説明

弾性波装置

【課題】はんだバンプを用いて実装する際に中空空間の内部へのフラックスの流入を抑制し、中空空間の液密性が高い弾性波装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る弾性波装置は、基板11と、基板11の一方の主面11aに形成されている振動部14と、振動部14の電極12と電気的に接続されているパッド13と、振動部14の周囲を囲むように設けられ、幅が10μm〜100μmであり、感光性ポリイミドを主成分とする支持層20と、振動部14を覆うように支持層20の上に設けられ、振動部14の周囲に中空空間19を形成する、合成ゴムと樹脂とを少なくとも含むシート状のカバー層22と、フラックス耐性を有する樹脂からなる保護層24と、保護層24、カバー層22及び支持層20を貫通し、パッド13に接続されるビア導体16と、ビア導体16の保護層24側の端部に設けられ、はんだバンプからなる外部電極18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置、詳しくは、基板上に共振子やフィルタなどの振動部が形成された弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成された振動部をカバー層で覆うように構成した弾性波装置が、例えば特許文献1のように提案されている。
【0003】
図11に、弾性波装置の構成例を示す。図11(A)は断面図、図11(B)は図11(A)の線X−Xに沿って上側を見た断面図、図11(C)は図11(A)の線X−Xに沿って下側を見た断面図である。図11の弾性波装置110は、圧電基板111の一方主面111a上にIDT電極112、パッド113及び配線ライン118を含む導電パターンが形成されている。また、圧電基板111のIDT電極112が形成された部分近傍は振動部を構成している。そして、振動部の周りには中空空間119が形成されるように、枠状の支持層116が樹脂で形成されている。そして、支持層116の上に絶縁性シートのカバー層115が形成されている。カバー層115には外部電極117が設けられ、外部電極117とパッド113との間は、カバー層115及び支持層116を貫通するビア導体114によって電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−261582号公報
【発明の概要】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成の弾性波装置は、外部電極にはんだバンプを設けて他の回路基板などに実装する際に、はんだバンプにフラックスをつけてはんだ濡れ性を向上させる。しかし、フラックスがカバー層を透過し、中空空間の内部に流入してしまう問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、はんだバンプを用いて実装する際に中空空間の内部へのフラックスの流入を抑制し、中空空間の液密性が高い弾性波装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る弾性波装置は、基板と、前記基板の一方の主面に形成されている振動部と、前記基板の前記一方の主面に形成され、前記振動部の電極と電気的に接続されているパッドと、前記振動部の周囲を囲むように前記基板の前記一方の主面に設けられ、前記振動部の厚みよりも大きい厚みを有し、幅が10μm〜100μmであり、感光性ポリイミドを主成分とする支持層と、前記振動部を覆うように前記支持層の上に設けられ、前記振動部の周囲に中空空間を形成する、合成ゴムと樹脂とを少なくとも含むシート状のカバー層と、前記カバー層の前記支持層とは反対側に設けられ、フラックス耐性を有する樹脂からなる保護層と、前記保護層、前記カバー層及び前記支持層を貫通し、前記パッドに接続されるビア導体と、前記ビア導体の前記保護層側の端部に設けられ、はんだバンプからなる外部電極と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明は合成ゴムを含む樹脂からなるシート状のカバー層上に、フラックス耐性を有する樹脂からなる保護層を設けている。フラックスは保護層を透過しないため、フラックスがカバー層側から中空空間の内部に流入しないようにすることができる。また、一般的にフラックスが支持層側から中空空間の内部に流入しないようにするためには、支持層幅を大きくすることが行われる。しかしながら本発明者は、支持層に感光性ポリイミドを使用した場合には、支持層幅が大きいと支持層とカバー層の界面にボイドが発生することを見出した。このボイドが中空空間の封止に悪影響を与えると推測される。本発明では、支持層の幅を10〜100μmとしている。これにより、支持層とカバー層との間に発生するボイドを抑制することができ、中空空間の液密性も向上する。
