説明

弾性表面波デバイス

【課題】平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波デバイスにおいて、挿入損失を低減する。
【解決手段】本弾性表面波デバイス100Aは、それぞれが3つ以上の奇数個のIDTを含む弾性表面波フィルタである第1フィルタ20A及び第2フィルタ40Aと、不平衡信号が入力される不平衡端子10と、不平衡信号と同位相の信号が出力される第1平衡端子12と、不平衡信号と逆位相の信号が出力される第2平衡端子14と、を有する。第1フィルタ20及び第2フィルタ40のそれぞれにおいて、中央に位置する第1中央IDT22A及び第2中央IDT42Aは、一方の電極が不平衡端子10に共通に接続されている。また、第1中央IDT22Aの電極指の本数は奇数であり、第2中央IDT42Aの電極指の本数は偶数である。本構成によれば、通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の高性能化に伴い、構成部品としての弾性表面波デバイスに対し平衡−不平衡変換機能(いわゆるバラン機能)が要求されている。当該機能は、1つの不平衡端子と2つの平衡端子との間に、2つの弾性表面波フィルタを並列に接続することで実現することができる。その際、弾性表面波フィルタを構成するIDTの電極指の数を、それぞれのフィルタで互いに異なるようにすることで、通過帯域内における挿入損失を低減することができる。このような弾性表面波デバイスは、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/087875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の弾性波デバイスでは、2つの弾性表面波フィルタを構成するIDTの電極指の数が、それぞれ偶数同士あるいは奇数同士となっている。このとき、通過帯域内にノッチが発生し、挿入損失が劣化してしまう場合があった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することのできる弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本弾性表面波デバイスは、それぞれが3つ以上の奇数個のIDTを含む弾性表面波フィルタである第1フィルタ及び第2フィルタと、不平衡信号が入力される不平衡端子と、前記不平衡信号と同位相の信号が出力される第1平衡端子と、前記不平衡信号と逆位相の信号が出力される第2平衡端子と、を有し、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタのそれぞれにおいて、前記奇数個のIDTのうち中央に位置する第1中央IDT及び第2中央IDTは、一方の電極が前記不平衡端子に共通に接続され、前記第1中央IDTの両側に位置する2つのIDTのそれぞれは、一方の電極が前記第1平衡端子に共通に接続され、前記第2中央IDTの両側に位置する2つのIDTのそれぞれは、一方の電極が前記第2平衡端子に共通に接続され、前記第1中央IDTの電極指の本数は奇数であり、前記第2中央IDTの電極指の本数は偶数であることを特徴とする。本構成によれば、通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することができる。
【0007】
上記構成において、前記第1中央IDTを構成する電極のうち、前記不平衡端子に接続された電極の電極指の本数は、他方の電極の電極指の本数より多い構成とすることができる。本構成によれば、通過帯域内のノッチを抑制しつつ、通過帯域外の減衰量を増大することができる。
【0008】
上記構成において、前記第1中央IDTの両側に位置する2つのIDTと、前記第2中央IDTの両側に位置する2つのIDTとは、電極指の本数、交差幅、電極ピッチのうち少なくとも1つが互いに異なる構成とすることができる。本構成によれば、2つのIDTを非対称に設計することで、挿入損失を更に低減することができる。
【0009】
上記構成において、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタは、同一の圧電基板上に形成されている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記不平衡端子と、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタとの間に接続された第1共振器と、前記第1平衡端子と前記第1フィルタとの間に接続された第2共振器と、前記第2平衡端子と前記第2フィルタとの間に接続された第3共振器と、を有する構成とすることができる。本構成によれば、通過帯域外の減衰量を増大することができる。
【0011】
上記構成において、前記第1共振器、前記第2共振器、及び前記第3共振器のそれぞれは、IDTと、当該IDTの両側に設けられた反射器とを含む構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第2共振器及び前記第3共振器は、それぞれに含まれるIDTの電極指の本数、交差幅、電極ピッチのうち少なくとも1つが互いに異なる構成とすることができる。本構成によれば、2つの共振器を非対称に設計することで、挿入損失を更に低減することができる。
