説明

弾性糸供給装置

【課題】オーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸を加工ラインに供給する場合において、引き伸ばし倍率のばらつきに起因する製品の品質不良をさらに確実に抑制できる弾性糸供給装置を提供する。
【解決手段】弾性糸供給装置100は、弾性糸パッケージPから引き出された弾性糸THに作用する応力を制御するテンションコントローラ130と、テンションコントローラ130から繰り出した弾性糸THを加工ライン30に供給する駆動ロール140とを備える。駆動ロール140は、ウエブWの搬送速度v1よりも遅い供給速度v2で動作し、搬送速度v1の増減に応じて供給速度v2を増減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性糸が巻き付けられた弾性糸パッケージの軸心方向に弾性糸を順次引き出すオーバーエンド解舒によって、弾性糸を加工ラインに供給する弾性糸供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品では、着用者へのフィット性を高めるため、伸縮性を有するライクラ(登録商標)などの弾性糸によって形成されたギャザーを、胴回り部や脚回り部に備えた構造が広く採用されている。
【0003】
このようなギャザーを備えた吸収性物品の製造過程では、不織布などが連続したウエブ上に弾性糸を接着する加工ラインに弾性糸を連続的に供給する弾性糸供給装置が用いられている(例えば、特許文献1)。この弾性糸供給装置では、弾性糸が巻き付けられた円柱状の弾性糸パッケージの軸心方向に弾性糸を順次引き出す、いわゆるオーバーエンド解舒が行われている。
【0004】
オーバーエンド解舒の場合、弾性糸パッケージが回転しないため、使用中の弾性糸パッケージの最後尾部分に予備の弾性糸パッケージの先頭部分を接続しておくことができる。これにより、一つの弾性糸パッケージを消耗した場合でも、弾性糸パッケージを交換するために加工ラインを停止する必要がない。
【0005】
一方、オーバーエンド解舒によって弾性糸を引き出す場合、非弾性糸とは異なる対応が求められる。具体的には、非弾性糸と比較すると、弾性糸はスムーズに解舒され難く、弾性糸に作用する応力が逐次変化する。また、弾性糸は、小さな応力によって簡単に伸び易い特徴がある。このため、オーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸をそのまま加工ラインに供給すると、加工ラインにおいて弾性糸を引き伸ばした際に、弾性糸に作用する応力にばらつきが生じ、吸収性物品の品質不良を招く可能性がある。
【0006】
そこで、オーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸のテンションを制御するテンションコントローラを備えた弾性糸供給装置が知られている(例えば、特許文献2)。この弾性糸供給装置によれば、テンションコントローラによって、弾性糸に作用する応力がある程度の範囲内に制御された後に加工ラインに供給されるため、吸収性物品の品質不良を抑制し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−67791号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0152093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したテンションコントローラを備えた弾性糸供給装置でも、依然として引き伸ばし後の弾性糸に作用する応力にばらつきが生じ、さらなる改善が求められていた。具体的には、加工ラインでの資材継ぎなど、加工ラインの搬送速度が急激に変化する状況が発生すると、テンションコントローラが弾性糸の供給速度の変化に追従できずに、弾性糸に作用する応力にばらつきが生じる。
【0009】