【0010】
また、本発明では、前記幅が10μm〜60μmであることを特徴としている。
【0011】
この場合、支持層の断面部分に凹形状が発生しないため、支持層とカバー層との間のボイドをより効果的に抑制することができる。
【0012】
また、本発明では、前記基板は圧電基板であり、前記振動部はIDT電極を含むことを特徴としている。
【0013】
この場合、弾性波装置は表面波装置である。
【0014】
また、本発明では、前記基板は絶縁基板であり、前記振動部は両面に電極が形成された圧電薄膜を含むことを特徴としている。
【0015】
この場合、弾性波装置は、バルク音響波共振子(Bulk Acoustic Wave Resonator;BAW共振子)などのバルク音響波装置である。
【0016】
また、本発明では、前記保護層は前記支持層と同じ材料からなることを特徴としている。
【0017】
この場合、保護層と支持層とが同じ材料からなるため、材料の種類を減らすことができ、製造工程を簡略化することができる。
【0018】
また、本発明では、前記保護層はポリイミド系樹脂からなることを特徴としている。
【0019】
この場合、はんだバンプと保護層との輝度プロファイルの差が大きくなり、はんだバンプを認識することが容易になる。したがって、弾性波装置の外形を認識する場合よりも、高精度に弾性波装置を実装することができる。
【0020】
また、本発明では、前記カバー層は非感光性エポキシ樹脂からなることを特徴としている。
【0021】
この場合、低温硬化プロセスが可能となる。
【0022】
また、本発明では、前記基板と前記支持層との間の少なくとも一部に介在する窒化膜又は酸化膜をさらに備えたことを特徴としている。
【0023】
この場合、窒化膜又は酸化膜は圧電基板よりも表面が荒れているため、アンカー効果により密着性が向上する。これにより、中空空間形成後のプロセス過程において、めっき液が中空空間に浸入して特性不良を発生させるような不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る弾性波装置では、カバー層上に、フラックス耐性を有する樹脂からなる保護層を設けている。フラックスは保護層を透過しないため、フラックスがカバー層側から中空空間の内部に流入しないようにすることができる。
【0025】
また、支持層の幅を10μm〜100μmとすることにより、支持層とカバー層との間に発生するボイドを抑制することができ、中空空間の液密性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】表面波装置の断面図である。(実施形態1)
【図2】表面波装置が実装された電子部品の断面図である。(実施形態1)
【図3】表面波装置の断面図である。(実施形態2)
【図4】バルク音響波装置が実装された電子部品の断面図である。(実施形態3)
【図5】バルク音響波装置の要部断面図である。(実施形態3)
【図6】支持層幅と断面形状の関係を示した図である。(実験例1)
【図7】支持層幅と凹み量の関係を示した図である。(実験例1)
【図8】支持層幅が10μmの断面写真である。(実験例1)
【図9】支持層幅が20μmの断面写真である。(実験例1)
【図10】支持層幅が100μmの断面写真である。(実験例1)
【図11】弾性波装置の断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
(実施形態1)
実施形態1の表面波装置10と電子部品30について、図1、2を参照しながら説明する。
【0028】
