弾性表面波共振子
【課題】本発明は、スプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることを目的とするものである。
【解決手段】櫛型電極13は、中央部から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズされており、最大交差長の幅(Ht)からなるトラックA領域16と、一対のバスバー12とトラックA領域16の間に配置されるトラックB領域17とから構成され、トラックB領域17の少なくとも一部の領域において、交差電極14と交差電極14に弾性表面波の伝播方向に隣接するダミー電極15とで形成されている間隙部に電極を形成することにより重み付けパターン18が形成されている。
【解決手段】櫛型電極13は、中央部から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズされており、最大交差長の幅(Ht)からなるトラックA領域16と、一対のバスバー12とトラックA領域16の間に配置されるトラックB領域17とから構成され、トラックB領域17の少なくとも一部の領域において、交差電極14と交差電極14に弾性表面波の伝播方向に隣接するダミー電極15とで形成されている間隙部に電極を形成することにより重み付けパターン18が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器等に使用される弾性表面波共振子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の弾性表面波共振子としては、図9に示すように交差電極1の交差幅が中央部で大きく、左右両側にいくに従って一様に小さくなるように重み付けされ、非交差領域2にダミー電極3を配置していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−85602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の弾性表面波共振子においては、交差電極の交差幅が左右両側にいくにしたがって交差部分が短くなるようにアポダイズ重み付けがされており、横モードのスプリアスは抑圧されている。しかしながら、交差幅方向の弾性表面波の伝播路で中心部から外側にいくほど交差電極の対数が少なくなるため、弾性表面波の励振効率が悪くなり弾性表面波のエネルギー閉じ込めが悪くなることにより、弾性表面波共振器の共振のQ値が劣化し、挿入損失が大きくなるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、スプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、圧電基板上に形成された弾性表面波共振子であって、一対のバスバー電極と、櫛型電極で形成され、前記櫛型電極はそれぞれのバスバー電極から他方のバスバー電極に向けて延びて弾性表面波の伝播方向に交差部をもつ交差電極と、前記交差電極の延長領域に、それぞれのバスバーから延びるダミー電極を有し、前記櫛型電極は、中央部から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズされており、前記櫛型電極は最大交差長の幅からなるトラックA領域と、前記一対のバスバー電極と前記トラックA領域の間に配置されるトラックB領域とから構成され、前記トラックB領域の少なくとも一部の領域において、前記交差電極と前記交差電極に弾性表面波の伝播方向に隣接するダミー電極とで形成されている間隙部に電極を形成することにより重み付けパターンが形成されているものである。
【0007】
さらに、前記トラックB領域において、前記重み付けパターンが前記櫛型電極の中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明にかかる弾性表面波共振子のさらに特定の局面では、前記トラックB領域で、櫛型電極の交差長が一定の部分に対応する領域において、ダミー電極と隣接する交差電極の間隙部を覆う重み付けパターンが、中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弾性表面波共振子によれば、横モードのスプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施の形態1を用いて、本発明について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1による弾性表面波共振子の圧電基板の表面に形成された電極パターンを示す平面図である。
【0012】