そこで、本発明は、オーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸を加工ラインに供給する場合において、弾性糸に作用する応力のばらつきに起因する製品の品質不良をさらに確実に抑制できる弾性糸供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの特徴は、弾性糸(弾性糸TH)が巻き付けられた円柱状の弾性糸パッケージ(弾性糸パッケージP)の軸心方向(軸心方向S)に前記弾性糸を順次引き出すオーバーエンド解舒によって、前記弾性糸を加工ライン(加工ライン30)に供給する弾性糸供給装置(弾性糸供給装置100)であって、前記弾性糸パッケージから引き出された前記弾性糸に作用する応力を制御する応力制御部(テンションコントローラ130)と、前記応力制御部から繰り出した前記弾性糸を前記加工ラインに供給する駆動ロール(駆動ロール140)とを備え、前記応力制御部は、前記弾性糸に作用する応力を、前記加工ラインにおいて前記弾性糸に作用する応力よりも小さくなるように制御し、前記駆動ロールは、前記加工ラインにおいて搬送されている被搬送体(ウエブW)の搬送速度(搬送速度v1)よりも遅い供給速度(供給速度v2)で動作することによって、前記弾性糸が前記駆動ロールと前記加工ラインとの間において引き伸ばし倍率(引き伸ばし倍率m)となるように前記弾性糸を前記加工ラインに供給するとともに、前記搬送速度の増減に応じて前記供給速度を増減することを要旨とする。
【0011】
上述した本発明の特徴において、前記応力制御部は、前記弾性糸に作用する応力を制御することによって、前記弾性糸パッケージから単位時間当たりに引き出される前記弾性糸の量を制御することが好ましい。
【0012】
上述した本発明の特徴において、前記応力制御部は、前記弾性糸に作用する応力を10〜15cNに設定することが好ましい。
【0013】
上述した本発明の特徴において、前記駆動ロールと前記加工ラインとの間に設けられ、前記駆動ロールの供給速度及び前記搬送速度と異なる速度(例えば、中間速度v1’)で動作する追加駆動ロール(追加駆動ロール32)をさらに備えることが好ましい。具体的には、追加駆動ロールは、前記駆動ロールの前記供給速度よりも高く、かつ前記搬送速度よりも低い速度で動作することが好ましい。或いは、前記追加駆動ロールは、前記搬送速度よりも高い速度で動作することが好ましい。
【0014】
上述した本発明の特徴において、前記応力制御部及び前記駆動ロールは、前記加工ラインが搭載されるラインフレーム(ラインフレーム10)とは別個の解舒架台(解舒架台20)に、前記弾性糸パッケージとともに搭載されることが好ましい。
【0015】
上述した本発明の特徴において、前記解舒架台は、前記弾性糸を所定方向に案内するガイドロールを用いることなく、前記応力制御部から繰り出された前記弾性糸が前記駆動ロールに直接引き渡されるように前記応力制御部及び前記駆動ロールを支持することが好ましい。
【0016】
上述した本発明の特徴において、前記解舒架台は、前記解舒架台の下端部(下端部100be)または上端部(上端部100te)から前記ラインフレームに前記弾性糸を供給するように前記駆動ロールを支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特徴によれば、オーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸を加工ラインに供給する場合において、弾性糸に作用する応力のばらつきに起因する製品の品質不良をさらに確実に抑制できる弾性糸供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る製造装置1の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る製造装置1の概略平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る製造装置1の概略正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る駆動ロール140の拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る製造装置1による弾性糸THの加工ライン30への供給動作の説明図である。
【図6】弾性糸THに作用する応力と伸び倍率との関係を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る弾性糸供給装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0020】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0021】
(1)弾性糸供給装置を含む製造装置の概略構成
図1は、本実施形態に係る使い捨ておむつの製造装置1の概略斜視図である。図2は製造装置1の概略平面図であり、図3は製造装置1の概略正面図である。
【0022】