図1は表面波装置10の断面図である。圧電基板11上に素子部、例えばSAW(Surface Acoustic Wave;弾性表面波)フィルタが形成されている。すなわち、圧電基板11の一方の主面である上面11aには、振動部14の櫛歯状電極であるIDT(Inter Digital Transducer)電極12と、パッド13と、IDT電極12とパッド13とを接続する配線(図示せず)とを含む導電パターンが形成されている。IDT電極12が形成された振動部14の周囲には、枠状に支持層20が形成されている。支持層20の厚みは、振動部14のIDT電極12等の導電パターンの厚みよりも大きい。支持層20は、パッド13上にも形成されている。
【0029】
支持層20は感光性ポリイミドを主成分としている。また、支持層20の幅は10μm〜100μmが望ましい。支持層の幅は、枠状に形成された支持層20の、中空空間19の内側から外側に達する部分の距離を意味する。例えば、図1のaの部分の距離を意味する。10μm未満の場合には、支持層の強度が不足して、良好な中空空間が作製できない場合がある。また、100μmより大きい場合には、支持層の断面形状の凹形状が大きくなり、支持層20とカバー層との間にボイドが発生し、中空空間の液密性が低下する可能性がある。支持層幅が60μm以下の場合には、支持層20の断面部分に凹形状が発生しない。したがって、支持層とカバー層との間に発生するボイドを更に抑制することができ、さらに好ましい。
【0030】
支持層20の上にはカバー層22が配置され、圧電基板11上に形成された振動部14の周囲は、絶縁部材である支持層20とカバー層22とで覆われ、中空空間19が形成されている。圧電基板11の上面11aのうち中空空間19内で、弾性表面波が自由に伝搬する。カバー層22の上には保護層24が形成されている。
【0031】
中空空間19はカバー層22と保護層24により封止されている。カバー層22や保護層24による封止は必ずしも気密性である必要はなく、液密性が確保されていればよい。中空空間の大きさは、一般的なSAWフィルタの用いられる周波数帯を考慮すれば、1000×250μm〜1400×500μmである。
【0032】
カバー層22は、合成ゴムと樹脂とフィラーを含んでいる。樹脂の材質は例えば非感光性エポキシ系樹脂のシート材が挙げられる。非感光性エポキシ系樹脂を使用した場合には、樹脂の低温硬化プロセスが可能である。カバー層22は、合成ゴムの添加により、シート状にしても粘りがあり、亀裂が入りにくくなる。シートとしての強度を維持するため、合成ゴムは10wt%以上添加されていることが望ましい。
【0033】
保護層24はフラックス耐性を有する樹脂からなる。はんだバンプを形成する際に、フラックスはフラックス耐性を有する樹脂からなる保護層24を透過しない。したがって、フラックスの中空空間への流入を防ぐことができる。
【0034】
保護層24は、支持層20にカバー層22を重ねた後に形成することができる。また、カバー層22になるシート材と保護層24になるシート材とを予め積層したシート状の複合材を支持層20上に設けることにより、カバー層22と保護層24とを同時に形成しても良い。
【0035】
保護層24と支持層20との材料は異なっても構わないが、同じ材料を用いることができる。かかる場合には、材料の種類が増えないため、製造工程を簡略化することができ、好ましい。
【0036】
保護層24、カバー層22及び支持層20には、圧電基板11の上面11aに形成されたパッド13に達するビアホール(貫通孔)15が形成されている。ビアホール15には、ビア導体16としてアンダーバンプメタルが充填されている。そして、アンダーバンプメタル上には、外部に露出するはんだバンプからなる外部電極18が形成されている。
【0037】
表面波装置10を実装する工程においては、表面波装置10の外形を認識して実装するよりも外部電極18を認識して実装する方が、実装時の位置精度を向上させることができる。表面波装置10の外形を認識する場合、実装時の位置精度はダイシング精度に依存するためである。外部電極18を認識して実装する場合には、保護層24がポリイミド系樹脂からなることが好ましい。外部電極18と保護層24との輝度プロファイルの差が大きくなり、外部電極18を認識することが容易になるためである。
【0038】
図2は図1の表面波装置10が実装された電子部品30の断面図である。
【0039】
電子部品30は、共通基板40の一方主面である40a側に2つの表面波装置10が実装されている。すなわち、共通基板40の上面40aに形成されたランド42と表面波装置10との間は、外部電極18を介して電気的に接続されている。表面波装置10のまわりには樹脂32が配置され、表面波装置10は樹脂32で覆われている。樹脂32によって中空空間19の気密が確保される。