【0013】
上記構成において、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタは、多重モードフィルタである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、比較例1に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図2】図2は、実施例1に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1における弾性表面波デバイスの伝送特性の比較を示したグラフである。
【図4】図4は、実施例2に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図5】図5は、比較例2に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図6】図6は、比較例3に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図7】図7は、比較例4に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図8】図8は、実施例2及び比較例2における弾性表面波デバイスの伝送特性の比較を示したグラフである。
【図9】図9は、実施例2及び比較例3における弾性表面波デバイスの伝送特性の比較を示したグラフである。
【図10】図10は、実施例2及び比較例4における弾性表面波デバイスの伝送特性の比較を示したグラフである。
【図11】図11は、実施例3に係る弾性表面波デバイスの模式図である。
【図12】図12は、実施例3に係る弾性表面波デバイスの伝送特性を示したグラフである。
【図13】図13は、実施例2及び実施例3における弾性表面波デバイスの減衰特性の比較を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(比較例)
最初に、本発明の比較例に係る弾性表面波デバイスについて説明する。
【0017】
図1は、比較例1に係る弾性表面波デバイス100aの構成を示した上面図である。弾性表面波デバイス100aは、1つの入力端子(不平衡端子10)と、2つの出力端子(第1平衡端子12及び第2平衡端子14)とを有する。不平衡端子10には、不平衡信号が入力される。第1平衡端子12からは、不平衡端子10に入力される信号と同位相の信号が出力される。第2平衡端子14からは、不平衡端子10に入力される信号と逆位相の信号が出力される。
【0018】
第1平衡端子12と不平衡端子10との間には、弾性表面波フィルタである第1フィルタ20aが接続されている。第1フィルタ20aは、弾性表面波の伝搬方向に配列された3つのIDT(Interdigital Transducer)と、そのIDTの両側に配置された1組の反射器とを含む。以下の説明では、3つのIDTのうち中央に位置するIDT(第1中央IDT)を第1入力IDT22aと称し、その両側に位置する2つのIDTを第1出力IDT26と称する。それぞれのIDTでは、対向する1対の櫛型電極が、圧電基板上に互いに噛み合うように形成されており、2つの櫛型電極の一方が入力電極または出力電極として、他方が接地電極として機能する。また、第1フィルタ20aにおける反射器を第1反射器30と称する。
【0019】
第1入力IDT22aでは、入力電極23aが不平衡端子10に接続され、接地電極24aが接地されている。2つの第1出力IDT26では、接地電極27が接地され、出力電極28が第1平衡端子12に共通に接続されている。第1出力IDT26では、入力信号と同位相の信号を出力するために、接地電極27の電極指が第1入力IDT22aにおける入力電極22aの電極指と隣接するように(または、出力電極28の電極指が第1入力IDT22aにおける接地電極24aの電極指と隣接するように)配置されている。なお、第1入力IDT22aでは、入力電極23a及び接地電極24aの電極指の本数が等しく、IDT全体の電極指の本数は偶数である。
【0020】
第2平衡端子14と不平衡端子10との間には、弾性表面波フィルタである第2フィルタ40aが接続されている。第2フィルタ40aは、第1フィルタ20aと同様の構成となっており、3つのIDT(第2入力IDT42aと2つの第2出力IDT46)及び1組の反射器(第2反射器50)を含む。第2入力IDT42a(第2中央IDT)では、入力電極43aが不平衡端子10に接続され、接地電極44aが接地されている。2つの第2出力IDT46では、接地電極47が接地され、出力電極48が第2平衡端子14に共通に接続されている。第2出力IDT46では、入力信号と逆位相の信号を出力するために、接地電極47の電極指が第2入力IDT42aにおける接地電極44aの電極指と隣接するように(または、出力電極48の電極指が第2入力IDTにおける入力電極43aの電極指と隣接するように)配置されている。なお、第2入力IDT42aでは、入力電極43a及び接地電極44aの電極指の本数が等しく、IDT全体の電極指の本数は偶数である。
