説明

弾性表面波素子、及びこれを用いた弾性表面波デバイス

【課題】安価で、かつ、良好な振動特性をもって様々な電子機器に使用することができる弾性表面波素子、および弾性表面波デバイスを提供すること。
【解決手段】圧電基板34の中央付近に、一対の櫛歯電極40a,40bからなるIDT40が設けられており、このIDT40が設けられた面と反対側の面を接着剤32でパッケージ20に接合するようにした弾性表面波素子30であって、IDT40と電気的に接続された対となる一方の端子44と他方の端子46の端子対44,46が、圧電基板34の中央領域Mと端部領域Eの各領域に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子、及びこれを用いた弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、弾性表面波デバイス(以下、「SAWデバイス」という)が広く使用されている。
図6は、従来のSAWデバイス1の概略斜視図であり、パッケージ2内に圧電素子4が収容されている。
【0003】
圧電素子4の中央付近には一対の櫛形電極5a,5aからなるIDT(インターデジタルトランスデューサ)5が設けられ、このIDT5の両側には反射器6,6が設けられている。
この圧電素子4はパッケージ2の内底に接着剤3を用いて接合されているが、SAWデバイス1が実装された携帯電話等の電子機器が落下などした際に、圧電素子4が大きく振れてパッケージ2に衝突しないように、圧電素子4の中央領域を接着剤3でパッケージ2に接合するようにしている。
【0004】
そして、圧電素子4は、櫛形電極5a,5aと電気的に接続された一対の端子7,7を有しており、この端子7,7とパッケージ2側の電極や半導体素子8とがワイヤボンディングで接続されている。ここで、端子7,7にワイヤボンディングをする際は加重がかけられるため、この加重を受け止めるものとして接着剤3を利用するようになっており、このため、一対の端子7,7は接着剤3の上、すなわち圧電素子4の中央領域に配置されている。
ところが、このような圧電素子4の中央領域をパッケージ2に接合しているSAWデバイス1では、接着剤3の収縮応力などでIDT5が設けられている領域に反りが生じて、振動特性が変化してしまう恐れがある。
【0005】
図7は、このような接着剤3の収縮応力によって与える振動特性への影響を抑制するために考えられたSAWデバイス9の概略斜視図である。
すなわち、動かされることが少ない電子機器にSAWデバイス9を実装する場合は、圧電素子4がパッケージ2に衝突する恐れも少ないことから、IDT5が設けられた領域以外の端部領域を、接着剤3でパッケージ2に接合するようにしている。そして、上述したように、接着剤3はワイヤボンディングの際の加重を受け止めるものとして利用されているため、端子7,7も接着剤3と同じ端部領域に配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−26656の公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、このようにSAWデバイスが携帯電話のように動かされる電子機器に用いられる場合と、動かされることが少ない電子機器に用いられる場合とを考えると、端子7,7の位置を変えた2種類のSAWデバイス1,9を用意する必要があり、このため、設計開発コストが割高になり、また、在庫数量増加の要因になっていた。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためのものであり、安価で、かつ、良好な振動特性をもって様々な電子機器に使用することができる弾性表面波素子、および弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、第1の発明によれば、圧電基板の中央付近に、一対の櫛歯電極からなるIDTが設けられており、このIDTが設けられた面と反対側の面を接着剤でパッケージに接合するようにした弾性表面波素子であって、前記IDTと電気的に接続された対となる一方の端子と他方の端子の端子対が、前記圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けられている弾性表面波素子により達成される。
【0010】
第1の発明の構成によれば、IDTと電気的に接続された対となる一方の端子と他方の端子の端子対が、圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けられている。このため、この弾性表面波素子を移動する電子機器に用いる場合は、中央領域に接着剤を塗布して、移動にともなう素子の振れを抑制すると共に、この中央領域に設けられた端子対にワイヤボンディングできる。また、移動することが少ない電子機器に用いられる場合は、端部領域に接着剤を塗布して、接着剤の応力にともなう振動特性への影響を抑制すると共に、端部領域に設けられた端子対にワイヤボンディングできる。したがって、この一種類の弾性表面波素子をもって、移動する電子機器と移動することが少ない電子機器の双方に対応することができ、開発コストや在庫数量の削減が可能となる。