【0040】
共通基板40の他方主面である下面40b側には、電子部品30を他の回路基板等に実装するための外部接続電極44が露出している。共通基板40の内部には、ランド42と外部接続電極44との間を電気的に接続する基板ビア導体46や内部配線パターン48が形成されている。
【0041】
例えば、共通基板40はプリント基板である。樹脂32はラミネートや樹脂モールド工法により、2Pa〜5Paの加圧状態で埋め込むことにより形成される。
【0042】
例えば電子部品30はデュプレクサであり、表面波装置10として送信用と受信用の弾性表面波フィルタ素子を共通基板40上に並べて搭載する。
(実施形態2)
実施形態2の表面波装置10aについて、図3を参照しながら説明する。実施形態2の表面波装置10aは、実施例1の表面波装置10と同じ構成に、以下の構成を追加している。
【0043】
すなわち、図3の断面図に示すように、圧電基板11と支持層20との間に、中間層26が形成されている。中間層26は、IDT電極12を含む振動部14a及びパッド13以外の領域に形成され、振動部14aの周囲を囲むように、圧電基板11と支持層20との間に介在する。中間層の材質はSiO2膜やSiN膜が挙げられる。SiO2膜やSiN膜の中間層26は、圧電基板11よりも表面が荒れているため、アンカー効果により密着強度が向上する。これらの膜は、スパッタ法やCVD(chemical vapor deposition)法で成膜することができる。
【0044】
圧電基板11と支持層20との間に中間層26を設けることで、中空空間19について液密性をより確保することができる。これにより、中空空間形成後の工程において、例えばビアホールにめっきで電極を充填する工程において、めっき液が中空空間19に浸入して特性不良を発生させるような不具合を防止することができる。
【0045】
パッド13の周囲において支持層20の一部は圧電基板11上に形成されていてもよい。この場合、支持層20の他の部分と圧電基板11との間には中間層26が介在し、パッド13よりもIDT電極12側において、圧電基板11と支持層20との間に介在する中間層26が振動部14aの周囲を囲むように形成されている。
(実施形態3)
実施形態3の電子部品30xについて、図4及び図5を参照しながら説明する。以下では、実施形態1との相違点を中心に説明し、同じ構成部分には同じ符号を用いる。
【0046】
図4は電子部品30xの断面図である。電子部品30xは実施形態1とは異なり、表面波装置10とバルク音響波装置10xとが実装されている。すなわち、共通基板40の上面40aに形成されたランド42と表面波装置10及びバルク音響波装置10xとの間は、外部電極18を介して電気的に接続されている。表面波装置10及びバルク音響波装置10xのまわりには樹脂32が配置され、表面波装置10及びバルク音響波装置10xは樹脂32で覆われている。共通基板40の他方主面である下面40b側には、電子部品30xを他の回路基板等に実装するための外部接続電極44が露出している。共通基板40の内部には、ランド42と外部接続電極44との間を電気的に接続する基板ビア導体46や内部電極パターン48が形成されている。
【0047】
例えば電子部品30xはデュプレクサであり、表面波装置10は弾性表面波フィルタ素子であり、バルク音響波装置10xはバルク音響波フィルタ素子である。一方は送信用であり、他方は受信用である。
【0048】
バルク音響波装置10xは、Si等の絶縁基板11xに振動部14xが形成されている以外は、実施例1の表面波装置10と略同様に構成されている。バルク音響波装置10xは、表面波装置10と同様のパッケージ構造を有している。バルク音響波装置10xは、基板11xの一方主面側に振動部14xが形成され、振動部14xの周囲に枠状に支持層20が形成されている。
【0049】
支持層20の厚みは、振動部14xの厚みよりも大きい。支持層20は、パッド13上にも形成されている。支持層20の上にはカバー層22が配置され、振動部14xの周囲は、絶縁部材である支持層20とカバー層22とで覆われ、中空空間19が形成される。カバー層22の上には保護層24が形成されている。保護層24、カバー層22及び支持層20には、パッド13に達するビアホール(貫通孔)15が形成されている。ビアホール15には、ビア導体16として、アンダーバンプメタルが充填され、アンダーバンプメタル上には、外部に露出する外部電極18が形成されている。