回転5°YカットX伝播LiNbO3からなる圧電基板11の表面に、一対のバスバー電極12、櫛型電極13とその両側に反射器を有する。図1では反射器は省略してある。櫛型電極13は、各々のバスバー電極12から延びて弾性表面波の伝播方向に交差部をもつ交差電極14と、交差電極14の延長領域に各々のバスバー電極12から他方のバスバー電極12方向に延びたダミー電極15から形成されている。また、櫛型電極13は、中央部の交差長が一定の領域と、中央から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズされている領域から構成されている。アポダイズの形状は直線となっている。
【0013】
さらに、交差電極14とダミー電極15の弾性表面波の伝播方向と垂直な方向での間隔は、0.5μmで一定となっている。
【0014】
櫛型電極13は、櫛型電極13の最大交差長の幅(Ht)からなるトラックA領域16と、バスバー電極12とトラックA領域16に挟まれたトラックB領域17から構成されている。
【0015】
櫛型電極13の弾性表面波の伝播方向の長さをLt、中央部の交差長が一定の部分の長さをLn、櫛型電極13の最大交差長をHt、最小交差長をHnとした時、Ln/Lt=0.2、Hn/Ht=0.5である。Ln/Lt、Hn/Htをアポダイズ係数と呼ぶこととする。
【0016】
トラックB領域17は、交差電極14とダミー電極15が弾性表面波の伝播方向に重なる部分の間隙部を覆う重み付け電極が、中央部から直線的増加するように形成され、三角形の形状を有する重み付けパターン18を有している。
【0017】
バスバー電極12、櫛型電極13とその両側の反射器および重み付けパターン18は、回転5°YカットX伝播LiNbO3からなる圧電基板11の表面全面にAlを主成分とする金属電極をスパッタリング蒸着により形成し、フォトリソグラフィー技術により形成する。その後、圧電基板11の全面にSiO2をスパッタリング蒸着で形成している。
【0018】
金属電極およびSiO2の膜厚は、弾性表面波共振子の励振波長のそれぞれ、8.0%、20%としている。
【0019】
図2〜図5に、重み付けパターン18を有しない弾性表面波共振子で、Ln/Lt、およびHn/Htを変化させた場合の、スプリアスと挿入損失の変化を示す。(表1)に図2〜図5のアポダイズ係数と、挿入損失、スプリアスレベルの関係をまとめて示す。
【0020】
【表1】
【0021】
図2〜図5で明らかなように、Ln/Lt、およびHn/Htを小さくすることにより、横モードのスプリアスを小さくすることができるが、挿入損失が劣化していることがわかる。図4では、図5に比べて挿入損失の劣化は0.1dBとわずかであるが、弾性表面波共振子の共振点と反共振の間に発生している横モードのスプリアスの大きさは、1.5dBから0.7dBへと大幅に減少していることを見出した。
【0022】
従来、アポダイズ重み付けにより横モードのスプリアスが効果的に抑圧されることは知られていたが、同時に挿入損失も劣化していた。本発明者等は、横モードのスプリアスを抑圧しつつ、挿入損失の劣化が殆どないアポダイズ形状が存在することを見出した。本発明の実施の形態1では、アポダイズ係数Ln/Lt、およびHn/HtをLn/Lt<0.2、Hn/Ht<0.5とすると、図2、図4の結果より挿入損失が大幅に劣化することがわかる。また、Ln/Lt、およびHn/HtをLn/Lt>0.3、Hn/Ht>0.75とすると横モードのスプリアスが殆ど抑圧されないことを見出した。
【0023】
図6に、本発明の実施の形態1による、重み付けパターン18を有する弾性表面波共振子の共振特性を示す。ここで、アポダイズ係数はLn/Lt=0.2、Hn/Ht=0.5で、挿入損失0.2dB、スプリアスレベル0.1dBである。この結果を図4と比較すると、挿入損失は変化無く、横モードのスプリアス大きさのみが0.7dBから0.1dBへと大幅に減少している。これは、重み付けパターンにより横モードスプリアスの原因となる共振エネルギーが効果的に分散され、相殺されているためである。この時主共振の変位は、重み付けパターン部には殆どエネルギー分布を持たないので、重み付けパターンによる影響は殆どない。このようにして、挿入損失を小さく保ちながら横モードのスプリアスを抑圧した弾性表面波共振子を得ることが可能となるのである。
【0024】
すなわち、本実施の形態1による弾性表面波共振子では、トラックB領域を重み付けパターンとすることによりアポダイズ係数が同じであっても、横モードのスプリアスを大幅に抑圧することができるのである。
【0025】
上述の結果より、アポダイズ係数を
Ln/Lt≦0.2、Hn/Ht≦0.5
Ln/Lt≧0.3、Hn/Ht≧0.75
とし、さらにトラックB領域を重み付けパターンとすることによって、挿入損失の劣化を伴うことなく、横モードのスプリアスを効果的に抑圧することができ、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることができる。