【0021】
弾性表面波デバイス100aは、入力端子に並列に接続された第1フィルタ20a及び第2フィルタ40aを備えることにより、不平衡信号を平衡信号へと変換する機能(平衡−不平衡変換機能)を有するDMS(Double Mode SAW)フィルタとして機能する。さらに、第1入力IDT22a及び第2入力IDT42aにおいて、互いに電極指の本数が異なる構成とすることで、通過帯域における挿入損失を低減することができる。
【0022】
しかし、比較例1に係る弾性表面波デバイス100aでは、第1入力IDT22a及び第2入力IDT42aとの電極指の本数が共に偶数本となっている。このような構成の場合、通過帯域内にノッチが発生し、挿入損失が劣化する可能性がある。これは、第1入力IDT22a及び第2入力IDT42aの電極指の本数を共に奇数本とした場合も同様である。
【0023】
以下に記載の実施例では、上記の課題を解決し、挿入損失を低減可能な弾性表面波デバイスについて説明する。
【実施例1】
【0024】
図2は、実施例1に係る弾性表面波デバイス100Aの構成を示した上面図である。弾性表面波デバイス100Aの基本的な構成は、比較例1に係る弾性表面波デバイス100aと同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0025】
実施例1の弾性表面波デバイス100Aは、第1フィルタ20Aにおける第1入力IDT22Aの構成が比較例1と異なる。具体的には、入力電極23Aの電極指の本数が接地電極24Aの電極指の本数より多く、IDT全体の電極指の本数は奇数となっている。第2入力IDT42Aでは、比較例1と同様に入力電極43A及び接地電極44Aの電極指の本数が等しく、IDT全体の電極指の本数は偶数となっている。すなわち、本実施例では、入力信号と同位相の信号を出力する端子に接続された弾性表面波フィルタにおける入力IDTの電極指の数が奇数本となり、入力信号と逆位相の信号を出力する端子に接続された弾性表面波フィルタにおける入力IDTの電極指の数が偶数本となっている。
【0026】
以下、シミュレーションに基づいて実施例1及び比較例1に係る弾性表面波デバイスの伝送特性を比較する。本シミュレーションでは、圧電基板及び電極の構成を、実施例1及び比較例1で同一とする。また、第1フィルタ20及び第2フィルタ40におけるIDTの電極ピッチ、反射器の電極ピッチ、及び反射器の本数(電極本数)についても実施例1及び比較例1で同一とする。パラメータの詳細は以下の表1に示す通りである。
【表1】

【0027】
また、各フィルタ(20、40)における入力IDT(22、42)及び出力IDT(26、46)の電極指の本数、並びに2つのフィルタのアパーチャーは以下の通りである。電極指の本数は、対向する2本を1対として数えており、対数が整数である場合は電極指の本数が偶数、対数が小数を含む場合は電極指の本数が奇数となっている。なお、表2には実施例2〜3及び比較例2〜4におけるパラメータも掲載されているが、これらについては後述する。以下の説明における弾性表面波デバイスの伝送特性の比較について、実施例1及び比較例1のパラメータはシミュレーションに基づくものであり、その他(実施例2〜3及び比較例2〜4)のパラメータは実測値に基づくものである。
【表2】

【0028】
図3は、両者の伝送特性の比較を示したグラフであり、横軸は周波数を、縦軸は減衰量を示す。グラフ中にて矢印で示す箇所において、実施例1では比較例1に比べてノッチが抑制されている。このように、実施例1の弾性表面波デバイス100Aによれば、通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することができる。
【実施例2】
【0029】
実施例2は、フィルタに共振器を組み合わせた弾性表面波デバイスの例である。
【0030】
図4は、実施例2に係る弾性表面波デバイス100Bの上面図である。実施例1と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。不平衡端子10と、第1フィルタ20B及び第2フィルタ40Bとの間には、第1共振器70が接続されている。第1共振器70は、一対のIDT72と、その両側に配置された反射器74とを含む。同様に、第1平衡端子12と第1フィルタ20Bとの間には、IDT82及び反射器84を含む第2共振器80が接続されている。第2平衡端子14と第2フィルタ40Bとの間には、IDT92及び反射器94を含む第3共振器90が接続されている。共振器をフィルタに組み合わせることにより、通過帯域外におけるノイズを低減(減衰量を増大)することができる。
【0031】
実施例2における第1フィルタ20B及び第2フィルタ40Bの構成は、実施例1(図2)と同様である。すなわち、第1入力IDT22Bでは、入力電極23Bの電極指の本数が接地電極24Bの電極指の本数より多く、IDT全体の電極指の本数は奇数となっている。また、第2入力IDT42Bでは、入力電極43B及び接地電極44Bの電極指の本数が等しく、IDT全体の電極指の本数は偶数となっている。
【0032】