【0050】
このようなパッケージ構造は、実施形態3のSMR(Solidly Mounted Resonator)型のバルク音響波装置に限らず、基板に形成された空洞の上に振動部が配置されるタイプや、犠牲層を除去する等により振動部が基板から浮いた状態で支持されるタイプのバルク音響波装置にも適用することができる。
【0051】
図5にバルク音響波装置の要部断面図を示す。実施形態3のバルク音響波装置は、実施形態1の表面波装置と異なり、上部電極12aと下部電極12bとの間に圧電薄膜12sが挟まれた振動部14xを備える。振動部14xは、音響反射器17を介して、絶縁基板11xから音響的に分離されている。
【0052】
音響反射器17は、絶縁基板11x上に、音響インピーダンスが相対的に低い低音響インピーダンス層17sと、音響インピーダンスが相対的に高い高音響インピーダンス層17tとが交互に積層されている。上部電極12a及び下部電極12bは、パッド13(図5には図示せず)に電気的に接続されている。
【0053】
なお、パッド13は、絶縁基板11xの主面上に直接形成されても、他の層(例えば低音響インピーダンス層17s)を介して絶縁基板11xの主面上に形成されてもよい。
(実験例)
(実験例1)
実施形態1の表面波装置を以下のように作製した。
【0054】
圧電基板の一方の主面上に、IDT電極とパッドと、IDT電極とパッドとの間を接続する配線とを含む導電パターンを形成した後、IDT電極が形成された振動部の周囲に支持層を形成した。支持層には感光性ポリイミド系樹脂を圧電基板の一方の主面全体に塗布した後、振動部の周囲をフォトリソグラフィ技術により開口(除去)した。
【0055】
次いで、カバー層になるシート材と保護層になるシート材とを予め積層したシート状の複合材をラミネートにより支持層上に設けることにより、カバー層と保護層とを同時に形成した。カバー層には低温硬化プロセスが可能となる非感光性エポキシ系フィルムを用いた。また、保護層にはポリイミド系樹脂を用いた。支持層の高さは14μm、カバー層の厚みは12.5μm、保護層の厚みは17.5μmとした。
【0056】
支持層形成後に、感光後の支持層の断面形状を触針式の表面形状測定器で測定した。図6に、支持層幅を変えた場合の各支持層幅での断面形状を示す。図中の数字は支持層幅を示す。支持層幅が40μm以下の場合には、断面形状は中心部が大きくなる凸形状になることが分かる。また、支持層幅が50μmから70μmの場合には、断面形状はW型の形状になっている。支持層幅が大きくなるにつれて、支持層の中心部は小さくなり、端部は大きくなる。支持層幅が80μm以上の場合には、断面形状は凹形状となることが分かる。
【0057】
次に、図6の支持層の断面形状から、支持層の中心部の高さと端部の高さを求めた。そして、凹み量を 凹み量=端部の支持層高さ−中心部の支持層高さ で定義した。図7に支持層幅とそれらの値との関係を示す。なお、端部の高さは支持層幅50μm以上で算出した。
【0058】
支持層幅が60μmまでは、支持層の中心部の方が端部よりも高く、凹み量は0以下である。70μm以上になると、中心部の方が端部よりも低くなり、凹み量は正になる。70μm〜220μmでは、支持層幅の増加に伴い、凹み量も増加する。支持層幅270μmでは、凹み量は支持層幅220μmと変わらず、凹み量は1μm弱となる。凹み量が正となる70μm以上では、カバー層との接着部分に空洞ができやすくなり、ボイドも発生しやすくなると推測される。したがって支持層幅としては、凹み量が0以下である60μm以下がより好ましい。
【0059】
図8、図9、図10に、支持層幅を10μm、20μm、100μmとした場合の、カバー層と保護層のラミネート後の外観写真を示す。図8は支持層幅((A)と(B)の間や(B)と(C)の間、以下同じ)が10μm、図9は支持層幅が20μm、図10は支持層幅が100μmの場合の写真である。ボイドは図中の黒丸部分である。
【0060】
図中の(A)、(B)、(C)、(D)の淡色部分は中空空間を示しており、濃色部分は支持層を示している。図8、図9、図10の(A)と(B)の間、(B)と(C)の間にはボイドが発生していないことが分かる。しかし、図10の(C)と(D)の間のように支持層幅が250μm以上になると、ボイドが発生している。