【0026】
本発明の実施の形態1では、アポダイズ係数の好適な値の範囲は、上述の値であったが、アポダイズ係数の好適な範囲は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で好適な値に適宜設定される。
【0027】
なお、トラックB領域の重み付けパターンは、三角形に限定されるものではなく余弦カーブ等でも良い。
【0028】
また、トラックB領域の重み付けパターンは、図1のようにトラックB領域全体に形成されていなくても横モードスプリアス抑圧の効果は得られる。
【0029】
例えば、図7に示すように、トラックB領域で櫛型電極の交差長が一定の部分に対応する領域において、中央部を頂点とした三角形の形状に重み付けパターンが形成されても、図8に示すように、アポダイズ係数Ln/Lt=0.2、Hn/Ht=0.5で、挿入損失0.2dB、スプリアスレベルが0.5dBと低損失で、横モードのスプリアス抑圧がされた弾性表面波共振子が得られる。このように、重み付けパターンは本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0030】
本実施の形態1の弾性表面波共振子は、圧電基板として結合係数の大きな、5°YカットX伝播のLiNbO3を用いており、横モードに起因されるスプリアスが大きく現れる為、本発明の効果が大きい。結合係数のほぼ等しい回転YカットX伝播のLiNbO3で、カット角が、−5°〜+35°であれば同様の効果が得られる。
【0031】
さらに、本発明の実施の形態1では、圧電基板11の全面にSiO2をスパッタリングで形成しているので、温度特性が改善されるとともに、耐候性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る弾性表面波共振子は、横モードのスプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性が得られるという効果を有するものであり、通信機器等において使用される弾性表面波共振子等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態における弾性表面波共振子の平面図
【図2】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図3】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図4】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図5】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図6】本発明の一実施の形態における弾性表面波共振子の特性図
【図7】同他の実施の形態の弾性表面波共振子を示す平面図
【図8】同他の実施の形態の弾性表面波共振子の特性図
【図9】従来の弾性表面波共振子を示すパターン図
【符号の説明】
【0034】
11 圧電基板
12 バスバー電極
13 櫛型電極
14 交差電極
15 ダミー電極
16 トラック領域A
17 トラック領域B
18 重み付けパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器等に使用される弾性表面波共振子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の弾性表面波共振子としては、図9に示すように交差電極1の交差幅が中央部で大きく、左右両側にいくに従って一様に小さくなるように重み付けされ、非交差領域2にダミー電極3を配置していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−85602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の弾性表面波共振子においては、交差電極の交差幅が左右両側にいくにしたがって交差部分が短くなるようにアポダイズ重み付けがされており、横モードのスプリアスは抑圧されている。