図1〜図3に示すように、製造装置1は、ラインフレーム10及び解舒架台20を備える。本実施形態では、製造装置1は、前身頃部、吸収体及び後身頃部の3ピース構造の使い捨ておむつを製造するために用いられる。
【0023】
ラインフレーム10には、加工ライン30が設けられる。加工ライン30は、不織布などが連続したウエブW上に、使い捨ておむつのギャザーを形成する弾性糸THを接着する。加工ライン30は、コンベヤー31及びニップロール37を備える。また、ニップロール37の手前(上流側)には、弾性糸THを所定速度で繰り出す追加駆動ロール32及び中間ロール35と、弾性糸THを案内するフリーガイドロール33とが設けられる。
【0024】
コンベヤー31は、製造装置1の機械方向MDにウエブW(被搬送体)を搬送する。本実施形態において、ウエブWは、製造される使い捨ておむつの前身頃部が連続した部分Wf、所定間隔で配置された部分Wa及び後身頃部が連続した部分Wbによって構成される(図2参照)。
【0025】
追加駆動ロール32は、弾性糸供給装置100の駆動ロール140と、加工ライン30との間に設けられる。追加駆動ロール32は、モータ(不図示)によって駆動されるニップロールであり、加工ライン30に向けて弾性糸THを所定の速度で繰り出す。追加駆動ロール32は、駆動ロール140の供給速度v2及び搬送速度v1と異なる速度(例えば、中間速度v1’)で動作する。
【0026】
フリーガイドロール33は、解舒架台20に設けられた弾性糸供給装置100から供給された弾性糸THを加工ライン30に向けて案内する。具体的には、フリーガイドロール33は、ウエブWが搬送される機械方向MDに直交する方向から追加駆動ロール32を介して供給された弾性糸THの供給方向を弾性糸供給装置100の平面視において90度転換させる。本実施形態では、フリーガイドロール33は、追加駆動ロール32と中間ロール35との間に設けられる。フリーガイドロール33は、モータなどの駆動源を有さない回転自在なロールであり、弾性糸THが接触して移動することに伴って回転する。
【0027】
中間ロール35は、フリーガイドロール33とニップロール37との間に設けられる。解舒架台20に設けられた弾性糸供給装置100から供給された弾性糸THをニップロール37に中継する。中間ロール35は、モータ(不図示)によって駆動され、加工ライン30に向けて弾性糸THを所定の速度で繰り出す。
【0028】
中間ロール35は、追加駆動ロール32と同一速度で動作する。なお、中間ロール35は、モータで駆動されないフリーロールとして機能してもよい。また、中間ロール35は、一対の弾性糸THのピッチを調整する機能を兼ねてもよい。
【0029】
ニップロール37は、追加駆動ロール32、フリーガイドロール33及び中間ロール35を介して供給された弾性糸THをウエブW上の所定位置に接着する。具体的には、ニップロール37は、モータ(不図示)によって駆動され、コンベヤー31で搬送されているウエブWと弾性糸THとを挟んだ状態で押さえる。ウエブWと弾性糸THとがニップロール37によって押さえられると、接着剤が塗布されたウエブWの所定位置に弾性糸THが固定される。
【0030】
コンベヤー31で搬送されているウエブWは、搬送速度v1で機械方向MDに搬送される。同様に、ニップロール37は搬送速度v1で駆動される。
【0031】
解舒架台20には、弾性糸供給装置100が設けられる。弾性糸供給装置100は、板状ガイド120、テンションコントローラ130及び駆動ロール140を備える。また、解舒架台20には、複数の弾性糸パッケージPが装着される。弾性糸パッケージPは、支持バー111または支持バー112によって支持される。
【0032】
弾性糸供給装置100は、弾性糸パッケージPから弾性糸THを順次引き出し、引き出した弾性糸THを加工ライン30に供給する。なお、図1〜図3は、模式的な図面であり、解舒架台20に装着される弾性糸パッケージPは、図1〜図3に示した数に限定されない。
【0033】
(2)弾性糸供給装置の構成
次に、弾性糸供給装置100の具体的な構成について説明する。弾性糸供給装置100では、弾性糸THが巻き付けられた円柱状の弾性糸パッケージPの軸心方向S(図2参照)に弾性糸THを順次引き出すオーバーエンド解舒が行われる。
【0034】
オーバーエンド解舒では、使用中の弾性糸パッケージPの最後尾部分(いわゆる尻糸)に予備の弾性糸パッケージPの先頭部分を接続しておくことができる。例えば、支持バー111によって支持され、最上段に位置する弾性糸パッケージPの最後尾部分を、支持バー112によって支持され、同じく最上段に位置する弾性糸パッケージPの先頭部分に接続しておくことができる。