かくして、安価で、かつ、良好な振動特性をもって様々な電子機器に使用することができる弾性表面波素子を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記端子対は、前記圧電基板の短手方向の片側に配置されていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、端子対は圧電基板の短手方向の片側に配置されているので、例えばこの弾性表面波素子と半導体素子とをボンディングワイヤで接続する場合、半導体素子が配置されている側に、この端子対が設けられている片側を配置して、ボンディングワイヤを短くすることができる。また、この弾性表面波素子と電気的に接続されるパッケージ側の電極を、端子対が設けられた片側に集めて、パッケージの小型化を図ることもできる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明の構成において、前記端子対は、前記IDTの前記櫛歯電極の電極指が配列された方向の両側に配置された反射器を利用して、前記櫛歯電極と電気的に接続された導電パターンを引き回すことで形成されていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、端子対は、IDTの櫛歯電極の電極指が配列された方向の両側に配置された反射器を利用して、櫛歯電極と電気的に接続された導電パターンを引き回すことで形成されている。したがって、反射器が設けられている領域、すなわち振動特性に影響を及ぼす恐れが高い櫛歯電極の電極指が配列された方向(弾性表面波の伝搬方向)に、導電パターンを引き回す必要がなくなって、良好な振動特性を得ることができる。
【0013】
第4の発明は、第1の発明の構成において、前記一方の端子は、前記一対の櫛歯電極の一方の櫛歯電極を、この一方の櫛歯電極のバスバーと対向する辺に引き出すようにして形成され、前記他方の端子は、前記一対の櫛歯電極の他方の櫛歯電極を、この他方の櫛歯電極のバスバーと対向する辺に引き出すようにして形成されていることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、一方の端子は、一対の櫛歯電極の一方の櫛歯電極を、この一方の櫛歯電極のバスバーと対向する辺に引き出すようにして形成され、他方の端子は、一対の櫛歯電極の他方の櫛歯電極を、この他方の櫛歯電極のバスバーと対向する辺に引き出すようにして形成されている。したがって、この一方の端子および他方の端子のそれぞれを、圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けて、第1の発明と同様の作用効果を発揮できる。
【0014】
また、上述の目的は、第5の発明によれば、圧電基板の中央付近に、一対の櫛歯電極からなるIDTが設けられた弾性表面波素子と、この弾性表面波素子の前記IDTが設けられた面と反対側の面を接着剤で接合固定するようにしたパッケージとを備えた弾性表面波デバイスであって、前記IDTと電気的に接続された対となる一方の端子と他方の端子の端子対が、前記圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けられている弾性表面波デバイスにより達成される。
【0015】
第5の発明の構成によれば、IDTと電気的に接続された対となる一方の端子と他方の端子の端子対が、圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けられているので、第1の発明と同様に、一種類の弾性表面波素子をもって、移動する電子機器と移動することが少ない電子機器の双方に対応することができ、開発コストや在庫数量の削減が可能となる。
かくして、安価で、かつ、良好な振動特性をもって様々な電子機器に使用することができる弾性表面波デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る弾性表面波デバイス(以下、「SAWデバイス」という)10を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のA−A線概略断面図である。尚、理解の便宜のため、図1では蓋体を透視して図示している。また、図1で示す平行斜線は、断面を表すものではない。
これらの図において、SAWデバイス10は、パッケージ20内に弾性表面波素子(以下、「SAW素子」という)30を収容するようになっている。