続いて、実施例2に対する比較例(比較例2〜4)に係る弾性表面波デバイスの構成について説明する。以下の比較例では、2つのフィルタ(第1フィルタ20及び第2フィルタ40)における入力IDT(第1入力IDT22及び第2入力IDT42)の構成が実施例2と異なり、その他の基本構成は共通である。
【0033】
図5は、比較例2に係る弾性表面波デバイス100bの上面図である。第1入力IDT22b及び第2入力IDT42bの両方において、入力電極(23b、43b)と接地電極(24b、44b)の電極指の本数は等しく、IDT全体の電極指の本数は偶数となっている。
【0034】
図6は、比較例3に係る弾性表面波デバイス100cの上面図である。第1入力IDT22c及び第2入力IDT42cの両方において、接地電極(24c、44c)の電極指の本数が入力電極(23c、43c)の電極指の本数より多く、IDT全体の電極指の本数は奇数となっている。
【0035】
図7は、比較例4に係る弾性表面波デバイス100dの上面図である。第1入力IDT22d及び第2入力IDT42dの両方において、IDT全体の電極指の本数が奇数である点は比較例3と同様であるが、ここでは入力電極(23d、43d)の電極指の本数が接地電極(24d、44d)の電極指の本数より多い。
【0036】
続いて、実測値に基づき、実施例2及び比較例2〜4に係る弾性表面波デバイスの伝送特性を比較する。圧電基板や電極の材質をはじめとする基本的なパラメータは、表1に示したものと同一である。また、各フィルタにおける入力IDT及び出力IDTの電極指の本数、並びに2つのフィルタ間のアパーチャーについては、表2に示すとおりである。各パラメータは、実施例2が実施例1と等しく、比較例2が比較例1と等しい。また、比較例3〜4については、ほとんどのパラメータが比較例1〜2と同一であるが、入力IDT(22、42)の電極指の本数が27.5対である点が比較例1と異なる。
【0037】
第1共振器70、第2共振器80、及び第3共振器90における、IDT対数、IDTピッチ、反射器本数、反射器ピッチ、及び共振器のアパーチャーは、実施例2では以下の通りである。
【表3】

【0038】
同様に、比較例2〜4における共振器のパラメータを以下に示す。
【表4】

【0039】
図8〜図10は、実施例2及び比較例2〜4における弾性表面波デバイスの伝送特性の比較を示したグラフである。図8は実施例2と比較例2を、図9は実施例2と比較例3を、図10は実施例2と比較例4を比較している。それぞれのグラフ上に示すように、実施例2では比較例2〜4に比べてノッチが抑制されている。このように、実施例2の弾性表面波デバイス100Bによれば、通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することができる。
【実施例3】
【0040】
実施例3は、実施例2と同様にフィルタに共振器を組み合わせた弾性表面波デバイスの例である。
【0041】
図11は、実施例3に係る弾性表面波デバイス100Cの上面図である。弾性表面波デバイス100Cの基本的な構成は、実施例2に係る弾性表面波デバイス100Bと同様であり、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
実施例3の弾性表面波デバイス100Cは、第1フィルタ20Cにおける第1入力IDT22Cの構成が実施例2と異なる。具体的には、第1入力IDT22C全体の電極指の本数が奇数となっている点は実施例2と同じであるが、入力電極23Cではなく接地電極24Cの方が電極指の本数が多い。その他の構成(第1出力電極IDT26、第2フィルタ40C、第1共振器70、第2共振器80、及び第3共振器90の構成)は、実施例2と同様である。
【0043】
続いて、実測値に基づき、弾性表面波デバイス100Cの伝送特性を検討する。圧電基板や電極の材質をはじめとする基本的なパラメータは、表1に示したものと同一である。また、第1フィルタ20C及び第2フィルタ40Cに関するパラメータは表2の実施例3の欄に示した通りである。共振器に関するパラメータを以下に示す。
【表5】

【0044】
図12は、弾性表面波デバイス100Cの伝送特性を示したグラフである。実施例3に係る弾性表面波デバイス100Cによれば、実施例2と同様に通過帯域内のノッチを抑制し、挿入損失を低減することができる。
【0045】
図13は、実施例2及び実施例3における弾性表面波デバイスの通過特性及び減衰特性の比較を示したグラフである。図示するように、通過特性においては実施例2と実施例3とでほとんど差がないものの、減衰特性においては実施例2の方が優れていることが分かる。従って、第1フィルタ20における第1入力IDT22の電極指の本数を奇数にする際には、不平衡端子10に接続される入力電極23の電極指の本数を、他方(接地電極24)の電極指の本数より多くすることが好ましい。
【0046】
実施例1〜3において、第1入力IDT22及び第2入力IDT42の両側に位置する第1出力IDT26及び第2出力IDT46は、電極指の本数、交差幅、電極ピッチのうち少なくとも1つが互いに異なるようにすることが好ましい。第1フィルタ20及び第2フィルタ40においては、構成を対称とした方が一見バランス性に優れるように思えるが、実際には入力IDT(22、42)以外の部分を非対称に設計することで、挿入損失をより低減することができる。