【0035】
なお、使用中の弾性糸パッケージPの弾性糸THと、予備の弾性糸パッケージPの弾性糸THとの接続は、熱融着など、公知の方法を用いることができる。また、弾性糸THは、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリエーテル・ポリエステル系などからなるポリウレタン弾性糸の何れでもよく、その繊度は使い捨ておむつに使用できるものであればよく、一般的には、270〜1,200dtex程度である。
【0036】
上述したように、弾性糸供給装置100は、板状ガイド120、テンションコントローラ130及び駆動ロール140をそれぞれ複数備える。本実施形態では、板状ガイド120、テンションコントローラ130及び駆動ロール140は、加工ライン30が搭載されるラインフレーム10とは別個の解舒架台20に、弾性糸パッケージPとともに搭載される。なお、図1〜図3では、右側に配置された板状ガイド120、テンションコントローラ130及び駆動ロール140のみに符号を付しており、左側には、右側と対称に板状ガイド120、テンションコントローラ130及び駆動ロール140が配置される。
【0037】
板状ガイド120は、弾性糸パッケージPから引き出された弾性糸THをテンションコントローラ130に向けて案内する板状のガイドである。板状ガイド120には、弾性糸THが摺動しながら通過できる貫通孔(不図示)が形成される。
【0038】
テンションコントローラ130は、板状ガイド120を介して弾性糸パッケージPから引き出された弾性糸THに作用する応力を制御する応力制御部を構成する。本実施形態では、特許文献2に記載されているようなサーボモータとテンションセンサとを用いたデバイスが用いられる。なお、テンションコントローラ130として利用可能な装置は、特許文献2に記載されたデバイスに限定されない。
【0039】
本実施形態では、テンションコントローラ130は、弾性糸THに作用する応力を、加工ライン30において弾性糸THに作用する応力よりも小さくなるように制御する。具体的には、テンションコントローラ130は、弾性糸THに作用する応力を10〜15cNに設定する。具体的には、テンションコントローラ130は、繰り出される弾性糸THに作用する応力を10〜15cNの範囲で一定の値(例えば、12cN)に設定する。
【0040】
この結果、弾性糸THに作用する応力が一定の範囲に制御され、弾性糸パッケージPから単位時間当たりに引き出される弾性糸THの量が制御される。具体的には、テンションコントローラ130から引き出される弾性糸THの引き伸ばし倍率m’が1.1〜1.3倍程度になるように弾性糸THに作用する応力が制御される。
【0041】
駆動ロール140は、テンションコントローラ130から弾性糸THを繰り出すとともに、繰り出した弾性糸THを加工ライン30に供給する。また、図4は、駆動ロール140の拡大斜視図である。
【0042】
図4に示すように、駆動ロール140は、サーボモータ150で駆動される。駆動ロール140及びサーボモータ150は、解舒架台20を構成するレール105に取り付けられる。駆動ロール140がサーボモータ150によって図4の矢印方向に供給速度v2で回転させられると、弾性糸THは加工ライン30に向かって繰り出される。
【0043】
ここで、本実施形態では、供給速度v2は、加工ライン30において搬送されているウエブWの搬送速度v1よりも遅い。つまり、駆動ロール140は、搬送速度v1よりも遅い供給速度v2で動作することによって、弾性糸THが駆動ロール140と加工ライン30との間において引き伸ばし倍率m(例えば、2倍)となるように弾性糸THを加工ライン30に供給する。
【0044】
また、サーボモータ150は、加工ライン30の搬送速度v1の増減に応じて、駆動ロール140の供給速度v2を増減する。具体的には、サーボモータ150は、加工ライン30から出力される搬送速度v1のフィードバック情報を取得することができる。サーボモータ150は、取得したフィードバック情報に基づいて供給速度v2を増減する。なお、サーボモータ150への搬送速度v1のフィードバック情報の提供は、例えば、加工ライン30において搬送速度v1を検出するセンサ(不図示)と、サーボモータ150とを電気的に接続することによって実現できる。
【0045】