【0017】
パッケージ20は、全体が略矩形状に形成され、図2に示すように、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される第1ないし第3の基板21,22,23を積層した後、焼結して形成されている。
第2および第3の基板22,23は、それぞれ、その内側に所定の貫通孔22a,23aを有し、第1の基板21に積層した場合に内部空間Sが形成されるようになっている。
【0018】
この内部空間SがSAW素子30を収容する空間であり、SAW素子30を搭載した後に、図2に示すように、開口部側の端面に蓋体24が接合されて、内部空間Sが気密に封止されている。
本実施形態の蓋体24には、導体金属、例えば、金属系のFe−Ni−Coの合金等が用いられ、シールリング26によりパッケージ20と接合されている。そして、この蓋体24は、パッケージ20内の導電部(図示せず)を通じて、図示しないグランド端子と電気的に接続されて、アース接地されている。
【0019】
また、第2の基板22の貫通孔22aは、第3の基板23の貫通孔23aよりも小さく形成され、第2の基板22に第3の基板23を積層した際、第2の基板22の上面の一部が内部空間Sに露出して上向きの段部22bとなっている。
そして、この内部空間Sに露出した上向きの段部22bには、図1に示すように、例えば下地としてタングステン(W)をメタライズし、その上にニッケル(Ni)および金メッキして形成された電極部28,28が配置さている。この電極部28,28は、SAW素子30と金線等のボンディングワイヤを通じて電気的に接続される電極である。
【0020】
第1の基板21は、図2に示すように、パッケージ20の底部を構成する基板であり、SAW素子30が接着剤32で接合されている。すなわち、パッケージ20の第1の基板21の内部空間Sに露出した上面に、非導電性あるいは導電性の接着剤32を塗布し、この接着剤32の上にSAW素子30の後述するIDT40が設けられた面と反対側の面を載置して、加熱炉に入れて接着剤32を加熱硬化させることで、SAW素子30をパッケージ20に接合固定するようになっている。
なお、本実施形態では、図1に示すように、接着剤32は中央領域Mに塗布されているが、端部領域Eにも塗布できるようになっている。この点については、後で詳細に説明する。
【0021】
SAW素子30は、図1に示すように、圧電基板34の主面に、IDT(インターデジタルトランスデューサ)40と反射器50,50とを備えている。
圧電基板34は、圧電材料として、例えば水晶等の単結晶基板や、Si基板へZnO成膜した基板等の多層膜基板等を使用することができる。本実施形態では、水晶ウエハから矩形板状にカットされたものが用いられている。
【0022】
IDT40は、圧電基板34の中央付近に設けられており、一対の櫛歯電極40a,40bから形成されている。この櫛歯電極40a,40bは、互いに平行に配置されたバスバー42a,42bの各々に、複数の電極指が圧電基板34の長手方向に所定距離を隔てて配置されてすだれ状となっており、櫛歯電極40aの各電極指と櫛歯電極40bの各電極指とが、互い違いに入り込むように配置されている。
このIDT40は、圧電基板34の表面に、アルミニウムやチタン等の導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等により形成されている。
【0023】
また、このIDT40の両側、すなわち櫛歯電極40a,40bの電極指が配列された方向(図1では圧電基板34の長手方向)の両側には、2つの反射器50,50が設けられている。反射器50,50は、IDT40から伝搬してくる弾性表面波を反射して、弾性表面波のエネルギーを内部に閉じこめる機能を有しており、それぞれ、2本の平行なバスバー52a,52bを、IDT40の電極指と平行である複数の導電部54,54・・・がつなぐようになっている。
なお、この反射器50も、IDT40と同様にして、アルミニウムやチタン等の導体金属から形成されている。
【0024】
そして、圧電基板34の表面には、パッケージ20側の電極部28,28と金線等でなるボンディングワイヤで電気的に接続されて、互いに異極となる端子対44,46が設けられており、この端子対44,46はIDT40と電気的に接続されて、IDT40との間で信号の入出力を行うようになっている。
【0025】
ここで、このIDT40と電気的に接続された対となる一方の端子44と他方の端子46の端子対44,46は、圧電基板34の中央領域Mと端部領域Eの各領域に設けられている。なお、ここにいう中央領域Mとは、IDT40が配置されている領域をいい、端部領域EとはIDT40が配置されている領域以外の領域をいう。