(実験例2)
実験例1で形成した中空空間について、中空空間の大きさと中空空間の潰れの有無との関係を調査した。
【0061】
中空空間が1000×250μm〜1000×500μmのサイズにおける、支持層幅と中空空間の潰れの有無の関係について調査した。支持層幅が10μm〜100μmの範囲では、中空空間が良好に形成されることが分かった。
【0062】
また、支持層幅が30μmにおいて、中空空間を1000×300μm〜1400×500μmのサイズとした場合には、いずれも中空空間の潰れは発生せず、良好な中空空間を形成することができた。なお、中空空間が1400×500μmのサイズで支持層の高さを変えた場合には、支持層の高さが11μm〜17μmで良好な中空空間が得られた。支持層が9μmの場合には、中空空間の高さが確保できず、中空空間が潰れてしまう結果となった。
【符号の説明】
【0063】
10,10a:表面波装置
10x:バルク音響波装置
11:圧電基板
11x:絶縁基板
12:IDT電極
12a:上部電極
12b:下部電極
12s:圧電薄膜
13:パッド
14,14a,14x:振動部
15:ビアホール
16:ビア導体
17:音響反射器
17s:低音響インピーダンス層
17t:高音響インピーダンス層
18:外部電極
19:中空空間
20:支持層
22:カバー層
24:保護層
26:中間層
30,30x:電子部品
32:樹脂
40:共通基板
42:ランド
44:外部接続電極
46:基板ビア導体
48:内部配線パターン
110:弾性波装置
111:圧電基板
112:IDT電極
113:パッド
114:ビア導体
115:カバー層
116:支持層
117:外部電極
118:配線ライン
119:中空空間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の主面に形成されている振動部と、
前記基板の前記一方の主面に形成され、前記振動部の電極と電気的に接続されているパッドと、
前記振動部の周囲を囲むように前記基板の前記一方の主面に設けられ、前記振動部の厚みよりも大きい厚みを有し、幅が10μm〜100μmであり、感光性ポリイミドを主成分とする支持層と、
前記振動部を覆うように前記支持層の上に設けられ、前記振動部の周囲に中空空間を形成する、合成ゴムと樹脂とを少なくとも含むシート状のカバー層と、
前記カバー層の前記支持層とは反対側に設けられ、フラックス耐性を有する樹脂からなる保護層と、
前記保護層、前記カバー層及び前記支持層を貫通し、前記パッドに接続されるビア導体と、
前記ビア導体の前記保護層側の端部に設けられ、はんだバンプからなる外部電極と、
を備える弾性波装置。
【請求項2】
前記幅が10μm〜60μmである、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記基板は圧電基板であり、前記振動部はIDT電極を含む、請求項1又は2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記基板は絶縁基板であり、前記振動部は両面に電極が形成された圧電薄膜を含む、請求項1又は2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記保護層は前記支持層と同じ材料からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記保護層はポリイミド系樹脂からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記カバー層は非感光性エポキシ樹脂からなる、請求項1〜6に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記基板と前記支持層との間の少なくとも一部に介在する窒化膜又は酸化膜をさらに備えた、請求項1〜7に記載の弾性波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−278972(P2010−278972A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132195(P2009−132195)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】