本実施形態では、解舒架台20では、テンションコントローラ130と駆動ロール140との間には、弾性糸THを所定方向に案内するガイドロールが一切用いられておらず、テンションコントローラ130から繰り出された弾性糸THが駆動ロール140に直接引き渡される。すなわち、解舒架台20は、テンションコントローラ130から繰り出された弾性糸THが駆動ロール140に直接引き渡されるように、テンションコントローラ130の略直上において、駆動ロール140を支持する。また、解舒架台20では、解舒架台20の上端部100teからラインフレーム10(加工ライン30)に弾性糸THを供給するように駆動ロール140を支持する。このため、弾性糸THの移動方向は、駆動ロール140において、約90度変更させられる。駆動ロール140の位置は、解舒架台20の載置面から2m以上の位置とすることが好ましい。
【0046】
(3)弾性糸の供給動作
図5は、上述した製造装置1による弾性糸THの加工ライン30への供給動作の説明図である。図5に示すように、弾性糸パッケージPからオーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸THは、板状ガイド120を介してテンションコントローラ130を通過する。
【0047】
弾性糸THがテンションコントローラ130に入る直前の位置では、弾性糸THには殆ど応力は作用していない。したがって、弾性糸THの引き伸ばし倍率mも1倍程度である。なお、引き伸ばし倍率とは、引き伸ばし前の弾性糸THの長さL1と、引き伸ばし後の弾性糸の長さL2との比(L2/L1)である。
【0048】
テンションコントローラ130は、上述したように弾性糸THに作用する応力を10〜15cNの範囲で一定の値(例えば、12cN)に設定する。したがって、テンションコントローラ130から繰り出された弾性糸THに作用する応力も依然として低い状態である。具体的には、テンションコントローラ130から繰り出された弾性糸THの引き伸ばし倍率m’は1.1倍〜1.3倍程度である。なお、テンションコントローラ130と加工ライン30(ニップロール37)とは連動していないが、搬送速度v1が変化すると、後述するように弾性糸THの供給速度v2が変化する。このため、テンションコントローラ130から弾性糸THが繰り出される速度も変化し得るが、弾性糸THに作用する応力は低い状態のままである。
【0049】
駆動ロール140は、上述したように供給速度v2で動作する。供給速度v2は、加工ライン30において搬送されているウエブWの搬送速度v1よりも遅く設定される。例えば、駆動ロール140は、50rpmの供給速度v2で動作する。
【0050】
また、駆動ロール140は、搬送速度v1の増減に応じて供給速度v2を増減する。つまり、駆動ロール140と、加工ライン30(ニップロール37)とは、連動している。具体的には、駆動ロール140は、加工ライン30からの搬送速度v1のフィードバック情報に基づいて、(式1)の関係を満たすように供給速度v2を制御して弾性糸THを加工ライン30に供給する。
【0051】
供給速度v2=搬送速度v1/引き伸ばし倍率m(式1)
ただし、(式1)の引き伸ばし倍率mは、駆動ロール140とニップロール37との間における値である。駆動ロール140から供給された弾性糸THは、追加駆動ロール32に到達する。追加駆動ロール32は、駆動ロール140の供給速度v2及び搬送速度v1と異なる中間速度v1’(例えば、図5に示すパターン1)で動作することができる。具体的には、追加駆動ロール32は、駆動ロール140の供給速度v2よりも高く、かつ搬送速度v1よりも低い速度(例えば、75rpm)で動作することができる。
【0052】
追加駆動ロール32から繰り出された弾性糸THは、フリーガイドロール33を介して中間ロール35に到達する。中間ロール35は、追加駆動ロール32と同一速度で動作する。弾性糸THは、中間ロール35を介してニップロール37に到達し、ウエブW上に接着される。ニップロール37は、コンベヤー31とともに搬送速度v1で動作する。
【0053】
このように、規定の倍率(例えば、2倍)で弾性糸THが引き伸ばされた状態でウエブW上に接着されることによって、使い捨ておむつとして必要な応力が弾性糸THに与えられる。
【0054】
以上説明した弾性糸供給装置100を含む製造装置1によれば、駆動ロール140がテンションコントローラ130と加工ライン30との間に設けられる。駆動ロール140は、ウエブWの搬送速度v1よりも遅い供給速度v2で動作する。このため、テンションコントローラ130から繰り出される弾性糸THの速度を抑えることができ、弾性糸THに作用する応力を低くすることができる。つまり、テンションコントローラ130における弾性糸THの倍率を低くすることができる。