すなわち、一方の端子44は、対となる櫛歯電極40a,40bの一方40bと電気的に接続された導電パターン49を、中央領域Mと端部領域Eのそれぞれに引き回し、中央領域Mにパッド部44bを、端部領域Eにパッド部44aを形成するようになっている。また、他方の端子46は、対となる櫛歯電極40a,40bの他方40aと電気的に接続された導電パターン48を中央領域Mと端部領域Eのそれぞれに引き回し、中央領域Mにパッド部46bを、端部領域Eにパッド部46aを形成するようになっている。
【0026】
これにより、図1に示すように、接着剤32を、一方の端子44のパッド部44bと他方の端子46のパッド部46bが配置された中央領域Mに塗布し、接着剤32を受け台として超音波を印加するなどして、パッド部44b,46bにワイヤボンディングできるようになる。
また、このSAW素子30は、接着剤32を端部領域Eに塗布した場合であっても、この端部領域Eには一方の端子44のパッド部44aと他方の端子46のパッド部46aが配置されているので、このパッド部44a,46aにワイヤボンディングすることができる。
【0027】
さらに、この端子対44,46は、圧電基板34の短手方向の片側に配置されている。すなわち、本実施形態では、他方の端子46は、対となる櫛歯電極40a,40bの他方40aと接続された導電パターン48,48を、一方の櫛歯電極40bが配置された片側の端部に引き回して形成されている。
これにより、SAW素子30と電気的に接続されるパッケージ20側の電極部28,28を、端子対44,46が設けられた片側に集めて、電極部28,28を圧電基板34の短手方向の両側に配置することなく、パッケージの小型化を図れる。
【0028】
そして、このように圧電基板34の短手方向の両側にある櫛歯電極40a,40bと電気的に接続された端子対44,46を片側のみに配置するようにすると、片側に引き回すための導電パターン48が櫛歯電極40a,40bの電極指が配列された方向(図1の長手方向)を通ることになるため、その引き回したパターンが振動特性に影響を及ぼす恐れが高くなる。そこで、本実施形態では、端子対44,46は、IDT40の両側(圧電基板34の長手方向の両側)に隣接して配置された反射器50,50を利用して、櫛歯電極40a,40bと電気的に接続された導電パターン48,49を引き回すことで形成されている。
【0029】
すなわち、図1では、他方の端子46は、対となる櫛歯電極40a,40bの他方40aと接続された導電パターン48,48を、IDT40の両側の反射器50,50のそれぞれを介して、一方の端子44(44a,44b)の両側に隣接するように引き回して形成されている。より具体的には、櫛歯電極40aのバスバー42aと、このバスバー42aの延長線上にある反射器50,50のバスバー52a,52aとを導電パターン48,48でつなぐことで、反射器50,50を介して、他方の端子46a,46bを一方の端子44の両側に隣接させている。これにより、櫛歯電極40aと他方の端子46とをつなぐ導電パターン48,48は櫛歯電極40a,40bの電極指が配列された方向を通ることがなくなり、良好な振動特性を得ることができる。
【0030】
本発明の実施形態は以上のように構成されており、IDT40と電気的に接続された対となる一方の端子44と他方の端子46の端子対44,46が、圧電基板34の中央領域Mと端部領域Eの各領域に設けられている。このため、このSAWデバイス10を移動する電子機器に用いる場合は、中央領域Mに接着剤32を塗布して、移動にともなうSAW素子30の振れを抑制すると共に、この中央領域Mに設けられた端子対44b,46bにワイヤボンディングできる。また、移動することが少ない電子機器に用いられる場合は、端部領域Eに接着剤32を塗布して、接着剤32の応力にともなう振動特性への影響を抑制すると共に、端部領域Eに設けられた端子対44a,46aにワイヤボンディングできる。したがって、この一種類のSAW素子30をもって、移動する電子機器と移動しない電子機器の双方に対応することができる。
【0031】
なお、このSAWデバイス10のパッケージ20内に、少なくともSAW素子30を発振させる回路構造を有する半導体素子などの発振回路素子を設けてSAW発振器にしてもよい。この際、発振回路素子が配置される側に、SAW素子30の上述した端子対44,46が設けられている片側を配置することで、SAW素子30と発振回路素子とを電気的に接続するボンディングワイヤを短くすることができる。
また、本実施形態のように、圧電素子34の短手方向の片側のみに端子対44,46を配置する形態においては、端子対44,46は中央領域Mを挟む2つの端部領域E,Eのうち一つの端部領域Eに設けられ、本実施形態では図1の左側の端部領域Eに設けるようにしているが、図1の右側の端部領域Eに設けるようにしてもよい。
【0032】