しかしながら、交差幅方向の弾性表面波の伝播路で中心部から外側にいくほど交差電極の対数が少なくなるため、弾性表面波の励振効率が悪くなり弾性表面波のエネルギー閉じ込めが悪くなることにより、弾性表面波共振器の共振のQ値が劣化し、挿入損失が大きくなるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、スプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、圧電基板上に形成された弾性表面波共振子であって、一対のバスバー電極と、櫛型電極で形成され、前記櫛型電極はそれぞれのバスバー電極から他方のバスバー電極に向けて延びて弾性表面波の伝播方向に交差部をもつ交差電極と、前記交差電極の延長領域に、それぞれのバスバーから延びるダミー電極を有し、前記櫛型電極は、中央部から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズされており、前記櫛型電極は最大交差長の幅からなるトラックA領域と、前記一対のバスバー電極と前記トラックA領域の間に配置されるトラックB領域とから構成され、前記トラックB領域の少なくとも一部の領域において、前記交差電極と前記交差電極に弾性表面波の伝播方向に隣接するダミー電極とで形成されている間隙部に電極を形成することにより重み付けパターンが形成されているものである。
【0007】
さらに、前記トラックB領域において、前記重み付けパターンが前記櫛型電極の中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明にかかる弾性表面波共振子のさらに特定の局面では、前記トラックB領域で、櫛型電極の交差長が一定の部分に対応する領域において、ダミー電極と隣接する交差電極の間隙部を覆う重み付けパターンが、中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弾性表面波共振子によれば、横モードのスプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施の形態1を用いて、本発明について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1による弾性表面波共振子の圧電基板の表面に形成された電極パターンを示す平面図である。
【0012】
回転5°YカットX伝播LiNbO3からなる圧電基板11の表面に、一対のバスバー電極12、櫛型電極13とその両側に反射器を有する。図1では反射器は省略してある。櫛型電極13は、各々のバスバー電極12から延びて弾性表面波の伝播方向に交差部をもつ交差電極14と、交差電極14の延長領域に各々のバスバー電極12から他方のバスバー電極12方向に延びたダミー電極15から形成されている。また、櫛型電極13は、中央部の交差長が一定の領域と、中央から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズされている領域から構成されている。アポダイズの形状は直線となっている。
【0013】
さらに、交差電極14とダミー電極15の弾性表面波の伝播方向と垂直な方向での間隔は、0.5μmで一定となっている。
【0014】
櫛型電極13は、櫛型電極13の最大交差長の幅(Ht)からなるトラックA領域16と、バスバー電極12とトラックA領域16に挟まれたトラックB領域17から構成されている。
【0015】
櫛型電極13の弾性表面波の伝播方向の長さをLt、中央部の交差長が一定の部分の長さをLn、櫛型電極13の最大交差長をHt、最小交差長をHnとした時、Ln/Lt=0.2、Hn/Ht=0.5である。Ln/Lt、Hn/Htをアポダイズ係数と呼ぶこととする。
【0016】
トラックB領域17は、交差電極14とダミー電極15が弾性表面波の伝播方向に重なる部分の間隙部を覆う重み付け電極が、中央部から直線的増加するように形成され、三角形の形状を有する重み付けパターン18を有している。
【0017】
バスバー電極12、櫛型電極13とその両側の反射器および重み付けパターン18は、回転5°YカットX伝播LiNbO3からなる圧電基板11の表面全面にAlを主成分とする金属電極をスパッタリング蒸着により形成し、フォトリソグラフィー技術により形成する。その後、圧電基板11の全面にSiO2をスパッタリング蒸着で形成している。
【0018】
金属電極およびSiO2の膜厚は、弾性表面波共振子の励振波長のそれぞれ、8.0%、20%としている。
【0019】
図2〜図5に、重み付けパターン18を有しない弾性表面波共振子で、Ln/Lt、およびHn/Htを変化させた場合の、スプリアスと挿入損失の変化を示す。(表1)に図2〜図5のアポダイズ係数と、挿入損失、スプリアスレベルの関係をまとめて示す。
【0020】
【表1】
【0021】
図2〜図5で明らかなように、Ln/Lt、およびHn/Htを小さくすることにより、横モードのスプリアスを小さくすることができるが、挿入損失が劣化していることがわかる。図4では、図5に比べて挿入損失の劣化は0.1dBとわずかであるが、弾性表面波共振子の共振点と反共振の間に発生している横モードのスプリアスの大きさは、1.5dBから0.7dBへと大幅に減少していることを見出した。
【0022】