【0047】
また、実施例2〜3において、第2共振器80及び第3共振器90は、それぞれに含まれるIDTの電極指の本数、交差幅、電極ピッチのうち少なくとも1つが互いに異なるようにすることが好ましい。2つのフィルタ(20、40)の平衡端子側に接続された2つの共振器を非対称に設計することで、挿入損失をより低減することができる。
【0048】
また、第1フィルタ20、第2フィルタ40、第1共振器70、第2共振器80、及び第3共振器90は、別々の基板上に形成されていてもよいが、同一の圧電基板上に形成されていることが好ましい。なお、実施例1〜3では圧電基板としてLiTaOを用いたが、他の材質の基板(例えばLiNbO)を用いることもできる。また、電極としてAl電極を用いたが、他の材質(例えばCu)の電極を用いることもできる。実施例1〜3ではDMSフィルタを例に説明したが、本発明は他の多重モードフィルタに対しても適用することが可能である。実施例1〜3では第1フィルタ20及び第2フィルタ40に含まれるIDTの数はそれぞれ3つであったが、3つ以上かつ奇数個であれば他の形態であってもよい。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 不平衡端子
12 第1平衡端子
14 第2平衡端子
20 第1フィルタ
22 第1入力IDT
23 第1入力IDTの入力電極
24 第1入力IDTの出力電極
40 第2フィルタ
42 第2入力IDT
43 第2入力IDTの入力電極
44 第2入力IDTの出力電極
70 第1共振器
80 第2共振器
90 第3共振器
100 弾性表面波デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが3つ以上の奇数個のIDTを含む弾性表面波フィルタである第1フィルタ及び第2フィルタと、
不平衡信号が入力される不平衡端子と、前記不平衡信号と同位相の信号が出力される第1平衡端子と、前記不平衡信号と逆位相の信号が出力される第2平衡端子と、を有し、
前記第1フィルタ及び前記第2フィルタのそれぞれにおいて、前記奇数個のIDTのうち中央に位置する第1中央IDT及び第2中央IDTは、一方の電極が前記不平衡端子に共通に接続され、
前記第1中央IDTの両側に位置する2つのIDTのそれぞれは、一方の電極が前記第1平衡端子に共通に接続され、前記第2中央IDTの両側に位置する2つのIDTのそれぞれは、一方の電極が前記第2平衡端子に共通に接続され、
前記第1中央IDTの電極指の本数は奇数であり、前記第2中央IDTの電極指の本数は偶数であることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記第1中央IDTを構成する電極のうち、前記不平衡端子に接続された電極の電極指の本数は、他方の電極の電極指の本数より多いことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記第1中央IDTの両側に位置する2つのIDTと、前記第2中央IDTの両側に位置する2つのIDTとは、電極指の本数、交差幅、電極ピッチのうち少なくとも1つが互いに異なることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記第1フィルタ及び前記第2フィルタは、同一の圧電基板上に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記不平衡端子と、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタとの間に接続された第1共振器と、
前記第1平衡端子と前記第1フィルタとの間に接続された第2共振器と、
前記第2平衡端子と前記第2フィルタとの間に接続された第3共振器と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記第1共振器、前記第2共振器、及び前記第3共振器のそれぞれは、IDTと、当該IDTの両側に設けられた反射器とを含むことを特徴とする請求項5記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記第2共振器及び前記第3共振器は、それぞれに含まれるIDTの電極指の本数、交差幅、電極ピッチのうち少なくとも1つが互いに異なることを特徴とする請求項6記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記第1フィルタ及び前記第2フィルタは、多重モードフィルタであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−287966(P2010−287966A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138597(P2009−138597)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【Fターム(参考)】