図3は、本発明の実施形態の第1の変形例を示すSAWデバイス12の概略平面図である。この図で図1および図2の実施形態で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この図のSAWデバイス12が図1および図2のSAWデバイス10と相違するのは、SAW素子30の幅と、パッケージ20側の電極部28についてのみである。
すなわち、SAWデバイス12は、SAWデバイス10と同様に、端子対44,46を圧電基板34の短手方向の片側のみに配置するようにしているので、端子対44,46やIDT40、反射器50,50が設けられていない他方の櫛歯電極40a側の短手方向に沿った幅W1を小さくしている。
【0033】
また、パッケージ20側の電極部28について、本第1の変形例では、中央領域Mと端部領域Eの各領域に配置された一方の端子44と他方の端子46のそれぞれに対応した電極部28a,28b,28cを、パッケージ20に予め設けるようにしている。すなわち、3つの電極部のうち中央の電極部28bは、一方の端子44に対応する電極であり、一方の端子44の中央領域Mにあるパッド部44bと端部領域Eにあるパッド部44a間の長さに対応して、一方の端子44に隣接するように上向きの段部22bに設けられている。また、中央の電極部28bの両側の電極部28a,28cは、他方の端子46に対応する電極であり、電極部28aは端部領域Eにあるパッド部46aに隣接し、電極部28cは中央領域Mにあるパッド部46bに隣接するようにして、上向きの段部22bに設けられている。
【0034】
本発明の実施形態の第1の変形例は以上のように構成されており、SAW素子30は、端子対44,46が設けられていない他方の櫛歯電極40a側の幅W1を小さくしているので、小型化を図ることができる。
また、この変形例に係るSAWデバイス12では、パッケージ20に、中央領域Mと端部領域Eの各領域に配置された端子対44,46のそれぞれに対応した複数の電極部28a,28b,28cを予め設けるようにしている。したがって、電極部28a,28b,28cとこれに対応する端子対44,46とを隣接させてボンディングワイヤを短くすることができるパッケージ20を、移動する電子機器と移動しない電子機器の双方に対応するように形成できる。
【0035】
図4は、本発明の実施形態の第2の変形例を示すSAWデバイス14の概略平面図である。この図で図1ないし図3の実施形態で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この図のSAWデバイス14が、図1ないし図3のSAWデバイス10,12と主に相違するのは、端子対44,46の形態についてである。
【0036】
すなわち、一方の端子44は、一対の櫛歯電極の一方の櫛歯電極40bを、この一方の櫛歯電極40bのバスバーと対向する圧電基板の辺に引き出すようにして形成されている。また、他方の端子46は、一対の櫛歯電極の他方の櫛歯電極40aを、この他方の櫛歯電極40aのバスバーと対向する圧電基板の辺に引き出すようにして形成されている。そして、この一方の端子44および他方の端子46は、それぞれ、圧電基板34の中央領域Mと端部領域Eの各領域に設けられている。
【0037】
具体的には、一方の端子44は、櫛歯電極40bのバスバーと電気的に接続された導電パターン49が、圧電素子30の短手方向の櫛歯電極40b側(図4の下側)の端部に、電極指が配列された方向をまたがずに引き出されて形成されている。また、他方の端子46は、櫛歯電極40aのバスバーと電気的に接続された導電パターン48が、圧電素子30の短手方向の櫛歯電極40a側(図4の上側)の端部に、電極指が配列された方向をまたがずに引き出されて形成されている。そして、端子対44,46は、それぞれ圧電素子30の長手方向に沿って、左側の端部領域Eから中央領域Mを介して右側の端部領域Eに亘って形成されている。このようにして、本変形例の場合、端子対44,46は、圧電素子30の短手方向の片側に集められるのではなく、圧電素子30の短手方向の両側の端部に配置されるようになる。
なお、本第2の変形例では、上向きの段部22bは、内部空間Sに露出した短手方向の両端に設けられており、この短手方向の両端の上向きの段部22b,22bのそれぞれに、電極部28が端部領域Eから中央領域Mに亘って設けられている。
【0038】
本発明の実施形態の第2の変形例は以上のように構成されており、このため、単純な構造で移動する電子機器と移動しない電子機器の双方に対応することができるSAW素子30を形成することができる。
【0039】
図5は、本発明の実施形態の第3の変形例を示すSAWデバイス16の概略平面図である。この図で図1ないし図4の実施形態で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この図のSAWデバイス16が、図1ないし図4のSAWデバイス10,12,14と主に相違するのは、所謂2重モードSAWフィルタとなっている点である。