従来、アポダイズ重み付けにより横モードのスプリアスが効果的に抑圧されることは知られていたが、同時に挿入損失も劣化していた。本発明者等は、横モードのスプリアスを抑圧しつつ、挿入損失の劣化が殆どないアポダイズ形状が存在することを見出した。本発明の実施の形態1では、アポダイズ係数Ln/Lt、およびHn/HtをLn/Lt<0.2、Hn/Ht<0.5とすると、図2、図4の結果より挿入損失が大幅に劣化することがわかる。また、Ln/Lt、およびHn/HtをLn/Lt>0.3、Hn/Ht>0.75とすると横モードのスプリアスが殆ど抑圧されないことを見出した。
【0023】
図6に、本発明の実施の形態1による、重み付けパターン18を有する弾性表面波共振子の共振特性を示す。ここで、アポダイズ係数はLn/Lt=0.2、Hn/Ht=0.5で、挿入損失0.2dB、スプリアスレベル0.1dBである。この結果を図4と比較すると、挿入損失は変化無く、横モードのスプリアス大きさのみが0.7dBから0.1dBへと大幅に減少している。これは、重み付けパターンにより横モードスプリアスの原因となる共振エネルギーが効果的に分散され、相殺されているためである。この時主共振の変位は、重み付けパターン部には殆どエネルギー分布を持たないので、重み付けパターンによる影響は殆どない。このようにして、挿入損失を小さく保ちながら横モードのスプリアスを抑圧した弾性表面波共振子を得ることが可能となるのである。
【0024】
すなわち、本実施の形態1による弾性表面波共振子では、トラックB領域を重み付けパターンとすることによりアポダイズ係数が同じであっても、横モードのスプリアスを大幅に抑圧することができるのである。
【0025】
上述の結果より、アポダイズ係数を
Ln/Lt≦0.2、Hn/Ht≦0.5
Ln/Lt≧0.3、Hn/Ht≧0.75
とし、さらにトラックB領域を重み付けパターンとすることによって、挿入損失の劣化を伴うことなく、横モードのスプリアスを効果的に抑圧することができ、優れた特性の弾性表面波共振子を得ることができる。
【0026】
本発明の実施の形態1では、アポダイズ係数の好適な値の範囲は、上述の値であったが、アポダイズ係数の好適な範囲は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で好適な値に適宜設定される。
【0027】
なお、トラックB領域の重み付けパターンは、三角形に限定されるものではなく余弦カーブ等でも良い。
【0028】
また、トラックB領域の重み付けパターンは、図1のようにトラックB領域全体に形成されていなくても横モードスプリアス抑圧の効果は得られる。
【0029】
例えば、図7に示すように、トラックB領域で櫛型電極の交差長が一定の部分に対応する領域において、中央部を頂点とした三角形の形状に重み付けパターンが形成されても、図8に示すように、アポダイズ係数Ln/Lt=0.2、Hn/Ht=0.5で、挿入損失0.2dB、スプリアスレベルが0.5dBと低損失で、横モードのスプリアス抑圧がされた弾性表面波共振子が得られる。このように、重み付けパターンは本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0030】
本実施の形態1の弾性表面波共振子は、圧電基板として結合係数の大きな、5°YカットX伝播のLiNbO3を用いており、横モードに起因されるスプリアスが大きく現れる為、本発明の効果が大きい。結合係数のほぼ等しい回転YカットX伝播のLiNbO3で、カット角が、−5°〜+35°であれば同様の効果が得られる。
【0031】
さらに、本発明の実施の形態1では、圧電基板11の全面にSiO2をスパッタリングで形成しているので、温度特性が改善されるとともに、耐候性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る弾性表面波共振子は、横モードのスプリアスを抑圧し、共振のQ値の劣化や、挿入損失の劣化を抑え、優れた特性が得られるという効果を有するものであり、通信機器等において使用される弾性表面波共振子等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態における弾性表面波共振子の平面図
【図2】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図3】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図4】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図5】アポダイズ係数による弾性表面波共振子の特性比較図
【図6】本発明の一実施の形態における弾性表面波共振子の特性図
【図7】同他の実施の形態の弾性表面波共振子を示す平面図
【図8】同他の実施の形態の弾性表面波共振子の特性図
【図9】従来の弾性表面波共振子を示すパターン図
【符号の説明】
【0034】
11 圧電基板
