の弾性波受信方法。
【請求項14】
前記情報取得工程において取得した前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より小さい場合には、
前記指令信号補正工程において、前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを遅くするように前記指令信号を補正することを特徴とする請求項8から13のいずれか一項に記載の弾性波受信方法。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか一項に記載の弾性波受信装置と、
前記被検体に光を照射させて弾性波を発生させる光源と、
を備えることを特徴とする光音響装置。
【請求項16】
コンピューターに、請求項8から14のいずれか一項に記載の弾性波受信方法における、情報取得工程、指令信号補正工程および駆動工程を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
被検体から発生する弾性波を受信する探触子と、
板状の形状を有し、片側の面である支持面において前記被検体を支持するとともに該支持面の逆側の面である走査面を前記探触子が走査して弾性波を受信する板状部材と、
前記探触子を、前記板状部材の前記走査面の上を走査すべく駆動する駆動部と、
前記探触子が前記走査面の上の予め定められた目標位置に移動するように駆動信号を前記駆動部に供給する駆動制御部と、
前記走査面の上を前記探触子が走査する際に前記駆動部に生じる負荷に対応する物理量を予め取得し記憶しておく情報取得部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記情報取得部に記憶されている前記物理量を用いて、前記探触子が前記負荷に拘らず前記目標位置に移動するべく、前記駆動信号を補正することを特徴とする弾性波受信装置。
【請求項2】
前記情報取得部は前記探触子の位置を検知する位置検知手段を有し、
予め前記探触子に前記走査面の上を走査させ、その際に前記位置検知手段により検知された前記探触子の位置と前記目標位置との差を、前記負荷に対応する物理量として前記情報取得部が記憶することを特徴とする請求項1に記載の弾性波受信装置。
【請求項3】
前記物理量を取得する際には、前記被検体から弾性波を発生させない状態で、前記探触子に前記走査面の上を走査させることを特徴とする請求項2に記載の弾性波受信装置。
【請求項4】
前記情報取得部は前記板状部材の温度を検知する温度検知手段を有し、該温度検知手段が取得した温度を、前記負荷に対応する物理量として前記情報取得部が記憶することを特徴とする請求項1に記載の弾性波受信装置。
【請求項5】
前記情報取得部は前記板状部材の歪みを検知する歪み検知手段を有し、該歪み検知手段が検知した歪みを、前記負荷に対応する物理量として前記情報取得部が記憶することを特徴とする請求項1に記載の弾性波受信装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より大きい場合には前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを早めることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波受信装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より小さい場合には前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを遅らせることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波受信装置。
【請求項8】
探触子を予め定められた目標位置に移動させるべき指令信号によって、被検体を支持する板状部材の上を前記探触子に走査させ、該探触子で前記被検体から発生する弾性波を受信する弾性波受信方法であって、
前記板状部材の上における、前記探触子の移動に必要な負荷に対応する物理量を予め取得する情報取得工程と、
前記情報取得工程において取得された前記物理量を用いて、前記指令信号を補正する指令信号補正工程と、
前記指令信号補正工程により補正された指令信号によって前記探触子を目標位置に移動させる駆動工程と、
を備えることを特徴とする弾性波受信方法。
【請求項9】
前記情報取得工程においては、前記被検体から弾性波を発生させない状態で前記板状部
材の上を前記探触子に走査させることで、前記物理量を取得することを特徴とする請求項8に記載の弾性波受信方法。
【請求項10】
前記情報取得工程においては、前記板状部材の上を前記探触子に走査させることで前記探触子の位置情報を前記負荷に対応する物理量として取得するとともに、取得された位置情報と前記探触子の目標位置との差を算出し、
前記指令信号補正工程においては、前記探触子の位置と前記目標位置との差が少なくなるように前記探触子の移動速度または移動タイミングを変化させることを特徴とする請求項8または9に記載の弾性波受信方法。
【請求項11】
前記情報取得工程においては、前記板状部材の温度を前記負荷に対応する物理量として取得することを特徴とする請求項8記載の弾性波受信方法。
【請求項12】
前記情報取得工程においては、前記板状部材の歪みを前記負荷に対応する物理量として取得することを特徴とする請求項8に記載の弾性波受信方法。
【請求項13】
前記情報取得工程において取得した前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より大きい場合には、
前記指令信号補正工程において、前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを早めるように前記指令信号を補正することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の弾性波受信方法。
【請求項14】
前記情報取得工程において取得した前記物理量に対応する前記負荷が、前記目標位置を予め定めた際に想定した負荷より小さい場合には、
前記指令信号補正工程において、前記探触子の駆動速度または駆動タイミングを遅くするように前記指令信号を補正することを特徴とする請求項8から13のいずれか一項に記載の弾性波受信方法。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか一項に記載の弾性波受信装置と、
前記被検体に光を照射させて弾性波を発生させる光源と、
を備えることを特徴とする光音響装置。
【請求項16】
コンピューターに、請求項8から14のいずれか一項に記載の弾性波受信方法における、情報取得工程、指令信号補正工程および駆動工程を実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−125406(P2011−125406A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284541(P2009−284541)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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