【0040】
すなわち、このSAWデバイス16は、圧電基板34の表面に、少なくとも一つのIDT40と、このIDT40から発生する弾性表面波をその両側において反射するための一対の反射器50,50とを備える2つのSAW共振子60,60を、弾性表面波の伝搬方向(電極指が配列された方向)に対して隣接して略平行に配置している。そして、このような横2重モードSAWフィルタについても、上述した実施形態と同様にして、SAW共振子60,60のそれぞれに対応した各端子対44,46を、圧電基板34の中央領域Mと端部領域Eの各領域に設けている。
【0041】
これにより、図5に示すSAWデバイス16であっても、移動する電子機器と移動しない電子機器の双方に対応することができるSAW素子30を形成することができる。
なお、この変形例では、横2重モードSAWフィルタを図示したが、2つのIDT40,40を、弾性表面波の伝搬方向(電極指が配列された方向)に沿って配置した縦2重モードSAWフィルタに対して、上述した実施形態を応用するようにしても勿論よい。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態や各変形例の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る弾性表面波デバイスの概略平面図。
【図2】図1のA−A線概略断面図。
【図3】本発明の実施形態の第1の変形例を示す弾性表面波デバイスの概略平面図。
【図4】本発明の実施形態の第2の変形例を示す弾性表面波デバイスの概略平面図。
【図5】本発明の実施形態の第3の変形例を示す弾性表面波デバイスの概略平面図。
【図6】従来のSAWデバイスの概略斜視図。
【図7】接着剤の収縮応力によって与える振動特性への影響を抑制するために考えられた従来のSAWデバイスの概略斜視図。
【符号の説明】
【0044】
10,12,14,16・・・弾性表面波(SAW)デバイス、20・・・パッケージ、30・・・弾性表面波(SAW)素子、32・・・接着剤、34・・・圧電基板、40・・・IDT、40a,40b・・・櫛歯電極、44・・・一方の端子、46・・・他方の端子、50・・・反射器、M・・・中央領域、E・・・端部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の中央付近に、一対の櫛歯電極からなるIDTが設けられており、このIDTが設けられた面と反対側の面を接着剤でパッケージに接合するようにした弾性表面波素子であって、
前記IDTと電気的に接続された対となる一方の端子と他方の端子の端子対が、前記圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けられている
ことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
前記端子対は、前記圧電基板の短手方向の片側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項3】
前記端子対は、前記IDTの前記櫛歯電極の電極指が配列された方向の両側に配置され
た反射器を利用して、前記櫛歯電極と電気的に接続された導電パターンを引き回すことで形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
前記一方の端子は、前記一対の櫛歯電極の一方の櫛歯電極を、この一方の櫛歯電極のバスバーと対向する辺に引き出すようにして形成され、
前記他方の端子は、前記一対の櫛歯電極の他方の櫛歯電極を、この他方の櫛歯電極のバスバーと対向する辺に引き出すようにして形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項5】
圧電基板の中央付近に、一対の櫛歯電極からなるIDTが設けられた弾性表面波素子と、この弾性表面波素子の前記IDTが設けられた面と反対側の面を接着剤で接合固定するようにしたパッケージとを備えた弾性表面波デバイスであって、
前記IDTと電気的に接続された対となる一方の端子と他方の端子の端子対が、前記圧電基板の中央領域と端部領域の各領域に設けられている
ことを特徴とする弾性表面波デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−166461(P2007−166461A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362806(P2005−362806)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】