12 バスバー電極
13 櫛型電極
14 交差電極
15 ダミー電極
16 トラック領域A
17 トラック領域B
18 重み付けパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に形成された弾性表面波共振子であって、一対のバスバー電極と、櫛型電極で形成され、前記櫛型電極はそれぞれのバスバー電極から他方のバスバー電極に向けて延びて弾性表面波の伝播方向に交差部をもつ交差電極と、前記交差電極の延長領域に、それぞれのバスバーから延びるダミー電極を有し、前記櫛型電極は中央部から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズ重み付けされており、前記櫛型電極は最大交差長の幅からなるトラックA領域と、前記一対のバスバーと前記トラックA領域の間に配置されるトラックB領域とから構成され、前記トラックB領域の少なくとも一部の領域において、前記交差電極と前記交差電極に弾性表面波の伝播方向に隣接するダミー電極とで形成されている間隙部に電極を形成することにより重み付けパターンが形成されていることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項2】
前記櫛型電極は、中央部に交差長が一定の領域を有することを特徴とする請求項1記載の弾性表面波共振子。
【請求項3】
前記トラックB領域において、前記重み付けパターンが前記櫛型電極の中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜2に記載の弾性表面波共振子。
【請求項4】
前記トラックB領域で、前記櫛型電極の交差長が一定の部分に対応する領域において前記重み付けパターンが、前記櫛型電極の中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の弾性表面波共振子。
【請求項5】
前記圧電基板が、−5°〜+35°回転YカットX伝播LiNbO3であることを特徴とする、請求項1〜4記載の弾性表面波共振子。
【請求項6】
前記圧電基板の表面にSiO2膜が形成され、前記圧電基板と前記SiO2膜の界面に、前記櫛型電極、前記バスバー電極が形成されていることを特徴とする請求項1〜5記載の弾性表面波共振子。
【請求項1】
圧電基板上に形成された弾性表面波共振子であって、一対のバスバー電極と、櫛型電極で形成され、前記櫛型電極はそれぞれのバスバー電極から他方のバスバー電極に向けて延びて弾性表面波の伝播方向に交差部をもつ交差電極と、前記交差電極の延長領域に、それぞれのバスバーから延びるダミー電極を有し、前記櫛型電極は中央部から外側に向かって徐々に交差長が短くなるようにアポダイズ重み付けされており、前記櫛型電極は最大交差長の幅からなるトラックA領域と、前記一対のバスバーと前記トラックA領域の間に配置されるトラックB領域とから構成され、前記トラックB領域の少なくとも一部の領域において、前記交差電極と前記交差電極に弾性表面波の伝播方向に隣接するダミー電極とで形成されている間隙部に電極を形成することにより重み付けパターンが形成されていることを特徴とする弾性表面波共振子。
【請求項2】
前記櫛型電極は、中央部に交差長が一定の領域を有することを特徴とする請求項1記載の弾性表面波共振子。
【請求項3】
前記トラックB領域において、前記重み付けパターンが前記櫛型電極の中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜2に記載の弾性表面波共振子。
【請求項4】
前記トラックB領域で、前記櫛型電極の交差長が一定の部分に対応する領域において前記重み付けパターンが、前記櫛型電極の中央部分から外方向に向けて徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の弾性表面波共振子。
【請求項5】
前記圧電基板が、−5°〜+35°回転YカットX伝播LiNbO3であることを特徴とする、請求項1〜4記載の弾性表面波共振子。
【請求項6】
前記圧電基板の表面にSiO2膜が形成され、前記圧電基板と前記SiO2膜の界面に、前記櫛型電極、前記バスバー電極が形成されていることを特徴とする請求項1〜5記載の弾性表面波共振子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−148184(P2008−148184A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335402(P2006−335402)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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