【0055】
ここで、図6は、繊度が異なる弾性糸THに作用する応力と伸び倍率との関係を模式的に示すグラフである。図6に示すように、弾性糸THは、繊度(太さ)の違いによって、弾性糸THに作用する応力と伸びとの関係が異なる。つまり、製品(使い捨ておむつ)段階での弾性糸THに作用する応力のばらつきを防止する観点からは、弾性糸THに高い応力が作用した状態(例えば、t2の位置)よりも、弾性糸THを可能な限り低い応力が作用した状態(例えば、t1の位置)で弾性糸THをテンションコントローラ130から繰り出すことが好ましい。例えば、繰り出される弾性糸THの速度(駆動ロール140の回転速度が少しでも変化した場合(同じ応力だけ変化した場合)、弾性糸THに作用する応力の変化量は、t2の位置よりもt1の位置の方が小さくなる。このため、弾性糸THに作用する応力のばらつきが防止される。
【0056】
なお、テンションコントローラ130を用いずに、駆動ロール140や追加駆動ロール32だけで弾性糸THに作用する応力を制御しようとすると、弾性糸THを弾性糸パッケージPから引き出すときに、弾性糸THの伸縮により、その供給量がばらつく。このため、弾性糸THの引き伸ばし倍率mが一定にならず、使い捨ておむつ内の弾性糸THに与えられた応力がばらつくこととなる。
【0057】
また、駆動ロール140は、ウエブWの搬送速度v1よりも遅い供給速度v2で動作する。このため、搬送速度v1が変化した場合でも、単位時間当たりに加工ライン30に供給される弾性糸THの量(重さ)を一定範囲内に制御することができる。この結果、搬送速度v1が変化した場合でも、使い捨ておむつとして必要な応力を弾性糸THに与え易い。
【0058】
すなわち、弾性糸供給装置100によれば、オーバーエンド解舒によって引き出された弾性糸THを加工ライン30に供給する場合において、弾性糸THに作用する応力のばらつきに起因する使い捨ておむつの品質不良を抑制できる。
【0059】
本実施形態では、供給速度v2よりも高く、かつ搬送速度v1よりも低い中間速度v1’で動作する追加駆動ロール32が設けられる。このため、弾性糸THに作用する応力が段階的に増大するため、弾性糸THに対して、より正確かつ確実に所望の応力を与えることが容易となる。
【0060】
本実施形態では、テンションコントローラ130と駆動ロール140は、ラインフレーム10とは別個の解舒架台20に弾性糸パッケージPとともに搭載される。このため、取り扱う弾性糸THの数が増えた場合でも、弾性糸パッケージP、テンションコントローラ130及び駆動ロール140の増設が容易である。また、低い応力が作用している弾性糸THの区間が長くなると、弾性糸THの自重によって弾性糸THが撓み易くなるため、フリーロールなどによって支持する必要がある。しかしながら、このようなフリーロールが介在すると、弾性糸THに作用する応力が変動するため好ましくない。本実施形態によれば、弾性糸パッケージP、テンションコントローラ130及び駆動ロール140とを接近させることができるため、このような問題も回避し得る。
【0061】
本実施形態では、解舒架台20の上端部100teからラインフレーム10(加工ライン30)に弾性糸THが供給される。このため、弾性糸パッケージP、テンションコントローラ130及び駆動ロール140をラインフレーム10から分離して配置した場合でも、解舒架台20からラインフレーム10に引き渡される弾性糸THが作業者の通行などを妨げることがない。
【0062】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0063】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。上述した実施形態では、図5に示すパターン1に従って弾性糸THを加工ライン30に向けて供給する例を説明したが、駆動ロール140、追加駆動ロール32及びニップロール37は、パターン2やパターン3に従ってもよい。すなわち、追加駆動ロール32とニップロール37とは、同一速度で動作してもよいし、追加駆動ロール32は、搬送速度v1よりも高い速度で動作してもよい。
【0064】
追加駆動ロール32が搬送速度v1よりも高い速度で動作する場合(図5のパターン3参照)、駆動ロール140と追加駆動ロール32との間において一度引き伸ばされた弾性糸THは、追加駆動ロール32とニップロール37との間で縮められるため、弾性糸THに与えられる応力が安定する。
【0065】
さらに、追加駆動ロール32や中間ロール35は、フリーロールに代えてもよいし、必ずしも設けられていなくてもよい。また、フリーガイドロール33や中間ロール35に代えて、弾性糸THを機械方向MDに揺動させるトラバース機構を設けてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、解舒架台20の上端部100teからラインフレーム10に弾性糸THが供給されていたが、解舒架台20の下端部100beからラインフレーム10に弾性糸THを供給してもよい。また、テンションコントローラ130や駆動ロール140は、必ずしも解舒架台20に搭載しなくても構わない。テンションコントローラ130や駆動ロール140は、可能ならばラインフレーム10に搭載してもよい。
【0067】
上述した実施形態では、使い捨ておむつを例として説明したが、本発明の提供範囲は、使い捨ておむつに限らず、コンベヤー31によって搬送される被搬送体は、ウエブWのような連続体でなくてもよい。例えば、ギャザーが設けられる生理用ナプキンの半製品が所定間隔で搬送されてもよい。
【0068】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0069】
1…製造装置、10…ラインフレーム、20…解舒架台、30…加工ライン、31…コンベヤー、32…追加駆動ロール、33…フリーガイドロール、35…中間ロール、37…ニップロール、100…弾性糸供給装置、100be…下端部、100te…上端部、105…レール、111,112…支持バー、120…板状ガイド、130…テンションコントローラ、140…駆動ロール、140a…溝、150…サーボモータ、MD…機械方向、P…弾性糸パッケージ、S…軸心方向、TH…弾性糸、W…ウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性糸が巻き付けられた円柱状の弾性糸パッケージの軸心方向に前記弾性糸を順次引き出すオーバーエンド解舒によって、前記弾性糸を加工ラインに供給する弾性糸供給装置であって、
前記弾性糸パッケージから引き出された前記弾性糸に作用する応力を制御する応力制御部と、
前記応力制御部から繰り出した前記弾性糸を前記加工ラインに供給する駆動ロールと
を備え、
前記応力制御部は、前記弾性糸に作用する応力を、前記加工ラインにおいて前記弾性糸に作用する応力よりも小さくなるように制御し、
前記駆動ロールは、
前記加工ラインにおいて搬送されている被搬送体の搬送速度よりも遅い供給速度で動作することによって、前記弾性糸が前記駆動ロールと前記加工ラインとの間において引き伸ばし倍率となるように前記弾性糸を前記加工ラインに供給するとともに、前記搬送速度の増減に応じて前記供給速度を増減する弾性糸供給装置。
【請求項2】
前記応力制御部は、前記弾性糸に作用する応力を10〜15cNに設定する請求項1に記載の弾性糸供給装置。
【請求項3】
前記駆動ロールと前記加工ラインとの間に設けられ、前記駆動ロールの供給速度及び前記搬送速度と異なる速度で動作する追加駆動ロール請求項1または2に記載の弾性糸供給装置。
【請求項4】
前記追加駆動ロールは、前記駆動ロールの供給速度よりも高く、かつ前記搬送速度よりも低い速度で動作する請求項3に記載の弾性糸供給装置。
【請求項5】
前記追加駆動ロールは、前記搬送速度よりも高い速度で動作する請求項3に記載の弾性糸供給装置。
【請求項6】
前記応力制御部及び前記駆動ロールは、前記加工ラインが搭載されるラインフレームとは別個の解舒架台に、前記弾性糸パッケージとともに搭載される請求項1乃至5の何れか一項に記載の弾性糸供給装置。
【請求項7】
前記解舒架台は、前記弾性糸を所定方向に案内するガイドロールを用いることなく、前記応力制御部から繰り出された前記弾性糸が前記駆動ロールに直接引き渡されるように前記応力制御部及び前記駆動ロールを支持する請求項6に記載の弾性糸供給装置。
【請求項8】
前記解舒架台は、前記解舒架台の下端部または上端部から前記ラインフレームに前記弾性糸を供給するように前記駆動ロールを支持する請求項6または7に記載の弾性糸供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136816(P2011−136816A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298639(P2009−298639)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】